衆議院

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第6号 平成25年6月21日(金曜日)

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平成二十五年六月二十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 渡海紀三朗君

   理事 馳   浩君 理事 牧原 秀樹君

   理事 三原 朝彦君 理事 渡辺 博道君

   理事 福田 昭夫君 理事 伊東 信久君

   理事 伊藤  渉君

      青山 周平君    井上 貴博君

      大串 正樹君    大塚 高司君

      大野敬太郎君    加藤 寛治君

      神田 憲次君    小林 史明君

      新開 裕司君    関  芳弘君

      冨樫 博之君    橋本  岳君

      藤井比早之君    船橋 利実君

      前田 一男君    宮崎 謙介君

      武藤 容治君    村井 英樹君

      八木 哲也君    簗  和生君

      山下 貴司君    山田 賢司君

      大島  敦君    津村 啓介君

      古川 元久君    前原 誠司君

      杉田 水脈君    鈴木 義弘君

      西根 由佳君    伊佐 進一君

      岡本 三成君    井坂 信彦君

      柏倉 祐司君    宮本 岳志君

      青木  愛君

    …………………………………

   参考人

   (独立行政法人理化学研究所理事長)        野依 良治君

   参考人

   (政策研究大学院大学長) 白石  隆君

   衆議院調査局科学技術・イノベーション推進特別調査室長           雨宮 由卓君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二十一日

 辞任         補欠選任

  武村 展英君     冨樫 博之君

  福田 達夫君     青山 周平君

  武藤 容治君     井上 貴博君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     新開 裕司君

  井上 貴博君     橋本  岳君

  冨樫 博之君     武村 展英君

同日

 辞任         補欠選任

  新開 裕司君     藤井比早之君

  橋本  岳君     武藤 容治君

同日

 辞任         補欠選任

  藤井比早之君     福田 達夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件(我が国の科学技術、イノベーション推進の今後の在り方について)


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     ――――◇―――――

渡海委員長 これより会議を開きます。

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件、特に我が国の科学技術、イノベーション推進の今後の在り方について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として独立行政法人理化学研究所理事長野依良治君及び政策研究大学院大学長白石隆君に御出席をいただいております。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 両参考人におかれましては、本日は、当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じております。よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人それぞれから二十分程度で御意見をお述べいただきます。その後、委員からの質疑に簡潔、端的にお答えをいただきたいと存じます。

 御発言の際は着席のままで結構でございます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、衆議院規則により、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承いただきたいと存じます。

 それでは、まず野依参考人にお願いいたします。

野依参考人 御紹介いただきました野依でございます。

 座って話をさせていただきます。

 本日は、こんなに立派な特別委員会にお招きいただきまして、大変光栄に存じます。

 私は、経済の専門的なことを全く理解しておりませんけれども、直観的に、科学と技術は必ずやイノベーション、さらに経済成長に貢献するというふうに感じております。

 ここで、イノベーションという言葉でございますけれども、これは単なる革新ではなく、経済を含む社会的価値の創造を意味するものでございます。

 二番の図でございますが、これが私の時代認識でございます。

 世界を見ますと、現代文明の危機時計は九時二十三分を指すと言われておりまして、我が国もその軽減に貢献すべきだと思っておりますけれども、その日本を取り巻く現状は極めて厳しいものがございます。

 我が国は人口オーナス時代へ突入しております。国民総所得三百四十九兆円に対して、三十七兆円に上る国民医療費初め、社会保障費の増大は極めて大きく、今後、消費税の値上げ等の可能性もございまして、閉塞感が漂っているということであります。

 一方、ザ・ワールド・イズ・フラットと言われるように、世界は障壁が極めて低くなっておりまして、地域や国の壁を越えた情報あるいは人材の流動性が高まり、グローバル化が進んでおります。そこで、科学技術こそが国境を越えての共通通貨であるということでございます。

 したがいまして、我が国は、主権国家として今後生き続けるために、科学教育の体制を国際標準モデル化して、競争力と協調力を強化して、それを国力の源泉とする以外にないというふうに考えております。もちろん科学技術だけでは不十分でございますけれども、この強化は不可欠の条件だと思います。

 この一世紀を振り返りましても、我が国は潜在力を十分に持っておりますので、それを活用して、ぜひともV字形の反転をしなければいけないと思っております。ほかの国のせいにしても始まらず、現実を直視した上で、みずからやはり国の方向を決定しなければいけないと思っております。

 三枚目の図でございますけれども、私たちは日々、自然の恵みを受けながら生きているわけでありますけれども、それだけでは全く不十分であります。そこで、ここ二百五十年にわたる現代文明というものは、人々が生きるすべとして科学知識に基づく技術を選択したわけであります。

 全米工学アカデミーは、二十世紀をイノベーションの世紀と捉えておりまして、そのリストにありますように、私たちの生活を決定的に変革した二十の偉大な技術システムを選定しております。電力の利用を第一に挙げておりますが、次いで自動車、航空機、水の供給、エレクトロニクスなどが続いております。中には若干問題を含むものもございますけれども、どれ一つ欠けても私どもは生きていくことができません。

 これらのイノベーションの原点には基礎科学があります。今後とも、根幹的な科学の知識、そしてそれに基づく技術を生み出していかなければなりません。一方で、しばしば市場や社会の要請がイノベーションを生み出すこともまた事実でございます。この両者をつなぐ社会総がかりの仕組みをつくっていく必要があろうかと思います。

 四ページでございますが、基礎科学研究の経済効果でございますけれども、これを定量化することは甚だ困難でございます。しかし、アメリカのナショナルアカデミー連合によりますと、アメリカの国民収入の増加の八五%は技術革新に由来するというふうに言われておりますし、また、経済成長の五〇%から七〇%もこれに由来するというふうに聞いております。

 基礎科学からのROI、リターン・オン・インベストメントですけれども、これは古くは二八%というふうにされたこともございますけれども、最近の調査によりますと、基礎科学研究は農業あるいは医療に非常に大きな経済効果をもたらすとしております。

 ごく最近のネイチャー誌によりますと、特に八八年から〇三年の壮大なヒトゲノム解析研究がございましたけれども、これは、二〇一〇年までに、直接的、間接的に一兆ドルの経済効果があったとしております。ここで、政府の投資がインプットでありまして、そして医薬などのいわば生産物の価値、それから税収、個人の収入などがアウトプットの内訳でございますけれども、一ドルの公的な投資が実に百七十八ドルを生んだということになります。

 しかし、注意しなければいけないことは、これはあくまで経済活動の効果でありまして、本当の社会的な恩恵、例えば、どのぐらいの雇用が生まれたとか、どのぐらいの命が救われたとかいうことは計測の対象になっておりません。

 五番の図でございますが、さて、我が国の政府の第四期科学技術基本計画は、従来の分野別の研究に加えまして、課題解決型の研究を重視すること、さらに科学と技術にイノベーションを加えたSTI、そして、我が国の震災からの復興のために、さらにRを加えたSTIRを旗印に掲げております。Rというのは、リコンストラクションあるいはリフォームのRであります。

 ただ、この政策を本当に進める上では、特に研究開発法人と高等教育機関の抜本的な改革が不可欠であるというふうに私は考えております。もちろん、基本計画にあります研究開発投資目標、対GDP比四%はぜひ達成していただきたいと考えております。

 五ページの下に書いてございますけれども、去る五月の十四日に発表されました自民党政務調査会の科学技術・イノベーション戦略調査会の我が国の研究開発力強化に関する提言、中間報告を拝見いたしましたけれども、この内容には大賛成でございます。政治家の先生方にこれまで問題点を深く御理解いただいているかというふうに感激しております。あとは、野党の先生方にも御賛同いただいた上で、超党派でこれを実行していただきたいと思います。

 以下に、この方向で私が考えるところを若干つけ加えさせていただきたいと思います。

 六番の図でございますが、御承知のように、さまざまな原因によりまして、我が国の科学論文指標が低迷しております。

 この表は、字が小さくて恐縮でございますが、横に分野の名前、縦に日本の順位が並んでおりますが、そして、この表は各分野別に過去十年間の日本の位置の変化を示したものでありますけれども、残念ながら、この低落傾向は全般的かつ恒常的でございます。特に、現実の国力にかかわります工学であるとか臨床医学、真ん中からちょっと右にございますが、そういった分野が含まれておりまして、私は大変憂慮しております。

 もちろん、我が国には、山中博士を初め、世界に冠たる成果を上げておられる先生も大変多くて、日本人の個人的な才能はむしろ誇るべきであるというふうに考えております。しかし、この表が明白に示しておりますところは、研究体制の疲労ということでございます。さらに詳しい分析によりますと、主力たる国立大学の研究力を再生しなければならないというふうなことでございます。さもなくば、あるべき指標の達成は不可能であるというふうに考えております。

 七番の図に、大学と公的研究機関の研究の大ざっぱな役割の相違を示してございます。

 そもそも科学技術の研究は、知識の創造から社会実装まで、その段階に応じて、基礎、応用あるいは開発研究等がございます。ここで、大学が基礎研究に特化しているというのは全く間違っておりまして、工学部であるとか農学部であるとかでは、応用技術開発を目指している先生方も非常に多いということでございます。

 しかし、大学の最大の特徴は、基礎であれ応用であれ、他人の指図ではなくて、個々の研究者がいわば内在的な動機に基づいて学術研究を行う、これが主流であるということでございます。この自由発想の風土というものは、ぜひ守らなければいけないと思います。これらは、しばしば、物理とか化学とか生物学といった分野別かつ分散的でありまして、そして自律性と自己責任のもとに行われるわけであります。

 先ほど申し上げましたように、第四期の科学技術基本計画は課題解決というものを求めておりますけれども、本当は、大学というのは、その課題自体を発見すること、これが期待されているところでございます。つまり、山中先生のような、ゼロから一、こういった発見型の研究が求められるわけであります。

 先ほど指標の低迷をお示しいたしましたけれども、これは、二から四とか五から七といった継続的な発展研究が多いためでありまして、その主なる要因は、一様に、年配の男性の日本人が研究を率いている、こういう傾向にあるということでありまして、価値観の多様性が欠けるため、ゼロから一への創出ができにくい、こういうことかと考えております。

 八番に参りまして、現在の研究重点大学は改革すべき点がたくさんございまして、財政であるとか運営体制、国際化など、非常に多くの問題を抱えております。しかし、一つだけ直ちにやるべきことを挙げろと言われますと、それは、すぐれた若者、女性、外国人を指導者として登用することだと思っております。彼らをこれまでのようにレーバーとして消耗するのではなくて、リーダーとして活躍してもらうということでございまして、そのためには、〇七年に改正が施行されました学校教育法九十二条の遵守、つまり、昔と異なりまして、准教授、助教を独立させるということでございまして、これを求めたいと思っております。

 この方向は、文部科学省の今期の科学技術・学術審議会の研究開発力強化のための基本方針、これにしっかりと盛り込まれておるところでございます。三十前後での独立という世界標準モデルの実施には、大学あるいは研究費についてもろもろの条件整備が必要でございますけれども、これにより、日本の科学は必ずよみがえるというふうに私は信じております。

 なお、研究社会というのは、非常に厳しい自己責任、競争の世界であります。広範な、流動的な人事を行わなければいけませんけれども、このためには、改正労働契約法を適用して安易に若手全員に永住権を与えるのではなくて、むしろ全国的にテニュアトラック制度を定着させて、そしてもう一つは、定員数管理ではなくて人件費管理を可能にする年俸制をぜひぜひ導入するべきというふうに考えております。

 九番の図に参ります。

 さて、今申し上げました個人的な学術研究を中心とする大学だけでは、国の研究体制としては全く不十分でございます。公的研究開発機関が、国家の戦略に基づく、明確に目標や分野を設定した研究を担っていかなければなりません。ここでは、集中と選択、そして立案者と実行者の協同による目標管理が必要となります。そして、大学とは異なりまして、課題の解決と達成、つまりやり切るということが重視されなければならないと考えております。

 ここでは何を行うかということでございますが、卓越した総合的な研究、あるいは国家基幹技術と呼ばれるような高度な研究基盤を構築すること、あるいは産業界などにおけるイノベーションへの橋渡しなどの大きな役割が期待されるということでございます。

 では、いかにすれば基礎研究から国力の源泉となるイノベーションを生むことができるかということでございます。昨今は、イギリスを除きまして、アメリカ、フランス、ドイツ、さらに日本においては研究開発投資の効率が低迷しているというふうにされております。この傾向の克服は、科学技術社会の努力だけでは困難でありまして、現状を直視した上で、実効性ある社会総がかりのナショナル・イノベーション・エコシステム、あるいはグローバル・イノベーション・エコシステムをつくっていかなければいけないと思っております。

 日本におけます問題点といたしましては、いわゆる司令塔の不在、それから省庁縦割り行政による官官、産学官、国際連携のふぐあいがございます。それから、公的資金と民間資金、これは一対四というふうに言われておりますけれども、これの混合が不十分であります。それからまた、世界標準モデルの経営への制約などが問題点として挙げられると思っております。

 世界の頭脳循環獲得競争、これに勝利しなければいけませんけれども、五月十四日の自民党の提言にございますように、すぐれた研究者の給与体系を改めることは重要でありますけれども、さらにさらに困難なのは、世界的知名度と見識を持つ役員あるいは指導的な職員の獲得でございます。これもぜひ御提言いただきたいということでございまして、研究者だけいれば研究所が成り立つということではございません。

 私は、幾つかの国立の研究開発機関の創設が必要と考えてございまして、これは看板のかけかえであってはならず、意識と、そして内容の刷新がなければいけないということでございます。私がわざわざ「国立」としておりますのは、我が国の誇りとなるナショナルブランドとしての存在感を示す、これが国立の意味でございます。ナショナルプライド、イギリスなら王立、ロイヤルということになっておりますから、これはたくさんあるわけがございません。私は、戦後、国家の威信が低落して、国立の名称が大変安売りされているということを非常に残念に思っておりまして、国立、これの再定義が大事だろうと思っております。そういう意味での国立でございます。

 十番でございますが、最後に、我が国の研究開発力を強化するには、大学、公的研究開発機関、民間の研究活動を束ねる司令塔、現在の総合科学技術会議でございますけれども、この機能強化は不可欠だと思っております。

 この司令塔は、ほかの主要会議のお世話係であったり、しもべであってはならず、みずから日本が目指す社会的、経済的な価値を同定し、科学技術政策全体の方向を決めなければいけないと思っております。それには、強力な権限を司令塔に集約し、そして主要な科学技術政策を総合的にリードすることが不可欠だろうと考えます。

 しかし、新聞報道によりますと、現状の科学技術関連の司令塔組織としては、総合科学技術会議のほかに、IT、知的財産、宇宙開発、海洋、原子力に関する司令塔機能がたくさん並び立つとともに、新たに日本版NIHの創設が検討されているというふうに聞いております。

