衆議院

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第1号 平成22年4月28日(水曜日)

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平成二十二年四月二十八日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 田中けいしゅう君

   理事 井戸まさえ君 理事 大泉ひろこ君

   理事 小宮山洋子君 理事 松本 大輔君

   理事 村上 史好君 理事 井上 信治君

   理事 平井たくや君 理事 高木美智代君

      石毛えい子君    磯谷香代子君

      市村浩一郎君    打越あかし君

      江端 貴子君    緒方林太郎君

      大島  敦君    岸本 周平君

      後藤 祐一君    菅川  洋君

      園田 康博君    田村 謙治君

      高橋 昭一君    橘  秀徳君

      津村 啓介君    中島 正純君

      中林美恵子君    橋本 博明君

      橋本  勉君    古川 元久君

      皆吉 稲生君    宮崎 岳志君

      山尾志桜里君    山口 和之君

      甘利  明君    鴨下 一郎君

      小泉進次郎君    橘 慶一郎君

      中川 秀直君    長島 忠美君

      塩川 鉄也君    山内 康一君

    …………………………………

   公述人

   (株式会社みずほフィナンシャルグループ取締役会長)            前田 晃伸君

   公述人

   (政治評論家)      屋山 太郎君

   公述人

   (早稲田大学政治経済学術院教授)         稲継 裕昭君

   公述人

   (兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科准教授)  中野 雅至君

   公述人

   (都留文科大学文学部教授)            進藤  兵君

   内閣府副大臣       大島  敦君

   内閣府副大臣       古川 元久君

   内閣府大臣政務官     田村 謙治君

   内閣府大臣政務官     津村 啓介君

   内閣委員会専門員     上妻 博明君

    ―――――――――――――

本日の公聴会で意見を聞いた案件

 国家公務員法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)

 国家公務員法等の一部を改正する法律案(塩崎恭久君外四名提出、衆法第九号)

 幹部国家公務員法案(塩崎恭久君外四名提出、衆法第一〇号)


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国家公務員法等の一部を改正する法律案並びに塩崎恭久君外四名提出、国家公務員法等の一部を改正する法律案及び幹部国家公務員法案の各案について公聴会を行います。

 本日は、公述人として、株式会社みずほフィナンシャルグループ取締役会長前田晃伸君、政治評論家屋山太郎君、早稲田大学政治経済学術院教授稲継裕昭君、兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科准教授中野雅至君、都留文科大学文学部教授進藤兵君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 なお、進藤公述人は都合により到着がおくれますので、御了承願います。

 この際、公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。各案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 前田公述人、屋山公述人、稲継公述人、中野公述人、進藤公述人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、公述人各位に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、公述人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、前田公述人にお願いいたします。

前田公述人 おはようございます。前田でございます。

 私は、七年間、民間の金融機関でCEOを務めてきた経験をベースに、公述人として意見を述べさせていただきます。今回の国家公務員法等の一部を改正する法律案の審議の参考になれば幸いでございます。

 今回の改正案は、平成二十年六月に公布されました、いわゆるプログラム法案であります国家公務員制度改革基本法の内容を固めていく第一弾だと聞いております。来年の通常国会に抜本的改革案が提出されると言われておりますので、ここでは、民間の立場から少し幅広く意見を申し上げたいと思います。

 まず、基本的なことでございますが、私は、幹部人事の一元管理等が改正案に入っておりますが、この人事制度というものにつきましては、官と民の違いは基本的には余りないと思っております。すなわち、それぞれの仕事の役割課題が違うだけであるということであります。したがいまして、公務員制度改革を行うに当たりましては、公務員制度を余り特殊化して考えない方がよいのではないかと考えております。

 民間の組織、制度は、経営環境の変化に対応して柔軟な構造となっております。公務員制度も、この民間の柔軟な対応に近い仕組みにすることが国民のためになると思います。今回の改正の基本的な方向感も、そういう方向だと理解いたしております。

 さて、私は、意見の冒頭で、私が自分の会社で十年前に三つの大きな銀行を再編統合して、五万人を一つのグループにしたときの問題点、それから解決法を少しお話しさせていただきます。

 企業文化、歴史、慣行の違う組織の合体、統一は難事業でございます。そのため、私どもは、まず人事部の統合と人事制度の統一、人事運用、配置転換のローテーション化を行い、次に、入り口であります新入社員の採用の窓口を一本化し、また、本人の希望を尊重する仕組みを導入いたしました。また同時に、人事評価制度の客観性、公平性を担保するために、いわゆる三百六十度評価を管理者全員に導入いたしました。

 人事評価は、基本的には直属の上司が部下を評価するのがどこの世界でも大原則でございますが、過去に所属する組織の異なる人事制度をベースに評価されてきた人々にとりましては、統合後の新しい会社では上司、部下とも全く知らない同士というケースがたくさん出てまいります。したがいまして、新しい人事制度を安定させ、信頼されるような制度とするためには、三百六十度評価の導入が必須と考えたわけであります。

 この評価の方法でございますが、年に一回、評価者全員、私どもの場合ですと六千七百人でございますが、全員を、評価項目二十六項目にわたりまして、部下、同僚がブラインドで評価するものであります。本人には、本人の自己申告とこの三百六十度評価をグラフに対比して表示して、そのギャップを認識していただいて、今後の自己啓発の参考にしてもらうものであります。

 三百六十度評価のもう一つの活用法は、会社の経営サイドから見まして、管理者の実績が期待どおりかどうかを検証するものであります。評価項目は全員に開示しておりますが、開示することによりまして、グループ社員の行動面における共通評価軸、すなわち価値観の浸透を図る効果もございます。

 この制度を導入いたしまして八年目に入りました。人事の制度、運用等が極めて安定的に行われていると申し上げることができます。三百六十度評価は、今回の公務員制度改革で省庁間の壁を低くして配置転換を弾力化するときに、公平化の観点からお役に立つものと思います。

 次に、民間での幹部の選抜、育成の実情についてお話を申し上げます。ここでは私どものグループの実態をお話しいたしますが、この仕組みは民間ではごく一般的な仕組みでございます。

 採用でございますが、新たに採用するときには、公務員の場合ですと上級職というような個別の区分した採用がございますが、民間でございますので、幹部候補生の採用は行っておりません。民間企業では、総合職、一般職といった名称のコース別の採用が主流でございます。

 私どもでは、大きく、総合系の基幹職、専門系の基幹職、特定職という三つの職系区分を設けておりますが、それぞれの職系はさらに幾つかのコースに分かれておりまして、入社後の所属部署や担当業務及び教育プログラムがコースごとに用意されております。本人の希望や適性を踏まえ、多様な人材を育成していこうという考えでございまして、どのコースでなければ幹部選抜の対象にならないというような運用はいたしておりません。

 次に、中核となった方の管理でございます。

 入社十年もいたしますと、だれもが何らかの得意分野を持ち、また、相対評価軸の中で、各分野ごとに中核人材、いわばトップグループの人材が浮かび上がってまいります。分野ごとの壁は高いものではございません。また人材も、特定の分野に固定化されるものではございません。中核人材に対しましては、徹底した重課主義で臨んでおります。重い課題を与えるという意味でございます。この中核者には、より重い仕事の負荷が与えられ、実際に試され、多面的な評価にさらされて、それにこたえられてこそ、真の組織のリーダーになるということでございます。

 中核者の育成の仕組みは、通常の業務のオン・ザ・ジョブ・トレーニングだけではございません。私どもでは、入社十五年前後の中堅社員の中から各分野の優秀な社員を集め、特別プログラム、いわば幹部養成プログラムを設けております。このプログラムに指定された者は、通常業務を行いながら、チームを組んで、約半年間、経営戦略論等の学習をベースに、会社の諸課題を探し出し、分析し、解決策を見出し、最終的には、今までは私のところに直接提言を行ってもらっておりました。社員自身の目線を上げることで、その成長に大きく貢献いたします。

 中核者管理は、最終的には、各組織の長を担う経営人材の管理に継承をされます。入社時は横一線であった社員は、入社二十年前後の経営職階選抜のときにはおおむね二割程度にまで絞り込まれますが、ここがゴールではございませんで、経営幹部の選抜はここからが本番であります。

 枢要ポストの後継人材につきましては、直接にトップがかみ込んで、個別にパフォーマンスを見ていく体制をとっております。

 また、現場の経営管理人材につきましては、マネジメント力強化のための仕組みを設けております。すなわち、一流のプレーヤーが必ずしも一流のマネジャーになるわけでございませんので、みずほでは、管理職ポストの登用プロセスを高度化する仕組みとして、一つに、支店長公募制度を導入いたしております。

 また、各種の経営職階に向けての研修会のほか、管理職の評価を上からだけでなく下から、横からチェックする仕組み、先ほど申し上げました三百六十度評価を導入して、能力と実績に基づいた人事制度の公平性をチェックいたしております。

 次に、組織活力を維持するために行われております、部長職以上、役員の退職管理等の実情について簡単にお話を申し上げます。

 私どもでは、執行役員等に任命された場合を除きまして、満五十五歳から六十歳の定年までの間は、専任職員として個別担当業務に従事することとしております。したがいまして、それ以前の満五十歳代の前半には、ほとんどのライン管理職はポストから外れることが一般的でございます。これは組織活性化維持のためでございます。ラインの管理職を外れた後は、各人の専門キャリアを生かし、在職のまま業務監査セクションで指導業務に従事するケースや、関連子会社や外部の一般事業会社にあっせん転籍をするケースが一般的でございます。みずほの給与、処遇制度は職務と成果に応じたものとなっておりますので、ポストを外れた段階で給与、処遇はダウンして、見直しをされます。また、満五十五歳からの専任職員につきましては、従来とは異なる給与、処遇体系を適用いたしております。

 次に、公務員幹部人材育成のための重要なポイントをお話し申し上げます。

 人材の育成には時間がかかります。制度の変更も大切でございますが、政治主導を支える幹部人材の育成は待ったなしの状況でございます。ここでは、私も委員の一人として参加いたしました人事院の研究会のレポートを御紹介申し上げます。昨年の二月、公務研修・人材育成に関する研究会が一年かけて作成いたしましたレポート「新しい時代の職業公務員の育成」、サブタイトルが「政治主導を支える「全体の奉仕者」像」というものでございます。後ほどゆっくりごらんいただければと思いますが、ここではポイントだけ御説明を申し上げます。

 公務員としての必要な資質、能力につきましては、職業人としての基本的能力に加えて、使命感、職責の自覚、国民全体の奉仕者としての自覚、勇気、気概、担当分野の専門家としての必要な主張をする責任感、幅広い視野、高い識見、問題解決能力、分析、洞察力でございます。これは、公務員ということで申し上げましたが、民間人でも全く同じでございます。

 次に、今後の人材育成の方向でございますが、あるべき公務員をつくるためには、一つは、全体の奉仕者としての意識の徹底が必要だと思います。みずからの行動や判断を律する基軸でございます全体の奉仕者という意識、それから倫理観、使命感、税金を使う立場にある者としての自覚を早い段階から徹底的に根づかせる必要がございます。

 次に、政治に従い、政治を支えるための意識や能力の涵養が必要でございます。政治に従う、これは、国民の選択した政権に常に誠実に仕える意識でございます。それから、政治を支えるという部分では、解決策の選択肢を正しく提示して、実行に移す能力であります。政治主導が本来の機能を発揮するために必要な要件でございます。

 次に、新たな幹部育成のあり方でございます。

 現在のキャリアシステムは、さまざまな弊害が指摘されております。公務員制度改革基本法で、新たな幹部候補育成の仕組みを構築することが決定されておりますが、その際必要な施策につきましては、一つは、採用試験のあり方でございます。それから二番目は、重課責、重たい責任を付加することによりまして、その仕事ぶりを通じて幹部としての適性を把握することが必要であります。それから、健全な誇りや使命感の涵養が必要でございます。誤った特権意識を除去し、困難な事態に直面しても、自分たちが社会的基盤を支えていくとの気概を植えつける必要がございます。それから四番目には、人事評価との適切なリンクが必要でございます。職員が発揮した能力や成果を評価し、処遇や育成に反映し、人事の中立性、公正性の確保が必要でございます。

 最後になりますが、制度、仕組みを変えるときの、私ども民間から見た留意点を申し上げます。

 すべてのことを制度、手続で決めることは困難でございます。官でも民でも、制度はある程度抽象的にしか決められないものでございます。したがいまして、重要なことは、その仕組み、制度の運用、運営実態を十分にモニターすることでございます。公務員の場合、どうしても法律に基づいて運用が行われますので、環境変化が激しいときには、対応が遅延することが制度的に発生をいたします。これを打破するためにも政治主導は欠かせないものでございます。

 したがいまして、制度設計に当たりましては、余り詳細な制度設計をしないことをお勧めいたします。例えて申し上げますと、民間では、幹部職員のポストの価値を毎年見直しております。経営環境が変わりますと、部長でも役員でも、そのポストの価値が変わるのは当然でございます。変化の激しい時代では、ポストの価値を固定化すること自体が弊害を招きます。

 以上でございます。説明不足であった点等ございますが、後ほど御質問があればお答えいたします。

 ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、屋山公述人にお願いいたします。

屋山公述人 屋山でございます。

 私は、麻生内閣の末期まで、公務員制度改革推進本部の顧問ということで、自民党の公務員制度改革基本法に基づく国家公務員法改正というのに携わった経験から申し上げたいと思います。

 鳩山内閣で一応国家公務員改革法ができてきましたけれども、私の経験から、つまり自民党時代から見ている経験からいいますと、今度の案というのは、後退というよりも換骨奪胎といいますか、改革をやっているのかというほど生ぬるいということであります。

 まず、甘利さんの時代ですけれども、このときに一番問題になったのは、要するに、天下りをやめるために原則としてみんな定年までいさせる、そういう給与体系に持っていこうと。それには、今の給与体系のままでは上に行けば行くほど給与がふえるわけですから、その給与を、例えば役職定年とか、あるいは働きの悪い人をカットするとかあるいは解雇するとか、そういう信賞必罰の民間並みの給与体系に持っていく。それには、人事院の機能、つまり給与の機能を持ち込んでこないと、それをいじることができなければ、内閣人事局で評価しよう、六百人の評価をするといってもできないわけですよね。

 今、民主党案でできているのは、次官と局長と部長を一袋に入れて、そこの中で、これを同格だといって動かすことになっていますけれども、それでは、二千三百万円の次官の給料を持っている人を、あなたはどうも働きが悪いといって部長にする、千五百万円の処遇まで八百万円もいきなり落とせるかというと、今できている法律ではできないと思うんですね。

