衆議院

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第7号 平成25年11月29日(金曜日)

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平成二十五年十一月二十九日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 小渕 優子君

   理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君

   理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君

   理事 義家 弘介君 理事 笠  浩史君

   理事 鈴木  望君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      小此木八郎君    神山 佐市君

      菅野さちこ君    木内  均君

      工藤 彰三君    熊田 裕通君

      小林 茂樹君    國場幸之助君

      桜井  宏君    新開 裕司君

      新谷 正義君    冨岡  勉君

      永岡 桂子君    野中  厚君

      馳   浩君    宮内 秀樹君

      宮川 典子君    宮崎 政久君

      八木 哲也君    大西 健介君

      菊田真紀子君    細野 豪志君

      山口  壯君    吉田  泉君

      遠藤  敬君    椎木  保君

      三宅  博君    中野 洋昌君

      井出 庸生君    柏倉 祐司君

      宮本 岳志君    青木  愛君

      吉川  元君

    …………………………………

   議員           大塚  拓君

   議員           塩谷  立君

   議員           渡海紀三朗君

   議員           伊藤  渉君

   文部科学大臣       下村 博文君

   厚生労働副大臣      佐藤 茂樹君

   文部科学大臣政務官    冨岡  勉君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  桝田 好一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 中野  節君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            布村 幸彦君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       土屋 定之君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            吉田 大輔君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大西 康之君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十九日

 辞任         補欠選任

  小此木八郎君     八木 哲也君

  永岡 桂子君     宮崎 政久君

  比嘉奈津美君     國場幸之助君

  細野 豪志君     大西 健介君

同日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     新谷 正義君

  宮崎 政久君     永岡 桂子君

  八木 哲也君     小此木八郎君

  大西 健介君     細野 豪志君

同日

 辞任         補欠選任

  新谷 正義君     比嘉奈津美君

    ―――――――――――――

十一月二十八日

 研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律案(塩谷立君外四名提出、衆法第二二号)

同日

 私立学校の保護者負担軽減、教育環境改善のための私学助成充実に関する請願(横路孝弘君紹介)(第一六一号)

 原発賠償の時効問題の抜本的な解決に関する請願(荒井聰君紹介)(第二三三号)

 同(奥野総一郎君紹介)(第二三四号)

 同(田嶋要君紹介)(第二三五号)

 同(畠中光成君紹介)(第二三六号)

 同(山内康一君紹介)(第二三七号)

 同(若井康彦君紹介)(第二三八号)

 同(浅尾慶一郎君紹介)(第二六六号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第二六七号)

 同(近藤昭一君紹介)(第二六八号)

 同(志位和夫君紹介)(第二六九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二七〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二七一号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第二七二号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二七三号)

 同(吉川元君紹介)(第二七四号)

同月二十九日

 原発賠償の時効問題の抜本的な解決に関する請願(渡辺喜美君紹介)(第三二〇号)

 同(井坂信彦君紹介)(第三四四号)

 同(椎木保君紹介)(第三四五号)

 同(中島克仁君紹介)(第三四六号)

 同(佐藤正夫君紹介)(第三九七号)

 同(三谷英弘君紹介)(第三九八号)

 教職員の定数改善と給与・待遇に関する請願(竹下亘君紹介)(第三四二号)

 原発損害賠償請求の消滅時効に関する抜本的な立法措置を求めることに関する請願(吉野正芳君紹介)(第三四三号)

 学校に正規の現業職員を必ず配置するよう法制化を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三八八号)

 同(笠井亮君紹介)(第三八九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三九〇号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三九一号)

 同(志位和夫君紹介)(第三九二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三九三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三九四号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三九五号)

 同(小川淳也君紹介)(第四五〇号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第四五一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第四五二)

 私立学校の保護者負担軽減、教育環境改善のための私学助成充実に関する請願(町村信孝君紹介)(第三九六号)

 学費負担の大幅軽減と私大助成の増額に関する請願(菊田真紀子君紹介)(第四四九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律案(塩谷立君外四名提出、衆法第二二号)


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     ――――◇―――――

小渕委員長 これより会議を開きます。

 塩谷立君外四名提出、研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。塩谷立君。

    ―――――――――――――

 研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

塩谷議員 おはようございます。

 ただいま議題となりました研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 本案は、研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進を図るため、研究開発システムの改革を引き続き推進する措置を講じるもので、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、労働契約法の特例であります。

 研究開発法人または大学等と有期労働契約を締結する研究者等について、労働者が使用者と無期労働契約を締結する権利を得る複数の有期労働契約の通算期間に関する労働契約法の特例を定め、十年を超えることを要件とすることとしております。

 第二に、研究開発法人による出資等の業務を可能とすることであります。

 研究開発の成果の実用化及びそれによるイノベーションの創出を図ることが特に必要な研究開発の成果を保有する研究開発法人は、当該成果を事業活動において活用しようとする者に対する出資並びに人的及び技術的援助の業務を行うことができるものとしております。

 第三に、新たな研究開発法人制度創設及び人材の確保、育成のための措置であります。

 研究開発等を行う法人に関する新たな制度を創設するため、必要な法制上の措置を速やかに講ずることとします。さらに、研究開発能力の強化を図るため、人材の確保、育成等に必要な措置を講ずるものとしております。

 第四に、我が国及び国民の安全に係る研究開発やハイリスク研究への必要な資源配分であります。

 我が国及び国民の安全に係る研究開発や、成果をおさめることが困難であっても成果の実用化により極めて重要なイノベーションの創出をもたらす可能性のある革新的な研究開発を推進することが社会的、経済的に大きな価値を生み出すことに鑑み、これらに必要な資源配分を行うこととしております。

 以上が、本案を提出いたしました理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

小渕委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣情報調査室内閣審議官桝田好一君、内閣府大臣官房審議官中野節君、文部科学省高等教育局長布村幸彦君、科学技術・学術政策局長土屋定之君、研究振興局長吉田大輔君及び厚生労働省大臣官房審議官大西康之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柏倉祐司君。

柏倉委員 おはようございます。みんなの党の柏倉でございます。

 いつも我が党は大体夕方近くに質問させていただくことが多いんですが、きょうはいつも八番バッターだったのが一番バッターで、切り込み隊長をさせていただくということで、いつもより余計に緊張しております。よろしくお願いいたします。

 今回、研究に関する法案ということで、実は私も、内科医でございますが、その傍らずっと基礎研究もやっておりました。今回、山中教授のiPS細胞のノーベル医学賞を受けて、国を挙げて支援していく、文字どおりこの領域を国策化していくということ、これは我々も当然だというふうに考えております。そして、本案につきましても、例えば無期労働契約に転換する期間の延長、五年から十年に雇えるようにする、こういったような柔軟な労働契約法の運用、これはやはりリサーチの現場に即した雇用形態であるなというふうに我々も考えております。

 私の経験で、非常に卑近な例で申しわけないんですが、世界のトップを走る研究室というのは、言うなればプロ野球というか、アメリカでいえば大リーグみたいなものでして、とにかく人的流動性というのは物すごく激しい。結局のところ、優秀な人材が業績を出して、知財、論文を出してステップアップしていく、これがやはりレベルの高い研究を担保する一つの大きな流れ、人的な流れだと思うんです。

 あと一方で、基礎、自分の修行の時代、リサーチャーというのは自分の専門分野を決めて自分の技術を磨いていく、言うなれば二軍の時代があるわけです。自分の技術を身につけて、データを出せるのが安定をする、これは大体四、五年はかかると思うんです。そういった中で、では、ボスが、そして周りの人が、彼なら引き続きこのプロジェクトに従事してもらえるだろうということで、本当にその研究室に貢献できる、これがやはり四、五年目からだと思うんです。

 そういう意味では、この十年という大きなスパンで人的流動性を担保するというのは、私は極めて合理的な流れであるなというふうに評価をしております。

 ただ、我々、我が党としては、行政改革というものを前面に打ち出して結党した党でございます。そこのところに関する質問をさせていただいて、やはりただしていくということをぜひやらせていただきたいと思います。

 最先端の研究を走っている独立行政法人、研究開発法人に勝手のいい制度の中で研究に没頭してもらうということは確かに必要だと思います。それが、所管が文科省であれ総務省であれ、研究をする人間からすると研究がやりやすい方がいいわけであって、どちらでもいいというのが本音だと思います。

 そこで今、研究開発法人制度の設立に関して、新たな根拠法を設けて設立する可能性もあるというお話でしたけれども、現状のいわゆる独法の通則法、そして二階建ての個別法で運用されていると思うんですが、それではかた苦しい、やはりこの辺がいけないというところの具体的な御説明をお願いしたいと思います。

塩谷議員 先生は専門的な見地から今お話しいただきましたが、独法が制度が始まって十年になりますが、今その制約のもとで研究開発法人も活動しているわけです。特に、研究開発法人につきましては、大学や企業が取り組みがたい研究開発を国家戦略のもとで、研究成果の最大化を目的として行っているわけでございます。

 しかしながら、独法通則法のもとではやはりどうしても、例えば給与等も国並みの枠の中でやらなければならない。そうなってくると、現在の国際社会の中で優秀な人材を確保する等の観点からいきますと、その点等もなかなか実現ができないことがあって、やはりこれから国家戦略として研究開発を進めていく上では、その枠内ではなかなか国際的に対抗できないわけであります。

 そういった点もあわせて、新しい制度のもとにこの研究開発法人をしっかり育てていく必要があるという観点で、今政府ももちろん検討しておりますが、与党内でも今現在検討中でありますので、そういったことを、政府の閣議決定のもとに、今回の法律の中で、その方向性でということを明記したところでございます。

柏倉委員 ありがとうございます。

 今、塩谷先生おっしゃられた、優秀な人材を国家公務員並みの給料で待遇してもやはりその枠の中におさまり切らないと。当然、優秀な人材ほどやはり世界を相手にポストをとりにいきますので、それはそのとおりであるなとは思います。

 ただ、現状、理研さんなんかの職員構成並びに給与なんかを少し見ますと、八割以上の方が任期制で年俸制という事実もあったり、一番高い方は二千数百万円の給料をもらっている。これはちょっと正直、世界のトップリサーチャーが二千数百万、安いかなという印象もありますが、こういった中で、これはいわゆる個別法の中で対応できるような一つの案件ではないのかという気もするんですが、その辺のお考えはいかがでしょうか。

塩谷議員 そういった意見も当然あるわけでございます。

 新しい研究開発法人につきましても、当然、効率化ということもベースに置いて、しかしながら、やはりこの数年間の状況を見ますと、国際社会での競争関係が相当厳しくなってきているわけでして、そういう点で、やはり現場からは、今の給与の点、あるいは調達の点、さまざまな問題点があるという声が上がっておりますので、そこら辺を解決しませんと、これから日本が世界で最もイノベーションに適した国ということを総理がおっしゃっておりますので、それを解決するためには、やはり新しい法人の枠組みをつくることが必要だと考えております。

柏倉委員 ありがとうございます。

 今、塩谷先生から調達のことが出ましたので調達のことについてお尋ねしたいんですけれども、現状、国と横並びの随意契約の限度額が設定されていて、百六十万ということなんです。研究開発の法人で百六十万円以上の機器は全部一般入札になるというところ、おっしゃるとおり、これじゃ研究はできないよという現場の声が上がってくるのは当然だと思います。一つの機械を買えば数百万、中には億近いものも当然あるわけで、では、かといって一社しか供給できないかというと、これは厳密にここだけと言えるほど少ないという機器もございません。

 その中で、確かに、この調達の部分を柔軟化するというのは私も賛成なんですけれども、それで、新たな根拠法を設けることでしかそれが対応できないのかどうかというのも恐らく議論が分かれるところなんじゃないかと思います。

 今度、もしもこの新たな根拠法をつくられた場合に、この随意契約の上限というのは、やはり国立大学、東大、京大並みに一千万、WTOの上限額並みに引き上げていくことを考えておられるのかどうか、お聞かせいただけますか。

塩谷議員 今先生おっしゃったように、やはり東大並みぐらいには当然考えていかなければならないわけでして、その細かい点については今後検討の余地がありますし、当然、透明性とかそういうものをどう確保していくかということもあわせて今後検討していく。

 いずれにしても、今までの独法通則法のもとで、全てがその範囲で行われるということはもう無理があるということが現場から多く声が出ていますので、新しい枠組みでという考え方で今検討しているところであります。

渡海議員 加えてちょっとお願いしたいのは、こういった機器の中には、実は研究の中で生まれた機器というものも随分ありまして、長い間信頼関係の中で共同して開発してきたといったような機器を調達する場合もあるわけですね。そういった場合には、金額、それはある程度透明性というものは保たなければいけませんけれども、まさに、そこでなければ調達できない、また、ノウハウがそういうところに蓄積をされているということを考えましたときに、やはりここの部分というのは弾力的に運用しなければ現実には支障が起こる、こういう事情もあることをぜひ御理解いただきたいというふうに思います。

