第7号 平成20年2月26日(火曜日)
平成二十年二月二十六日(火曜日)午前九時一分開議
出席委員
委員長 渡辺 博道君
理事 石田 真敏君 理事 今井 宏君
理事 馳 浩君 理事 林田 彪君
理事 山口 俊一君 理事 黄川田 徹君
理事 原口 一博君 理事 桝屋 敬悟君
秋葉 賢也君 井澤 京子君
飯島 夕雁君 石崎 岳君
稲田 朋美君 岡本 芳郎君
鍵田忠兵衛君 川崎 二郎君
木挽 司君 実川 幸夫君
関 芳弘君 田中 良生君
土屋 正忠君 土井 亨君
葉梨 康弘君 萩生田光一君
萩原 誠司君 橋本 岳君
古屋 圭司君 松本 文明君
山内 康一君 小川 淳也君
逢坂 誠二君 玄葉光一郎君
田嶋 要君 寺田 学君
福田 昭夫君 森本 哲生君
谷口 和史君 塩川 鉄也君
重野 安正君 亀井 久興君
…………………………………
総務大臣 増田 寛也君
総務副大臣 谷口 隆義君
総務大臣政務官 秋葉 賢也君
総務大臣政務官 岡本 芳郎君
政府参考人
(総務省大臣官房技術総括審議官) 松本 正夫君
政府参考人
(総務省自治財政局長) 久保 信保君
政府参考人
(総務省自治税務局長) 河野 栄君
政府参考人
(総務省政策統括官) 中田 睦君
参考人
(熊本県知事) 潮谷 義子君
参考人
(法政大学法学部教授) 五十嵐敬喜君
参考人
(中央大学総合政策学部学部長・教授) 横山 彰君
参考人
(日本自治体労働組合総連合副中央執行委員長) 田中 章史君
総務委員会専門員 太田 和宏君
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委員の異動
二月二十六日
辞任 補欠選任
田中 良生君 飯島 夕雁君
萩原 誠司君 山内 康一君
同日
辞任 補欠選任
飯島 夕雁君 田中 良生君
山内 康一君 萩原 誠司君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)
地方法人特別税等に関する暫定措置法案(内閣提出第六号)
地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)
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○渡辺委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、地方税法等の一部を改正する法律案、地方法人特別税等に関する暫定措置法案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
各案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房技術総括審議官松本正夫君、自治財政局長久保信保君、自治税務局長河野栄君及び政策統括官中田睦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○渡辺委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森本哲生君。
○森本委員 皆さん、おはようございます。きょうは、国土交通委員会の方でも質疑がありますので、御配慮いただきましてありがとうございます。
先週二十二日の委員会、大臣とのやりとりの中で、質疑の中で、もう一度確認をさせていただきたいことがございますので、よろしくお願いをいたします。
これは、非課税等の特別措置の決定プロセスが不透明ではないか、自民党あるいは与党税制調査会ですべてが決まってしまい、総務省はそれをそのまま認めているだけではないか、地方の声は的確に反映されているのかなどといった点について、大臣に確認をさせていただきました。大臣は、きちんと総務省の意見は反映されており、地方の意見も今後よりよく反映されるような仕組みを検討しますと御答弁をされましたので、そのことについては私も了解をいたしましたと述べさせていただきました。
それはそれで、今の制度、税制をめぐる政策決定、つまり政府と与党とのすみ分け関係を前提とした上で、過去の経緯からもそうなっているものと思うのですが、では、果たして今後あるべき税制決定の仕組みとは何かを考えた場合に、それでいいのか疑問を持つわけであります。
政府税調で大枠や中長期的なことを決めて、細かなことをすべて自民党税調で決める、この二元的な仕組みについて、大臣は望ましいと思っておられますか。
○増田国務大臣 この決定のプロセスですけれども、やはり政府として、政府税調という組織、これで大枠の方向を決める、これは間違いないところだと思うのですが、問題は、与党の税調というものが今まで果たしてきた機能と、それから、今のようにいわゆる衆参がねじれているような状況の中で、こうしたことを今後どのように考えていったらいいのか、こういうことは確かにあろうかと思います。
一方で、議院内閣制で、政府・与党一体となってさまざまな政策を進めていくということでありますので、与党の税調というものがあって、そこで御審議をしていただく中でいろいろと政府の案の内容についてそこと調整をするという仕組み自体は、今後もこれを取りやめるということはやはり考えづらくて、そこはそこで、個々具体のものについて総務省としての意見をしっかりと申し述べながら、政府税調それから与党の税調と同時並行的に調整をする。それからあと、総務省としての各省との調整をいろいろ並行していく。このプロセスは、今後もそういうプロセスを経るということを変えることはなかなかやはり考えにくいと思っております。
ただ、そういう中で、総務省として幅広くさまざまな意見を取り入れて柔軟な案をつくる、そして、それを今申し上げましたようなプロセスの中にしっかりと反映させていくということ、今後もその過程の中で、いろいろな、非課税措置などについてもどういう効果があるのか、どういう利益が国全体としてもたらされるのかといったようなことをよく考えていきたいというふうに思っております。
○森本委員 大臣も今議院内閣制のことに触れられたわけでありますが、税制についても内閣の主導で決定していくべきではないかというふうに私は考えます。
ただ、これは、必ずしも今の政府税調のもとでということではなくて、個々の利害調整を含めて内閣で責任を持って決定していく何らかの仕組みを構築すべきではないか。例えば、経済財政諮問会議の運営について、この諮問会議の下に傘下として置くとか、経済財政諮問会議が現在うまく機能しているかどうかということはともかく、内閣で決定していく仕組みがあるわけですから、税制についてもそうした仕組みをぜひつくっていくべきではないか。
過去には政府税調でこうしたものはほとんどが取り上げられてやられておった。しかし、一九八九年の消費税論議ぐらいから与党の税調が力を持ってきた、過去の経緯を調べてみるとそうしたことでございますが、今大臣もこれをやめることは難しいということを言われましたが、それであるならば、今申し上げたような考え方はいかがでございますか。
○増田国務大臣 今、確かに政府税調は大変大枠の議論をしている。これは、政府税調、また財務省と総務省、それぞれが関係をしておりますので、総務省の方だけの考え方というわけにいきませんけれども、今現在議論されている政府税調が非常に大枠の議論ということになっていますが、もう少し各論のことについても政府税調の中で議論をするですとか、それから、その中で今後の方向性についての議論もより丁寧に緻密にやっていくですとか、そういう議論のあり方というのは今後も一つの考え方としてあり得るのではないか。
経済財政諮問会議がもし仮にうまく機能していて、そこでということももちろんあり得るわけですけれども、今、税の関係は政府税調でということに政府としてもなっていますので、その中でどういう細かな議論まで可能なのかどうか。今委員からお話ございましたとおり、以前はそういった議論なども行っていた時期もあるようでございますし、そのあたりについては、今の委員の御指摘なども考え合わせて、これからの、今の国会のこういう状況も踏まえて、あるいはお話ございましたとおり、政府での議論のリーダーシップというような意味でも考え得るのではないか。
財務省との関係もございますので、断定的に申し上げるわけにいきませんが、その点については、御指摘がどういうふうに実現できるかどうか考えてみる余地はあるというふうに思っております。
○森本委員 これは大臣、うがった見方をすれば、これまでは通っていったと思うんですが、やはり利権とかそういった絡みの中で動いていくんだというふうに思われても仕方のないような現実がそこにもある。ですから、国会の方がこれまでとは形も変わってきた、その中で新しいこうした考え方を考えて検討をいただく、そのことを申し上げて、次の質問に移らせていただきます。
地方の法人特別税制等に関する暫定措置法案についてお聞きをさせていただきます。
本法案は、税制の抜本的な改革において偏在性の小さい地方税体系の構築が行われるまでの間の措置として、法人事業税の税率の引き下げを行うとともに、地方法人特別税を創設し、その収入額に相当する額を地方法人特別譲与税として都道府県に譲与するためのものとされております。
さて、今回創設されます地方法人特別税ですが、その額が二・六兆円規模ということですが、この二・六兆円がどういった根拠で出されてきたかといいますと、ちょうど消費税の一%に相当する金額であると聞いておるわけであります。確認ですが、そういう認識でよろしいのですね。
○増田国務大臣 委員お話しのとおりでございまして、今後の地方税制の改正の方向が消費税の充実ということでございまして、ちょうどその一%相当分ということを念頭に置いて今回の仕組みとしたものでございます。
○森本委員 それでは、大臣、一%にされた理由を聞かせていただけませんか。
○増田国務大臣 当初、私どもは、法人事業税が大分景気等に左右され、変動する税制でございますし、また地域間の偏在性も高いということでございましたので、この法人事業税と消費税とを税源交換して、地方税の方を消費税中心の、ですから地方消費税中心の税体系にしていきたい、こういう考え方がございまして、その税源交換のうち、消費税一%相当分、まさに二・六兆円分でございますが、それを交換して、偏在是正効果が生じる、こういうことを念頭に全体の制度を構築していこう、こういう考え方がございました。
そういう考え方が念頭にございましたので、ちょうど、まさに消費税全体で五%のうち、もう既に一%分が地方分でございますので、四%のうち一%分について、可能であれば税源交換をする、こういうことで考えていたところでございます。
○森本委員 なぜこのような質問をさせていただいたかといいますと、これが、二・六兆円が二兆になったり三兆円になったり、政府の都合でふえたり減ったりする可能性があるのではないかという疑問が私には少しあります。この二・六兆円というのは約束として今後維持されていくということでよろしいですか。
○増田国務大臣 これについては、根っこが法人事業税でございますので景気に変動される、こういうことでございますので、二・六兆というその数字自体は今後変わり得るものでございます。その二・六兆というロット、規模がそのままずっと維持されるというよりは、全体の消費税の一%相当分程度の規模のものが今後も地方の方に配分される、こういう考え方でございます。
○森本委員 そうすると、例えば二兆とか三兆とかいう大きな動きはないけれども、二・六の前後で少し動く可能性はあるという解釈でよろしいですね。
○増田国務大臣 大体二・六兆の前後ぐらいで変動していくものであろうと思います。余り大きな動きはないと思いますが、年間によってそれは当然動き得るものでございます。
○森本委員 それでは、当初、法人事業税を国税にする、つまり、いわゆる税源交換を総務省は求めておられたというふうに記憶しておるんですが、そのような認識でよかったんですね。先ほども言われました。
であるならば、財務省との折衝の中で、どうして今回のような形で大臣は納得されたのか、お聞かせください。
○増田国務大臣 今回、偏在是正を私ども問題にしておりましたので、安定的な地方税体系を構築したいということで、税源交換ということを基本に検討を行った、こういうことでございます。
一方で、その際に、消費税、すなわち地方に一%分多くするという地方消費税のことをこちらの方で議論したところ、やはり消費税を含む税体系の抜本的な改革は今後の課題ということになりました。これは、いろいろと中で議論があるわけでございますが、まだ議論が煮詰まっておりませんけれども、いろいろな社会保障の財源としての消費税の問題ですとかさまざまな議論がある中で、まだもう少し慎重な検討、議論が必要だろうということがございまして、これはまさに税体系の抜本的な改革に触れるものでございますので、これについてはもう少し議論を尽くそうということになりまして、この税源交換の半分の部分が実現をできない、こういうことになりました。
そこで、税源交換を行った場合と同等の偏在是正効果が生じる暫定措置が何かということで、今回の一部法人事業税を半分ほど国税化しつつ、実質、地方税と同じような形で考えていく、こういうものを、繰り返しになりますが、暫定措置、暫定的な法体系ということで考えまして、それで実現を図った、こういうことでございます。
○森本委員 大臣、不本意ではあるが暫定としてやむなし、そのように受けとめさせていただいてよろしいですね。
それでは、今、偏在の問題が出てきました。今回の暫定措置と地方消費税と地方法人二税との税源交換の比較について少しお聞きします。
総務省さんがつくられた、両者を比較しておりますイメージ図がありますね。両者の偏在是正効果はほぼ同等となっています。ただ、よく見ますと、地方消費税の場合の清算基準は人口、従業者数、小売年間販売額等の基準で清算するとあり、一方、地方法人特別譲与税の場合は人口、従業者数で清算するとあります。小売年間販売額等の基準が入っているか否かが違いになっているわけでありますが、この違いが一体どの程度なのか。総務省としては、ほぼ同等というのではなく、きちんと各都道府県別に影響額を試算されたのか、そのこともお聞きします。
○河野政府参考人 お答えをいたします。
今お話ございましたように、地方消費税の清算基準といたしましては、四分の三の部分につきまして、小売売り上げ等の消費に関連する指標を用いております。また、残りの四分の一につきまして、その半分に人口、そして残りの半分に従業者数を用いているところでございますけれども、地方消費税全体の都道府県別のシェア、これは人口及び従業者数の部分のシェアと大体近似値になっております。
今回の地方法人特別譲与税の譲与基準は、人口と従業者数、地方消費税の清算基準四分の一で使っている部分を用いているわけでありますけれども、先ほど申し上げましたように、この四分の一の部分と地方消費税全体のシェアはほぼ近似でございますので、今回の暫定措置によります都道府県の影響は、消費税と法人事業税の税源交換を行った場合とほぼ近似の値となっているところでございます。
○森本委員 これは、小売年間販売額等の基準といったような経済活動を反映している方が税の偏在度が高くなるように思うんですけれども、そうではないですか。もう一度。
○河野政府参考人 少し数字でお答え申し上げた方がわかりやすいかと思うのですけれども、地方消費税全体のシェア、大きい団体で例示して申し上げますと、例えば東京都の場合は、地方消費税額の全国シェアが一三・六%ございます。これに対して、人口、従業者数のシェア、半々でやった場合のシェアですけれども、一二・三%ぐらい。愛知県でございますと、地方消費税のシェア、それから人口、従業者数、半々の場合のシェア、いずれも六・〇五%で同じでございます。それから大阪府で申し上げますと、地方消費税のシェアが七・三%に対しまして、人口、従業者数のシェアが七・二五%と、ほぼ近似になっているところでございまして、ほかの団体でもほぼ近似の数字になっているところでございます。
○森本委員 先ほどの質問の繰り返しになりますが、税源交換と今回の暫定措置の偏在是正効果がほぼ同等であるならば、大臣、正面から税源交換をやられたらよかったと思うんですけれども、そうはいかないんですか。
○河野政府参考人 先ほど大臣から既にお答えあったところでございますけれども、私どもは、税収が安定的であって、かつ偏在性の少ない地方税体系をつくっていく、こういう観点から、税源交換ということを基本に検討したわけでございますけれども、先ほど大臣からお答え申し上げておりますとおり、消費税を含む税体系の抜本的改革、これが今後の課題となった中で、地方消費税を充実するということが今回の制度改正の中で実現できませんでしたので、そういう中で、地方税体系の改革の基本方向を踏まえて、当初目指した方向と同じような偏在是正効果が生ずる暫定措置を講じさせていただいているところでございます。
○森本委員 苦しい答弁ですけれども、大臣、どうですか。くどいですけれども、これは大臣に聞いているんですから。
○増田国務大臣 やはり今後の大きな方向として、我々としては地方消費税を充実させたい、こういう大きな考え方がありまして、それは地域的にも偏在性が少ないですし、それから安定性がある。
御案内のとおり、東京都でさえ平成十二、十三年ごろは法人事業税が大分そのころ落ち込みまして、そして財源不足にもう翌年は陥るかという、たしか三千億ぐらいしか財源的に余裕がないぐらい落ち込んだ。そういう意味で、極めて不安定性が高い。今は税収が回復してきて、そこの部分については大変好調なわけですけれども、つい七、八年前まではそれだけの大きな振れがあったということがありましたので、ましてや、それ以外の地方団体も含めて、消費税、すなわち地方消費税が中心な税体系を構築していきたい、これが今後の大きな方向性であると私ども思っております。
ただ、そのことが、消費税といいますと、その他のさまざまな社会的な要請に対しても絡んでくる、社会保障も含めまして絡んでくるものですから、どうしても議論が先送りになるということでございましたので、先ほど委員の方から、やむを得ずというようなお話もございましたが、まさにそういったことで、暫定的な措置として今回こういう措置を講じたということでございます。
やはり抜本改革の時期には、きちんと正面から税源交換、そして地方消費税の充実を議論していきたい、こういう思いがあるものでございますので、この点、私どもとしては地方消費税の充実ということを真っ正面からとらえて今後も実現を図っていきたい、こういうことでございます。
○森本委員 それでは、大臣、先ほども今回のはあくまでも暫定措置ということを言われまして、税制の抜本的な改革において偏在性の小さい地方税体系の構築が行われるまでの間となっています。先ほどもお話がありましたが、では、何をもって偏在性が小さな税体系と言えるのか、抜本的な税制改革と言えるのか、この点について。そして、今大臣が言われた地方消費税の充実は、これは消費税のアップにつながっていく発言ではないんですか。
○増田国務大臣 まず、当面、暫定措置ということでございますが、必ずや近い将来に、社会保障や少子化対策に要する費用も含めて、こうした税体系の抜本的な改革を議論しなければいけない時期に来ている、これは国民の間でも共通の認識になっているのではないか、こういうふうに思います。
そのときに、私どもとしては、地方団体が行っている仕事というのは、これは景気等に左右されない、どういう場合であっても実施をしていかなければいけないサービスというのが大変多いものですから、そういう景気動向に左右されない税体系にしておかなければならない。今の現実の税目でいえば、やはり消費税を中心としたものにしておきたいということがございます。そして、その消費税を充実させるということが、偏在性の少ない地方税体系が構築されたということにつながってくるということでございます。
最後の、では消費税のアップをもう前提に考えているのではないか、こういうところのお話でございますが、確かに社会保障や少子化対策に要する費用まで広く含めて抜本改革という議論になってまいりますので、その際には、やはりそうしたことの可能性も念頭に置いた議論が、これはなされるであろう。
ただ、地方の安定的な財源を確保するということについては、何もアップということを前提に考える必要はないわけで、今の偏在性とかあるいは年度間によって非常に税収が左右される、それは毎年毎年というよりも、五、六年単位で見ますと税収が非常に不安定だということを是正する、その必要性から税源交換ということを申し上げているわけでございますので、地方税の、あるいは地方税収の安定的な確保ということからいいますと、必ずしもアップを前提としているわけではない。
昨年の暮れに私どもが議論をいろいろと世の中にしかけていったときは、今の五%の税率の中で同等の額を交換して安定性を確保するということでございますので、その点は、アップを前提として議論をしかけていったものではないし、今後もそういう前提には立っていないということでございます。
○森本委員 大臣、随分御丁寧に答弁いただいて、ありがとうございます。
しかし、私からは、やはり消費税アップ以外には、そのようにどうしても聞こえて仕方ないんですが。
やはりこれは、独立行政法人とか、総務省が管轄する、今随分国民の目から耐えられないような現実がある中で、ここのところをきっちりやってから、地方消費税の充実ということを随分今大臣おっしゃられましたから、そこのところはしっかりと踏まえて、これからも議論をしていただく。まずやはりそうした無駄を省くのと、理解のできないものについては、思い切って統合、廃止していくということをお願いさせていただきます。
今、明確な基準、目標がないと、この暫定がまたいつまでも続いていくような気がしてなりません。もっとも、暫定と言いながら何十年も続いているこの道路特定財源のようなものもあります。その可能性も十分あるかもしれませんが、それではだめだというふうに思っておりますので、そこのところの御意見をお聞かせください。
○増田国務大臣 抜本改革の議論というのは、これはそう遠からずやはりやらなければいけないので、確かに道路の場合には、数十年続く形で、暫定措置、暫定措置でございましたけれども、私どもは近々に行われるであろう抜本改革の時期にこの問題はきちんと整理をしたい、そして閣議決定で、これはすべての省庁も含めて、地方消費税を充実させる、そういう方向であるということはきちんと書きましたので、抜本改革を近々に議論する際には、暫定措置ではない、恒久措置としてそのことを実現するように努力をする覚悟でございます。
○森本委員 時間がもうわずかになってまいりましたが、あと気になりますのが、大臣、地方法人特別税が国税となって課税権が国に移ったことです。これは重大な問題ではないかと私は思っております。言ってみれば、格差是正の美名のもとで自治体の税源を国が剥奪したとも言えるわけでありますから、有識者の中には、地方自治の本旨を定めた憲法第八章に違反していると言われる方もあるくらいです。
もちろん、同額が地方法人特別譲与税という形で地方に戻ってくるわけなんですが、このことについて、これまでの地方固有の財源という性格が損なわれる可能性が高いのではないか、財務省による介入の余地が強まってしまうのではないか、こういう懸念を持っているわけですが、総務省としていかがですか。
○増田国務大臣 今回の措置が暫定措置であって、地方の財源の充実強化につながる方向に沿ったものであるということで、この点についての御懸念は払拭できるというふうに思っております。
具体的な法制的な措置としても、今回の暫定措置について、国税通則法の適用除外をいたしまして、この地方法人特別税の賦課徴収は法人事業税の例による、従来の事業税の例によるというふうに国税通則法も変えました。それから国税徴収法も、国税徴収法上は地方税とみなす、そういう改正もいたしました。
さらに、総務省設置法も改正して、今回のこの地方法人特別税の企画立案等についてはすべて総務省の所掌事務の中で行う、総務省と都道府県の間で行う、こういうことにしておりますので、今お話あったような、財務省がこの関係に絡むということはないような形にしております。
暫定措置とはいいながら、形式上国税となっているということもございますので、そうした御懸念ですとか御疑問がないように、よく地方団体にも趣旨を周知徹底させたいというふうに思っておりますし、今後の運用や、それから、近々の税の抜本改革の中で、本来の目的でございます地方税改革の実現にきちんと取り組んでいきたい、このように考えます。
○森本委員 時間が参りましたので終わりますが、例えば、きょう質問させていただこうと思いました、平成十三年から二十年までの間に三重県なんかは、これは全然違う話ですけれども、四百億ぐらいの税収を上げておるんですね。しかし、この間で一千億の予算は下がっておるというふうな現実。これは今のと直接関係ありませんが、これからの地方のあり方についてもう少し議論をさせていただきたかったんですけれどもここでやめますが、こんなことも言われておるわけであります。不交付団体にならない限り、国の地方財政計画に地方は縛られる。このことをしっかり認識していただいて、地方との関係をよろしくお願い申し上げたいということをお願いして、終わります。
ありがとうございました。
○渡辺委員長 次に、寺田学君。
○寺田(学)委員 先週に引き続き、質疑をさせていただきたいと思います。
先週の質疑をいろいろ自分で振り返ってみまして、反省すべき点もたくさんあったなということは素直に考えております。問題意識自体は間違ったものではないなと思いますけれども、表現のあり方等々を含めて、いろいろな角度からもう少しお話をさせていただくべきかなというふうに思っています。以前、御省のある課長から、寺田君は表現力が乏しいなと素直な御指摘をいただいたときもありまして、そういうのが苦々しく思い起こされたところであります。とはいえ、問題意識自体は、私は間違っていないと思っています。
そもそもの部分でいきますと、今地方の方が予算を組んでいる段階において、それの基礎となるようないわゆる国会で議論する法律がいまだどうなるかわかっていないという状態は、私は、地方に迷惑をかけているなということは素直に思っています。本来であれば、これはねじれ国会であるからこそ、与党の考えているとおりに、以前のようにはいかなくなったということも一つでしょうし、先週もお話ししましたけれども、そもそも、こういう期限が切れるものについて、期限が切れる直前に議論するのではなくて、一年ぐらい前に議論するというのがあるべき国会の姿だったのではないかなと私は思っています。
そういうことを含めて、与党が悪いとか野党が悪いとか、そういうことではなくて、私は、政府、与党、野党含めて、国会とかそこら辺に関係する人間すべてが問題があるのかなというふうには思っています。
ちょっと抽象的な質問になってしまいますけれども、こういうようなシチュエーション、今のタイミングで議論しているということも含めて、大臣自身、地方に迷惑をかけているなというような御認識はあるかどうか、いかがでしょうか。
○増田国務大臣 やはり、地方団体の方で大分心配をしている、地方団体の財政運営について心配の気持ちを惹起させている、そういう思いはあります。ですから、本来、早くそうした心配を払拭しておかなければならなかったと思いますし、今も、できるだけ心配を払拭させたい、そういう思いでございます。
○寺田(学)委員 今出している以上、今地方の方が地方の予算の審議をしていますから、我が方、国会においてできるだけ早く議論しようと思っても、参議院の審議が終わると、そのころには地方の予算審議はもう終わっているというタイミングになると思います。
ですので、大臣としては、できるだけ早く私たちの考えているやり方、法案というものを御理解いただきたいというお立場に立つんでしょうが、それは、議論は議論として、先週も含めて私が申し上げたかったことは、民主党としては、ことしの地方の予算に関しましては、暫定税率がどのような形にあろうとも、御迷惑をおかけしないようにします、もちろんここから、国会の中で、手段も含めて、どのように財源を確保するのか等も含めて議論するんでしょうが、まず、政治的な答えとしては、我が方としては、ことしは迷惑をかけない、ことしに関しては穴をあけることはさせませんということをお話ししました。
そういう意味において、本来、私たちが与党であれば、それは政府も含めてパッケージとして考えられるんでしょうけれども、何分少数でありますから、国会において一番力を持っている与党、そしてまた、それと一体となっている政府の側も、手段のほどは後々考えるとして、ことしの部分に関しては、まずは予算に穴をあけない。
その理由というものは、地財計画の役割もあるでしょうし、もっと言えば、本来であれば去年ぐらいに出さなきゃいけなかったものをことし出してしまっているということの反省も含めて、そこら辺は迷惑をかけないでおこうというふうにお約束いただいて、余り地方に迷惑をかけないような形で道路の議論というものを健全に行えればなという思いから、質問させていただきました。
そういう意味で、政治的な発言は政府・与党一体ですから、それは国会で決めることだというお話はあるんでしょうけれども、なかなか政治的な発言もできないお立場であるともしんしゃくいたします。
そういう意味も含めて、一般的なことを多少お伺いした上で、きょう用意した質問にも入らせていただきたいんですが、先週の御答弁では、それは国会で決めることだということの一点張りだったと思います。もちろん、国会というものは、政治的美称なのかどうかを含めて、一番高い位置にあるものですから、すべてはここで決めていくものだとは私自身も思っております。先週も議論させていただいたとおり、地方財政計画等も含めて、総務省として、地方の予算の積み重ねをした上で、それに足らず前はある程度交付税等で補完して、地方の標準的な財政運営に係る財源を確保するという任務があるということは、大前提としてあると思います。
