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平成二十三年十一月十四日提出
質問第四九号

実用準天頂衛星システムに関する質問主意書

提出者  吉井英勝




実用準天頂衛星システムに関する質問主意書


 高精度の衛星測位を行う目的で、常に天頂方向に人工衛星が見えるように軌道配置をとった準天頂衛星一号機(通称、みちびき)が昨年九月に打ち上げられ、現在も運用が続けられている。野田内閣は本年九月三十日、二〇一〇年代後半を目途に四機体制、将来的には七機体制を目指すとする「実用準天頂衛星システム事業の推進の基本的な考え方」を閣議決定した。
 準天頂衛星の開発の進め方について、「準天頂衛星システム計画の推進に係る基本方針」(二〇〇六年三月三十一日、測位・地理情報システム等推進会議)では、第一段階として一機の準天頂衛星による技術実証・利用実証を行い、第一段階の結果の評価を行った上で、一号機を含めた三機の準天頂衛星によるシステム実証の第二段階へ進む計画とされていた。
 「地理空間情報活用推進基本計画」(二〇〇八年四月十五日、閣議決定)でも「第一段階の技術実証・利用実証に引き続き、第一段階の結果の評価を行った上で、国と民間が協力して、初号機を含めた三機の準天頂衛星によるシステム実証を実施する第二段階へ進む計画とする。」と、技術実証を踏まえて事業化を判断することが明記されている。
 よって、次のとおり質問する。なお、すべて西暦で表記されたい。