柏倉委員 渡海先生のおっしゃるところもごもっともでございまして、我々としては、あくまでも行革の観点から考えた場合に、この上限を引き上げるというために新たな根拠法を設ける必要性があるのかどうかというのが若干解せないというところでございます。

 例えば、現状でも、緊急に必要なときはこれはいいよというような取り決めもあるやに聞いております。また、さらに、随意契約をやはり国立大学並みにぼんと全てこれは汎用品も含めてということになりますと、例えば日常に使う車だとかいろいろなもの、コンピューター関係、こういったものまで際限なくというような、あしき過去への回帰と言われかねないような、やはりそういったところも疑念を持たれる可能性もございます。

 我々としては、現状の通則法、要はそのレベルの運用の柔軟性という問題かと思いますが、ぜひ、随意契約のところ、取り決めを新たに設けて、通則法にたてつけていただいて、柔軟に運用して対応していただければなというふうな思いもございます。

 これに関しては言い切りにさせていただきたいと思います。

 そうしましたら、次なんですけれども、国や国民の安全に係る研究、ハイリスク研究に必要な資源配分に関する質問です。

 これを積極的に国がかかわってやっていくということに関しては、この内容いかんによっては、我々も当然賛成をさせていただくわけでございます。

 国や国民の安全に係る研究、ハイリスク研究、この具体的な内容について御説明いただけますでしょうか。

大塚(拓)議員 お答え申し上げます。

 国や国民の安全に係る研究と申しますのは、具体的には、安全で安心して暮らせる社会の形成、災害、貧困その他の人間の生存及び生活に対するさまざまな脅威の除去、国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障等に係る研究開発ということを想定いたしております。

 そしてまた、ハイリスク研究というのは、条文案にもございますように、成果をおさめることが困難であっても成果の実用化により極めて重要なイノベーションの創出をもたらす可能性のある研究開発全般を指すことといたしているところでございます。

柏倉委員 お疲れさまでした。ありがとうございます。

 済みません、もう一歩踏み込んで具体的に、例えば原発災害用の作業用ロボットですとか衛星だとか、そういった具体例を提示していただけるとありがたいんですが。

大塚(拓)議員 委員、大変お詳しい分野だと思うわけでございますけれども、基本的に、安全や安心といったところを切り口にした研究開発というのは、研究開発の文脈でいいますと、通常我が国でも多くの場合は、研究開発資金に対する、投入に対してどれぐらい回収できるかという経済原理の中で資源配分が決まっていくというところが多いわけでございますけれども、そうした中からは必ずしも革新的なイノベーションにつながる研究というものが生まれてこない、こういう問題意識がございます。

 歴史的に見ても、インターネットでございますとかGPS、あるいはさまざまなワクチンの開発とか、こういったところも、国や国民の安全という観点から、必ずしも経済原理によらない資源配分の中から生まれてきている。こうしたことが社会的に大きなインパクトをもたらすということに鑑みて、このような規定を設けているところでございます。

 具体的に、今この法が通った上で資源配分が実際には決まっていくものというふうに承知をしておりますけれども、例えば我が国でどのようなテーマがあり得るかというふうに考えますと、無人情報収集機といったようなものがございます。これは極めて長時間にわたって滞空時間がある、こういう無人情報収集機でございますけれども、これはなかなか経済原理の中からは研究が進まないと思います。領海の監視であったりとか、あるいは気象、災害等々の監視、こういう観点から初めてこうした分野にお金がついていくだろう。

 あるいは、スーパー味覚・嗅覚センサーといったようなものも今開発がされているわけでございます。センサーといっても、従来は光でありますとか音とか振動とかいうのが多かったわけですけれども、これを、バイオセンサーと申しますか、例えば、人間の舌とか鼻でにおいを感じるのと同じような形でのセンサーというものの開発がございます。これも、実際に資源を配分する切り口としては、例えばテロの防止でありますとか、そうした経済原理によらないところから資源が配分をされていく、そして、成果が上がった暁には社会的に非常に大きなインパクトがあるといったものだというふうに思います。

 ほかにも、小型衛星が群を組んで監視をしていくようなシステムでございますとか、量子暗号のシステムでございますとか、あるいはバイオテロの物質の検知機のようなもの、こうしたものが国や国民の安全に係る研究あるいはハイリスク研究ということで資源配分がなされ、実現をした暁にはそれがスピンオフという形で民生用にも活用されていく、それによって社会、経済に非常に大きなインパクトがある、こうしたものを想定しているところでございます。

柏倉委員 丁寧な御説明をありがとうございます。

 今大塚先生おっしゃった、経済原理によらない、いわゆるリスクをとって、とにかくクリエーティビティーを駆使しておもしろいものをつくる、そういったところがインターネットであるとかGPSだとか、そういった開発につながっているということなんです。これは、DARPAという、アメリカの国防総省国防高等研究計画局というところで全部開発されているものだということを聞きました。

 日本でも、日本版DARPA、ImPACTというものを今後おつくりになる、これからつくられるということで、これは当然私も必要なことだと思います。スピンオフ、スピンオン、先ほど先生おっしゃった、やはりそういった双方向性の技術革新といいますかイノベーションがなくては、本当の意味での科学の底上げというのはできないんだと思います。

 そこで、ちょっと気になりました記事を、きょう資料を配付しております二枚目の記事なんです。ことしの四月二十七日、もう与党さんの部会では随分話題になったというふうに伺っております。

 東大の研究には、基礎研究、応用研究を含めて内規がある。東京大学では、第二次世界大戦及びそれ以前の不幸な歴史に鑑み、一切の例外なく、軍事研究を禁止している。ロボット研究室が所属する情報理工学系研究科は、研究ガイドラインでそれを明文化しているということなんですね。東大広報課によると、軍事研究の禁止を明文化したのは情報理工学系研究科だけだが、他の学部でも共通の理解だということなんですね。

 確かに、あらゆる研究開発が平和利用されるというのは、これは理想だと思います。しかし、先ほど指摘させていただいたスピンオン、スピンオフの関係を築いていく、そして、科学技術を底上げしていくという意味で、この日本の最高学府である東京大学が、イデオロギーの範疇で科学というものをたがをはめて、ある一方のイデオロギーに寄与する研究は一切しない、これは極めて私はバランスを欠いている研究姿勢だなと思います。

 そこでお伺いしたいんですが、本当に東大では軍事研究はしてはいけないという内規があるんでしょうか、ないんでしょうか。

吉田政府参考人 東京大学におきまして、軍事研究を禁止する全学としての内規は存在はしておりませんけれども、一部の部局におきましては、そのような内容を持った内規がございます。

柏倉委員 先ほど、資料では、東大広報課では、ほかの学部でも共通の理解だというふうにコメントしております。今の答弁では、一部の部局ではそういう理解があるということですが、では、そうでないところと、やはり平和利用に限った研究しかしないというところがあるということでよろしいんですか。

吉田政府参考人 東京大学全学にかかわるものとしては、東京大学憲章というものがございます。そこの中では、「東京大学は、研究が人類の平和と福祉の発展に資するべきものであることを認識し、」というくだりがございますけれども、明確に軍事研究については行わないというような定めがあるわけではございません。

柏倉委員 憲章では明確に定めがあるわけはないわけでありまして、あくまでもこれは内規ですから、そういった内規が実在するのであれば、いやしくも日本の最高学府、これはもう学問の頂にある東京大学ですから、ぜひこれは詳細な調査をしていただいて、これは我々の税金が入っているところでもあります。学問の独立、自由というのは、私も研究者でしたからこれは認めるところでございます。しかし今は、これはもうスピンオフ、スピンオンのこういった科学の流れ、双方向性の研究体制はやはり避けては通れない。これはやはり国力に資する大問題でございますので、ぜひそこは明らかにしていただきたいと思います。

 そうしましたら、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 この法案に関しては、非常にユニークな切り口といいますか、ごもっともだというところもございます。ただ、ちょっと漠として捉えどころがない表現も多々ございまして、そこのところを二、三質問させていただきたいと思います。

 イノベーション創出に必要な能力を有する人材の育成を支援するための必要な措置ということなんですが、済みません、この「イノベーションの創出に必要な能力を有する人材」というのは具体的にどのような人を指しているのか、教えていただけますか。

渡海議員 一概に言いましても、そのときの社会情勢で随分変わってくるんだろうなというふうには考えているところでありますが、基本的には、やはり問題の解決というものを志向して、そして実際に行動して実現をしていく、この能力があるということで総括的にはくくれるのではないかなと考えております。

 もう少し具体的に申し上げますと、高度に専門的な能力を備えると同時に、ビジネスや社会問題の解決の視点に立つ問題解決、こういった、かかわるさまざまな要素も理解をする能力、これが必要だと考えております。

 私は、特に重要なのは、顕在化していない問題を発見してそして課題設定できる能力、このことが非常に求められているのではないかなというふうに思っているところでございます。

 これらの人材というのは、我が国のみならず、世界各国において既に積極的な取り組みが行われておりまして、我々がむしろ心配しなければいけないのは、我が国がおくれているんじゃないかな、そんなふうにも感じているところでございます。

 今後、我が国におきましても、あらゆる教育段階において人材育成を体系的に進めていくということで、二十六年度概算要求におきましても、そのための予算というものも要求されているように我々は承知をいたしております。

柏倉委員 具体的に、例えばエジソンみたいな人だとかスティーブ・ジョブズみたいな、ああいう人材を思い浮かべるのでありますが、そういった人の発掘に努めるということなんですけれども、きのう夜中、エジソンのウィキペディアを見ておりますと、非常にユニークな、天才かもしれないけれども、ある意味ちょっと、かなりわがままといいますか身勝手なところも多かった人なのかなというふうにも思います。

 なかなか、天才というものは、当然事をなして認められるわけですけれども、それを育てていくというところ、これは非常に難しいのかなと思います。日本独自の取り組みというものもあっていいのかなと思いますので、ぜひ御検討いただければと思います。

 最後に、研究評価、この目ききの専門職を養成するということなんですけれども、ヒアリングをしましたら、例えば山中先生でいえば岸本忠三先生がそれに当たると。引き上げた人。CRESTという物すごい大きなグラントをくれた。トータルで二億、三億というグラントをくれた。それが研究を後押ししたということなんですね。

 目ききの人材、こういう人をつくるんだということなんですが、その岸本先生の書いたものによりますと、最初にその山中先生の計画書を見たときに岸本先生は、ほんまにできるんやろうかと疑ったが、熱意に押され、千に三つでも当たれば成功と助成を決めたと書いております。

 確かに、サクセスストーリーの中ではやはりこういったタイムリーヒットといいますか、これは必要だと思うんです。千に三つでもというところ、これは凡人の考える千に三つじゃありませんので、あながち確率で語る話じゃないと思うんですが、やはり目ききをされる方というのは、その世界に極めて造詣の深いといいますか、第一人者で、業績も残していらっしゃる方だと思うんです。

 科学において目ききを専門にする人、これは一部の雑誌の編集者は確かにそういったところがございます。ただ、科学の本質を突いて、こういった大きなグラントを助成する立場にあるかというと、なかなかそういう人たちはいない。やはり研究の第一線で活躍している人たちが目ききをしているわけなんです。

 今回、リサーチアドミニストレーターという新たな潤滑油といいますか、研究の場のそういった、悪い言い方をすれば雑務をこなしてもらえる人たちをつくる。こういった人たちは、確かに、ポスドクという立場から行くとか研究助手という立場から行くとか、いろいろなやり方はあると思うんです。その現場レベル、ある程度のところをわかっていればできる仕事だと思います。しかし、この目ききというのは、特に科学に関しては、骨とう品の目ききと違いますので、自分がやはりそのものをつくれるまでに近い技術、経験、知識が必要だと思うんですね。

 そこでお聞きしますが、どういったバックグラウンドの人を目ききの達人として育てていくというかお願いをするのか。目ききとはどういうものなのか。教えていただければと思います。

渡海議員 大変難しい質問だと私は個人的には思っております。

 一言で言いますと、やはり、バックグラウンドとしてある程度の専門分野、複数の場合もあると思いますが、そういった経験も持っていただかなきゃいけないと思います。その上で、先ほど申し上げました、これはプロジェクトマネジャーにも必要なことでありますけれども、社会の中で今どういうニーズがあるか、また、人類の未来に向けてどういうことをやらなければいけないといったような、総合的な、社会的な判断ができるという能力も問われるわけであります。

 やはり、いろいろなキャリアパスの中で、そういった方々がいろいろな実務の研修なりをできるような機会を設けるといったようなことは、私は政策的に必要ではないかなというふうに思っているわけでありますが、あえて言うなら、自然科学と社会科学、この両方においてバランスのとれた人材というものが、恐らくそういうことがきっちりとやれる人材なのであろうと。

