衆議院

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第4号 令和6年3月26日(火曜日)

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令和六年三月二十六日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 武部  新君

   理事 熊田 裕通君 理事 笹川 博義君

   理事 仁木 博文君 理事 牧原 秀樹君

   理事 道下 大樹君 理事 米山 隆一君

   理事 池下  卓君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      井出 庸生君    稲田 朋美君

      英利アルフィヤ君    奥野 信亮君

      斎藤 洋明君    高見 康裕君

      谷川 とむ君    中曽根康隆君

      中野 英幸君    平口  洋君

      藤原  崇君    三ッ林裕巳君

      山田 美樹君   おおつき紅葉君

      鎌田さゆり君    鈴木 庸介君

      寺田  学君    山田 勝彦君

      阿部 弘樹君  斎藤アレックス君

      美延 映夫君    日下 正喜君

      平林  晃君    本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         小泉 龍司君

   法務大臣政務官      中野 英幸君

   最高裁判所事務総局民事局長            福田千恵子君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 伊藤 哲也君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          黒瀬 敏文君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          野村 知司君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           海老原 諭君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          坂本 三郎君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    竹内  努君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    松下 裕子君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    花村 博文君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    押切 久遠君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  鎌田 隆志君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 丸山 秀治君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           淵上  孝君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房政策立案総括審議官)     青山 桂子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       巽  慎一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           鳥井 陽一君

   政府参考人

   (国土交通省不動産・建設経済局次長)       川野  豊君

   法務委員会専門員     三橋善一郎君

    ―――――――――――――

三月二十一日

 裁判所の人的・物的充実に関する請願(伊藤俊輔君紹介)(第五七五号)

 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(伊藤俊輔君紹介)(第五七六号)

 再審法改正(刑事訴訟法の一部改正)を求めることに関する請願(大石あきこ君紹介)(第五七七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

武部委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官伊藤哲也君、こども家庭庁長官官房審議官黒瀬敏文君、こども家庭庁長官官房審議官野村知司君、総務省大臣官房総括審議官海老原諭君、法務省大臣官房司法法制部長坂本三郎君、法務省民事局長竹内努君、法務省刑事局長松下裕子君、法務省矯正局長花村博文君、法務省保護局長押切久遠君、法務省人権擁護局長鎌田隆志君、出入国在留管理庁次長丸山秀治君、文部科学省大臣官房審議官淵上孝君、厚生労働省大臣官房政策立案総括審議官青山桂子君、厚生労働省大臣官房年金管理審議官巽慎一君、厚生労働省大臣官房審議官鳥井陽一君及び国土交通省不動産・建設経済局次長川野豊君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

武部委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局民事局長福田千恵子君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

武部委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。稲田朋美君。

稲田委員 おはようございます。久しぶりにこの法務委員会で、また大臣には初めて質問ができますこと、感謝申し上げます。

 大臣は気骨のある、そして筋を通す政治家だと私は思っております。今日は再審法の改正について大臣と政治家としての骨太の議論がしたいと思っています。私は国会での質疑は目を通しておりますので、その御答弁の紙にあることではなくて、大臣の本当のというか、気持ちというか意見を聞きたいと思っています。

 再審事件、この長期化が問題になっています。昨年三月に東京高裁で再審開始が決定した袴田事件、今から十年前に静岡地裁でも再審開始が決定をされております。事件から五十七年、第一次再審請求から四十二年、最初の再審開始決定からでももう十年が経過をしていて、十年前の静岡地裁でも、捜査機関による証拠の捏造の可能性、そして、当時の村山裁判官は、これ以上拘置を続けることは著しく正義に反するといって保釈を認めたわけであります。無実の人が捏造証拠で死刑になるといったことはあってはならないし、国家による究極の人権侵害だと思います。

 今、超党派で議連も立ち上げて、百六十五名、その半分以上が自民党でございます。憲法三十一条から四十条、これは刑事手続における手続保障について諸外国に例を見ない詳細な規定があります。これは、戦前の刑事手続の濫用、人権弾圧の反省の下に決められたものであって、無実の人が処罰されないというのは憲法の要請でもあります。

