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昭和四十四年七月二十二日提出
質問第一二号

 技術革新と鉄鋼業政策の整備確立に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十四年七月二十二日

提出者  竹本孫一

          衆議院議長 松田竹千代 殿




技術革新と鉄鋼業政策の整備確立に関する質問主意書


 公正取引委員会は、八幡製鉄と富士製鉄両株式会社の合併申請について、目下審判中であるが、本件についての政府の産業政策上の見解は、はなはだしく明確を欠いている。特に今後の技術革新との関連における見解が不十分なので、次の諸点につき、政府の見解を明らかにされたい。

一 鉄鋼業における技術革新の展望
  わが国の鉄鋼業は現在では世界的に優位な立場にあるが、近い将来における製鉄技術が現行の高炉とコークス依存の生産方式から、先進国では還元ペレット及びコークスに依存しない直接製鉄の生産方式に重点を移行することが必至とみられている。鉄鋼業における大型一貫工場の設置は、工場建設の着工から生産開始にいたるまで通常六年ないし七年を要しているが、今後の十年間には次の新しい技術開発が工業化すると予測される実情にある。すなわち技術革新のテンポは早いのである。ところがわが国の鉄鋼業は、(1)高炉方式の設備拡張競争をつづけているので、鉄鉱石や原料炭の輸入は増加の一途をすすみ、そのうち原料炭としての米炭は次第に入手難と値上りにむかつており、これが今後の生産計画を制約するおそれすら生じている。(2)鉄鋼各企業は、還元ペレット、直接製鉄、生産の無人化、コンピューター・システムの確立など、鉄鋼業の長期的なコスト引下げのための根本的な技術開発への取りくみがおくれている。(3)各企業は経営内容の改善よりも、シエア拡大競争に走り、鉄鋼業が国民経済に対してもつべき長期展望を明示すべき責任体制が欠けている。
  以上の諸事実を勘案するとき、政府は鉄鋼業の技術革新につきいかなる展望をもつのか。
  また本年四月、政府が産業構造審議会鉄鋼部会に提示した「昭和四十八年度粗鋼生産高一億一千百六十万トン見通し」において、いかなる技術開発と導入を予想しているのか、明らかにされたい。
二 鉄鋼とその代替資材との関係の展望
  近い将来においても、鉄鋼はいぜんとして中心的な基礎資材ではあろうが、その代替資材として、硬質アルミニュウムや硬質合成樹脂の開発がすすみ、附加価値の高い自動車や化学工業装置の重要部品として、これら代替資材がひろく実用される時代が来るのは必至である。
  従つて鉄鋼業は、今後の世界的大勢として、これら代替資材生産事業との間に、業務提携や事業合併等による複合企業体化の方向にすすまざるをえないと予測される。また鉄鋼業が今後も存続し、かつ国際競争力を維持強化していくためには、鉄鋼業自身の技術革新と代替資材との共存の双方の必要にかんがみて、鉄鋼一貫企業の大規模化は不可避の方向と予測される。政府のこの二点についての見解はどうか。
三 鉄鋼業の生産実態
  今回の公正取引委員会の審判において、レール、ブリキ、鋳物銑、鋼矢板の四品種が独禁法第十五条第一項一号に抵触するかどうかが検討されている。もとより、公正取引委員会の独禁法解釈と本件についての審決は尊重すべきであるが、法解釈と審判の背後に存在する次のごとき生産事実関係につき、政府はいかなる認識をもつているか明示されたい。
  (1) わが国の鉄鋼業はすべて民間企業が担当しているから、各社ともに生産する粗鋼を最も有利な圧延品種に割りふつてきたのが実態である。その意味において、後発各社が大型高炉で需要の伸びない鋳物銑を生産することなしにより有利な鋼材品種の生産にむかつてきたのは当然である。また先発八幡、富士がその間にあつて、主として鋳物銑の供給を担当してきたという経過がつづいたのである。政府はこのような経緯を事実としてみとめるか。
  (2) 大型圧延機は、圧延ロールの組替えによつて、H型鋼も鋼矢板も生産が可能である。現時点で、八幡、富士の鋼矢板生産シェアが高いのは、両社がその先発メーカーであつたからである。鋼矢板は成長商品であるから、後発メーカーも生産上の競争に参入してくるのは必至である。圧延技術上、各社とも鋼矢板増産の可能性をもつことを政府は認めるのか。
  (3) 各社の生産状況を鋳物銑にせよ鋼矢板にせよ、それぞれの単品の一時点のシェアをもつて比較するだけでなく、各社の生産競争が鉄鋼各品種のそれぞれの組合せによる総体として、かつ、動態的に比較しないと、生産実態について重大なる誤認になるおそれがあると思うがどうか。
  (4) 公正取引委員会は、食罐用ブリキについては六十パーセントのシェア、鋼矢板については国内需要の大部分を供給している事実をもつて、競争の実質的制限についての中心的判断基準としているが、公正取引委員会は、いかなる判例、または経験、または通念をもつて、これを判断基準としたのか明らかでない。前項との関連において、本件についての判断基準を、ここに明らかにされたい。

 右質問する。





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