ここで一点お伺いしたいんですけれども、国会の中で、暫定税率を含めて、歳入の根拠となるようなものがなくなった場合において、総務省の地方財政計画も含めて、地方の安定的な財政を守る、財源を確保していく責任というものはどのように、それは、国会の方で歳入法案が否決されたんだったら、その瞬間に国会ですべて決めてくれ、総務省の責任というものはもうなくなったんだと考えるのか、依然残るけれども、我が方としては何もしないんだと考えるのか、そこら辺の総務省の責任みたいなものは、こういう場合はどのように変化するのか、大臣自身どのようにお考えになられていますか。
○増田国務大臣 地方財政計画あるいは地方の財源をどのように確保するかというのは、やはり総務省として真剣に考えなければいかぬと思いますね、そこの点については。
それからあと、国会の御意思でさまざまな修正が行われる、これは当然制度的にもあり得る話でありますので、そこから先どういうふうに考えるか。お互いにその間によく意思疎通をして、それぞれの考え方を酌み取っていくということでしょうか。ちょっと一般論で、なかなかどういうふうに考えていくのか難しいところでありますが、やはり地方の財源を安定的に確保するというのは、我々としても常に責任を持ってやっていかなければいけないことでありますので、そのためにも、もし国会が御修正になるのであれば、それをどういうふうな意図でやられるのかというのはよく酌み取っていかなければならない。
ただ、その上で、対応できるかどうか、考えがそこにきちんと追いついていけるかどうかの問題はもちろん残っているんだろうというふうに思います。
○寺田(学)委員 本予算の方も議論しつつ、地方のマクロな意味での予算的な指標である地方財政計画もこの委員会で審議しつつ、いろいろ考えるんですけれども、ちょっと地方財政計画の一般的な質問にさせていただきます。
予算であれば、まさしく歳入部分に見合った分だけの歳出を決めなきゃいけないというのは当然の仕組みだとは思うんですが、この地方財政計画の仕組みを自分なりに解釈すれば、先週も議論させていただいたとおり、歳出はこれぐらい必要ですね、歳入というのは、地方税の伸びがどれぐらいあるかと予想しながら、これぐらいありますね、あら足りませんね、そこの部分をどのようにして埋めますかと。その埋めるという行為、そこを確保するという行為が、まさしく総務省の役割である標準的な行政の財源を確保するという一つの建前にはなっているとは思うんです。
そういう意味でお伺いしたいんですけれども、地方財政計画を策定する際において、歳入規模というものは、それとはまた別にある歳出の規模にどのような影響を与えているのか。
繰り返しになりますけれども、普通の予算であれば、それは歳入の分だけの歳出しかないということなんでしょうけれども、こういう仕組みの場合においては、歳入以上のものの歳出を決めるわけでありまして、建前上としては、歳出は歳入にはとらわれずに決めて、歳入の足らない部分を埋めるという形になっていると思うんですけれども、地財計画策定時において、この歳入の規模というのはどのように歳出に影響を与えているのか、大臣自身どのようにとらえられておりますか。
○増田国務大臣 歳出規模がそれだけで独立して決まるということは恐らくないと思います。その時々の社会経済情勢ですとか、それから国民の皆さん方の意識ですとか、そういうものを勘案して歳出規模が決まってくる。そして、その歳入の方は基本的にはやはり税で構成をされることが望ましいわけで、その税で構成されるということは、納税者、これは道路という意味ではなくて一般的な意味ですけれども、納税者が御理解をいただいて、そして納得をして税を納める。
こういうことでありますので、歳出で、公共団体が考えようとしているサービスの内容について、やはりある程度歳入の税のところで、それは公共団体として適切なものだとか、あるいはそれはやり過ぎだからそういったものはやはり適当ではないのではないかとか、やはりそういうことを踏まえて、今度は歳入の税の関係も決まってくるわけですね。
ですから、歳出だけが独立して、これは必ずやらなければいけないという形で決まるというよりは、やはり歳入の規模も関係してくるでしょうし、そのほか、当時の置かれている社会経済情勢ですとか、そういったことも含めて、全体として今何が適切な標準的な団体の歳出なのかどうか、そういうことが決まってくるのではないかというふうに思います。
○寺田(学)委員 二〇〇六年の骨太の中で、歳出歳入、国も地方も一体的に改革していきましょうという話がされておりました。国の予算は、何度も申し上げるとおり、歳出と歳入が見合った中でやっていくんでしょうけれども、地方においては足らず前を埋めるという仕組み、先ほどの森本先生の最後の質問とは多少ちょっとベクトルが違う、短期的な話になってしまうんでしょうけれども、足らず前を埋めるという仕組みになっているんだと思います。
今、大臣が御答弁されたとおり、歳出というものは歳出だけを見ているんじゃない、歳入というものもある程度勘案しながら積み上げていくものだというお話がありましたけれども、いかがなものでしょう。建前として、地方の標準的な財政を確保しましょうということであれば、歳出と歳入は一体的に改革していくということは、言い方をかえれば、歳出というものが最適な標準な行政規模をはかっているものだというところからは多少ずれてくるんだと私は考えるんですよ。
歳出はこれぐらい必要だ、歳入はこれぐらいだから埋めましょうという話と、歳入がこれぐらい減るんだから歳出も減らしましょうということであれば、後者の場合においては、総務省が建前としている標準的な財政規模はこれぐらいですという一つの指標である地財計画の歳出というものに関しては、そもそもそれが目的としている地方の標準的な財政規模をあらわしたものだというところは乖離していく傾向にあるんだと思います。
そういう意味で、二〇〇六年の骨太のころから顕著になっているとは思うんですけれども、この地財計画における地方の標準的な財政規模の財源を確保しましょうという役割はどんどん希薄化していっているのかなというふうに思うんですが、大臣自身どのようにお考えになられますか。
○増田国務大臣 例の二〇〇六を議論するその前の状況としていいますと、地方の債務残高が大幅にずっとふえていった、そして巨額の財源不足が生じてきた、そういう状況があって、それをそのまま放置しておいていいのかどうかという、やはり大きな国民的な議論があったというふうに思います。
国、地方合わせて巨額でございましたが、しかも地方だけとっても二百兆に向けてずっとふえていった、二百三兆までなりましたですかね、そういう時期でありましたので、やはり国民の意識としても、確かに、それまで標準的な団体の必要な経費、歳出の規模として、従来標準的な団体としても行ってきたサービスについてももう一回やはり見直しをすべきではないか。それから、公務員の給与などについても、それまでも毎年毎年いろいろな適切な水準ということで決めてきたんですが、一方で、世の中が大変厳しい中で、民間企業が大変厳しいリストラも含めて血の出るような努力をしている中で、公務員が同じような努力をやはりすべきではないか。そこに国民の意識、歳出削減についての努力をしろという国民の意識があって、それで歳出の見直しを行った。
ですから、今、歳入と歳出の中で歳入を考えると、やはりそういう標準的な団体の歳出をきちんと保障するという地方財政計画の意義が薄れていくのではないか、こういうお話でございましたのですが、そういう保障的な側面を失わせないようにしなければいけないわけでありますけれども、その標準的な団体の歳出として何が適切なのか、どこまでが許されるのかという基準が、今申し上げましたとおり、財源不足ですとか、それから債務残高が大幅にふえてきているという中で、やはりそのことも意識をして歳出の規模なり個々の項目を考える、これもまた国民の考え方ではないかな、それをやはり中に反映をさせなければいけないのではないか、こういうふうに思うわけであります。
○寺田(学)委員 増田大臣が大臣になられる前に知事をされている中で、また知事会の中で等々いろいろな発言がありましたけれども、知事をやめられて大臣になられてから、ある意味既存の政策に縛られるお立場にもなられたのだろうなというふうには思います。
その上で、地財計画も含めてですけれども、やや中期的、長期的な話もお伺いしたいのですが、この地方財政計画も含め、交付税算定のあり方、そしてまた、そもそもその交付税というものの仕組み自体に関して、短期的なことは大臣の責任が相当かかるでしょうからお話しできないでしょうけれども、中期的にはどのように変えていきたい、問題点は何であって、それの改善策がどのようなものであるということを、大臣自身、算定のあり方と、そもそも交付税の仕組みのあり方とを含めてお考えを御披露いただけたらと思います。
○増田国務大臣 まず、地方財政計画について言いますと、やはり各団体間の財政の調整機能を果たしていく、こういう機能が大変大きかったわけでありまして、そこの調整をするという機能を、地方財政計画それから交付税の機能として十分に考えておかなければいけない。財政計画で、もちろん各公共団体の指針という部分もありますし、それから、非常に大きな財政規模になっていますので、国の計画との整合性ということと、三つ大きな機能があるんです。
各公共団体の指針とするということは、できるだけ各公共団体がそれぞれの判断でやる方向に今後は持っていくべきだと思いますので、私は、各地方団体の財政的なでこぼこを調整する機能をやはり十全に地方財政計画なり交付税が発揮するような、そこの側面をよく考えておく必要があるだろうと。
そして、その上で、今後はでき得る限り自前の税収で公共団体が財源を確保していく方向に持っていくのが理想でありますので、地方の方に税源移譲して、そして、どうしてもそういった税源がないようなところを、交付税制度ででこぼこを調整していくという仕組みにしていくわけですが、ただ、今後の改革の方向として、いずれにしても、交付税の算定の仕組みがわからない、不明確だという批判は従前からずっとございましたので、算定の簡素化ですとか、オープンにすること、予見可能性を高めること、そういったことは技術的に可能な部分も多々ございますので、それについては努力を惜しむことなく、常に追求していかなければならない。
ただ、大きな方向として、従来から三つの機能があるというふうに言われておりましたけれども、特に近年、急激な交付税の減少などによりまして、地方間の財源のでこぼこを調整するというところが、特に弱小団体の財源の厳しさあるいは格差が拡大することにつながってきたのではないかという危惧もございましたので、この点よく、今後の方向として、財源のでこぼこを調整するという機能の確保が重要ではないかと思っております。
○寺田(学)委員 今御答弁のあった、弱小団体が交付税の削減等によって厳しい状態に置かれているという御認識のお話がありました。交付税がわかりにくいということはそのとおりではあると思いますが、簡素化するということがいわゆる小さい自治体においての交付税額を減らす一因にもなっているのではないかという御批判も聞こえるところであります。
今お話しされた、交付税額がそういう形で減って、小さい団体が非常に苦しいことがあるのでそこを留意したいという御発言と、簡素化したいということが時として相入れないことになると思うんですが、そこら辺、弱小団体、弱小という言い方はよくないですね、経済的に弱い小さな団体、自治体、地方政府をどのようにしてフォローしていくかということを大臣自身、お考えになっているんですか。
○増田国務大臣 算定項目数が大変多くて、二百数十項目にたしかなっていたはずでございますので、それを半減するなどの簡素化を図る。それからあと、算式を公表するなり、具体的な各団体の予見可能性を高めるということは、財政力の大きいところ小さいところ関係なしにやはり進めていかなければならない。
あと、特に人口が五千人とか四千人以下の町ですとか村、あるいは都道府県でも人口規模が非常に小さいところなどについて、算定の項目数ということではなくて、そこでどういった行政サービスがどうしても必要なのかという観点で、どんな地域でも必要なサービスというのはございますので、それをきちんと交付税の中に算定できるような仕組みにする。
これは、簡素化とか透明化ということとは必ずしも私は矛盾しないと思います。また、そういうところを国として財源的に保障するというのはそもそもの交付税の制度本来のものでございますので、その点は、両方をきちんと満足させるような答えを今後も出していくようにしていきたいというふうに思います。
○寺田(学)委員 このことに関しては最後の質問にしたいと思いますけれども、先ほど、今御答弁の前の御答弁の中で、基本的には交付税制度はどうあるべきかという話の中で、基本的には自前の財源で地方政府が自由にやりつつ、でこぼこを直していきましょうというのが理想であろうというお話がありました。そのことと今の現実的な問題とを重ね合わせますけれども、そういう意味においては、十年間という今暫定税率の延長で、道路特定というような補助金の仕組みというものも維持しましょうということを政府としてお話をされています。
大臣自身としての頭の中の描き方だとは思うんですが、いわゆる大臣が思うその理想、自前の財源を確保して自分で地方政府を運営していこうということが、十年間、ある一つの側面においては、特定の補助金という形でやっていきましょうということを大臣自身御賛同されていることになっていると思います。
政府としての意見ですから、大臣自身がどのように思われていたかどうこうというのはまた別とはなるんでしょうけれども、大臣自身として、いわゆる御自身で考えられる地方分権のそれなりのあるべき姿というのは、スケジュール的にはどれぐらい先ぐらいからどんどんどんどん加速していくものだと思われているのか、今回の暫定税率の十年というタイムスパンも含めて、お話しいただければと思います。
○増田国務大臣 今回、十年間の制度、暫定措置で、この点についてはいろいろ御批判があるわけですが、十年を制度として提案してございますけれども、補助金自体がいいかどうかの議論はあって、もちろん、できるだけそういったものはやめるべしという立場に立っておりますが、それにしても、国の予算補助、それから法律補助、恒久的な制度としてそういうふうに決められたものもございます。
それから、今回も、暫定措置とはいいつつ、十年の間、道路の暫定税率あるいは臨時交付金や補助金なども決めておりますが、こういったもの、道路以外のものも含め、道路も含めて、大きな地方分権の中で、国と地方の役割分担を見直しして、地方に移せるものはできるだけ地方に移していく、こういう立場に立っております。
ですから、今並行して、地方分権改革推進委員会で、こういった道路あるいは河川や公共事業のみならず、社会保障なども含めて議論いただいております。そこで、国、地方の役割分担やそれに伴う財源の問題等についても、考え方がまとまり次第、やはりそれを具体化していくことを考えていくべきもの。
それは、時期が来れば、これは三年以内に法案を国に出すということになっておりますが、これは横ぐしに考えて見直しを進めていくべきもの。今回の暫定税率のみならず、恒久措置として法律補助になっているようなものも、やはり大きな分権の流れの中で見直しをして、一括法なりあるいはその他予算制度の改革ということにもつながっていくかと思いますが、そういう大きな分権の流れの中で見直しすべきものは見直しをしていく、こういうことではないかと思います。
○寺田(学)委員 本当に中長期的な話にもなるでしょうから、地財計画を含めて、交付税のあり方を議論させていただきたいと思います。
地方の方が本当に、交付税額がちょっとでもふえたとか減らなかったとか、そういうことで一喜一憂している中において、国の予算というものはまだまだ無駄があるんではないかなということは常々言われていることだと思います。
そういう意味も含めて、今回、民主党におきましては、総務省の予算に関しまして、一つ一つ細かな部分に至るまで手分けをして精査をさせていただきました。その中で、自分が担当した部分のことについて、多少残りの時間を使って議論したいと思うんですが、独立行政法人情報通信研究機構というものの存在が、私の担当した中では非常に大きなものとしてありました。
総務省が出したデータによれば、平成十八年に総務省が交付した補助金総額というのは約二千億弱、そのうち政党交付金の三百億ぐらいを除くと一千五百億ぐらい。その一千五百億の中において、この今申し上げた情報通信研究機構に関しては約五百億ぐらいの、四百四十五億円の総務省の補助金が渡って全体の約三割程度と、物すごい大きなウエートを占めているいわゆる独法であります。
いろいろ調べるんですが、そこに運営費交付金として、ことしは三百五十三億円、間違っていたら後で訂正してほしいんですが、それぐらいのロットの運営費交付金を独法にどんと渡しますけれども、総務省の予算書を調べてみますと、その中において、総務省としてこんな研究をしてくださいと言っているのが約百億程度しかない。言ってみれば、残り二百億ぐらいは何に使われているか全くわからない形で運営費交付金でどんと渡している。その上に総務省内の他の補助のあり方であるとか政府全体としてのお金の積み込み方ということで、平成十八年だったら四百四十五億円ぐらいそこの独法に入っている。
ちょっと質問なんですが、そもそもとして、国としてその独法に対してこういうようなことをやってくださいというのはたかだか百億ぐらいしかなくて、それの三倍以上に当たるような三百何十億というものを運営費交付金で渡してしまう、その白紙委任というかずぼらなお金の渡し方みたいな、予算書を見る限りそう見えるんですけれども、こういうようなやり方というのは大臣自身いかが思われますか。
○増田国務大臣 あの独法ですけれども、情報通信研究機構ですけれども、そもそも、独法の設立目的と、それからそれに沿った形で中期目標をまず独法の方に示して、そしてその中期目標に従って研究開発業務を実施する、こういう仕組みになっております。
その示した中期目標を達成するためにどのようにこの独法が努力をするのか、そこは理事長の裁量のもとで、自主的な運営でとにかく効果を発揮してもらう。官のいいところ、それから民間のいいところも含めて、独法の自主的な運営でそれを達成していただく。こういう仕組みが、これはこの独法だけでなくて他の独法も含めて、今そういう仕組みになっています。
ですから、今お話ございましたとおり、総額は三百五十三億でそのとおりでございますが、そのうち百十億につきましても、予算書の方に書いてございますけれども、総務省としてこれに使えというふうに指定したというよりも、独法の方で、この百十億につきましてはこういう形で実施をして、そして中期目標で与えられた研究開発の目標をそれで達成していく、そういうことでございますので、むしろ委員のお話の中の文脈に即して言えば、総務省としてその部分を指定しているというよりは、独法の自主的な判断でその百十億も使っている。それ以外の運営費交付金もございますけれども、それも全体含めて、中期目標の達成に向けて使われているもの、こういうことでございます。(発言する者あり)
○寺田(学)委員 今原口筆頭の方からもありましたけれども、随契だらけになっているんだろうなというのは容易に想像がつきますし、一点、使い方としてですけれども、その独立行政法人が新規に十五件ほど、こういうことを研究してくださいということで、その独法からまた新たにどこかに委託をするんですが、その委託されたところの会社に、この独法の理事の出身の母体が二つほどあるんですよね、企業名は挙げませんけれども。その独法自体がその理事を中心としてさまざまなところからのアドバイスを受けながら委託先を決めるんでしょうけれども、そもそもその理事の中の一員の出身企業に対してこの委託をお願いしているケースが散見されるところを見ますと、本当にこれは公平に委託先というのは決められているのかなということは非常に疑わしく思います。それがまず一点。
もう時間がないのでまとめて質問しますけれども、この予算書を見てみると、単年度において、ことしだけで約六十億ぐらいですか、赤字が出ています。累積で見てみると、欠損金等を含めると何か五百億弱ぐらいにはなっているみたいですけれども、きのうちょっと御説明を受けたんですが、これは、違う特会のところからお金が回ってきて、そのお金を企業に貸し付けているんだ、それのリターンがいずれ来るであろうということでお金を出しているんですと。単なる委託、研究だけではなくて、お金を投資しているんだみたいなことを言われていました。それの積み重ねがもう四百億を超えていると。本当にその出したお金は返ってくるのかという話をしたら、ことしは一千万程度返ってきましたという話です。そのことを考えると、四百八十億を返すということを思うと気の遠くなるような話です。
いずれにせよ、ここに焦げつきが出てしまうのではないかなと思いますが、こういう場合の焦げつきはだれが責任をとるのか、そういうことも含めて御答弁いただけたらと思います。
○松本政府参考人 最初の御質問についてお答えをさせていただければと思います。
委員御指摘の件でございますが、NICT、情報通信研究機構におきましては、高度通信・放送研究開発に係る委託研究というものを実施しておりまして、十八年度で十五件のうち七件の委託先が、委員御指摘の理事がもと在籍した企業への委託ということになっております。そのプロジェクトには複数の企業が一緒に参加しているものもございますが、その一部にその理事の出身元の企業が入っているケースがございます。
これについて、それを恣意的にやっているのではないかという御指摘でございますが、こういう研究開発を公募いたしまして委託先を決定するに当たりましては、NICTの中に第三者の評価委員会というのがございます。二十一名の大学の先生方から成ります委託研究評価委員会というのがございまして、その場におきまして厳正な評価、審査をやっていただいております。その結果を踏まえて委託先を決定しているというところでございまして、NICTにNTTやらKDDといった一部のそういった理事がいらっしゃいますが、出身者がございますが、これを選定するに当たりまして、そういった理事の影響力が及ぶというようなことは全くないものと我々は承知しております。
○中田政府参考人 後段の方の累積欠損金の話についてお答え申し上げます。
委員御指摘の点は、基盤技術研究促進制度というものに係るものだというふうに思っております。これは民間企業の非常にリスクの高い基盤的な研究開発に対しまして支援を行うという制度のものでございまして、具体的には、産業投資特別会計という会計から機構が出資を受けまして、それを原資にいたしまして機構が民間企業に研究開発を委託する、成果が出ましたときに、研究開発の結果得られる売上高の一部を機構に納付するということを求める、そういう制度でございます。
これは、費用の点では、機構から民間企業に委託をした時点で費用が計上されるということでございまして、例えば五年計画で毎年五億円の研究開発を委託した場合には、その年々に経費が費用として計上されるということでございます。
一方、収入の方でございますけれども、こちらの方は、研究開発の終了後、最短十年間、最長十五年間の間に売り上げ納付を求めるということでございまして、費用は先に発生いたしますけれども、収入はその後、研究開発が終わった後、十年から十五年かけて納付を求めるという制度でございます。
本制度は平成十三年度に創設をされまして、今委託開発後の売り上げ納付というサイクルがちょうど始まったばかりということでございまして、そういう意味では、繰越欠損金が生じておるということでございます。
なお、委員御指摘のとおり、この回収については、この着実な納付を獲得するという観点から、受託企業に対します実地調査あるいはヒアリングを実施するなどして、資金回収の徹底を図っていきたいというふうに考えております。
○寺田(学)委員 時間がなくなりましたので、一般質疑等も含めて引き続きやりたいと思いますが、大臣自身、本当に地方が逼迫する中で、これと情報通信の部分を比べるというのはいろいろ問題があるかもしれませんけれども、白紙委任で何百億ぐらいのものを出してやって、効果を期待します、そんなのんきなことを言って、その中で行われていることが、理事が、利害関係はないと言いながら、多分第三者の選考委員は理事会で決めるでしょうから、ある程度の関係性を持ち、その上で、他の特会から突っ込まれている借金がどんどんどんどん回収できずに累積していっているという散々たる状態になっているにもかかわらず、まだ漫然と予算が組まれているというのはおかしいことだと私は思います。
ですので、大臣自身、時間が過ぎましたので、改善点があるかどうか、そういう意識を持ったかどうか、一言御答弁いただいて、きょうの質疑を終わりたいと思います。
○増田国務大臣 二十年度にこの予算については大分減額はしているようでございますが、産投特会からの金を入れているということでございますけれども、内容をさらによく精査したい。
それからあと、第三者委員会で審査をしているということですけれども、どういう審査が行われて、その結果、相手先としてどういう形でそこが選ばれたのかということについて、透明性とか、それから理由の開示がどうなっているか、そのあたりをよくこちらの方でも見たいというふうに思います。
○寺田(学)委員 終わります。
○渡辺委員長 次に、塩川鉄也君。
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
地方財政に関連して、公立病院問題について質問をいたします。
先日の本法案の本会議の質問の際に、私は、「今日、地域医療の中核を担ってきた自治体病院が、経営難を理由に、その存続さえ危ぶまれる事態が各地で進行しています。政府は、医療費抑制策をとり続ける一方で、九〇年代に、景気対策と称して相次ぎ公共投資を推進し、自治体病院にも過大な増築、改修計画を押しつけました。このことが、今日の自治体病院の経営難の要因の一つになっているのではありませんか。」こういう質問に対し、総理の答弁は、「いわゆるバブル経済崩壊後の景気対策として公共投資が大幅に追加される中で、公立病院においても、地方公共団体による自主的な判断ではありますが、積極的な施設建設が行われ、一部では、結果として後年度における減価償却費が増加し、経営悪化の一因となっている事例も見られます。」このように述べておられます。
そこで、伺いますが、ここで挙げられております経営悪化の一因となっている事例というのは、具体的にはどこの病院のどのような事例なのかをお示しください。
○久保政府参考人 病院施設の増改築などを行いました場合に、後年度におきましては、減価償却費は増大をいたします。したがいまして、これを上回る収入の増加が図れないといった場合には、損益収支は当然悪化する結果となってまいります。
公立病院の減価償却費は、かねてから民間医療機関との比較において高水準になっているといった指摘もございまして、私ども、昨年設けて検討いたしました公立病院改革懇談会という場がございましたけれども、この場におきましても、公立病院関係者から、病院の過大投資が経営を圧迫している場合があるといった意見が述べられております。最近におきましても、多額の施設整備を行った後に計画どおりに収入が確保できず、結果として経営悪化に至るといった事例も散見されると思います。
具体例を言えということでございますけれども、例えば北海道の赤平市でございますけれども、赤平市では、平成五年、六年に行いました施設改築費の償還負担が経営悪化の一因であるといった形で分析をして、そういった旨、住民に対して説明をしておられます。
○塩川委員 赤平市の例も紹介をされました。これはNHKの「クローズアップ現代」でも紹介をされて、地域医療の存続にかかわって極めて重大な事態だということが大きく報道もされたところです。赤平市で出しております「広報あかびら」におきましても、病院の経営問題を紹介して、「平成五・六年に行った診療棟・管理棟の改築等による起債償還額が、毎年約二億五千万円あり、償還が平成三十六年度まで続き負担が大きい。」このように取り上げております。
バブル崩壊後の景気対策として、公立病院においても積極的な公共投資が行われたことが経営悪化の要因となっている。これは一つ赤平の事例ではなくて、全国でもこのような事例が多くあるということが言えると思います。
そこで、お尋ねしますが、バブル崩壊後の九二年、九三年当時、国の景気対策として、自治省は地方団体に対し、地方単独事業を後押しするためどのような施策を行ったのか、また、その中で公立病院に対してはどのような後押し策を行ったのか、この点についてお答えください。
○久保政府参考人 いわゆるバブル経済崩壊後の景気対策といたしまして、国、地方を通じて公共投資が大幅に増加され、国庫補助事業とともに地方単独事業につきましても積極的に、御指摘のように推進されております。このために、地方公共団体が自主的、主体的に取り組む地域づくりのための施設整備事業などにつきまして、地方債と地方交付税とを組み合わせた財政支援措置を一般的に講じてきております。