 私は、現在いろいろと議論されております日本版のNIHの創設の動きについては、ある種の懸念を持ちながら見守っております。

 まず、NIHに倣うということは余りよくないと思っております。アメリカの医療政策は、国民の健康と医療の実情、それから医療経済の両面から、必ずしもアメリカ国民の支持を受けているということは申し上げられません。もちろん、我が国におきましては、基礎医学の研究成果を臨床に結びつける橋渡し研究、いわゆるトランスレーショナルリサーチでございますが、これの仕組みが脆弱でございますから、これを統合効率化する、これは非常に大事な方向で、大変結構かと存じます。

 しかし、生命医療科学の予算三千五百億円を一元化して、基礎研究までこの目的のために囲い込んでしまうのは大問題だと思っております。むしろ、基礎科学というものは、世界的に見まして、生物科学、物質科学、数理情報科学を統合するという趨勢にございまして、この囲い込みは生命科学の進展の流れを損なうことになるというふうに考えております。

 世界の医療をリードしておりますイギリスにランセットという雑誌がございますけれども、これ自身が、最近の巻頭言におきまして、世界で十六兆円を使うバイオメディカルリサーチ自体が、そのあり方に大きな問題を抱えていると。より高い観点に立った反省とそして見直しが必要だというふうに考えております。

 ぜひとも司令塔を一元化して、そして、太く強靱な国家戦略の司令塔として機能するようにしていただきたいと思います。もちろん科学技術の専門性は尊重すべきでありますし、関連産業の発展もまた非常に大切でございます。しかし、それぞれのいわゆる村、これの利得を優先し、科学技術全般を指揮すべき司令塔をどんどん細かくし、あるいは機能を縦割りにしてはならないというふうに考えております。司令塔の間で権限、財源の争い、あるいは縦割り構造が発生するようでは、とてもとても我が国の研究開発力の強化は望めないと思っております。

 財政につきましては、もちろん政治、行政に御尽力願わなければなりません。ここで最も大切なことは、科学技術と高等教育に対する公的財政投資はまさに投資であって、社会保障、コストではないということであります。投資には必ず社会的なリターンがあるということであります。このことを国民全体に御理解いただくことが大事でありますけれども、同時に、大学、研究社会もやはりみずからの使命を再確認して、何をやるかということを国民とお約束する、これが最も大切なことだというふうに考えております。

 冒頭に申し上げましたとおり、科学技術力を強化し、新しい価値をつくり出すことは、我が国の成長戦略のかなめ、要諦でありまして、その前提となる研究開発力、イノベーション、人材養成は、我が国の将来を左右する生命線、かつ国家戦略として取り組むべき国政の最重要課題であるというふうに思っております。

 改革にはもちろんさまざまな困難が伴うことでございますけれども、やれることから始めるのではなくて、社会のためにやるべきことから実行しなければいけないというふうに考えております。そのために総合的なガバナンスの仕組みをぜひぜひつくっていただきたい、こんなふうに思っております。

 以上でございます。(拍手)

渡海委員長 野依参考人、ありがとうございました。

 次に、白石参考人にお願いいたします。

白石参考人 きょうはこういう非常に重要な場にお招きいただきまして、どうもありがとうございます。

 今、野依先生から極めて包括的なお話がございましたので、私としましては、それを踏まえて、大きく三つのテーマに絞って、私の考えを少しお話ししたいと思います。

 まず最初は、総合科学技術会議の司令塔機能の強化ということでございますが、新政権が成立いたしまして、総理が議長を務めておられます本会議が極めて頻繁に開催されまして、これが非常にはっきりと政府の科学技術・イノベーション政策重視の政治的意思となって、それを受けて、総合科学技術会議としても、私自身、議員をやっておりまして、よほど大変だったろうと思いますけれども、ともかく五カ月で総合戦略をまとめたというのは、これは非常にすばらしいことだろうと思います。

 実際に、私もこの総合戦略についてはかなり丁寧に拝見いたしまして、アクションプラン、それから重点施策パッケージ編成、こういうプロセスを強化する形で予算編成プロセスにおける機能強化ということが方針として出され、さらに戦略的イノベーション創造プログラムの創設ということがうたわれ、それから、日本版DARPA、Dのところがどうなるのかというのが若干私としてはまだ心配でございますけれども、ともかく、日本版DARPAということで、DARPAを参考にした革新的研究開発支援プログラムがつくられる。非常にすばらしい。まさに、これが一つ、これまで総合科学技術会議として日本の科学技術・イノベーション政策の司令塔ということで考えられていた、そういう方向に今進んでいるというふうに受けとめております。

 これから工程表を八月の末までに策定して来年度から実行ということになっておりますので、これに関連して四点申し上げたいと思います。

 一つは、科学技術顧問の創設ということでございます。

 総合科学技術会議では、科学技術・イノベーション政策における二元性の観点から、科学技術顧問の創設についてどうも懸念されておられるようなところがございます。あるいは、そういうふうに私としては受けとめておりますけれども、これはやはり科学技術顧問というものの役割について少し混乱があるのではないか。

 レジュメにも書いておりますけれども、総合科学技術会議というのは、これは科学技術振興のための政策、これを策定するのが総合科学技術会議でございまして、それに対して、科学技術顧問、あるいは英語で申しますとサイエンスアドバイザーというのは、政策のための科学について総理を補佐する。つまり、安全保障政策、防衛政策から環境政策、科学技術・イノベーション政策まで、あらゆる政策について、その科学的な意義、これが第一です。それからもう一つは、それぞれの分野の政策が長期的に科学技術の発展にどういう意義があるのか、これが二つ目ですが、この二つについて総理にアドバイスする、これが私は科学技術顧問の役割だろうと考えております。

 ですから、その意味で、私は、科学技術顧問についてはぜひもう少し前向きに考えていただきたい、これが第一点でございます。

 それから第二点目は、総合科学技術会議の改組においては、ぜひ防衛大臣の参加をお考えいただきたいということでございます。

 防衛力の基盤には、当然のことながら、産業技術というのが極めて重要でございまして、防衛産業、それから防衛技術基盤というのがこの十年かなり弱くなっている。また、これから将来、防衛予算というのがそれほど大幅にふえるということはなかなか考えがたいことから申しますと、やはり、防衛力というものについても、科学技術・イノベーション政策の一環として考える必要がある。これは、特に科学技術の方から申しましても言えることだろうと思います。

 もう既に、軍事技術における革命ということがアメリカで言われるようになって十年たっておりますけれども、この十年の間に、もう皆様御承知のとおり、例えば人間の生命のコストというのは非常に高くなっておりますので、無人飛行機、無人潜水艇等、無人のロボティクスあるいはブレーン・マシン・インターフェースの新しい知見に基づいた武器、装備の開発ということが行われております。

 私は、日本の研究機関あるいは大学がそこまで踏み込めとは申しませんけれども、少なくとも、こういう技術というのは全てデュアルユースでございまして、デュアルユースの技術について、あるいは科学技術について、これが軍事に転用されるかもしれないということでその分野に日本が入っていかないというのは、決して望ましいことではないのではないだろうかというふうに考えております。

 ですから、その意味で、総合科学技術会議の本会議への防衛大臣の参加ということは、実際には基本計画にございます安全保障・基幹技術のところの安全保障を実質化するということでございますが、これをぜひ考えていただきたい。

 それから三番目に、これはもう既に先ほど野依先生から指摘があったところでございますけれども、こういう科学技術イノベーション戦略と申しますものは、これは結局のところ、大学、国の研究機関、あるいは企業の研究者が動かなければ絵に描いた餅でございます。

 その意味で、今、研究者は、基本計画に基づき、この総合戦略をかなり丁寧に読んでいる。ここに、彼らの視点から見てどういうインセンティブがあるのかということを非常に注意しながら見ていると思います。

 今までは、総合科学技術会議の方で、この六カ月は、専門調査会であるとか戦略協議会というのは忙しくてなかなか開けなかったのであろうというふうに想像しますけれども、ぜひこれからは、こういう総合科学技術会議が持っております専調であるとか戦略協議会だとかあるいはタスクフォースだとか、いろいろなものを使って、研究者のコミュニティーがどうこれにインセンティブを見出して動いていくかというところに考えをめぐらせていただきたい、これが三番目でございます。

 それから四番目に、戦略的イノベーション創造プログラムにおける資源の投入ということでございます。

 エネルギー、それからライフサイエンス、インフラ等の分野にその資源を集中的に投入する、これは非常に明快でございまして、私としても全く違和感はございませんが、同時に、事業化のための環境整備、それからイノベーションのエコシステム、ちょっと間違ってエコロジーと書いておりますが、エコシステムの構築、これは極めて重要でございます。

 したがって、規制であるとか、金融分野の改革であるとか、あるいは税制、それから政府調達その他、ワールドバンクだとかあるいはワールドエコノミックフォーラムのランキング等を見ましても、日本が明らかに、国際的に比較して余り競争力を持っていない分野というのがございまして、ここについてはよくよく検討して、競争力強化のために資源を投入する。つまり、研究開発のところだけにお金を投入するのではなくて、規制とか金融とか税制とか政府調達とか、こういうところにぜひ注意を払っていただきたい、これが四点目でございます。

 次に、二番目に、もう少し広いテーマになりますけれども、科学技術イノベーション戦略の狙いというのは技術力の強化ということでございまして、これは別の言い方をしますと、生産関数を変えて資源を効率的に使う、そのための技術力を培養するんだ、そういう趣旨でございます。

 この技術力の基盤には、当然のことながら、一般的な言葉で申しますと、知識のストックというものがございまして、この知識のストックというものをいかに豊かにしていくかということが最終的に技術力を強化することにつながる、これはもうよく知られているところでございます。

 その観点から申しますと、大学改革というのは喫緊の課題でございまして、先ほど野依先生が指摘されました、若手、特に三十代の若手を独立の研究者として競争させる、あるいはリーダーとして彼らに研究費を配分する、これはもう極めて重要でございます。これをやらない限り、創造的な研究というのは出てこないというふうにむしろ言えるのではないだろうかと考えております。

 それを申し上げた上で、これについては四点、少しこの機会に申し上げさせていただきます。

 一つは、国際頭脳循環、これをもっと推進する必要があるということでございます。

 国際的な研究ネットワークに研究者が入っていくことが研究の質の向上にどのくらい貢献するか、資するかということについては、これはいろいろな研究の知見から判断して確実に言えることでございますが、例えば一橋に中馬先生という、非常にイノベーション研究ではすばらしい研究をしておられる先生がおられますけれども、この中馬さんの研究なんかを見ますと、例えば半導体研究においては、二十一世紀の最初、世界的な研究ネットワークのハブであった日本の研究者が、十年後には、アメリカでは彼らのライバルはますます大きなハブに成長しているのに対して、日本のそういう研究者は、結局どんどんマージナルなところに移っていっている、そういう研究もございます。

 ということで、ともかく国際的なネットワークにリンクしていくことが重要ですが、同時に、日本にも研究ネットワークのハブをつくることが私としては非常に重要ではないかというふうに考えております。これは既に、例えばWPIのようなもので現に実行されているところでございますけれども、ここではまだやれるところがある。

 それで、特に大学について申しますと、世界的な頭脳循環が非常に加速化する中で、優秀なポスドクあるいはテニュアトラックのアシスタントプロフェッサーのとり合いというのは、これは極めて競争が激化しております。

 ここで一つ、少し妙な例を挙げますと、例えば、アメリカ人で、アメリカに住んでいて、学部あるいは大学院でハーバードであるとかスタンフォードに行けるような人は、仮にiPS細胞の研究で研究者になりたいと思っても、一生、例えば京大には来ません。これはもうほぼ明らかに来ません。だけれども、そういう人が仮にハーバードないしスタンフォードでPhDを取って、ポスドクあるいはテニュアトラックのアシスタントプロフェッサーで山中先生のところで研究できる機会があるということになったら、これは相当の確率で来ます。

 ということは、別の言い方をしますと、今、恐らく日本がかなり勝てるチャンスのある大学間競争というのは、これは、学部、大学院以上に、ポスドク、それからテニュアトラックのアシスタントプロフェッサー、つまり若手研究者のレベルじゃないか。ここにかなり集中的な投資をし、頭脳循環の中にはめ込んでいけば、これは私は、日本の大学改革にとっても、日本の研究者コミュニティーのいわば質の向上にとっても、非常に大きな意味があるのではないだろうかと考えております。

 それから二番目は、これは既に、常に言われていることでございまして、また大学の学長がここに来て、大学交付金の削減はやめてくれ、そういうふうに言っていると受けとめられるかもしれませんが、非常に厳しくなっていることは事実でございます。

 それで、そろそろ教員の削減に手をつけないともうもたなくなっておりますが、仮にこれを一律にやりますと、日本の大学が押しなべて疲弊するということは、ぜひ頭に置いておいていただきたい。私は、別に大学交付金を全体としてふやしてくれとは申しませんが、もし削減するのでしたら、そろそろ傾斜配分を考える時期に入っているだろうというのが申し上げたいことでございます。

 それから三番目に、研究資金の配分方法の多様化ということをぜひ考えていただく、あるいは考える必要がある。

 現在、研究費の配分というのは、圧倒的に、プロポーザルに基づいて、評価者がおり、その上に選考委員会があって、ここで、誰に、どのチームに研究費を配分するかというのが決まる、そういうふうになっておりますけれども、この結果、一番当たる確率が高いのは、研究者コミュニティーの大勢が、これが、すばらしい研究だ、この方向に研究が進むんだということを考える、そういう研究テーマに資金は配分されがちである。つまり、ちょっとまた妙な比喩を使いますと、メダカの群れが向かう方向に私も向かいますと言うとお金がつくというのが、基本的には私はプロポーザル主義だろうと考えております。

 ここで一つ、これもまた妙な例を挙げますと、アメリカのMITに、かつてノーベル経済学賞をとりましたポール・サミュエルソンという非常に偉大な経済学者がおりました。彼がアメリカの例えばナショナル・サイエンス・ファウンデーションに出したプロポーザルというのは一行だったという伝説がございます。本当かどうかは知りませんが、一行だったと。つまり、ポール・サミュエルソンだったら、一行でも、この人は必ずいい仕事を出すということがわかっているので、かなりの研究費が彼には出た。

 つまり、何を申したいかと申しますと、日本にはJSPS、JST、NEDOといった研究資金の配分機関がございますけれども、こういう資金配分機関がプロポーザルに基づく配分、あるいは人に基づく、人を見た配分、あるいはプロジェクトを見た配分という形で、違う資金配分のやり方をする、それによって競争するということが重要ではないだろうか。当然のことながら、その中にハイリスク・ハイリターンの研究に対する資金配分ということも考えておくということでございます。

 それから、最後に一つ、研究費の問題で、私自身も少し苦労しておるということで申し上げておきますが、科研の基金化というのはすばらしいことですが、今年度から、調整金という形で少し、実際には制度の手直しが行われておりまして、その結果、大学では手続が煩雑になっております。私としては、これは本来の科研の基金化の趣旨に応じて、調整金ではなくて、基金化ということで進めていただきたいと考えております。

 それから最後に、もう時間がございませんので、PDCAとエビデンスに基づく政策研究についてはごく簡単に申し上げますけれども、これはもう当然のことですけれども、政策のデザインそれから政策の評価におきましては、エビデンスに基づいた政策立案、政策評価というのが必要であることは申し上げるまでもございません。

