質問本文情報
平成十八年十二月六日提出質問第二〇九号
刑事施設(東京拘置所)被収容者の給養水準に関する質問主意書
提出者 保坂展人
刑事施設(東京拘置所)被収容者の給養水準に関する質問主意書
標記に係る内閣の平成十八年六月二十二日付答弁書(内閣衆質一六四第三五三号)に要領を得ない点があるため、再度質問をする。
@ 広報文書にいう「刑務所」は拘置所を含み、右の各数字は、拘置所の被収容者に係る収容費も含む予算額を使途別に平均したものと考えてよいか。
A 前記の答弁の趣旨からすると、右の「光熱水料二百五十四円」と「燃料費五十三円」には、被収容者の生活費として評価しえない支出も相当程度含まれていると考えてよいか。
B 平成十六年度に東京拘置所が支出した歳出額における光熱水料の単価(一キロワット時当りの電気料金及び一立方メートル当りの水道料金)はいくらか。
C 広報文書の記載内容を前提とすると、平成十六年度における東京拘置所の被収容者一人一日当りの給養水準は、答弁書で示された食糧費四百九十四円、被服費十五円、備品消耗資材費二十八円に右の光熱水料二百五十四円、燃料費五十三円及びその他三円を加えた額である八百四十七円を大きく上回るものではなく、むしろ下回るものであると考えてよいか。
二 先の質問事項二に関する答弁によると、東京拘置所の平均的収容者として想定される四十歳の男性が葛飾区内の居宅において単身で生活を営む場合に、生活保護法が保障する最低生活の消費水準は平成十六年度において年額で百三万四百三十円、一日当り二千八百二十三円である。そうすると前項Cにおける分析を前提とする場合、国が東京拘置所の被収容者に対し、保障している最低生活の水準との間には、年額で七十二万円強、一日当りで千九百七十六円程度の格差が存在している。換言すれば国は東京拘置所の被収容者に対しては、生活保護法が定める最低生活の水準の三十%程度しか、その生活水準を保障していない。
@ かかる格差の存在は、刑事施設内での生活を強いられている国民に対しても「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障している憲法二十五条と、社会的身分による差別を禁じ法の下の平等を保障している憲法十四条に抵触する疑いがあるが、政府は、右のような一〇対三程度の格差が存在すること自体は認めるのか否か。
A 格差は存在するが両者の差はもっと小さいとされるのであれば、政府が認識している格差はどの程度のものであるのかを明らかにされたい。
B 格差が存在するにもかかわらず、被収容者に保障されている現行の生活水準は「適切な生活水準」であるとされるのであれば、かかる格差の存在が憲法上正当化される根拠は何であるのかを明らかにされたい。
C 拘置所が支出している金額は生活扶助の水準の三十%程度であっても、この予算を用いて拘置所が被収容者に給付している生活資料の質及び量は、一般社会において要保護者が生活扶助費を用いて入手することができる生活資料の質及び量と同等であるとされるのであれば、そのような同等性を裏付ける根拠となる事実を明らかにされたい。
三 先の質問事項三に関連する再質問
@ 憲法二十五条が定める通り、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」のであるが、政府は、国民一般に対し保障されるべき最低生活の水準と、刑事施設に収容されている刑事被告人、死刑確定者及び受刑者に対しそれぞれ保障されるべき最低生活の水準とはすべて同一であると解するのか(同一説)、それとも被収容者のカテゴリーごとに異なるものであると解するのか(不同説)を明らかにされたい。
A 政府の立場が前者(同一説)ならば、前記の一項及び二項で分析したような格差の存在と政府の立場とは、いかなる観点において両立可能であるのかを明らかにされたい。
B 現行の給養水準が生活扶助の水準よりも低い場合、所得や資産がなく親族からの経済的援助もない被収容者は最低生活費の不足額(保護基準と給養費の差額)について生活扶助を申請し、保護金品の給付を受けることが法律上可能であるか否か。否である場合、その法律上の理由は何か。それぞれ政府の見解を示されたい。
C 政府の立場が後者(不同説)であるならば、被収容者のカテゴリーごとの最低生活の基準額を定める各年度の予算が憲法二十五条の要請を満たしているか否かを、いかなる客観的な基準に基づいて判断するのかを明らかにされたい。
右質問する。