この時期に、公立病院でございますけれども、公立病院に係る施設整備につきましては、これは地方公共団体からの強い要望といったこともございまして、そういった要望を踏まえまして、平成五年度から、病院建物の建築費に係る標準面積、標準単価といった制限がございましたけれども、これを廃止いたしまして、事業費全額を起債の対象とするといったことにいたしております。
この制度改正は、病院事業に係ります施設整備をより容易にする効果を有したということにつきましては否定はできないと考えておりますが、その趣旨は、地方分権推進の流れも踏まえながら、地方債の発行についても、地方公共団体の自由度を高めるといった考え方に立って行われたものと認識しております。
○塩川委員 今お話がありましたように、公立病院の建設に当たりまして、標準面積、標準単価の廃止という形で、要するに起債をやりやすくする、こういう仕組みになったということは確かで、当時、全体を見てみれば、国としての積極的な公共投資も行われましたけれども、それを上回る規模で地方における単独事業が積み上げられてまいりました。
当時の報道などを見ても、自治省は、全国財政課長会議、地方課長会議を開き、各自治体の九月補正予算編成に当たっては地方単独事業を大幅に追加計上するよう要請をするとか、臨時三事業、地方道、河川、高校などの全額起債を認めるとか、自治体がなかなか独自財源がないような際に、余裕のない自治体に対しては地方交付税の交付対象とする方向だとか含めて、積極的な支援策を行ってまいりました。その一つとして、公立病院への起債の柔軟化、このことも行われたわけです。
資料でお配りしましたが、病院事業債の許可額の推移ということで棒グラフが立っておりますけれども、九〇年代の前半で、国が景気対策として地方単独事業の上積みを求めた時期に急速に起債が増加をしております。下に数字を並べてありますけれども、地方単独事業費全体を見ても、九一年、九二年、九三年、九四年と一〇%を超える前年比の伸びということで、大変急速に地方単独事業が積み上げられてまいりました。
これらを見ても、国は地方公共団体による自主的な判断と言いますが、国の積極的な関与なしにはこのような地方単独事業の積み上げもなかったし、公立病院への積極的な投資も行われなかったことは明らかじゃないでしょうか。大臣、その点、いかがですか。
○増田国務大臣 ちょうどこの時期、一九九一年から単独事業費が二けた伸びてまいりまして、そして地方債の発行額も、公立病院につきまして、平成十年前後をピークとして大きくなっているということは、そのとおり事実でございます。
そのときに、先ほど局長の方からお話ししましたとおり、ちょうど制度改正、これは事業費の実態をより一層反映する方向で制度改正を行ったわけでございますが、そうした制度改正ということもございましたので、各自治体の方でも病院の施設や設備の充実を図る方向でいろいろお考えになったということでございます。
ただ、その際に、やはり病院事業経営の健全性を損なってはいかぬということは当然あるわけでありますので、例えば、平成五年に各都道府県知事あてにうちの方の次官から通知も出してございます。当時はまだ通知ということが行われていた時期でございますが、そのときの、平成五年の都道府県知事あての事務次官通知を見ましても、将来にわたる採算性の確保ですとか、それから一般会計の財政負担の見直し等を従来にも増して十分検討の上実施することということで、そうした公共団体の方に特に注意を促しております。
そういったことを十分注意した上で、こうした病院事業債等も使うのであれば使うようにということでございましたので、やはり各団体の自主的な判断があって施設の建設の実施を決定された、最後はやはりそういうところに帰着をするというふうに思っております。
○塩川委員 地方に対してブレーキを踏んでいるかのようなお話もありましたけれども、アクセルの方が実際には全開だったというのが当時の状況だということです。
例えば、当時の新聞記事などでも、「地方自治体の大型補正 景気への起爆剤期待」ということで写真が出ています。この写真は、自治体単独事業拡大のため、自治省は単独事業推進相談室を設置したというので、看板を掲げて、これを大きく加速させようと、写真に当時の大臣が写っております。塩川自治大臣で、同じ塩川でも大分違いますけれども。自治省が単独事業推進ということで大いにあおったということがあります。
また、別な報道では、「地方単独事業の規模 自治体に報告求める」「自治省は地方自治体の補正予算で、各自治体が上積みをした地方単独事業の規模について報告を求め、上積み額が少ない自治体には積極的に上積みしていくよう指導していく方針だ。」自治省は上積み額を報告させることにしているというお話。報道でもありますけれども、このように、単独事業推進相談室を設置するとか、地方単独事業の規模について自治体に報告を求めるとか、当時行っていたと思いますけれども、その点、確認したいと思いますが、いかがですか。
○久保政府参考人 突然の御質問でございまして、資料を準備しておりません。後日御報告させていただきたいと思います。
○塩川委員 国は、地方自治体による自主的な判断と言いますけれども、実態は、ここにありますように、単独事業推進相談室ですとか自治体に報告を求めるというような形で、国が主導的な役割を果たしたことは明らかであります。
改めて大臣に伺いますが、九〇年代前半の公立病院への過大な投資について、国にも責任の一端があるのではないか、国の責任は免れることはできないのではないか、いかがでしょうか。
○増田国務大臣 当時、私が知事に就任をする少し前の時期、あるいは就任してからもしばらくの間は、景気対策そして公共事業を随分大幅に各公共団体も実施した時期、それから、やはり箱物建設などがかなりやりやすくなった時期でもございましたので、実際に事業量の数字を見ましても、そうしたものを多く実施した、これはもうやはり紛れもない事実だろうと思います。
そのときに、当然のことながら、起債によって資金手当てをしていますので、今、公共団体の財政運営がきつくなっているということについては、そのことが大きく影響してきている。このことはこれまでも申し上げてきておりましたし、そのことについて、やはり国一体として実施をしてきた当時の状況というものは私も理解をしているわけでございますが、最終的に責任云々ということになりますと、やはり自治体は自治体で、議会を経てどういう事業を実施しようとするのか判断をしたことでございますので、これは私も知事時代から申し上げておりますが、やはりそういったところに安易に乗ってしまった責任というのは自治体にある、そういったことを十分戒めておかなければいけないということを申し上げてまいりました。
病院事業ということについても、やはり、当時住民の皆さん方からいろいろ施設整備の充実について御要望があって、いろいろ自治体の方で御判断されたんだろうと思います。国の制度改正等もございましたのでやりやすさがあったということで、個々の病院について甘い判断にどうしてもなびいてしまったということもあったのではないかというふうな推測もなされるわけですが、やはり最終的にそのことについて個々の自治体、自治体で決めたことでございますので、それはそれとして、当該自治体でその後の措置はやはりやっていただくのが前提であろう。
ただし、国としてそれを全く見過ごしているということではなくて、公立病院のガイドラインを今回もつくりましたし、そういった公立病院の抱えております状況、これは、施設の点のみならず、医師不足等の問題も絡んでくるわけでございますが、そういったことを含めて、今置かれている公立病院の状況というのは私どもも十分受けとめておりますので、それについて総務省として的確な対策を今とっているところでございます。
○塩川委員 国の制度改正で起債のやりやすさがあったということですから、まさにそこのところで、推進室も設け報告もとることによって、地方のこういった起債、新たな設備投資をあおる仕組みに対して国がしかるべき役割を果たしたことは明らかですから、そういう経営悪化に対する国の責任を踏まえてこの問題に対処する必要があると思います。財政健全化法で地域に欠かせない公立病院事業を追い込むようなやり方であってはならないわけで、そういう点でも、過去のこのような借金、赤字に対する国の責任を踏まえた上での対応が求められていると思います。
その上で、さらにこの間の普通交付税の措置額の減額というのは論外であります。
お尋ねしますが、普通交付税措置額の減額が今の公立病院経営悪化の要因の一つとなっている、こういう認識はお持ちでしょうか。
○久保政府参考人 公立病院に対します一般会計の繰り出し金につきましては、地方公共団体における病院事業の実態などを踏まえながら、所要額を地方財政計画に計上して、地方交付税などによって措置をしております。
近年、公立病院に係ります普通交付税措置額が減少傾向にございますけれども、これは病院施設の整備に係る地方債の発行額が、御案内のように平成九年度をピークとして減少に転じたことなどから、地方債の元利償還金に係る地方財政計画計上額が減少傾向にあるといったことを反映したものと考えております。
また、公立病院に関する普通交付税措置は、各団体の病院事業に係る地方債の元利償還金の大小に応じて算定するものや、各病院の許可病床数に応じて算定するものがございます。病床当たりの算入単価が近年低下傾向にある、これは事実でございますけれども、この理由といたしましては、主として地方公共団体からの意見を踏まえて、地方債の元利償還金の状況を直接反映する部分、この部分のウエートを高めた結果によるものと考えております。
したがいまして、近年の交付税措置額及び病床当たり算入単価の減少は、地方公共団体の財政需要の実態を反映しながら財政措置を講じてきた結果によるものと考えておりまして、これを経営悪化の要因ととらえるのは必ずしも当を得たものとは考えておりません。
ただ、近年、医師不足等によって特に経営悪化が著しい過疎地域などに係る措置につきましては、公立病院に関する地方財政措置全体を見直し、その重点化を図る中で、その充実を検討してまいりたいと考えております。
○塩川委員 自治体病院の赤字数というのが、平成十三年が四八%、それが平成十八年は七九%ですから、急速に赤字の状況が拡大をしているわけです。そういう点でも、この交付税の減額の措置というのは経営悪化の要因の一つとしっかりと見ていくことが問われていると思いますし、さらに、今回の公立病院改革ガイドラインで交付税の算定指標を病床数から病床利用率に変更したということ、これは、病床利用率の低さは医師不足が大きな要因の一つではないかと思うんですが、その点の大臣の認識を伺います。
○増田国務大臣 今回の病床利用率の低下でございますけれども、医師の総数が確保できない、そういったことで、どうしてもそこの診療科を閉鎖しなければいけないといったようなことでそこがあいてしまう、こんなこともやはりあるんだろう、事例として、空きベッドの数がふえてしまう、そういう事例もあるんだろうというふうに思っております。
そこで、一時的な医師不足なのか、あるいは、やはり恒常的にあいているということは資源の配分上もよくありませんので、その一時的か恒常的かということを判断して、今回、ガイドラインでは三年連続七〇%未満というような目安を示しましたけれども、やはり恒常的な場合にはそこは見直しをしていただく、一時的な場合には、これは厚労省の方の仕事とも大きく絡みますけれども、やはり何としてでも医師不足解消策を講じて、その上でお医者さんを配置する、こういう対応をとりたい、このように考えます。
○塩川委員 医師の確保ができなくて空きベッドが出てしまう、それが恒常的かどうかという点が問われるんだと言いますけれども、恒常的なのは医師不足であるわけで、医師不足が恒常的である以上、病床利用率が低いのも恒常的にならざるを得ない。そういう点でも、医師不足を招いてきた国の責任が免れないわけです。
財政危機の要因をつくってきた国の景気対策の問題とあわせて、公立病院に経営責任があるかのように、交付税の算定指標を病床数から病床利用率に変更して、交付税をさらに減額して財政圧迫を与えるようなやり方は許されない、こういうことはやめるべきだということを申し上げて、質問を終わります。
○渡辺委員長 次に、重野安正君。
○重野委員 社会民主党の重野安正です。数点、質問いたします。
まず最初に、個人住民税における公的年金からの特別徴収制度の導入という点について質問をいたします。
個人住民税の徴収率が、昨年十一月末の時点で四九・九%となっております。前年同期を一・九ポイント下回っている。年間徴収率も三年ぶりに前年を下回るやに報道されております。徴収率の低下の要因をどのように分析しておられるか、まずその点を伺います。
また、年金受給者の住民税の徴収率は昨年と比べてどうなっておるのか、その点についても明らかにしてください。
○河野政府参考人 お答えいたします。
個人住民税の徴収率でございますけれども、お話ございましたように、平成十九年十一月末現在の都道府県税の徴収実績という形で把握をしておりますけれども、この時点では、個人住民税の調定済み額に対する収入済み額の割合、進捗率でございますけれども、これは前年度を一・九ポイント下回っております。
この要因でございますけれども、御案内のとおり、今年度から税源移譲が行われておりまして、給与所得につきましては、税源移譲の影響は六月分以降の徴収税額から発生をいたします。四、五月分につきましては、税源移譲前の税率により算定された税額でございますので、移譲後と比べますと税額が少なくなっております。したがって、その分、調定額に対する収入済み額累計の比率というものは押し下げられることになるわけでございまして、一・九ポイント低下しているということが、必ずしも徴収率が低下しているというふうには考えておらないところでございます。
毎月の進捗率の推移、これを見ましても、七月現在でございますと、前年度と比べまして四・五ポイント差があったわけでありますけれども、これが月ごとに前年度との差が縮小してまいりまして、十一月末現在では一・九ポイントになっているという状況でございます。
なお、年金受給者に限定した徴収率というものは把握いたしておりません。
○重野委員 年金受給者の徴収率については調査していないということであります。
高齢化社会ということが言われるわけですけれども、高齢化社会というのは、とりもなおさず、年金受給者が全体に占める割合が多くなってくるということの裏返しの表現だろうと思うんですが、そういう社会情勢に照らして、年金受給者の税の徴収率というものに着目をして、そこら辺がどういうふうに動いているんだろうかということを調査する、その点の有効性というものをどのように認識しておられるか。
○河野政府参考人 個人住民税につきまして、税額の計算は、年金収入だけある方ですと年金分の税というのが特定できますけれども、また別途年金以外の収入を持っておられる方もおられるわけでございまして、なかなか実務上も、年金収入、年金所得についての徴収率ということを把握することは困難であると考えております。
○重野委員 そこで、もう一つ、今回提案されております年金からの特別徴収、これは徴収率の向上のもくろみというふうなものが見え隠れするのでありますが、特別徴収か普通徴収か、納税者は選択できるのかどうかということが一点ですね。それから、年金は偶数月に支給されます。その際、二カ月分の住民税が引かれるというふうな理解でいいのかどうか。また、退職直後の住民税、これはかなりの額になると思うんですね。これは特別徴収の対象となるのかどうか。以上三点。
○河野政府参考人 まず、特別徴収と普通徴収を選択できるかというお尋ねでございますけれども、現在は、公的年金等に係る個人住民税額の徴収につきましては、これは普通徴収ということで、年四回、窓口等で納付をいただいているところでございます。したがって、納税者の方に納税の御負担をおかけしているところでございます。
今回提出した法案におきましては、こうした公的年金受給者の納税の便宜を図るという観点、また徴収の効率化を図るという観点両面から、特別徴収制度を導入することにいたしているところでございます。この徴収方法につきましては、特別徴収の方法によることを原則としておりまして、納税者が普通徴収の方法による徴収と選択できるような仕組みとはしていないところでございます。これは給与所得等についても同様でございます。
それから、具体的な特別徴収の方法でございますけれども、先ほど申し上げましたように、現在は普通徴収という形で年四回に分けて納付をいただいているわけでございますけれども、今回の特別徴収は、年金給付の支給の際に特別徴収するということでございますので、年金給付は六回行われるわけでございますので、六回に分けて特別徴収をするということになるわけでございます。
それから、退職後の徴収関係でございます。
公的年金から特別徴収をいたしますのは、住民税額を全部特別徴収するということではございませんで、公的年金等に係る個人住民税額を特別徴収の対象とすることにいたしております。
お尋ねの、給与所得者が退職された場合におきましては、給与から特別徴収ということはされなくなるわけでございますけれども、その分の税額は別途普通徴収の方法によって徴収されることになるわけでございまして、公的年金からの特別徴収の対象とはならないものでございます。
○重野委員 はい、わかりました。
次に、この間、消えた年金であるとか宙に浮いた年金等々の問題が国会で大議論になっているわけですね。支払った年金保険料が実はきちんと処理されていない、そんな状態の中で、取るものは先に取るという点において、これはやはり徴収する側の身勝手な制度ではないのかなというふうな感じがするんですが、そういう批判に対し、国はどういうふうに対応されておりますか。
○河野政府参考人 年金をめぐっては、いろいろ議論がもちろんあるところでございます。
今回の公的年金からの特別徴収の導入の趣旨でございますけれども、今後高齢化社会が進展することに伴いまして、公的年金を受給する高齢者が今後大幅に増加していくということが見込まれているわけでございます。
その中で、先ほども申し上げましたように、現在は、高齢者である公的年金の受給者の方につきましては、住民税は普通徴収の形で窓口等で納付をいただいているということでございますので、納税者から見ても手間がかかる仕組みになっておるところでございます。
こうした状況を踏まえまして、一方では、市町村の徴収の効率化を図るという観点もございますけれども、公的年金の受給者の方の納税の便宜を図るということもあわせまして、今回、特別徴収の仕組みを導入することにいたしておるところでございます。
この制度の実施に当たりましては、もちろん、年金受給者の皆様方に丁寧な広報に努めてまいりたいと思っております。
○重野委員 税を徴収する側、徴収される側、その間に信頼性がなければいけないわけで、こういう、どちらかというと取りやすいという方法を選択した以上は、そこら辺について、納める側に対する丁寧な説明をするということを常に心がけて対処していただきたいことを要望しておきます。
次に、証券税制について伺います。
今、日本の株式市場は、株価の乱高下、特に最近は、サブプライムの問題などで一日何百円も株価が変動する、こういうふうな事態が起こっております。その主な変動要因は、譲渡益目的の売買、これが盛んに行われている、あるいはそういう傾向が非常に顕著になってきている、その裏返しに今日の事態があるのではないか、こういうふうな指摘もあります。
市場経済ですから、そういったことが一定程度起こるのはいたし方ないことであろうと思いますけれども、できる限り安定と健全性が、取引をする層もさまざまあるわけですけれども、より卓越をした取引センスを持った人と、あるいは、素人という言葉は語弊があるかもしれませんが、やはりそういう幅がありますね、そういう人を考えるときに、安定と健全性というものが保障されるべきである、このように思うんですね。
そこで、今回、証券税制の改正の中で特例措置が設けられております。その中で、譲渡益について五百万円以下、配当については百万円以下を軽減税率の適用とするとしておりますけれども、その根拠は那辺にありや、この点について質問します。
○河野政府参考人 お話ございましたように、今回の改正の中で、上場株式等の配当、譲渡益に対する軽減税率を基本的に廃止するとともに、二年間、一定の金額以下の配当あるいは譲渡益につきまして経過措置を設けておるところでございます。
上場株式等の配当、譲渡益の課税につきましては、これは所得税、住民税あわせた、共通の制度、一体的な制度として軽減措置を講じたり、あるいは制度を仕組んでおるところでございます。その中で、五百万円以下の譲渡益なり百万円以下の配当について経過的に軽減措置を講じるというこの考え方でございますけれども、これは、軽減税率を廃止いたしまして、平成二十一年以降税率を二〇%に戻すということに当たりまして、平成二十一年、二十二年の二年間の特例期間中は、多くの一般個人投資家にとって軽減税率が適用されて、円滑に新制度への移行を図ることができるように、投資家から見てわかりやすい数字ということで設定をしているものでございます。
○重野委員 この新しい制度のねらいは、今言うように、株式市場により多くの資金が入ってくる、あるいは取引をする方がふえてくる、そういうことをねらってやったんだということですね。
次に、上場株式などの譲渡損失と配当との間の損益通算を導入する。この譲渡損失と配当というのは性格が全く違うものですけれども、この性格の全く違う二つを通算する理由と、その正当性というんですか、それは一体どういうふうに見ておるのか、お聞かせください。
○河野政府参考人 今回の改正の中で、上場株式等の譲渡損と配当との間で損益通算を行うという仕組みを導入することにいたしておるところでございます。
これは、金融所得課税につきましては、個人の金融商品選択におきます課税の中立性を確保していく、そして投資リスクを軽減できる簡素でわかりやすい税率を制定するという考え方で、金融所得課税の一体化を進めることが重要だというふうに考えられておるわけでございまして、政府税調の答申におきましても、「金融所得間の損益通算の範囲を本格的に拡大していくべきである。」こういった答申もいただいているところでございます。
今回、こうした金融所得課税の一体化の方向に沿いまして、上場株式等に係る軽減税率一〇%を廃止いたしますとともに、上場株式等の譲渡損失と配当との間で損益通算ができる仕組みを導入することにいたしておるものでございます。
○重野委員 最後に、譲渡損失。これは株主がいつでも発生することができると思います。配当が多い年に意図的に、それまで塩漬けされた株式を損切りする行為を惹起するのは、これは明らかになってくると思いますね。明らかですよ。
特に、高額所得者が有利に操作できる、そういう余地を残す、そういう問題はないのか、この点についてお聞かせください。
○河野政府参考人 先ほどもお答えしたところでございますけれども、今回の改正におきまして、個人の金融商品選択におきます課税の中立を確保する、そして投資リスクを軽減できる簡素でわかりやすい税制とするということで、金融所得課税の一体化の方向に沿って、この損益通算の仕組みを導入することにいたしているわけでございます。
株式の保有者は必ずしも高額所得者に限られているわけではございませんで、中低所得者層の株式等の保有が近年増加していることもございます。そうした中で、多くの一般個人投資家にとってその効果が及ぶものというふうに考えております。
○重野委員 具体的に、株式取引をしている方々のうち、今回の税制の改正によって、大体どれくらいの比率の方がこのことによってその成果を得ることができるというような試算はされておりますか。
○河野政府参考人 具体的に、どの程度損失が発生して損益を通算できるかというのは、これは非常に推計は困難でございますので、そういった作業は行っておりません。
先ほど、広く一般の個人投資家にも効果が及ぶというふうに申し上げましたけれども、これは日本証券業協会が行った調査で、個人の年収別に株式の保有の状況がどうなっているかという数字を調査したものがございます。個人年収で申し上げますと、これは全体の、人数のシェアでございますけれども、年収三百万円未満の方が四三%ぐらいおられます。それから、年収三百万円から五百万円の方が二九%おられまして、足して七〇%ぐらいになっておるという状況でございますので、かなり個人の一般投資家の市場への参加というのは促進されてきているというふうに考えております。
○重野委員 終わります。
○渡辺委員長 次に、桝屋敬悟君。
○桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。残された時間、審議をしたいと思いますが、大臣、予算委員会で呼ばれておられるそうで、どうぞ、退室いただいて結構でございます。
それでは、かわりに副大臣、おつき合いをいただきたいと思っております。
私は、短い時間でありますので、三点だけの議論をしたいと思っております。それもできるかどうかでありますが、一点目は、公益法人改革に関する今回の税制改正、とりわけ地方税の改正の問題について一点議論をしたいと思います。
今回の税制改正におきまして、ことしの十二月からいよいよ公益法人改革がスタートする、具体的に施行されるという段階になっておりますから、それに対応する昨年末の政府税調あるいは与党税調で議論された今回の税制の改正というのは、本当に大事な作業だと私は思っております。
民による公益の増進という公益法人改革、この目的を達成しなきゃならぬわけでありまして、非常に大事だと思っております。ただし、全国のさまざまな団体、あるいは、公益法人ですから、旧民法の三十四条法人と言われている相当の数があるわけであります、各省庁が所管をし認可してきた団体でありますが、その所管する省庁ですらそうでありましたけれども、公益法人改革に伴って税制がどうなるのかということが比較的余り本気で考えられていなかったな、理解が深まっていなかった、こう思っているわけであります。
例えば、旧民法三十四条の法人が設置するさまざまな施設について、地方税でいうと、例えば固定資産税あるいは都市計画税や不動産取得税など、今日まで公益法人だからということで非課税措置がされてきたものについて、今回の公益法人改革に伴ってどうなるのかという問題があるわけであります。
今回の公益法人改革は、公益認定等委員会によりまして、公益認定の基準に基づいて、公益性が認められれば、公益社団、公益財団になる。しかし、それが認められなければ、一般財団、一般社団として生き残ることももちろん可能なわけであります。公益法人、公益財団になるものは結構なんですけれども、一般財団、一般社団になる、移行せざるを得ないというケースもある。
今までは民法三十四条で、いわゆる公益法人であった、しかしそれが、公益性が認められないという事態が出てくるわけであります。具体的に言いますと、例えば医師会、各県によって公益法人として認められている医師会が病院を経営している、と同時に、看護師や医療関係の養成施設をあわせて経営されているというものは、今回の公益認定で、恐らく医療経営はイコール公益ということにならないわけでありまして、したがいまして、そうしますと一気に、今まで公益法人であったものが一般社団、一般財団ということになる。
そうすると、先ほど言いました固定資産税がにわかにかかってくる。もうかっている部分ならいいんですが、全然もうかっていない部分でありまして、それでは養成施設はやっていけないという事例がもうたちどころに出てくるということで、今日ただいまも、恐らく全国の社団、財団の皆さん方、相当頭を痛められていると思っております。
幸いに、税制改正では、一般社団、一般財団に移行した場合も当面は非課税措置が継続されるというふうになったと理解しておりますが、これはあくまで暫定措置でありまして、というのは、各省庁ですら忘れていたというか気がつかなかったというところがあったりいたしまして、いわゆる公益法人、民法の三十四条の公益法人であるがゆえをもって固定資産税等非課税になっているケース、例えば幼稚園とか医療関係の養成所、あるいは図書館や博物館、中には寄宿舎などもあるわけでありまして、こうしたものは、とりあえず非課税措置を継続するとなりましたけれども、ぜひ十分各省庁と連携をとっていただいて、実態を十分把握して、私は、公益法人改革に伴ってどういう結論を出すのかということはきちっと検討を進めていただきたいと思っておりますが、谷口副大臣の御見解を伺いたいと思います。
○谷口副大臣 今桝屋委員がおっしゃられたことは大変重要でありまして、この公益法人改革三法が成立をいたしまして、抜本的に公益法人が変わってくるわけでございます。
そこで、今桝屋委員がおっしゃった、税のあり方がどのようになるのかというのが大変関心の持たれておったところでございます。桝屋委員自身が昨年末の与党の税制協議にも参加したとお聞きいたしておりますけれども、今おっしゃったように、今回は、公益認定を受けて二階に行ったところは、従来の公益法人としての税制上の恩典を受ける。しかし、行けないようなところ、一般財団、一般社団になった場合にはどうなるのかということが大変危惧されておったわけであります。
今回、まずは公益認定を受けた法人については、桝屋委員おっしゃったように、非課税に当然ながらなるわけでございます。また、一般社団、一般財団に移行した法人が設置しております既存の施設につきましては、今回いろいろな協議の状況があったようでございます。先ほど桝屋委員がおっしゃった医師会立の病院が経営をいたしておりますような看護師の養成所、このようなことも課税をされるのではないかというような状況であったわけでございますが、今回、最終的には、二十五年度まで非課税とするということにいたしたわけでございます。