 例えば金融政策においては、大量の経済データを収集し、分析するというのが金融政策の基礎になっておりまして、これはもう日銀も含めてあらゆる中央銀行がやっていることでございますが、そういう大量のデータの収集と分析に基づく政策の立案というのは、まだ科学技術・イノベーション政策の分野では随分やることがあるだろう。

 つまり、具体的に申しますと、研究費の配分から論文の生産、科学的知見の活用からパテントの取得、起業から雇用まで、極めて大量のデータを収集し、分析する、これは、それほど大変なお金がかかるとは思いませんが、それでもお金がかかることは間違いございません。ですから、この分野に対する資金配分というのもやはり考えておかないと、いつまでたっても、エビデンスに基づく政策、つまりサイエンス・フォー・ポリシーというものが絵に描いた餅にとどまる可能性がある。

 それに関連して、最後に一つだけ申し上げたいと思いますが、国会の議事録を拝見しますと、この委員会では、最近、リニアコライダーについて随分議論があるように考えております。

 私がお願いしたいのは、その効果、つまり研究上の意義、経済効果、我々の生活にとっての意義、イノベーション上の意義、こういうものを、先ほど野依先生はヒトゲノムの投資がどのくらいさまざまの意味での効果を持ったかということをお話しされましたけれども、例えば、毎年四百億円、十年、これをリニアコライダーに投入するのか、再生医療に投入するのか、ロボティクスに投入するのか、それの効果というのはどうなるのか、こういうことを、国会として、日本のシンクタンク、必要であれば外国のシンクタンクとも協力しながら調査して、できる限り合理的なエビデンスの上に政策の決定ということを行う、そういう仕組みをぜひこの委員会としても考えていただければと思います。

 これで私の報告は終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

渡海委員長 白石参考人、ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

渡海委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 参考人に対する質疑は、理事会の協議に基づき、まず、各会派を代表する委員が順次質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は自席から着席のままで結構でございます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林史明君。

小林(史)委員 本日は、貴重な質問の機会をいただきました理事の皆様、委員の皆様に御礼を申し上げたいと思います。あわせて、両先生にも、当委員会に足をお運びいただきまして、本当にありがとうございます。

 座っての質疑ということでございますので、失礼をさせていただきます。

 私自身も、政治の道を志す前の大学時代は、実は物理化学を専攻しておりまして、科学技術には大変強い思い入れがございます。あわせて、これから私たちが生きる日本のことを考えれば、多くの社会課題を解決する可能性がこの科学技術にあるということも考えまして、科学技術の振興に向けて力を注いでいきたいというふうに考えております。

 そういった意味で、きょうは、せっかくお二人にお越しいただいておりますので、それぞれの専門分野からの御意見をいただきたいというふうに考えておりますが、まず一点目は、お話にもありました司令塔機能についてお伺いをしたいというふうに思っております。

 これから科学技術を振興していく上で、どういった分野が本当に伸びていくのか、これをしっかりと選択し、集中していく必要があると思っています。それは、社会課題に向けて科学技術の振興は大変必要でありますけれども、日本の財政を考えれば、全てにばらまくことはできません。そういった中で、この司令塔機能のメンバーはどういった方がいいのかというのを少しお伺いしたいというふうに思っております。

 というのが、先ほどの野依教授のお話で、NIHに対する懸念もありましたけれども、まず大切なのは情報の一元化であろうというふうに思います。

 こういった意味では、やはり、情報収集をできる能力のある方、もしくはその仕組みが絶対に必要不可欠だというふうに思いますが、それに加えて、資金をいかに運用していくのか、こういう投資のプロであったり、もしくは各専門分野に精通をした目ききのプロ、こういった方が必要なのではないかというふうに思います。

 こういったメンバー、私自身は、目ききプロ集団である必要があるというふうに思っておりますけれども、両先生はどのような方がよろしいというふうにお考えか、お教え願います。

野依参考人 今、小林議員がおっしゃったように、やはり司令塔は一元的に日本の科学技術の進むべき方向を策定しなければいけない。

 まず始めなければいけないことは、やはりインテリジェンスですね。世界に誇る情報収集機能、そしてそれを分析する必要があろうかと思います。

 分析するに当たっては、日本がよって立つ、生きていくために何が必要かということもやらなければいけないので、イギリスでこうやっている、アメリカでこうやっているからそれと同じことをやろうでは困るわけでありまして、社会の動向あるいは日本の国の国力の維持、そして繁栄のために考えていくということがございます。

 ですから、やはりシンクタンクを持たなければいけませんが、委員は限られた数だろうと思いますけれども、シンクタンクを活用するということで、さまざまな専門のシンクタンクの知恵を結集するということから始まらなければいけないと思います。

 インターネットで情報を集めるということだけでは全然不十分で、やはり本当のインテリジェンスを培っていくことが必要じゃないかと思います。そのためには、もう少し日本人が外へ出て、研究拠点にどのぐらい入っているかということが非常に大事だと思いますね。その点、やはり中国等に比べるとその力が弱いのではないかということを大変懸念しております。

 御承知のように、中国は毎年四千人以上の学生がアメリカで学位を取っている、博士を取っているんですね。ですから、学位を取るためには五、六年かかりますから、それがすごいネットワークになっている。日本はアメリカで学位を取るのが二百人ぐらいしかおりませんから、やはり非常に国際的なネットワークがということで、そういった意味でも、先ほど白石先生がおっしゃったように、ハブとなるようなものをつくっていかなきゃいけない。それは、日本の中にもつくらなきゃいけない、それから外にも展開していくことが必要じゃないかと思います。

 その上で、さまざまな分野のサブジェクトに関して、やはり、司令塔の中で立案し、そして実行案をつくっていくということが大事だろうと思います。さらに、どういうふうに科学技術の研究が実行されているかということ、これを目標管理する必要があろうかと思います。

 今までは、重要なサブジェクトを決めて、お金をそれぞれの分野に丸投げしていたような気配があります。丸投げすれば食い逃げされるわけでありまして、成果はなかなか得られないということで、そういったことで、情報の収集、分野の選択、それから実行、そしてそれの最後の取りまとめということまで一貫した行動が必要じゃないか、そんなふうに思っております。

 どなたを委員にするかということ、それからどこまでその活動を広げるかということは、やはり考えていかなきゃいけないんじゃないかと思います。

白石参考人 総合科学技術会議の議員というのは八名で、人数に限りがございまして、その構成をどうするかということは、これはその時々の政府のトップが決める、つまり総理がお決めになればいいことであって、何かそういう政治意思と無縁のところで構成が決まるべきだとは特に私としては考えておりません。

 ただ、こういうふうに人数に限りがございますので、例えば、イノベーションを行うに当たっての規制上の問題について非常によくわかっている人だとか、あるいはベンチャー投資について非常にわかっている人だとか、そういう人が入っておられることが望ましいといってもなかなか入れないというのが現実でございまして、それは、例えば専門調査会だとかあるいは戦略協議会だとか、そういうところでやはり担保していくしかないんだろうと思います。

 それからもう一つは、それに関連して、野依先生も言われたことですけれども、いろいろないわば本部がございます。これも理想論としては、確かに一本化すればいいんですけれども、恐らく現実としてはなかなかそれは難しい。

 私自身は、どちらかというと、メンバーが重複することで、つまり、こういういろいろな本部がインターロックすることで、一つの本部で行われた議論がほかの本部でも必ず受けとめられるような運用上の仕組みをつくるということが、とりあえずのところ、すぐにもできることではないだろうかというふうに考えております。

小林(史)委員 大変参考になる御意見、ありがとうございました。

 少し話はかわるんですが、今度はスーパーコンピューター、この開発について少しだけお伺いをしたいというふうに思います。

 当時、「京」が一位になりまして、今は四位になったということであります。これについてはもう予想されていることでありますから全く問題ないというふうに思っていますが、私自身、一つ御提言したいというかお伺いしたいのは、単純計算を競うという基準のもとでのスーパーコンピューターの世界での競争は、もうやめた方がいいんじゃないかなというふうに思っています。そういった意味で、日本から、基準の変更、こういったものを提言もしくは実現をするというのはいかがかなというふうに考えています。

 というのが、このスーパーコンピューターというのは、日本の社会課題解決のためにも大変重要ですけれども、世界にも大変重要なものだと思います。そういった意味では、ルールをつくり直して、世界が本当にあるべき方向に進む、このルールを日本から発信してつくるというのはいかがでしょうか。こういったところに御意見をいただきたいと思います。

野依参考人 スーパーコンピューターについては、もちろん計算機の速度を高めることも大事でありますけれども、今我が国にとって最も重要なことは、科学技術分野以外にも、社会全体にスーパーコンピューターを使い倒す環境と体制を整備することが一番大事だと思っております。そういうことによって、今まで生まれなかった日本独特の分野、技術、産業を開拓することによって、国力の増強、国益を生み出すことが大事だと思っております。ですから、リンパック性能を競うというのは余り意味のあることではないと思います。

 幸いにして、日本の今の「京」は、リンパックでは四位でありますけれども、現実にそれを活用する力、技術というのは圧倒的でございます。中国が一位になりましたけれども、あれは国威高揚のためにやっておりますし、アメリカの場合も、核兵器を中心とした軍備、軍事のためであって、民生ということ、あるいは一般の科学技術という意味では、日本が一番進んでいるというふうに自負しております。

 今後、世界的にそういうふうに進んでいくのであろうと思いますけれども、今おっしゃったリンパック尊重というのは、やはり改める必要があろうかと思います。私もそのとおりだと思っておりますので、専門家の方にアドバイスしてまいりたいと思っております。

渡海委員長 参考人にちょっとお願いを申し上げます。七会派ございまして、限られた時間でございますので、できるだけ端的にお答えをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 次に、古川元久君。

古川(元)委員 おはようございます。座ったまま失礼いたします。民主党の古川元久でございます。

 きょうは、参考人のお二人の先生方には、お忙しいところ当委員会においでいただき、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

 まず、お二人の参考人の先生方には、私ども、民主党政権時代、また、特に私、科学技術政策担当大臣時代大変お世話になりましたことを、改めてこの場をおかりして、心より感謝を申し上げます。

 きょうお二人の先生からお話を伺ったことは、私自身も担当大臣として経験をした中で同じ問題意識を共有しておりまして、要は、これをどう実行に移していくかということではないかなと思います。

 例えば、司令塔のお話が出ておりますけれども、これは私ども、何とか司令塔を一元化、強化したいということで、いろいろ紆余曲折ありましたけれども、私が大臣のときにもう法案を出せるところまで実は準備できて、去年の春にはあったんですが、国会が内閣委員会で審議をするということになって、内閣委員会というのは、今いろいろな法案が、当時もたくさんあって、前にある法案が成立する状況がまだ見通せないところで新しい法案を出しちゃだめだ、そういう国会対策上の事情から、結局、昨年の通常国会で法案を提出できなかったということがございまして、そこは一つ、私も本当に残念でならないところなんですけれども、そういう問題もあります。

 ですから、当委員会では法案審議とかを基本的にしないということになっているわけなんですが、今の科学技術が置かれている状況を見ますと、内閣委員会で、いろいろな、あれもこれもある委員会で、何かやろうと思えばやはりこれは法律をつくっていかなきゃいけないんですから、そういう中で、国会の、科学技術・イノベーション政策について議論する仕方がいいのかということは、これから検討していかなきゃいけないことではないかと思います。

 ほかのいろいろ分立している司令塔の話もございました。私も、何とかここの部分を改善したいと。IT担当大臣でもありましたし、知財担当大臣でもありました。私のところでは一つにまとまっても、それぞれ皆さん、有識者、専門家の方が違う、また事務局も違う。言ってくることが違うのをどうやって政務のところだけでまとめるのかといっても、やはりこれはある意味で多勢に無勢みたいなところもありますので。

 私の段階でも、先ほど白石先生からお話があったように、例えばITと知財の間で、事務局の方も併任をかけて、また、総合科学技術会議の事務局とも併任をかけて連携をとっていくとか、また、それぞれの委員を両方にかぶるような形へ持っていこうということは、私のときに指示も出して、そういう方向に進めていこうという一歩をつくったんです。

 しかし、これはそれぞれみんな法律に基づいてできているものですから、法改正などを行わないとやはり根本的な問題解決にならないということがありまして、そういった意味でも、この科学技術・イノベーションを、問題点はもうかなり明らかになっておりますので、それを前に進めていくためには、やはり国会における科学技術・イノベーション政策のあり方、議論の仕方、そして決め方についても工夫、改善が必要じゃないかなというふうに思っております。

 その上で、限られた時間でございますので、きょうは二点お話をお伺いしたいと思うんです。

 まず一点目は、科学技術顧問ともかかわる話なんですけれども、科学技術コミュニケーション人材をどう育成するか。

 このことは、科学技術政策、イノベーション政策を強力に推進していく、そういうことに予算とか何かも重点的に使っていくことに対する国民の皆さんの理解を得るためにも非常に重要なことだと思いますし、また、原発事故のときのさまざまな専門家の方々の言う言質がそれぞれみんな違って、一体誰を信用したらいいのかと。当時、一番信用できるのは、イギリス大使館のウエブページに出ていた、当時のイギリス政府の科学技術顧問のベディントンさんでしたか、私も二度ほどお目にかかりましたけれども、あの方が出したステートメントが一番信用できるというふうに言われていたような状況にあったわけであります。

 そういった意味では、私は、今までの日本の科学者の皆さん方とかが、もう少しやはり一般の方々にわかりやすい形で、そして信頼されるような形でのコミュニケーションを十分にとってきていたのかどうかということはやはり問われなければいけないと思っていまして、そのことができるような人材、これは必ずしも科学者ではないと思います。

 科学技術コミュニケーターという方に私も何人かお目にかかったりしましたけれども、やはり、難しいこと、専門的なことを一般の方々にわかりやすく言えるという、池上彰さんのような、科学技術の世界のそういう人材をどう養成していくかということは、科学技術・イノベーション政策を強力に推進する、国民の皆さんの理解を得るためにも極めて重要なことだというふうに考えます。この点について、お二人の先生方はどのようにお考えであるかということが一点お伺いしたいことであります。

 もう一点は、若手研究者の置かれている状況をどう改善していくかというところでございます。

 先ほど来から、若手研究者は非常に大事だというお話がございました。私も大臣時代に、意識的に、若手の研究者の皆さん方からざっくばらんに意見交換をさせていただく、先生方のような偉い先生には少しいていただかないで、若い人だけ出向いて率直な意見を言ってくださいというふうに言われると、三十代後半から四十代ぐらいの研究者の方々から出てきたのは、今、なかなか上の先生方がやめないでずっといて、自分たちはちっとも上に上がっていけない、一方で、下で入ってくる人たちが非常に少ないので、研究生活に入って十年、十五年たっても、雑用は残って、上にもなかなかなれないと。ですから、例えば海外なんかで今活躍をしている若い日本の研究者でも、戻ってきたくても戻るポストもなくて場所もないから、仕方なく海外でやっているような若い人も多いんです、そういう話を伺いました。

