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令和二年十一月二十七日提出質問第五八号
国際連合人権理事会の作業部会意見書を受けた刑事司法制度の改正に関する質問主意書
提出者 松原 仁
国際連合人権理事会の作業部会意見書を受けた刑事司法制度の改正に関する質問主意書
今月二十四日、国際連合人権理事会の作業部会は、カルロス・ゴーン・ビシャラ被告人について、四回にわたって逮捕され、勾留が繰り返し延長されたことについて「恣意的(しいてき)な拘禁」にあたるとする意見書を公表した。これに対し、外務省は、「ゴーン被告人に対する刑事手続についても、自由権規約を含め、我が国が締結する人権諸条約に抵触するものではなく、法に定められた適正手続を厳格に履行し、ゴーン被告人の権利を十分に保障しつつ進められてきたものであり、ゴーン被告人に対する措置は『恣意的拘禁』には当たらないことを強調する」旨の反論文を速やかに公表するとともに、政府として、同部会に対し、異議の申し立てを行ったことは評価する。
もっとも、日本が平仄を合わせるべき欧米諸国で一般的に採用されている、被疑者拘禁の抑制、取調べにおける弁護人の立会いなどのように、現行の刑事司法制度には改善すべき点もあるといえる。
このような現状が、日本の刑事司法制度に対する誤解を生む素地となっているのではないかと懸念する。
そこで、次のとおり質問する。
一 現行の刑事訴訟手続が当事者主義に基づくことを原則としていることから、政府として、令和二年一月六日の森まさこ法務大臣(当時)が議題の一つとして述べたとされるGPS(全地球測位システム)など、保釈された被告人の二十四時間監視を可能とする機器の導入を前提として、推定無罪の原則にのっとり、被告人を原則として保釈するよう運用を改めるべきと考えるが、政府として如何。
二 刑事事件の取調べにおいて、被疑者・被告人に対して、弁護士の同席が権利として保障されていない。特に、初めて被疑者・被告人という立場に置かれた際、刑事事件に精通した警察官、検察官に誘導される危険性は顕著ではないかという指摘もある。そこで、被疑者・被告人の弁護権を実効性あるものとするために、被疑者・被告人の取調べの際の弁護士同席制度を導入すべきと考えるが、政府として如何。
三 刑事事件が、検察官が起訴した事実を追認するのではなく、検察官と被告人・弁護人の当事者が起訴事実の存否を争うという当事者主義が原則とされているのであれば、本来、どのような証拠であっても、被告人・弁護人に証拠全てが開示されるのが原則とされるべきといわれたりもするが、このように証拠全てを被告人・弁護人に開示する制度を導入すべきと考えるが、政府として如何。
右質問する。