経過措置でございますから、二十五年度末の後、平成二十六年度から以降はどういうような状況になるのかということでございますが、これは新制度へ移行するわけでございます。その際、移行の状況であるとか施設の使用実態等を踏まえまして、平成二十五年度までに検討いたしたい。これは各関連府省とも協議をして、速やかにこの方向性を出していきたい、このように考えております。
○桝屋委員 今、副大臣がお答えになったように、速やかにということをぜひ総務省において念頭に置いてもらいたいな。二十五年まで、どうせ公益法人改革もこれから五年ぐらい続くんだから、その様子を見てというようなことではなくて、公益法人改革の意味するところを税制でどう実現するかということでありますから、早急に実態を把握の上、検討を進めていただきたいとお願いをしておきたいと思います。
それからもう一点。実は、公益法人改革に関係なく、今までも公益法人でこれからも多分公益法人であろうという中に、今議論になっております固定資産税の恩典が受けられていない団体もあるということです。せっかく公益法人改革する段階でありますから、もう一回見直してもらいたいということで、私ども与党、公明党も、自民党にも強い要請があった社団法人日本芸能実演家団体協議会、いわゆる芸団協ですね、野村萬先生のところであります。能の舞台あるいはけいこ場として能楽堂が全国に十三カ所ぐらいあるわけでありますが、これが、固定資産税、全く手当てされていない。
我が国が誇る伝統芸能を将来に残していくという非常に大事な施設だと私は思っておりますが、これが今まで、公益法人であったにもかかわらず措置されていないということで、強い要請もあったわけでありまして、固定資産税の取り扱いについて強い要望もいただき、我々も働きかけたわけでありますが、結果的にどうなったのか、改めて議事録に残したいという思いもありまして、お答えをいただきたいと思います。
○谷口副大臣 今、桝屋委員おっしゃった能楽堂、重要無形文化財になっております能楽等の伝統芸能につきましては、これからの時代に保存し、また継承していく必要がございます。
そういう意味におきまして、これが広く公開をされるということが非常に重要なのでありますが、能楽のように、ちょっとこれは特殊といえば特殊なんですが、特別な施設が必要なのでございます。その特別な施設が、施設の構造上、他の用途に利用しにくいというような状況がございます。ですから、能楽堂をやっていらっしゃるところは運営が極めて困難で、収益状況も非常に悪いというような状況がございまして、今回、そのことをかんがみまして、特例措置を創設するということにいたしたわけでございます。
具体的には、公益財団法人、公益社団法人の所有する重要無形文化財に指定された伝統芸能を公演するために必要な施設の用に供する土地及び家屋につきまして、平成二十二年度分までの、今おっしゃった固定資産税、都市計画税の課税標準を二分の一といたします。また、平成二十三年三月三十一日までに取得する不動産取得税の課税標準を二分の一とするというようなことにいたしております。
また、これは二年間の暫定期間の経過措置ということでございますが、またその後、二年が経過した段階で見直しをさせていただきたいというように考えております。
○桝屋委員 ありがとうございます。
まさに、今回の公益法人改革の一連の作業の中で、我が国の伝統芸能を政治あるいは行政が応援するという形を一つ、一歩踏み出せたかな、こう思っておりまして、大変喜んでおるところでございます。二年間、また我々も関心を持ち、彼らの活動を見ながら、二年後の検討に向けて努力を続けていきたい、こう思っているところであります。
最後、時間もありますので、もう一点だけ。
副大臣、先日この委員会で、個人住民税の寄附金控除について確認をさせていただきました。これは、今後は総務省でも一歩寄附文化を進めるということで、今回の税制改正、一歩進んだわけでありますが、それぞれの市町村が団体の寄附を指定して、そこは税額控除を受けられる、こういう制度が始まったわけであります。
多分、その地域だけの、当該市町村にある公益法人等だけを指定するということではない、これは、国が認定をした公益法人についても対象になるんだろう。何も自分の市町村だけでなくて、よその、例えば国が認定したものあるいは他の都道府県が認定をしたような団体についても、当該市町村で指定をするということは可能だと思いますが、それはこの前答弁で伺いました。
逆に考えますと、こうした団体がこれから、例えば政令市あたりで、名古屋市でその指定を受けて活動を進めたいと思ったときに、では、どこへ行けばいいのかというようなことがあるわけであります。法人や団体の立場に立って、使いやすい制度にするために、法人がどこへ行って働きかければいいのか、ぜひ法律の成立後、法人を対象としたマニュアルのようなものを総務省でも御検討いただきたいなとお願いをしておきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○谷口副大臣 今、桝屋委員がおっしゃった、今回、寄附金税制を大幅に見直し、拡大をさせていただきました。
我が国の寄附文化を醸成していくということであるとか、地域に密着した民間の公益活動を支えていくということが重要だということで、今回、地方税におきましても、個人住民税寄附金税制を大幅に見直したところでございます。
これは前にもおっしゃったわけでございますけれども、所得税の控除対象寄附金のうち、地方団体が条例で指定した寄附金を個人住民税の寄附金控除の対象とするという制度を設けたわけです。これは、従来所得控除でございましたけれども、これを税額控除であるとか、今まで十万円だったものを、その最低が五千円までになるという、大幅に拡大をいたしたわけでございます。
そのような中で、今委員がおっしゃった、各団体がその団体内のところだけではなくて、区域外に所在する団体に対する寄附金であってもどうなのかということは、前回お尋ねになったところでございますが、これは前回申し上げたと思いますけれども、それでも条例で定めていただければ可能であるというようになったわけでございます。
ですから、それぞれの地方団体の方で条例を定めていただきまして、当該団体が寄附をもらったときに、寄附金控除の対象とするというようなことについて、今おっしゃったようなマニュアルをつくってもらいたいというようなお話があったわけでございますが、なるべくわかりやすい資料をつくりまして、まだまだ地方団体の方は、どういうようにやろうかというような、悩んでいらっしゃるといいますか、そういうところがあるんだろうと思いますので、わかりやすくした資料をつくるように、省内でさせていただきたいと思います。
○桝屋委員 ありがとうございます。前向きな御答弁をいただきました。
地方自治体、それぞれの地方団体もそうなんですが、寄附を受ける、指定を受ける側の法人の立場に立っても、そういうマニュアルが必要だと思っておりまして、あわせてぜひお願いしたいと思います。
以上で終わります。ありがとうございました。
○渡辺委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午前十一時九分休憩
――――◇―――――
午後二時開議
○渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
午前に引き続き、内閣提出、地方税法等の一部を改正する法律案、地方法人特別税等に関する暫定措置法案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
本日は、各案審査のため、参考人として、熊本県知事潮谷義子君、法政大学法学部教授五十嵐敬喜君、中央大学総合政策学部学部長・教授横山彰君及び日本自治体労働組合総連合副中央執行委員長田中章史君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中のところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと思います。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、各参考人の方々からそれぞれ十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
それでは、まず潮谷参考人、お願いいたします。
○潮谷参考人 皆様、こんにちは。熊本県知事の潮谷義子でございます。
皆様方には、日ごろから地方財政の運営につきまして御支援を賜り、お礼を申し上げます。また、本日は、地方税財政に関する重要な法案の審議にお呼びいただきまして、ありがとうございます。正直、ただいま大変緊張してこの席に立っております。
法案への意見を申し上げます前に、その前提となります最近の地方財政運営の状況につきまして、熊本県を例に引きながらお話をさせていただきたいと存じます。
私の知事就任は、平成十二年の四月でございました。まさに地方分権一括法が施行されたときであり、以来、今日まで、地方分権の歩みと時期を一にしております。地方の実力が試される時代を迎え、自己決定、自己責任の視点に立って、いかにして熊本の独自性を発揮するかに心を砕いてまいりました。
しかし、平成十二年当時は、バブル崩壊後の長引く経済不況から脱却を図るため、国の数次にわたる経済対策に対応した結果、熊本県は極めて厳しい財政状況に陥っておりました。
例えば、昭和六十三年でございますけれども、県債残高は四千億弱でございましたが、それから十年後、平成十年でございますけれども、一兆円を超えてしまう状況の中にございました。そのため、知事就任後、直ちに手がけたのが財政健全化です。職員数の削減、職員給のカット、一般事務経費については三年間で三〇%の削減、さらに県単独の公共事業費についても、同じく三年間で三五%削減する、こういった厳しい状況の中にございました。その一方で、企業誘致などを積極的に進めることによりまして、将来の税財源を涵養するという施策展開を図ってまいりました。
財政調整用の基金について申し上げますと、実はピーク時、一千三百億近くあったものが、底をつくような状況の中にありました。私ども、どうしても財政健全化の中で取り組んでいかなければならない、こういうようなことをしっかりと念頭に置きながら、その結果、基金は増加傾向に入りました。また、平成十五年には、臨時財政対策債を除いた県債残高がついに減少に転じるなど、財政健全化の兆しがようやく見えてきた、そのような状況の中で、御承知のとおり、平成十六年、三位一体の改革が行われたところでございます。私どもは、三百億円もの地方交付税が一遍に削減される、こういうような経験をしたところでございます。本県のように、県税の収入が歳入全体の約二割しかない自治体にとりましては、これはもう大きな打撃と言わざるを得ません。
その意味では、知事としての歩み、これは二期八年、まさに行革の連続であった、このように申し上げてよろしいかと思います。
以上、地方の財政運営の実情をお話しさせていただきましたが、それらも踏まえて、地方自治体を預かる者として、地方税財政の法案に対し意見を申し上げさせていただきます。
まず、地方法人特別税等に関する暫定措置法と、地方交付税法等の一部を改正する法律の関連について申し上げます。
ただいま申し上げましたとおり、県の財政状況が非常に厳しい中、このたび、一般財源の増額確保と税収格差の是正の観点から、地方法人特別税と地方法人特別譲与税が創設され、また、制度上の効果がまだ発揮されない平成二十年度におきましても、地方交付税への地方再生対策費の創設によりまして一般財源の増額確保が図られましたこと、これは私たち地方にとって、とりわけ熊本にとりましては、本当に、とりあえずはほっとした、こういうような状況の中にございます。
ただ、今回の制度導入は、地方税体系の抜本的改革が行われるまでの暫定措置でございますので、地方消費税の充実などによる偏在性が小さく安定的な地方税体系の構築に向けて、早急に本格的な議論に入られますように、私の方からもお願いを申し上げます。
また、社会保障関係費など福祉や医療の経費が少子高齢化の現実の中で増大し、その他の予算を圧迫してきておりますので、これらの財政需要を地方財政計画にきちっと反映されますよう、あわせて御提言を申し上げさせていただきます。
次に、地方税法等の一部を改正する法律に盛り込まれております道路特定財源の特例措置の適用期限の延長、いわゆる暫定税率の維持につきまして、三つの観点から申し上げさせていただきます。
一点目は、時期の問題でございます。
私は、道路特定財源について、幅広い観点から制度改革の議論が行われること自体を否定しているものではございません。また、現実に、ただいま多くの国民の皆様方が原油の高騰に苦しんでおられることも十分に承知をしております。しかし、暫定税率の適用期限が三月末に迫る中、各自治体は、既に地方財政計画に基づき予算を編成し、議会に提案しております。地方は、今なお三位一体の改革による大きな傷跡が残ったままであり、その上に暫定税率廃止という事態が起きれば、予算全体を見直さなければならなくなり、大混乱に陥る、このように申し上げてよろしいかと思います。だからこそ四十七都道府県の知事が、また、ほとんどの市町村長が暫定税率維持の声を上げている実情、その重さを御理解いただきたいと心から願うところでございます。
二点目は、暫定税率の廃止が、道路のみならず、道路以外の分野にまで大きく影響を与えることでございます。
熊本県を例に御説明いたしますと、総額で九百二十億円ございます道路関係予算の約四五%を、国税及び県税の道路特定財源で賄っております。そのうち、県税分の道路特定財源は約二百二十億円で、暫定税率が廃止されますと百億円の減収となり、百二十億円しか入ってまいりません。これまで道路整備の財源として発行した県債の返済に充てている百七十億円にも五十億円の穴があいてしまいます。県勢の発展を全く考えなければハード事業の凍結は可能ですが、県債の返済は行わざるを得ません。そのためには、県民生活に直結した福祉や医療、教育などの予算から補てんせざるを得ない状況となります。
熊本県では、人件費、扶助費、公債費など、義務的な経費を除いた政策的な経費に使える一般財源は、予算規模の一割にも満たない六百七十億円程度でございます。これが、地方の特色、特質を出し、分権社会にふさわしい政策を実施するための財源となっております。そうした中で五十億円の穴埋めをする、この削減というのは、極めて厳しい状況にございます県財政に深刻なダメージを与えますとともに、サービス水準が低下したり負担が増加するなど、県民生活に多大な影響を及ぼします。暫定税率の廃止は、道路整備を行わなければよいというだけでは済まないことを御理解いただきたいと思います。
三点目は、道路整備の必要性です。
特に熊本県は、交通手段として自動車を利用している割合が九七%と、全国平均の七二%をはるかに超えております。生活の多くを自動車に頼っており、道路は県民生活を支える根幹的な社会基盤と考えております。しかし、地域の生活にかかわり深い県道におきましても、その改良率は五八%と、全国平均の六六%を下回っております。
十年間という暫定税率の延長期間につきましては、いろいろな考え方がございますので、今後とも論議が必要と考えております。しかし、熊本県という立場から申し上げますと、県民の悲願でございます九州新幹線鹿児島ルートの全線開業がいよいよ三年後に迫っており、縦軸の新幹線に対する横軸の道路や、平成二十八年度の完成を目指した連続立体交差事業の整備など、おおむねの目途や道筋をつけなければならないのがただいまでございます。
また、県内には、阿蘇に並ぶ有数の観光地として天草がございますが、ここは今なお熊本市から二時間以上かかっております。隣県の福岡までは高速道路を使いますと一時間余りで到着いたしますが、県内にはこのような場所が至るところにあり、道路整備がまだまだ必要な状況にございます。
さらに、本県と同様に全体として自動車の依存度が高い九州におきましては、縦横の幹線道路のネットワークの整備は、九州全体が一体となって発展するために大変重要でございます。この観点から、国直轄事業が減少し、必要な幹線道路の整備がおくれることは大きなマイナスとなります。
無駄な道路が多いといった批判をよく耳にいたしますが、熊本県では、道路特定財源では足りず、県債や一般財源も投入しながら、計画的に道路整備を進めております。公共事業に対する県民の目も厳しく、そもそも無駄な道路を整備するほど財政的な余裕がないことは前述したとおりでございます。熊本県の場合にはそのような批判は当たらないのではないか、このように考えております。
ここで、道路特定財源の一般財源化について少し触れさせていただきますと、そもそも暫定税率は、おくれている道路整備に充てるために税率が上乗せされております。したがって、納税者の理解を得ず、暫定税率を維持したままで全体を一般財源化するのはいかがかと私は考えております。また、一般財源化されますと、道路以外に転用され、道路整備に振り分けられる予算全体が縮小し、道路整備が停滞するおそれが生じるのではないでしょうか。
これまで都市部の道路整備が先行する中で、地方の道路整備がようやくこれからという、そういうような時期に一般財源化されるのは納得できるものではありません。さらに、地方の道路予算は道路特定財源だけでは足りておらず、少なくとも地方にとりましては、道路特定財源の一般財源化という議論は成り立たないと考えております。もちろん、道路特定財源の使われ方に関しましては、説明責任、費用対効果、情報公開が求められていることは当然であると申し上げなければなりません。
以上、法案に関し意見を申し述べました。地方自治体が安心して財政運営に当たられるよう、速やかに法案を通していただきたいと思っております。よろしくお願いを申し上げます。
最後に一言申し上げます。
地方が、自己決定、自己責任によって、それぞれの地域の実情に即した施策や事業を展開できるようになる地方分権型社会の実現のためには、国と地方が協力、連携して、日本を思い、日本をつくる、この視点が最も重要ではないか、このように考えております。
どうかその視点を欠くことなく、今後とも地方税財政について御議論いただきますようお願い申し上げまして、私の意見とさせていただきます。
ありがとうございます。(拍手)
○渡辺委員長 ありがとうございました。
次に、五十嵐参考人、お願いいたします。
○五十嵐参考人 五十嵐です。きょうは、お招きいただきましてありがとうございました。
私は、地方税財政に関して最も大きな影響力を持っていて、かつ、今日的な話題になっている道路特定財源に焦点を合わせまして、私の意見を述べさせていただきたいと思います。
事前に皆様にレジュメをお出ししておりますので、これに基づいてお話しさせていただきますけれども、時間が十五分という形で限定されておりますので、とりあえず概略的に全体的な説明をさせていただきまして、もし不審なところがありましたら、後での質疑応答等でお答えさせていただくという形にさせていただきたいと思います。
まず、一般市民から見まして、今回の道路特定財源の議論については、非常に大きな点で不信がございます。
一つは、小泉総理大臣のもとで、皆さん御承知のとおり、道路公団の改革と民営化の議論が行われました。さらに、その際、民営化以降の道路についていろいろな意見が行われておりました。平成十八年十二月八日に道路特定財源に関する閣議決定がありまして、限りなく一般財源化を目指すということが決定されております。安倍内閣でもこの姿勢は継続されたと思いますけれども、福田内閣になりましてこれが突如変更されまして、道路特定財源に対する非常に大きな合唱が出てまいりました。
この変更の理由というものが国民にはなかなか見えてこないということがありまして、政治に対する信頼感がないということを最近言われておりますけれども、こういう閣議決定の存在根拠、あるいは小泉総理大臣の国会での発言に対する責任、こういうことが非常にあいまいになっているというところが非常に大きな不信を生んでいるのではないかということをまず第一点、申し上げたいと思います。
二番目は、国の政策に関してでありますけれども、道路特定財源は、御承知のとおり、道路中期計画と一体となっております。中期計画は十年という期間限定でありますけれども、このような時間を限定した計画を立てるということについては既に国会で修正されております。従来、公共事業に関してはさまざまな五カ年計画がありましたけれども、こういう計画は、いわば暫定的な措置である計画を永遠に延長するものであるとか、あるいは予算消化だけに使われるとか、あるいは縦割り行政を生むということがありまして、全国総合開発計画とともにすべての五カ年計画は廃止されまして、社会資本整備重点計画というものに移されております。
この中で、突如道路だけがまた十カ年計画という形で浮上してきたことについては、どういう脈略なのか、ほとんど説明がつかないまま議論されていることについて非常に不信を抱きました。
さらに、道路中期計画の中身についても言いますと、当初、御承知のとおり、六十七兆円というふうに言われておりましたけれども、これが、数日とか一週間程度ですか、そのぐらいで現在の五十九兆円に変更されております。数兆円の変更というのは莫大な予算でありまして、これがなぜこういう形で変更されるかについてもほとんど国民に説明されておりません。
従来、道路公団民営化以降の残りの道路についてどうするかということ、これは、いいかどうかは別にしまして、それを全部つくるとしたらおおよそ二十兆円ぐらいというふうに説明されておりましたけれども、この五十九兆円と二十兆円との間も、どういう脈絡で五十九兆円になっているのか、さっぱり説明がつかないという形になっておりまして、明らかに国土交通省あるいは政府全体の国民に対する説明責任が不足しているのではないか、根本的にこの中期計画は何だろうかというふうにまず思います。
二番目は、最近は、この道路中期計画に関するいろいろな資料が少しずつ出てまいりました。その中で、道路交通需要予測というのがございまして、これを見ておりますと、大方は、第一番目には四全総、今から二十年前の計画に基づいて、一万四千キロというのを前提としてはじき出されているということであります。
しかし、四全総と今日、二十年後では、将来の人口予測等について全くの逆転現象が生じておりまして、この人口予測を見てみますと、近未来には急激に人口が下がってきております。そういうときに、四全総で、いわば人口増を前提としたこういう計画が今もって維持されるべきかどうかについては、道路需要予測においても慎重な考慮が必要だと思いますけれども、これが修正された動きはございません。この点で不信があります。
三番目は、道路が必要だとあちこちから聞こえてきているんですけれども、しかし、それでは、例えば本四橋の赤字とか、アクアラインの赤字だとか、その他多くの道路の赤字について、どのようにこれに対処するのかについても、政府側からほとんど見えてまいりません。このままいきますと、民営化した道路についても、自動車量と通行料の低下によって、ひょっとすると民営化自体の四十兆円を四十五年かけて返すというあの採算すら狂うのではないかと言われております。全体的な道路の赤字状況についての説明をあわせて計画をつくるべきだと思いますけれども、これについても説明がよくなされていないというふうに思います。
さらに言いますと、これは根本的な問題だと思いますし、国会での一番大きな問題がここにあると思いますけれども、こういういわば中期計画等、この計画論について、一体だれが決めるのかということを、これは私は再三にわたって、ずっと国会でも何回か意見を言わせてもらってきましたけれども、この中期計画については、国会の議決というのはありませんで、要するに、国土交通省が定めて内閣が決めればこれでよろしいということで、十年間で五十九兆円という途方もない額を使う計画について国会議決がないというのは極めておかしなものだというふうに思いまして、今回、これが慎重に審議されることを望みたいと思います。
それから二点目は、道路の実情でございます。先ほどもいろいろな人からいろいろな意見がありますけれども、道路は足りない、足りないというのが日本の合唱でありますが、客観的に世界と比較いたしますと、可住地面積で見ますと日本は断トツ、道路王国になっています。この点に御留意ください。
第二番目は、道路という場合に、今の国土交通省、旧建設省の道路だけではなくて、農水省の農業道路を加えますとこれは膨大な数になるということも考えていただきたいと思います。これらをあわせて、必要な道路はあり得ると思いますけれども、本当に将来十年間、道路を前提として五十九兆円も使うというほどの膨大な道路需要があるかどうかについては、恐らく修正を免れないというふうに思っております。
それから、道路についての三番目の論点は、道路だけが今問題になっておりますけれども、人々の交通には、道路だけではなくて、鉄道もございますし、バスもありますし、その他、飛行場、港などの交通計画もございます。五十九兆円の計画がこれらと本当に整合性がとれているかどうか、これをどのように見ているかについては、私が見ている限りでは余り活発に議論されていないように思いますけれども、全体的な交通の総合的な計画のもとで道路を考えていただきたいというふうに思います。
四番目、自治体についてでありますけれども、御承知のとおり、宮崎県など、道路が足りないということを盛んにアピールされております。その根拠として、ほかの県と比べて自分たちの県の自治体の道路は非常に不十分になっているということを、いろいろ資料を挙げております。
しかし、今回の特徴は、それでは、いろいろな指標から見て、道路についてかなり高い地位にある自治体の首長さんたちもあわせて、道路がまだ必要だと言っているということでありまして、自治体の格差を是正するために、いわば劣位の状況に置かれている自治体の道路を直してくれということではなくて、上位にある東京などいろいろな自治体も全部、道路が必要だと言っていることについて、非常に奇妙な感じがいたします。
それから二番目は、道路特定財源の問題でありますけれども、これは実際、先ほど参考人からも意見がありましたが、道路特定財源は、そのまま道路に使えるわけではありません。私の調べたところ、おおよそ三分の一強が自治体の道路に関する借金に回されます。つまり、いわば借金地獄になっているのが実情でありまして、そもそも、これだけの莫大なお金を持ちながら、なお借金地獄に陥っているというのも非常に奇妙な話でありまして、今回、そろそろ国の借金地獄に関するシステムを改めなければいけないのではないかというふうに思います。
それから三番目の論点は、このまま道路特定財源のシステムを維持しておきますと、果たして、今出ました熊本県とか宮崎県とか、よく言われる道路劣位の自治体の道路が、ほかの自治体と比べてより優先的につくりかえられるでありましょうか。これは私には不思議であります。
道路がいろいろ不均等につくられているのは、それなりの根拠があって道路がつくられていくと思いますけれども、今の特定財源の評価を前提とすれば、あくまで、今の道路の劣位にある自治体は依然として劣位にある。これを覆すためにはまさに政治が必要でありまして、政治家と道路の関係が再びクローズアップされてくる。これが道路特定財源の根源的な問題であるというふうに私は思っております。
それから、システムに関してもう一つ言いますと、道路財源はいわば麻薬のような状態になっております。端的に言いますと、自治体の持ち出しが少なくて大きな道路がつくれる。そういう意味では、自治体にとって非常に魅力であります。したがって、これは、永遠に道路をつくっていくという根拠になってまいります。
一方で、だから道路は要らないと言いますと、その財源がほかの自治体に持っていかれると、その自治体は極めて不利な状況に置かれるということでありまして、いわば中央集権構造とよく言われますけれども、これが、道路財源がそういう秘密を持っているということであります。
さらに不幸は、道路特定にいたしますと、その地域に必要ないろいろな施策が行えない。地域によっては、道路よりも福祉、医療、あるいは教育が必要だという自治体が当然あり得ると思いますけれども、道路特定財源にいたしますと、これが選択できない、国民から見ても非常に不幸な状態になっているということであります。
さらにもう一つつけ加えますと、道路をつくれば地域が活性化するというのは、いわば幻ではないかと私は思っております。少なくとも一九九〇年代以降、新しい道路をつくること、スピードをふやすことが必ずしも地域の活性化に役立たないという議論がたくさん出てまいりまして、道路が来れば地域が活性化するという幻想も、そろそろ現実をはっきり見たらどうかというふうに私は思っています。
最後に、一般財源化に関して申し上げたいことがございます。
道路について、ガソリンに関しましては、全世界どこを見ても、御承知のとおり税金をかけております。しかし、日本のように、道路特定財源という形で特定してこれを財源にするという国は全くありません。日本は非常に特殊な国だということを御承知して検討していただければと思います。
二番目は、自治体の危機感が今回非常にあらわれておりますけれども、それは、道路特定財源を一般財源化すると、そのまま地方自治体にそのお金が行くのではなくて、地方交付税とあわせて全体的にカットされるのではないかということで、いわば一般財源に対する批判と同時に、さらに、それを上回る心配事として、とにかく、一般財源化すると、今まで道路特定財源で維持されていた財源が減らされるのではないかという危機感が非常に大きいように思います。この点については、国、政党あわせて、一般財源化した場合にそのまま減らされることはないということを、何らかの形で自治体にメッセージを出していただければということです。