 そういった意味では、若手といいますか中堅の、本当にこれから成果を出していって、それを具体的に我々の生活の改善あるいは経済の成長につなげていく、そういうためには、特に、若手、中堅と言われるような人たちの待遇をどう改善していくかが極めて重要だと思うんですが、この二点について先生方の御意見をお伺いしたいと思います。

野依参考人 後のことから先に申し上げたいと思います。

 この問題は、一言で言えば、先ほども申し上げましたように、学校教育法九十二条を遵守することです。これは〇七年に改正が施行されておりますけれども、従来は、助教授、助手というのは、その上の教授の任務を助けるものだということになりましたけれども、改正されまして、教授、准教授、助教という体制になりまして、それは教育研究上独立であるというふうに法的に定められました。しかし、それが実行されていないということが実情であって、これを遵守していただきたいと私は思っております。

 世界標準では、大学におきましては、大学に雇用されている教員というのは全て独立しております。ところが、日本は、先ほど古川議員おっしゃったように、教授、准教授、助教というのがまだ縦に並んでいるわけですね。若い人にとって独立がないということでございます。これは法令違反ですから、ぜひ法令を遵守していただきたいということです。

 日本の場合には、家が先にありきということになっておりまして、三世代が一緒に住んでいるということは、かつて日本が非常に貧しかった場合にはワークしたシステムです。しかし、今や、三代がみんな独立してやるというのが世界標準になっている、こういうことでございます。

 議員おっしゃったように、それを実現するためには、研究費の問題、それから大学の事務組織の問題、さまざまなものがあって、そこを整備しなければいけない、こんなふうに思っております。

 科学コミュニケーターの問題に関しましては、今のところ方法はございませんけれども、各大学、各研究所、あるいは学会がやはりアドホックにそういう人を養成していくのが実際的じゃないかと思っております。

白石参考人 まず最初に、科学技術コミュニケーション人材の件ですけれども、これは、科学技術コミュニケーションの人材だけではなくて、実は、大学と国の研究機関、さらには総合科学技術会議、それから府省、こういうところをずっと往復運動するような、そういう科学技術・イノベーション人材の育成も含めて極めて重要だろうと思います。

 そのためには、やはり長期のキャリアパスをつくってあげないと、将来が見通せない職にはなかなか若い人も入ってきませんので、初めは小さくてもいいんですけれども、やはりポストをつくるというのが非常に重要だろうと考えております。それを単に国の研究所だけでつくるのではなくて大学でもつくる、あるいは総合科学技術会議の中にもそういうポストができる、こういうことが第一歩かなというふうに考えます。

 それから、二番目のポイントですが、一つ非常に重要なことは、現在、テニュアトラック制度、つまり、一種の試験雇用の制度、これはアメリカから導入されまして、かなり広がり始めております。例えば、私の大学は完全にこの制度でやっておりますし、ほかの大学でも、内容はともかく、形ではテニュアトラック制度というのが出ておりますが、実はこれが適用されるのはスタートアップの研究者だけで、言ってみれば若い人に適用されるだけで、実は、年齢あるいは世代で見ますと、非常にアンフェアになっている。

 仮に若い人たちにテニュアトラック制度を適用するのであれば、本来であれば、シニアの研究者の方には再審制を入れて、それでフェアにすべきであって、今、政府としては年俸制ということを議論されておられるようですけれども、なかなか難しいのはわかった上で申しますと、年俸制と同時に再審制も入れるというのが非常に重要なことだろう。

 ただし、その場合には、そんなことをしますと、年俸制に移行するインセンティブというのは極めて落ちますので、そこのところは、年俸制に移行して再審制のチャレンジも受けるということになるとその分給料は上がるとか、やはりそういう手当てを考えないとこれはなかなか進まない、非常に難しい問題だろうと思います。

古川(元)委員 ありがとうございました。

渡海委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会の伊東と申します。野依先生、白石先生、本日はよろしくお願いいたします。

 私は、実は、PLDD、パーキュテイニアス・レーザー・ディスク・ディコンプレッションという名前の経皮的椎間板レーザー減圧術、レーザーによる椎間板ヘルニアの治療というのをやっておりまして、この技術というのは一九八〇年代にアメリカとオーストリアから始まっているわけなんです。レーザー自体は、一九六〇年にアメリカのメイマンというのが初めて発振していますので、もう五十年ぐらいのそういった科学でございまして、実は先端でも何でもないわけなんですね。

 それで、今私がやっている技術というのは、自分で言うのもちょっと気恥ずかしい話なんですけれども、やはりたくみのわざであって、各個人の、職人のわざであるわけです。

 私は、現在五十歳になりまして、このままでは、このあれではこの普及はないということで、これをサイエンスにするために、大阪大学の臨床医工学融合研究教育センター、通称MEIというんですけれども、そこの招聘准教授として、いわゆる人の技術によらない機械のデバイスということを研究もして、発振器とかでも今工夫しているわけなんですけれども、その際に一つの壁にぶち当たっております。

 特に生命科学、医療の世界でもあると思うんですけれども、先端技術の研究の枠組みを考えていくときに、常に規制と推進のバランス、この適正なバランスがやはり求められまして、先ほど白石先生から、科学というのは共通通貨ということなんですけれども、同時に、科学というのは万国共通の言語でありますから、進歩が著しい技術であればあるほど、つまり、今の現時点でレーザーはもう古いあれですけれども、ここから新しいレーザーのデバイスとか新しい波長とかを考えていく場合、その捉え方には、必ずと言っていいほど、iPSでもそうなんですけれども、期待と不安、これが混在します。

 この際に、先ほど万国共通という話をお話ししましたけれども、社会、文化、そして国民性が反映されると思っております。その際に、我々政治家として、特定の制度のみにとらわれるわけでなくて、さまざまな制度というのを考えなければいけないと思います。規制だけでもだめですし、推進だけでもだめです。

 この場合の柔軟かつ適正な制度の構築を考える上で、いわゆるお二人の先生の科学の立場からアドバイス的なことをいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

野依参考人 大変難しい御質問ですけれども、科学技術をこれから進めていって、社会に恩恵をもたらしていくためには、やはり倫理の問題をしっかりと取り込んでいかなければいけないと思います。

 倫理の問題は文化に基づいておりますし、おっしゃったように国によって随分違うと思いますけれども、それでも倫理問題というのをしっかりと捉えて、ベネフィット、リスク、あるいは物質とそれから精神の問題をしっかりと捉えていく、そういう場がやはり必要じゃないか、そんなふうに、漠然としてでありますけれども、思っております。

白石参考人 日本には安全、安心という言葉がございまして、これは政府においてもよく使われる言葉でございますが、実は安全と安心というのは非常に違う意味合いの言葉でございます。

 安全というのは、リスクが統計的にどういうふうに分布しているのかということをある程度は評価できますけれども、安心というのは、一般には国民の皆さんがそれぞれどう思うかということでございますので、これについてなかなか、統計的分布だとか、この辺までやっておけば安心だとか、そういうことにはいかない。安全、安心というのは、政治的にどうしてこういう言葉が使われるかというのは、私は政治学を専門にしておりますのでよくわかりますが、同時に、政策にこれを翻訳するときには非常に実はトリッキーなんだということは、まず最初に申し上げておきたいと思います。

 つまり、何を申し上げたいかと申しますと、リスクというのは決してゼロか一ではありません。つまり、安全か安全でないかではなくて、リスクというのは常に、その中で、ある時点で時間をとりますと統計的な分布がございます。それでどこまでリスクをとるかというのは、科学的には決まらなくて政治的に決まる、政府の政策として決まる話でございますので、ここのところはまさに先生方の仕事になってくるというふうに私は考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 加えて、いわゆるグローバルスタンダードなことを考えますと、やはりこういった科学技術のイノベーションというのは、まさに国際社会に対して勝ち抜いていかなければならないというところです。

 もちろん、さまざまな問題が日本にもある、我が国にもあるとは思うんですけれども、その中で、例えばアメリカにしても、欧米、ヨーロッパにしても、日本との最大の違いは、ある程度はいわゆる国の予算というのはついていますし、分野によってはほぼ海外と同列のところも現在あるんですね。では、そこで何が違うかというと、産官学というところで考えると、官民で考えると、民のファンドだと思うんですね。

 つまりは、民間からのファンドにおいても、ドネーションにおいても、もしくはベンチャー企業においても、要するに日本はその点でこれからの国だと思っているんですね。これからの国というのは、逆に、アメリカ、欧米に比べてやはりかなり負けている気がするんですけれども、このあたりの産官学一体の取り組みに関して、お二人の先生の御意見をお伺いできればと思います。

野依参考人 今おっしゃったように、日本全体、科学技術に対する投資はそんなに少なくないんですね。問題は、産が八〇%、官が二〇%、それぞれ、それが別に使われている、民の金は民の中で、官の金は官の中でしか使われていないということですね。

 やはりこれからイノベーションを生み出し、そして科学技術が社会に実装されるためには、そこのところがまじらなければいけないと思うんですね。その仕組みをやはりつくらなければいけない。仕組みをつくるということは、社会総ぐるみで研究開発をしていかなきゃいけないという認識、ここを醸成していくことが必要じゃないかと思っております。

白石参考人 例えばスタンフォード大学、これは別に私の研究じゃございませんが、ある非常にすばらしい研究者のスタンフォード大学についての研究を見ますと、スタンフォード大学の例えばライフサイエンスの基礎医学研究の現場にベンチャーキャピタリストが既に来ている、それもたまに来るんじゃなくてほとんど常にいる、あるいは知財の専門家が常にいる、そういうのがもうごく当たり前のことになっていて、それで、そういう人たちが常に研究者とインタラクションを起こしながら、研究が進むと同時にそのさまざまのビジネス上の意義というのももう検討される。そういう仕組みがどうもできているようでございます。

 ということは、別の言い方をしますと、さまざまのネットワークが研究の現場にもう既にできているということで、やはり、そういう仕組みを日本としても推進していく、そこにインセンティブをつけていくということが必要なんだろうと思います。

伊東(信)委員 残念ながら時間となってしまいましたので、終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

渡海委員長 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 公明党の伊佐進一でございます。

 本日は、このような機会をいただきましてありがとうございます。また、野依先生、白石先生、このお忙しい中でお越しいただきましてありがとうございます。

 私は、当時の科学技術庁に入庁いたしまして、これまで十五年間ずっとこの文部科学省の中で科学技術・イノベーション政策というものを行ってまいりました。その中で実はずうっと悔しい思いをしていたことがありまして、何かといいますと、科学技術・イノベーションというのはこれは票にならない、そしてまた強い、強力な政治団体が存在しないという状況の中で、政治家の先生方が科学技術・イノベーションに興味を持っていただいて、また推進していただくという方は非常に限られておりました。逆に限られていた分、余計、こういった先生方は本当に強烈な熱意で科学技術政策というのを推し進めていただいたというのも事実でございます。

 ところが、今、もう時代は、安倍総理の方から世界で最もイノベーションに適した国をつくるんだというようなイニシアチブを示していただいて、まさしく、この日本を再生する成長戦略の一丁目一番地に科学技術・イノベーションというのを置いていただいているという状況で、これは十五年前と比べて本当に隔世の感があるなと私自身も思っております。また、こうした本当に熱心な特別委員会の委員の皆様、先生方にもこうして科学技術の推進に御尽力いただいておりますこと、私がこの席でこの立場で申し上げるのは変なんですけれども、心より御礼を申し上げたいと思います。

 こうした日本の科学技術・イノベーション政策、イノベーションに対する思い、この機運の盛り上がりとは全く裏腹に、今の日本の科学技術・イノベーションはどういう状況かといいますと、ますますもって悲惨な状況にある。これは、皆さん、この委員の方々も共有されている認識だと思います。

 私は、これまで三年間北京に住んだことがありまして、大使館の方で中国の科学技術・イノベーションというのを見てきました。現場に入って、研究所に行って、企業に行って、いろいろな方々と意見交換をして、中国の科学技術というものが今どういう状況にあって、どういう可能性がこれからあるだろうというようなことをこれまで調査をしてまいりまして、そして、帰国した後には一冊書籍も出版させていただきました。

 その中で結局私が感じたことは何かといいますと、中国のトップレベル、中国は余り平均をとっても意味がありませんから、このトップレベルの中国がどういったレベルにあるかというと、恐らくもう分野においては日本を凌駕しつつあるなと。これは私の二〇一〇年の結論です。これから時間はたっています、恐らく今では凌駕してしまった分野というのもあるんじゃないかと思っております。

 これはもう例を挙げればたくさんありますが、例えば宇宙の分野でいいますと、有人宇宙飛行、宇宙空間に人を送れる技術、これを持っているのは世界で三つだけ、アメリカとロシアとそして中国です。日本はあくまで依存しているだけです。あるいは、人材の観点にしましても、これは私は書籍にも書かせていただきましたが、アメリカで博士課程、博士号を取得される方の出身大学、このランキングを見ると、一位は実はアメリカの大学じゃなくて清華大学、そして二位が北京大学、三位にやっとUCバークレーが来て、四位はまた中国の科学技術大学なんです。日本はどうなっているかというと、ずうっとランクが下がって、ようやく出てくるのが東京大学、四百二十五位です。こういう状況です。

 これまで日本のこの成長を引っ張ってきた技術力とかあるいは人材力とかこうしたもの、これは、今どんどんどんどん追い上げられて、抜かされようとしている状況の中で、またいろいろな課題が出てきている中で、少なくとも、私がいた十五年間は何ら有効なシステム改革が行われなかった。言い切ってしまっては失礼かもしれませんが、少なくとも、努力はしたけれども微修正しか行われてこなかったんです。

 ところが、今、総理がイニシアチブを発揮していただいて、またこうしてたくさんの議員の方々で一緒に新しい科学技術をつくっていこうという機運があること、本当にうれしく思います。

 済みません、前置きが非常に長くなりました。この十分間の質疑の時間でこれだけ前置きが長いのはなぜかといいますと、実は、質問したいのは一問だけでして、これまで前職において本当に野依先生また白石先生にはさまざま御指導を賜ってまいりましたので、きょうは一問だけどうしても質問したいことをお話しさせていただきます。

 それは、科学技術顧問についてなんです。恐らく、白石先生、科学技術顧問のお話をされたと思うんですが、ちょうどその時間、私は違うところで質問しておりまして、失礼させていただきました。

 科学技術顧問については、まず、我々公明党、四月の十一日、我が党から政府に対して申し入れをしました。この提言の中でどう申し上げたかといいますと、科学技術顧問を法律上位置づけて官邸に配置すべきだと提言しました。同じように、自民党から政府の提言には、科学技術顧問の設置を検討すべきだとあります。結果、今月策定された政府の科学技術イノベーション総合戦略、ここでどう書かれたかといいますと、科学技術顧問の重要性も指摘されているが、今後の検討課題、大分トーンが落ちました。

 これは何でこういうふうになるか、この原因は何かというと、私は、この科学技術顧問に対するイメージが、実は、皆ばらばらなんだと思うんです。

 例えば、我々公明党は、科学技術顧問についてはこう書いています。総理に科学的助言を行う科学技術顧問。科学的助言、いわゆる、白石先生のおっしゃるサイエンス・フォー・ポリシー、ポリシーのためのサイエンスだという色彩を色濃く出しております。