 先生が一番最初に言われました、エジソンが天才だったのは、恐らく多分目ききはできないと思うんですね。入っていくけれども、発想はすばらしいけれども、では、それをどうやってつくり上げていったらいいかというのはなかなか難しい。その辺のところをしっかりと、やはり社会全体を見渡して総合的に判断ができる、そういう能力が求められているというふうに考えているところであります。

 できるだけそういった人材を育てるような具体的な政策を進めるように、これから我々もより一層勉強していきたいというふうに思っております。

柏倉委員 渡海先生、どうもありがとうございました。

 独法のところ以外は、我々もおおむね賛成でございます。ただ、我々の党としてのやはり大原則の部分に照らして賛否は決めさせていただきたいと思います。

 きょうはどうもありがとうございました。

小渕委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 民主党の大西健介でございます。

 私ごとでありますけれども、私の子供のころの夢は、政治家になることではなくて科学者になることでありました。そういう意味では、国民に夢や希望を与えて豊かさをもたらすこの科学技術の発展のために研究開発力を強化していく、このことについてはできる限り協力をしていきたいというふうには思っております。

 ただ、しかし、この法案の中に労働契約法の特例という部分が含まれております。この部分については、我が党の中にも非常に慎重な根強い意見がございます。私は、きょうは民主党の厚生労働部門の雇用担当主査という立場でこの貴重な質疑時間をいただきましたので、この部分について、確認も含めた質問を何問かさせていただきたいというふうに思っております。

 我が党の中のこの部分に懸念を持っている人たちというのは、きょうのこの委員会での提出者の皆さんの御答弁に注目していますので、冒頭、ぜひ御丁寧に御答弁をお願いしたいということを申し上げさせていただきたいと思います。

 まず、皆様、フィラデルフィア宣言というのがあるのを御存じでしょうか。このフィラデルフィア宣言というのは、正式名称は国際労働機関の目的に関する宣言といいます。一九四四年、ILO総会で採択をされて、ILO憲章の一部をなしているということでございます。

 その中には、「労働は、商品ではない。」ということを初めとする四つの根本原則というのが再確認をされている。その根本原則の中には次のようなことが書いてあります。「労働者及び使用者の代表者が、政府の代表者と同等の地位において、一般の福祉を増進するために自由な討議及び民主的な決定にともに参加する継続的且つ協調的な国際的努力によって、遂行することを要する。」ということであります。

 これをもう少し具体的に言いますと、つまりは、雇用労働分野のルールの見直しというのは、公労使の三者構成の審議会によって調査審議を経て行う、これが国際標準だということをあらわしたものであります。実際に我が国においても、雇用労働法制の制度の改廃については、これまでも、労働政策審議会の場の調査審議を経てやってきたという経緯があります。

 こういうこれまでの経緯を踏まえると、本法案に盛り込まれている労働契約法の特例についても、本来は労政審にちゃんと諮っていただかなきゃいけない問題だ、それが私は妥当な手続だというふうに思っています。

 ただ一方で、この法案というのは議員立法の改正である、そういう形をとっているという事情があります。それから、対象も研究者ということでかなり絞り込んでいるということがあるので、そこは一部理解することはできるんですけれども、ただ、懸念されるのは、議員立法だったら労政審を飛ばしていいんだということが前例になってしまってはやはり困ると思うんです。

 そういう意味で、最初に御確認させていただきたいのは、今回の措置というのはあくまで例外であって、原則として雇用労働政策の決定とか法律の制定、改廃には労政審の議を経る、これまでの原則を何ら変えるものではないんだということについて、ぜひ確認をさせていただきたいと思います。

伊藤(渉)議員 大切な観点での御質問、ありがとうございます。

 この研究開発力強化法は平成二十年に議員立法により制定されたものでございまして、今般の改正案についても、議員立法による改正として、大学関係者、研究者などの意見もヒアリングしつつ議論を重ねた結果、労働契約法の特例規定を置くものとしております。

 特例規定の対象について見ますと、大学や研究開発法人は民間企業では必ずしも担いがたい基礎基盤研究等を担うものであること、大学は憲法上保障された学問の自由のもとで真理の探求を要請されており、研究開発法人は国家戦略に基づく基礎研究や国家基幹技術等の研究開発に取り組む役割を担っていること、大学や研究開発法人は相当の公費が投入されていることなど、民間企業とは異なる特性がございまして、労働契約法の特例規定は法律上明確に限定をされていると考えております。

 御指摘にありましたとおり、本来的には公労使三者で議論を経ることが妥当でございますけれども、このような法案の性格や特例規定の対象等から、労働分野の法案としては、例外的に労働政策審議会への事前の諮問、答申等の手続はとっていないものでございます。

 今後とも、一般に労働関係法令の制定、改廃に当たっては、労働政策審議会への議を経る原則に変更はないものと考えております。

大西(健)委員 今提出者から明確に、これは例外であって、これまでの原則を変更するものではないということで御答弁をいただきました。非常に安心をしましたけれども、提出者から今その御答弁をいただいたわけですけれども、政府に対しても、これまでの三者構成の労政審を通して労働、雇用に関する法律の制定、改廃はやるんだということは今回のこの議員立法があっても変更はないんだということについて、厚労省になると思いますけれども、厚労省の方から、副大臣の方からお答えいただきたいと思います。

佐藤副大臣 今、大西委員の方から御主張のあったとおりでございます、結論から申し上げますと。ただ、政府としてきちっとした確認の意味での答弁をということでございますので、繰り返しになるかもわかりませんが、御答弁をさせていただきたいと思います。

 今回の改正法案については、御指摘のとおり、労働契約法の特例規定が置かれているものであると認識しております。

 本来、労働分野の基本ルールについては、御主張の中でありましたように、一九四四年の国際労働機関の目的に関する宣言、いわゆるフィラデルフィア宣言における根本原則として、「労働者及び使用者の代表者が、政府の代表者と同等の地位において、一般の福祉を増進するために自由な討議及び民主的な決定にともに参加する継続的且つ協調的な国際的努力によって、遂行することを要する。」とされております。

 このILOの原則にのっとりまして、実際、我が国でも、労働分野の法律の制定、改廃に当たっては、労働の現場を熟知した労使が参加する審議会での議論を経て、現実に妥当するルールづくりが積み重ねられてきており、政府としては、今後ともこうした政策決定プロセスを尊重していきたい、そのように考えております。

 他方、今回の法案については、先ほど提案者からも述べられましたとおり、二つの特殊事情があると我々も認識しております。一つは、もともと議員立法である研究開発力強化法を議員立法で改正するということ、二つ目には、特例の主たる対象者は民間企業とは異なる特性を持つ研究開発分野に限定されていること、そういう二つの特殊事情から、労働政策審議会への諮問、答申等の手続はとられず、経過及び法案の概要の報告にとどめたものである、そのように認識しております。

 しかしながら、やはり原則としては、一般に労働関係の法律の制定、改廃に当たっては、労使の参画する労働政策審議会の諮問、答申手続を経た上で内閣提出法案として提出すべきであるとの認識に何ら変わりはないものである、そのように考えております。

大西(健)委員 佐藤副大臣からも、繰り返し明快に、御丁寧に御答弁をいただきました。確認をさせていただきました。

 次に、もう一つちょっとひっかかるのは、この法律案では、大学等及び研究開発法人の教員などのほかに、大学等と共同開発等を行う場合は、民間企業で有期雇用されている方についても、無期転換申込権が発生するまでの期間を五年ではなく十年にするというところが含まれております。

 この点、大学、研究開発法人の研究者はともかく、民間企業というところまで広げていくと、これは際限なく対象が拡大していくんじゃないかという懸念もあります。

 そこで、この懸念があるからだと思いますけれども、附則の第二条第二項においては、「国は、その雇用の在り方について、」「検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」旨が記載をされています。ただ、具体的に何を検討して、そしていつまでにやるのかみたいなことは書いていないんです。

 そこで、具体的に、何をどこで検討していつまでにこの附則に書いてある措置を行おうとしているのか。そのことについて、提案者から御説明いただきたいと思います。

伊藤(渉)議員 まず、研究者などは、複数の有期雇用契約を繰り返しながら、その過程で多様な教育研究経験を積み重ねていくことによりまして能力の向上を図り、テニュアポストなどの安定的な職についていく傾向にございます。今回の特例は、京都大学の山中教授や大学団体などからの要望等も踏まえまして、緊急的に措置をすることとしたところでございます。

 研究者などの雇用のあり方については、改正法の附則の第二条において、法律の施行状況等を勘案し、検討を加え、必要な措置を講ずることとしております。

 この当該附則を受けまして、民間企業における研究者も含めた研究者等の能力養成や多様なキャリアパスの整備等について、外部有識者の協力も得ながら、文部科学省を初め、内閣府や厚労省といった関係府省が連携をしまして、本法律の施行状況等も踏まえ、研究者の雇用の安定が図られるよう、研究開発等の基盤の強化など研究環境の早期の改善に資するよう速やかに検討を行うこととしていると承知をしております。

大西(健)委員 御丁寧な御答弁ではあるんですが、ただ、では具体的に何を検討するのか、いつまでにやるのかということは、今の御答弁では私はちょっと不足している部分もあるのではないかなと思うんです。

 それに関連して、では、ちょっと順番を入れかえますけれども、それであるならば、まさにこの三号、四号の民間企業の研究者等については、今言ったように対象者が著しく拡大するという懸念があるわけです。

 ですから、例えば、今お答えいただいた附則の第二条第二項に基づいて国がしかるべき検討をして措置をした後にこの民間企業の部分、有期雇用者の部分については施行してもいいんじゃないか。そっちの雇用の安定を図るという措置をしっかりやってからやればいいんじゃないかというふうに思いますけれども、この点はいかがでしょうか。

伊藤(渉)議員 委員の御指摘はごもっともでございまして、あくまで、まさに最終的には委員のおっしゃる方向に運んでいくために、我々立法者としても全力を傾けていきたい、こういうふうに考えております。

 あくまで緊急的な措置として今回考えているもので、今ございましたように、本法案によって対象者が拡大しないよう、要件を、共同研究開発等に専ら従事する者として厳格に限定をさせていただいているところでございます。

 なお、大学などの企業との共同研究により大学などが受け入れている企業の共同研究員は、無期雇用の者も含めて約三千人と聞いておりまして、このうち有期雇用の者については、さらに限定される数になると承知をしております。

大西(健)委員 まだ施行まで時間がありますので、そこでぜひ検討をスピードアップしてもらって、雇用の安定が図れるような措置をできるだけ早く講じていただきたいと思いますけれども、先ほど御答弁にあったように、施行状況を踏まえながらというのもありましたから、そういう部分も必要な部分もあるかと理解はいたします。

 それからもう一つ、今の部分において、ただ、ちょっと根本的に考えると、やはり民間企業に有期雇用されている研究開発等を行う者は、通常なら、五年を超えて契約が更新されればそこで無期転換権が発生をする。ところが、自分が従事した研究がたまたま大学等との共同研究開発になっていた場合には五年では発生しなくて、十年を超えなければ無期転換申込権は発生しない。

 例えば、同じ企業に有期雇用の研究者として採用された同期のAさんとBさんがいて、Aさんの方は五年たったら無期転換申込権が発生する、ところがBさんはたまたまそのときやっていた研究が共同開発研究だったから五年のところでは発生しないというのは、同じ人で権利の発生するしないというのが出てくるというのは、冷静に考えると、やはり何かちょっと変じゃないのかなと。

 つまり、専ら雇用する側の事情で無期転換権の発生が遠のいて雇用の安定が損なわれるというのは、やはり公平性の問題でも若干問題があるんじゃないかなと思いますが、この点、再度、確認の意味を込めて御答弁をお願いします。

伊藤(渉)議員 御質問ありがとうございます。

 先生の危惧をなさっている観点、極めて重要な観点であり、我々も、繰り返しになりますが、その改善に向けて努力は惜しまないものと思っております。

 共同研究などに専ら従事する者について、競争的な環境の中で能力の向上を図ることの重要性には十分配慮しつつ、安定的な雇用を図ること、これは、繰り返しになりますが、極めて重要でございます。

 一方で、プロジェクトベースの研究は有期プロジェクトであるために、そこで雇用される研究者は一定期間における雇用を前提としている。一方、プロジェクトが五年を超えるものもある中で、無期転換権発生までの期間が五年となることで、途中で離職につながってしまうというケースもあるというふうに承知をしております。また、研究者にとっても、プロジェクトへ最後まで参画できないことによって業績を上げにくくなることは、テニュアポストの獲得の上でマイナスになるというふうにも考えられているところがございます。

 企業の一般的な雇用形態と異なる研究者の特殊性に鑑みれば、今回の特例措置は、プロジェクトへの長期的な参加によりまとまった業績を上げやすくなるという効果も期待されるというふうに考えております。今回の特例は、研究者などの雇用の安定にも資する場合があるというふうに考えております。