最後に申し上げたいことは、道路が必要かどうかという議論が今非常に行われていますけれども、それより重要なことは、必要かどうかをだれが決めるかということが今問われておりまして、従来までは、国土交通省と、それに伴う一部の人たちでありました。一般財源化しますと、必要かどうかを、実は、地域住民あるいは自治体が決められるようになります。政治システムの転換が非常に言われていますけれども、住民を道路に参加させる、あるいはもっと広げて政治そのものに参加させるということは今極めて重要な論点でありまして、道路特定財源化いたしますと、住民が道路に参加する、あるいは政治に参加するという選択肢が奪われる、しかもこれは十年間続くということでありますから、極めて大きな失政を行う可能性があるのではないかというふうに私は思っております。
以上です。(拍手)
○渡辺委員長 ありがとうございました。
次に、横山参考人、お願いいたします。
○横山参考人 中央大学の横山と申します。
本日は、地方税法等の一部を改正する法律案ほか二案について私の意見を申し上げる機会をいただきまして、ありがとうございます。
私は、大学で財政学、総合政策などを専門に研究している者でございますが、本日の三法案のあり方に基本的に賛成という趣旨で意見を申し上げさせていただきたいと存じます。
私の意見は二部構成になっておりまして、まず三法案全体の位置づけについてどういうふうに認識したらいいのかということを申し上げたいと存じます。それから各法案の意義について申し上げます。
まず三法案全体の位置づけでございますが、御案内のとおり、小泉政権の構造改革路線のケアという意味があります。すなわち、改革なくして成長なしということで、平成不況、あるいは不良債権問題、それから巨額な財政赤字などの経済財政問題を、構造改革を推進するということで克服できるんだという認識のもとで、さまざまな改革を進めてきております。一つは、財政赤字がかなりの額に上っているという実態からして、これは本当に持続可能性を持つ社会になっているのかどうかという心配が出てきたんだろうと思います。
ロールズという哲学者の言葉を引用させていただきますが、格差原理ということで、最悪の事態を想定しながら、一番不利な状況に置かれている人々にまず焦点を当てて、そうした人々の福祉を向上することが重要なんだということが一つの原則として出てきています。これは、完全平等を目指すわけではないのでございますが、一番不利な状況にある人々に視点を当てるということの重要性を指摘しています。
今、財政力格差が言われております。それからまた、持続可能性という言葉が、今、大きな価値あるいは理念のベースとして、現代社会を見る窓として多くの人々に共有されているということを申し上げたいと思います。
持続可能性について御説明するまでもないと存じますが、現代世代が利用している人工資本、あるいは人的資本、人口あるいは人々の技能あるいは労働の質などの人的資本、それから自然資本、それから法秩序などの制度資本を減らすことなく将来世代に引き継ぐことのできる可能性を、広く持続可能性という言葉で表現してございます。この言葉は、環境分野に限らず、さまざまな分野で論じられているのは御承知のとおりだろうと思います。財政の持続可能性、社会保障制度の持続可能性、日本社会の持続可能性、地域社会の持続可能性。今の少子高齢化の問題は人的資本の減耗ということで、将来世代に大きな問題を残すという認識のもとで、構造変化のもと、どうにか対応しなくちゃいけないということで、さまざまな公共政策が策定されようとしているんではないかと認識しております。
こうした持続可能性という観点から、今回の三法案についてどういうふうに認識するかということでございますが、今申し上げましたように、この三法案はロールズの格差原理に準拠していると認識できると私は考えております。さらに、持続可能性という観点からしても、この三法案は私はそれなりの役割を持つ法律になるんではないかと考えております。
これから、それぞれの法案について、簡単に私見を述べさせていただきたいと存じます。
まず地方交付税法等の一部を改正する法律案でございます。三位一体改革について種々の御意見はあろうかと思いますが、三兆円の税源移譲の実現による自主財源の強化、それから補助金の廃止縮小による地方の自由度の拡大、それから地方交付税総額の急激な削減ということで、これが問題になっておるのでございますが、全体としては地方分権の進展に寄与している、こういうふうに評価できると考えます。
しかし、今お話ししましたように、地方交付税の削減が余りにも急激であったので、財政力の弱い市町村、とりわけ人口五千人規模の町村にきしみが生じているということです。これについて手当てしなくていいのかというと、どなたも、それは手当てすべきだという話になるんではないか。こういう観点で、今回の地方交付税法等の一部を改正する法律案が正当化できる、このように考えてございます。
次に、地方法人特別税等に関する暫定措置法案でございます。これは地方分権の推進それから地方税源の拡充ということで、これも恐らく政府税調でも多くの委員が意見を共通しているんではないか、これはあくまで私見でございますが。地方消費税の充実こそが、地方分権、あるいは先ほど来お話ししています地域格差ということについての大きな方向性としては正しいんではないかという認識があろうかと思います。ただ、今地方税を含む税体系の抜本的改革が行われてございませんので、この点については暫定的に今回のような措置、すなわち消費税の一%分について法人事業税の一部を分離して、そして地方の共同税化の精神に基づいて地方法人特別税という仕組みをつくった、このように理解してございます。
最後の残りの時間で、地方税法等の一部を改正する法律案、特に道路特定財源について意見を述べさせていただきます。
これは三つの事柄を考えなければならないんではないか。一つは、暫定税率をどうするかという問題。二番目は、一般財源化ということで、特定財源と一般財源どちらが望ましいかという、理論的な、財政学的な観点からの整理。そして三番目が、これまでの過去の道路特定財源をめぐる一般財源化の経緯をどう理解するか。この三点があろうかと思います。
まず暫定税率でございますが、今回の政府案は、道路整備の必要性だけではなくて、厳しい財政事情、環境面への影響を踏まえ、現行の税水準を維持することが妥当であるという認識に立っていると思います。私個人としては、環境税としての役割を付加し、さらに高い税率でもよしという考え方も一つなんではないかと。ただし、純粋な炭素税ではない、潜在的な炭素税、目的はCO2の排出抑制ではなくて、ほかの道路整備、あるいは環境も含めてでございましょうけれども、他の税収を調達する、財源を調達するという目的のもとで上げられている税だとしても、潜在的な形で環境に資しているという認識を持つべきだと考えます。
次に、一般財源化についてどう考えるのか。これは、伝統的な財政学ではノン・アフェクタシオンという原則がございまして、こうした道路特定財源だけではなくて、消費税の福祉目的税化みたいなものまでいけないという考え方。すなわち、政府が効率的なやりくりができるような仕組みが望ましいという考え方からして、この一般財源化こそが正しいことだという認識が伝統的財政学にはございます。
ところが、ブキャナンというノーベル経済学賞を受賞した財政学者は、そういう考え方はとりません。どういうことかというと、一般財源の調達の仕方は抱き合わせ販売で、納税者の意思とは関係ないものがパッケージになって、そしてそれを納税者は買わなければならないというデメリットがあるという認識を持ちます。特定財源だからこそ今のように納税者が物を申せるのではないか、こういう意味での納税者主権のよりどころとして特定財源を正当化する議論もあることを御承知おきいただきたいと思います。
とはいえ、今のような道路特定財源がいいのかということは、恐らくこれまでの、行革推進法の成立、あるいは平成十八年十二月八日の閣議決定、それから平成十九年の十二月七日の政府・与党の見解、こういうことを考えますと、パーフェクトな制度がないと同じように、パーフェクトな人間がいないと同じように、税もパーフェクトなものはあり得ない。そうすると、どういうことなのかというと、やはりこの両者のよいところをどうにか折り合わせるという、まさに政策的な思考が求められているのだろうと私は考えてございます。
申し上げたいことは、行革推進法の第二十条の第三項三号では次のような文言がございます。「特定財源制度に係る税の収入額については、一般財源化を図ることを前提とし、平成十九年度以降の歳出及び歳入の在り方に関する検討と併せて、」この後が重要です、「納税者の理解を得つつ、具体的な改正の案を作成するものとする。」納税者主権の考え方です。
そして、昨年の十二月の考え方は、揮発油税の税収等の、ひもつきというんでしょうか、特定化については、道路整備費の財源等の特例に関する法律については、政府・与党もこれは見直す必要があると認識を持っています。
地方の道路財源については、暫定税率はおいて、本則は税法上特定財源がちゃんと明記されているということも御理解いただきたいと思います。
以上のように、持続可能性という観点からしても、当該三法案が地方分権の進展に寄与し、来るべき消費税を含む税体系の抜本的改革にも資するものと考える次第です。
これをもちまして私の意見とさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
○渡辺委員長 ありがとうございました。
次に、田中参考人、お願いいたします。
○田中参考人 日本自治体労働組合総連合副委員長の田中と申します。
お手元に一枚の裏表のレジュメと、私どもがつくりました医師確保についての提言のチラシも置かせていただいておりますので、御参考いただけたらというふうに思います。
このような発言の場を本日与えていただきましたことに、まず感謝を申し上げたいというふうに思います。
私たち日本自治体労働組合総連合、略称で自治労連と申します。全国の地方自治体で働く公務員また関係労働者二十万人で組織をしておりまして、地方自治と住民の暮らしの発展と自治体の公務公共労働者の権利擁護を一体の問題としてとらえた運動をしていこうということでつくられた労働組合でございます。
現在、各地で、憲法の問題ですとか地方自治に関すること、地方財政のこと、地域医療の問題などで、自治体首長さんを初めとして、関係者との懇談や対話を行ってきておりまして、本日は法案にもかかわりまして、そうした取り組みを通じて、今現場がどうなっているのかということを特に中心にしまして、参考人としての意見を述べさせていただきたいというふうに思います。
まず第一番目は、今の地方自治体の状況、地方財政の危機をどうとらえるかという問題です。財政力の格差という論点が比較的多いと思うんですけれども、私たちは、各地を回る中で、今の地方財政危機が、住民の命や暮らしや地域を支える自治体の役割そのものが存立できなくなっている、大変な危機的な状況ではないかというふうに受けとめています。地域で命が守れない、地域が崩壊してしまう、そういう認識を自治体関係者が多く持っているのが特徴ではないかというふうに思います。同時に、このような事態が進むと、国土の保全や社会保障制度など、日本の社会の将来設計についての重大な問題を抱えてしまうのではないか、そのように認識をしているところであります。
そういう点で、今回の法案を見ましても、国の責任で抜本的な地方交付税の増額措置などを初めとした地方財政計画の大幅な増額などが図れない限り、また、社会保障構造改革などを進めてきた結果として医療費抑制などが進んでおりますが、こうした問題の構造改革の流れを抜本的に切りかえていくことこそが今求められているというふうに私たちは認識をしております。
具体的に、起きている問題が、三位一体の改革や交付税削減だけではなくて、社会保障費の削減などの構造改革で複合的に地域で問題が生じてきているというふうに思っています。
その点で、二番のところは、具体的に、自治体の首長さん、病院の院長さんたちの声を記載しておりますので、詳しくはごらんいただけたらと思います。
実は、朝日新聞が昨年十一月中旬に行いましたアンケートがございます。財政健全化法をどう受けとめるかというアンケートでございまして、〇七年十二月十二日の朝刊で発表がされております。一千七百五十二の自治体、ほぼ九五%から回答があったというふうに言われています。料金の改定を三割の自治体で検討する、三百七の自治体では病院のあり方を見直す、そのうち百二十五では病院の民営化や診療所化を進めていく、そのように答えておりますし、施設運営の民営化の検討も八割で行われようとしている、六割の自治体で施設利用料金の引き上げ、四割弱の自治体で小中学校の統合や保育所の民営化が示される。
まさに、三位一体改革や健全化法を背景にして、自治体の役割の縮小、撤退、負担増が全国で起きる状況がこのアンケートから見えてくるのではないかと思います。
二番目は、自治体病院につきまして、二月以来、私たち、自治体関係者や病院関係者と懇談をしておりますが、今地域医療が崩壊するのではないかというふうなことが言われている中で、多くの方々が、医療費と医師抑制政策、そして地方交付税の削減や市町村合併などの自治体構造改革が三重苦という形で今地域を襲っているのではないか、そのように多くの関係者が述べられております。自治体病院がもう持ちこたえられない、地域医療が崩壊してしまう、総務省の公立病院改革ガイドラインは公立病院を解体する計画だ、そのように述べられている首長さんもたくさんいらっしゃいました。
まさに、政府の政策への怒りとともに、積極的な院長さんたちの提案もございました。医療制度を抜本的に変えないとだめだ、今の医師不足問題は勤務医の方々の問題なんだということで、リスクの高いところに医者は行きたがらないんだ、医師確保をするためには医師が安心して働ける環境や魅力ある病院をつくることが必要だ、そのためには一般会計からの持ち出しなどはしっかりしてもらわなきゃ困るんだ、そのようなことを言われておりました。
ここには書きませんでしたけれども、消防や警察でコストとか赤字とかが問題にならない、一般会計からの持ち出しも何にも議論にならないのに、なぜ病院だけ問題にするんだろうか、命に区別をしていいのかという、これは岩手の元収入役さんの集会での御発言でしたけれども、私はその話を聞きまして大変感動したところであります。
裏面に行きまして、地域の実態について少し触れました。
自治体首長さんとの対話の中で、今まで兼業農家が中心で、公共事業があり民間の企業団がある中で、兼業農家そのものも存在できた、ところが、企業が外国に撤退をし公共事業が削減する中で、兼業農家が直撃を受けて、まさに農業そのものも衰退してしまっているんだ、地域が崩壊する寸前だということが言われておりました。
それから、職員の給与カットをやむなくするけれども、よくよく見ると、税収の九割が給与所得で、その多くは役場の職員、農協職員、郵便局職員だ、賃金カットすると税収が減ってしまうというこの問題をどう考えたらいいのかということを述べられた首長さんもいらっしゃいました。
また、国から、県から、夕張のようにならないために効率化を迫られているけれども、このまま効率化を進めてサービスを切り捨てることになると、役場は残るけれども住民がいなくなってしまった、そんなことにならないだろうかという心配を話されている首長さんもいらっしゃいました。
また、自治体職場を見ますと、集中改革プランのもとで人件費削減の圧力が非常に強まっております。正規職員が減らされ非正規にかえられる、また、事業が民営化をされる、こういう事態が進んでおります。
例えば、保育所の例を見ますと、保育所の運営のために正規職員は常に半数を下回る状態、ある自治体では三分の二が非正規の人たちによって担われている、そういう実態まで生まれてきております。時給が八百円から九百円、週四十時間働いて、クラス担任も持たされ、ローテーションにも組み込まれている、しかし手取りは十二万円程度だ、こうした労働者が生まれてきています。
大阪で調査をしましたらば、生活保護を受けながら公務職場で働いているという臨時職員の方がいらっしゃいまして、私たちも大変驚いたところであります。
まさに、今ワーキングプアの問題が大きなテーマになっておりますが、自治体が税金を使ってワーキングプアをつくり出している、このことを抜本的に私たちはどうしたらいいんだろうかというふうに考えているところであります。
また、公の施設の管理について、指定管理者制度という新しい民営化の一つのツールがつくられておりますけれども、この指定管理者制度のもとで、余りにも管理料が引き下げられる、いわゆる人件費コストを下げることになります。自治体そのものの財政危機の中で管理料の抑制がどんどん進められるもとで、これだけ管理料が下がってしまってはもう業者としてもやっていけない、そういうことで、途中で指定管理を投げ出すという事態も生まれております。
ある民間の、指定管理者の仕事を受けています業者の方々と私ども懇談をした機会がありますけれども、今のような賃下げのスパイラルのような構造になっていては公の施設を管理する質の低下がどうしても起きてしまう、民間企業としてもこれ以上賃下げのスパイラルを進めてもらっては困る、政治の責任で公契約制度などをつくっていただいて、安心して働ける、専門性が担保できるような制度をぜひつくってほしい、そういう声も企業の側からも出されているのが実態であります。
これが今、地方財政危機のもとで、三位一体改革や構造改革のもとで、地域や職場で起きている実態であります。このことがどこに原因があるのかということについて、三番目に、私どもとして考えていることを書かせていただきました。
骨太方針の二〇〇六で、歳入歳出の一体改革、地方交付税の大幅削減や自治体病院の構造改革についての提起がされておりまして、こうした問題が根っこにあるのであろうというふうに思いますし、そして、それに拍車をかけるのは財政健全化法だというふうに受けとめています。
今回の法案の提案の中でも総務大臣は、「極めて厳しい地方財政の現状を踏まえ、」と法案の説明をされておりましたけれども、この地方財政を極めて厳しい状況に追い込んだ骨太方針の二〇〇六や二〇〇七について、そのことを踏襲していくんだということも述べられておりまして、この点が一つ大きな問題点ではないかというふうに私たちは思っています。
現職の大臣までもが社会保障費の二千二百億円の削減計画を見直すべきだという御発言を最近されたと伺っておりますが、そういう問題点を総務委員会でもぜひ御議論いただきまして、抜本的な対策をとっていただくようにお願いをするものであります。
今回の法案につきましても、地域再生といいながら、現実には構造改革路線を継承することになっておりますし、また、一層の集中改革プランなどでの地方自治体での行政改革を前提にして、その上に若干の地方からの声を踏まえた内容になっている、そういう点では不十分な法案ではないかというふうに私は考えるところであります。
地方財政に関する国の責任があいまいになっている点も、この法案では問題ではないかというふうに思っています。これでは、地方の要望や、まさに地域が崩壊をする、命の危機だと言われる現場の実態にこたえるものにはなっていないのではないかというふうに考えています。
最後に、四番目になりますが、この構造改革路線から、憲法二十五条や九十二条の理念に立った政策の抜本的な変更、そして、国の責任による大胆な財政拡大を私たちは求めていきたいというふうに思っています。
地方交付税の五・一兆円の復元、財源保障機能や財源調整機能を満たす地方交付税制度の抜本的な改革をぜひ進めていく必要があるというふうに思います。
また、健全化法を見ますと、財政健全化法では、その基準や計算方法が法律ではなくて政省令にゆだねられているという大変重大な問題があります。政府の支配や統制、介入を許す内容になっているのではないかというふうに受けとめております。そういう点で、やはり憲法九十二条の地方自治の本旨、住民自治と団体自治というこの基本理念にもう一度立ち返った地方自治体のあり方の回復や財政の健全化に向けての努力を進めていただきたいと思いますし、憲法二十五条の保障する、まさにナショナルミニマムの保障の仕組みをもう一度復活させていく、国の責任を明確にした対策をとっていただいて、今の医師不足や医療費抑制策に対する対策を総務委員会としてもぜひ御議論いただけたらありがたいというふうに思っているところであります。
また、国や地方を通じた財源保障をして格差社会を是正するということも頭に置きながら、所得課税の累進課税の再構築や法人関係税の優遇税制の見直しなど、垂直的な所得再配分機能を発揮するそうした税体系についてもあわせて議論をしていく必要があるのではないかというふうに思っております。
病院の問題では、まさに地域医療の中核を担っています自治体病院、公立、公的病院の役割が発揮できるように、総務省の公立病院改革ガイドラインを押しつけるのではなく、改めて命を守るための財政支援策を抜本的にとっていただきたいというふうに思っています。
今、私たちも住民の方々と一緒に自治体の財政を分析し、地域の実態をつかみながら、住民の方々と一緒にまちづくりについての議論も進めているところであります。みずから地域の活性化や豊かなまちづくりについて考える取り組みが各地で起きておりますし、とりわけ、自治体病院をより発展させようという思いでの取り組みが全国各地で今広がっております。そうした各地の見識についても、総務委員会としてもぜひ受けとめていただきまして、命が大事にされ、地域が崩壊しないような措置をとっていただきたいということを申し上げまして、私の参考人としての意見とさせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
○渡辺委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○渡辺委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲田朋美君。
○稲田委員 自由民主党の稲田朋美でございます。
本日は、参考人の方々には、それぞれの立場から大変貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。
まず最初に、潮谷熊本県知事と田中副委員長にお伺いをいたします。
特に、潮谷知事のお話を伺いながら、熊本県と我が福井県の情勢は大変似ているなというふうに思いました。また、知事が、御就任以降、大変厳しい状況の中で財政再建に取り組んでこられたことに敬意を表します。また、私の地元の福井市と熊本市は姉妹友好都市でもございますので、そういった意味からも大変親近感を覚えました。
私の地元でも、道路特定財源の暫定税率の維持については県議会で決議をいたしております。例えば私の地元の中部縦貫自動車道のような、あのような大きな立派な道路だけでなく、この道路特定財源は、例えば、雪の融雪施設ですとか学校の通学路の設備、それから橋のつけかえなど、さまざまな県民の生活に密着したものの整備にも使っているところでございます。
もし仮にこの道路特定財源が、廃止による福井県及び県内の市町村の影響額は二百三十億にも上ります。そういった場合、明らかに道路整備を初めさまざまな県民の生活にも影響が出てまいりますし、またほかの予算にも大変な影響が出てくることが懸念されているわけでございます。
そこで、地方における道路整備の必要性とその財源確保の問題について、潮谷熊本県知事と、それから、先ほどお話の中には道路整備の必要性については余りお触れになっていらっしゃいませんでしたが、田中副委員長のお二人にお伺いをいたしたいと存じます。
○潮谷参考人 ただいまのお答えですけれども、熊本県の場合は、この暫定税率が廃止されますと、県では百億、そして市町村を入れますと六十億という、大変厳しい状況がございます。
先ほど御説明申し上げましたように、この道路特定財源の中で、私ども、いわば借金返済に充てる部分というものもございまして、そういった意味からいたしますと、先生おっしゃいましたのと同じように、これは一般財源に直撃をするということでございます。
それから、熊本県独特の今の状況ですが、新幹線ということでございまして、新幹線は待ったなしで三年後に全線開業いたします。これに伴います連続立体交差あるいは鉄道の高架化の問題、それから、そこから広がります縦軸と横軸の関係がございます。九州は全体的に丸に十の字で道路をつくっていこうということがございますが、ここにも道路財源が必要でございますけれども、九州横断自動車道延岡線、南九州西回り自動車道、それぞれがダメージをこうむる、こういう状態の中にございます。
以上でございます。
○田中参考人 先ほども具体的には触れさせていただかなかったんですが、論点の一つとして話題になるだろうなと思いながらも、労働組合として詳しく分析をしたとか見解を出すということがまだされておりません。
ただ、今の地域の現状を見ますと、例えば先日も医師不足の問題で懇談を首長さんたちとしたんですけれども、医師が不足しているから、また病院が統廃合されるので、道路をよくして救急車がすぐ行けるようにすればいいのではないかという話もございまして、その中で、道路特定財源がやはりそれで必要なんだというお話が自治体の首長さんからもあったんですけれども、それは逆なのではないかなということを感じました。
私たちとしては、基本的には地方財政が全体として抑制傾向、先ほど五十嵐参考人の方もおっしゃっていましたけれども、抑制傾向の中でさらに道路財源が削られていくということについての恐怖感というのがあろうかというふうに思います。ただ、冷静に考えますと、やはり自治体で本当に生活にかかわる道路を整備するためには、逆に一般財源化をして自治体の裁量で物ができるようにしていった方がいいのではないかということや、医師不足問題など、まさに福祉や教育や社会保障のお金にも使えるようになれば抜本的な改革がそこでできるのではないか。
地域の実態から見るとそのことが今求められていますし、また道路の建設などについても、だれが決めるのかということも先ほども話題になりましたけれども、やはり九十二条の立場に立って、住民主権の原則から、住民がその計画をつくり、実際にその実行へ移していくということを自治体のところできちんと判断できるような仕組みをつくっていくことが必要なのではないかと思っておりまして、そういう点では、一歩立ちどまってあり方を議論する時期なのではないかというふうに受けとめています。
○稲田委員 ありがとうございます。
私も、医師不足、病院不足を解消するために道路を整備するというのは全く本末転倒であるというふうに思っております。ただ、地元でも、今おっしゃいましたように、生活道路等、本当に整備しなければならない道路もあります。
また、一般財源の方が使いやすいというところも、それはそのとおりかなというふうに思いながら聞いたところでございますが、学識経験者の五十嵐教授と横山中央大学教授にお伺いをいたしたいと思っております。
今のお話にもありましたように、道路整備の財源、地方の財源が不足している、そして地方の財源確保はいかにしても必要であるという認識は与野党も一致している、このように思います。この地方財源の確保でございますが、確かに、一般財源の方が使いやすいというのもそのとおりかなとも思うんですけれども、自治体では受益と負担の関係に基づいて目的税として税負担をお願いしている場合が多いと思います。
例えば、現在議論になっております軽油引取税、それから自動車取得税、そういった地方の道路特定財源もいわば目的税でございます。ほかにも、過去から都市計画税や入湯税などの目的税がありますし、さらには産業廃棄物税、また森林環境税など、法定外目的税といった目的税の導入が全国の自治体でも急速に進んでおります。
このように目的税は、受益と負担というその関係から、本当に新たな自治体の財源の確保として住民の理解も得やすいのかなと思っているわけですが、この受益と負担という観点に立って、道路特定財源、道路財源に限らず地方における目的税の意義について、先ほど横山教授からは納税者主権というお言葉もありましたけれども、その意義について五十嵐法政大教授と横山教授にお伺いをいたしたいと思います。
○五十嵐参考人 質問は、大きく分けて二つだったように思います。
まず、目的税の関係ですけれども、今回の道路特定財源、まさに目的税でありまして、道路を利用する人はほかの人と比べてある種の受益があるのでその分の負担をせよ、こういう話で論理がつくられてきたと思います。ただ、目的税は絶対一般財源化できないかというと、そうではありません。例えば酒税とかたばこなんかもそうだと思いますけれども、たばこや酒を飲む人たちはある種の特典的な利益を受けますけれども、これは一般財源化されております。
もう一つ、道路に限って言いますと、受益と負担の関係が、道路を使う人だけが、少数のある人だけが特別な利益を得ているというふうに言えるかどうかということがありまして、恐らく、日本は、戦後、高度経済成長社会の中で非常に道路が一般化しておりまして、速いスピードで道路を使うというような受益は多くの人が感じている、多くの人が受益を得ているので絶対的な障害とは考えないというのが一般財源の根拠です。