 そこへいくと、自民党時代の、給与をきちっと査定する、内閣人事局でやる、そのためには人事院の機能も持ってくる、それからもう一つは行政管理局の定員管理の機能も持ってくる、それから、できれば、財務省が持っている給与の関係の部署もみんな持ってくる、そこで初めて内閣人事局が非常に大きな力を持つわけです。私は、議論の最中に、甘利さんに腰が引けているとか言って、逆に怒られましたけれども、今のに比べればこれはとにかく非常に急進的な案で、これ以上急進的にしろといっても無理なぐらいの線まで来ていたんだなと。ただ、私はそのころ、かりかり熱くなっていましたから、それでも生ぬるいと思ったんですが、今出ている案に比べると、十点と二点ぐらいの差があるわけですよね。

 それでは、何で人事院の給与を今度の案に持ってこなかったのか、こういいますと、やはり人事院というのは連合というもののとりでみたいなものでありまして、幹部と平とを分けて考えますと、幹部人事をいじっていいじゃないかというので、そこで信賞必罰の慣行ができると、必ず平の人の評価まで移っていく。ですから、上の方の人事を弾力化すると下まで及ぶ、及ばない方がいいというのが頭にあるんですね。

 それはなぜかというと、この人事院の制度というのは、働こうが働くまいが、とにかく民間並みの給与を保障してくれるわけですから、ストライキをやる必要もないし、五十年ぐらい前は、四十年ぐらい前は、これはILOで、特殊な制度だけれどもいいだろう、こう思われていたんですけれども、今はこういう特殊な制度はやめろと言われているので、これをやめる人事制度をこれからつくっていくべきだと思うんです。

 それで、前にできた、福田内閣のときにできた公務員基本法では、一年以内にそれを、スト権の問題も含めて変えるんだというのができていたはずなんですけれども、今度の鳩山さんの法律では、一年以内にやるという基本法の方を変えちゃって、三年の間にやるといって、つまり先延ばしなんですよね。先延ばしの風潮というのは何十年も前から続いていて、私はこの鳩山内閣の法案を見ていて、これはつまり本気でやる気がないな、先延ばしの論理で、いつまでも手をつけないつもりなんだなということを非常におそれるわけですね。

 実際問題として、今のままだと、きのうあたりは新人を半分採ると言っていますけれども、新人を半分採れば、その半分分の年寄りが残って、これはひたすら給料が上がっていくわけですから、こんなことが続くはずがない。どうしてそういう手順前後が起こったのかというと、やはりどこかで変えてくれるなという力が大きく働いて、選挙も近いし、ここは刺激したくない、そういうことなんだろうと思うんですが、私は、こういう国家の基本問題について、選挙目当てにどうのこうのというようなことを政治家が考えてもらいたくないとつくづく思うんです。

 それからもう一つ、天下っている法人は大体四千五百とか六千とか言われていますけれども、今、きのう、おとといやった法人の仕分けというのは四十七ですよね。百分の一。百分の一だけいじって、そこで何かやっているように見える。これは目先の話でありまして、国家の基本問題を変えるという姿勢に欠けると、私は非常に不満なわけであります。

 今でも、千二百二十一人の人が、天下りでとは言わないんですが、途中でやめろと言われて、二人しか断っていないんですよね。ですから、六月の株主総会とか理事の交代というのをじいっと待って、千二百二十一人が待っているというのか、これは天下りというより裏下りみたいな話で、裏では今までどおりの状況が続いているんじゃないかということで、私は、民主党の政権、脱官僚というのが大看板なんですから、この大看板をごまかすようなことはやってもらいたくない。

 甘利さん時代は、自民党の中で三分の一ぐらいしか賛成していないんですよね。それでも強引にそこまで持っていって、法案を出すぞというところまで来たんですから。それと今度は、みんなの党と甘利さんの案と共同提案で出ておりますので、私は、この案が目下考え得る一番妥当というか先進的な案だということを申し上げて、意見といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、稲継公述人にお願いいたします。

稲継公述人 本日は、お招きいただきましてどうもありがとうございます。早稲田大学の公共経営研究科で行政学を専攻しております稲継と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 大学では、公共経営論や人事行政について研究いたしておりますが、また、行政改革推進本部の専門調査会やあるいは労使関係制度等検討委員会、さらには人事院の公務員の高齢期の雇用問題に関する研究会などに参加させていただきました。そういった経験も踏まえて、今回の法律改正について五点ほど意見を述べさせていただきたいと思います。

 幹部職員人事の内閣一元管理に関する点、退職管理に関する点、労働基本権に関する点、人事局への機能移管の点、そして給与に関する点、この五点でございます。

 まず第一に、幹部職員人事の内閣一元管理に関する点でございます。

 閣法によりますと、幹部職への任用は、内閣官房長官が適格性審査を行った上で作成する幹部候補者名簿の中から行うものとし、任命権者が総理及び官房長官との協議に基づいて行うこととされております。

 従来、各省ごとに将棋のこま形の昇進管理競争を行って、省益のために頑張る官僚が出世してきたということと比較いたしますと、今回の法案では、全省庁を横断した大きなバスケットをつくって、その中にプールされた人材の中から適性のある者を各職位につけるというものでございまして、省の壁を越える、各省のセクショナリズムを打破するものとして画期的な第一歩を記すものだというふうに考えます。

 明治期以来、日本に根づいてきた慣行を根本から変えるものでございまして、世界的な公務員制度改革の潮流にものっとっているものでございます。縦割り行政の弊害を打破し、官邸主導で適材適所の人材登用を柔軟に行うことを目指したものであると思います。

 ただ、官邸主導の適材適所の人材登用を柔軟に行うといった場合に、留意しなければならない重要なポイントがございます。政治的応答性、政治的な要求にどれだけこたえられるのかという点と、あと、幹部公務員の持つ専門性、政治的中立性といったもの、その両者のバランスということでございます。

 アメリカの高級管理職やSESの一部のような政治的任命職を除きまして、一般職の公務員の場合には、政治的中立性というものが近代公務員制の中では非常に重要な要素になってきております。政治的応答性は重要ではございますけれども、他方で政治的中立性、これは、あるじがかわっても従来と同じく専門性を持って政策提案ができるような人材が必要だということでございます。

 猟官制がばっこした大正から昭和初めの日本の例を引き合いに出すまでもなく、行政の中立性を損ねた場合に、非効率な行政の被害を最終的にこうむるのは国民でございます。政治的応答性と政治的中立性や専門性とのバランス、ここが一番の肝だというふうに私は思います。

 その意味では、政府案を実行に移すに際しては、人事権の濫用がないように、それから恣意的人事が行われないように細心の注意が必要であるとともに、そのための装置を用意することも必要なのではないかというふうに思います。

 まず第一に、適格性審査の段階においては、中立公正な判断のできる第三者、有識者委員会かもしれませんし、英国流にいいますと人事委員会ということになるかもしれませんが、そういった中立第三者機関をかませる必要があると思います。適格性審査においては、政治家は排除すべきだと思います。

 第二の段階で、プールされた幹部候補者名簿の中から特定のポストに任命をする段階でございますけれども、英国では幹部リーダーシップ委員会や各省の選考委員会が審査しておりますけれども、同様の仕組みを、類似した仕組みを政令で日本でも用意してよいのではないかというふうに思います。何らかの専門的機関がポストごとの候補者名簿を順位をつけて作成し、そこの中から大臣が任命するという仕組みにしてはどうかというふうに思うわけでございます。

 任命に当たっては、大臣は、名簿の第一順位ではなくて第二順位あるいは第三順位の候補者を選ぶことももちろん可能でありますけれども、その場合には、なぜ第一順位ではなくて第二、第三順位の候補者を選んだのかということを説明する責任が政治の側に発生するということにしてはどうかと思います。それくらいの仕組みにしないと、情実任用あるいは猟官制の危険は収束することはないというふうに思うわけでございます。

 この点は、政治的応答性と中立性、専門性との議論にかかわることですが、衆法の場合には特別職としており、政治的任命職に近いように読めるので、政治的応答性の方をかなり重視するというのはある程度理解できます。しかし、一般職の公務員として考える閣法の場合ですと、やはりメリットシステムのもとで政治的中立性や専門性を相当重んじる仕組みを用意する必要があるように思うわけでございます。

 大きな二点目、退職管理に関する点でございます。

 あっせん天下りを根絶するという点については、国民世論の流れからいたしまして正しい方向だと思います。ただ、公務員も生身の人間でございますので、彼らの生涯設計というものをどのように考えていくかということも極めて重要なポイントだと思います。

 新政権下になりましてから、八十三名の方が勧奨退職に応じてやめられて、そのうち半分くらいは無職だというふうに伺いました。私の知っているある高官の方も、退職されて、まだ年金支給開始年齢に達しておられませんので、無収入であります。今までの蓄えを取り崩す形で生活をされておられます。雇用と年金が接続しておりません。

 年金支給開始年齢の引き上げに伴って、いわゆる幹部職員だけではなくて、今後、一般公務員の雇用と年金の接続がますます大きな課題になってまいります。現在の五十七歳の公務員の年金満額支給年齢は六十一歳です。現在五十五歳の公務員の年金満額支給年齢は六十二歳です。現在五十三歳の公務員の年金満額支給年齢は六十三歳です。これはもう法律で決まっていることです。その空白期間を何とかしようということで定年延長を検討しようというのが、さきの基本法十条三項の規定でありました。この雇用と年金の接続の問題が顕在化するのは、もう目前に迫っていることでございます。

 公務員が定年まで勤務できる環境をどのように整備するのか、改正法に基づき設置される内閣人事局において検討すべき、非常に急を要する、喫緊の課題だというふうに私は思います。

 大きな三点目に、労働基本権に関する点について言及したいと思います。

 基本法十二条の規定では、「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係を措置するものとする。」と書かれております。また、附則第二条では、地方公務員についても検討するとされています。

 そもそも労働基本権の問題は、終戦直後からの長年の課題でございまして、国民目線から見た議論が必要だと思います。その意味では、国民的に議論が活発になっていくのは好ましい傾向だというふうに私は思っております。

 ただ、最近、人件費を二割カットするための基本権付与という議論が一部になされているように聞いております。しかし、これは論理的に見るといかがなものかなというふうに思うわけでございます。基本権が付与されたからといって二割カットになるのか、あるいは逆に、組合が強くて二割ふえてしまうのか、これは何とも言えないわけでございまして、上の議論はいささか乱暴な気がいたしております。

 基本権拡大に伴う便益と費用を含む全体像を国民に示して、政治の側で最終的な決断を下される必要のある重要な論点であるというふうに思います。

 大きな四点目、人事局への機能移管の点でございます。

 この点につきましては、衆法の方では明確に示されており、しかも昨年の法案よりも財務省の部分も含めた踏み込んだ法案となっております。

 これに対して閣法では、まず、初めの第一歩として、現在の推進本部事務局を内閣人事局に移し、その他のものについては内閣人事局で検討して、今後、早急に移管を検討することになっています。

 もちろん、初めの第一歩を踏み出すことは大きなことでございますので、その点については閣法に賛成いたしますが、できましたら、改革の全体像、工程表のようなものをできるだけ早目に国民にお示しいただきたいというふうに思っております。

 最後に、大きな五点目、給与に関する点でございます。給与に関して、三点ほど指摘をしておきたいと思います。

 第一に、幹部職人事についてでございます。閣法では、部長、審議官、局長、事務次官を同一の職務遂行能力とするものの、給与については、従来のままの、次官二千三百万円、局長千八百万円、部長が千五、六百万円というようになるようで、これにはやや違和感が私は残ります。

 この際、いずれの給与も、基本給は職務遂行能力に見合った千五、六百万円に合わせてしまう。その上で、局長には職責手当として二百万円をプラスする、事務次官には職責手当として七百万円をプラスするということを考えられてはいかがかというふうに思います。

 このようにしますと、事務次官から審議官に転任した場合でも、職責が外れるので職責手当がなくなるのは当然ですから、七百万減っても、これは職責手当分ということで、不利益云々という問題はクリアできると思います。

 また第二に、退職手当に関連するものですが、このように上積み分を職責手当化いたしますと、退職時のポストによって退職手当が大きく異なってしまうという大変大きな問題が解決できるわけでございます。

 現在のままの給与体系では、事務次官の退職手当は七千六百万円です、局長なら六千万円です、審議官なら五千三百万円です。事務次官と審議官では退職手当が二千三百万円異なってまいります。退職直前に審議官から事務次官へ転任する、あるいはその逆でも結構ですが、転任いたしますと、退職手当が二千三百万円異なるという仕組みにならざるを得ないわけでございます。単年度の給与額の差よりもはるかに大きな差が退職手当で出てしまうことになります。

 この三つの職階についての職務遂行能力は同一であるというふうに考えるのでございましたら、退職手当についても、職責手当分を除いた基本給をベースとして、部長、審議官クラスの五千三百万円にそろえてはいかがかと思うわけです。これは、局長でも事務次官でも同じく五千三百万円の退職手当を基本給から計算する形で算出するわけでございます。こうしておけば、転任の際にも問題は起きにくくなると思います。また、そのことが、高額退職金に対する国民の批判を和らげることにつながるものと思います。

 給与の問題の第三として、総額人件費の問題について言及しておきたいと思います。

 総額人件費はP掛けるQ、給与単価掛ける人員ではじかれるわけでございまして、今後、政府として、定員削減に積極的に取り組んでいただく必要があるのは言うまでもございません。私は、さらにもう一歩進んで、給与単価についても踏み込むことが可能ではないかというふうに考えております。

 地方公共団体の場合でも都道府県や政令市には人事委員会を設置しておりますけれども、そういった自治体の半数以上が給与カットをして総額人件費を削減しています。大阪府の橋下知事の場合は、組合と交渉の結果、幹部で一四%削減、一般職員でも数%の削減をして、全体で七・四%の給与削減を断行しています。もちろん、これに対しては、大阪府人事委員会の方から遺憾の意見表明がされてはおります。しかし、橋下知事は給与カットを断行しております。

 国の場合でも、政府の側がその気になりさえすれば、給与カットをすることはできるはずですし、昭和五十七年には実際それを実行しているわけでございます。

 労働基本権が与えられていないから給与カットはできないというのは非常に紳士的な答えだとは思うのですけれども、そのような立ち位置でいた場合、基本権が与えられたら給与カットができるのか、その点、少し疑問を抱くような次第でございます。

 最後になりましたが、今回の公務員制度改革によりまして、国民にとりましてよりよい行政を実現していただけることを切に願っております。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、中野公述人にお願いいたします。