 また、実態としても、大学研究者などと同じ研究を行っている共同研究者については、実質的に大学などのプロジェクト研究を行っているものと同視できますので、そうした者について無期転換権発生までの期間が大学研究者等と異なるのは不合理という考え方もございまして、特例の対象とさせていただいております。労働契約法の特例を設けない場合には、その研究者にとってマイナスの場合もあります。

 その上で、今回の法案では、対象が広がらないように、共同研究開発等に専ら従事するという者についてのみ限定をして特例を設けさせていただいたものでございます。

大西(健)委員 ぜひ対象が広がらないようにお願いをしたいというふうに思います。

 そもそも、労働契約法が無期転換原則というのを定めている趣旨というのは、有期契約というのは本来は臨時的な性格であって、長期的に労働者を使用する場合には、これは原則は無期契約してくださいよ、そういう趣旨だというふうに思うんですね。研究者といっても、私はそこの根本的なところは同じだと思うんです。

 ですから、本来は、先ほど御答弁の中にも、複数の有期雇用契約を繰り返しながらキャリアを積んでいくという話があったんですが、そういう部分もあると思いますけれども、ただ、私は、本来は短期契約の更新方式というのがやはり問題があるんじゃないか。例えば、無期契約の中の人事管理で対応できないのか。

 今、厚労部門でも盛んに、例えばジョブ型正社員とか限定正社員という話がありますけれども、もうこれは一部企業でも別にやっているんですね。ですから、こういうものを使って一応無期でやりながら例えばジョブ型とか限定とかということを、これは一般企業に広く広げるんじゃなくて、こういう研究分野でこそやればいいんじゃないかというふうに私は思っています。

 先ほど言われたように、研究というのは一般的に五年で終わらないことも多いので、ですから、研究者が途中で事業を離れると研究にも悪影響が出る、だから十年にするんだ、そのことはよく理解できます。ただ、今回のこの五年を十年にということでそのことは解決されるかもしれませんけれども、逆に言うと十年引きずられて、十年目で雇いどめに遭っちゃったら、今度、転身したりとか次のキャリアというのが逆に難しくなるということも考えられるわけですから、短期の契約を更新、更新という、そのこと自体を改めていかなければ、研究者の使い捨てという本質的な問題解決にはつながらないんじゃないかというふうに私は思うんですが、その部分について提出者の御見解をいただきたいと思います。

伊藤(渉)議員 まず、再三先生に御指摘いただいていることについては我々も全く同感でございます。

 その上で、繰り返しになりますけれども、研究者などは、複数の有期雇用契約を繰り返しながら、その過程で多様な教育研究経験を積み重ねていくことによって能力の向上を図り、テニュアポストなどの安定的な職についていく傾向もございます。今回の特例は、京都大学の山中教授や大学団体などからの要望等を踏まえまして、緊急的に措置をすることとしたところでございます。

 これにより、研究者などが有期雇用期間中に研究実績に関する評価を適切に受け、将来的に無期雇用への転換を目指す上で、プロジェクトへの長期的な参画によりまとまった業績を上げやすくなる効果が期待されまして、雇用の安定化にも資するものと考えております。

 なお、研究者等の雇用のあり方については、改正法の附則の第二条において、法律の施行状況等を勘案し、検討を加え、必要な措置を講ずるものとしており、政府において今後適切に対応されるものと認識をしておりますし、私どもも、提案者として先生の趣旨に沿った取り組みをこれからもしっかり行っていきたい、かように思っております。

大西(健)委員 繰り返して申し上げます。

 私は、この五年、十年というのは、今御答弁があったように緊急的な措置だと思うんです。ですから、本来的には、研究者が安定して研究に専念できるような状況をどうつくっていくのかということが重要だと思いますので、この後はちょっと政府にそのことをお聞きしたいと思うんです。

 まず、研究者の無期転換が進まない理由というのはいろいろありますけれども、その一つというのは、研究プロジェクトそのものが有期になっていて、そこに予算上の制約があるということだというふうに思うんです。

 この部分に関連しては、民主党政権下で、予算の単年度主義にこだわる財務省からは財政規律の面から問題があるという厳しい反対意見がありましたけれども、その反対を押し切って、例えば科研費の基金化、複数年度予算化というのを進めてきました。これは、研究者の皆さんからも、研究費を複数年度にまたがって使用できて使い勝手が向上したということで、好意的に受けとめられているというふうに私は思っております。

 研究というのは、そもそも計画どおりに進まない。逆に、計画どおりにいかなくて、途中で意外な発見がされたけれども、その意外な発見の方が重要だったりとかするわけですね。ですから、そういう結果が予想できない研究というのを、そもそも単年度予算という制度の枠内に押し込めようとすること自体に無理があるというふうに思っております。

 また、今まで言われてきたのは、年度をまたいで例えば物品購入ができないとか出張ができないということで、年度末になると研究がストップしてしまう。あるいは逆に、予算の使い切り、これは公共事業と同じようなことですけれども、予算を使い切らなきゃいけないということで、年末になると物品購入をやるとかという無駄遣いにもつながっているんじゃないかという指摘がありました。

 そういう意味で、この予算の複数年度化とか基金化というのは、私は、どんどん進めていけば、そこで雇われるスタッフの雇用の安定にもつながっていくというふうに思いますけれども、政府に科研費の基金化の現状を簡潔に御説明いただくとともに、私は今後もこういうことは拡大していくべきだというふうに思いますが、そのことについての御見解をいただきたいと思います。

冨岡大臣政務官 大西委員の質問にお答えいたします。

 委員御指摘のように、単年度予算案の弊害というのは久しく言われてきたところであります。これが預け金あるいはプール金の温床になったという面も否定できないものがあるかと思います。

 そこで、委員御指摘のように、平成二十三年度には、独立行政法人日本学術振興会法を改正しました。研究費の効果的、効率的な使用のため、科研費の基金化を行ったわけでございます。その際、衆参両院において、「基金化による効果を検証し、必要に応じて、基金対象の拡大を含めた制度の改善を図ること。」との附帯決議がされたわけでございます。これは委員も御参加になられたかと思います。

 そして、平成二十四年度にその対象を拡大しました。その結果、大体科研費が仮に二千億円としますと、その約九割がこの制度、そして金額の約四割が利用するに至りました。

 また、さらに平成二十五年度には、補助金の使い勝手をさらに向上させるために、科研費の前倒し使用や、一定条件を満たす場合に次年度使用ができるよう、調整金制度を導入したわけでございます。

 したがいまして、基金対象の拡大を含めた制度のあり方について、委員御指摘のように、これからも前向きにこの制度の活用を図っていきたいと考えております。

大西(健)委員 ぜひ、これからもそれを前に進めていただきたいというふうに思います。

 最後の質問にしたいと思いますけれども、きょう、この議論というのは、国として研究開発人材の育成をどう考えるかという本質的な問題に私は深くかかわっている問題ではないかなというふうに思っております。

 この点に関しては、私、議員になる前からポスドク問題というのに関心を持っていまして、というのも、アメリカで外交官として勤務をしたときに、たまたま、アメリカで研究生活を送っている同年の若手研究者二人と友達になって、彼らとは今も親交は続いていますけれども、彼らから若手研究者の置かれた実情というのをいろいろ聞く機会がありました。

 昔は、末は博士か大臣かと言われましたけれども、ポスドクというのはポストドクトラルフェローのことですけれども、博士号取得後に特定の企業や大学等で勤務をするのではなくて、任期つきの契約を結んで研究を続ける研究者のことであります。ポスドクには大体二つのタイプがある。先ほどお話しあった日本学術振興会だとか理化学研究所の特別研究員という形をとる場合と、あるいは、プロジェクトに参加をしてプロジェクト型の雇用を得るという形、その二つがあるというふうに聞いています。

 ただ、学振の方も年齢制限が三十四歳未満になっている。それから、企業なんかも、年齢差別してはいけないことになっていますけれども、中途採用も大体三十五歳ぐらいが一つの壁になっている。そうすると、やはりある年齢になるともう行くところがなくなってしまうんですね。

 パーマネントのアカデミックのポストというのは今はどこも百倍、二百倍というすごい競争率でなかなか得られないという中で、今本当にこのポスドクの高齢化というのが進んできていて、本当に博士号を持っている、言っちゃ悪いですけれども、大量の高学歴ワーキングプアが生まれているということなんです。では、彼らはやりたい研究の道を選んだんだからそれは自己責任でしょうということで済むのかというと、私はそうじゃなくて、そこには政府の責任もあるというふうに思っています。

 九〇年代初頭に文科省が、教育研究の高度化を目指して大学院重点化計画を進めた。それで、大学院の学生定員が大幅に増加した。一九九六年の第一期の科学技術基本計画においてポストドクター等一万人支援計画というのが策定されて、博士号取得者に武者修行の場を与えることで競争原理を持ち込んで科学技術の向上につなげようという狙いで、ポスドクを大量の博士の受け皿にしたという政策を進めたということであります。

 実際には今、広くこのポスドクというのは、いろいろな研究の分野で実際にポスドクがいなきゃ研究が成り立たない、そういう状況にはなっているんですけれども、一方で、国立大学の法人化も進んで、多くのポストが期限つきになっている。そういう中でますます、なかなか安定した職が得られない。研究者の皆さんは、任期途中になったら次のポストの応募書類を書いたりとか、そのことで頭がいっぱいで研究にも専念できないというようなことを聞いています。

 この状態をこのまま放置していくと、優秀な人材が研究者になりたいなと思っても将来全くその保証がない、場合によっては路頭に迷うかもしれないということになると、優秀な人材が研究職を目指さないということにもつながってしまうのではないかと思いますので、私は、政府としてこのポスドク問題をどう解決していくつもりなのかについて、この機会にお聞きをしたいと思います。

土屋政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘の問題意識は、私ども同様の問題意識を持っております。

 ポスドクは、研究活動の実質的担い手ということで非常に重要な役割を果たしていただいてはおりますが、現在その数が一万五千人ということで、これらの方々が、大学だけではなくて企業あるいは地域社会等において、多様なところで活躍するということがやはり目指すべきことであるというふうに認識しております。

 したがいまして、文部科学省では、科学技術基本計画等も踏まえまして、ポスドクのキャリア開発支援、あるいは、産業界も含めました多様なキャリアパスの整備を図るといったような施策を展開しております。

 また、高度な専門性をお持ちなので、そういう専門性に加えて俯瞰力あるいは独創力を備えて、産学官にわたり活躍するグローバルリーダーを養成するリーディング大学院の構築を支援するなど、大学院教育の改革にも取り組んでおるところでございます。

 文部科学省といたしまして、今後とも、ポスドクを含めました若手研究者、博士課程学生の活躍促進に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

大西(健)委員 時間になりましたので終わりたいと思いますが、私は、今回のこの措置というのは、五年、十年というのはあくまで緊急的な話であって、今の本質的な問題、本当に若手研究者をどう育てていくのか。あるいは、高年齢になって行くところがなくなってしまうという、研究ばかと言うと言葉は悪いですけれども、社会に適応できないみたいなことになってしまっては困るわけですから、どうやってそういう人材を、一人のポスドクを育てるのに億のお金が、公費が使われている、そういう試算もありますので、そういう皆さんをどううまく国の資産として活用していくのかということも、ぜひこの観点もお忘れなきようにお願いをしたいと思います。

 本日はありがとうございました。

小渕委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 まず冒頭、改正労働契約法の五年という無期転換期限を十年に延長するなどという、労働法制のルールに風穴をあけるこの改悪法案を一昨日突如として国会に提出し、けさの理事会で私の反対を押し切って趣旨説明、質疑そして採決まで決めるなどという極めて拙速で乱暴な委員会運営に対して、強く抗議をしておきたいと思います。

 この改正案は労働契約法の特例を設けておりますけれども、そもそもこの法律は、大学研究開発法人を対象に研究開発力強化を進めるものであって、研究者、技術者個人について規定はしておりません。

 研究開発システムの強化というこの目的に対して労働契約法の特例がなぜ必要なのか、これを発議者にお答えいただきたいと思います。

大塚(拓)議員 宮本先生には、大変お世話になっております。

 今回のこの研究開発力強化法の改正について宮本先生にも以前から御説明をさせていただいていたところでございますけれども、議員立法の取り扱いが内閣提出法案の後になるという国会の慣例もございまして、いろいろと御迷惑をおかけしておりますことをおわびを申し上げたい、このように思うところでございます。

 お問い合わせの件にお答えを申し上げます。

 今回の法改正、議員立法による研究開発力強化法の改正ということでございますけれども、もともと、平成二十年にこの議員立法ができたわけでございますが、三年で見直しをするという条項があったわけでございます。既に三年が経過しておるわけでございますが、その間の政治情勢等々がございまして、見直しがなされないままことしに至った、こういう経緯がございます。