それからもう一つ、今回の道路特定財源でぜひ皆さん方に熱心に研究していただきたいと思っていますのは、いわゆる生活者道路というものと高規格の高速道路というものを少し性質を分けて考えなきゃいけないのじゃないのかなと私は思っております。
きのう、実は、全国的に雪や吹雪がありまして、私のところにもたくさんいろいろな要請が参りました。その中で、雪のためにほとんど道路が使えないというようなものについて、もうちょっといろいろな財源や人の手当てをしたらどうかというようなのがありました。それはまさに生活者道路だと思います。雪の除雪とか通学路とか、あるいはあかずの踏切などはまさに生活者道路でありまして、これについてある種の財源と人的な措置をすべきということについては、これはほとんど国民の反対がないんじゃないかと思っています。私も、これについては全く異議がありませんし、むしろ少ないというふうに感じております。
ただ、問題は、五十九兆円という巨額な財源と、道路にしか使えないということを十年間続けることがいいかどうかでありまして、国土交通省の方から五十九兆円の内訳がはっきりされておりませんのでわかりませんが、少なくとも生活道路の利便の向上に使う額は五十九兆円に到底及ばない。極端に言いますと数兆円単位でできる範囲内じゃないかなと私は思っています。五十九兆円の一番大きくは、やはり高速道路、高規格道路でありまして、これは本当に、全国どの地域でも、いわば国土交通省が予定しているような形で絶対必要かどうか、あるいはそれに大半のお金がつぎ込まれるというシステムがいいかどうかについてまさに検討すべきであるというのが一般財源化の議論です。
地域によって道路が足りないところもあることはもちろん承知しておりますけれども、その場合に、教育とか福祉とか病院とか、そういうものよりもなお道路が必要というかどうかについては、私は、道路が必要だという人の主張については少し疑問を持っています。
現に、いろいろな統計、アンケートを見ますと、一般財源化に賛成だ、首長さんはみんな反対だ、議会もみんな、県議会挙げて一般財源化反対だと言っていますけれども、国民のアンケートを見ますと、どの新聞、どのアンケートを見ても、大体六〇%以上あるいは前後が一般財源化がいいというふうに言っているというのは事実だと思います。その一番大きな理由は、やはり選択の権限をその地域住民が持つ。道路も必要だけれども、それ以上に福祉が重要である、それ以上に教育が必要である、これについて、それが自由に使えるようにしてほしいという要望が圧倒的に強いのだと私は思っております。
以上です。
○横山参考人 稲田先生の御質問等についてお答えをさせていただきます。
目的税というのは、かなり性格として応益性が重視されている地方税の点からいって、ある意味で理にかなっているとも言える税体系ではないか。と申しますのは、先ほどのお話来出ております、納税者はだれか。この道路特定財源については、やはり自動車なりあるいはガソリンなり軽油なりを実際に消費している人が納税者であって、車に乗らない、あるいは公共交通網を利用する人も、間接的には料金という形で道路利用についての負担はしていても、直接的な納税者ということで考えた場合に、やはり納税者の納得ということが根本にあるのではないか。そのとき、受益と負担の関係性は、国以上に、私は目的税にする積極的な意義があると思います。
ただ、だからといって、制度はパーフェクトじゃないと先ほど来言っていますように、今十年間税率を固定するということをどう理解するのかといったときに、一つは、積極的に肯定をするとするならば、予測可能性。税制というのは市民あるいは国民の基礎にあるインフラ、制度資本でございますから、それが短期間に変わると、人々の生活対応もその都度変えざるを得ないという調整コストがかかってしまうということです。とはいえ、余りそれが恒久的になり過ぎますと時代に合わなくなる、そういうような部分もございます。その兼ね合いが難しいのではないかと思っております。
以上です。
○稲田委員 ありがとうございます。
この納税者主権、だれが納税者かというのは、非常に核心に触れるキーワードではないかなと思っております。
と同時に、きょうの参考人のお話を聞きながら、地域間の財政力格差の是正。今回の地方法人特別税の創設もそうでございます。
例えば、東京では平成十五年から十九年の間に伸びた税金が一・四兆円もあります。我が県の一年間の支出は約四千六百億です。としますと、我が県の一年間の支出をほぼ賄えるような税収が毎年毎年東京では伸びている。それほど財政力に格差があり、これを是正するためにも今回の地方法人特別税というのが非常に注目を増しておりまして、先ほど熊本県知事からも、とりあえず評価をするというふうにおっしゃっていただいたところでございます。
時間がありませんので、あと一問だけお聞きいたしますが、もう一度横山教授にお伺いをいたしたいと存じます。
この納税者主権、そしてまた財政力格差の是正という面もあるんじゃないかと思っているんですが、我が県の西川知事が熱心に取り組んでいるふるさと納税、今回お話にはなかったんですけれども、これは、自分が納税したいところ、自分がふるさとだと認識しているところに納税をすれば、それが全額税額から控除されるという大変画期的な制度だと思っております。
総務省の報告書によれば、納税者が自分の意思で納税地を選択できる道を開くもので納税者が改めて税の意義や大切さを自覚するとか、また、ふるさとへの貢献という多くの人々の真摯な思いを実現するとか、自治体間の競争が刺激されるとか、そういった点が指摘されておりますけれども、改めて横山先生に専門家の立場から、ふるさと納税の意義についてお話しいただければと思います。
○横山参考人 お答え申し上げます。
受益と負担の関係でいきますと、筋が悪いというのがほとんどの財政学者の御意見だろうと思います。
ただ、私は、その受益の時間的な流れを、恐らく、この立法の趣旨というんでしょうか精神はどこにあったのかというと、地方で教育をして育った若者が都会に出てくる、そして年寄りを地方に置いて都会に出てくる、こういうようなところの時間軸を入れた受益と負担がどこかに御配慮があったのではないか。とはいえ、やはり租税原則からして、税というような形で仕込めるかといったときに、今のような形で折り合いをつけたのではないかと思っております。
以上です。
○稲田委員 では、もう一問お伺いいたします。
最後に熊本県知事にお伺いをいたしたいんですけれども、先ほども申しましたように、地方法人特別税については、暫定的なものとしてとりあえず評価をするとおっしゃっておられました。私も、少子高齢化が進む中で、自治体に地方消費税のような安定的な財源を付与するということは非常に有益なのではないかと考えておりますが、地方税改革における将来的な方向性について、最後に潮谷知事にお伺いをいたしたいと存じます。
○潮谷参考人 一つは、都市部と地方部の景気回復のスピード化、それから三位一体の改革で生じた財政力格差の是正、これはもう自治体だけではどうしようもないという現実の中で、このたび出されてきた総務省案というのを、私どもは本当にほっとしたということでございます。
将来的なところの中ですけれども、やはり私は、税源移譲によって国税と地方税の配分を五対五という方向性、さらには税源移譲に当たっての地域間の調整、それから地方交付税の総額確保と地方共有税の導入、こういったものを今第二期の地方分権の改革案として知事会の中で検討をしておりまして、この第二期の地方分権改革案が国においてもきちっと論議をされ、真に地方分権が維持できる、確立できる、税源と財源と権限、これがきちっと地方の中に受け渡されるという方向性を切実に望んでいるところでございます。
以上です。
○稲田委員 どうもありがとうございました。
○渡辺委員長 次に、小川淳也君。
○小川(淳)委員 諸先生方には大変有意なお話をいただきまして、どうもありがとうございました。
民主党の小川淳也と申します。
きょうは特に道路が大きな話題になっておりますので、その観点からお伺いをしたいと思います。
まず、五十嵐先生、きょうはありがとうございました。中央政府から全国の自治体、そして与党のさまざまな政治勢力、三万人、四万人近いと言われる地方議員、猫もしゃくしもといいますか、道路道路と言い続ける中で、私は、学術界がもっともっと客観的な議論を発信していただいていいんじゃないか、何か遠慮が見えるんじゃないかという気がして、懸念をしております。それからいたしますと、五十嵐先生、まことに胸のすくような、立場を鮮明にされた明快な御主張、非常に心強く、お顔の構えを拝見しておりましても、信念に裏打ちされた非常にすばらしい御意見をきょうはいただいたなと。そのお立場から、率直に、まず五十嵐先生にお尋ねいたします。
日本の道路整備は、ここにいただいたメモの中に「過剰な道路」というような表現もございますが、同感でございます。既に、道路の新設という意味でいえば、もちろん部分的なまだら模様はあるでしょう、あるでしょうが、先進各国と比較してもほぼ整った、あるいは飽和状態にあるというふうに私自身認識をしたいと思っておりますが、先生の御認識をお尋ねいたしたいと思います。
○五十嵐参考人 自動車については、先ほど申し上げませんでしたけれども、二つの観点から、少し哲学的にも考える必要があるだろうというふうに思っています。
一つは、このまま自動車社会を延長することが果たして日本国民全体にとって有益なのかどうかということであります。自動車の社会的費用については既に学術的にも有名な論文がありまして、やはり自動車社会については、環境その他いろいろな面から見直す必要があるというふうに言われておりまして、先進欧米国社会では、自動車社会からの脱却ということが大きなテーマになっています。持続可能な社会とか、あるいはハンディキャップの人たちにとって優しい町とか、あるいは環境の関係から、自動車社会については非常に大きな反省が生まれているということであります。
日本について考えますと、御承知のとおり、明らかに日本の人口は減りますし、高齢者がふえてまいります。その際、五十数兆円も使ってさらに、今まで恐らく、道路は十二次計画がありまして、今のまま延長すると十四次になると思いますけれども、数百兆使ってきて、なおまだ道路が足りないというふうにはほとんど信じがたいほど、道路、もっと別の言葉で土建国家になっていて、これをまた十年続けるというのは、言葉は少し手厳しいと思いますけれども、かなりクレージーな計画ではないかと思います。もっと自動車に依存しない、都市内部では、ライトカーといいまして、環境に優しい電車などを考えて、将来の道路社会からの脱却を考えるべきであるというのが一つです。
二番目は、裏返しでありますけれども、まちづくりにかかわっておりまして、今も地方の格差の問題がありましたが、果たして道路をふやすことで地方自治体が元気になるのかどうかというのも、先ほどちょっと申し上げましたけれども、やや過剰な幻想じゃないかと思います。道路ができればできるほどよくなるという一面も確かにありますけれども、一方では、非常に速いスピードで通過するということが起きております。観光地等々ではほとんど日帰りできるとかといったことがありまして、道路は必ずしも経済効果を生まない。もっと地域の独自性のある文化とか歴史とかということについて親しみたい、あるいはそういう商品、あるいはマーケットを考えてまちづくりをしたいというのが、全国の地方自治体のあるべき道であると私は思っています。
先ほどちょっと学術的な問題も出ましたけれども、つい最近まで地方分権というのが非常に強く全体的に主張されておりまして、いろいろな有名知事さん方も地方分権を言っておられたんですけれども、今回は、なぜか急に、何人かの先生方を除きまして、全部道路特定財源に集中しているというのは、学問的立場からも極めて遺憾であると私は考えております。
道路特定財源は、まさに中央集権構造の中枢中の中枢だと考えておりまして、これに十年間依存しながら、片一方で地方分権を言うというのはどういうことかと私は思っておりまして、これは全国都道府県知事及び首長さん及び地方分権を支持してきた学者あるいはマスコミ等についても猛省を促したいと私は思っております。
以上です。
○小川(淳)委員 改めて、胸のすくような御意見、意見表明を賜りまして、ありがとうございました。
全く同感でございまして、例えば、ヨーロッパ先進諸国と比較しても、もう既に総務委員会でも議論になりました、単位面積当たりで見ると二倍も三倍も道路が整備されている、国土面積二十五倍のアメリカに対してその半分近い道路予算を使っている。こんな国は一体、道路をつくること以外に何か道路工事をやる目的があったんじゃないかと思わざるを得ない。その構造を今後も放置するのか、ここで方針転換するのか、そういう境目に来ているという認識でおります。
その点、先生が後半、地方分権との関係をおっしゃったことは、非常に的を射た極めて重要なポイント、まさにここ総務委員会で議論すべき課題だという観点からお尋ねをしたいと思います。
私たちの主張は、これは難しいんですけれども、道路もあればあるにこしたことはない、しかし、他の資源配分との兼ね合いの中で本当に必要かどうかという議論が今まさに求められている、その意味では、道路政策を他の政策と対等な競争関係に置くべきだという主張を私たちは今しているわけです。
潮谷知事、きょうはようこそお越しくださいました。ありがとうございます。社会福祉の現場からさまざまな御経験を積み重ねて、そして熊本県政を大変難局の中、二期八年にわたってお務めになられ、間もなくそのお務めを終えられようとしておられる。まず率直に、このことには心から敬意を表したいと思います。
冒頭お尋ね申し上げます。二期八年、振り返っていただくにはまだちょっと早いかもわかりません。もちろん、一月ちょっと残っております。知事は、熊本県知事として、分権的、自立的、みずからの判断で県政を運営してこられたかどうか、また、こられる環境にこの日本国はあったか否か。四十七都道府県知事の一人として、率直な御感想をいただきたいと思います。
○潮谷参考人 まず、御評価いただいたことにお礼を申し上げます。
分権社会にふさわしい形の中で行政運営ができたかということについてでございますけれども、これは私の意見陳述の冒頭のところで申し上げましたように、本当に行財政改革に追われるという状況がございました。もちろん、その時々の知事たちはその時々に応じて県の行財政改革を進めておいでになられましたが、バブル崩壊後の、公共事業にかかわって国につき合ってきたということが非常に厳しい財政状況をつくった、それが一点ございます。さらに、三位一体の中で、分権改革にふさわしい地方行政のかじ取り、これに難しさがございました。
そういった中で、全国の知事たちは、分権社会にふさわしい権限、財源、これを私どもにということで、三位一体のまさに一体化的な方策を今後とも展開していくことの必要性を訴えているところでございます。
以上です。
○小川(淳)委員 知事もお立場がございますので、その限界はよく承知をしながら御質問したいと思いますが、知事がこれまで積み重ねられてきた御経験から申し上げますと、私たちの期待値はもう少し大きなところ、踏み込んだところにございます、知事からぜひいただきたい御答弁から申し上げますと。
そのことを踏まえて、次のお尋ねなんですが、五十嵐先生、ごめんなさい、時間の関係で少し私の方で読み上げをさせていただきます。
二月の九日に毎日新聞に御掲載をされました「生活攻防」、道路財源について意見表明されておられます。この中でこういう記述がございます。地域の負担が少ないもらい得のような現行制度は麻薬のようなもので自治体の感覚を麻痺させている。そして、きょういただいたレジュメです。道路財源は麻薬だ、十億でその何倍もの道路がつくれる、一方、不要と言うと減らされる。
まさにこの構造が、私は、本当に道路が必要かどうかという議論と別次元で、道路財源を膨張させ、道路工事を進捗させてきた大きな病理が、まさにここにあるような気がいたします。
その結果、先ほども先生お示しになられました世論は、暫定税率の廃止には大幅に賛成、一般財源化に対しても六割賛成している。しかし、全国の知事、市町村長たるや、一千八百名近いそれぞれの最高責任者がこぞって、わずか六名を除いて現行制度の維持を主張しておられる。
潮谷知事、改めてお伺いをいたしたいんですが、暫定税率の維持、そして一般財源化反対の署名にどのようなお気持ちでサインをされたのか、一〇〇%自発的か、あるいは何らかのしがらみ、さまざまな抑圧、強制力が働いた結果か、ぜひ率直にお答えをいただきたいと思います。
○潮谷参考人 まず、地方分権という立場からこの御質問に、先ほどの続きのような形ですけれども、少しお答えをさせていただきたいと思います。
私ども地方からいいますと、道路特定財源の一般財源化について、国、地方を通して道路整備が一定のレベルに達した段階で、分権社会を実現するための税財政改革として一体的に議論をしていくべきじゃないかと私は思っております。
それからもう一つは、この問題は、やはり国と地方の財源配分、そういったものを制度全般にかかわって根本的に議論をしていくということも必要ではないか、そのように思います。
それから、もう一つですが、署名の問題でございますけれども、私ども、先ほど申し上げましたように、本当に今、道路、都市部が先に整備をされて、地方部はまだ残ってこれから、こういうような段階の中で一般財源化というような論議がなされますと、私たちのまだ未整備の道路は一体どういう形の中で整備されていくのかという不安感がございます。
それから、暫定税率に関しましては、三月というこの時期に期限が切れるということで、具体的な像が見えてこない、制度設計が見えてこない、こういう中での大混乱が生じるということを重ねて申し上げさせていただき、まさに自発的に署名をさせていただきましたことも明言させていただきたいと思います。
○小川(淳)委員 お立場は一〇〇%理解をいたします。
知事、ちょっと意地が悪いんですけれども、もうちょっと突っ込んでお尋ねします。
熊本県政の道路整備費は約九百億円、知事が御説明になられたとおりです。このうち、県税と国から交付される譲与税で、ざっと約四百億です。
知事、ここでお尋ねなんですが、私たちは、地方財源の確保ということに関しては非常に強い共感する思いを持っております。その前提でお聞きしたいんですが、四百億円の金額は間違いなく確保します、全く知事の裁量で自由にお使いいただける四百億円をお渡しさせていただきますという場合と、これは道路に使ってください、道路整備に使ってくださいと言って渡される四百億円と、知事が自由に選べるとしたら、どちらを選ばれますか。
○潮谷参考人 非常に魅力的なお話ではございますけれども、しかし、その財源が一体どのような制度設計の中で捻出されてくるのか、これが見えざる状況の中では、どちらを選ぶかということにはお答えすることの困難性がございますので、今後とも、制度設計を明確に示した上で、どちらを選ぶかという問いかけをぜひよろしくお願いしたいと思います。
○小川(淳)委員 痛いところをつかれたわけでありますが、知事、これは全国の都道府県知事あるいは市町村長に申し上げたいんですけれども、私が知事なら、市町村長なら、ぜひ自由に私たちの裁量で私たちの地域の実情に応じて使えるお金にしてくださいと申し上げますよ、みずからのリスクにおいて。
やはりある種これは闘いですから、古い政治権力構造との闘いですから、ある種これは一緒に闘っていただく方々と手に手を携えながら具体的な制度設計を進めていくべきものでありまして、もちろん、最初からこれが一〇〇%百点満点の答えですということをお示しできればそれにこしたことはないのかもわかりませんが、そこは、今のお答えについては、やはり一緒に将来を考えていくというお立場から、ぜひ知事としての、熊本県知事としての、良心に裏打ちをされた前向きな御答弁をいただきたかったということを申し上げたいと思います。
なぜなら、やはり知事は言っておられるんですよ、御自身のさまざまな情報発信の中で、県政は県民からの預かり物だと。非常にいい言葉だと思いますね。私たちも、この議席はやはり国民からの預かり物であります。そういう意味では、世論と責任ある立場にある者との声が大きくずれるような今のこの構造、一体どこにその問題点があったのか、そこはぜひともにお考えをいただく、そういうことをお願い申し上げたいと思います。
さて、少し地方税財源一般のお話もお聞きをしたいと思いますが、潮谷知事は平成十二年に着任をされてから、御本人のお言葉で、財政再建という非常に大きな課題を抱えたというお話をいただきました。それから約八年間で、ふえた借金は一千五百億円ぐらいですか。それでも毎年百億円ずつ借金を積み重ねた、積み重ねざるを得なかったということかもしれません。
この点について、私どもは、特にバブル崩壊と言われた以降、あるいは失われた十年、地方が国の景気対策に相当つき合わされてきたという面があったかと思います。しかし、それに乗じる形でさまざまに公共事業を、その必要性の吟味たるや極めて甘い、おろそかにしたままに進められた。さらに、地方のその姿勢に対しては、後で借金の面倒を見てやるからということまで含めた地方財政制度も仕組まれた。私たちは、この点も含めて大きく構造変革、構造転換を迫らなければ、この構造が仕組みの問題として変わっていかないという危機感を持っております。
そこで、その点に対する認識と、最後に、こういった地方税財政制度、この今まさに総務委員会で議論になっています地方税法の改正案、交付税法の改正案、あるいは新しい地方法人特別税の設置法案、これはすべていわば総務省の担当者の胸先三寸みたいなところがありますから、税制特例一つとったって、与党の議員さんとどの程度調整した上でここへお出しいただいているのかわかりませんが、やはりヨーロッパ先進国では、地方の利害をしっかり守るために、国と地方の共同協議機関、地方税財政制度に関しては、ここの協議機関の承認、認知を得なければ、そういった制度改正をストップする力を地方に与えているわけであります。
私は、この借金財政を振り返られて、どういった限界を感じられたか、そして、これからこれを打ち崩す一つの手だてとして、国と地方との協議機関の創設に向けた議論、どのようにお感じになられるか、時間が限られてまことに申しわけないんですが、お一人お一言ずついただいて、終わりにしたいと思います。
○潮谷参考人 従来、景気対策は公共事業で、そういう中で進んできた歴史がございますけれども、少子高齢社会の中ではそうしたことが産業全般的な状況の中に及んでいるという現実がございますので、私どもはやはり少子高齢社会の現実の中にあるということの認識を持つ、これが一点、大変大事になってきていると思います。
それからさらに、ヨーロッパの状況についてでございますけれども、ヨーロッパの中でも、税の制度のあり方、あるいは社会保障の仕組みのあり方、そういったものがそれぞれ異なりがありますので、一概にという土俵の中で論ずることは少し乱暴ではないか。ただ、住民が中心になっているという点に関しましては、今後とも学ぶべきは学んでいかなければならないと思います。
三点目の、地方と国との協議会をつくる、これは私ども知事会も求めているところでございますので、ぜひ議員の皆様方におかれましても、この点については知事会が求めていることに御協力方よろしくお願いを申し上げます。
以上でございます。
○五十嵐参考人 きょうの新聞に日本の借金がどのくらいあるかということの数字が発表されまして、途方もない金額に膨れ上がっております。恐らく、少なくともここにいらっしゃる皆さん方が生きている間は絶対に返せないというぐらいの借金に膨れ上がりました。その内訳を見ますと、半分以上が公共事業費であります。やはり、どう考えても、日本は身の丈を超えた公共事業をやってきた。それを修正しなきゃいけないと思いますし、別なふうに言いますと、いわば土建型社会から福祉型、高齢型社会に変えなきゃいけないというふうに私は思っています。
道路特定財源の問題というのは、非常に大きく言いますと日本の問題でありまして、今が転換点、もう十年延ばしたら恐らく日本社会は回復不能になると思いますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
その際、今提案のありました国と自治体のあり方については、第二次分権改革が始まっておりますけれども、これについては、当時の第一次改革と比べてみて、やや国民にわかりにくいような状態になってきておりますので、的確なメッセージと簡潔でわかりやすい地方分権のあるべき姿をいろいろな形で提言していただいて、その実現に向けて進まれたらいいと私は思います。とりわけEU社会における地方分権については、皆さん方も一緒に勉強していただいて、新しい福祉型社会のあるべき自治の姿というものをEUなどからも学ぶべきではないかと思います。
以上です。
○横山参考人 共同協議制度みたいなものは、私は必要だと考えます。国か地方かではなく、相互補完ということが重要だろう。とりわけ納税者主権といって納税者の主権が強くなり過ぎますと、増税ができない議会制民主主義、こういうことに今我が国は直面しているのではないか。すべての問題は、受益だけ得て負担をしないということについて、国民一人一人がどれだけタックスペイヤーとしての義務を果たすか、それが議会制民主主義のもとではなかなか難しい。そうしますと、私は、消費税が増税できるような環境整備こそが今後の地方財源を豊かにしていくことにもつながると考えてございます。
以上です。
○田中参考人 お答え申し上げます。
第一次分権改革の際に機関委任事務が廃止をされて、国と地方の対等協力の関係ということが強調されましたけれども、それから、今第二次改革が議論されておりますが、私どもとしましては、中央集権化が非常に強まったというふうに受けとめております。
先ほど財政健全化法の問題点も指摘をさせていただきましたけれども、例えば市町村合併にかかわって、交付税制度の基本を変えてしまうような合併特例などがたくさん持ち込まれたように、今度の病院改革ガイドラインの中でも、診療所化すれば五年間だけ交付税は病院と同じように見てやるよという、そういう構造を変えていない。そこに大きな問題点があるのではないかというふうに受けとめています。
それから、国と地方の共同の協議機関の設置につきましては、機関委任事務の廃止など第一次分権改革の際にも、私どもも強い地方自治体の声としても要求をさせていただいた課題でありまして、ぜひ実現ができたらいいなというふうに思っています。
ありがとうございました。
○小川(淳)委員 少し持ち時間をオーバーいたしました。おわびを申し上げます。
本日は、本当に参考になる御意見をありがとうございました。
○渡辺委員長 次に、桝屋敬悟君。
○桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。
四名の参考人の皆さん、本当にきょうはありがとうございます。相当厳しい御意見をいただきました。本当に参考にさせていただきたいと思います。
直ちに重ねてのお尋ねを申し上げたいと思います。
最初に、潮谷参考人にお伺いしたいと思います。端的に言いまして、熊本県の県下の市町村の雰囲気を聞かせていただきたいのであります。二つお話しください。
一つは、道路特定財源、とりわけ暫定税率をめぐって、熊本県、暫定がもし廃止されれば百億という影響額もお示しになりました。熊本は、市町村で、四十八でしょうか、六十億ぐらいの財政影響があるというふうにも聞いております。さっきの話じゃありませんが、各首長さん、異口同音に必要だ、必要だと言うばかりだという声もありましたけれども、切実な声をぜひ聞かせていただきたい。それが一点。
もう一点は、今回の地財措置、地方財政対策について、先ほどからお話がありましたが、十六年のあの大変厳しい交付税の削減を経て、久方ぶりに、税源偏在を財源といたしまして、地方再生枠、特別枠を用意したわけであります。これは市町村に厚みをつけて配分をするということに相なっているわけでありますが、ところが、現場は、聞いてみますと、いや、余り実感がないという声もあったり、それはないよりあった方がいいけれども、今まで交付税が減り続けていたものが減らなくなったぐらいのものじゃないんですかみたいな声まであるわけでありまして、その二点について県下のお声を聞かせていただきたいと思います。
○潮谷参考人 一点でございますけれども、地方から出ている、町村から出ている話の中で、道路新設ということはおろか、今進められている道路、このことが中断してしまうのではないかという不安、それから、補修をしなければならない、あるいは新しく手を加えていかなければならない、そういったようなものもできなくなるのではないかということで、着工中の整備だとか維持補修、これが一体できなくなるんじゃないかという不安が物すごくございます。
それからもう一つは、私ども熊本県の場合で申し上げますと、地方六団体が、このたびの地方法人特別税と地方法人特別譲与税、このことについては非常に評価をしておりまして、それはむしろ、我々、六団体含めて、声を上げたことに国がこたえてくれたのではないかという形で評価をしていることを申し上げさせていただきます。
以上でございます。
○桝屋委員 県下四十八の市町村、まさに今予算編成の真っ最中だと思いますが、特別枠、評価していますかね。何か知事さんのところへ情報が入っていれば、重ねて御提示いただきたいと思います。
○潮谷参考人 特別枠そのものについて、今現在、具体的にこうだ、ああだというようなことは、私の方はとっておりませんので、帰りまして、ぜひその辺、調査をしたいと思います。
