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平成二十三年十一月十五日提出
質問第五〇号

「復興増税」に関する質問主意書

提出者  城内 実




「復興増税」に関する質問主意書


 野田佳彦総理大臣は平成二十三年十月二十八日の所信表明演説において、総額十二兆円を超える平成二十三年度第三次補正予算の財源について、「歳出削減の道」、「増収の道」とともに、「歳入改革の道」に言及し、基幹税である所得税や法人税、個人住民税を時限的に引き上げることに言及した。
 これに先立ち、先月政府税制調査会より発表された震災復興費用を賄う臨時増税について、平成二十三年度の税制改正で予定していた法人実効税率引き下げ幅を三年間圧縮することと、所得税の定率増税を行うことを明らかにした。
 しかし、物価の総合指数であるGDPデフレーター(内閣府発表)で見れば、わが国は平成十年から昨年まで十三年連続してデフレ状態にあり、本年に入ってさらに進んでいる。これは、米国大恐慌の三年六ヶ月(一九二九年十月−一九三三年三月)、さらに大正十二年の関東大震災後の大正十四年から始まり昭和恐慌(昭和五年−六年)後の昭和七年まで継続した昭和のデフレの八年間をはるかに凌ぐ長期間である。今回のデフレが始まる前年の平成九年を基準として本年までの累積デフレ率はほぼ二〇%に達し、一世帯の平均所得は過去十年間で百万円減少している。このような状況の下、東日本大震災からの復興目的とはいえ、増税によりその財源を賄うことは、デフレをさらに加速させ、わが国経済を一段と沈滞させ、恐慌的局面に落ち込ませるものであると考え、以下、質問する。

一 国家経済がデフレにある中で増税を行えば、さらに経済は落ち込み、消費は冷え込み、結果、マイナス成長に拍車をかける事態になるというのは、歴史が証明しているところである。たとえば、大恐慌下の米国は、一九二九年からデフレの状況にあったが、共和党のフーバー大統領はデフレで税収が減ったことを理由に一九三二年、消費税を導入した。その結果、経済活動はさらに冷え込み、同年株価は大暴落、一九二九年比にして九〇%下がった。さらには、国民所得は一九二九年比で四七%下落した。以上のような歴史的事実について、認識如何。
二 野田政権は、歳出削減や税外収入を除き、復興財源の大部分を増税によって賄おうとしているが、増税に依らなくても財源は特別会計の剰余金を充当することで捻出が可能である。特別会計には現在、数十兆円の剰余金(いわゆる「埋蔵金」)があり、このうち多くは増税に代わる復興財源として活用できるものである。特に、平成二十一年度で十九.七兆円ある財政投融資資金の決算後積立金残高、平成二十二年度の国債整理基金の決算後積立金十三.七兆円、そして外国為替資金の決算後積立金十九.六兆円などは、すぐに取り崩し活用できる資金であると考える。とくに国債整理基金の平成二十二年度決算後の積立金十三.七兆円を取り崩せば、復興資金はすべて賄える。この十三.七兆円は国債が市場で売れなくなったときの国債購入資金であると言われているが、新規国債が市場で売れなければ、日本銀行が既発債を市場で購入して市場での流動性を供給するなどの操作をすれば、新規国債は十分市場で売却できると思われる。これこそが中央銀行の責務であり、他国でもこうしたことは行われている。よって、国債整理基金十三.七兆円はすぐに放出できる資金であると言える。以上の資金について、その存在の有無について、また、これをあえて使わない理由如何。
三 二に関連して、こうした資金を増税により賄う代わりの資金として活用するという見解について、認識如何。
四 野田政権は、今後二十五年の長期間所得税を増税する一方で、法人税を恒久的に五%引き下げる方針を決定した上で、当初の三年間だけ臨時増税を課す方向であるが、この三年間の臨時増税期間でも、法人税は減税となっている。法人税については「財政危機を起こしている国は法人税を引き下げている」という歴史的な事実がある。その典型的な実例が米国である。一九八一年からのレーガン大統領はそれまでの最高税率四六%を三四%まで下げ、さらに減価償却期間を短縮するなどして法人実効税率を大幅に下げた。さらに所得税の最高税率を大幅に下げた富裕層優遇政策の結果、財政赤字が拡大し、米国は債務国に転落し、その後の今日に至る財政赤字の主因になっている。また、英国は法人税引き下げ分を消費税増税で補おうとして暴動がおこり、アイスランドは法人税を極端に引き下げて財政が破たんした。さらに、ギリシャにおいては、法人税が引き下げられ、消費税を引き上げるという、わが国の政策にも似た税制改革を行った結果、今般の欧州経済危機の発端となった。こうした事実について認識如何。
五 四に関連して、法人税については、減税するよりも、最高税率を引き上げることにより、平成十三〜二十一年で二十五兆円あるといわれる大企業の剰余金を吸い上げ、復興財源に十分充当できるとともに、所得税増税の必要もなくなると思われるが、見解如何。
六 野田総理は、所信表明演説で「今日生まれた子ども一人の背中には、既に七百万円を超える借金があります」と述べた。「今日生まれた子ども」とは新生児を指すと思われるが、なんらの経済活動を行ったこともない新生児に七百万円の借金があるとする論拠如何。

 右質問する。



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