 この中で、平成二十年から今日までの間に、さまざまな社会情勢の変化がございました。研究開発を取り巻く状況もいろいろと変化をしてきた。こういうことも踏まえまして、今回の法改正においては、現状で我が国の研究開発力というものをしっかりと強化をしていくために必要と思われる措置を盛り込んだところでございます。

 そのうちの一つが、委員よく御存じのとおり、昨年、労働契約法の改正ということがございました。その労働契約法の改正によりまして、有期雇用の上限が五年ということになりまして、五年たつと、無期雇用に転換をするか、あるいは、一般的によく言われる言葉で言いますと、雇いどめというような状況に陥ってしまう、こういう大きな研究開発をめぐる環境の変化があったところでございます。

 こうしたことを受けまして、さまざまな方面から、私ども国会の方、自民党の方にも、与党の方にも、政府の方にも御要望も多かったところでございます。

 まず、研究開発においてなぜ特例を設ける必要があるのかというお問い合わせでございますけれども、基礎研究でありますとか短期的に成果が出にくい研究も含めた研究開発を担う研究開発法人でありますとか大学といった現場におきましては、プロジェクトベースの研究は有期プロジェクトということが標準的でございますけれども、五年を超えるというものも多く存在をしているという実態がございます。そうした中で、研究者などが業績を上げて能力の向上を図っていくということが五年では困難な場合があるということは、委員も御承知のとおりと思います。

 先ほど、大西委員からの御質問から提出者の答弁もございましたけれども、研究者は、複数の有期雇用契約というものを繰り返しながらキャリアを積んでいく、多様な教育研究経験を積み重ねていく、そういう中でテニュアというポストを目指していく、こういう一般的な傾向があるわけでございます。

 こうした中で、今五年で無期転換ということになりますと、プロジェクト自体が五年よりも長いという中で、有期的なプロジェクトでございますのでその先無期転換ということがやはりどうしても困難だという中で、いわゆる五年で雇いどめということにならざるを得ない、このような状況がございまして、プロジェクト自体の蓄積した知見も散逸をする、そして、そこに参画をしている研究者におきましても、その中で、このプロジェクトで業績をしっかり上げて、それをもとに次のテニュアを取っていこうという思いで、例えばiPSプロジェクトに参加をしている研究者の方がプロジェクトに最後まで参画ができない、このような状況が生まれるということを、これは緊急避難的なところもございまして、避けなければならない。

 ノーベル賞受賞者の山中伸弥教授からも、衆参の奉祝行事を初め、強い要請がございまして、国公私立大学の団体からも強い要望がある。そしてまた、iPS研究所の現場ででも、私も研究者、技術者等から……(宮本委員「端的に、簡潔でいいんですよ」と呼ぶ)はい、失礼いたしました。さまざまな研究者からも御意見を聴取する中で、このような特例を設けるということになったところでございます。

宮本委員 限られた時間でやっているんですから、端的に答弁してくださいね。

 国大協を初め大学経営者などから要望があった、そういう答弁もありました。では、対象とされる有期雇用の研究者、技術者の意見はお聞きになりましたか。

大塚(拓)議員 二十名近くの皆様からヒアリングをさせていただきました。実際にプロジェクトの現場で研究者として働いていらっしゃる方、そして技術者として働いていらっしゃる方、有期雇用の皆様でございます。こうした方々にもヒアリングをさせていただきましたけれども、やはり今のプロジェクトベースで進んでいる研究の現場の実情を踏まえて、十年程度に延ばしていただきたい、こういう要請も受けたところでございます。

宮本委員 私は理事会でも、このような法案を審議するならば、まず何よりも、この法律によって影響を受ける非常勤や有期雇用の研究者、技術者を参考人にお招きをして御意見を聞くべきだと主張いたしました。当事者の意見をしっかりこの審議に反映させるのは当然のことだというふうに思います。

 そもそも、労働契約法の五年の期限の延長は、国家戦略特区の議論で出されてきたものであります。しかし、厚生労働省が雇用ルールに地域差はつけられないと反発し、引き続き労働政策審議会で議論することになっていたはずであります。

 十一月十八日の労働政策審議会労働条件分科会では、この法案について報告があったと聞いております。そこでは、労働者側から、労政審の議論を踏まえることなく一部の労働者を適用除外するものであり、危惧しているという批判が出され、労使のいずれからも、政労使の三者構成を原則にした議論を踏まえないものだとの指摘があったと聞いておりますけれども、厚生労働省、事実ですね。

大西政府参考人 十一月十八日の労働政策審議会労働条件分科会の状況でございますが、この法案の検討結果及び概要につきまして事務局から報告を行ったところでございます。

 委員御指摘のとおり、労働側からは、労働政策審議会での検討を経ることなく一部の労働者が基本ルールの適用除外となるということを危惧している旨の意見がございました。

 また、労使双方から、労働政策の決定に当たっては、労働の現場を熟知している労使が関与すべきという三者構成主義を最大限尊重することが重要という意見が出されました。

 こうした意見を踏まえまして、分科会長より、今回の特例は、大学等に対象を限った議員立法による見直しと理解される、一般に労働関係の法律を見直すに当たっては、今後とも、労働政策審議会での審議を経た上で対応することが基本である、そういうような発言がございました。

宮本委員 労政審の議論を踏まえない法案提出に懸念の声が上がるのは当然のことだと思うんです。

 そこで、発議者にお伺いいたします。対象となる研究者はどの範囲なのか、大学非常勤講師も含まれるのか、お答えいただけますか。端的に。

大塚(拓)議員 はい、大学非常勤講師等も含まれるものと解釈しております。

宮本委員 この法案は、有期労働者から見れば、五年で得られる無期転換権が十年に先延ばしになるというものであります。雇いどめを防止する措置も盛り込まれてはおりません。十年働いたとしても、正規雇用につけず、結局十年後に使い捨てになる、つまり使い捨てを十年先送りする、こういう中身になってしまうのではないですか。

 発議者いかがですか、首を横に振っておられますが。

大塚(拓)議員 使い捨てという言葉は、私、現場で頑張っていらっしゃる研究者の皆様に対しても余り適切ではないのではないか、このように思うわけでございますけれども、先ほども申し上げましたように、研究者自身も、さまざまな経験を積み重ねていく中で研究者として大きく育って、そしてテニュアを取っていく、こういう目的を持って一生懸命頑張っていらっしゃる方が多いわけでございます。

 そうした方々にとっては、このプロジェクトで成果を上げようというプロジェクトに最後まで参画をしていくということは、キャリアパスにとってプラスの側面も大きいというふうに私は考えております。

宮本委員 労働契約法改正の立法趣旨、有期契約労働者の雇用の安定を図るのが目的だと、これは厚生労働大臣が答弁で明言されていることであります。雇いどめを先送りする、こんなことは誰も望んでいないわけです。今回の法案は、雇いどめの危険をなくすどころか、若手研究者に、十年後まで雇いどめの危険と背中合わせの不安定雇用を強いるものになっていると言わなければならないと思います。

 ことし二月二十一日の参議院予算委員会で文部科学大臣は、我が党の田村智子参議院議員の質問に対して、「教育研究上の必要があり、能力を有する人が一律に契約を終了させられることにならないよう、適切な取扱いを促してまいりたい」と答弁されました。これは大臣、間違いないですね。

下村国務大臣 間違いありません。

宮本委員 優秀な研究者を育てるにしても、十年間も不安定雇用が続けば誰もなり手がいなくなる、こういう危険があると私は思うんですよ。

 本法案によって、常用雇用を有期雇用に代替する、いわゆる常用代替が加速する、あるいはそれが横行する危険がないと発議者は言い切れますか。

大塚(拓)議員 これはそもそも、通常の民間企業の雇用とは違う、大学や研究開発の現場という特殊な性格を持った現場に限定をした話でございます。こうした中で、プロジェクト自体が有期でなされているという中でこれを無期雇用に転換していくということはそもそも困難だということから、五年の無期転換権獲得に伴って雇いどめが発生するという懸念が今広がっているというのが実情でございます。

 これに対する特例として設けたものでございますので、御質問、御懸念は、私は当たらないものというふうに考えております。

宮本委員 そんなおめでたい状況じゃないんです。現に早稲田大学や大阪大学などでは、労働契約法改正を受けて五年雇いどめが問題となり、訴訟まで提起をされております。五年を十年に延ばしたところで、十年後の雇いどめが起こるだけなのは明確だと私は思うんです。

 もしもそうじゃないと、労働契約法の先ほどの立法趣旨、つまり、有期雇用労働者の雇用の安定を図るのが目的だ、無期転換するんだという趣旨で運用すると言うんだったら、五年雇いどめなんて起こらないですよ。十年後に起こらないなら五年だって起こらないはずなんですよ。現に起こっているから、十年後にしたって起こるじゃないかと私は言っているんですよ。私は、この法案はここに本当に大きな問題が残されていると言わざるを得ないと思うんです。

 それで、中には、五年というこの有期雇用の期限が現状で労働契約法で定められたからといって、雇いどめをせずに、立法趣旨を尊重して五年で無期転換を進めている大学も存在いたします。それはあります。これこそ、学術の中心であり、真理の探求を目的とする大学として当たり前の法に接する態度だと私は思うんですけれども、これは改正労働契約法の立法趣旨に沿ってできるだけ無期転換を進めていくべきだ、こういうことがやはり本来だと思うんです。

 先ほどから山中先生の名前も発議者から出されております。iPS研究所の山中先生は、NHKの番組「クローズアップ現代」の昨年十月十日の放送で、iPS研究所の九割は有期雇用だ、彼らは十年たつと四十歳、そこで終わりとなれば行く場所がない、正社員化を国にお願いしたい、こうまず述べられた上で、本来は正社員化が望ましいんだが、しかし、五年で雇いどめという事態が起こっているからということでそういう要望も出されたんだと思うんですよ。

 発議者も、山中先生がおっしゃるとおり、本来はやはり正社員化が望ましいと、これは同意されますね。

大塚(拓)議員 本来、研究者も、もちろん研究という特性上、競争というものが一定の意味を持つということはございますけれども、しかし、その中で、安定して、生活に心配なく、不安のない状況で研究に邁進をできるということが望ましいものと私も考えておるところでございます。

 ただ、一方で、現状のさまざまな状況を見たときに、この緊急避難的な特例措置を設けないことによって実際に職を失う方が出てこられる。それによって、本来、その方々が最後までプロジェクトを完結すれば次の無期雇用につながるかもしれなかったところが、これも一つ危険にさらされている、こういう状況も踏まえまして、あくまでも緊急避難的ということを先ほどから申し上げておりますけれども、今回このような措置が必要というふうに考えているところでございます。

宮本委員 ですから、既に五年で無期転換を進めているそういう大学が、例えばこの改正によって、十年でいいんだ、やはり十年間は無期転換するのをやめようと、こんなことになったのでは大きな後退ですよね。

 本法案に規定する有期雇用十年延長というものは、あくまで特例であって、一律に大学研究機関の有期労働契約を今後は十年にせよとそういうふうに言っているものではないと私は理解しますが、よろしいですね。

大塚(拓)議員 あくまでも、研究開発、大学の現場の実態に合わせて、十年であればさまざまな研究開発プロジェクトもその期間の中におさまるということで必要最小限の期限を定めたものでございますけれども、これは、大学が、十年を待たず、あるいは五年を待たずに、有能な研究員を無期に転換していくことを妨げるものではもちろんないということは強調しておきたいというふうに思います。

宮本委員 そもそも、大学教員など高等教育教員の地位に関しては、国際的には、一九九七年、第二十五回ユネスコ総会が採択した高等教育教員の地位に関する勧告、この勧告に定められております。

 文部科学省に確認いたしますが、この勧告の第四十六項「雇用の保障」の冒頭にはどのように書かれてありますか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘の高等教育教員の地位に関する勧告につきましては、一九九七年、平成九年の第二十五回ユネスコ総会において採択されたもので、ユネスコで採択される勧告につきましては、条約と異なって、各国において受諾等の手続はなく、法的拘束力はないという受けとめでございますけれども、四十六条の冒頭には、「雇用の保障(終身在職権又は、適当な場合には、これと同等の職業上の制度を含む。)」という括弧書きがありまして、「雇用の保障は、高等教育及び高等教育教員の利益に欠くことのできないものであり、確保されるべきである。」というふうに規定されております。

宮本委員 大学教員、研究者の終身的な雇用の確保というのは、国際的にも確立された大原則なんです。しかし、我が国の実態はどうなっているか。先ほど、iPS研究所の山中伸弥教授によると、九割が有期雇用だ、こういう御発言もありました。

 以前、私は国立環境研究所の視察に行きましたけれども、メダカやミジンコに対する環境ホルモンの影響を研究しておられました。そこで研究されている方に聞きましたら、十二人でやっている仕事のうち、正規職員の研究員はたった二人で、あとは外部から来ているパート等々だということでありました。これが国立研究所の現場の実態なんですね。