○桝屋委員 しつこく聞いて済みません。私、現場を回りますと、市町村、今まさに三月時期は真っ最中なんですけれども、基準財政需要額に算入されたということで、よくわからないのかもしれませんが、余り実感がないのが残念だなと思っているんです。と同時に、これからもやってもらいたいという厳しい声なのかなと思ったりしております。
ありがとうございました。
それから、五十嵐参考人にお伺いいたします。
厳しい御意見、ありがとうございました。しっかり参考にさせていただきたいと思っております。
一般財源化すべしというお声をいただいたわけでありますが、一点確認させてください。一般財源化をするということは、特定財源でないわけでありますから、当然暫定税率については、これはもう廃止をするということだろうと思うんですが、そうなりますと、この財源をどうするのかということもあるわけでありまして、きょうは、福祉や教育について十分な財源を各市町村に示すべきだ、こういうお声もありましたけれども、その点、重ねてお尋ねいたしたいと思います。
○五十嵐参考人 よい意見、質問をいただきました。
私自身は、一般財源化イコール暫定税率の即廃止なのかどうかについて少し迷っています。論理の筋と政治的な措置というのは、やはり異なっていると思うんです。私も法律家の端くれですから、暫定税率がずうっと続くというのは、やはり法律の筋論からしてこれはいけない。そういう意味でいえば、法律論からいけば直ちに廃止だというふうに私は思います。
ただ、地方だけでなくて政府全体の財政危機の中で、ある程度積み上げてきた、ある種の慣行的になってきた税率を法律の筋論だけですぐばっさりやっていいものかどうかについては、少し疑問に思う。これは政治的な論理です。
確かに、二十五円安くなりますと、それは一般国民は助かります。いろいろな統計が出ておりますけれども、恐らく非常にウエルカムという状態であることはわかりますけれども、やはり今の自治体の財政危機、国の財政危機を見ますと、当面、直ちに全部やめるかどうかじゃなくて、そこは一般財源化しても、もうちょっとある種の工夫もあっていいのではないかと。つまり、暫定税率をさらに工夫して、今回は何%下げるとか、そういう形での段階的措置はあってもいいのではないかと。
だから、名前を挙げていいのかどうかわかりませんが、民主党さんのように、全部すっぱり、一般財源化とともに二十五円を全部やめるというのであれば、国民に見える、その他の道路を含めた今の税収を確保するような案を出さないと国民はなかなか納得しないというふうに私は思っておりまして、何がいいかは、皆さん自由に議論していただいて考えてもらえればと。
ただ、やはり特定だけ残すことについては、私は、先ほど言ったさまざまな理由で反対ということです。
○桝屋委員 ありがとうございました。大変に示唆に富むお話をいただきました。
そこで、五十嵐参考人にもう一点伺いたいんですが、お話をずっと聞きながら、私も以前地方自治体の行政官をしておりましたから、本当に厳しいお声だなと、みずからを反省する思いで聞かせていただきましたが、やはり行政計画というのはどうしても必要なんですね。昔のように十年計画だとか五年計画、つくった途端に陳腐になりまして、厳しい御指摘をいただいたりするんですが、そうはいいつつ、行政計画は必要だろうと。その行政計画を毎年予算でもって予算化していく、こういう流れが行政の一つの手法だろうと思っております。
そういう意味では、中期計画、今、今後のあり方について示唆をいただきましたけれども、どうでしょうか、行政計画そのものを無視されるというお立場ではないと思うんですが、今の政府の行政計画のあり方について御意見があれば伺わせていただきたい。
○五十嵐参考人 今も非常にいい質問だと私は思います。
計画は必要です。ただし、諸外国の計画と比べて日本の計画が少しまずいという点が私はあると思います。それは、修正するチャンスがどこにあるのかということです。
私はもう十数年以上公共事業を見てきましたけれども、率直に言いまして、例えば諫早湾干拓事業あるいはさまざまなダムがありまして、当初正しいと思った計画も、修正の動機づけがほとんどありませんので、だれが見ても客観的に時代が変わっているにもかかわらず、計画がそのまま実行されています。別な言い方ですと不倒神話、倒れない神話でありまして、これは、計画にある一定の段階で修正条項を入れるということについて、日本は官僚制と結びついて、極めて難しかったんじゃないかなと思います。
諸外国の中で参考にすべきであるのは、サンセットロー、日が沈むような法律がありまして、ある種計画をつくるときにある期間を定めまして、例えば十年計画を定めても、五年たったら必ず一たん全部廃止される、さらに計画を続けるかどうか白紙でもう一回考えるというようなサンセット条項を入れた計画というものを、やはり新しい知恵を行政計画の中にも導入すべきではないか。そうでないと、非常に硬直して、無駄だとわかりながら、予算と組織と、あるいは場合によったら天下り等のいろいろなものがくっついて修正できなくなるということだと思うんです。
政府計画に、このサンセットロー、修正協議のシステムが入っていないのが無駄な公共事業をふやした最大の原因ではないかというふうに私は思っています。
以上です。
○桝屋委員 これまた御示唆に富む御主張をありがとうございます。重ね合わせて、我々政治がその役割も担わなきゃならぬというふうに戒めているところでございます。
続きまして、横山参考人にお伺いいたします。
横山参考人から、ロールズの言葉でありますとかいろいろなお話をいただきました。一つ教えていただきたいと思いますが、今回の暫定税率については、参考人は、場合によっては環境税を付加してでも考えたらどうか、こういう御提言をいただきました。しかもCO2対策を、抑制だけではなくて、環境全体を正すというようなことで、そうしたアイデアもあるのではないかという話をいただきましたが、今から三月三十一日まで向こうの民主党さんと、野党の皆さんとがっちゃんがっちゃんやるわけでありまして、重ねてそういう論点まで持ち込むと、もう頭がぐちゃぐちゃになるなと。
国民にわかりやすい議論をしたいと今思っているわけでありますが、環境税を視野に入れると例えばどういう議論ができるのか、参考人の御意見があれば重ねてお伺いしたいと思います。
○横山参考人 私が自分の意見を申し述べたときには、個人的にはということで、今の時点でどうこうということではないことをまずもってお話ししたいと思います。
御案内のように、ヨーロッパ社会は、かなり環境という一つの戦略的なスタンスをとって、国際社会をEUが引っ張っていくという観点からしますと、環境税制改革、グリーン化とかいうようなことが言われております。
そういう点で、インプリシット・カーボン・タックシーズとよく言うんですけれども、こういうような道路の関連の、今の特定財源化されている化石燃料諸税や自動車税は、OECDの定義でいえば環境関連税ということで、意図的な、純粋な意味での環境税というのでございましょうか、環境に悪い影響を及ぼすような諸活動を抑制する、CO2の排出を抑制するという目的を持った税でないとしても、付随的に環境に資する税というものについても広く環境関連税という形で、それを生かすような方向で、一つの抜本的な税制改革の理念になっているということを御理解いただきたいと思います。
以上でございます。
○桝屋委員 今の参考人の御意見も念頭に置いて、今回の税制改革をしっかり国会で議論していきたいと思います。
参考人はロールズの言葉を引かれて、最悪を想定して、一番不利な人々に光を当てて政策立案をというようなことも御紹介をいただきました。
意味するところは先ほどお話がありましたが、参考人は、この場でロールズの言葉を引かれたのは、まだもっと深いお気持ちがあるのではないかな、我々この衆議院の総務委員会のメンバーに何かおっしゃりたいのではないかな、こう感じたのでありますが、重ねてのお話がありましたらお聞きしたいと思います。
○横山参考人 ロールズ先生は法哲学の先生でございまして、制度設計をするとき、なぜ私どもの社会に社会保障制度があるのかといった場合に、やはり最悪の事態、私は、交通事故に遭って働けなくなる可能性もある、またいろいろな事故にも遭遇する、そういうようなときの備えを、何人もそういう最悪の事態に遭遇したときに、みんなが合意できるような制度設計が必要なんだろうと。
それを今地方財政の観点から考えますと、たまたまある地域に生まれ育った、そのことによって、今のような厳しいグローバル化の社会の中で過疎化していく、限界集落の話でございますけれども、どうするのか。ここへの対応はやはり私は国の責任だろうと考えてございます。
以上です。
○桝屋委員 ありがとうございました。
最後に、田中参考人にお伺いしたいと思います。
最近の地方行革の流れをるるお話しいただきました。市町村合併でありますとかあるいは集中改革プラン、さらには総人件費改革や、きょうお話がありました公立病院改革、これも総務省が押しつけている、こういう厳しい御指摘もあったと思います。私もその一面を感じている一人ではありますけれども、しかし、さりとて、人口減少社会が到来すると、これから先々を見通すと、地方行革の流れは避けて通れない流れであったと私は思いますし、今もまたその渦中にあるんだろう、こう思っております。
我々、衆議院の総務委員会、まさに地方行革を所管するメンバーでありますけれども、そうした立場で、きょうは、もちろんあふれるような財源があれば参考人の御意見も十分参考にできるわけでありますが、暫定税率までもとへ戻そうという話もある中で、大変厳しい財政の中で、これから地方行革を進めるに当たってのお気持ち、避けて通れない作業だと思っておりますが、重ねて参考人の御意見を伺いたいと思います。
○田中参考人 お答え申し上げます。
例えば、福島県の矢祭町で合併しない宣言をされた際に、町長と懇談をいたしました。なぜ議会決議までして宣言をされたのかというお話を伺ったときに、今でさえ自治体職員が国や県の方を向いて仕事をしている、このままいくと地域の住民の暮らしや地域のことが公務員として見えなくなってしまう、そういう危機の中で、自治体職員として、また公務員が住民の暮らしの実態や地域の現状をよく把握しながら行政のあり方を考えていく必要があるというふうに判断をして、合併しない宣言を決議したんだというお話を伺ったときに、これからの行財政改革の基本的な視点を矢祭の当時の町長が示されたのではないかと私は受けとめました。
このように、今、残念なことなんですけれども、国会でいろいろな法律がどんどん通っていく、それが、実際には自治体の現場で私どもが仕事をするというふうな仕組みになっておりまして、増税の話もそうですし、今、後期高齢者の医療制度の問題でも、自治体職員は住民への説明会などで一生懸命努力をしているわけです。
基本的な制度の問題に疑問を持ちながらも、法律が決まった、そのことを説明せざるを得ないということで、どうしても、現場で、住民の暮らしや地域の実態に合わせて自分たちがどういうまちづくりをしていくのかということを考える暇もなくなってしまっているということでは、自治体職員として、大変、働きがい、生きがいも奪われるような実態になっておりまして、改めて、やはり行財政改革は、住民を主体としながら、自治体職員、関係職員などが力を合わせて進めるような仕組みに構造的に変えていく必要があるのではないかというふうに考えております。
現に、この間進めてきたやり方で考えますと、先ほどるる説明をさせてもらいましたように、自治体の現場でワーキングプアが生まれてしまうというふうな実態ですとか、ゆがみが出ておりまして、これでは制度設計そのものが問題になっていくでしょうし、何といっても、若者たちの雇用が奪われてしまっているということなど、改めて現状を認識していった上での改革を進める必要があるのではないかというふうに考えております。
以上です。
○桝屋委員 ありがとうございました。
住民に向けて行財政改革をしなきゃならぬと、しっかり我々も胸に入れたいと思います。
矢祭の話がありましたが、矢祭は議会の議員が日当制になったようでありまして、これも、それでいいのかなと思ったりしているのでありますが、地方議会の役割も大事なんだけれどもなと思っております。
以上でございます。ありがとうございました。
○渡辺委員長 次に、塩川鉄也君。
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
皆様には、それぞれ貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。
私は、最初に、三位一体改革のもとでの地方交付税の急激な削減、その問題についての御意見を潮谷参考人、横山参考人、田中参考人からお伺いいたしました、まずそのお三方にそれぞれお聞きしたいんです。
潮谷参考人には、交付税で三百億円が一度に削減をされた、大きな打撃だというお話がございました。県の財政にとっても大変重大な事態だったと思いますけれども、県下の財政力の弱い地方団体、町村などにおいて、この大幅な、急激な地方交付税の削減がどういう状況をもたらしたのかということについて、その現状などを、把握されている点で御紹介をいただければと思っております。
続けて、横山参考人からは、交付税の削減が急激で、五千人規模の自治体できしみが生じている、だれもが手当てすべきときだというお話をされ、交付税法の改正がそういう点で正当化できるのではないかというお話がございました。この点では、特に五・一兆円の削減との関係でいいますと、やはり小規模自治体に大きな影響が与えられた。今回、地方再生対策費として若干の手当てはありますが、私が試算をしたところでも、大幅な削減に対して、地方再生対策費は一割とか二割程度になっております。そういう点でも、これでよしとするのかということが率直にありますので、その点についてのお考えをお聞かせください。
田中参考人には、自治体運営に決定的な打撃を与えたのがこの五・一兆円の地方交付税の削減だったというお話です。財政力の弱い地方団体にどのような否定的な影響が出ているのか、全国を回っていろいろなお話をお聞きしている中で、そういう現場の声について御紹介をいただければと思います。
それぞれ、よろしくお願いいたします。
○潮谷参考人 端的に申し上げますと、ちょうど時期的に、私どもは町村合併を実施しているときでございました。町村合併によって財政力をもっと強固に、そういう思いの中で展開してまいりましたけれども、この時期的に重なった状況が、実は、地方交付税三百億、県でも非常にダメージを食いましたと同じように、合併したところであってさえも、本当に、合併しなければよかったというほどのダメージを食ったということ。国においては地方交付税の問題では配慮があったんですけれども、しかし、現実には受け取ることができなかった。
それから、徹底した人員の見直し、さらには、お一人の方が幾つもの公務を兼ねるというような状況が各町村の中に出てきているということも実質的なところでございますし、さらに、自分たちのところの行財政のあり方、財政健全化についてのあり方、そういったものを見直していかなければならないということ。
もう一つは、住民サービスに影響を与えないためにどのような形で創意工夫をしていくのか。熊本県で申し上げますと、ゼロ予算という形の中で、パートナーシップ、NPO、そしてボランティア、そういった力を得ながら、創意工夫を余儀なくされて、余儀なくではなくて、一方ではよい形と申し上げていいかもしれませんけれども、そういった実態がございました。
以上でございます。
○横山参考人 塩川先生、貴重な御質問をどうもありがとうございます。まさに、おっしゃられることは非常に重要な点でございまして、私の個人的な意見では、決して十分ではない。
地方消費税を充実させたいと思ってございますけれども、やはり国の消費税そのものの見直しの中でしか地方消費税の充実は政治的にできないのではないかというのが、多くの論者の共通認識かと思います。
ただ、根本的なところで御注意願いたいのは、財政調整ということと、それから課税ベースのそれぞれの地域間の配分の問題がどうも一緒に議論されている嫌いがあるのではないか。
財政調整というのは、まさに、交付税交付金制度の一つの大きな役割でございまして、財政力の弱いところに財源を手当てしていく。それに対して、消費税を充実させていくといったときに重要になってきますのは、財政調整ではございませんで、課税ベースのそれぞれの地方公共団体間の配分基準をどうするかということでございますので、地方消費税を充実させていく上では、課税ベースの配分基準についても、今までの制度のままでいいのかどうかということも含めまして、今後検討していかなければならないと思っております。
いずれにいたしましても、今の税源移譲あるいは地方分権の充実ということを考えていきますと、どうしても両方解決しなきゃいけないわけですね。地方分権を充実させていけばいくほど、財政力の強いところに税収が入ってくる。では、そこをどういうふうに調整するのかというようなことも、今後、この地方消費税の充実とあわせて、財政調整機能としての交付税交付金制度のあり方も議論されてくるのではないか、このように理解しております。
どうもありがとうございました。
○田中参考人 お答え申し上げます。
一つは、交付税の削減につきまして、九〇年代に景気対策で、一〇〇%交付税措置をするということなどでの政府の施策、いわゆる交付税制度を使ったいろいろな誘導があったわけですけれども、そのことと、それから市町村合併につきましても交付税での誘導が行われてきた。ところが、実際に交付税が削減されるということに直面して、私どもがお会いした首長さんたちの思いとしましては、やはり国、政府が非常に信用できなくなってしまったということを率直に述べられておる首長がたくさんいらっしゃいました。ただ、実際には、交付税をもらうから、特交などの配分を受けなきゃならないので、なかなか自分から物が言えないのだ、労働組合としてもっと頑張ってほしい、そういうお声もいただいているところであります。
また、職場の中では、財政が厳しくなっておりますので、全国でも今、公務員が人事院勧告以上に、例えば賃金一〇%カットを三年続けるとか、ひどいところでは三〇%カットなども起きております。労働組合として交渉に当たって、では、限られたお金をどう使うのかということについて、労働組合としても、本当に福祉や住民の暮らしや雇用を支えるためにこの一〇%カットした財源を使ってほしいということなどを言いながら運動をしているという実態もあります。
また、現実には、職員が大変減らされて非正規労働者がふえる中で、正規職員は過労状態、現実に現職死亡の率もふえておりますし、昨年の社会生産性本部などの報告などを読みましても、メンタルヘルスが民間企業以上に自治体職場で蔓延しているということも指摘をされておりまして、こうした実態が大変深刻な事態を生んできているなというふうに思っています。
先ほど行財政改革のところでも申し上げたかったのですが、どこの自治体の計画を見ましても、総務省の集中改革プランの焼き写しのような計画になっておりまして、現実に、やはりまちづくりについて夢が持てない、希望を持って議論ができないという中身になっております。この点についても、例えば、前の鳥取県の片山知事が、総務省の集中改革プランの計画づくりについて、たしか、私たちは計画を出さないという判断をされたように、その地域の実情に合って、先ほど申し上げましたような、本来、住民と一緒になってまちづくりを考えるような職員でありたいと思っているわけですけれども、それができないということについて、そのことがメンタルにも結びつくような事態が職場の実態として起きているということが現場の状況ではないかというふうに思っています。
以上です。
○塩川委員 ありがとうございます。
五十嵐参考人に、道路特定財源に関連して質問させていただきます。
お話の中でも、高規格道路と生活道路を分けて考える必要があるというお話がございました。私は思うのですが、国の道路特定財源分によって、高規格道路あるいは地域高規格道路が手当てをされる、それに当然地方がおつき合いをしなければいけない。つまり、国の道路特定財源で高速道路にいわば聖域のような形でお金が充てられることで、そこに地方の負担が固定化をされてしまう、それがかえって生活道路を圧縮することになってしまうのではないか、こういう構図というのが今生まれているんじゃないのかと率直に思うのですが、五十嵐参考人の御意見をお聞かせください。
○五十嵐参考人 道路特定財源は一体どういうものかということを勉強する中で、高規格道路と地域間の連絡道路と、それから、現在地方自治体で道路計画として上がっているものをオーバーラップしてみました、ずっと順序で。そうすると、おっしゃるように、物の見事に中央集権的なヒエラルキー構造になっておりまして、非常に整然たる、ある種の体系性が見えてまいります。
では、末端、下から上を見てどうなるかといいますと、地方自治体の道路計画、特に今回、地方自治体がなぜ道路が必要かとたくさんパンフレットを出していますので、それを見ていただくとわかりますが、ほとんど地域間道路というのは、道路の渋滞時間を五分短縮とか四分短縮、そういう形で積み上げていって上の方まで積み上げるという構造になっています。この構造は、ある種無限大なんですね。
つまり、これをするとまたここをいじる、これをするとまたこういうことになる、選択幅が全くなくて、道路のある種の中央集権ヒエラルキー構造のもとで、上から下まで全部ぶら下がっているという構造だと私は認識しております。
それで、私の意見は、道路特定財源を一回外しまして一般財源にしたときに、本当に有用な道路とそうでない道路を、物理的にもだれかが選択してやらなきゃいけない。必要だと言っているのは霞が関の、もっと言えば、国土交通省の道路局が必要だと言っているだけで、本当に四分なり五分短縮のために何億円、何十億円投入するような道路の工事が必要かどうかについては、地域住民によく見えないし、見えたとしても直せないというのが一番の欠陥だと私は思っているのです。
逆から言いますと、ボトムアップ型道路の構造をどうしたらいいかということで、情報公開しながら費用対効果を皆さんに見せたときに、五分短縮のために十数億も二十億もかけるようなことが本当にいいのかどうかということに関して、ある種の拒否反応が出てくると思います。それが今の、何となくまだよくわからぬけれども道路特定財源は嫌だという国民の声にあらわれているんだろうというふうに思います。
ぜひ、道路網のネットワークを、高規格道路から地域間道路、それから一番小さな生活道路まで、ネットワークで見ていただくと、いかに膨大な、何といいますか、ある種の自己麻薬というんですかね、膨大な道路を永遠につくり続けるというような構造になっているかがわかっていただけると思います。
○塩川委員 今の点に関連しまして、やはり道路特定財源の背中側に道路中期計画がある、これは表裏一体であるわけです。そういう点での、道路中期計画という形で上から枠をはめていく、こういうやり方はもうやめるべきだと。先ほどのお話の中にも、その他の公共投資の整備計画については五カ年計画をやめて一本にするという形で、道路だけ残っているのは道路特定財源があるからという関係になっているわけですから、そういった特殊な事情そのものを外すということが必要だろう、その上でボトムアップ型での取り組みが必要だというお話がございました。
そういう点で、私も、予算委員会の地方公聴会で水戸に行った際に、陳述人の方の中で、例えば、フランスなどでは、地方からボトムアップ型で、上との調整、調整を重ねながら積み上げていく、そういうやり方があるんだという話もお聞きしました。
五十嵐参考人がお引きになっている中で、地方自治体がそういう形で道路なり公共投資の計画について、下から持ち上げる上で大きな役割を果たしているような事例ですとか、そういうあり方についての工夫の仕方とか、お考えがありましたらお聞かせください。
○五十嵐参考人 特定の自治体名を挙げていいのかどうかわかりませんけれども、私自身は、長野県でそういう実例を見ました。あの有名な知事さんがおりまして、ダムを中止するときに、ダムだけじゃなくて一般的に公共事業全体が、ある種の、十億円で五十億の道路ができる、ダムができる、その他ができるという構造になっているので、これを全体的に変えたいと。変えるためにはどうしたらいいかということについて、もう一度、幾つかの原則を定めて、地域全体の道路を含めた公共事業を見直そうとしたというところを知っております。
そのときの一番の大きな理念になったのは、今後長野県はどういう社会を目指すかということがありまして、ある種のルネサンスをやらなければいけない。そのルネサンスの一番の中核はコモンズであると。コモンズというのは、人と自然が共存し得る、それから、それぞれの義務と権利をシェアするという形でのコモンズというのを一番中心に置きまして、公共事業、道路を含めた全体について見直しをしようとしたということを聞いております。それから、現実にも見ました。
その他、私のいわゆる率直な印象を言いますと、地方分権でいろいろな意味で活躍なさった有名知事あるいは市町村長さんたちは、ここ十年間ぐらいは公共事業をどこかで見直さなきゃいけないということを、それなりに体を張ってみんな頑張ってきたと思いますけれども、なぜか道路になると極端にすこーんとひっくり返っちゃったというのは一体何なのかということがよくわからない。
これは、先ほど潮谷参考人からもありましたけれども、どこかで本当の自由な意見が言えないという構造がやはり支配しているとしか私は思えません。これは新聞報道等で発表されているから何にも隠す必要はないと思いますけれども、一番それを言っているのは鳥取県の片山知事でありまして、やはり自由な発言ができないということをこの間もちゃんと発言しておりました。
この構造です。この構造を残すかどうかが、まさに地方財政にとっても地方自治にとっても一番の根本問題であると私は思っております。今回は何が何でもこういう構造を破っていただきたいというのが私の切なる願いです。
○塩川委員 ありがとうございます。
田中参考人に、現場の実情ということで二点お伺いをいたします。
一つは、自治体ワーキングプアのお話がございました。
私の聞いた話の中で、例えば沖縄などで合併が行われて、もともと雇用の少ない沖縄で非正規雇用の臨時職員の若者がいた、そういう若者が合併を機に退職させられる、今でさえ仕事がない沖縄で、公務の場で新たな職を失うような事態というのが地域経済、地域社会にとって大きな影響を与えているという話をお聞きしました。
その点で、この自治体ワーキングプアを生み出すような現状について、全国を回っておられて、地域社会、地域経済にどんな影響がもたらされているのかということについてお聞きしているところをお伺いしたいということが一点。
公立病院の問題のお話もございました。この点では、公立病院改革ガイドラインの問題点など、私もきょう午前中の質疑でも取り上げましたけれども、病床数を病床利用率に、交付税の算定基準を見直す、それはもう、医師不足が恒常的になっている中では、結果とすれば、交付税が下がらざるを得ないような事態につながるではないか。恒常的な医師不足をつくっている国の責任が問われるわけなんです。
そういう中で、全国を回って、首長さんなどの公立病院改革ガイドラインについてのいろいろな御意見などをお聞きしているところがあれば、ぜひ御紹介をください。
○田中参考人 お答え申し上げます。
一つは、今沖縄の話がありましたが、市町村合併に伴って、いわゆる合併は構造改革なんだ、効率化を目指すんだということで行われますので、どうしても職員の削減ということが一つの大きなテーマになってしまいます。その際に、まず手っ取り早く臨時職員の解雇が起きるというのが全国各地で起こっております。その結果、先ほどの沖縄の話のような、せっかく雇用の確保をされていた青年が職を奪われてしまう、そんな事態になりました。
それから、合併後の集中改革プランの具体的な実行に当たって、例えば公の施設の指定管理者制度の導入などによっても、指定管理者にすることによって、ここは非正規だけではなくて正規の職員の分限免職処分、分限解雇、民間でいえば首切りが全国で起きてきているということも現にありまして、その結果として、やはり労働組合をつくってきちんと自分たちの権利を主張していかない限り、職が守れていかない、そういう問題が各地で続発をしておりまして、そういう人たちの声を私たちは受けとめるために、一人でも加盟できる労働組合もつくりながら、そういう人たちの声を大事にして取り組みを進めています。
今、地域経済への影響というお話がありましたけれども、先ほど公の施設の受託をしている民間企業の例を参考に御紹介させていただきましたけれども、賃下げスパイラル、それから不安定雇用者の解雇という問題がこれ以上進んでいくことによって企業そのものも成り立たなくなる。それから、雇用が喪失されていきますので、まさに地域経済への影響が非常に大きいということが指摘をされておりまして、ここでも、国における公契約法制をつくってほしいとか、また自治体でも、今さまざまな分野で、契約に当たって賃金の底上げをきちんとしていくような、また正規と非正規の均等待遇が実現するような方向での条例をつくろうではないかという動きなどもありまして、まさに地域を支える雇用政策について抜本的な対策が必要になっているなというふうに思っているところです。