中野公述人 兵庫県立大学大学院の中野でございます。

 本日は、このような機会をいただくことができまして、ありがとうございます。

 私からは、公務員制度改革の背景、それから政府案の問題点の二つについてお話ししたいと思います。

 まず、公務員制度改革の背景でございますが、これは主に四つあると思われます。

 一つ目は、経済成長の鈍化と少子高齢化、それから財政赤字が重なったことでございます。ヨーロッパ諸国では、一九八〇年代、既にニュー・パブリック・マネジメント型の行政改革が行われておりまして、公務員制度にも民間原理が導入されるようになりましたが、この背景には、ヨーロッパの苦しい状況があったと言われております。我が国においても十年周期おくれで同様の状況が訪れていることが、九〇年代後半以降の行政改革、公務員制度改革の背景にあります。

 二つ目は、九〇年代以降、グローバル経済が進展し、企業活動のスピードが速まる一方で、個々人の行政サービスへのニーズがますます多様化することになったことがあります。これによって、行政は柔軟な対応を求められるようになりました。公務員制度に関して言えば、政治的応答性を高めることが求められるようになったということでございます。しかも、グローバル経済の進展や財政赤字の累積という状況は、どのような政権であれ、採用することのできる政策の選択の幅を大きく狭めますので、政策決定のスピードをどこまで進めるかというのが非常に重要になってまいります。

 これら二つは、世界各国に共通したことでございます。それに対して、我が国に特有なこととして二つございます。

 まず一つは、セクショナリズムの問題でございます。我が国の縦割り行政は明治時代以来のものであり、その是正は常に叫ばれていたところでございますが、その背後に、行政機構などの側面だけでなく、公務員制度が大きく横たわっていることに対する注目度が一層高まったのも、九〇年代後半以降の特徴だと思われます。採用から内部での昇進、退職管理までが各省ベースで行われておりまして、これがさまざまな問題を引き起こしてございます。

 二つ目の問題点でございますが、国家公務員の場合にはキャリア官僚を中心とした天下りの問題、地方公務員の場合にはさまざまな手当など、公務員に特有の雇用慣行と官民の労働条件の乖離でございます。今や、身分保障、相対的に割高になっている給料、社会的地位などの観点で、官民の労働条件には大きな乖離が生じております。

 民間企業の場合、九〇年代後半以降、終身雇用制度の見直しと成果主義の導入など、競争原理をコンセプトにしたさまざま人事制度の改革が行われる一方で、長引く長期不況から、雇用が不安定化するとともに、給料などは右肩下がりになっております。その象徴的結果が、非正規労働者が三〇%を超えるという現実でございます。

 このような民間の現状に比べますと、高級官僚と呼ばれる人々の天下りも、出先機関や地方公務員の地場企業とかけ離れた労働条件も、批判の的になるのは避けられないということでございます。このような官民の労働条件の乖離が公務員批判の背景になっているものと考えてございます。このようなことから、官民の労働条件の統一、あるいは制度の統一というものの改革が求められているところでございます。

 なお、公務員制度改革につきましては、諸外国の事例を見ましても、完璧な成功事例はございません。各国の文化、労働市場、民間企業の動向などさまざまなものを踏まえながら、各国独自のものをつくり上げていく必要があると思われます。

 次に、政府案の問題点でございますが、まず、総括的な問題点から述べさせていただきます。

 第一に、幹部公務員の役割についてでございます。これについては、さまざまな改革が既に行われておりますが、まだまだ視点が定まらないところがあると思われます。

 政治家と対比した場合の官僚の役割としては、政官融合を前提として、政治家と一蓮託生で政治的色彩の強い仕事をすることを想定しているのか、それとも、政官完全分離で、政治家が政策決定の大部分を担い、幹部官僚を含めて公務員は政策執行を淡々と行うという役割を想像するかによって、大きく異なってくるのだと思われます。

 近年の公務員制度改革は物すごいスピード感を持って進んできたことは高く評価されるべきですが、幹部公務員の果たすべき役割、その重みについて、まだまだ揺れ動いている部分があると思われます。

 第二に、公務員をリソースとしてとらえる視点が欠如していることでございます。官民の労働条件の乖離、公務員の不祥事それから天下り問題などを抱えているものの、行政機関や公務員は国民の税金で成り立っている制度遺産であり、時の政権にとっては貴重なリソースであって、これをうまく使いこなして成果を上げることが、国民にとっても望ましいことです。このような観点から考えた場合、政府案が公務員制度をリソースとしてとらえる視点をどの程度持っているのか、疑問に感じるところでございます。

 例えば、政治的応答性を高めるために幹部公務員の人事の弾力化を図ることの必要性は理解できる反面、それが高じて幹部公務員の労働条件のダンピング競争に陥る危険性はないのか、仮に政治的応答性を高めるのであれば、それに応じた給与制度などを構築する必要があると思いますが、果たしてそのようなものがどこまで想定されているのか、疑問に感じるところでございます。

 第三に、公務員制度全体の改革をどのように進めていくのかについて、不透明感が非常に強いことです。公務員制度は、さまざまな制度、慣行が寄せ木細工のように集まって、微妙な均衡の上に成り立っているものです。そのため、全体をどのように進めるのかという工程表が不可欠のものになってきますが、今回の内閣人事局の仕事の縮小を見ましても、今後どのような予定で公務員制度改革を進めていくのか、極めてあいまいです。

 それから、例えば、近年の公務員制度改革では幹部公務員制度に焦点が集まる傾向がありますが、人件費全体から考えれば幹部公務員の占める比重はわずかでございまして、政治主導体制が強まる今、今後も大きな影響力を持ち続けるとは想定できないところです。そのため、幹部公務員だけにこだわることなく、出先機関の公務員も含めて、公務員全体の任用、給与制度など、公務員制度全体をどのようにマネジメントしていくのかについて方向性をはっきり示すべきだと思われます。

 次に、個別各論に入りますと、第一に、天下りの根絶については取り組みが表面的なものに終始しており、どこまで天下りを構造的な問題ととらえているのかについて疑問が残ります。今回の政府案でも相応の厳しい天下り規制が打ち出されておりますし、独立行政法人の役員公募も導入されておりますが、天下りの根本的な要因となっている早期退職勧奨の禁止は盛り込まれておりません。天下りを根絶するためには、出口である非営利法人などのあり方だけでなく、人を押し出す要因になっている早期退職勧奨の廃止が不可欠であります。

 第二に、早期退職勧奨や天下りの根絶と関連して、公務員の総人件費をどのように抑制していくのかについても不透明です。仮に天下りを抑制した場合、中高年公務員が増加するため、現行の給与制度を維持する限り、総人件費が増大することは避けられません。この点、採用抑制によって乗り切るという方法もありますが、民間部門においても若年者の雇用機会の損失と中高年正社員の既得権の対比として問題となったように、安易に採用抑制に依存することは避けた方がよろしいかと思います。

 このような観点から考えると、本来、この時期に最も急ぐべき改革は、絶えず新規採用を行い組織の活性化を促しながら、天下りの抑制で定年まで働ける環境をつくる一方で、公務員全体の総人件費を抑制するという非常に難しい連立方程式をどのように解くか、これに最も力を傾注すべきだと思います。

 特に、労働基本権が制約されている中で、人事院勧告を踏まえつつ、人件費を削減するための給与制度をどう仕組んでいくのかについては、現行のような職種別の単一の俸給表制度で十分なのか、幾つかの地方自治体で見られるような一〇%を超えるようなドラスチックな給与削減を労働基本権制約との関連でどのように整理するのかという難しい問題があると思われます。いずれにしても、これらの問題を解決するためには、給与制度、退職金制度、総定員法、組織管理などを総合的に考えることが重要となってきます。

 第三に、幹部公務員の適格性審査及びその任用についてです。今回の政府案では、適格性審査が政令に白紙委任されておりますし、昇任等についても具体的な定めがなく、今後の運用に大きく依存することになります。

 これについては、政治主導体制、首相主導体制という側面から必要と考えられる部分があるものの、政治状況が大きく変化する中で、これまで官僚利権の隠れみのとして批判されてきた行政の中立性とか継続性というものが、逆に一層重要性を持つことも考えられます。そう考えますと、国会や人事院、第三者委員会の関与、だれから見ても納得がいく透明な基準などが必要と考えられます。この点について、米国においても、一部の政治任用者については、議会での審査、承認が必要とされております。

 第四に、幹部公務員の職制上のみなし規定についてです。政府案では、事務次官級、局長級、部長級を同一の職制上の段階にあるとみなすことで適材適所の柔軟な人事を行うことを目指していると思われますが、これについては、政治主導によってめり張りのある人事を行うことができる、つまり政治的応答性を高めることができるというメリットがある一方で、事務次官から部長クラスの仕事、求められる能力などはどこまで検証されているのか、極めて疑問です。現実に中央官庁の仕事を見てみますと、事務次官の仕事と局長の仕事と部長の仕事は全く違うものと思われます。そういう現実をどこまで見た上でこういう同一の職制上の段階とみなす規定を入れたのか、極めて疑問に感じるところでございます。仮に事務次官と部長級で現実に行われている仕事それから求められる能力が全く違うものだとすると、このみなし規定というものが全く適用されないおそれもありまして、そういった場合、このみなし規定は逆に空文化のおそれもあります。

 以上、政府案は個別各点で四つの問題を抱えております。

 以上、公務員制度改革の背景、政府案の問題点について陳述させていただきました。ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、進藤公述人にお願いいたします。

進藤公述人 進藤と申します。きょうは大変失礼いたしました。

 本日は、公聴会において意見を述べる機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 私は、今、都留文科大学におきまして政治学を担当しておりまして、これまで、政治学、行政学の視点から、日本の政治、行政について研究をしてまいりました。その立場から、内閣提出の国家公務員法一部改定案、政府法案と、塩崎議員外提出の二つの法案、野党の対案とお呼びしますが、この両者について、私の意見を申し述べます。

 お手元にレジュメと資料を配付いたしましたので、それをごらんになりながらお聞きいただければと思います。

 まず、国家公務員制度改革全般について述べます。

 国家公務員制度の歴史をごく簡単に総括いたしますと、戦後、日本国憲法の国民主権原則と議院内閣制度、そして十五条、「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」という規定に基づいて、国民に対し公務の民主的かつ能率的な運営を保障することを目的とする法律として、国家公務員法が制定されました。

 この目的を具体化するべく、一九五〇年には国家公務員の職階制に関する法律、いわゆる職階法が制定され、前後して中央人事機関として人事院が設置され、日本においても、職階制と呼ばれる近代的な国家公務員制度の確立が目指されたところです。その際の基本的な立場は、戦前型の官僚制の特権的、身分的な秩序の打破、民主制、そして専門的能力の高い公務員制度の構築という三点であったと考えられます。

 ところが、戦前型官僚制による抵抗がとても強く、結果的に職階制導入は挫折をし、国家公務員採用試験上級甲種、現在の1種という区分がつくられ、その合格者がいわゆるキャリア組とされ、事務次官を頂点とする、キャリア組支配とでも言うべき特権的官僚制の構造が定着していったわけです。

 このキャリア組支配の構造は、国民から見て二つの問題点があったと言えます。

 第一は、国民を疎外した特権的な体質です。

 今回の外務省密約問題ですとか、あるいは公共事業や補助金をめぐるいわゆる族議員や業界との癒着、それに伴う天下りや不祥事はそのあらわれです。

 第二は、国民生活向上、福祉増進という観点から見たときの、意外なほどの専門的能力の低さです。

 さまざまな薬害問題を見ましても、また近年の貧困の増大と、雇用や福祉、年金、医療の既存の仕組みの行き詰まりを見ましても、また地方における経済の衰退を見ましても、あるいはグローバル化時代の日本の進路という点を見ましても、中央省庁は有効な対応ができていないのではないかというのが、国民が官僚に対して不信感を抱く理由になっているように思われます。

 その後、橋本内閣の行政改革会議最終報告を画期としまして国家公務員制度改革が進み、二〇〇七年には国家公務員法一部改定があり、これにより職階法は廃止され、さらに二〇〇八年に国家公務員制度改革基本法が成立をし、この基本法の枠組みに基づいて、今回新たに、国家公務員法一部改定について、政府法案、野党の対案の両者が提出されているところですが、その内容を見ますと、これは後ほど述べますけれども、種々問題があるように考えられます。

 また、国家公務員の労働基本権問題も残されておりまして、これは来年の通常国会で議論になると伺っております。

 そこで、私としましては、この際、拙速に陥らないためにも、今国会では、両者の法案とも一たん廃案とし、そもそもの枠組みである国家公務員制度改革基本法そのものに立ち返って、さきに述べた特権的、身分的秩序の打破、民主制、専門的能力の高い公務員制度の構築という観点から深く再検討し、法改正をするべきではないかと考えております。

 次に、どのような問題があるのかを申し上げます。

 第一に、これは別の法案、政治主導確立法案にかかわることですが、将来、国家戦略スタッフが新設されるという点です。

 日本では、職階制が導入されず、キャリア組支配の構造が残っている中で新たに国家戦略スタッフ制度を設けたとき、今以上に国家公務員幹部の特権性が強まるのではないか、その割には国家公務員の専門的能力が高まらないのではないかという疑いがあります。

 第二に、政府法案と野党の対案の両者にどのような問題があるかという点ですが、職員人事が党派化するおそれがあるという点です。

 政府法案の六十一条の二では、内閣総理大臣が幹部職員の標準的職務遂行能力を判定する適格性審査を行い、これに合格した者から成る幹部候補者名簿を作成するとしており、具体的な実務は官房長官、そして新設される内閣人事局長が担当することになりますが、官房長官、内閣人事局長とも与党の政治家です。適格性審査についても中立第三者である人事院が関与しておらず、名簿の作成の仕方については政令に白紙委任するとされています。

 さらに、幹部候補者名簿には六百人を大きく超える候補者が掲載されるわけですので、個々の候補についての詳細な人事情報を二人の与党の政治家、そして幹部職員の任命権者である各省大臣が把握した上で客観的な人事を行うということは事実上困難であると考えられます。そこから、党派的、恣意的な人事がなされるのではないかという疑いが生じます。

 野党の対案、幹部国家公務員法案では、内閣による行政の遂行、内閣との一体性の確保が強調され、幹部公務員について政治的任用にするものでして、党派化のおそれはさらに強くなると考えられます。

 第三に、両者の法案とも、いわゆる天下り問題の根絶につながらないという点です。

 国家公務員の不祥事を防ぐためには、官と民の癒着をなくすことが何よりも重要です。従来は、国家公務員法の百三条そして百六条で、退職後の営利企業などへのいわゆる天下りを原則禁止し、退職前五年、退職後二年というルールを設け、例外について人事院が承認するという仕組みを定めております。このルールをすり抜けるケースが多いということで、三年前には民主党から、事前規制を強化する法案も提出されていたところです。

 ところが、今回の政府法案は、退職する職員の再就職のあっせんを一部を除いてしないというものでありまして、天下り原則禁止とはなっておりません。野党の対案も、違いはありますけれども、基本的には同じ立場と言えます。

