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平成十五年七月八日提出
質問第一一九号

内閣法制局の権限と自衛権についての解釈に関する質問主意書

提出者  伊藤英成




内閣法制局の権限と自衛権についての解釈に関する質問主意書


 内閣法制局は、「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見」の具申ができ、その権限に基づき、憲法上の問題が指摘されてきた法律案に関しても、解釈の統一を図っているが、国会においても、内閣法制局長官を初めとした内閣法制局職員が当該法律案の憲法解釈に関わる答弁をなしてきたことを踏まえ、内閣法制局の権限及び自衛権の解釈について、以下質問する。

一 政府の統一解釈・統一見解と内閣法制局の権限・役割について
 1 政府の統一解釈・統一見解は、時の政府の解釈であり見解であるから、政権が変われば、以前の政府解釈等を継承するのも変更するのも可能なものと考えるのか、あるいは、政府は従来の解釈等に拘束されるべきものと考えるのか、政府の統一解釈・統一見解の性格について、見解を伺いたい。
 2 政府の統一解釈・統一見解を形成するために大きな役割を担っている内閣法制局は、いかなる権限・正統性に基づき憲法を含む法律の解釈を行っているのか、説明いただきたい。
 3 政権が変われば、政府全体も何らかの変化があるのが自然であるが、内閣法制局は、政府の変化及び国内外の情勢の変化に対し、適度な柔軟性を持ち的確な対応ができる組織なのか、説明いただきたい。
二 自衛権の解釈について
 1 自衛権についての政府の考え方について
 ア 「自衛権」、「個別的自衛権」及び「集団的自衛権」のそれぞれの定義を示していただきたい。
 イ 個別的自衛権と集団的自衛権との関係は、次のA図のように重複する部分もあるものなのか、あるいは、B図のように、全く重複する部分はなく、明確に区別し得るものなのか、説明いただきたい。

A図 B図

 ウ 個別的自衛権と集団的自衛権が重複する部分がある概念であるとすれば、集団的自衛権は憲法上禁止されているとしている政府は、重複する部分に入り得る事態について、個別的自衛権で対処するのか、あるいは、集団的自衛権にも当たるものとして、個別的自衛権でさえも、制限し、対処を控えるのか、説明いただきたい。
 2 憲法第九条が認める自衛権の在り方について
 ア 従来の政府の統一見解の中で、政府は、「自衛権の行使に当たっては、我が国を防衛するための必要最小限度の実力を行使すること」及び「自衛のための必要最小限度の実力を保持すること」は憲法上認められているとしているが、その際、「必要最小限度の実力」とは、規模、装備、攻撃の在り方等において、いかなる程度の実力を意味しているのか、説明いただきたい。そもそも、流動的な国内外の安全保障情勢下で、「必要最小限」という曖昧な基準に拠ることは、自衛隊が既に相当程度の実力を保持する中では、内閣法制局は、法令解釈権を放棄したものではないのか。
 イ 「他国から武力攻撃が加えられた場合に国土を防衛する手段として武力を行使することは憲法第九条に違反しない」とする従来の政府の統一見解については理解できるが、「憲法第九条のもとにおいて、自衛のための必要最小限度の範囲を超えて武力を行使すること及び自衛のための必要最小限度を超える実力を保持することは許されない」との従来の政府解釈については、その根拠は何も説明されておらず、理解しがたい。憲法第九条が、我が国の自衛のための武力行使あるいは自衛隊の実力について、「必要以上」を許していないとするのではなく、必要範囲であっても、その「最小限度を超えること」を許していないとする解釈の根拠を示していただきたい。
 3 「専守防衛」について
 ア 政府は、相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使するという「専守防衛」を我が国防衛の基本方針としているが、「専守防衛」を基本方針とした時期及び経緯について、説明いただきたい。
 イ 国土が南北に長く、大陸に近接しているという地理的特徴を持つ我が国が、「専守防衛」に徹し、国土を防衛し得るためには、相当大きな規模・実力の抗戦力を保持する必要があると推測されるため、「専守防衛」は憲法の要請するところのものではあり得ず、政府が現在執っている防衛政策の一つに過ぎず、自衛力を確保するために、「専守防衛」の是非を検討し、必要があればこの方針を廃棄することは、憲法見直し論議とは関わりなく行い得るものと考えるが、見解を伺いたい。
 ウ 政府は、「専守防衛」の基本方針を変更しないと述べているが、歴代政権が「専守防衛」方針に絶対の信頼性を置いてきたとは思えない。昭和四十七年十月三十一日の衆議院本会議において、田中内閣総理大臣は、「専守防衛というのは、防衛上の必要からも相手国の基地を攻撃することなく、もっぱらわが国土及びその周辺において防衛を行うこと」と答弁している。しかし、最近、石破防衛庁長官が、昭和三十一年の鳩山内閣総理大臣答弁及び昭和三十四年の伊能防衛庁長官答弁で示された「誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である」旨の見解を表明したが、このような武力行使は、「自衛の範囲に含まれ、可能」であっても、「専守防衛」方針には合致しないものではないのか、石破防衛庁長官の見解は政府見解と一致するものなのか、そうであれば、政府は「専守防衛」方針の廃棄を視野に入れているのか、説明いただきたい。
 4 自衛権発動三要件の一つ「我が国に対する急迫不正の侵害がある場合」について
 ア 我が国を他国からの武力攻撃から防衛するために我が国に自然権として備わっている権利が「自衛権」、狭義には、「個別的自衛権」と考えるのか。
 イ 政府が設定している自衛権発動三要件の一つ「我が国に対する急迫不正の侵害がある」事態という危機迫る段階の前段階において、つまり、そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態(周辺事態)に対し、我が国が個別的自衛権に基づき対処することは、憲法上問題があるのか否か、説明いただきたい。
 ウ 具体的に例を挙げれば、日本を含む北東アジアの平和と安全を確保するために日朝間の公海上で監視活動等を行う米軍が北朝鮮との間で戦闘状態に入った場合において、事態は周辺事態との政府判断がなされ得るし、また、短期間のうちに我が国に対する武力攻撃事態へ発展することが予測される事態(武力攻撃予測事態)となる場合もあり得る。しかし、政府の自衛権発動の三要件に照らせば、事態が我が国に対する武力攻撃事態へ発展して初めて自衛権を行使することができ、その前段階では、せいぜい周辺事態安全確保法に基づく米軍への後方地域支援や、武力攻撃事態対処法に基づく自衛隊の防衛出動待機に限られると思われるが、事態が我が国周辺にある間に、自衛権を発動して、米軍と協力して危険を排除すれば、被害を最小限にして国土を防衛し得る場合において、我が国は自衛権を発動できるのか否か、できないとすれば、その根拠は何か、説明いただきたい。
三 内閣法制局の見解を拠り所にして歴代の政府が示してきた自衛権を初めとする憲法問題についての統一解釈は、過去の統一解釈との整合性を図るために無理に無理を重ねた結果、相互に自己矛盾に陥ったり、「武力行使との一体化」論に代表される、国際的な説得力が皆無な、独りよがりの解釈となっていることを鑑みれば、内閣法制局は、法律解釈を行うに当たっては、従来の同局見解に硬直的に縛られることなく、現政府の法律顧問として、客観的に適正と考えられる見解を示すべきであると考えるが、見解を伺いたい。

 右質問する。



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