 そこで、大学院博士課程修了者の進路の実態は一体どうなっているか。本来、この法律は、人文科学のみに係るものを除く科学技術を対象にするとこれは定義されているわけでありますけれども、何とこの労働契約法の特例というものだけは、その除外さえ外して、人文科学も含めて特例を設けているわけです。

 そこで、これも文部科学省に確認をいたします。人文科学系の博士課程修了者の進路動向について、文科省科学技術政策研究所の調査ではどのようになっておりますか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘いただきました、科学技術政策研究所が、博士課程を有する四百十四大学の平成十四年から十八年の五年間に博士課程を修了した者の進路動向等を調査したものがございます。

 その報告書におきましては、博士課程修了者の就職状況では、大学の比率が全体では一〇・三%でございますが、人文系では二九・四%となっております。また、非常勤職員として就職している者は、全体が一二・七%でございますが、人文系の場合には二四・二%、そういうデータとなってございます。

宮本委員 その報告書では、大学教員になった者のうち、これらの分野を専攻しているものが多い、そして、同じ大学教員であっても、理系分野と比べて非常勤の比率が高い、雇用形態が不安定であることは明らかであると調査報告書には出ております。

 私は、ことしの六月二十一日の科学技術・イノベーション特別委員会の参考人質疑でこういう話を紹介したんです。

 大学の先生が、学生が博士課程の大学院に進学したいと言うと、家はお金持ちか、あるいは資産家の子供とでも結婚する当てはあるかとこう聞いて、そのどちらもなければ諦めさせるという笑い話があるぐらい、学問に打ち込もうと思えば非常につらく厳しい時代を覚悟しなきゃならない、これでは日本の学術の未来はないのではないかと質問したところ、参考人で来ておられた白石隆政策研究大学院大学学長は、

 これは笑い話じゃございません。私は常に学生にはこういうアドバイスをして、よっぽど、見ておりましてこの人はもう間違いなく伸びるという、自分に自信がなければやめた方がいいというふうにアドバイスします。

  それを考える上で非常に重要なことは、博士課程以上の学生には十分なフェローシップはやはり提供すべきだ。博士課程の学生は学生なんだからというふうに考えている限り、私はやはり、本当に行ってほしいような人というのは博士課程に行かないのではないかというふうに思います。

こう述べられたわけです。

 博士課程に進学することさえちゅうちょせざるを得ないこうした現状を放置しておいて、さらに修了後の就職先も、十年たっても非正規、さらにその先には雇いどめの危険さえ排除されない。こんなことでは、今後、我が国の科学技術を担う人は本当に育つのか、こうした危惧を抱くのは当然だと思うんですけれども、これは、発議者と文部科学大臣と両方にお答えいただきたいと思います。

大塚(拓)議員 おっしゃるような懸念、私も共有をするところでございます。

 ドクターの学生というと、我が国では学生、こういう扱いになるわけでございますけれども、欧米諸外国で見れば、準職業というような扱いになっているケースもございます。経済的な心配なく業績を上げていける、こういう立場で扱われている諸外国に比べますと我が国の置かれている状況というものは、私は、まだまだ改善しなければならない、そういう余地が大きいというふうに感じているところでございます。

下村国務大臣 宮本委員のおっしゃるとおりだというふうに思います。

 特に今後、科学技術イノベーションは日本の経済再生の原動力でありまして、これを担う多様な科学技術人材の育成は、我が国の発展の基礎であります。特に、我が国の将来を担う博士課程の学生や博士課程を修了した研究者等に対する支援を強化し育成を図ることは、その人のことならず、日本社会にとっても大変重要なことだというふうに思います。

 文科省においては、従来より博士課程の学生や研究者等に対する経済的支援を行ってきてはいますが、平成二十六年度概算要求においてさらに、意欲と能力のある学生が経済的理由により博士課程での学びを断念することがないよう、奨学金事業や授業料減免等の充実を図るほか、我が国の学術研究の将来を担う優秀な博士課程の学生や研究者に対して、研究奨励金を支給するといった取り組みを講じることとしております。

 また、博士課程を修了した若手研究者等に対しては、キャリア開発支援の強化や、産業界も含めた多様なキャリアパスの整備を図る施策を講じておりまして、平成二十六年度概算要求において、これらの取り組みを引き続きさらに推進していくこととしております。

 今後とも、博士課程の学生や若手研究者の経済的な支援やキャリアパス支援等を行い、その活躍促進に努めてまいります。

宮本委員 緊急避難と発議者はおっしゃるわけですけれども、そもそも、我が国の高等教育予算は少な過ぎるんです。大臣は、さきの高校無償化廃止法案の審議でも、我が国の教育への公財政支出がOECD諸国の平均に対して大きく立ちおくれていると、これは何度も答弁をしておられました。また、その答弁では、高校もさることながら、高等教育予算はさらに大きく立ちおくれ、OECD諸国平均の半分以下だ、こういう答弁もございました。

 大学が無期転換に臆病になる背景には、政府による、人件費を含む大学の基盤的経費の削減があります。国立大学の運営費交付金は、法人化後、一千七百億円も削減されてまいりました。大学関係者の思いは、山中先生のおっしゃるように、正社員化が一番の希望なんです。しかし、運営費交付金が削られる、私学助成もふえないもとで、何とか有期雇用や非常勤でやりくりしてきたというのが実態なんです。

 それが、労働契約法の改正によって五年で無期転換ということが求められ、五年で雇いどめという事態すら生まれてきた。だから、せめて適用除外を五年を十年にという声になって出ているわけですよ。

 しかし、大学関係者の願いに真に応える道は、こんな雇いどめの先送りをすることではありません。五年を無期転換し、正社員化できるだけの基盤的経費の抜本的拡充が求められていると思うんです。

 大臣も、当委員会の質疑で何度も、GDP比の二%、十兆円の教育予算の増額に言及をしておられたじゃないですか。この間削られた一千七百億円の運営費交付金をもとに戻すだけで、二万人以上の有期雇用研究者を正規雇用に転換することは可能になります。

 文科大臣、本来はこういうことこそ今求められていると私は思いますが、大臣の御見解をお伺いいたします。

下村国務大臣 このことに関しては、宮本委員と全く同感でございます。

 我が国の高等教育の公財政支出、OECD加盟平均一・一%、我が国はその中で最低水準の〇・五%でありますから、これを拡大をしていくということについては財務省に対して強く要請をしているところでございますが、今後とも、科学技術そして教育費予算の拡大に向けて、先頭に立って努力をしてまいりたいと思います。

宮本委員 今行うべきは、労働契約法の特例を設けることではありません。運営費交付金の増額、私学助成の拡充など基盤的経費をしっかり確保することによって、改正労働契約法の趣旨にのっとった対応を大学や研究機関に徹底し、正規、無期雇用転換を促し、研究者の雇用の安定で我が国の学術の人的基盤を分厚いものにすることだということを強く指摘して、私の質問を終わりたいと思います。

小渕委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 冒頭、まず指摘をしておきたいのですが、日本における研究開発を促進させることについては全く異論はありません。また、本法案の提出者の方々がこの間法案作成のために努力されてきたことについても、その点については敬意をあらわしたいと思います。

 しかし、労働契約法の特例措置を設ける、あるいは新たな研究法人を設置するといった大変重要な内容が盛り込まれた法案を急いで審議、採決する必要があるのか、疑問に思わざるを得ません。わずか二日、三日の間で提出をされ、そのままきょう採決まで行くということでございますけれども、十分な議論をできる時間もありませんでした。この点は余りにも拙速であるということを指摘せざるを得ません。

 さて、最初に、本法案に盛り込まれた労働契約法の特例措置に関連して何点か質問させていただきたいと思います。

 今回の措置で、研究開発法人や大学において有期労働契約で働く研究者や技術者、企画立案業務に従事する方々、教員に対し、有期労働契約期間五年以上で無期雇用への転換を申し込めるとした労働契約法の特例措置が講じられ、その期間が十年以上になります。

 まず、これら対象になる方々が現在どの程度存在をしているのか、文部科学省の方に尋ねます。

土屋政府参考人 お答えいたします。

 先生御質問の対象者につきまして網羅的なデータを把握していないところでございますが、その内容につきまして把握している部分、御説明させていただきたいと思います。

 まず、内閣府におきまして研究開発法人の任期つき研究者数を把握しておりまして、これが約七千人でございます。

 また、大学につきまして、放送大学以外の通信制及び短大を除く大学の任期つき本務教員数は約四万三千人、また、医局員その他の研究員ということで約二万七千人いらっしゃいますが、この中に無期雇用と有期雇用の方がおられます。

 また、研究開発法人あるいは大学等の技能者につきましては約一万七千人ということで、この中に無期雇用と有期雇用の方がいらっしゃるというところでございます。

 さらに、リサーチアドミニストレーター、すなわち、研究開発法人あるいは大学等で研究開発の運営管理に関する専門人材として働いておられる方々が約二百人ということでございます。

 さらに、民間の、今回の大学等との共同研究に専ら従事されている方々につきましては、大学等におきまして現在約三千人の受け入れを行っておるところでございますが、この中に有期雇用、無期雇用の方がいらっしゃるということでございます。

 全体を整理いたしますと、私どもとして、対象となる可能性がある方々としては、少なくとも十万人規模という想定をしてございます。

吉川(元)委員 大変な数の方が非常に不安定な条件に置かれているということだろうというふうに思います。

 私も、本委員会で、公立学校において臨時、非常勤の教職員の数がふえ続ける点を問題にし、処遇の改善を訴えてまいりました。

 今回の案件も同様に、まず、有期雇用といった不安定な身分で働き続けなければいけないような研究者や教員の方々が多く存在をする、あるいはふえ続けていること自体が、日本の研究開発に支障を来している要因の一つではないかと指摘させていただきたいと思います。

 そこで、重ねて文部科学省の方に尋ねますが、これら労働契約法の特例の対象となる方々の給与水準について、どの程度、どういうふうになっているのか、尋ねます。

土屋政府参考人 お答えいたします。

 大変恐縮ですが、これも全体的な、網羅的なデータを把握してございませんが、各機関ごとに公表しておるところがございますので、それをお答えさせていただきたいと思います。

 例えば東京大学でございますが、非常勤の職員の教員につきましては、年間平均約五百八十三万円、事務・技術職員が約五百四十九万円というふうになってございます。

 また、独立行政法人、いわゆる研究開発法人である理化学研究所の任期つき職員の研究職員については約六百九十一万円、事務・技術職員は四百六十六万円というふうに承知してございます。

吉川(元)委員 有期雇用で働く研究者や大学教員の方々の給与が一般的な大学の研究所での正規の職員の給与水準を超えるような高い水準であるのであれば、特例の対象になるようなことも可能なのかもしれません。しかし、恐らくそうでないと思います、今の水準でいいますと。

 無期雇用に転換できる権利を五年から十年に延長するのは、正規の代替、不安定雇用を活用したいという、余りにも経営側の論理に立った措置だと言わなければならず、有期雇用で働く立場からすれば、権利の制約以外の何物でもないのではないかというふうに思います。

 大学院の博士課程を修了し大学や研究法人で働く有期雇用の方々は、今回の措置によって、無期雇用に転換できる権利が発生するのは恐らく四十歳近くになってからだというふうにも思います。今回の措置は、技術者や研究者にとどまらず、大学教員、恐らく、先ほども少しありましたが、文科系の教員も含められていると思いますので、かなりの広範囲で有期雇用の方々をふやすことにもつながりかねません。

 問題なのは、大学では運営交付金や補助金が削減され、総人件費の抑制が進められていること、それから、その結果として教授や准教授のポストが減り、大学院を出ても有期雇用でしか働けないようなそういう事態が生じていることにあるのではないかと思います。

 だとすれば、本改正案の附則に盛られている検討事項、例えば大学の教員の雇用のあり方、あるいは大学や研究法人で働く有期雇用の方々の処遇改善、大学や研究法人の財政基盤の整備、これらを先行して見直すことが必要ではないかと思いますが、この点についての法案提出者の御見解を尋ねます。

伊藤(渉)議員 吉川委員御指摘の問題意識は我々も共有しておりまして、ぜひともそうした改善にも取り組んでいく所存でございます。

 その上で、これまで、研究開発に携わる有期労働契約等に対しては、政府において、産業界も含めた多様なキャリアパスの整備を図るとともに、各大学などにおけるテニュアトラック制の普及、定着を図るなど、無期労働契約のポストの拡充に資する取り組みも行ってきたところであり、今後とも、基盤的経費の確実な措置及び競争的資金の拡充に伴う間接経費の充実など、取り組みを行っていくことが重要だというふうに考えています。

 また、平成二十六年度の概算要求においても、年俸制の導入などの人事給与システムの弾力化を通じて、大学の抜本的な機能強化及びこれに伴う若手・外国人研究者の活躍の場の拡大などに意欲的に取り組む国立大学に対して重点支援を行うことというふうに聞いております。