 自民党はどうかというと、自民党の場合は、総理大臣等に対して科学技術・イノベーション政策に関する助言等を行う科学技術顧問なんです。つまり、政策、どちらかといえばポリシー・フォー・サイエンス、これが科学技術顧問の位置づけです。

 政府の報告書はどうなっているかというと、総理大臣等に対して科学技術・イノベーションに関する助言等を行う、科学技術・イノベーション全体に関する助言を行う科学技術顧問。どちらかといえば自民党の提言に近いものになっております。

 今回、科学技術を担当される山本大臣がどうかといいますと、過日の国会答弁あるいは記者会見において言及をされています。科学技術顧問というのを、アメリカの科学技術補佐官というのを引き合いに出される。アメリカの科学技術補佐官というのは、ナショナル・セキュリティー・カウンシルにおいて各省庁を束ねる非常に強力な権限があって、また政治力があるわけです。いわゆる政治家的な側面が強い、こういうものだというふうに恐らく山本大臣の認識ではある、それであれば、恐らくかなりハードルは高いんだろうと思います。

 この科学技術顧問一つとっても、恐らくそれぞれがそれぞれの口から出るたびに、皆さん、実は定義が違うわけなんです。これが、なかなかこの顧問が実現しない一つの理由だと思います。そういった意味で、野依先生、白石先生から、どういった科学技術顧問というのが、今の官邸に、あるいは日本の政府に必要なのかという点について、質問を一問だけさせていただければと思います。

白石参考人 今指摘されたこと、ほぼ私と同じ、私もそういうふうに考えております。先ほど申し上げましたことですが、私は、科学技術顧問というのは、まず第一に、安全保障政策、防衛政策から環境政策、科学技術・イノベーション政策まで、その科学的意義について総理にアドバイスする、これが第一の役割。それから第二番目に、さまざまの政策、これも安全保障政策でも科学技術・イノベーション政策でも構いませんが、そういうさまざまの政策が長期的に科学技術の発展にどういう意味があるかということを総理にアドバイスする。この二つについて総理を補佐するのが科学技術顧問の役割だというふうに考えております。

 一言で申しますと、つまり、サイエンスアドバイザーというのは、サイエンス・フォー・ポリシーを任務とする、これが一番すっきりして、しかも、総合科学技術会議との分業あるいは役割分担も明快であろうというふうに考えております。

野依参考人 ポリシー・フォー・サイエンスとサイエンス・フォー・ポリシー、これはもう連動、表裏一体のものですから、極端にどっちかということは言い切れないと思います。

 しかし、サイエンスアドバイザーの役割というのは、第一義にはやはりサイエンス・フォー・ポリシーじゃないかと思います。

伊佐委員 どうもありがとうございました。

 以上で終わります。

渡海委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 大学の大先輩であります野依先生にまずお伺いをしたいと思います。みんなの党の井坂信彦です。

 実は、先生が幼少期を過ごしておられた六甲に今住んでおりまして、本日は、客観的事実、科学的根拠に基づいた政策立案と予算配分ということについてお伺いをしたいと思います。

 実は、先月の委員会でも大臣に対して、総合科学技術会議の、大臣は五百億円ぐらい予算をとってやりたいんだとおっしゃっていたことに対して、総合科学技術会議が独自の何か研究プロジェクトをやるのももちろんいいんですが、そうではなくて、政策立案の技術、政策選定、予算配分の技術にもこの独自予算を使ってはどうでしょうかということを質問を申し上げたところです。

 野依先生が本日の御説明の中で、この科学技術予算というのは、基礎研究はROI、投資に対してリターンというものがあるんだというふうにおっしゃっております。

 私も、この科学技術予算というのはベンチャー投資に近いものではないかというふうに捉えているわけです。イノベーションの測定をきっちりと行って、そしてエビデンス、客観的事実に基づく投資というものができないかなというふうに考えております。

 野依先生の御著書を読ませていただきました。タイトルが「事実は真実の敵なり」というものであります。

 ここでお伺いをしたいのですが、客観的事実、エビデンスをどうはかるかということが科学技術政策においては非常に難しく、そして非常に重要だというふうに考えております。これはエビデンスのはかり方が、例えば、もう極端な話、お金の面、金銭面だけに非常に狭く偏ってしまったり、あるいは短期的な成果だけを求め過ぎれば、当然これは、先生のおっしゃるところの、真実ではなくて目先の事実をはかっているにすぎないということになってしまいます。

 お伺いをいたしますが、基礎科学研究の、先生のおっしゃるところの真実の方をあぶり出すエビデンスのはかり方、その方向性ですとか工夫について、何か御示唆をいただければと思います。

野依参考人 エビデンスというと、計数化できる、定量化できることばかりが取り上げられますけれども、数量化できることは、定量化できることはごくわずかだと思います。もう少しやはり総合的にインパクトというのを考えなければいけないと思います。

 アメリカのNSF等に関しても、今までは、研究成果を定量的にはかるということばかりやっておりましたけれども、最近では、もっとブロードなインパクトをやはりはからなければいけないということです。

 NSFの研究費申請につきましても、二つのことを言わなければいけない。一つはサイエンスメリット、もう一つはブローダーインパクトということで、社会への影響も書き記さなければいけないということになっております。後者については、必ずしも定量化、計数化できないし、極めて主観的な面もあろうかと思いますけれども、その両方が大事であると思います。

 エビデンスベースト何とかというときに、やはりそれが非常に狭い範囲に限られてくることを私は恐れている次第です。

井坂委員 ありがとうございます。

 同じ問題を白石先生にもお伺いをしたいと思うのですが、先生も、この本日の資料の一番下で、PDCA、そしてエビデンスに基づく政策研究ということをおっしゃっております。一方で、大学交付金は一律削減ではなくて、せめて傾斜配分を、あるいは、研究資金も人を見て配分をするようなことがあってもよいのではないかというふうに本日おっしゃったわけですが、例えばこの大学交付金や研究資金について、具体的なこういう配分ルール、エビデンスに基づいた配分ルールというものについて、一般論をさらに超えて白石先生の特にオリジナルな部分、特にこういう工夫があり得るんじゃないかとか、そういうことがありましたら、ぜひ教えていただきたいと思います。

白石参考人 必ずしも直接今の質問にお答えすることにならないかもしれませんが、常々私が考えている大学の競争ということについて申し上げます。

 最近あるいは近年、大学の世界的なランキングということに対して非常に社会的関心が高まっておりますが、学部の学生がどの大学に行こうかということを考える上では、こういう大学ランキングというのは非常に有用だろう。だけれども、政府が、例えば大学交付金のような形で資源配分するときに、この大学ランキングというのが果たしてどのくらい有用かということになりますと、私は甚だ疑問だろうと。

 私はアメリカのコーネル大学というところで十年間教えましたけれども、そのときは、例えば私の属しておりました学科の中で、これは学科の中に幾つもの、いわば違うグループがございます。例えば私は東南アジア研究というグループに属しておりましたけれども、ほかにも、例えばアメリカ外交政策だとか公共政策、いろいろなグループがございます。それぞれのグループがアメリカの中でどのくらいのランクにいるかということは、これはアメリカではデータがございます。

 したがいまして、例えば東南アジアグループというのは、これはアメリカでトップでございましたので、我々が言ったことというのは、大体大学当局は常に聞いてくれた。だけれども、余り競争力のない、例えば全米で二十位なんというところにつけているグループですと、もうテニュアを取った人がやめてしまうと、その後の後任人事もさせてくれないということで、大学が、全米全体の中で大学のそれぞれの部分がどのくらいのところに位置しているかということを常に見ながら大学としての資源配分をやっております。

 そういうものが日本の中では残念ながらございません。そういうものをつくるだけでも、例えば大学改革というのは相当進むのではないだろうかというふうに考えております。

井坂委員 ありがとうございます。

 最後に、野依先生にもう一点お伺いをしたいと思います。科学技術政策の大枠を決める際に、どのように国民の声をそこに織り込んでいくかというテーマであります。

 現状は、科学技術基本計画策定の際にパブリックコメントが行われておりますが、本日、先生の御説明の中で、研究教育界は国民と再契約をしたらよいのではないかということをおっしゃっておりました。国民の声を科学技術政策にどう織り込んでいくのかということについて御所見を伺います。

野依参考人 これは、いろいろなセクターがあって、それぞれやはり違う価値観でやっていると思います。ですから、大学の場合には、やはり先生方個人の内在的動機といいますか、それに導かれた研究を個人の責任で精いっぱいやっていただく、こういうことが大事だと思っております。

 一方で、私が属する理研のような公的な研究開発機関は、これは国の戦略に従ってやはりやらなきゃいけないわけで、その戦略をどういうふうに決めるかということについては、先ほどからございます総合科学技術会議であるとか、あるいはほかの重要な会議で決めていただくことになろうかと思います。

 そういったことで、それぞれ、その場合には、総合科学技術会議がどういうふうに政策を決定するかということが大事になろうかと思います。そのときに、やはりいろいろな形での社会とのダイアローグが必要になろうかと思っております。一方的ではだめであって、双方向の会話の場をいろいろなところで設定していくことが大事だろうと思います。そこで会話が十分に行われれば自然としかるべき方向に政策が決定されるんじゃないか、こんなふうに思っております。

井坂委員 時間が参りましたので、以上で終わりにいたします。どうもありがとうございました。

渡海委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志でございます。

 本日は、野依参考人そして白石参考人、両先生には大変ありがとうございます。

 先ほどのお話をお伺いしておりまして、両先生とも、若手や女性研究者の活躍の場を広げることの大切さにお触れになりました。

 私も若手研究者とお話をする機会がありますけれども、やはりなかなか、任期つきの職が多いとか、あるいは収入、将来への不安ということもたくさんの方々から出されます。

 京大の山中先生が、iPS研究所の研究員でさえ九割が有期であるというふうにおっしゃっているということも有名な話でありますし、先日、当委員会で国立環境研究所の視察に参りまして、メダカやミジンコに対する環境ホルモンの影響ということを研究している、そういうパートを視察しましたけれども、少し聞きましたら、十二人でやっている仕事のうち正規の研究員は二人である、あとはそれ以外から来ていただいているパートなども含めてやっているんだ、こういう状況ですね。

 それで、しっかりとそうした若手研究者、女性研究者が活躍の場を広げていくために、さまざま御議論もありましたけれども、やはり身分の安定といいますか、そういうことも非常に大事かと思っておるわけでありますけれども、両先生の御意見をまずお伺いしたいと思っております。

野依参考人 私は、若い人、女性、外国籍であればいいということを申し上げているんではないので、前に優秀なというのが大事だろうと思って、そういった優秀な人をどういうふうに同定していくかということが大事だろうと思っておりまして、初めからそういった人に全て永住権を与えるというのは私はよくないと思っております。

 全部任期制でもよくないし、全部定年制でもよくない。その両方をあわせてうまく運用していくということが、日本の科学技術あるいは高等教育をうまく円滑に運営していくことが大事だろうと思っております。

 ですから、それをどういうふうにミックスするかということを先ほど白石先生もおっしゃったわけですけれども、それはテニュアトラック制だろうと思います。若い人は全て、ある意味で任期制で五年なり七年なりです。そこでその評価をした上で、初めて終身雇用、定年まで雇用する、それをやる前にテニュアトラック制を全国広く導入するということが大事であって、特定の大学、特定の研究所だけでそれを適用しても動かないわけですね。全国的にそれを適用することによって、適材適所、そしてできる人はどこかの大学あるいは研究所に職を得る、こういうシステムが私は大事だろうと思っております。

白石参考人 私も野依先生と同感でございまして、若手、女性、外国人の研究者の登用というのは非常に重要ですけれども、これはあくまで優秀なという言葉がつくことは間違いございません。

 その上で申しますと、世界、特にアメリカ、欧州での長期的な傾向から申しますと、アメリカの場合には定年もないわけですけれども、身分を保障して長期にわたって雇用するというよりは、六年ないし七年くらいでの有期の契約になって、業績がある人については契約が継続される、それで六年なら六年でずっと回していくということがどうも趨勢になっておりまして、例えば、十年後にまたこういう議論があったら、日本ではそろそろそういうのをやったらいいんじゃないかみたいな議論になっているんじゃないかなと、実は正直なところ思った次第でございます。

 もちろん、それは同時に、そういうそれだけのリスクをとるわけですから、それに見合うだけの報酬は当然なきゃいけなくて、せっかくの機会ですので申し上げさせていただきますと、その意味で申しますと、昨年の公務員給与の引き下げというのは少なくとも大学の外国人にとっては非常に大きなショックだった。私の大学は極めて小さい大学ですが、外国人の先生が十五人おりまして、そのうち二人がこの半年でやめました。ですから、よくよくこの問題は考えていただきたいと思います。

宮本委員 ありがとうございます。

 確かに、任期をどうするかという問題もあるんですけれども、私が話を聞いている若手の方々でいうと、本当に暮らしもなかなか成り立たないような低賃金という状況がやはりあるわけですよね。

 大学の先生が、学生が博士課程の大学院に進学したいと言うと、家はお金持ちか、あるいは結婚する何か資産家の配偶者の予定はあるか、こう聞いて、それがなければ諦めるべきだ、こう言うという笑い話があるぐらい、今本当に学問に打ち込もうと思えばそういう非常につらく厳しい時代を覚悟しなきゃならない。これではやはりなかなかですね。

 優秀なとおっしゃるのはよくわかるんですけれども、あらかじめ優秀ということが明らかであればいいんですけれども、そういう意味では、優秀な方というのがいつ大器晩成していくかというのはわからないわけですから、その点では、非常にこの点は大事な問題だと思っております。

 もう一つなんですけれども、実は、総務省が昨年十二月発表した科学技術研究調査結果の概要というものを見ますと、これはもうさまざまな形で、各省庁さまざまにまたがって出されている国や地方公共団体の科学技術研究費なんですけれども、これがやはり減っているんですよ、この十年間で。平成十四年で三兆四千五百二十七億円だったものが、二十三年度には三兆二千三百二十六億円へ、これは六・四%の減となっております。

 つまり、まあそれは民間の資金とか外国の資金とかいろいろあるんですけれども、そもそも国や地方公共団体の科学技術研究費の支出が減っているというのは極めてゆゆしきことだと私は思うんですが、この点、両先生からお話をお伺いして、私の質問時間が参りましたので、終わりたいと思います。

野依参考人 大変ゆゆしき問題だと思っておりまして、ぜひ増強をお願いしたいと思っております。

 それと、先ほども申し上げましたように、それをどういうふうにすれば一番有効に使えるかということも研究現場の方でやはり考えていく必要があろうかと思います。今までどおりの使い方をしていれば、仮に減らなくてもぐあいが悪いわけですから、やはり、その両方が、先ほど申し上げたように、要するに、研究投資が本当の投資として生きるかどうかということを投資する側もそれからその投資を受ける側も考えていく必要があろうかと思います。使い勝手をどうするかということですね。