 第四に、国民が望むような専門的能力が高い幹部公務員を育てる仕組みが見えないという点です。

 国家公務員制度改革基本法では、採用試験のあり方、幹部候補育成課程の整備、人事評価制度が指摘されていますが、その新しい採用試験制度についても幹部候補育成課程についても、従来のキャリア組支配を一掃するものであるのかはっきりしておりません。

 また、今回の政府法案では、幹部候補者名簿に掲載されるかどうかは標準的職務遂行能力によって判定するとしていますが、その内容は抽象的なものにとどまっておりまして、幹部職員の専門的能力の向上との関係が見えません。

 幹部公務員に対して、職務の専門的内容を明記した職務明細書についても規定がございません。確かに、法案の附則において「事務次官その他の幹部職員の位置付け及び役割について検討する」とされていますが、これが、従来のキャリア組支配を一掃し、専門性の高い国家公務員制度につながるものなのかはっきりしておりません。

 その上、法案の三十四条では、事務次官と局長と部長を同一の職制とみなすという規定が入っております。一般職給与法の方では、職務の複雑、困難、責任に応じた給与の格差づけがなされておりまして、職務の専門性を重視する立場に立っておりますが、それと政府法案とは矛盾するのではないでしょうか。全体として、幹部職員の専門的能力をどのように高めるのか、その道筋が見えません。

 野党の対案も、職務明細書については規定されていますが、事務次官を廃止し、局長と部長を同一職制とみなすもので、仕事の内容の専門性に応じて幹部職員を張りつけていくという立場ではありません。事務次官廃止が行政の日常業務に混乱を招く疑いもあります。

 それでは、国家公務員の専門的能力を高める仕組みとはどのようなものでしょうか。

 ここで、イギリスの例を御紹介したいと思います。お手元の資料をごらんください。

 イギリスでは、従来、ゼネラリスト優位の官僚制でありましたが、二十世紀を通して専門的能力の高い公務員制度への改革が徐々に進んできました。そのポイントは、幹部ポストの一つ一つについて職務の内容を明確化し、どのような専門的能力が必要なのかを明らかにして、そのような専門的能力を持った者をそのポストに張りつけるという点です。

 内部昇進の場合もありますし、近年は公募人事も行われていますが、いずれにしても、このポストにはこういう専門的力量が必要であるということを明確にして、それを満たしている専門的能力がある者を幹部に登用するという仕組みになっております。どこの大学を卒業したかとか、1種試験を合格したかとか、幹部養成課程を修了したかとか、あるいは内閣一元化したかということだけではありませんで、どのような専門的能力を持っているかということを基準として幹部を登用する仕組みに改革されてきているわけです。こういう改革がなされているからこそ、英国では、幹部職員そして国家公務員全体の専門的能力を高めることができているわけです。

 お手元の資料は英国における幹部公務員の公募の事例でございまして、外務・英連邦省、日本の外務省に当たるものですが、そこの上級職に当たります会計課長の公募のものを私が翻訳したものです。

 細かい点はさておきまして、見ていただきますと、等級、業務分野、給与、任期の有無、勤務形態が明記されまして、書類審査と面接により選考がなされるということがわかります。御注目いただきたいのは、職務明細ということが書かれてありまして、このポストにはどのような職務があるかということが比較的細かく書かれております。さらに、定員補充明細というところでは、現在このポストを取り巻く状況の説明があって、どういう能力が求められているかということが書かれてございます。

 右側の方を見ていただきますと、このポストに必要な技能ということが六点にわたって書かれております。必要な資格、この場合には会計士の資格ですが、必要とされるということもあります。さらには、このポストにつくまで、それ以前にどのような経歴が必要かということで、七点にわたって必要とされる経歴があります。

 こういうものを満たした人が応募し、その人の中から書類審査と面接により選考するということになっておりまして、1種試験に合格したから何年かたてば課長になれるという仕組みにはなっていないということです。こういう形で、幹部職員そして国家公務員全体の能力を高める仕組みは、英国は工夫をしてつくっているということでございます。

 そして、ここで強調したいことは、このような改革の道筋というのは、実は戦後の日本でいうと、職階制の導入によって目指されていたということです。日本では、職階制導入が目指されながらそれが挫折をし、キャリア組支配が定着してしまい、それが今日さまざまな問題を引き起こしているわけですので、今必要なことは、諸外国の例にも学びながら、キャリア組支配の構図を打破し、本当の意味で専門性が高い国家公務員制度に再構築することだと考えております。

 最後になりますが、第五に、今回の国家公務員法改定の議論を拝見いたしますと、国家公務員総人件費の削減が前提となった議論がなされておりまして、国家公務員削減ありきの議論になっているのではないか、そのことに大変強い危惧を抱いております。

 公務員は、国民全体の奉仕者であって、国民生活の向上と福祉増進に役立たなくてはなりません。国家公務員にもさまざまな職種があり、地方の出先機関もあり、税務それから社会保障、労働、福祉、医療、教育、海上保安、国有林野などさまざまな分野で仕事をしております。削減すればよいという存在ではありません。現在、国民が置かれているさまざまな状況を考えるならば、むしろふやさなければならない分野もいろいろあるかと思います。その点を深く踏まえて、人件費削減、公務員削減ありきの議論が進められるのではないということを強く期待するものです。

 以上で私の意見を終わります。ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 以上で各公述人からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより公述人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。緒方林太郎君。

緒方委員 民主党の緒方林太郎でございます。

 きょうは、公聴会ということで、五名の公述人の方から貴重なお話を本当にありがとうございました。

 今、最後の進藤先生のお話を聞きながら、イギリスの話でちょっと思ったことがあったんですけれども、パーキンソンの法則と言われる、行政学によく出てくる法則がございます。

 これは何かというと、イギリスの植民地省の例を挙げて、役人というのは、仕事の重要性、必要性にかかわらず仕事を勝手にふやしていく、そういうことがあって、その経験があって、年に五%、七%と勝手に仕事がふえていった、植民地が減っているのにそれだけ仕事がふえていったということをケースに挙げて、これを是正していくのが行政改革、公務員制度改革なんだろうと私は思うわけです。

 こういった外国の例を見て、ではこれを日本に引き直してみると、歴史的にどう公述人の先生方の目に映っているかな、行政が仕事をふやしていく、そういうことがどういうふうに公述人の皆様方の目に映っているかということをお伺いしたいと思います。前田公述人にできればお願いしたいと思います。

前田公述人 大変難しい御質問でございます。

 これは役所をかばうわけではございませんが、公務員は、法律に基づいて厳格に行政をするのが役割でございますので、その役割を自分で勝手にやめることができないわけでございます。勝手にやめちゃうと大変困るのです。ところが、役割課題がなくなった制度も担っておりまして、それを自発的にやめられないものですから、先ほどお話がありましたとおり、仕事が自動的にふえてしまうということでございます。国民から見ますと、非常に非効率に映るということでございます。

 そういう意味では、どんな組織でも、民間でももちろん同じなんですが、民間の場合ですと役割がなくなったらポストもなくしてしまうんですけれども、行政という意味で考えますと、そのもとになる仕事の役割課題をなくさない限り、行政官は仕事をしなきゃいけないということでございまして、そこを例えば行政官に自分で判断させるというのはちょっと、逆に酷ではないか。こういうのはやはりむしろ政治で見て、役割がないものは廃止する。そこがない限り、自動的に減るということはなくて、むしろふえるのは当たり前と考えた方がいいと思うんです。

 ということですから、なかなか難しいのですが、私も行政改革を経団連で担当しているんですけれども、いろいろな政府の規制がたくさんございます。自動的になくならなくて、諸外国と比べますと物すごい規制の塊になっていまして、これがFTAとか交渉するときに場外の非関税障壁になっているという例がございます。

 もう一つ申し上げますと、日本人は、極めて丁寧に、仕事をサボらずにやるというのが国民性でございますので、これは外国と単純比較してはいけないんですが、私もいろいろなところへ行ってみますと、外国の公務員に比べると非常に質が高いんです。ですから、それが逆に、今御質問のあったような逆のケースがあるということでございます。

 そういう意味では、仕事を見直して、配置転換を行って、本当の意味で必要なサービスをやるというぐあいにある程度政治がはっきり仕切ってあげませんと、この非効率性は永遠に続くということだと思います。

 以上でございます。

緒方委員 ありがとうございました。

 本当に、そういった現象があるからこそ、不断の行政改革の努力が必要なんだろうと思いますし、今回の国家公務員法等の改正案についても、その一里塚になることが期待されているものであろうというふうに私は信ずるところでございます。

 少し具体論におりていってお話をお伺いしたいと思うんです。

 今回、内閣人事局というところが設けられることになりますが、これがどう機能するかというのはまさにこれからの運用によるところがあるわけでございますけれども、お役所側から見ると、この内閣人事局というのはだれが入るんだろうなということに結構意を砕くのじゃないか。

 むしろ、お役所的に、お役所の視点から見ると、多分こういうのは財務省とか経済産業省が得意だと思うんですけれども、人を送り込んでやろうと。できれば財務省の窓口になる人間はうちから送り込んだ人間で見てやろう、経済産業省もうちで見てやろう、必要であれば、例えば財務省の人間が経済産業省まで一緒に見てやろうとか、そういうお役所の権限争いの草刈り場になるような、そんな懸念を持つわけであります。恐らくすべての役所が、できればこんなところに人を送り込みたい、できれば中の話を知りたい、そこを通じて情報を得たい、そういうことを思うのじゃないかなと思うんですね。

 そう考えたときに、ここにだれを置くのかというのが結構重要になってくるのじゃないかと思いますが、稲継公述人にできれば御意見を賜れればと思います。

稲継公述人 御質問、どうもありがとうございます。

 今の御指摘、大変重要な点かと思います。

 今から十数年前の橋本内閣での行政改革会議のときにも、各省からスパイが送り込まれて、自分のところの省庁はできるだけ生き残りたい、そういう競争をしたわけでございます。それと同じようなことが今回絶対起きてはいけないわけで、そのための工夫をいろいろしなければなりません。

 そのためには、やはり内閣人事局長が、政治がしっかりグリップするとともに、各省から出される人間についても相当スクリーニングをする必要があるかというふうに思います。同時に、民間からもそれ相応の人を出してもらうということをしなければなりません。

 また、今回、適格性審査を経た上での、六百人ですか、名簿ができ上がりますので、その人たちは今後、各省の省益を担うのではなくて国益を担う人たちでございますから、そういう人たちの中からも内閣人事局の幹部を採っていくということを考えなければなりません。非常に重要な御指摘かというふうに思います。

緒方委員 もう一つ、お役所の早期勧奨退職などのもとになっているのは、私も実はお役所勤めをしていたんですが、実は役所に入省したときからこれは始まっているわけでありまして、日本のお役所というのは、典型的なのが、同期の桜みたいな、年次で切っていくというのがお役所の人事管理のあり方。

 そして、私なんか、まず自己紹介して名刺を渡すと、ところで緒方さん、平成何年入省ですかと必ず聞かれるんですね。そこで大体、相手がどれぐらいの肩書の人間なのかというのがわかるようになっている。何でわかるようになっているかというと、お役所というのは必ず同時昇進をする、係長になるときは皆同じ時期に昇進して、課長補佐になるときはまた同じ時期に昇進してと。

 どこで差をつけるかというと、ポストで差をつける。同じ課長補佐だけれども、Aという課とBという課の間にはおのずと位置づけが違うというようなことがあって、肩書自体は同時で昇進していくけれども、一回の人事異動で少しずつ差がついていき、それが二十年たったときにはがんと差がついているというのが、これまでの霞が関での、そして公務員制度全体、地方公務員は違いますけれども、国家公務員では大体こういうのがスタンダードだったというふうに思います。

 これはいいところと悪いところがありまして、いいところと言っていいのかどうかわかりませんけれども、一つあえて利点を探すとすれば、コップの中の争いをさせる。一回一回の昇進でつく差というのは、ポストでちょこっと差がつく。けれども、二十年たったときにそれが大きな差になるのは自分たちはわかっているから、だからむちゃくちゃ頑張る。

 組織としてのリソースを最大限動員するためにこういう制度があったといえばそう言えるわけで、これが利点であるけれども、この結果として何が起こっているかというと、上に行けば行くほどボトルネックが生じてくる、おのずとポストの数が減ってくる、だから早期勧奨退職といったようなことが生じてくる。

 実は、これは入省したときから始まっている話なんじゃないかと思うんです。この同期の桜、そして同時昇進という制度、これは実は法制度にはどこにも出てこない、いわばお役所のサブカルチャー的なところがあると思うんですけれども、今後、こういうサブカルチャー的なところまで手をつけていかないと、実は公務員制度改革というのは完結しないんじゃないかと私は思うんです。

 前田公述人そして屋山公述人に、この件についてお話をお伺いできればと思います。

前田公述人 これも大変難しい質問でございますが、民間でも実は、私が会社に入ったときは比較的年功序列に近い形で昇給、昇格が行われておりました。

 それで、同期の話がありますが、私ども、ちょうど百十人入りましたけれども、いまだに同期会をやっていますので、別に、同期会とか、同期であることを、それでどうしたという話で、それはそれでいい、あいさつがわりだ、そう考えればいいのです。民間ですと、時間がたちますと、実は、同期でも、社長になったり、そのまま平の方もいるし、それはそれで、だからどうしたというぐあいになっておりますので、大した問題はないんです。

 役所の場合、先ほど御指摘ありましたように、皆さん同時にずっと上がる、特に上級職の場合、これは民間から見ますと若干違和感があるんですね。といって、個別に仕事が違うわけですから、単純に横の比較ができるようで、できないんですね。まして、地方に出たり、また本省に戻ったりしますと、仕事そのものが違います、部下の数も違いますので単純比較できないので、ここは、いいとか悪いとかそういう議論はなかなか難しいんですけれども、ある意味で、さっきの早期退職勧告も含めて、役所の側で考えた生活の知恵がルーチン化した、そう申し上げた方がわかりやすいんだと思うんです。多分、生活の知恵でそう出たんだと思うんです。

 早期退職の勧告は、民間では別に勧告しなくてもそういうぐあいになっているので、それ自体はいいとか悪いとかいうことではないと思いますが、今度、定年を延ばすとなりますと、ただただ高齢化するような仕組みにしますと、恐らく組織活力はもたなくなると思います。ですから、ここはやはり少し別の観点からの工夫が必要だと思います。

 以上でございます。

屋山公述人 堺屋太一さんが経企庁長官をやったときに、序列を考えないで優秀な人を四人採った。自分はいいことをしたと思っていたけれども、さんざんいじめられて、三年たったら全員放り出された、こういうことなんです。