 以上のような取り組みに加えまして、今回、労働契約法の特例を設けることを提案しておりますが、これにより、大学等において目下に生じている課題に対し緊急措置的に対処することができるようになり、大学などにおける有期労働契約の研究者等の雇用の安定にもつながるものと考えております。

 最後になりますが、先生の御指摘を含めて、今後とも、政府と協力をして、雇用の安定化を含む我が国の教育研究現場へのさらなる支援の充実のために、我々も全力で努力をしていきたいと考えております。

吉川(元)委員 本当にしっかりとした対策を打たないと、本当に日本の研究開発の力がこれは落ちていくことにつながりかねないというふうにも思います。

 ちょっと視点を変えまして、きょうは厚生労働省の審議官の方に来ていただいておりますが、大学の研究活動の多くは、一定の期限を区切って支出される資金を財源としたプロジェクトによって運営されている、これはもうそういう御答弁もありました。

 研究者の方々が懸念しているのは、有期雇用期間五年で無期雇用に転換する権利が発生してしまうと、逆に、五年を前にした雇いどめが発生をし、研究活動に支障を来すという点、そういうことの声もあるということも承知をしております。ただ雇いどめを防止すること自体を目的にするのであれば、労働基準法の規定で対応できないのかということを厚生労働省にお聞きいたしたいと思います。

 労働基準法の第十四条は、「労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、」三年あるいは五年を超える期間について、「締結してはならない。」としています。言いかえれば、有期労働契約は三年、例外的に五年ですけれども、が上限とされておりますが、一定の事業の完了に必要な期間を定めるものについては、三年あるいは五年を超えても有期労働契約を結ぶことができるというふうにもなっております。

 この条文を五年を超える研究プロジェクトに適用すれば、労働契約法にわざわざ特例措置を設ける必要はないというふうにも思いますが、厚生労働省の御見解を尋ねます。

大西政府参考人 先生御指摘の労働基準法の第十四条でございますが、一回の労働契約の期間の上限を定めた規定でございます。

 この中で、一定の事業の完了に必要な期間を定めた場合にはその期間が上限となるというような御指摘のとおりの条文があるわけでございますが、この「一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの」に該当するか否かにつきましては、その事業が客観的に有期であることが認められるということなど、実態を勘案して判断するものでございます。

 この際、労働基準法の事業ということでございますが、事業に当たるか否かというのは、主として場所的な概念によって決定されることになっております。例えばダムとか大型のビルの建設現場など、工事が完了すればその事業が明らかに消滅するという場合が該当する、そういったような条文になっているわけでございます。

 したがいまして、プロジェクトが大学等で行われているわけでございますが、プロジェクトが終了してもその大学等自体がなくなるとかいうわけではなくて、大学等自体は存続しておりますので、そういった場合には、労働基準法第十四条に定めるこの「一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの」というものには該当しないというぐあいに考えておるところでございます。

 今回の改正法案につきましては、こういった点を加えまして、一回の労働契約の長さのことではなくて、実際の研究現場における有期労働契約を反復更新した場合の課題についてどのように応えるか、そういった御指摘を踏まえましてこういった労働契約法の特例が検討されたものと考えております。

吉川(元)委員 場所の概念だということでありますし、そのように解釈をされているということも聞いております。

 だとしても、法律が施行されて、契約法の方ですけれども、まだ八カ月しかたっていないところで、無期雇用の転換権を特例措置とはいえ現時点で変えてしまうことというのは、やがてこれは特例ではなく全体に波及をしていくのではないかという、そういう強い危惧感を持ちます。

 そういたしますと、現行の労働基準法第十四条では該当しない研究プロジェクトについてこれを該当できるような解釈変更をする、あるいは、十四条に特例措置を設けて、研究プロジェクトについてその完了まで有期労働契約を可能とする特例措置を設けた方が合理的なのではないかというふうにも思います。そうすることで、研究者や教員も十年間雇いどめの不安を抱かずに研究に打ち込めますし、また、研究プロジェクトに支障をもたらすようなこともなくなるはずです。

 この点について、労働基準法の第十四条の解釈等々について検討されたのかどうか、法案提出者の方に尋ねます。

伊藤(渉)議員 吉川委員今御指摘の、特例が全体に広がることのないように、我々もしっかりここは監視をしていきたいと思います。

 その上で、今の御指摘につきましては、研究現場におきましては、一回の労働契約の長さの問題というよりも、五年を超えて有期労働契約を反復更新した場合に、労働契約法第十八条に基づき無期転換の申込権が発生することがプロジェクト型研究開発の実施等において課題を生じさせている、こういう指摘を踏まえまして、繰り返しになりますが、緊急的な手当てとして検討してきたものでございます。

 よって、一回の労働契約期間を定める労働基準法ではなく、有期労働契約を反復更新した場合のルールを定めた労働契約法の特例を設けさせていただいたものでございます。

吉川(元)委員 契約法が施行されてまだ八カ月で、特例とはいえ既に穴があくということについては、非常に強い危惧を私はやはり持たざるを得ません。

 少し通告している順番を変えさせていただいて、質問をさせていただきたいと思います。

 今回、改正案で、必要な資源の柔軟かつ弾力的な配分を規定した二十八条に、新たに「我が国及び国民の安全に係る研究開発」という言葉が盛り込まれております。

 端的にお聞きしますが、この「我が国及び国民の安全に係る研究開発」とは、具体的にどのような研究を想定されているのでしょうか。

大塚(拓)議員 お答えを申し上げたいと思います。済みません、質問の順番が変わったことによってやや油断をしておりましたけれども。

 国民の安全に係る研究、ハイリスク研究とは、先ほどのお答えとも重複をしますけれども、「我が国及び国民の安全に係る研究開発」とは、具体的には、安全で安心して暮らせる社会の形成、災害、貧困その他の人間の生存及び生活に対するさまざまな脅威の除去、国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障等に係る研究開発を想定しております。

 また、ハイリスク研究というものは、条文にありますとおり、成果をおさめることが困難であっても成果の実用化により極めて重要なイノベーションの創出をもたらす可能性のある研究開発全般を指すものでございます。

吉川(元)委員 直近の成果が期待できなくても、長期的な視野で見た場合に生活の向上や人類の発展に寄与するような分野の研究というのは、これは私も必要だというふうに思います。

 ただ、非常に危惧しますのは、民生分野だけではなく、軍事、防衛分野の研究も含まれているのではないかという点です。

 六月に閣議決定された科学技術イノベーション総合戦略には、成長戦略の一環として、米国の仕組みを参考に、長期的視点からインパクトの大きな革新的テーマを選定すると記されております。この米国の仕組みというのは、これも既にこの委員会で出ておりましたが、国防高等研究企画局ですが、アメリカ国防省の研究機関であって、今大変国際的にもなっております無人機や、あるいはステルス戦闘機等々の開発ということにもかかわってきた機関でもあります。

 我が国及び国民の安全を対象にした研究と明文化されますと、軍事研究に弾力的に予算措置をするというふうにも読めてしまうわけですけれども、この点、法案提出者の御見解を尋ねます。

大塚(拓)議員 そもそも今回の研究開発力強化法の文脈の中で本規定を設けましたのは、先ほども御説明を申し上げたところでございますけれども、従来、主として経済原理というか、投資に対する回収という観点から研究開発資源の配分ということがなされてきたことによって、市場性、産業としてお金が回収できる、そうしたところにどうしても偏る資源配分がなされてきた。すばらしい研究開発のシーズがあったとしても、それが実用化されるために、そうした産業化というパスしかなかなかなかったということが実情でございます。

 こうした中で、経済原理というところから離れた、しかしながら、これが実用化された暁には社会に大きな便益をもたらす、こうした研究シーズを引き上げていくためのパスとして、必ずしも経済原理によらない、国や国民の安全といった観点でございますとか、そういったところで実用化にシーズを引き上げていく、こうしたパスをつくっていくということがそもそもの目的でございます。

 当然、国の安全ということでございますので、防衛も入ってくると思いますし、防災、減災といったところも入ってくると思いますし、国民の健康、安全、安心社会の形成、こういったことも含むものと考えておりますけれども、原則は、経済原理によらない研究開発の実用化への道をつくっていく、このようなことが狙いでございます。

吉川(元)委員 先ほど言いましたとおり、長期的な視野に立って、すぐに商品化できないようなものも含めて研究すること自体は大いに進めなければいけませんし、そのための予算措置をしなければ私もいけないというふうに思います。ただ、やはりどうしても軍事研究というもののにおいといいますか、そういうものを感じ取らざるを得ません。

 関連して、きょうは内閣官房からも来ていただいておりますので、少し尋ねます。

 衆議院を通過をいたしまして、今は参議院の方で特定秘密保護法案が審議をされております。その第一条「目的」のところの最後の部分を見ますと、「もって我が国及び国民の安全の確保に資することを目的とする。」そういうふうな条文になっております。期せずして、今質問をさせていただきました今回の法案の中の「我が国及び国民の安全」という文言と全く同じ文言が特定秘密保護法案の中にも入っているということです。そうしますと、予算を弾力的に配分をする我が国及び国民の安全に係る研究開発も特定秘密に指定される可能性があるのではないかというふうに考えます。

 もしそうならば、その研究に携わる職員の方々、適性評価や罰則の対象になるのではないかというふうにも懸念をいたしますが、この点について御見解を尋ねます。

桝田政府参考人 お答えいたします。

 特定秘密に関してお尋ねがございましたが、特定秘密の保護に関する法律案の第三条第一項におきましては、「行政機関の長は、当該行政機関の所掌事務に係る別表に掲げる事項に関する情報であって、公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるものを特定秘密として指定するもの」としているところでございます。

 したがいまして、特定秘密として指定されるためには、別表該当性、非公知性、秘匿の必要性の三つの要件を満たしていることが必要でございます。

 御質問の技術開発に係る情報につきましては、具体的にどのようなものであるかが明らかでないため確たることは申し上げられませんけれども、このような指定の要件を満たさなければ特定秘密に指定されることはないものと考えているところでございます。

吉川(元)委員 そうすると、先ほど提出者の方から、別の委員からの質問に対して量子暗号というようなことも答弁にありましたけれども、まさにその暗号というものは、六十年を超えても秘匿するというような項目ですけれども、例えば量子暗号の研究について、では、これは当然該当するということでよろしいんですか。もう一度尋ねます。

桝田政府参考人 お答えいたします。

 別表にどのようなことが書いてありますかと申しますと、「防衛に関する事項」の中の細目としまして、例えば「防衛の用に供する暗号」というようなものが事項として掲げられてございます。

 したがいまして、ここに該当して、しかも、先ほど申し上げましたように、非公知性であり、あるいは特段の秘匿の必要性があるというそれらの要件を満たしているものであれば指定される可能性はあると思いますけれども、ただ、いずれにいたしましても、この指定の対象といいますのは、行政機関が持っている情報ということになりますので、そこのところがクリアされているということがまず大前提ということになります。

吉川(元)委員 ちょっと大臣にお聞きしたいと思うんですけれども、今回の特定秘密、まだまさに参議院で審議を続けられているところであり、野党は慎重審議をということで言っております。今ほどのお話、やはりどう考えても、これは特定秘密にかかわる研究があり得るというふうに思います。

 その場合、憲法の二十三条に書かれている学問の自由、研究の自由、研究発表の自由、教授の自由、そういう学問の自由にこれは抵触するのではないかというふうにも思いますけれども、この点について大臣の御見解を伺います。

下村国務大臣 今回の法案は、特定秘密保護法案、特定ですね。ですから、外交、防衛、それからテロ、スパイ等に限定しているわけでございます。

 これについて国家の秘密を漏らしてはならないという基本原則の中で、学問の自由に抵触するかどうかというのは個別具体的にどうなのかということになってくるかと思いますが、一般論で言って、抵触するという法案ではないというふうに思います。

吉川(元)委員 まさに、言われていた量子暗号などというものは、これは恐らく特定秘密の部類に、もし仮に開発できたとすれば、暗号ですから、外交、防衛に直接関係する問題でありますし、今回の特定秘密保護法案のことでいえば、これはもうほぼ間違いなく特定秘密に指定されるんだろうというふうに、私は今の法案を見ておりますと感じております。

 そうなりますと、今まで言いましたとおり、私は、教授の自由だとか発表の自由だとか、あるいは学問の自由というもの全般に対して大きな制約が課せられる、秘密を漏らせば最高で十年の懲役、こういう厳しい罰則が設けられている特定秘密にこれは該当するのではないかという、そういう強い危惧感を持ちます。

 そこで法案提出者に一点尋ねますが、民生分野の研究開発で日本の成長や国際社会に貢献していくべきだということについては全く異論はございません。ただ、軍事、防衛分野の研究に走ることは、私はやはり、憲法の精神にも反しますし、今ほど言いました特定秘密の指定との関係でいうと、憲法二十三条の学問の自由ということにも抵触をするのではないかというようにも考えます。また、国際社会の緊張要因にすらなりかねないとも危惧をしております。