白石参考人 研究費の減少は、今、野依先生もおっしゃられましたけれども、ゆゆしき問題だというふうに考えております。

 私が申し上げたいことは、先ほど先生は、若い人に相談されたら金持ちかと聞く、笑い話みたいな話だと。これは笑い話じゃございません。私は常に学生にはこういうアドバイスをして、よっぽど、見ておりましてこの人はもう間違いなく伸びるという、自分に自信がなければやめた方がいいというふうにアドバイスします。

 それを考える上で非常に重要なことは、博士課程以上の学生には十分なフェローシップはやはり提供すべきだ。博士課程の学生は学生なんだからというふうに考えている限り、私はやはり、本当に行ってほしいような人というのは博士課程に行かないのではないかというふうに思います。

野依参考人 日本以外の国では、実験系の大学院の学生は全部生活費を支給されております。

 大学院の学生というのは二面性がありまして、一つは被教育者であるということ。これは授業料を払わなきゃいけない。これは奨学金でコンペンセートされるべきだろうと思います。それから同時に、大学院の学生というのは教授なり助教の研究を助けているわけですから、それに対してやはり対価は当然払わなければいけないということでございまして、ざっくり言いますと、一月に二十万円、一年間で二百万円から二百四十万円ぐらいの支給があって当然だろうと思います。

宮本委員 ありがとうございました。終わります。

渡海委員長 次に、青木愛君。

青木委員 本日は、貴重なお話をいただきまして、大変ありがとうございました。生活の党の青木でございます。

 何点か御質問をさせていただきますが、まずは野依先生にお伺いをしたいと思います。

 先ほどもお話の中に出ておりました、野依先生の幹といいますか、第四期科学技術基本計画というものが幹にあるんだろうというふうに拝察をいたしますが、五月十四日に発表された自民党の政務調査会の科学技術・イノベーション戦略調査会の中の我が国の研究開発力強化に関する提言、中間報告ということでございますが、これの内容を超党派でも推進すべきだというお話をいただいておるんですけれども、なかなか、野党におりますと、この中身がどういうものなのかというのをうかがい知ることができないのですが、超党派でもこれを推進すべきだという自民党政務調査会のこの中間報告の中身をもし教えていただければ助かるのですけれども。

野依参考人 いや、それは私がお配りするものではなくて。

渡海委員長 私は、現在、委員長の立場でございますので、これは、そうしますと、三原筆頭に宿題としてお願いをさせていただいて、もし可能でしたら、要点を少しお話を。参考人はよく御存じだと思いますので。

野依参考人 これは十六ページぐらいあるんですが、よろしゅうございますか。

渡海委員長 限られた時間ですから、では、改めてお持ちしましょうか。

 それでは、当委員会ではそのように取り扱いたいと思います。

青木委員 よろしくお願いいたします。

 野依先生は、さまざまな御発言力も大変重いものがあろうかと伺っておりますけれども、率直に言って、どういった研究分野、どういう分野を今後開拓すべきだと野依先生は今お考えになっておられますでしょうか。

野依参考人 科学技術が何のためにあるのかということにやはりさかのぼらなければいけないと思っております。

 昔は、科学技術というのは、軍事と申しますか、安全保障あるいは平和維持のためにあったと思います、西欧では。最近は、経済成長のために非常に大きな貢献があったと思います。しかし、こういった傾向は今後とも続くと思いますけれども、これからは間違いなく、やはり、人類の生存、存続のために貢献する科学技術をつくっていかなければいけないと思います。その方向に日本も進まなければいけない、貢献しなければいけない。

 具体的に何をしなければいけないかといいますと、これは前の国連の総長であったコフィ・アナンが言っていることですけれども、水、エネルギー、ヘルス、健康医療ですね、アグリカルチャー、食料ですね、それからバイオダイバーシティー、生物多様性、そして貧困の解決、このために科学技術は進むべきだということでございます。

 もちろん、これは日本の国内だけでできることでもありませんし、科学技術だけでできることではありませんけれども、これが新しい科学技術の進む道だろうと思っております。

青木委員 ありがとうございます。

 そうしますと、野依先生のさまざまな講演の記事など、資料等を拝見しますと、新しい社会的な価値の創出が大事だというふうにおっしゃられていまして、全米工学アカデミーのフォーラムでも、今一番大事なのは、教育された国民を最大限に確保し、多くの人々が価値を創造できるよう、自由と資金を与えることだという記述も拝見をいたしました。

 これからどう生存していくかというお話もあったんですけれども、オバマ大統領が二〇一四年の予算の中でクリーンエネルギーにも重点を置かれたという資料も拝見をいたしまして、この場では恐縮ですけれども、今課題になっています原発についてどんなふうにお考えかというのは、これもまた新しい価値の創造のきっかけになるのではないかというふうにも思うのですけれども、そのあたり、お伺いできれば、よろしくお願いいたします。

野依参考人 原発の問題は、たくさん政治的な問題も含んでおりまして、私が個人的に答えられることは限られております。

 しかし、いずれにしましても、電力というのは、今人間が生きていく上で一番大切なもので、これを何とか確保しなければいけない。先ほど二十のイノベーションシステムを申し上げたけれども、一番トップにあるわけですね。ですから、これがなければ現代文明は成り立たないということです。

 そのためにどうするかということでありますけれども、もちろん、原子力発電が理想的だとは申しかねますけれども、しばらくはつなぎで、やはり使っていく必要はあろうかと思います。そのために、安全について、やはり最大限の努力を払わなきゃいけない。そして、軽減していくならば、新しい再生エネルギー等、本気でやるという覚悟を、国、国民が持たなければいけないんじゃないか。そこには、人材の養成、そして資金の投入、こういうことがあろうかと思います。そういうことがセットになって、新しいエネルギーをつくっていくことが初めてできるかもしれない、そういうことだろうと思っております。

青木委員 ありがとうございます。大変貴重な御意見をいただいたと思っております。

 本当に、新しいエネルギーにかえていくという、国としての、国民としての覚悟といいますか、そこがまず第一にあって、そういう方針を定めていければこれにこしたことはないなと、私も現段階では思っているところでございます。

 最後に一問、白石先生にお伺いをさせていただきたいと思います。

 先ほどリニアコライダーのお話に触れられまして、私も何度か質問の方に取り上げさせていただいております。さまざまな効果はそれぞれから指摘をされているところでございますが、やはり日本に希望と活力を与えるまさに第三の矢の象徴的な役割を果たすのではないか、その予算もめり張りを持ってつけるべきではないかというふうに思っておるのでございます。

 白石先生として、リニアコライダーの誘致ということについてどのようなスタンスでいらっしゃるのかということをお伺いしたいのと、先ほど、国会としてのもっと合理的な調査が必要ではないかというふうなお話もありましたので、ちょっとその辺も含めてお伺いできればというふうに思います。よろしくお願いいたします。

白石参考人 経済学に、オポチュニティーコスト、機会費用という考え方がございまして、例えばリニアコライダーは、現在のエスティメートで見ますと八千億円くらいで、仮に日本に誘致するとすれば四千億円くらい日本政府が負担する、そういうプロジェクトだと理解しておりますけれども、機会費用の考え方を使いますと、この四千億円をリニアコライダーに投資するのがいいのか、投資すればそのときの経済的効果は例えばどれだけあるのか、再生医療に投資すればどのくらい効果があるのか、あるいは粒子線治療に投資すればどのくらいの効果があるのか。これを、幾つかのグループに試算させてみるというくらいのことをやれば、それだけでも随分、政策決定者にとっては参考になるんじゃないかと。

 そういうことを、特に大型のプロジェクトについては調査するような機関、これはアメリカの場合にはコングレショナル・リサーチ・サービスというのがございますので、そういうものをぜひこういう機会につくることを考えていただければどうでしょうかというのが実は私が申し上げたかったことで、リニアコライダーについては、ぜひこのオポチュニティーコストという考え方を入れていただきたいということでございます。

青木委員 大変よくわかりました。具体的なアドバイスをありがとうございました。終わらせていただきます。

渡海委員長 以上で各会派を代表する委員の質疑は終わりました。

 これより自由質疑を行います。

 この際、委員各位に申し上げます。

 質疑のある委員は、お手元のネームプレートをお立ていただき、必ず委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。発言が終わりましたら、ネームプレートをお戻しください。また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べください。

 なお、理事会の協議によりまして、一回の発言、質疑時間は三分以内となっておりますので、委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 それでは、質疑のある方はネームプレートをお立てください。

山田(賢)委員 自由民主党の山田賢司です。

 日本の科学技術の水準の向上ということなんですけれども、日本の科学技術の向上というとき、日本の大学とか研究機関のレベルのアップなのか、日本人の研究者のレベルアップなのか。これは恐らくは両方なんだと思うんですけれども、日本の大学ですとか研究機関の向上であれば、先ほど先生方がおっしゃられたような年俸制をとるとか優秀な者を引っ張ってくることだと思うんですけれども、日本人の研究者のレベルアップをするんだったら、日本の大学に年俸制を入れなくたって、海外の優秀なところへどんどん送り込めばいいのか、そういうふうな気もするんです。

 では、実際に、日本の優秀な研究者の方がどんどん海外に行っているかというと、必ずしもそうではない。ということは、やはり、ぬるま湯と言ったら怒られるんですけれども、この居心地のいい環境がむしろ日本の研究者にとっては合っているのかな、こういう気もするんですね。

 本当の最先端のトップの研究者を呼んでくるのは、本当に高額な報酬を払って、年俸制をやってでも引っ張ってくればいいと思うんですけれども、むしろ重要なのは、先ほどどなたか先生もおっしゃられたように、一番下のレベル、裾野の部分で、よっぽど優秀な人とかでないと博士課程を目指すべきじゃないとか言っている、これよりももっと、普通の学生でもっと勉強したいなという人が大学院に行って博士課程に行ってもやっていける、博士課程、研究しながら生活もしていけるということで、レベルアップをする。この二本立て、トップを引っ張る人間と、底上げをする、この二つが必要ではないかな、そういうふうに考えております。

 私は、分野が違うんですけれども、金融機関におったんですけれども、銀行も同じで、優秀な者はどんどん外資に行くかというと、それだけ会社に文句があるんやったらやめたらええやないかと言うけれども、みんなやめないんですね。やはり、日本企業の持っている終身雇用とは、こういうところもよさであり、必ずしも欧米型の、競争型の研究機関がいいのか、そこのよさもありつつ、日本型、日本ならではの独自のよさというのもあるんじゃないか、このように感じるわけですが、両先生、お考えをお聞かせいただければと思います。

野依参考人 おっしゃるように、日本の国全体がよくならなければいけないと思っております。私の立場からすると、そこで科学というものが非常に大事だと思っております。

 そこで、できるだけ多くの国民の方のサイエンスリテラシーを上げていただかなければいけないと思います。同時に、科学者たちの社会リテラシーをもっと上げなければいけない。専門ばかばっかりつくってもしようがない。そういうことを通じて、日本の国民の民度といいますか、近代国家、文明国家としての全体のレベルが上がると思っております。

 とはいえ、個人でいえば、非常にすばらしい人から、そうでもない人、それから、横軸で、いろいろな価値観を持っておられる方がおられる。それぞれに能力を発揮していただいて、それをやはり集約した形で国力につなげていくということが大事であって、ばらばらに、とにかくやっていてくださいではならない。そのために政策とか教育とかそういったものがやはりあるんじゃないか、そんなふうに思っております。

 トップの人が流出するかどうかということですけれども、流出しております。私の仲間も、私は日本にずっとおりましたけれども、仲間たちが随分アメリカにも行きました。ごく最近では、中村祐輔先生という、日本のライフを仕切っていた方がシカゴ大学に移られましたし、私のおります理化学研究所も、私どもが誇りとしておりました研究者を、今度はドイツのマックス・プランクの研究所に失うことになります。ですから、それを何とか引きとめなきゃいけない。

 行くのは個人的には勝手ですけれども、同時に、外国のすばらしい人たちを日本に呼び込む、魅力をやはり提供していかなきゃいけないと思いますね。そういうことによって、日本に研究のハブができ、そして世界ときずなをつくっていくことが初めてできるんじゃないかと思います。

 若い人たちについて言えば、今、若い人たちは、先生に習うよりは、あるいは上司に習うよりは、仲間から習うことの方が大きいわけですね。そこで、同じような日本人、同じような文化を持った、同じような知識を持った人から習うよりは、さまざまな違った文化の人に取り巻かれた方が、その人たちの成長にもつながり、そして社会もそれから習うことが大きいと思っております。そういう意味で、国際化は非常に非常にやはり大事だろうと思っております。

白石参考人 国際化が極めて重要である、特に国際的な研究者のネットワークに入っていくことが極めて重要であるということ、これはもう間違いございません。その上で、二点申し上げたいことがございます。

 一つは、先生のおっしゃるとおり、日本の大学というところは、身分保障がありますし、別に業績が上がらなくても、毎年給料は少しは上がる、上がらなくても下がることはない。非常に住みやすい。これは間違いございません。

 ただ、日本の、例えばシニアの、いわゆるフルプロフェッサーの年俸で見ますと、もう既に、日本の国立大学と、アメリカのハーバード、プリンストンのようないわゆるトップクラスの大学、あるいはシンガポールのナショナル・ユニバーシティー・オブ・シンガポールのようなところの年俸の水準では、ほとんど倍の違いがございます。ですから、今のままでいいんだというふうに問われれば、それは恐らくそうではないでしょうというふうに言わざるを得ない。

 それからもう一つは、若い人のことですけれども、実は私、思うところがありまして、昨年あたりから、高校生に対する講演を頼まれたときに、かなり無理してでも引き受けるようにしております。

 そこで高校生と話して痛感しますのは、優秀な高校生はみんな医学部に行きたがる。これは私は、もちろん医学部の先生方は優秀な人が来ますので多分それほど違和感はないんだろうと思いますけれども、日本全体として見ますと非常にいびつな資源配分になっていると言わざるを得なくて、いろいろな人生があるんだ、いろいろな可能性があるんだということをいろいろな人が若い人たちに話をする、あらゆる機会に話をするということを、やはり我々みんなやらないといけないのではないだろうかと思います。

渡海委員長 それでは、限られた時間でございますので、当初名札を上げていただきました牧原君、関君、宮崎君、そして杉田君、鈴木君、伊藤君、その後に大野君という順序でいきたいというふうに思っておりますので、御協力をよろしくお願い申し上げます。

牧原委員 きょうはありがとうございました。

 端的にお聞きします。

 今お話を伺っていても、世界的な競争というのを私たちは常に考えていかなきゃいけない、人材面でも産業面でもそうですけれども。今、いろいろな国の名前も挙がりましたが、近年でいうと、例えばこういう国がやはりすごく変わってきていて、こういう国の政策をひとつ参考にすべきだ、あるいは、それをしのぐように日本としてやっていかなきゃいけない、そういう例が世界の中にありましたら、ぜひ参考に教えていただきたいと思います。