 私は年功序列の世界で生きたことがないのでどうもよくわからないんですけれども、スイスに駐在していましたときに、新聞を見ていると、州政府が何々局の課長を求む、そういう広告がしょっちゅう出るんですね。そこの中に、仕事はこれこれ四つ、月給は四十万円、それを公募して採るんですね。ですから、公募された方が、仕事をふやして月給をふやそうとか、そういうインセンティブは全然ないので、初めから自分の仕事はその四つ、四つを忠実にやるというので、そこはやはりスイスというのは直接民主主義の発祥の地というので、なるほど民主主義というのはこういうことかと。要するに、議院がこういうことをやると決めて、それを行政府が執行するんだな、それが非常にはっきりわかったんです。

 今度のいわゆる官僚内閣制を議院内閣制にするという意味は、やはり議院がこういう政治をやりますよ、それから政治的にこれは必要ないと思ったらそれをなくしていく、それに必要な人間を役所の方から供給していくというので、役所が音頭をとって仕事をふやして、各省割拠主義になって、それで実は官僚が政治をやっているという方がおかしいので、それは徐々に改めていくしかないんじゃないかというふうに思います。

緒方委員 もう時間も少なくなってきたので、最後の一問にしたいと思います。

 私は、実は公務員制度改革を考えるときに、名は体をあらわすというか、何と言えばいいのかわかりませんが、公務員がそれぞれ持っている肩書というものに対して非常に強い関心を持っています。

 公務員の中には、物すごくいろいろな肩書があるんですね。普通、入って係長、課長補佐、課長、部長、局長、次官。これだけかと思いきや、物すごくあれこれと肩書があって、課長の数を減らしましょうというと、すぐに何か別の、例えば参事官とか何かつくったりして、お役所は、名刺を見ただけで、この人は何なんだろうと、よくわからないケースが非常に多い。

 実は、こういうのが得意なのは経済産業省なんですけれども、経済産業省の人というのは、名刺を見ても何のことかさっぱりわからない方が多いんです。実は、裏を見てみると、英語で見てみるとその人が何者かというのが一番よくわかる。この人は、何か参事官と書いてあるけれども、裏を見てみたらダイレクター、課長ということがわかる。そういう笑えないケースがあるわけです。

 実は、これは国だけじゃなくて地方でも同じで、最近、神奈川県かどこかが、そういう肩書が乱立してしまったので、さっき言ったみたいに、入って係長で、課長、部長、局長、それぐらいにシンプルにしましょうというような話がたしかあって、いい話だなと思ったんですね。

 これから、次官級、局長級、部長級と、また級がつくのがくせ者でして、ここに何を入れるのかというのが非常に難しい、せめぎ合いが出てくると思うんです。その中でまたへんちくりんな肩書をつくって、いや、これは実は部長級じゃないんですみたいな議論というのが出てくるのかなと思うんです。

 私は、肩書はある程度シンプルにそろえた方がいいんじゃないかなという問題意識を持っているんですが、私の問題意識について稲継公述人はどう思われますでしょうか。

稲継公述人 御質問、ありがとうございます。

 私も、いろいろな省庁の方と名刺交換をするたびに、どのクラスかわからなくて困っている人間の一人でございます。

 イギリスの場合ですと、もう既に、例えばプリンシパルですとG5とか、肩書と同時にグレードをちゃんと横に刷っておられますので、はっきりわかります。日本の場合もそういう名刺にされてはどうかなと思うのが一点。

 それから、非常に多くの肩書をつくってしまっていることについて、それ自身をシンプルなものにするということもやはり政府の方として考えられてはいかがかなというふうに思いました。

 ありがとうございました。

緒方委員 本当にありがとうございました。

 時間もそろそろ終わりですので、これで終わりにさせていただきたいと思いますが、先ほどパーキンソンの法則を挙げましたとおり、公務員制度改革というのは不断の努力だと私は思います。常に常に膨張する傾向を持っている公務員制度を不断に適正な形に調整していくということが必要であって、恐らく日本のここ数十年の歩みの中にもそういったところがあるのではないかと思います。

 きょうお伺いさせていただいた御意見を踏まえまして、さらにいい公務員制度改革の確立に向けて頑張っていきたいと思います。

 貴重な時間、本当にありがとうございました。

田中委員長 次に、井上信治君。

井上(信)委員 自由民主党の井上信治でございます。

 きょうは、五名の公述人の皆様方、連休前の大変お忙しいところをお越しいただきまして、そして非常に有意義なさまざまな御意見をいただきましたこと、心より御礼を申し上げたいと思います。

 しかし、きょうの公述人の御意見、本当に私にとっては非常に衝撃的でございまして、なかなか政府案に対する厳しい意見が続いたのかなというふうに思っております。与党の御推薦の公述人の方も含めて、やはり政府案に対して非常に厳しい意見が続いたと思っております。

 例えば、屋山公述人。本当に政府案は公務員制度の後退である、換骨奪胎、本気で改革をやっておるのか、ここまで厳しい言葉が並んでおります。目先でやって、選挙目当てである、国家の基本問題を避けている、先延ばし、本気でやる気がないと。我が意を得たりという気もいたしますけれども、しかし、何も政府案を批判するだけではいけないというふうに私自身は思っております。

 まだまだ国会審議のさなかでありますから、せっかくいただいた御意見を生かして、ぜひ、政府案の修正ということも含めて、よりよい法案をつくっていかなければいけないと思っております。ちゃんと我々の意見を与党の方々にも聞いていただければ、今二点しかとれていないという政府案も、十点とっている我々の案に近づくことができる、そういうふうに期待をいたしております。

 そして、稲継公述人また中野公述人からお話がありました、公務員改革の全体像が不透明である、そして工程表は不可欠なんだけれどもそれがないということ、これも本当に大きな問題だと思うんですね。

 これは公明党の高木委員なんかも常日ごろおっしゃっておられますけれども、やはり公務員制度改革というのは本当に多岐にわたることであり、また世の中に与える影響も大きいわけですから、確かに一度に全部はできないかもしれない。しかし、全体像を描いて、そしてプライオリティーをつけてどんどんそれを進めていく。我々、基本法というものを与野党でつくったわけですから、それに基づいて取り組んでいくということ、ここが今の政府・与党に欠けている部分だと懸念をしております。

 そのほかにもいろいろあるんですけれども、私が大変重要だと思う問題、また中野公述人からも最も今傾注すべきだということで挙げられました公務員の総人件費の削減について、ちょっと伺いたいと思います。

 公務員の総人件費の削減というのは、今の厳しい財政赤字の中で、また国民から行政の無駄遣いについてさまざまな批判がある中で実現をしていかなければなりません。民主党もそういう思いで昨年のマニフェストの中に公務員の総人件費二割削減というものを明記して、そして国民の審判をいただかれたわけでありますから、これだけはやはりちゃんとやらなければいけないと思っております。

 しかし、これはそんなに簡単ではありません。二割削減、約一・一兆円ということであります。その難しさということに気づいたんだと思いますけれども、早期退職勧奨も、やらないと言っていたものをやる。あるいは、天下りの根絶についても、本当に根絶ができるのか。大分後退をしているようであります。

 総人件費の二割削減については、仙谷大臣もしばしば、例えば業務の地方への移管をやっていくとか、あるいは基本権を与えて労使交渉の中で給与カットをしていくんだというようなことを言っております。しかし、これでは全く不十分ですし、実現性は非常に疑いがあると私は思っております。

 そこで、この人件費の二割削減というものを民主党の公約どおりに本当にできるのかどうか、そして、できないとすれば、ではどうすればいいかということについて、屋山公述人また中野公述人から御意見を賜りたいと思います。

屋山公述人 二割削減というのと、今の給与法を変えないで国家公務員法を改正するということをやっていけば、理屈で考えて、二割削減できるはずがないんですよね。

 要するに、年寄りの方は自動的に上がっていくというシステムを同じにしておいて、それで幾ら新規参入を半分にするといっても、たかだか月給二十万円ぐらいの人を半分にするのと、五十万、六十万の人がどんどん上がっていくというのでは、数からいったって三倍ぐらい引かなければ総人件費は減らないので、ですから、私は、民主党、政府の方の手順前後だと思うんですね。最初に、定年を延長していったらどのぐらいになるという、その給与法をまず変えるというところから始まって、それで入る方の数を調整していく、そういうことをやらなかったというのが手順前後だった。

 内閣人事局の話だけじゃなくて、国家戦略局というのは、マニフェストを見ていて私が思っていたのは、まず司令塔みたいな国家戦略局ができて、そこで財政とか外交の基本方針というのが出る、内政の方針も出る、それをもとに各大臣が同じ方向を向いて動いていく、そういう司令塔がまずないんですね。なくて、行革担当とか行政刷新とか、みんな別々に行っちゃった、それが今の混乱になるんじゃないか。

 ですから、私は、もう一遍考え直して、国家戦略局をつくるところと、それからもう一つ、今出ている国家公務員法の改正というのを、先ほどどなたかおっしゃったように、やはり修正して、まともな手順を踏んでいくということしかないんじゃないか。今のままでは、それこそ絵にかいたもちといいますか、公約はできっこないとみんなわかっている状況になっているわけですから、私はぜひ修正をしていただきたいというふうに思います。

中野公述人 総人件費二割削減でございますが、これを実現するためには、約六百人程度の幹部公務員のあり方よりは、出先を含めて公務員全体の給料をどう下げるか、ここに踏み込まない限りは全く不可能だと思います。

 その際、非常に難しいのは、地方自治体でも、先ほど大阪府の話もありましたが、一〇%超の切り下げの場合、これを労働基本権の制約との関連でどう解釈するのか。これはだれも司法に判断を持ち込んでいませんので、いささかわからないところがあるんですけれども、大阪府とかを見ていますと、労使交渉は公開的にやっていること、それから、あくまでも一時的な切り下げ措置であること、恐らくこの二つを正当化の根拠にしていると思うのです。それを考えますと、今やるべきことは、緊急避難的に国家公務員の給料を大幅に切り下げる、それをまずやるか、それをやった上で給与制度を恒久的に変える。例えば、俸給表をやめて、イギリスでやっているようなバンド制というのがありまして、ある程度の幅を給料に持たせて、そこで個々人で労使交渉をして柔軟に給料を決めていく。そういった制度をとらないと、二割削減は非常に難しいと思います。

 以上でございます。

井上(信)委員 ありがとうございました。

 屋山公述人からは、とにかく今の政府案では二割削減できっこないという話、それから中野公述人からも、できないということで、むしろちゃんとやるべき手法、そういう御提示があった、そんなふうに理解をしております。ですから、むしろ修正をすべきであると屋山公述人から貴重な意見をいただいたということは、ぜひすべての委員の方々に重く受けとめてもらいたいと思っております。

 それから、もう一つ、やはり国民が非常に注視をしているのは天下りの根絶だと思うんですね。この天下りに対しても国民から本当に多くの批判がある。そして、それを受けて、同じように民主党がマニフェストの中で天下り根絶というものを国民に約束したわけであります。ですから、この天下り根絶だけはしっかりやっていかなければいけないということ。我々、衆法の方には、そのために罰則規定、こういったものも設けることといたしました。

 それで、先ほどちょっと屋山公述人がお触れになったことでありますけれども、早期退職勧奨について。

 この早期退職勧奨、これは天下りと密接な関連を有するわけであります。ですから、我々も、この実態を明らかにしてほしいということを、我が党の中川議員を初めとして、何度も要請いたしました。しかし、なかなかその実績、資料も出てこないということで、出てきたのが、実績として、千二百人前後の退職勧奨の中で、退職勧奨したけれども断った人が二人しかいない、そういう結果であります。これは、やはり国民の一般の感覚からすると、あっせんをしないで、そして退職勧奨をするということ、そうしたら、普通は断ると思うんですね、翌日から仕事がなくなってしまうということでありますから。しかし、そういった人は千二百人のうち二人しかいないということで、これはにわかには信じがたいわけであります。

 そのことを屋山公述人も先ほどちょっとお触れになりました。もしかしたら、いわゆる裏下りとか、あるいは役所のOBや政務三役によるあっせんが続いているのではないか、そういうことをおっしゃったわけですけれども、その点について、改めて屋山公述人に御意見をお願いいたします。

屋山公述人 官僚改革の最初は安倍晋三さんだったわけです。安倍総理が言われたのは天下りの廃止ということだったんですが、所信表明のときに、後でお聞きしたのですけれども、どういうわけだか、押しつけ的という官僚文学みたいな単語が入って、押しつけ的天下りの根絶というと、おれは押しつけていないよと言われたらそれっきりなんですね。

 それから、民主党の方は、この間、民主党の見解が出たんですけれども、官庁のあっせんがない、ですから、天下り先の方から勝手に呼んだやつはおれは知らない、こういうことなんです。

 いずれにしても、官僚の術中にはまった。要するに、押しつけてもいないよ、直接あっせんはしていないよと言えば、今までどおりの天下りが進む。実際問題として、その路線で、今、千二百二十一人の人がちゃんとやめている。千二百二十一人の人を結局十五年ぐらい面倒を見るわけですから、そうすると、今、二万五千人天下りが遊よくしているという状況とほとんど数は同じなんですよね。ですから、ちっとも、天下り根絶とあれだけ大騒ぎして、国民の賛同を得た状況が何にも変わっていないということだと思います。

 以上です。

井上(信)委員 私もまさにそのように思っておりまして、天下りの根絶ということ、これはそんなに簡単じゃないと思うんですね。では、公務員の方々の再就職はどうするのか、これは必ず出てくる問題であります。

 ですから、そういう中で、中野公述人からは、政府案は天下りの根絶が表面的だというような意見もありましたけれども、やはり政府案は、表面的なことを言うのではなくて、本当に根源的なところにしっかり踏み込んでいかないと、天下りを根絶させることはできないと思います。

 これは天下りの定義の問題じゃないんですよね。定義の問題で国民感覚とは全く違ったことを答えていく、政務三役のあっせんは天下りではない、あるいは役所のOBのあっせんは天下りではない、これは全く理解を得られることはできないと思います。

 そして、早期退職勧奨についても、あっせんはしていません、退職勧奨をしたら自主的に皆さんどんどんやめてくれたんですよ、これは本当なのか、国民は率直にそういうふうに感じると思いますので、やはりもう少し国民に対して正々堂々と、根源から天下りの削減に、これはある意味、民主党のいわば売りでもあったわけですから、取り組んでいただきたい。そして、それをやはり法案の中にも盛り込んでいただきたいと思いますね。これからの運用でというだけではなくて、ちゃんとやっていくという制度的担保も必要だというふうに強く思っております。

 そのほかにもいろいろ、問題点はたくさんあります。しかし、時間が限られておりますのでこれ以上申し上げませんけれども、とにかく、今、この公務員制度の改革というものは本当に大切なことで、国民が期待しているということ、いわば明治以来の大改革であるんだということ、これを我々は受けとめなければいけないと思います。