(一) 「宇宙基本計画」(二〇〇九年六月二日、宇宙開発戦略本部決定)でも、準天頂衛星については「技術・能力の実証を経て、三機体制を構築」、「技術実証・利用実証を行いつつ、システム実証に向けた施策を進める」とされ、実証試験を行った上で複数機体制にすることが明記されている。
 準天頂衛星一号機を使った技術実証と利用実証はいつ終了し、政府としてその評価をいつ終えたのか。技術実証と利用実証の結果はどのようなものであったか、あわせて示されたい。
(二) 仮に実証試験とその評価を終えていない段階で、四機もしくは七機体制を目指す「実用準天頂衛星システム事業の推進の基本的な考え方」を閣議決定したとすれば、これまでの「準天頂衛星システム計画の推進に係る基本方針」、「地理空間情報活用推進基本計画」、「宇宙基本計画」における準天頂衛星の開発に関する政府としての基本的な考え方を変更したことになる。
 実証試験の評価なしに実用化に進むことは、準天頂衛星の基礎技術の完成を確認しないまま実用化に進むことになると考えられるが、技術開発とその実用化の手続きとして何の問題もないと考えているのか。
 また、準天頂衛星以外の科学技術分野の事業において、「実証」を目的に進めながら、「実証評価」の前に実用化を進めた例があるか。あれば、具体的な事業名を示されたい。
(三) 「準天頂衛星システム計画の推進に係る基本方針」、「地理空間情報活用推進基本計画」、「宇宙基本計画」で定められていた、実証を経て実用化・事業化という方針を変更した「実用準天頂衛星システム事業の推進の基本的な考え方」が閣議決定されるまで、具体的にどの場でどのような議論が行われたのか。時系列に会議等の名称、会議等の構成員名と所属、開催日、異論を含めて議論の内容を詳細に示されたい。
(四) 「実用準天頂衛星システム事業の推進の基本的な考え方」に、「準天頂衛星システムは、産業の国際競争力強化、産業・生活・行政の高度化・効率化、アジア太平洋地域への貢献と我が国プレゼンスの向上、日米協力の強化及び災害対応能力の向上等広義の安全保障に資するものである」とある。実用準天頂衛星システムの整備が、「産業の国際競争力強化」、「産業・生活・行政の高度化・効率化」、「アジア太平洋地域への貢献と我が国プレゼンスの向上」、「日米協力の強化」、「災害対応能力の向上等広義の安全保障」となる理由はなぜか。項目別に、抽象的でなく具体的に説明されたい。
(五) 右にあげた「災害対応能力の向上等広義の安全保障」と、内閣官房が運用している情報収集衛星の目的としている「@大規模災害等への対応、A安全保障」とはどう違うのか。
(六) 一号機の実証とその評価を終えていない段階であれば、「産業の国際競争力強化、産業・生活・行政の高度化・効率化、アジア太平洋地域への貢献と我が国プレゼンスの向上、日米協力の強化及び災害対応能力の向上等広義の安全保障」を技術的に達成できるかどうかは不明確なのではないか。
(七) 二〇〇六年三月三十一日に開かれた政府の「測位・地理情報システム等推進会議(第三回)」では、各省庁の準天頂衛星システムの利用について、GPS使用の現行システムと比較した上での準天頂衛星の利用見通しの資料がある。これによると、
 警察庁は「現行システムに比べコストパフォーマンスで優れる場合は利用」
 防衛庁(当時)は「現行システムに比べコストパフォーマンスで優れる場合は利用」
 総務省は、(本省)「特に予定なし」、(消防庁)「現行システムに比べコストパフォーマンスで優れる場合は利用」
 法務省は「現行システムに比べコストパフォーマンスで優れる場合は利用」
 外務省は「特に予定なし」
 文部科学省は「現在、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が検討している「災害・危機管理情報収集通報システム」において、高精度な位置情報を収集する必要性から活用することを検討」
 農林水産省は「現行システムに比べコストパフォーマンスで優れる場合は利用」
 経済産業省は「現行システムに比べコストパフォーマンスで優れる場合は利用」
 国土交通省は「測地基準点測量等について現行システムに比べコストパフォーマンスで優れる場合は利用の可能性」(測位精度は現行システムで支障なし)
 環境省は「現行システムに比べコストパフォーマンスで優れる場合は利用」
と、文部科学省以外は現行GPS測位に比べてコストパフォーマンスが優れる場合は利用するという見解である。
 右にあげた省庁について、現在の準天頂衛星の利用見通しはどうなっているか。省庁別に箇条書きで示されたい。コストパフォーマンスで現行GPSに比べて優れていなければ、国は準天頂衛星を利用しないということか。また、コストパフォーマンスとは具体的に何を意味しているのか、あわせて示されたい。
(八) 準天頂衛星の利用実証は民間も参加して行っており、その中心となっているのは「(財)衛星測位利用推進センター(SPAC)」である。SPACによる利用実証の対象は具体的にどのようなもので、実証は終了し、その結果は明らかとなっているのか。また、民間による準天頂衛星の実用化や事業化の目途は確実に立証されているのか。