野依参考人 全体的に、例えばGDPとかそういうあれで比べれば、アメリカとか中国とか、そういういわゆる大国、人口の多い国が勝つわけでありますけれども、その国民が果たして幸せかというと、また話は別です。むしろ、今栄えているのは、人口が一千万前後の国で、例えば香港であるとか台湾であるとかシンガポールであるとかスイスであるとか、あるいは北欧の国とか、そういうことですね。

 そういった国というのは総じてやはりイノベーション重視でやっているわけで、そこのところは、先ほどございました、人材の循環、そういったことが非常に重視されている。そして、いろいろなイノベーション政策がうまくいっているということで、よその国の資本、そして人材の力も取り込んでやっている。そういうことじゃないかと思います。

 つまり、グローバライズしたいろいろな営みをもって成功しているということが多いんじゃないか、そんなふうに思います。

白石参考人 投入された、例えば研究費当たりで申しまして、国際的に一番うまくやっている国はイギリスだろうと思います。

 私は、総合科学技術会議の第四期の基本計画策定の際に、参考としてイギリスのサイエンスポリシーのペーパーを随分読みましたけれども、極めて明快でございまして、これはやはりいろいろな意味で参考にするところがあるというふうに考えております。

関委員 自由民主党の関芳弘でございます。

 私は、政治に関しまして夢を持っております。それは、科学技術で日本が世界に冠たる国家になって、世界ナンバーワンの国になることでございます。そして、その項目につきましては、私はこれから医療がいいのではないかと考えております。

 そして、全国津々浦々、北は北海道から南は沖縄まで調べましたけれども、そういうことが今日本でできるのか調べましたら、ただ一カ所、ここだったらいけるんじゃないかというのが見つかりました。それが神戸の医療産業特区でございました。

 しかしながら、そこの神戸の医療産業特区がこれから日本の中心として世界に勝つようになるためには、大きな課題が幾らもあることがわかってまいりました。

 先生の目から見られまして、何を進めていくと、世界に冠たる日本の医療が神戸でできると思われるでしょうか。

野依参考人 私、今、理化学研究所におりまして、神戸にも非常に大きなアクティビティーを持っております。

 私どもにできることは、非常に基礎的な基盤、研究成果を、できるだけ広くお使いいただいて、使いやすいようにしていただいて、その成果を広めていただくこと。私は、やはり、もう少し世界から人を呼び込む魅力をつくっていかなきゃいけないんじゃないかと思っております。

 私、医療は専門じゃございませんけれども、そのために相当の規制緩和が必要だと言われております。またいろいろ御示唆がございましたらいただきたいと思います。できるだけの努力をさせていただきます。

白石参考人 特に、私、神戸の特区について何か申し上げるアイデアもございませんが、ライフサイエンスあるいはバイオメディカルの分野というのが日本にとって極めて重要な分野の一つであることは間違いないと思います。

 その上で、実は私、特にヨーロッパそれからアメリカのバイオメディカルリサーチを少し眺めておりまして痛感しますのは、やはり、日本でこれから少子高齢化が進んでいって、生活習慣病というのが極めて重要な問題になってくることを考えますと、ゲノムコーホートスタディーズというんでしょうか、こういうものは一刻も早くやるべきではないだろうかというふうに考えております。

宮崎(謙)委員 自由民主党の宮崎謙介でございます。

 本日は、お話、まことにありがとうございました。

 私からは、産学連携についてのお話を質問させていただきたいと思います。

 現在、私は三十二歳でございまして、物心がついたぐらいから産学連携の重要性がずっと言われ続けていて、ただ、それがなかなかうまくいっていないという現状が続いている中で、特に大学発ベンチャーというものが誕生しにくい。最近は、ユーグレナという会社が上場をして大変市場をにぎわわせているわけでございますけれども、この流れをもっと加速させるためには、やはり人の問題と、あとお金の問題があるかと思っています。

 スタンフォードなんかを見てみましても、本当に、特に人の面でいいますと、先ほどからお話がありましたとおり、教授が若くて優秀で、そして海外の方も多いですね。女性の教授なんかも多くいらっしゃいまして、この中から学生は刺激を受けて会社を起こしていくのかなということをまず見てまいりました。

 それから、お金の面でも、エンジェルも多数いる中で、潤沢な資金がある中で、彼らが非常に事業に対して、研究から事業を起こすということがやりやすい環境が整っているなというふうに私は思っているわけでございますけれども、実際問題、そのほかにも、産学連携からさらに大学発ベンチャーがなかなか誕生しにくい阻害要因が何かあるとすればどんなことが考えられるのかということをお伺いしたいと思います。お願いします。

野依参考人 お金のことはともかくとして、もっと産学の人の交流がやはり大事だろうと思いますね。

 私は、日本の大学、特に工学の先生が若干理系化しているといいますか、理学部化しているのが一つ問題じゃないかと思います。アメリカの場合には、先生は週の四日は大学の勤めをやらなければいけないけれども、一日は外で働いてよろしいということで、有力な先生は産業界と協力してさまざまなことをやっているというようなことがあります。

 もう一点は、やはり、工学における学生、人材の養成が大事だろうと思っております。大学と産業界の人材のミスマッチということが長く言われておりますけれども、これを解消するためには、もう少し産業界の方が大学院教育にコミットしなきゃいけないと思うんですね。

 私は、ドイツが非常にうまくいっているんじゃないかと思っておりまして、ドイツの大学は、産業界の優秀な研究者、技術者たちを教授として招いて、いろいろな教育にもコミットして、そして、先生たちもそこから習うということをやっておりますね。そういった仕組みをすることによって、産業界が求めるような人材が育つ、先生もそれによって新しいことを習うというようなことがあるんじゃないかと思います。まず、そういったことから始めるのがいいんじゃないかと思います。

 お金のことは、エンジェルの問題とか、さまざまなことがあるようでありますけれども、私は、どうしたらいいのかということは申し上げることはできません。

白石参考人 スタンフォード大学のありますカリフォルニアのシリコンバレーにあるイノベーションのエコシステムのようなものというのは、なかなか日本ではつくるのは難しいだろうと思います。

 その一つの理由は、非常に流動性がある社会で、同時に、会社をつくってうまく当たれば一生遊んで暮らせるだけのお金が手に入る一方、失敗しても自分の財産が失われることはない。やはり、なかなかうまい仕組みがつくられているわけです。

 ですから、私が知っている範囲でも、日本の若い起業家が、日本ではなくてカリフォルニアで起業するということが、この数年でも幾つか私の知っているだけでもございますので、私は、その分野の専門家ではございませんけれども、アメリカにあって日本でできるものをやはりどんどん取り込んでいくというふうな政策のデザインの仕方というのは一刻も早くやる必要があるんだろうと思います。

宮崎(謙)委員 日本国内でも、まだ日本の学生も在学中であれば実はこれはノーリスクでありまして、ぜひ先生方からも、学生たちに対して起業を勧める、そういう意向がある人にはぜひ勧めていただきたいなと思いますので、よろしくお願いします。

杉田委員 日本維新の会の杉田水脈です。

 きょうは本当にありがとうございました。

 一点、白石先生にお尋ねしたいんですが、先生のお話の中で、科学技術の振興というのが、今後、防衛力の基盤となっていかなければいけないというのがございました。私どもも、今後、抑止力としての軍事力というのをどんどん拡大していかなければ、今の日本の国の将来はもたないというふうに考えております。

 そこで、お尋ねしたいのですが、科学技術の振興と今後の防衛、国防とのリンクの仕方、それから、特に、我々どもは、防衛省の予算なんかも、一%枠なんというものは取っ払って、きっちり今の日本に見合った形で軍事力というのを考えていかないといけないというふうに日ごろから主張しておるんですけれども、特に予算なんかの部分についても、科学振興と国防、防衛といった部分と、どのような形で考えていくのがいいというふうに、先生の御意見をお尋ねしたいと思います。よろしくお願いいたします。

白石参考人 私は、防衛力の基盤ともなるような科学技術の振興が必要だろうということで、別に防衛力だけを強調したものではございません。むしろ、現状が、日本の科学技術政策、特に、大学において、防衛に関連したような科学技術研究、それどころか、デュアルユースの研究についても少しまだタブー視するところがある、これは非常にまずいんじゃないかということを申し上げたかった次第です。

 その上で、一つは、先ほどももう既に申し上げたことですけれども、総合科学技術会議の本会議に防衛大臣が出席するということは、もうそれだけでもやはり政治的意思として非常に大きな違いが出てまいります。そうしますと、当然のことながら、総合科学技術会議の事務局にも防衛省から研究関連のスタッフが入ってくるということになると思いますので、これが一つ非常に重要なことであります。

 それからもう一つは、今回、総合科学技術会議の機能強化の一環として、アメリカのDARPAをモデルにした研究振興策ということが言われておりますけれども、このDARPAの中に、私は防衛技術開発とは申しません、デュアルユースの研究はぜひこの対象に入れていただきたいというふうに考えております。

鈴木(義)委員 日本維新の会の鈴木義弘と申します。

 二点ほどお尋ねしたいんですけれども、大分前からいろいろな、化学でも物理でも医学界でも何でも学会があったと思うんですね。学会の質の低下が叫ばれてずっと来ているんですけれども、学会が、いろいろな企業だとか大学、研究所が発表するんですけれども、それが広く一般に知らされていないんですね。

 それと、大学の先生方も、学会で発表しているというのがステータスになっていないんです。それで、なおかつ、先ほどから御指導いただいたように、大学の交付金を減らすとかふやすとかといっても、結局、ずっと自分の研究にマスターベーションだけしていて、学会で発表もしなければ何もしない先生で、三十年も四十年も大学にいらっしゃる先生もいらっしゃるんですね。

 誰もやらない研究を自分がやっていればそれでいいというふうに思っていて、研究の多様化という一くくりにしてしまって、本当にそこに税金を投入したり民間資金を投入していっていいのかというのが議論され尽くされないままずっとこの科学技術振興をやってきたんだと思うんですけれども、学会と大学、それと研究者の連携の中で、どういう方向を今後見出していけばいいのかというのを御示唆いただければと思うんです。

 質が低下したということが一点ですね。それとあと、大学と研究者と、その辺の今申し上げたところで二点。

野依参考人 いろいろな学協会があろうかと思いますけれども、おおむね多くの学協会は、旧態依然、やはり存在価値がなくなっていると思うんですね。なぜ自分たちはこの学協会をつくって運営していかなきゃいけないか、もう一度考え直さなきゃいけないと思いますね。特に、仲よしクラブになっているということで、若い学生たちに、どうして○○学会に入らなきゃいけないんですか、自分たちはそこに入ったらどういう得があるんですかとよく聞かれるんですね。それに対して学協会が答えられないということです。

 おっしゃったように、昔は学協会というのは研究の発表の場であり、そこに大先生がいて、いろいろなアドバイスをしたり、そういうことがあったわけですけれども、今やITが発達してきて、そういう場の存在意義なんかも随分変わってきていると思うんですね。しかし、同じ専門家を束ねるというある種の意義はあるはずなんですね。ですから、新しい時代に沿った学協会のあり方というのはそれぞれの学協会で考えていかなきゃいけない、そんなふうに思っております。

白石参考人 実は私は、学会たるもの、一つも入っておりませんので、先生の言われることは非常によくわかります。

 よくよく考えますに、何のために学会があるかといいますと、おもしろい研究者を探す、それから新しいクエスチョンを探すきっかけにするというのが一つ、それからもう一つは、若い人の場合には職探し、これがもう一つ大きいわけでして、この最初の役割というのがどうも、野依先生が言われたことと同じことになるんですけれども、学会に行って知的に興奮するような議論に出会う可能性が非常に小さくなっているというのは、これは現状だろうと思います。

 そういう中で、それじゃ、しようもない研究をやっているからといって、そういうところにも研究費を出さなきゃいけないのかといいますと、これはなかなか難しいところでして、結局、例えば今おもしろくないと思っていても、十年たってみるとそれが大変な研究の意味があったということはあるわけでございますので、余り研究の効率性だけを考えて研究費の配分をするというのも、それはそれで弊害があるんだと。

 ですから、その意味で、私先ほど申しましたが、研究費の配分においては幾つか違う配分の仕方ということを常にやる必要があるんだろうと考えております。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 きょうは、長時間にわたりまして大変示唆に富むさまざまな御発言をいただきまして、ありがとうございます。

 まさに司令塔機能の強化とか若手研究者の登用、マネジメント要員の増強などを、我々は立法府の立場ですので、立法という行為を使って制度を整えていくということ、そして予算をもってめり張りをつけていくこと、こういうことをやっていかなければならないわけですが、現実問題として、現政権において科学技術・イノベーションは、これまであるとおり第三の矢を放てるかどうかの極めて重要な要素になっているわけです。

 そして、具体的には既に来年度の予算編成に向けて動きがスタートしている中で、ぜひ両先生にお伺いをしたいのは、予算編成において、まさにいろいろな、我々では見たことも聞いたこともないところまで科学技術というところには含まれていて、それらを判断していく上で重要なファクターというのは、投入するものはやはり税ですので、公平性ですとか客観性ですとか透明性というのを確保した上でジャッジをしていかなきゃいけない。そのときに重要になるファクターというものをぜひとも御教示いただければと思います。

野依参考人 それはいろいろな階層で違うと思うんですけれども、やはり日本の国益といいますか、国力の源泉たり得るかどうかということですね。それは、きょう、あすの問題もあるし、十年先のこともある、いろいろですけれども、やはりそういうことだろうと思うんですね。

 今、いろいろな村があって、そこに幾らずつ配るか、そういうことでいっているんじゃないかと思うんですね。だけれども、どういうふうにその投資効果、先ほど申し上げたように、投資をするということでお考えいただくことが大事だと。

 投資というのは、先生方がお考えになることもあるけれども、それぞれの現場に、プレーヤーに、どういうふうなリターンをするのかということをやはり約束、国とプレーヤーの間の契約というものが必要だろうと思うんですね。そのときに大事なことは、余り近視眼的にならない。きょう、あす、リターンする、そういうことを考えないで、国の存続、繁栄のためにどうやるかという、そのことに応えてもらう、そういうことが大事じゃないかと思っております。

白石参考人 これはまさに基本計画が示しているところだと思いまして、基本計画においては、第四次は、研究分野を特定して投資を考えるのではなくて、むしろ、課題から逆に投資分野、投資戦略を考える、こういう基本的な考え方がございまして、その上で、少し私の解釈が入っておるかもしれませんけれども、四つぐらい非常に重視している分野があるのではないだろうかと。

 一つは、ライフサイエンス、それからエネルギー分野におけるイノベーションに向けた投資、これが一つでございます。二つ目は、民間ではなかなかできない、あるいは国として当然やるべき安全保障、それから国家基幹技術への投資。三番目に、共通基盤、ナノテクノロジーだとかICTのような共通基盤技術への投資。それから四番目に、私が先ほど使いました言葉でいいますと、知識のストックを豊かにするための基礎研究、人材育成。この四つが大きな投資の柱ではないだろうかというふうに考えます。

渡海委員長 次に、二巡目に入ります。大野敬太郎君、そして村井英樹君、また津村啓介君からプレートが上がっているところでありまして、三巡目で前田君、船橋君という順番になります。なるべくそこまで行きたいというふうに思っておりますので、御協力よろしくお願いします。