 そして、公務員制度でありますから、国民の全体の奉仕者として、公務員の方々が、中立性を持って、そしてその専門性を生かしていく。また、そのためには、高い志を持って取り組んでいただかなければいけないんです。しかし、現状、そしてまたこれからの政府案の改革の方向を見ていると、そういう方向には残念ながら行かないのではないかと本当に懸念をいたしております。

 私も十年前まである役所におりましたから、そういう意味でいろいろ内情も伺っております。今、本当に公務員の方々が、政治主導という名のもとで志を、やる気を失いかけているという話、いろいろなところから聞こえてきますよ。これは本当に国家にとっての大変な損失になっていると思います。

 政治主導は否定しません。いいことですよ。しかし、正しい政治主導をやっていただきたい。公務員をいたずらに圧迫していくというのが政治主導だとは思いません。

 そして、これは本当に喫緊の課題なんです。来年度の新規採用の人数も半減するということ、もうここで影響が出ているわけですね。そして、公務員の応募も、前年よりふえたというような報道がなされておりましたけれども、しかし、十年前からすると半減しているんですね。公務員という職場が国民にとって魅力がないものになっている、あるいは有能な人が集まらない、こういうことになってしまえば国民全体の大きな損失でありますから、いたずらに、選挙目当てであるとか、あるいは労働組合の言うことを聞くとか、そういうことではなくて、やはり国民のためにどういった制度がふさわしいのかということを、いま一度立ち戻って考えていただきたいと思います。

 まだまだこの公務員制度改革の法案審議は続きますから、決して遅くはありませんので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 公述人の皆様、本日は大変ありがとうございました。

田中委員長 次に、高木美智代さん。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 本日、五名の公述人の皆様には、お忙しい中、またお足元の悪い中お越しいただきまして貴重な御提言を御開陳いただき、心より感謝申し上げます。

 今回、国家公務員法の改正につきましては、恐らくきょうで三十七時間、午後またさらに審議をいたしますと四十一時間になります。重要広範でもないわけですが、ここまで審議をしたという法律も珍しいと思っております。

 先ほど屋山先生から、手順前後というお話がございました。まさにそういった法案で、やればやるほど煮詰まっていかない、ますます見えなくなっていく、こんな法案審議も私は珍しいと思っております。今までも多くの法案に携わらせていただきましたが、まさに一つ一つ、例えば退職管理の指針もないのに天下りは禁止できるという答弁であったり、また幹部職員、特に事務次官等の幹部職員の位置づけ、役割についてはこれから検討するというのが法文の検討項目にも入っております。にもかかわらず、幹部人事をすぐに一元化するという、例えばの例でございますが、そうした点を見ただけでも、全体像、工程表がはっきりしていないのに、まさに端っこだけ、できるところからとりあえずやっつけ仕事でやるというような、こうした法案でございます。

 私は、こんな法案を通すべきではないという思いを最近強くしておりまして、本日も、先生方のお話を承りながら、一つ一つまたさらに問題点を明確にさせていただいた次第でございます。

 何点か伺わせていただきます。

 まず、私は、天下りの根絶、ただいまも井上議員からお話がありましたが、これこそ国民の皆様の求める大事な課題であると思っております。

 しかし、今回、早期退職勧奨の禁止ということは盛り込まれておりませんし、総人件費の抑制について、今後検討するといった検討項目も見当たりません。そういう中にありまして、恐らく新政権の閣議決定によりましては、あっせんを禁止する対象としてOBは入っておりません。このままいきますと、裏下りをさらに増進することになるのではないかという懸念を持っております。

 この点につきましてどのようにお考えか、屋山公述人、稲継公述人、中野公述人、お三方に御意見を承りたいと思います。

屋山公述人 入る方じゃなくて、年をとって退職していくという方からやはり手をつけていかないと。定年は六十ですけれども、これは民間も大体、六十二のところも定年延長で六十五で年金に結んでいける、そこのところをなるべくしっかりする。

 ただ、今の給与体系のまま、もし六十五まで、あるいは六十二まで延ばせば、役職のないような人がひたすら上まで行くわけですから、なるべくそっちの人事制度、給与制度にまず手をつける、その辺から始めなければいけないんですけれども、今度はどういうわけだか、人事院の機能は全然持ってこないというんですよね。持ってこないで、どうやって人件費の調節をできるのか。私は、そこのところが今の法案を一生懸命読んでもまさに不明でありまして、ですから手順前後と言ったんです。

 まず、給与法を持ってきて、給与をいじる。仙谷大臣は、次官と局長と部長を同一職種にして、そこの中でかえると言っているんですけれども、実際問題として、次官が二千三百万円もらっていて、この人はちょっと下がっていってもらって部長級にいてくださいよといっても、それじゃ、八百万円いきなり給与を削れるのかというのも、仙谷さんによると、裁判覚悟でやってみると。こういう話では体系的な給与体系ということにならないので、これは明らかにおかしいと思うんですね。ですから、まず給与法を持ってくる。

 それは、実際問題として、麻生時代に甘利大臣が、人事院の給与体系を大変な大げんかして持ってきているわけです。私は、国家公務員法の改正によって人事院ができたのに、そのできた人事院が、おれは国家公務員法の改正案反対だといって、総理大臣が招集した会議をボイコットして、それで結局、法律を出せなくしちゃったんですからね。これはまさに公務員としてあるまじき話なので、それを今度は不問に付して、ふたをしちゃったというのは、私は本当に解せない、まずこれを申し上げたい。

 ですから、上の方から給与法をいじって、それで人件費を縮めて、それでもまだ余るというのなら若手の採用人員を減らす、そういう手順でやっていただきたいと思います。

 以上です。

稲継公述人 先ほど、三十七時間かけてとおっしゃいました。重要法案でもないのにというお話でございましたけれども、国会から見るとそうかもしれませんが、私ども普通の国民から見ると、人事行政というのは基盤行政でございますので、非常に重要な法案だというふうに思っております。その意味では、ぜひ与野党十分協議の上、法案を通していただきたいと思っております。まず最初に述べさせていただきます。

 早期退職慣行でございますけれども、これは、平成十四年に小泉内閣のもとで、早期退職慣行の是正についてということで、五年かけて勧奨退職年齢を三歳引き上げよう、こういう取り組みをやっております。例えば、国土交通省では、その取り組み前に平均退職年齢が五十二・四歳だったのが、五年後に五十五・七歳に、三歳ほど引き上げられております。

 幾つかの省ではもう五十九歳、五十八歳まで行っておりまして、ほぼこういうところは六十歳まで勤めてもらうことに問題はないのかなというふうに思います。

 ただ、一部の事業官庁系、国土交通省では平成二十年で五十五・七歳、あるいは農水省では五十六・五歳、こういう、まだ定年に達していないのに勧奨退職が平成二十年度の時点で残っていたところは、それを六十歳にいきなり引き上げると、中で非常に滞留が起きてしまうという組織の論理が働いて、勧奨退職を続けているところがあるんだというふうに思います。

 もちろん、その組織の論理というのはわかるんです。上がつかえてしまうと下が全然やる気がなくなってしまって、それで、ポストがなくて上に上がれない。やめられないし上がれないし、どうしてくれるんだ、そういう声をよくいろいろな省庁の人から聞くわけですけれども、そういう状態が組織の論理からしたら困るので、だから勧奨退職だ、こういう理屈になってくるわけです。

 しかし、勧奨退職というと、先ほど申し上げたように、雇用と年金が接続しておりませんので、やはり何らかの形で、どこかの形で、あっせんではない、裏からの何らかの手当てをしている部分もないわけではないというふうに私は思います。そういう意味では、ここはひとつ、もう組織の論理はなくしていただいて、何とか六十歳まで中で回すような工夫をしていただくということを各省に、特にまだ平均退職年齢が低い省庁においては、ぜひ努力していただきたいなというふうに思っております。

 ありがとうございました。

中野公述人 天下りの根絶問題でございますが、天下りを何と定義するかによって多分変わってくるんだと思いますけれども、民主党政権の天下り政策は、出口に関しては相応の、マスコミ的な受けは非常にいいんだと思います。

 ただ、基本的に、入り口戦略といいますか、公務員制度の内部をどう仕組むかによって全くこれは状況が変わってくる。幾ら出口を閉めても、生活がある限りは、天下ろうという誘引は必ず働きます。これは裏ルートという形をとろうがどういう形をとろうが、生活のためというのはあると思います。

 これを突き詰めて考えていきますと、公務員を最後まで公務員として雇い続けるのか。いわゆるダブルトラックみたいな労働市場で、官は官、民は民という形で分類して、あくまでも六十歳まで雇用して、例えばイギリスとかフランスのように高い年金を与える。イギリスの場合だと非常に高い、たしか一千万円以上の年金を公務員はもらっていると思うんですけれども、そういう制度で、ダブルトラックで抱えていくのか。それとも、上の上流層というか、うちの上級公務員だけだと思うんですけれども、官民交流の形でどんどんどんどん外に出していって、官と民とセパレートで入り組むような、そういう制度を考えるのか、どっちの制度を仕組むかによって天下りの行方は大きく異なってくる、そういうふうに思っております。

高木(美)委員 大変ありがとうございました。

 私は、定年まで働ける環境をつくるべきと思っております。やはり公務員は国家にとっての大切なリソースですから、先ほど稲継公述人からお話がありましたように、人事行政にかかわる、これが国家の骨格を決め、統治機構を左右するという重要なところであると思っております。そこで、今日のような長い審議時間になっているわけですが、申し上げたような事態に今あるということもお知りいただきたいと思っております。

 定年まで働ける環境をつくるべきということで、例えば年功序列型の給与カーブを是正するとか、また非営利を含めまして出向という形で、退職金は一気通貫にする、しかし、そのような形で持っている高い専門性を活用できるようにする等々、今までも提案をしてきたところでございます。また、その方向に向けましてさらに強く政府に求めてまいりたいと思っております。

 重ねまして、公務員につきましては、先ほど来、全体の奉仕者というお話がございました。まさにその考え方が大事であると思っておりまして、国民に奉仕をする公務員、この考え方を、本来はこの法律の第一条の目的のところであるとか九十六条の服務基準とか、そういうところにしっかりと書き込むべき、私はこういう考え方でおります。

 したがいまして、政治任用職は、これからの国家戦略スタッフであるとか政務調査スタッフとか、そういうところに限定をして、一般職については、事務次官以下、やはり中立性、公正性をしっかりと担保して、あるじがかわってもというお話を先ほどどなたかしてくださっておりましたが、そこで大臣がA、B、C案をつくれと言ったらそれをきっちりとつくりあげる、そしてその上で政治判断として選び取っていく、こういう流れが求められているのではないかと思います。

 さらにもう一つ大事なのは、私も今回、情実人事、恣意的人事の排除ということを強く主張してまいりました。先ほど来、稲継公述人も中野公述人も、そのために第三者機関の関与等々の御提案をいただいたところでございます。

 そこで、これは前田公述人にお伺いしたいのですが、先ほど来、いわゆる幹部一元化といって、ワンボックスに入れ、そしてそれぞれ処遇もこれから異なっていくという状況にあります。しかも、給与等の待遇につきましては、降任じゃなくて転任という扱いになりますので、当然大きな不利益がそこに生じていくという形となります。

 例えば、こういう人事の施行がされる場合に、どのような点に気をつけていけばいいのか。私は、当然のことながら、この第三者機関の関与、適格性審査のあり方にしても、また幹部候補者名簿の作成におきましても、イギリスのように本来は第三者が行うべきではないか、もしくはそれにかわるような強い第三者機関が行うべきではないか、こういう考え方でおります。お考えをお伺いいたします。

前田公述人 これも大変難しい御質問だと思います。

 第三者機関、民間でも実はいろいろな人事委員会を設けたりして外の方の御意見を聞きますが、これはチェック機関として置いております。外の方は逆に情報を持っておりませんし、一緒に働いたことがないわけですから、判断が大変難しいんですね。断片的な情報で客観的な判断をするというのは逆に大変間違った判断になりますので、今回は公務員制度の問題で、恣意的な人事とか情実人事とか、それから転籍するとか、いろいろな身分上の問題があるんですけれども、ここはむしろ立法府で、どういう形にすると本来の目的が達するかという、要するに目的をよく決めてから制度をつくるならつくる、そういうことではないかと思うんです。

 御議論をいろいろお聞きしていますと、情実とか恣意というその言葉自体が大変に刺激的な言葉なんですが、人事は、ある意味では大変主観的な人事、当たり前でございまして、さいころを振って人事をやるわけじゃありませんので、主観的で、目的を持って普通は人事をやりますので、そういう意味では、それ自体は民間でも役所でも同じではないか。

 ただ、それが結果として物すごく変な形になるとまずいということで、それは政治任用するのか、それとも役所の中のいろいろな中で、そこで線を引けばいいのではないか、そう思います。あらかじめいろいろな機関をつくって、こうなる、こういうぐあいにおかしくなるはずだからこうするというのは、もとがおかしいと考える方が普通はいいので、民間でいきますと、普通はおかしくならないようにつくって、最初からおかしくなるような仕組みを逆につくらない方がいいというのが原則でございますので、公務員の場合でもそんなに違いはないんじゃないかというのが私の感じでございます。

高木(美)委員 ありがとうございました。

 恐れ入りますが、同じ質問を稲継公述人また中野公述人にさせていただきたいのですが、先ほど来、情実人事、恣意的人事を排除するためにということで、稲継公述人からは、第三者的存在、第三者機関の関与という御提案もいただきました。

 現実にこれをどう施行するかということについては、当然ここは、もう一つ事務次官その他の幹部職員の位置づけ、役割を明確にしませんと、政治任用型にしていくのか、それとも専門性の高い、そういう内容にしていくのか、また逆に、イギリスみたいに、事務次官に対しては、役割を少し変えながら、マネジメント機能を持たせて効率性をチェックできるようにするとか、いろいろな変遷が、また多様な考え方があると思うのです。

 こうした事務次官その他の幹部職員の位置づけ及び役割について検討するというこの検討項目につきまして、今後の検討のあり方、そしてまたこのお考えを教えていただければと思います。

稲継公述人 御質問、ありがとうございます。

 私は、幹部公務員については、イギリス型を目指すべきだというふうに考えております。アメリカ型の政治任用が多用されているところでは、やはりさまざまな弊害が起きております。

 昨年、デイヴィッド・ルイスという人がアメリカの「大統領任命の政治学」という本を出されて、ハーバード・サイモン賞を受けられました。私、翻訳して日本に紹介いたしましたけれども。そこで描かれているのは、政治任命が進むほど役所の効率が落ちる、そういう統計でございます。また、事例として、例えばハリケーン・カトリーナが起きたときに、連邦危機管理庁の長官が何も指示を出さなかったために非常に多くの死者を出してしまったという、非常に大きな悲劇を出しています。ちなみに、その政治任命職の連邦危機管理庁の長官の前の職はアラブ馬協会の会長だったらしくて、全くの素人を任命しているわけです。