 その点で、最先端の技術というのは、激化する国際競争に置かれているとはいえ、予算を柔軟に配分し、かつ、今ほど言いました軍事、防衛分野の研究も可能性としては排除されないのだとしたら、立法府さらには国民の監視も当然必要になってくると思います。

 この「我が国及び国民の安全に係る研究」について、どこまで、どのように情報を開示されると想定をされておられるのか、お聞きをいたします。

大塚(拓)議員 まず確認をさせていただきたいのは、今回の研究開発力強化法によって、我が国の防衛政策でありますとか、あるいは先ほど御指摘の特定秘密保護法案、どういった分野の情報が秘密になるかといったような範囲、こうした他の法律であり、他の省庁が所管している事項について何ら変更を加えるものではないということは確認をさせていただきたいというふうに思います。

 本件はあくまでも研究開発の強化ということを目的としておりますので、そのために、逆に言えば、先ほど、大学における研究開発についての協定があるのかないのか、こういう質疑もあったわけでございますけれども、こうした、どういう分野だから研究をしてはいいとかいけない、むしろ、そういう研究の自由を阻害するようなことも私はあり得るんだと思います。そういった分野について、この法律において何か制約を追加的に課すということは一切ないということでございます。

 そうした中で、先ほども申し上げましたように、いろいろなシーズがあって、これが実用化をしたときに社会的に大きなインパクトをもたらす、これはスピンオフというところでございますけれども、こうしたところで国民の生命財産を守るというこれは非常に大きな便益でございます、社会的にも大きな便益でございますけれども、それは必ずしもお金を投資して回収をするという金銭的な勘定の中で採算が合う話ではないとなれば、こういったところに資源配分がされない。

 そういうことでありましたら、例えば、今私どもが使っておりますインターネットでありますとかGPS、こういったものも、もともと国民の生命財産を守ろうという発想の中から生まれてきた研究でございます。これによって我々が今社会的に受けている便益というものは極めて大きいというふうに思いますけれども、こうしたこともなかったというふうに思うわけでございます。

 こうしたルートを必ずしも経済的に採算が合わないということで閉ざしてはいけないというのがこの法の趣旨でございますので、重ねて申し上げますけれども、防衛政策その他一切のこれまでの我が国の方針に影響を与えるものではないということを御理解いただければというふうに思っております。

吉川(元)委員 確かに、軍事研究というのは経済性を全く無視をして行われますので、その結果として、例えばインターネットであるだとかGPSというものがその中からそれこそスピンオフして、今、私たちの生活にはもう欠かせないものになっているという事実はあります。

 ただ、それは、要は、民生用の技術であっても経済性がはっきりしないものについてしっかりと予算措置をすれば済む話であって、軍事、防衛ということでなければならないということに私はならないだろうというふうに思っております。

 ちょっともう時間の関係で、最後一問だけ大臣とそれから法案提出者の方に、新たな研究法人の制度についてお尋ねしたいと思います。

 改正案は、「独立行政法人の制度及び組織の見直しの状況を踏まえつつ、」としながら、新たな研究開発法人を設けるとしております。この条文を読む限りでは、新たな研究開発法人が研究開発関連の三十七の独立行政法人から選定されるのか、あるいは独法とは別に新たな法人が立ち上げられるのか、正直言ってよくわからない点があります。

 いずれにしても、新たな研究法人が設立されるのだとしたら、なぜそのような法人が必要なのか、提出者とそれから大臣に、それぞれにお聞きいたします。

塩谷議員 この法律においては、独法のもとで今研究開発法人が活動しているわけではございますが、独立行政法人法ができて十年間、その経緯の中で、現場から、やはりこの独法のもとではなかなか世界と対抗できる科学技術のこれからの進展ができないという、具体的な給与の問題とか調達の問題とかさまざま課題が出ておりますので、やはりこれから日本が、世界で一番イノベーションに適した国、それを目指すために、また成長戦略をしっかり推進していくためにも、新しい研究開発法人のあり方を目指していこうということで、これは後で大臣からお話があるかもしれませんが、政府においても我が与党においても検討しているところでございまして、要は、我々としては、この成果の最大化を目指して、それにふさわしい研究開発法人のあり方ということで、それを今回条文に明記したわけでございますので、今後、その具体的な議論はしてまいりたいと思っております。

下村国務大臣 本年六月に閣議決定をした日本再興戦略等におきまして、成長戦略の実現に資する研究開発を集中的かつ効率的に推進するため、世界最高水準の法人運営を可能とする新たな法人制度を創設するということが明記されました。

 先週十九日には、私と山本大臣のもとに設置された懇談会より、成長戦略に資するゼロベースの行政改革を断行して、独法制度とは異なる、研究開発成果の最大化を目的にした新たな法制度の創設を行うべきとの提言を示していただいたところでございまして、私としては、この新たな法制度の創設に全力を挙げて取り組んでまいる決意でございます。

吉川(元)委員 時間が来ましたので以上で終わります。

小渕委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。柏倉祐司君。

柏倉委員 みんなの党の柏倉祐司です。

 ただいま議題となりました研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、みんなの党を代表して、反対の立場から討論をいたします。

 iPS細胞の山中教授がノーベル医学賞を受賞し、日本発のイノベーションが大きく花開こうとしております。そうした研究を財政的、制度的に後押しするのは国の使命であり、研究の速度におくれない速やかな制度改革が必要であることは我々も同意をいたします。そして、本法案にも、現状に即した対応がなされていると一定の評価をしております。

 例えば、労働契約法に特例を設けて、無期労働契約に転換する期間を五年から十年に延長することは、研究の質と研究人材の流動性を保つ上でも、トップリサーチャーのニーズに応える合理的な措置であると思います。また、国及び国民の安全に係る研究を継続していくこと、ハイリスク研究をImPACTプロジェクトとして推進をしていくことに異議はありません。

 しかしながら、研究開発法人を独立行政法人とは違う根拠法に基づく法人とするのか、独立行政法人通則法を抜本的に改正して、研究開発法人に向いた特則を新設して対応するのか、研究開発法人のよって立つところの大原則が生煮えのまま提示されており、十分なコンセンサスが政府内でできていないことを指摘せざるを得ません。

 この議論はまた政府内で行い、来年の通常国会でどちらかを提示するとのことですが、それではプログラム法案の域を出ず、さらに、我々野党が行政改革との整合性に関する議論に加われない可能性があります。政府・与党内の議論のいかんによっては行政改革に逆行する可能性があり、行革に重きを置く我が党としては、本案には賛成しかねます。

 最後に、最先端研究を加速するため、知財所得、論文発表を国が大いに後押ししていくことに我々も賛同いたしますが、研究開発法人の制度設計が判然としないことを筆頭に、二時間の討論で終局してしまうには、漠として問題の多い法案であり、さらなる委員会の審議を希望することを申し添えて、反対の討論を終わります。

小渕委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 私は、日本共産党を代表して、自民党、公明党提出の研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律案に、反対の討論を行います。

 まずもって、一昨日に提出され、以下に述べるようにさまざまな問題もある本法案の質疑、採決を急ぐこのような委員会運営に、強く抗議いたします。

 本法案は、大学、研究機関で教育研究に携わる有期雇用の研究者、技術者などを対象に、無期雇用への転換権を五年から十年に先延ばしし、不安定雇用を増大させるからです。

 対象となる大学の教員、研究者である大学院博士課程修了者の多くは、修了後、任期つきの大学教員、ポストドクター、非常勤講師などの期限つき、非正規の職にとどまり、数年たっても非正規のままであるのが実情です。研究者が求めているのは有期雇用期間の延長ではなく、研究の発展性、継続性が確保された、身分保障、雇用の安定、地位の向上です。

 大学はこの十年間で、国による基盤的経費、国立大学運営費交付金、私学助成が約千七百億円削減される一方で、期限を区切った大規模プロジェクト研究などの競争的資金が拡充された結果、常勤職ポストは削減され、プロジェクト研究費による非正規雇用の若手研究者によって研究を支えているのが実情です。

 行うべきは、労働契約法の特例を設けることではなく、労働契約法改正の趣旨にのっとった対応を大学や研究機関に徹底し、正規、無期雇用転換を促すとともに、基盤的経費の増額で、大学を支える財政措置を拡充することであります。

 この間、安倍内閣のもとで、雇用の規制緩和が狙われ、国家戦略特区の中で解雇特区を設けることも検討されてきましたが、世論と運動に押され、見送られました。それを突如として議員立法という形で持ち出して行うことは、労働法制に風穴をあけるものにほかなりません。改正労働契約法の施行後一年も経ず、労政審等三者構成を原則とした議論も踏まえず新たな特例を設けることは、拙速に過ぎ、認められません。

 本法案には、このほかに、研究開発、イノベーション創出のためとして研究開発法人の出資を可能とすることや、国及び国民の安全にかかわる研究開発やハイリスク研究開発の推進などが盛り込まれていますが、出資した後の利益、毀損した場合の扱いなどの問題点があることも指摘しておきます。

 最後に、このような法改正は、若手研究者を使い捨てにし、基礎研究が一層軽視され、結果としてイノベーションの創出にもつながらないということを指摘して、討論といたします。

小渕委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党を代表して、研究開発能力強化法及び大学の教員等の任期に関する法律の一部改正案について、反対の立場から討論を行います。

 まず、法案提出からわずかな期間で審議、採決に至ったこと、また、労働契約法の特例措置の対象になる有期労働契約で働く研究者や教員、あるいは三十七の研究開発関連の独立行政法人の意見も聞くことなく短時間の審議即採決に至ったことは、大いに問題です。

 以下、本改正案に反対の理由を述べさせていただきます。

 第一に、労働契約法の特例措置に関してです。

 今回の措置によって、施行後、たった八カ月の無期雇用転換権に特例が設けられます。通算五年の有期労働契約で無期雇用に転換できるようになると、雇いどめが発生する懸念が指摘されています。しかし、問題は、大学や研究法人に多くの有期契約労働者が存在し、賃金等の処遇が劣悪であること自体にあります。着手すべきは、その処遇改善や大学、研究法人の財政基盤の確立にあったはずです。無期雇用に転換できるまでの期間を特例で十年以上に延長する措置が、やがて特例でなくなり、有期契約労働全体に波及することを強く懸念せざるを得ません。

 第二に、設立される新たな研究法人の姿が不明確な点です。

 既存の独立行政法人から選定されるのか、それとも独立行政法人とは別の法人なのか、国はどのようにかかわるのかなどが不明確なままでは、十分に審議することすら不可能です。

 第三は、予算を弾力的に振り向けることを可能にした「我が国及び国民の安全に係る研究開発」が、軍事、防衛分野をも想定している懸念を払拭できない点です。

 もし、軍事、防衛分野の研究に積極的に予算を振り向け、その成果を期待するとなれば、平和憲法の精神や戦後の歩みと調和しないことは明白です。ましてや、特定秘密の対象になるのだとすれば、国民の監視が行き届かないところで軍事、防衛技術の研究が進むことになってしまうばかりか、憲法二十三条の学問の自由を侵すことになりかねません。

 以上の観点から本改正案に反対いたしますが、日本及び世界の平和と発展に資するような科学技術を振興させるよう、下村大臣以下文部科学省に切に要望し、私の討論といたします。

小渕委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 これより採決に入ります。

 塩谷立君外四名提出、研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小渕委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、中根一幸君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、公明党及び生活の党の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。稲津久君。

稲津委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 本法で労働契約法の特例措置を講じたことは、あくまで例外であることを踏まえ、その趣旨に反して他の職種にも適用されることがないよう十分留意すること。

 二 雇用労働政策の決定や法律の制定改廃は、労働政策審議会の議を経るというこれまでの原則を変更しないこと。

 三 今回の法改正による労働契約法の特例の対象となる者の雇用の安定を図るために必要な研究開発等の推進のための基盤の整備に係る方策について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。

 四 民間企業で有期雇用される研究者等が大学等と共同研究開発を行う場合の労働契約法の特例については、速やかに研究者等の雇用の安定が図られるよう必要な検討を行い、必要な措置を講じること。また、特例の対象者が著しく拡大することがないようにすること。

 五 科学研究費助成事業をはじめとする研究費の基金化を進めるよう努めること。

 六 研究者等の雇用について、短期契約の更新を繰り返すことを改め、研究者等の雇用の安定が図られるよう、研究者等の人材育成や雇用形態の基本的な在り方についても検討を行うこと。

 七 研究開発等を行う法人に関する新たな制度の創設に関しては、研究成果の最大化を目的としつつ簡明で国民の合意が得られるものとなるように十分留意すること。また、現に存する研究開発法人の業務・目的等を精査し、当該新制度に移行するべき研究開発法人の選定の基準・考え方を早急に検討し発表すること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。

小渕委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小渕委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。下村文部科学大臣。

下村国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

小渕委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

小渕委員長 次回は、来る十二月四日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十分散会


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