大野委員 自由民主党の大野敬太郎と申します。

 出身が香川県で、野依先生は兵庫県、白石先生は愛媛県で、間に挟まれた地域の出身で、非常に話しにくうございますけれども、二点ほど質問させていただきたいと思います。

 一点目は白石先生にであります。

 先ほど、野依先生からの話でありますけれども、大学や公的機関の話の中で、立案者と実行者の協同による目標管理が必要だ、それをやり続けることが必要だ、つまり、何をやるか、何をどうやるか、そして何をどうやり続けるか、この三点についてしっかりとタイアップしてやらなくちゃいけない、こういう話がありまして、非常に重要だなと私も思っています。

 一方で、昨今の行政改革の流れ、そして研究開発法人のあり方の議論の中で、一部の議論で、要するに、立案者と実行者を分けるべきだ、そして政治の関与もなるべく少なくするべきだ、こういう話が一部あります。

 それは何かというと、効率よく研究をやるんだ、そして政治の不当な関与を除外していくんだ、ちょっとこういう流れがあるんですけれども、これは実は、科学技術というのはほかの政策と違って、スピンアウトの事実、当初の目的とは全然違うところに実はすばらしいアイデアが生まれて、それをまた立案に戻すというプロセスが絶対ないとおかしいと思っているんですけれども、この点について、白石先生に一点目、質問させていただきたいと思います。

 それから二点目は、逆に野依先生に御質問させていただきたいのが、これは白石先生の話の、知識のストックの話でありますけれども、古代ローマの話じゃないですけれども、昔、エジプトのアレクサンドリア、そこに世界最大の図書館があった。これは図書館があったから発展したんじゃなくて、人が物すごく集まってきたからということで、実は、この意味をすごくわかっていたのがクレオパトラ。要するに、図書館が焼失したら、遠い、ペルガモンというトルコから二番目の図書館を移築したと。移築してまで図書館を維持するというこの意味をわかっていらっしゃった。人の流れを吸収するんだというか、流れをわかっていた、そういうことがあると思うんです。

 それでは、このアレクサンドリアの図書館というのは一体今の日本においては何なんだろうか、これは非常に重要な問題だと思いますので、野依先生、もしアイデアがございましたら、御知見を賜れればと思います。よろしくお願いします。

白石参考人 私は、特に総合科学技術会議の議員をしておりましたときに、時々、これは本当に伝言ゲームだなと思うことがございました。

 それはどういうことかと申しますと、総合科学技術会議、あるいは政府のレベルで、ある政策プログラムをつくって、それにファンドをつけて、実際にそれが運用されるときには、もちろん政策策定に関与した人ではなくて、科学技術政策の場合には主として大学の先生方が選考委員になって、そこでやるわけですけれども、そこで選ばれたプロジェクトを見ますと、これはおよそ、少なくとも私なんかが理解した政策プログラムの趣旨からは外れているんじゃないかなということは、残念ながら、よくあることでございます。

 ですから、そのことから申しますと、政策の策定者と実行者を分けるというのは、これは決して賢明ではない。常にフィードバックのメカニズムをつくっておかないといけないと思います。

野依参考人 知のストック、白石先生がおっしゃったように非常に大事だと思います。

 ただ、昔のアレクサンドリアのころと違っているのは、今もセラゲルディンが立派な図書館をつくっていますけれども、一番大きな違いは、今はIT化されたということですね。IT技術をどういうふうに使うのかということですね。ストックのために使う、それから、それをどういうふうに生かして使うかということですね。これは知恵をいかに出すかということだろうと思います。

 これは教育の問題にかかわるわけですけれども、非常に大きな問題は、アメリカで今起こっておりますMOOCというものですね。マッシブ・オープン・オンライン・コース、一人の教授が十何万人を教える、そういうやり方で、とにかく老若男女、誰でも勉強できる。東京大学へ行かなくても、一番いい法学部の情報の講義ができる。そういうことが世界じゅうにこれから広まりつつあって、日本の高等教育、どうやるのかということがあります。

 もう一つは、その知恵を伝達するために、人がやはりフェース・ツー・フェースで会うということが大事である。この二つをどういうふうに組み合わせて知のストックをつくり、そして知恵を生かしていくか、知恵を出していくか、これが大事だろうと思っておりまして、そのために、白石先生がさっきおっしゃったような、いろいろなハブをつくっていくということが大事だろうと思いますね。これも文部科学省を中心に、やはり大いにこれから考えていかなきゃいけない問題じゃないかと思っております。

村井委員 自由民主党の村井英樹です。

 きょうは、貴重なお話をありがとうございました。

 私が伺いたいのは、今の大野先生からの質問にも若干関連をするんですけれども、我が国において、知の集積、技術集積を高いレベルで推し進めていくために何が必要でしょうかということなんです。特に、世界じゅうから優秀な学生を集めてくる、そしてまた優秀な研究者、教授を集めてくるのが重要だと思うんですけれども、その際に、まずやるべきことは、私は、世界じゅうの優秀な研究者、先生を集めてくることではないかと思っているんです。

 というのは、日本では、よく留学生を十万人連れてくるんだといったようなことで、奨学金を与えたりですとか留学生の待遇を上げたりといったようなことをしておりますけれども、実際これが限られた政策の資源配分として正しいのだろうかという疑問を感じるんです。

 私もアメリカの方に留学をしておりましたけれども、そこのハーバードに留学をしてきている中国人だとか韓国人に話を聞くと、どうしてここのハーバードに来たんだ、何で日本じゃないんだと言うと、彼らは、率直に言って日本に行くのは二流だよ、俺らは一流でここに来ているけれどもということを言うんですね。その理由は、やはり、ハーバードもしくはアメリカの大学に最も優秀な研究者、先生がいるからだ、そして最も進んだ勉強、研究ができるから俺らはここに来たんだというわけなんです。

 他方で、私は何が申し上げたいかというと、幾ら留学生の待遇を上げるような施策を打っても、結局、優秀な留学生の動きというのは、優秀な研究者もしくは先生の動きで決まるんだろうということなんです。

 例えば、アメリカにはプリンストン高等研究所のようなところがありますけれども、研究者の立場になると、やはり、自由に研究ができて、なおかつ待遇がいい、これが優秀な研究者にとっては重要であるという話も聞いておるんです。

 結局、我々が日本で知の集積、技術集積を行うためにまず行うべき政策は、世界の最先端の研究者を日本国内に呼び込むために彼らの待遇を上げる。それは、給料もそうでしょうし、より研究に没頭させてあげるような環境をつくり出す、そうすることで、およそ自動的に優秀な学生は集まってくると私は思うんですね。

 なので、限られた政策資源ですから、これを研究者の方により振り向けた方がいいのではないかと私は個人的には思うんですけれども、そのあたりの御見解を伺いたいと思います。

野依参考人 私は、今、理化学研究所というところにいるんですけれども、外国人を、外国人であればいいというものじゃない、優秀な外国人を呼ぶために大変苦労しております。

 大学等では四%ぐらいしか外国人はいないんですけれども、私どもは一七%なんですけれども、これをぜひ三〇%にしたいと思っております。

 何がネックになるかといいますと、もちろんファシリティーも大事なんですけれども、もっと大事なことは生活環境を整えるということで、理化学研究所だけではできないんですね。

 子供たちを連れてきます、年齢が上がってくると。彼らをどういうふうにハンドルするかということで、例えば、端的には、国際スクール、インターナショナルスクールのようなものを整備しなきゃいけません。やはり家族が住みやすいような環境をつくるということが大事です。

 それからもう一つは、やはり所内のマネジメント、これを英語化し、そして分け隔てなく外国人を受け入れる、そういうことも大事じゃないかと思っております。

 さまざまな問題を抱えておりますけれども、また御指導賜れればと思います。

白石参考人 実は、先生が言われたことは、まさにシンガポールのナショナル・ユニバーシティー・オブ・シンガポールが過去十年くらいやってきたことでございまして、仄聞するところ、社会科学系の人で年俸が五十万USドル、自然科学系の場合には百万USドルくらいの報酬、プラス、彼らの教育している学生へのフェローシップ等も含めてパッケージで呼ぼうとした。

 それで随分集まりましたが、では、その結果、ハーバード、プリンストン、イエールというふうなところに伍す大学になれそうかというと、どうもなれそうもないというので、実は、私はシンガポールのナショナル・ユニバーシティー・オブ・シンガポールのアドバイザーをやっているんですけれども、彼らは、昨年のミーティングのときに、もうこれはやめるというふうに言っておりました。

 もちろん、それでは学部の学生、大学院の学生は集まるか、これは集まりません。それで、先ほど私が申し上げたことですけれども、どこで勝負するかというと、アメリカのトップクラスの大学でPhDをとった後に、シンガポールの大学でポスドクなりテニュアトラックのアシスタントプロフェッサーをやるように、そこに手厚く資金を配分すればトップクラスが来るだろう、その人たちは三年とか五年しかいないかもしれないけれども、その後、彼らはいい仕事をして、やはりトップクラスの大学に就職していくだろう、そうすると、おのずとシンガポールの地位も上がっていく、そういう計算ですね。

 私は、先ほど、大学間の競争が、学部、大学院生のレベルの競争からポスドク、テニュアトラックのアシスタントプロフェッサーレベルの教育に移っておりますと申し上げたのは、実はそういうことを踏まえて申し上げたんですが、このレベル、この水準での競争であれば、私は、日本にも勝機はある。つまり、世界でトップの五つぐらいに入っている研究分野あるいは研究所をアイデンティファイして、そこに相当の資源を投入すれば、これはかなり勝負はできるというふうに思います。

津村委員 きょうが恐らく、科技特の実質的な審議は今国会最後の日になるんだと思います。

 そこで、委員長と与党の議員の皆さんに一言だけお話ししたいんですけれども、先ほど白石先生は大変重要なことをおっしゃいました。安倍政権は、野党の私が言うのもなんですが、科学技術政策、非常にすばらしいことを幾つかされています。

 一つは、総合科学技術会議の本会議を開催されていること。私たちは、反省も込めて申し上げるんですが、大震災もありました、会議をたくさんつくり過ぎたのかもしれませんが、鳩山政権で五回、菅政権で四回、野田政権で四回しか開けませんでした。この三月から六月までの間に、安倍総理のもとで六回、このCSTPの本会議が開かれています。

 ただ、これは非常に政治的にといいますか、流動的な部分ですので、これからぜひ与党の皆さんがしっかり、山本大臣が頑張られているので、サポートしていただかないと、なかなか続かないことです。継続するのは大変です。ぜひお支えいただきたいというのが一点。

 それからもう一つ、司令塔機能の一元化ということを盛んに言うんですけれども、これは、政務三役、同じ人が兼務しているわけですから、運用次第で相当いろいろなことができます。現実に、山本大臣は、五月の二十二日が第一回だと思いますが、科学技術、IT、知財、宇宙、海洋、こういった本部を、調整会議といって一つのテーブルにのせて、そこで重複を避けた議論をしようという取り組みを始められています。これも、法律をつくらなくてもできることなんです。

 こういった非常に地味なロジスティクスの議論なんですけれども、与党の皆さんが応援していただくことが、正直私たちも、当時非常に大きな与党でしたから、党内のコンセンサスを継続することの失敗でこれができなかった部分も率直に言ってありました。ぜひ皆さん、応援させていただきますので、山本大臣をしっかりサポートしていただきたいと思います。

 その上で質問させていただきたいんですが、安倍政権の中で、そうはいっても、私、一つ大変心配しているのは、日本版NIHの議論でございます。志はよしなんですけれども、省庁横断的な部分をしっかりやって、基礎から応用までしっかり一つで見ていこうというのはよくわかるんですけれども、残念ながら限られた予算でございます。

 そうした中でこの組織をつくることが科研費にどういった影響を与えるのか。あるいは、非常に出口志向になってしまって、ライフサイエンスも含めてですけれども、ある学者さんに聞きますと、こういうものをつくってしまうと、第二の野依さん、山中さんみたいな人が出てきにくくなるということを言う学者もおりました。

 野依先生と白石先生がこの日本版NIHについてどういう御見解をお持ちか、お聞かせください。

野依参考人 先ほども申し上げたんですけれども、トランスレーショナルリサーチ、特定の病気の克服に対して基礎科学を臨床につなげるという意味では、私は大賛成です。

 しかし、おっしゃったように、基礎科学まで囲い込んでするのは、私は非常に大きな懸念を持っております。特に基礎科学においては、今は全てを横につなぐということ、生物科学と物質科学と数理情報科学、そういったものをつなぐということが世界の趨勢なんですね。それを囲い込んでしまってやるということは非常にまずいと思うんです。

 生命科学の人たちが、より、数理情報科学、物質科学あるいは化学、そういったものを学ばなければいけない、コラボレーションしなきゃいけないというのが世界の趨勢です。ですから、そこを囲い込むということは全くまずいことになるんじゃないか、そんなふうに思っております。

白石参考人 私も野依先生とほぼ同じ考え方でございまして、日本版のNIHの制度をデザインするときに、一つはファンディングの仕組みをどうするのかということと、それからもう一つは、特に融合領域における研究へのファンディングも含めた、ここをどういうふうに考えるのか。この二つをやはりよくよく注意して制度をデザインしないと、まさに野依先生の言われる囲い込みで、何かまた新しい島が一つできてしまう、そういう懸念を持っております。

渡海委員長 それでは、前田君をもって、恐縮でございますが、きょうは最後にさせていただきたい。船橋議員には大変御協力をいただきまして、ありがとうございました。

前田委員 自由民主党の前田一男と申します。よろしくお願いします。

 野依先生に伺いたいと思います。

 今、自民党の中では、司令塔機能の強化についていろいろ議論しているわけでありますが、しかし、いただいたお話を伺いますと、司令塔組織の乱立というふうなお言葉もいただいていまして、大変ショックを受けているわけであります。

 はっきり申し上げると、どうでしょうか、司令塔強化をする、その枠組みをつくっていこうとするのが省庁の縦割りに頭が縛られた政治家及び省庁の人たちでは無理だというふうにお考えでしょうか。率直にお聞かせいただきたいと思います。

 その上で、国立の研究機関、これは私は必要だと思いますが、これの具体的な仕組みづくりということはお持ちでしょうか。

野依参考人 司令塔の問題については、先ほどから申し上げております一元化が大事だろうと思います。その専門分野というのがあるわけですから、それぞれ、専門の見識を集中することは大事だ。

 しかし、その上で、各、今のいわゆる司令塔というものの機能をいかに横につなぐかということは不可欠だろうと思います。縦割りは絶対に科学技術の総合的な発展につながらないと思います。

 それから、これは先ほども申し上げましたように、本当に国立の名に値する研究開発機関をつくる覚悟があるのかどうか。先ほども申し上げましたけれども、国立というのはナショナルプライド、ナショナルですから、その名をかぶせたナショナルプライドであり、そして国力の源泉になる活動をする、そういったものをつくる必要があるのであって、看板のかけかえでは全然話にならぬというふうに思っております。

渡海委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、一言御礼を申し上げます。

 参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時一分散会


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