 やはり私は、そういった形ではなくて、専門性を持った者を任命していく、中立性を持って、しかも専門能力の高い人を幹部公務員として任命していくというイギリス型を目指していくべきだというふうに考えております。

 ありがとうございました。

中野公述人 九〇年代以降の行政改革とか政治改革の流れを見てみますと、当然、日本の公務員制度はイギリス型を目指しておる。すなわち、政官分離型、政治は政治の役割を、官僚は官僚の役割を、この場合、官僚の主な役割というのは、政策の執行になってまいります。企画立案はもちろんありますけれども、政策の執行をどううまく効率的にやるか。効率性が非常に重視されますので、アングロサクソンの場合は、一般的に、政治的に人事の中立性が非常に高うございます。

 先ほどの第三者委員会の件に関しましても、イギリスですと、局長なら局長、事務次官なら事務次官で二、三人のショートリストをつくってその中から選ぶ。

 今回の上級職の幹部の任命に際しても、基準をまずはっきりさせる。第三者委員会が関与するとか、あるいは内閣人事局にだれが行くとか、いろいろな議論はありますけれども、どういう基準で能力をはかるのか、これをやはり法律なり政令なりで明確にしないと中立的な人事はできないと思います。

 以上でございます。

高木(美)委員 ありがとうございました。

 お伺いしたいことはまだ多くございますが、時間となってしまいました。

 私は、この公務員制度改革につきましては、今回政府は、これは第一弾である、来年の通常国会にトータルパッケージで出させていただきたい、こうした答弁があるわけでございますが、いずれにしても、そこで大事なのは、議論がどのような過程で、そしてどのような変遷で収束されていくのか、この経緯の透明化は大変大事なことではないかと思っております。国民の皆様が注目する大事な公務員制度改革でもございますし、また今後ともそれをしっかりと求めながら、こちらも注視をしながら頑張ってまいりたいと思っております。

 また引き続き御指導賜りますようお願い申し上げまして、終わらせていただきます。ありがとうございました。

田中委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 きょうは、貴重な意見陳述を賜り、本当にありがとうございます。

 最初に、進藤公述人に何点かお尋ねをいたします。

 陳述の中でも、国民から見た国家公務員制度の批判ということで二点お話しされました。幹部公務員層の特権性の問題についてはよく巷間上るところでありますが、もう一つ、国民生活の向上や福祉増進という観点からの専門性の低さを指摘しておられます。

 その点でお尋ねをしたいのが、この専門性の低さというのが問題となる、そういう具体的な事例でもしお話しいただければと思っております。

 先ほども、薬害のお話ですとか貧困の問題とか地域経済の衰退の問題がありましたけれども、専門性の低さによって生まれる弊害、そういう点についてのお考えをお聞かせいただきたいということと、あわせて、専門性の高い国家公務員幹部人事のあるべき姿ということでイギリスの事例が紹介をされました。参考となることだと思っておりますが、補足としてお話しいただけることがありましたら、その点についてもお願いしたい。

 以上二点について、まずお聞かせください。

進藤公述人 お答えいたします。

 まず、専門性の低さという点でございますけれども、例えば、以前問題になりました薬害エイズのことを考えますと、あの場合は、当時の厚生省の薬剤行政の担当であった課長クラス、係長や課長補佐も含めたクラスが、どの血液製剤にどういう有害性があるかということを判断する能力が低かったということもありまして、まさに医薬品メーカーの主張をほぼうのみにするという形で、重要な場面で重要な決断ができなかった、血液製剤の回収をすることができなかったという点が非常に大きな問題であったと思います。

 あるいは、労働行政に関していいますと、今これだけ失業ですとかワーキングプアということが問題になっている中で、いろいろな議論として、職業安定所、ハローワークの機能の拡大が必要だということが言われております。その場合に、例えば職業紹介、職業案内、それから職業訓練に関する専門的な能力を持った職員というのを今後大幅にふやしていって、失業、貧困問題に対応していく必要があるわけですが、現在の労働行政の中では、専門的な職員の数の少なさということと、今回の年末から年始にかけて東京都が行った公設派遣村を見ましても、職業訓練機能という点で弱点というのが露呈されたわけです。

 そういう点で、国民生活にかかわる点での専門性の低さということが国民の批判を浴びる点になっているのではないかというふうに考えております。

 それでは、専門性をどう高めていったらいいかということでございますが、例えば、今お話に出ていた中で、幹部職員の適格性審査について第三者機関をかませるという稲継公述人の御指摘がありました。私もその点、大賛成でありますけれども、その場合にあっても、最も中立な第三者機関として人事院が既にありますので、これの機能強化をむしろした方がいいと私は考えておりますが、人事院が適格性の審査をするとしましても、例えば、事務次官というのはどういう仕事をするポストなのか、あるいは何々省の局長、何々省の部長というのはどういう専門能力が必要なのかということについて基準を持っていなければ審査ができないわけです。

 では、その基準というのはどう確立したらいいかといいますと、これは具体的に各ポストの職務分析というのをする必要があるわけです。これはイギリスでもアメリカでも、日本がモデルとする先進国どこにおいても、きちんと中央人事機関が職務分析を行いまして、このポストに必要な技能あるいは職務といったものを長年かけていろいろ蓄積をつくって、先ほど例に示しましたように、ある省の会計課長であればこういう技能、こういう資格、こういう職務をするんだということが明確になってくる。そこで、ではこれに合う人を採用しようというふうになってくるわけです。ですので、人事院など中央人事機関において職務分析をきちんとやるということが、専門性を高めていく上で非常に重要だと思います。

 実際、日本でも、今から六十年前、職階法がつくられた当時は、人事院の中に職務分析を担当する職員が二百人以上いまして、懸命になっていろいろな職務の分析をやっていたところです。それがどんどん職員が削減されてしまいまして、現在はもうゼロになっております。したがって、どのポストに必要な専門的能力が何なのかということが余りよくわからないという状況が日本の公務員制度の中にできてしまっている、そこに問題があるというふうに考えております。

 ですので、職務分析ということをきちんと行っていき、どのポストにはどの技能が必要なのかということを明確にする、そういう作業が必要だということは申し上げておきたいと思います。

塩川委員 ありがとうございます。

 もう一点、進藤公述人にお尋ねしたいのが、陳述の最後でお述べいただきました国家公務員総人件費削減のマイナスの影響の問題についての話でございます。

 もともと、よく知られておりますように、日本は諸外国に比べても国家公務員数が少ないということであります。総人件費削減先にありきというあり方でいいのか、現場の公共サービス、例えば国民の生存権を保障するような役割などについても支障を生み出しかねないような事態が広がっているのではないかという懸念を覚えるわけですが、この点について、進藤公述人のお考えをお聞かせいただければと思っております。

進藤公述人 お答えいたします。

 まず、先ほど稲継公述人からも、早期退職の慣行をやめて雇用と年金を接続する、年金の支給年齢の引き上げに見合った形で定年の延長もというお話がありました。その点も私は賛成でございます。

 まず、現在いるスタッフの中で早期退職の仕組みをやめる、天下りというものを減らしていく、定年まで勤める仕組みをつくるということ、これだけでも相当の人件費が膨らむわけです。この点については試算も出されているようですけれども、その点が一つあります。

 天下り問題ということを考えても、定年まで勤めるという仕組みをつくることは必要でありまして、これは日本がモデルとしている諸外国の例においても、定年まで勤める公務員制度というのが当たり前の制度になっておりまして、それ以前に早くやめる人が大量に出るという仕組みはほぼ日本だけであろうかと思います。

 そして、定年で退職した後も、天下りをせずに年金生活でそれなりに暮らしていくことができるというためにも、年金制度の充実も必要であります。その点でも人件費がふえるということは避けられないかと思います。

 そればかりではありませんで、国民生活に必要な分野において、いろいろな職種がありますけれども、きちんと国家公務員を手当てしていくということが必要でございます。

 例えば、最近は大型台風などで気候変動等が出ていて、気象観測というのが非常に重要になっておりますけれども、ここでも職員の削減が起こっていて、そうすると、具体的に、どこでどのような天候の変動が起こっているのかということがにわかにはわからないというようなことで、これがかえって災害を拡大するというようなことも起こっております。

 ですから、先ほど指摘しました労働行政につきましても、今後、終身雇用というのが崩れてきますと、公的な職業訓練機能ですとか職業紹介機能は抜本的に拡充していかなければいけません。その分野で国家公務員をふやすということは、むしろ必要になってくるというふうに考えます。そういうふうに考えていきますと、ある部分ではふやしていかざるを得ないというのが出てくるということです。

 この点、前田公述人が言われましたように、行政改革というのは不断に行うべきものでありまして、必要がなくなった職は減らすけれども、国民生活の状況から見て必要な職はむしろふやしていくという形で、前向きの行政改革をどんどんやっていくということが必要であろうかと思います。

 その際に、人件費削減という枠で考えるのではなくて、国民生活という点から見て必要な手当てはしていく、そういう発想こそが必要ではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

塩川委員 ありがとうございます。

 次に、天下りの問題につきまして、中野公述人にお伺いしたいと思っております。

 中野公述人の本で、新書で「「天下り」とは何か」とかございまして、私も拝見して、特に各省の天下りの特徴について書いてあるところがなかなかおもしろかったわけですが、お聞きしたいのは防衛省・自衛隊の天下りのところなんです。

 財務省については天下りのチャンピオンとか、経済産業省は仁義なきプラグマチストとか、表題がなかなか振るっているなと思って拝見したわけです。ほかの役所に口を出す経産省はインベーダーだとかというふうに書いてあって、最近は地域主権を看板に総務省がそうなんじゃないかというふうにも言われておりますけれども。

 防衛省・自衛隊の天下りの特徴ということで、中野公述人がお感じになっていることがございましたら、お聞かせいただけないでしょうか。

中野公述人 防衛省に限定してでございますか。(塩川委員「はい」と呼ぶ)

 防衛省の天下りの特徴は、非常にマニアックな分析になりますと、事務次官は各省からいろいろ出向していますので、意外と特定の産業とか特定の非営利法人との結びつきは少ない。むしろ、財務出身の事務次官であれば財務省関連の非営利法人に天下る、あるいは警察出身であれば警察庁の非営利法人に天下る、こういうのが一般的でございます。下部になりますと、やはり防衛産業との関連が非常に深いというのが主な特徴だと思います。

 それに対して、一般的に見てみますと、国土交通省とか厚生労働省とかほかの役所に比べますと、非営利法人の植民地的支配はそれほどひどいものではないのではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

塩川委員 防衛省・自衛隊、特に制服組の自衛官におきましては、契約を背景とした天下りの押しつけがあるんじゃないのかというのが、過去の一連の事件でも問題となっております。

 そこで、この点について皆さんに短くでもコメントいただければと思うんですけれども、防衛省・自衛隊で、この間十数年、不祥事が相次ぎました。調達実施本部、調本の事件ですとか、あるいは四年ほど前の防衛施設庁の談合事件もそうですし、ことしにおきましては航空自衛隊の官製談合事件もございました。いずれも、契約を背景とした天下りを担保する。例えば、一人の自衛官の天下りがあるときには年間六億円の仕事がついてくる、こういうことなども防衛省の報告書でも明らかにされているところであります。

 その点で、今回、事前規制から行為規制へと切りかえる。一般職で行われた天下り、再就職規制への転換を自衛隊にも適用するわけですけれども、その際に、私は、本来、事前規制をしっかりやって行為規制も強めればと考えておりますが、少なくとも、行為規制に切りかえるのであれば、監視機関がしっかりしなければならぬ。

 そのときに、現行のスキームでいえば、一般職、防衛省の方の六十歳以上定年の人は対象になるわけですけれども、監視機関とすれば、再就職等監視・適正化委員会がその監視機能を担う。これは独立した中立公正な第三者機関というのをうたっているわけです。事務局体制が本当にそれに伴うものなのかという懸念は覚えるわけですけれども、一応形として独立した第三者機関なんですが、特に若年定年隊員の場合については、幹部クラス、一佐クラスであっても、実際には防衛省内の審議会が監視機能を果たすという形になっているわけですね。つまり、身内の機関ということは防衛省自身も認めているところなわけです。これはいかがかと率直に思っているわけです。

 行為規制という形をとるのであれば、しっかりとした事後チェックの監視機関が必要だ。それが、自衛隊にかかわって言えば、若年定年制隊員ということを理由に身内の監視機関となっている。これは、この間の一連の不祥事を考えても、妥当ではないのではないかということを申し上げているわけですが、その点について、公述人の皆さんから一言ずつお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

前田公述人 ただいまの御質問ですけれども、私、防衛省のいろいろな問題の実態をよく存じ上げておりませんので、大変恐縮ですが、コメントを申し上げる能力がございません。

屋山公述人 日本の場合は武器禁輸三原則というのがありまして、要するに、武器のコストがえらく高くついている、そこが問題なんだろうと思うんですね。それをもとに、高くついている分を元を取ろうと思ったら、やはり防衛省から注文を受ける、それしかない。

 私、昔、スイスの国会で、ビアフラのゲリラと政府軍と両方にスイスの武器を売っているというのが追及されたときに、国防大臣が、武器を輸出しないと、べらぼうに高い武器について、我が武装中立は守れないんだというようなことを言ったのを聞きまして、日本みたいに武器禁輸三原則というようなことをやっている場合は、武器の値段はべらぼうに高くつくんだろうなと。

 ですから、メーカーの方も、防衛省にうんと買ってもらうためには、そういう人間を引き取って相対で買ってもらうというふうないびつな形が進行するんじゃないか、これは私の想像でありますけれども、それしかないんだろうというふうに思います。

稲継公述人 御質問の件でございますけれども、背広組並びに陸将、陸将補といった将官クラスの一般定年隊員については、今度新しくできる再就職等監視・適正化委員会で府省横断的になされるということで、それで適正化を図っていただきたいと思うのですけれども、いわゆる若年定年等隊員、一等陸佐以下の若年定年等隊員について、今までと同じような勧奨、しかもあっせんを伴うということを防衛省の中だけで身内で監視するということについては、私は若干の危惧を持っております。

 と申しますのは、二十年度の数字を見ますと、若年定年退職で退職者数が四千七百人、うち援護希望者が三千五百人、そのうち九七%が就職はうまくはまっているんですね。しかも、いわゆる二十歳代の若い人が任期つきで採用されてやめるときに、大型トラックの免許を取ってそういうところに就職するということだけではなくて、いわゆる軍需産業にあっせんされていることも多くあるわけです。ですから、若年隊員だからといって、あっせんを省の中だけで見るということにすると、非常に甘い見方になってしまうのではないかと思います。

