答弁本文情報
昭和二十五年三月七日受領答弁第五二号
(質問の 五二)
内閣衆質第四〇号
昭和二十五年三月七日
内閣総理大臣 吉田 茂
衆議院議長 ※(注)原喜重※(注) 殿
衆議院議員江崎一治君提出彦根市の失業者に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員江崎一治君提出彦根市の失業者に関する質問に対する答弁書
一 彦根市方面における失業者は、かねて、彦根市当局に対して約三百名の失業者の完全就労方の要求を強硬に申入れていたところ、去る二月十四日失業者の代表者と認められる約二十名の者が彦根市役所に至り回答を求めたので、市長から、上京陳情に努めたが予算の増額は奏功しなかつたので、今後予算の関係上一日百二十名以上の就労は不可能である旨事情を説明して回答したが、右代表者達はこれに納得せず、全員就労と賃金値上の要求受諾方を強硬に迫つた。そこで市長は、午後四時頃に至り最早折衝の余地がないから退出せられたい旨代表者達に求めたが、これに応じなかつたので、同日午後五時頃彦根市警察吏員が不退去罪の現行犯として代表者十二名を逮捕したものである。なお、この事件は、その後送致を受けた大津地方検察庁彦根支部検察官において取調の結果本年二月二十三日右十二名中四名を住居侵入(不退去)罪によつて大津地方裁判所彦根支部に公制請求し、他の者はいずれも起訴猶予処分に付した次第である。
二 御質問の谷口鉄次※(注)については、検察庁としては警察からの事件送致を受けていない。ただ同人に対しては、去る三月二日北原某なる者から大津地方検察庁彦根支部に解放部落民に対する名誉毀損の告訴状が提出されているが、この事件は、目下捜査中である。
三 御質問の第三点については、御質問の如き事実の存在することは聞いていない。人権擁護の立場から、調査したいと考える。
四 彦根市における失業対策事業は、本年一月より実施しているが、一月中の運営状況は、求職者延数二九二九人、就労者延数二四五七人、未就職者数四七二人となつている。
二月以降求職希望者数は急激に増加したが、二月十日までは全員就労の措置をとつた。
しかしながら、二月における急激な増加傾向にかんがみ彦根公共職業安定所は、二月十一日以降輪番制を採用することとし、その旨労働者に発表したところ、労働者側は完全就労を希望して反対し、安定所並びに市当局に対して集団的交渉を開始し、遂に市警の出動を見るに到つたのである。政府においては、二月十五日以降失業対策事業の吸收人員を彦根市に対して増員したのであるが、滋賀県よりの報告によれば二月十五日以降においては、輪番制による紹介が円滑に実施されている。
右答弁する。