(九) SPACの役員、評議員の氏名・役職・現職を箇条書きで明らかにされたい。また、SPACの設立から直近までの国(省別)からの委託金や補助金は年度別にいくらで、合計額はいくらか。あわせて収入に占める割合は年度別に何%か、明らかにされたい。
(十) 閣議決定された「実用準天頂衛星システム事業の推進の基本的な考え方」には、必要な「法律改正を予算措置に合わせて行う」とある。該当する法律名と改正内容とをすべて明らかにされたい。また、その提出予定時期はいつか。
(十一) 運用中の準天頂衛星一号機に関わる国内外のすべての地上施設の名称と、その詳細な所在地をあげられたい。既存の施設内に置かれたものについては、その施設名も示されたい。また、各地上施設の目的、設置年月、建設整備費総額、年間維持費、国外設置のものは費用負担の状況を示されたい。
(十二) 準天頂衛星一号機の研究、開発製造から打ち上げ、運用にかかる経費(支出額)は、事業開始から今年度までで合計いくらになるか。あわせて、関係省庁別の金額も示されたい。
(十三) 四機体制もしくは七機体制の場合、準天頂衛星の軌道配置はそれぞれどのようなものか。また、準天頂衛星からの送受信エリアは、地図上に示すとどのような範囲になるのか。
(十四) 準天頂衛星を四機体制にした場合と七機体制にした場合の総事業費は、それぞれいくらと見込んでいるか。衛星の開発製造費や打ち上げ費等と、地上施設の整備運用費等の内訳とともに答えられたい。
 また、事業費はすべて国が負担するのか、民間事業者にも負担させるのか。負担させるとすれば、負担割合はどうなっているのか。
(十五) 準天頂衛星はGPSを補完し、補強機能を備えたものである。七機体制にすれば、GPSなしに準天頂衛星だけで測位が可能ともいわれているが、技術的な側面だけでなく米国との関係においてもそれは可能なのか。
(十六) 一九九〇年のいわゆる「日米衛星調達合意」により「非研究開発衛星の調達手続」が定められ、技術試験を目的としない実用衛星の調達は国際競争入札に付されることになっている。準天頂衛星一号機は実用衛星ではなかったので、宇宙航空研究開発機構は技術提案方式による随意契約により、衛星本体を三菱電機に発注することができた。実用準天頂衛星システムは文字どおり「実用」とあるので、衛星の調達に当たっては国際競争入札に付されると考えられるが、そのとおりか。あるいは「実用準天頂衛星システム事業の推進の基本的な考え方」にあるとおり、「広義の安全保障に資するもの」なので、国際競争入札に付す必要はないと考えているのか。
(十七) 内閣官房(宇宙開発戦略本部事務局)は来年度の予算が成立していない段階で、二〇一一年度第三次補正予算(案)に「実用準天頂衛星システムの整備等推進調査」として、六億六千七百万円の予算を新たに計上した。目的は「来年度から事業を本格稼働するため、今年度中に実施が必要となる実用準天頂衛星システムの開発・整備・運用に向けた必要な調査を実施するため」という。この「必要な調査」とは具体的に何を調査し、何を得ようとするものなのか。「必要な」ものとは何なのか、明らかにされたい。
(十八) GPSと準天頂衛星は「共存性及び高度の相互運用性をもって設計」(日米GPS全体会合)されているが、GPSと同様に実用準天頂衛星も軍事用の秘匿信号を送信する設計にするのか。
(十九) 二〇〇八年十一月二十八日提出の質問主意書「宇宙の軍事利用目的に関する質問主意書」(質問第二九〇号)で、「準天頂衛星が、自衛隊や米軍によって軍事に使われないという保障はあるか。」と問うた。これに対する答弁書(内閣衆質一七〇第二九〇号)では「広く一般の利用者が受信できるものである」という見解が示され、自衛隊や米軍による軍事利用を排除していないことが明らかとなっている。
 本年六月二十一日、日米外務・防衛担当閣僚会合(「2+2」)共同発表の中で「閣僚は、安全保障分野における日米宇宙協議及び宇宙状況監視、測位衛星システム、宇宙を利用した海洋監視、デュアルユースのセンサーの活用といった諸分野におけるあり得べき将来の協力を通じ、日米二国間の宇宙における安全保障に関するパートナーシップを深化させる最近の進展があったことを認識した。」とある。
 この中の「測位衛星システム」とは、米国のGPSと日本の準天頂衛星システムと考えられるが、準天頂衛星システムが宇宙における日米軍事同盟のパートナーシップを深化させるものの一つとして位置づけられていることは重大である。準天頂衛星システムは日本が開発を進めているが、目的はGPSの補完と補強である。野田内閣が押し進めている実用準天頂衛星システムとは、日本の準天頂衛星の信号が届く範囲において、米軍によるミサイルの誘導や、高々度から偵察や爆撃を行う無人機のコントロール等のための衛星測位精度の高度化に利用されるものではないのか。そうならないという保証はあるか。

 右質問する。



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