 そこで、この若年定年等隊員についても、やはり第三者機関、防衛省から独立した第三者機関がこれをしっかり監視するような、そういう仕組みをつくられてはいかがかなというふうに思います。

中野公述人 事後規制それから行為規制については、安倍内閣以降で初めての取り組みですので、今後どうなるのか、その運用はやはり注目されるところでございまして、御指摘のように厳格な運用にしなければいけない、これはそうだと思います。

 自衛官の若年者に関しましては、一般の職業紹介とは別に再就職支援を行ってきたという経緯もありますし、そういった意味では、再就職の特殊性というのもあると思います。ただ、アメリカでも、やはり産官複合体みたいなものが、ペンタゴンと軍需産業との関連性とかこういうのがずっと言われていますので、御指摘のように、第三者的な目も入れて行為規制もしていかなきゃいけない、そう思っております。

 以上でございます。

進藤公述人 私も今、稲継公述人、中野公述人と同じように、行為規制であるとしても、防衛省の若年定年退職についても、防衛省内ではなくて、防衛省外の中立の機関による審査が必要であるというふうに考えております。

 さかのぼって考えますと、やはりこの問題は、官と民の癒着をなくすということこそが非常に重要でありますので、原則としては、事前規制という制度に戻して、人事院などの承認制にするということが大事かと思います。

 この問題は、例えば、防衛省・自衛隊の中で調達とか契約の専門家がいたとしたときに、その人たちは、契約や調達の専門性というのを生かした形で、なおかつ、いわゆる軍需産業ではないところに就職できる道を開くということが考えられるわけですので、軍需産業との官民癒着を防止しながら契約等々の専門性を生かした形での再就職を探る、その点でも職務の明確化をきちんとしていくということが、結果的には再就職を円滑にすることができるのではないかというふうに考えております。

 以上です。

塩川委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

田中委員長 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一と申します。

 きょうは、公述人の皆様、大変お忙しい中お越しいただいて、また貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。

 まず最初に、屋山公述人にお尋ねをしたいと思います。

 我が党の渡辺喜美代表が行革担当大臣時代にさまざまな形で公務員制度改革を推進していただいた屋山太郎先生におかれましては、これまでの経緯をよく御存じだと思いますが、特に労働基本権の拡大について御意見を承りたいと思います。

屋山公述人 今度の案では労働基本権にはさわらないということですけれども、さわらないと言って二十年ぐらいたっているんですよね。今また三年以内にけりをつけるというようなことを言っていますけれども、何十年も同じせりふで、けりをつけないということですけれども、やはり今の日本の公務員制度、つまり、スト権を禁止して人事院を設置して、それがスト権禁止の代償機能であるというのは、ILOの結社の自由委員会が五十年ぐらい前にそういうことを言って、今は、そんなことはやめなさい、こう言われているわけです。やめなさいと言われて二十年ぐらいたっているんですよ。

 ですから、私は、ここはまず最初に、幹部人事の信賞必罰というか、給与問題に手をつけて、それを、基本法によるとたしか三年だと思いますが、三年の間に一般の労働協約権を与えるということになっていますけれども、渡辺大臣はもともと、スト権も全部外したらどうだと。スト権から労働協約権から組合結成権、全部外すとまさに民間並みになるので、民間並みの賃金体系をそこに持ち込むということができるので、私はそれは必要だ。

 それからもう一つ、昔、国鉄の民営化をやったときに、いろいろな財界の方から意見を聞いたんですけれども、どうしても国鉄は分割しろ、これは日本郵船のたしか菊地さんという社長か会長の意見ですけれども、分割すると、例えば苫小牧の港の社員の給料が北海道の給料になる、それをやらないと、東京の給料が苫小牧の給料になっちゃうんだ、ですから、非常に効率が悪い。

 私は、これから地域主権とか地方分権とか言っていますけれども、そういう場合に、スト権から何から全部外して、地方でやりなさい、地域ごとにやりなさい、そういうことは人件費の問題に非常にかかわってくる。

 この前、鳥取に行ったんですけれども、鳥取の一級の家具屋さん、要するに、県庁の役人よりも三割低いというんですね。それは鳥取で一番いい産業なのに、三割高ければみんな県庁に行っちゃう、あるいはブロック機関に勤めるということで、私は、やはり労働基本権を、究極的にはスト権も含めて全部外すのがいい考え方だな。

 渡辺喜美大臣も実はそういうふうに考えていらしたんですけれども、それを言うと何かまとまらないというので遠慮していらした面もありますが、考え方は私は正しいと思うんですね。全部外すということをぜひやっていただきたいというふうに思います。

山内委員 ありがとうございます。

 渡辺喜美さんも、大臣じゃなくなって、最近、遠慮なく言うようになっておりますが。

 今の人事院の件に関して、改めて、屋山公述人にもう一度お尋ねします。

 公務員の公正中立性の見地から人事院を強化すべきという考え方があります。この考えについてどうお考えでしょうか。

屋山公述人 何か、日本で公務員が公正中立だ、そういう常識があるんですけれども、別にそうとは限らないと思うんですね。例えば、農林省の現職の次官が民主党の政策を選挙戦中に批判していたわけですから、それでも首にならないというのは、日本というのはいい国だと思いましたけれども、要するに、公務員が公正中立であるというのは神話なんですね。

 ですから、私は、今やっている内閣人事局に官房副長官を一人充てて、それでやる。これは、おかしな人ならみんなにおかしいと言われるので、別に政治家だからこれが必ず不公平であるとか、よほどおかしな人を持ってくればその党が恥をかくわけなので、公務員が公正中立で、政治家がどうしても政治任用でひん曲げるという常識はちょっとおかしいんじゃないかな。そんな話は日本でしか聞かないですね。

 以上です。

山内委員 今の公務員が公正中立とは限らないという事例、大変興味深く感じました。

 屋山公述人は多分覚えていらっしゃると思いますが、公務員制度改革をつぶしにかかった官僚の代表格、公務員制度改革つぶしの司令塔と言える人が、当時の官房副長官補だった坂さんであります。きょうの委員会、午後、参考人として自民党の平井委員が要求されているようでありますが、明らかに、政治的に中立という観点からはいかがなものかなという行為が目立ったように感じます。

 私も当時、自民党の議員でありましたので、自民党の部会に出てくる坂さんはよくお見かけしました。敵ながらあっぱれというぐらい優秀な方で、会館をめぐっては族議員の根回しをし、結局、その結果として、先ほど、自民党の三分の一しか公務員制度改革に賛成じゃなかったとおっしゃいました。その数字は全く正しいと思います。その背景にあったのが坂官房副長官補、当時ですけれども、そういう官僚の存在だと思います。

 そういう方が今、日本郵政の副社長に天下っている。この状況について、屋山公述人はどうお考えでしょうか。

屋山公述人 今、民主党の支持率がやたらに、五〇%ぐらい下がっている。なぜ下がっているかというと、やはり約束したことを守らないんですよね。天下り根絶と言ったその日に、次の日ぐらいに、齋藤次郎さんを日本郵政の社長にして、坂さんを副社長に持ってくる。私がもし鳩山さんだったら、これが亀井さんの要求であれ何であれ、とにかくそういう、看板にいきなり泥を塗るようなことは許さない、絶対だめだということを言わないと、政権をとったその日に大看板に泥を塗っちゃった、そういうことですから、あの信用の失墜というのはでかいと思うんですよね。ですから、私は、十四年間民間にいたからとか、そういう話じゃないと思うんですね。看板に泥を塗ったか塗らないかという話なので。それを一つやったものですから、どんどんどんどん、それに比べればこの方がましだというのが幾らでも出てくるわけですよね。

 ですから、今ちっとも現状が、昔と変わっているという認識がありませんね。ほとんど昔のままにやっているなと。ただ、押しつけじゃないとか、あるいは省庁が、公式にはやっていない、私は知らない、向こうが勝手に引っ張ったと。これは昔も同じせりふだったんですね。ですから、これは民主党だけに限らず、政治家全体に対して国民が非常に失望している大きなもとだというふうに思います。

山内委員 ありがとうございました。

 続きまして、民間企業の経営者のお立場から、前田公述人にお尋ねをしたいと思います。

 我々の提出した法案には、事務次官の廃止という項目があります。本当は、自民党案には事務次官廃止という項目はなかったんですけれども、我々みんなの党の主張を自民党と協議した結果、のんでもらいまして、事務次官廃止ということを項目に入れました。

 そもそも、政治主導というのであればやはり政務三役、今、民主党政権になってから、政務三役、大変御活躍いただいています。しかも、事務次官会議もなくなりました、事務次官の定例会見もなくなりました。そういった意味で、事務次官がやるべき仕事というのがそもそもなくなっているし、大体、事務方のトップなんというものが必要あるんだろうか。もしそういう取りまとめ、企業でいうと総務部長みたいなことが必要であれば、大臣官房があって官房長がいるわけですから、別に事務次官なんというものは必要ないんだと思いますね。

 民間の感覚からいって、これまで事務次官という人がいて、しかもその事務次官があたかも省内のトップであるかのように振る舞ってきた、そのことが、これまで政治主導を実現できない要因の一つであったと思います。この事務次官廃止ということについて、企業経営者のお立場からコメントをいただきたいと思います。

前田公述人 これもまた大変難しい質問でございまして、民間で、事務方のトップというような立場のポストはございません。そういう意味では、役所の中で、過去、いろいろ工夫してこういう形になったんだと思うんです。

 ただ、今回法案が、与党と、それから皆さんが出されているのと両方あるんですけれども、まとめて、その役割をバンドの中に入れてやろうとか、もとから次官を外す、やめちゃおうとか、これはどちらでも、国会でお決めになればいいんです。次官は何をする仕事かとかそういうのを先に決めるのが普通でして、仕事がないはずだからやめるとかそういう議論をしちゃいますと、では、仕事はなくすようにしようと思えば、実は民間では、権限を下に下げれば、どんどん上は仕事はなくなるんです、幾らでも下げられますので。

 ですから、そこはちょっと、そういう余り部分的な議論をされない方がいいのではないか。大きな組織として、要するに、その事務というか役所を代表するような人が要るのか要らないのかというか、そっちから決めた方がいいのではないでしょうか。それで、政務三役、政の方で全部責任をとるのであれば、それはそれでいいんだと思うんです、決め方だと思いますので。ちょっと、そこの部分をあいまいにして決めてしまいますと、かえっておかしくなるのではないか。

 私ども民間から見ますと、従来であると、事務次官という立場の方がおられましたし、そういう方がどういう仕事をしていたかもよく知っていますし、そういう意味では、それなりに機能はちゃんとしていたと思うんです。ただ、逆に弊害があったとすれば、あったのかもしれません。それも、ちょっと実態の弊害はわからないので、そこも見た上で。

 きょうはいろいろな意見を聞きましたけれども、俸給の問題を、バンドの中に入れるためにまとめてやるとか、これも、そこだけを部分的にいじりますと結構大変なんですよね。だから、全体をどうするかという中で部分をいじるという必要があると思います。

 そういう意味では、抜本改革案を出すということでございますので、その中で当然、全体の位置づけも見るんだと思います。そこで判断された方が、パーツだけちょっととってやるというのは結構難しいんだと、私は率直にそう思います。

山内委員 では、同じ質問をもう一度、屋山公述人にもお願いしたいと思います。事務次官廃止について。

屋山公述人 今まで事務次官がやっていた仕事を政務三役がやる、私は、それのおかげで政治に物すごいスピードが出た。ただ、連携がないものだからばらばらになって問題がありますけれども、しかし、一つの省のスピードという意味では物すごく効率がいい。

 例えば、私、ジュネーブでWTOの交渉をやっていたんですけれども、閣僚会議があって、先進国だけで決めるというときに、日本だけ決まらないんですね。日本だけ保留。何度も恥をかきましたけれども。何で保留なのかと調べてみると、役所のオーケーがとれないと。一つの役所のオーケーがとれないと事務次官会議にかかってこないし、閣議にもかかってこない。その役人はだれなんだというと、課長ぐらいなんですよね。私、課長がノーと言えば局長がやればいいと思うんですが、役所はそういうふうにならないんですね。

 ですから、今度の、政務三役会議で全部決める、それから、事業仕分けを見ていても、私も十年ぐらいつき合ったことがあるんですけれども、あれは要するに政治判断なんですよね。常識でこの事業は要るのか要らないのか、最後はそこに行かないと、理屈を聞いていると半年ぐらいたっちゃうんですよ。ですから、そういう意味で、私は、政務三役で全部決めるというのは画期的なことだった。

 それを思うと、事務のトップというのは実際に要るのか。つまり、トップが政務三役でやっているわけですから、それとほかに並び立って役職で要るのかなと思いますね。仙谷さんが言われたときは全くそのとおりだと思ったが、どういうわけだか途中で消えてなくなったんですけれども、政務三役がいて、その下に局長がいるという姿でどこか問題があるのかなというふうに思います。

山内委員 では、天下りの規制について、中野公述人にお尋ねをしたいと思います。

 どちらかというと、天下りというと、天下りの人の給料が高いとか、天下りによって無駄な契約になっているとか、そういう議論が多いんですけれども、私は、実は、天下りを受け入れる側の団体で働いていたことがありまして、その団体に最初からいるプロパーの職員からしてみると、自分たちがどんなに頑張ってもトップには役所の天下りがやってくるというと、そんなに士気が上がるわけがないと思うんですね。天下りの弊害というのは、単に給与が高いというだけではなくて、組織のマネジメントとかガバナンスとか、天下られる側の団体にとってのデメリットとかいうものも大きいと思うんですね。

 実は私、某独法の職員であったころは、労働組合に入って、天下り反対とかいって闘争をやっていた方でして、天下りを根絶しなきゃいけないという強い思いをそういう観点から持っているんです。中野公述人の本の中には、天下りを余り事前規制でがちがちに規制するのは、職業選択の自由の観点、あるいは人権の観点から問題があるんじゃないかというような記述がちょっと出てくるように思うんですけれども、その点について、どうお考えでしょうか。

中野公述人 天下りの規制スキームにつきましては、安倍内閣で事前規制から事後規制に抜本的に切りかえたと思っております。

 私は、事前規制には余り賛成ではございませんし、基本的に事後規制で、行為規制で自由にやればいい。ただし、天下って癒着とか社会的コストが大きくなれば、それは十分罰すればいい、そういう考え方でございます。

山内委員 時間が参りましたので、以上で終了させていただきます。ありがとうございました。

田中委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)

 これにて公聴会は終了いたしました。

 午後一時から委員会を開会することとし、公聴会は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十三分散会


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