それから、病院改革ガイドラインにつきまして、この間の懇談の中でも、先ほども御紹介をいたしましたけれども、これは自治体病院をつぶす計画だということを明確に述べられる首長さんが何人かいらっしゃいました。ただ、残念なことに、自分の自治体名を挙げて、どこどこの市長さんがこう言われているというふうに言うと、さじかげんで特交などでの影響を受けると困るので、名前だけは出さないでほしいというお話がありましたりしているわけです。
公立病院改革ガイドラインについて、まさに医師不足という根本を解決しないで、効率性だけ進めていいんだろうかということにつきましては、多くの自治体関係者がそういう声をお持ちだということと、現に、その先取りとして起きています北海道では、北海道の道立病院を指定管理者にする、そういう提案が出た瞬間に、オホーツク地域では内科医の先生方が大量に辞職願を出されるということもありまして、その勤務医の皆さん方の過重な労働実態を改善することこそが今必要であって、数字的な効率性だけが強調されるようなやり方ではますます医師不足は進んでしまうのではないかという心配をしているところであります。
以上です。
○塩川委員 終わります。ありがとうございました。
○渡辺委員長 次に、重野安正君。
○重野委員 社会民主党の重野安正です。
参考人の皆様には、きょうは貴重な時間を割いて本委員会に御出席をいただきました。心から感謝申し上げます。
二十分という時間でありますので、早速入らせていただきます。
現在、当委員会で審議されております地方財政関連三法案、その内容は多岐にわたっておりますが、議論の根幹には地方財政の困窮があろうというふうに思っています。地方再生対策しかり、地方法人特別税しかり、一番の大もとにある問題をしっかり認識しなければ、この問題の解決策というのは見つけ出せないだろう、このように思っております。
そこで、参考人の皆さんにお伺いいたしますけれども、非常に月並みな質問かもしれませんが、今の地方財政をここまで追い詰めた原因は那辺にありやという点について、四参考人のそれぞれの意見をお聞かせください。
○潮谷参考人 一点は、累次に及ぶ公共事業、これが余儀なくされたという紛れもない現実があると思います。
それから、地方交付税の問題、三位一体の中で非常に地方財政を直撃したということがございます。
そして、その一方で、私どもが構造的に考えていかなければならない少子高齢社会への対応、このことが、ややスピード感が乏しい中で今進んでいるのではないかということを将来にわたって懸念するところでございます。
以上です。
○五十嵐参考人 事実に基づいて地方財政の分析をしていただければわかると思いますけれども、やはり公共事業、身の丈を超えた公共事業が自治体財政を圧迫したことは事実です。
特に補助金でありまして、補助金を超える部分について、地方交付税で裏負担、つまり、百億円のダムをつくるときに、五十億円、国から補助金が出る、自治体は五十億円借金をする、その際、裏負担がありまして、六割程度さらに地方交付税で補てんをするというこのシステムが地方自治体を安易に公共事業に走らせたということと、もう一つは、小渕内閣以降ですけれども、地方経済の発展にとって公共事業が欠かせないということで、どんどん自治体にお金を使わせたという構造が自治体圧迫の原因です。
それから二番目は、やはり今まさに潮谷参考人と全く同じ意見ですけれども、高齢化社会の急激な到来について、やはり地方自治体、国を含めて余りにも備えが遅かった。今後は、社会保障を含むいろいろな高齢化社会対応の出費がどんどん膨らんでいって、これにお金が回らないということだと思います。
三番目、これが一番問題だと思うんですけれども、地方自治体の首長さん及び皆さんに聞きますと、地方自治体が物すごく財政危機であるということを言いまして、その結果、国の方に、とにかく財源をよこせということを言っております。
しかし、考えてみますと、国の方も、これは夕張のような財政再建団体の規定がないから国だけはいかにも免罪のようでありますが、同じような計算をすると、国自体がおよそもう夕張のような借金状態になっている。これは明らかに、先進資本主義国と比べると、日本の借金は異様を超えて、もうだれも解決策を打ち出せないという状態だと思います。
したがって、地方自治体の方も、国の方に何か財源を要求するというだけではなくて、国と自治体あわせて一定の、身の丈に合った財政のもとでどのような公共投資を行っていくか、どういう社会資本投資を行っていくかということをもう一度考え直さないと、単に国を突き上げるとか、国がそれにこたえてまた借金をして膨らますという形ではもう到底解決できない、根本的な危機の状態に入っていると私は認識しております。
もう一回整理しますと、身の丈を超える公共事業投資が明らかに自治体財政危機を招いたということと、今後ますます高齢化社会を迎えて、自治体の財政需要はふえるということです。しかし、そのときに、自治体は国に対して単に財源の移譲を求めるというだけでは問題はもう解決がつかないという時代に入っているというのが私の認識です。
○横山参考人 お答え申し上げます。
制度の問題もあろうかと思いますが、まずは、グローバル化というような大きな市場経済の流れが、やはり地方社会を疲弊させた大きな原因の一つではないか。
人間社会ですから、人がいないとその地域社会はどうしても弱くなります。そして、多様な人々がその地域に住むということが重要でございまして、人々は所得を稼得できる地域に移動する。それから、さまざまな、行政サービスが豊かな、そして豊かな人々が住んでいるところに移動することによって自分の税負担も低くなる。そうしますと、過疎の地域はますます疲弊をします。
何が申し上げたいかというと、人々をその地域にとどめるような工夫をグローバル社会の中でどうやって行っていくのか、魅力ある地域をどうやってこれから日本の社会がつくっていくのか。シャッター通りが、今の日本の財政ではなくて、地方の地域社会の疲弊さをあらわしているのではないかと考えてございます。
以上です。
○田中参考人 お答え申し上げます。
基本的に、潮谷知事がおっしゃっていた内容だというふうに思っておりますが、一つは、やはり政府の政策の問題として、とりわけ交付税制度がこれだけゆがんできたのが、景気対策や市町村合併など、政策誘導するためにその制度が使われてきた。本来、地方の財源のはずが、国の政策誘導のために使われてきたということで、地方交付税制度そのものがゆがんできたという問題点。
それと、やはり自治体の責任という問題もあると思うんですが、身の丈を超える公共事業などについて進めてきたというところがあり、そして三位一体改革のもとで決定的なダメージを与えられたというふうに思っていますし、とりわけ地方自治体の関係で見ますと、構造改革の中での社会保障費の抑制などもリンクして今の実態が生まれてきたのではないかというふうに思っています。
ただ、身の丈を超えないで、無駄な公共事業や政府の政策誘導に乗らずに頑張ってきたところでも大変な危機的な状況がありまして、そういう意味では、いろいろなこの間の、九〇年代以降の政策が複合的にあらわれた結果ではないかというふうに思っています。
これに対して、私どもとしては、先ほど国の抜本的な対策を求めたいというふうに述べたわけですけれども、例えば長野県の栄村など、今、合併をしないで頑張っている自治体などでも、何とか自分たちで内発的に地域経済を発展させようという努力をされております。
一昨年の大雪の際に栄村をお訪ねしたんですけれども、雪害対策費を地元で雇用を創出することに使う。そういう、栄村村長が地域の雇用や地域経済を考えたさまざまな施策が行われていまして、ただお金を配って、業者を呼んで住民が雪おろしをするのではなくて、そのお金を使って雇用を生み出しながら、特別公務員というような形で雇用を生み出しながら地域おこしをする。また、役所が地元の業者から物を買うときには、正価の値段できちんと買って、地域の商店が成り行くようにしていくんだとか、そんな努力もされておりまして、そういう努力と国の政策的な変更が両方今求められているのではないかなというふうに思っております。
○重野委員 ありがとうございました。
私は、今それぞれ語られました内容と全く同感という部分もたくさんございます。
振り返ってみますと、この間の経済対策、地方公共団体にどんどん国がハッパをかけて公共事業をやらせたんですね、やらせたんです。先ほど来参考人の皆さんから出ているように、やる過程において膨大な借金を抱え込んだ、こういう構図なんですよね。
先般、衆議院の総務調査室がアンケートをとったんですね。その中で、やはり国あるいは地方の予算規模の変化というものが地域経済に悪影響を与えている、このように答えた都道府県が実に七割に上っている。政令市、中核市でも五割を超えている。
いずれにいたしましても、こういうこの間の経済対策が国、地方の財政構造を悪化させたということだけは明確になっているんだろう。そういうバックグラウンドのもとで、この間行われた国と地方の税の関係というものを見てみますと、税源移譲三兆円やりました。ところが、補助金の削減を四・七兆やりました。地方交付税の削減を五兆やりました。それがやはり今、地方自治体をして、この地方交付税をもとに戻せ、そういう切なる声が噴き上がっているというのが現実だろうと思います。
私は九州の大分県ですけれども、この間、そういう財政事情がバックグラウンドにあって、いわゆる自治体の再編がどんどん進んでいます。私の選挙区は非常に広い、佐伯から日田まで、大分県の二分の一強の面積を占める選挙区なんですが、そこでどういう状況が現出しているかというと、この間の自治体再編で、そこに町役場がありました、村役場がありました、その周辺に商店街、ささやかであるけれども商店街が形成されていました、ところが、今そういう光景がもうないんですね。シャッター通りといえば大きな町のイメージですが、今まで商売してきた方がみんなもう商売上がったり、店を閉じる。そうなると、私は、今の自治体再編がこのまま進んでいけば、間違いなく、昔の町役場、村役場があった、いわゆる拠点というか集落が姿を消すんだろうと思うんですね。
結局、平成の大合併は、自治体を減らすということと同時に、そういう部落機能を荒廃させていくというふうに私は見るんです。
この平成の合併について、皆様方の御意見、特に潮谷知事、最前線で二期八年間頑張られた、この間の足跡をなぞりながら、今私が指摘をした問題についてどのように受けとめておられるか。それから、五十嵐先生、同じ問いに対し返事をいただきたい。それから、横山さん、それについての横山先生の見解をよろしくお願いします。
○潮谷参考人 私は、合併に関しましては、自主合併、これを必ず言ってきているところです。
それは、自分の地域が一体、将来人口がどのようになり、将来の財政はどのようになり、そして財源を確保するための手段はどうなければならないのかということを徹底的に論議することによって市民社会の成熟が促されていく、このように考えております。
国は強制的な合併という権限を知事に与えておりますけれども、私は、この合併は一つの、自分たちの地域を住民側から見直していくというためのさまざまな提供、これをトップはやっていかなければならないし行政はやっていかなければならないという、またとない機会も要素として含まれている、このように考えているところでございます。
一方、合併をする、合併をしないということは、これは住民が選択できるだけの材料をきちっと提供していくということが非常に大事でございます。
また、私どもの日本の中には伝統的な文化がございますが、その伝統文化が実は崩壊になっているという中に人口減少社会の実態がございますので、私は、合併ということを通しながら地域の活性化を考えたときに、経済的な活性化とともに、忘れてはならない活性化の中に、地域文化、これをどのように考えていくかという側面を考えたときに、合併ということがその一側面も担うことができるのではないか、そういうような思いも今日まで抱いてきたところでございまして、徹底した自主合併、これを今もなお呼びかけしているところでございます。
ただし、合併特例期限がございますので、それまでの間に合併しようという機運があるところは、合併特例に伴うさまざまな利点、このことを享受するということも忘れてはならない点ではないかと思います。
以上でございます。
○五十嵐参考人 平成合併の特徴は、非常に大きく言いますと、自治を優先するか効率を優先するかという問いだったと私は思っています。
今、潮谷参考人の意見にありました自主合併を考える場合には、この問題を平等にしなきゃいけないと思ったんですけれども、たまたま政府の方で合併特例債というある種のボーナスをつけたものですから、それに乗って合併した自治体が多かったんじゃないかと思います。
その結果、点検したらいいと思いますけれども、私の聞いている範囲内では、合併をしてよくなったということを言っている自治体は極めて少ないというふうに私には聞こえてきております。
それで、将来どうするかでありますけれども、自治と効率の問題を、ハンディキャップをつけないで、もう一回全国民に問うたらいい。そうすると、多分、合併しないという自治体もかなりふえてきているというふうに思いますし、ヨーロッパなどと比べますと、二、三万人の社会というのは当たり前の自治体でありまして、これを非常に大きくしていくというのは、これまたかなり独特、日本の異様な姿じゃないかと私は思っています。
○横山参考人 お答え申し上げます。
持続可能性が担保されているかどうかという観点でいきますと、合併のいわゆる移行の取引費用とよく言うのでございますが、それがかなり、予想以上にかかっているのではないかと。
合併の効果をどこの時点で見るのかということについて私たちは注意しなければならないんだろうと思います。短期的に見た場合には、そうした移行のコストの方が規模の経済あるいは範囲の経済を超えている可能性がございますが、文化は、今参考人の方から地域文化というお言葉も出ましたが、やはり、これから合併をすることによって新しい町、地域社会をつくっていくということに対する住民の意識度あるいは帰属意識に依存するかと存じます。
以上です。
○田中参考人 お答え申し上げます。
先ほど五十嵐参考人からも、よくなったと思っている自治体は少ないのではないかというお話がありましたが、どこでも、合併をするのではなかったという声が出ております。現に、合併をして新市計画などをつくって、交付税などが予想したとおり来なくて、一年後にもう財政が破綻をする、そんな事例も生まれておりますし、効率性だけで本当にまちづくりができたのかということについては、多くの関係者が疑問を投げかけているのが実態ではないかというふうに思います。
ただ、もう一つ、側面としまして、私たちも、強制合併はやめるべきだけれども、合併の是非は住民が考えることだ、そして、自治体職員は適切な情報を住民に伝えながらまちづくりを考える取り組みにしようという取り組みを、私たちは労働組合としていたしました。
その結果として、全国で四百を超える住民投票なども起きましたし、やはり新しくまちづくりについて考える機会になったという声も一方ではありまして、そういう点では、そういうことが行われたところでは、住民自治が発展をする、まちづくりについて十分な議論がされるということもありまして、そういう側面もあったのではないかということも受けとめながら、きちんとした検証が必要だというふうに思っております。
以上です。
○重野委員 参考人の皆さんには、貴重な意見をいただきまして、ありがとうございました。
以上で終わります。
○渡辺委員長 次に、亀井久興君。
○亀井(久)委員 国民新党の亀井久興でございます。
参考人の先生方、お疲れでございましょうけれども、もうしばらく御辛抱いただきたいと思います。
私、基本的な問題を少し違った角度から指摘をして、ぜひ御意見を承りたいと思います。
それは、小泉内閣がスタートして、その後、安倍内閣、福田内閣と今日まで来ておりますけれども、小泉内閣が、いわゆる聖域なき構造改革ということを強烈なメッセージとして出されて、さまざまな改革に取り組んでこられた。その改革、私、すべて悪いとは申しませんけれども、やはり多くの弱点、欠点があるように思います。
その一つは、財政構造改革の大きな目標に、いわゆる基礎的財政収支を黒字化する、プライマリーバランスを黒字化するということを掲げました。私は、そのプライマリーバランスを健全化する、収支を健全化するというそのことの方法としまして、緊縮均衡ということと拡大均衡というのがあると思うんですね。小泉内閣は、明らかに緊縮均衡を目指した、緊縮財政ということを大きなメッセージとして出しましたから、そのことによってすべてが縛られてしまって、そのしわ寄せが地方に大きく及んできているというように思います。
一方で、デフレの解消ということを唱えたわけですけれども、一九九八年から始まったデフレがいまだに解消されていないという状況にあります。これは明らかに需要不足ということから出てきていると私は思います。やはり官民力を合わせた総合的な需要政策をとらなければ、絶対にGDPは大きくならないし、税収もふえないし、個人消費も大きくならない、したがってデフレは解消できないということを私は一貫して主張しておりまして、当時の竹中経済財政・金融担当大臣と激しく対立をしたわけでございます。
その結果、まさに私が当時心配したとおりになってしまったと思います。GDPが、かつて五百二十兆とかあったわけですけれども、今ようやく五百五、六兆というところまで戻ってきているという程度ですし、また、税収が、かつて六十一兆円あったものが、今ようやく五十六兆弱というところに戻ってきたというような状況にあるわけでございます。
ですから、先般、大田大臣が言われたように、日本の経済はもはや一流と言える状況ではない、そういうことになってしまった。一人当たり国民所得もどんどん下がっている、日本全体の経済規模も、世界経済の約二割と言われておりましたのが、今九・一%まで落ちてしまっている、こういう状況にあるわけでございます。
そういう中で、需要政策をとらずに緊縮財政一本やりでいこうとする、そこに私は根本的な間違いがあったと思っております。緊縮財政、財政の無駄を省くというのは、これは当たり前のことでございますから、無駄なことをやめるというのは大いに結構ですけれども、そのことと緊縮財政というのは私は質的に違うことだと思います。
結果的に、三位一体改革が始まって以来今日まで、この間、私、予算委員会で基本質疑に立ったときにこの数字を挙げましたけれども、地方交付税の削減分と国庫補助負担金の削減分、それに公共事業関係費の削減分、これを、ずっと今日まで毎年減らされてきている分を累積して集めますと、実に四十七兆円になるんですね。四十七兆円という大きなお金が地方に行かなくなっているんですから、これはもう地方が疲弊するのは当たり前だと思うんですね。そういう中で地方が一生懸命苦労しておられる。私はどうも、国家財政、国の財政さえ健全化されれば地方はどうなってもいいと言っているような、そういうやり方を進めてこられたように思うんです。
ですから、そういう中で地方が今非常に苦しんでおられる。それのそもそもの原因というのは、プライマリーバランスの黒字化ということに余りに固執をし過ぎたということではないかと私は思うんです。ですから、私は、基礎的財政収支の黒字化とか均衡というのは、これは結果として出てくるものであって、それを余りかたくなに目標にするべきことではないと思うんですね。やはり、現実にGDPが大きくなって、そして税収がふえて個人消費が旺盛になって、そしてどんどんどんどん日本の経済、国民生活が豊かになっていけば、結果的に財政収支というのは黒字化されてくることは間違いないわけですから、そこの誤りがあると私は言い続けているんですが、そのプライマリーバランスの黒字化ということに対して地方財政の観点からどのように受けとめておられるかということを、それぞれお四方にお伺いしたいと思います。
○潮谷参考人 実は、社会保障の領域の中で申し上げますと、私ども地方は、既に、社会保障の経費が増加の一途をたどっており、そういった中で非常に財政圧迫の現実がございます。その中で地方は、それぞれ地域のニーズに応じて、例えば、乳幼児医療費の助成事業、ひとり親家庭等医療費助成事業、重度心身障害者医療費助成事業、私立高校の授業料の軽減、それから警察官の職員給与費、こういったものは、ほとんどの都道府県が自前でやっていかなければならない。
言葉をかえて申し上げますと、国のプライマリーバランスの黒字化のために、地方のプライマリーバランスは非常に厳しい状況の中にある、このように申し上げてよろしいかと思います。
少子高齢化の中で社会保障が総額抑制されていくというようなことについても、私どもは、地方から、今後とも、交付税措置が本当にあらゆる領域の中で考えていかなければならないときを迎えているのではないかと思います。
以上でございます。
○五十嵐参考人 私は、この点に関して専門的な知識はございません。それで、正確な答えを出すことはできないので、勘弁願います。
○横山参考人 亀井先生の御質問にお答え申し上げます。
財政健全化と、地域も含めました経済の活性化のバランスをどのようにとるのか。
亀井先生のお話ですと、今は総需要が不足しているから財政出動もやむを得ない、そうしますと、財政赤字のこの実態をどういうふうに考えるのか、後世代に負担を転嫁させるようなことにならないのか、このバランスのとり方だろうと思います。そして、上げ潮路線等々のお考えもあろうかと思うのでございますが、これからのことを考えたときに、財政健全化と、それから経済成長ないし活性化の両立、難しい選択でございますが、政策をしていかなければならないんだろう。
ただ、今の財政赤字は、今の私たちの決断ではなくて、過去の政権が、そういうような時々の経済情勢を踏まえて、財政赤字を出しても経済を不況から脱却させる、これ以上不況を深刻化させないという決断で負ったものでございます。これはまさに異時点間の外部性というのでございましょうか、政策の、過去の政権の結果を私どもは担いながらよりよい社会を目指さなければならないとしたときに、先生のおっしゃる、財政の健全化よりも経済成長だと言い切れるのかどうかというところにつきましては、私は少し異論がございます。
以上でございます。
○田中参考人 お答えを申し上げます。
一つは、例えば国民医療費の負担割合について、一九八〇年から二〇〇三年などを比較してみますと、中央政府と企業の負担が減って、地方政府と家計の負担がふえたということにあらわれておりまして、先ほどの知事のお話にもありましたような問題点として、やはり、ねらいとして国と企業の負担を減らすためにとられた手法として大変大きな問題点があったんではないかというふうに思っております。
もう一つ、やり方の問題としまして、数値目標を定めて進めるということが、非常に中央集権的な手法として、さまざまな分野に、自治体が自主的に物が考えられない、計画もつくれないということも手法として問題点があったのではないかというふうに受けとめております。
以上です。
○亀井(久)委員 先ほど来、地方分権についてのさまざまな御議論がありました。地方分権を進めていこうということに反対の方はほとんどおられないと思うんですが、地方分権を進めていくということの一つの前提として、やはり、どういう国をつくるのか、どういう国土形成をするのか、そのことについてのはっきりとした政治目標が示されて、それについての国民の合意があって、それを実現していくための国と地方との役割分担をどうするのか、そのために、当然のことながら、先ほど潮谷知事さんもおっしゃいましたけれども、やはり、税源、財源、権限というその三つを思い切って地方にゆだねていかないと、地方分権というのはできないということだと思います。
したがって、根本的な税制改革、国税と地方税との見直し、そういうこともやっていかないと地方分権は推進できないと思うんですけれども、先ほど申し上げましたように、今これだけ地方交付税が削減をされているという状況を考えてみれば、やはり、地方が独自の判断で使える財源というものをしっかり確保する、そのことのために私は地方交付税を思い切ってふやしていくということが当面の策として必要なんだろうと思います。
今、地方交付税への、国税五税の暫定比率というもの、これは所得税、酒税が三二%、法人税が三四%、それから消費税が二九・五%、たばこ税が二五%という数字だったと思いますけれども、これをやはり思い切って引き上げて、そして、当面、とにかく苦しんでおられる地方の財政を少しでも軽減し、豊かにするということをやるべきではないかというように思いますが、そのことについての御意見をそれぞれ伺いたいと思います。
○潮谷参考人 国が出してくる施策は平均像でございます。それぞれの地域はそれぞれの実態像に基づいて施策展開をしていきたいという願いがあります。そのためにも、私どもは、今おっしゃいましたように、自治体間の財政力の格差を是正して一定の行政水準を維持、確保していくということが非常に大事だと思いますので、何よりも地方交付税の財源保障、そして財源調整機能が十分発揮できるような、それが、非常に今後とも国においては重要視していただきたい課題だと思います。
○五十嵐参考人 税収、財源をどうするかという問題と、それをどのように配分するか、二つの問題があるというふうにお聞きしました。
税収について、それぞれの費目をそれぞれ増税するというやり方もあると思いますし、その他、よく一般的に言われておりますように一般消費税で賄うという方法もあると思いますけれども、税収を考える上で一番重要なことは、国民にとって増税が、それが自分たちの利益になるという関係をきちんとつくることというふうに私は思っています。
日本国民全体でいいますと、選挙を踏まえて特に言いますと、増税はなかなか選挙で勝てないと言われていますけれども、そうではなくて、増税することは自分たちのプラスになる、自分たちの将来設計に結びつくということをどのように理解させるかということが大きな問題だと思います。
二番目に、それぞれの地方自治体における税収の格差をどのように配分するか。端的に言いますと、東京ひとり勝ちという状態をどのようにするか。もっと言いますと、一番末端である限界集落にどのように税を配分していくかという問題について、従来の地方交付税の配分基準はやはり限界に来ていると私は考えております。
これは、ぜひ地方首長さんたちに一回税源の配分の仕方を議論していただきまして、これを簡明、率直に、皆さんにわかるように、自治体側が頑張ってその配分の仕方というものを調整していただければいいと私は思っております。
○横山参考人 お答え申し上げます。
国づくり、先生の非常に重要な御質問でございますが、これが欠けているんではないかと思います。
私は持続可能性という観点からお話ししてございますが、人的資本と人工資本と自然資本と制度資本といったときに、やはりこの人間社会で一番の基礎は人的資本だろうと思います。すばらしい技術進歩も、すばらしい発明も、すばらしい文化も、みんな人間がつくります。そうすると、この人的資本の減耗をどうやってこれから回復していくのか、そして日本で生まれた子供たちが世界にメッセージを発して、そこにいろいろなものが呼び込める、そういうような人づくりこそが国づくりになろうか、私見でございますが、そういうふうに思っております。
以上です。
○田中参考人 お答え申し上げます。
ぜひとも地方交付税の増額措置について御検討を進めていただきたいなというふうに思っています。
全国町村会が、交付税制度について非常にわかりにくいということで、何とか国民にわかってもらう努力を三、四年前からされておりましたけれども、なかなか交付税といいますと理解しにくいこともありますし、また国民にとってなかなかわかりにくい。また最近では、地方交付税法そのものが、何かきちんと議論もされないんではないかという心配もありまして、地方交付税法という法の精神に基づいて、今の税率の問題も含めて検討して増額の方向を進めていただき、財源保障機能と財源調整機能をしっかり持ったものとして拡充をしていただけたらありがたいなというふうに思っています。
以上です。
○亀井(久)委員 時間が来ましたので、最後に潮谷参考人にもう一点お伺いしたいと思います。
平成の大合併と言われる合併が進められて、私も地元が大変な過疎、高齢県の代表的な島根県でございますけれども、同じ過疎と高齢化に悩んでいるような、そういう町村を幾らまとめてみても、そのことによって自立する力というのは私は出てこないんだろうと思います。
ですから、広域合併を進める上においては、地域の拠点都市、大きな拠点都市というものを含んで過疎地域を合併していかないとなかなか本当の自立する力は出てこないと思うんですけれども、今進んでまいりました広域合併というものをどう評価しておられるのか。
それから、将来、道州制ということがいろいろ与党の方でも議論され始めているようですけれども、そのことについての見解を簡単にお伺いして、終わりたいと思います。
○潮谷参考人 合併効果は、短期的に検証するということの難しさが一つあると思います。
それからもう一つ、道州制の問題ですけれども、道州制はなかなか一気にはいかないし、区域割りの問題ではないと思いますので、私ども九州は、まずそれぞれに政策連合をする中で道州制をにらんでいくということで、県民の理解、国民の理解を促していくことが先だ、このように思っております。
○亀井(久)委員 どうも、お疲れのところ、貴重な御意見を承りましてありがとうございました。これで終わります。
○渡辺委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。
参考人の皆様方には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時六分散会