 一方、再審法、たったの十九条です。そして、不利益再審は現行憲法下で廃止をされましたけれども、それ以外、百年以上改正がなされていないということでございます。

 既に四件の死刑判決が再審無罪、日弁連が支援をしている十八件の再審無罪、これは決して少ない数ではありません。現在第二次の再審請求中である飯塚事件では、既に被告人の久間三千年さんの死刑は執行されているんです。新たな目撃証言や有罪の重要な証拠を覆す証言などが再審請求審で調べられ、その動向も注目されています。死刑執行後に無罪判決が出るとすれば、日本の刑事司法の在り方を根本から問い直すことにもなります。

 刑事再審は、誤判による冤罪被害者を救済する最終手段です。現行憲法の下でこれだけ多くの再審無罪が確定し、その審理に長年を要するという現状はもう見過ごすことができない、人道上の問題になっていると言っても過言ではありません。

 大臣に伺いますが、今のこの現状、明らかに立法事実があると思います。法改正をすべきではないでしょうか。

小泉国務大臣 稲田委員が今おっしゃいましたこと、最近、大変多くの方々の意識の中にあって、様々な議論が行われています。再審制度については、そういった御議論ももちろん含めて検討していくべきものだとは思います。ただ、あらかじめ申し上げておきたいのは、確定判決による法的安定性の要請と、個々の事件における今先生がおっしゃった是正の必要性、この両方の調和点を求めていくという問題の構造は基本的なところに横たわっているわけであります。

 そして、様々な観点から慎重に検討すべき、様々な観点の中には今稲田委員がおっしゃったそういう問題ももちろん含まれております。そして、それに関わる検討、協議が今始められようとしています。これは、刑事訴訟法の一部改正法の附則で求められている検討に資するため、令和四年の七月から改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会を開催しておりまして、そこで再審請求審の証拠開示等についても協議が始められております。そこが動き始めているわけであります。

 我々のスタンスは様々な観点から慎重に検討するというものでございますけれども、様々な観点には今おっしゃったことが当然含まれており、慎重ですけれども、それはバランスを取るための慎重さは求められますが、慎重に丁寧に検討していく、そういうスタンスの中で、この刑訴法に関する附則によって起こされた協議会、刑事手続の在り方協議会、これを動かして、ここで大きな成果が出るように、充実した議論がなされるように法務省としても努めていきたい、努力していきたい、そのように思っております。

稲田委員 今大臣から、証拠開示などについて動き始めている、そして議論が進んでいるというお言葉を聞きました。期待をしたいと思います。

 ただ、法的安定性ということに関しましては、再審請求というのは無実の人を救済するというのが目的ですから、そこで法的安定性ということを言うと、それはまさしく有罪判決の維持ということになって、私は法の趣旨に反してくるのではないかと思います。

 刑訴法の四百四十五条において、再審開始事由の有無の判断が必要と認められるときは事実の取調べができるということが規定をされています。これだけです、規定は。ということは、ルールがない、まさしく、取調べをするのが必要かどうか、裁判所の広い裁量が認められているということです。

 再審請求者には、証人尋問や検証などの事実の調べや証拠開示を請求する権利はありません。法務省は、裁判所は柔軟かつ適正な対応をしているとおっしゃるんですけれども、袴田事件の再審請求において証拠が開示されたのは二〇一〇年以降、つまり、死刑確定から三十年以上、一つの証拠の開示も許されなかったんです。これで柔軟で適正な対応と言えるんでしょうか。死刑確定から三十年以上、弁護人が繰り返し行った証拠開示請求を検察官も裁判所も無視し続けることができるということ自体が、私は、法の不備、手続保障がなされていないということだと思います。

 もう一つ例を挙げます。

 二〇二〇年に再審無罪が確定した湖東事件では、第二次再審の即時抗告審まで一点の証拠開示も実現せず、再審公判で多数の証拠が開示され、捜査機関が隠していた無罪を裏づける証拠が明らかになって、無罪判決が言い渡されました。

 逮捕時に二十四歳であった女性は、無罪判決が出たときには四十歳。その間、刑の執行がなされて満期で出所になる三十七歳まで拘束を、服役しておられました。一体、誰が責任を取るんでしょうか。有罪判決を受けて服役をした当事者とその家族のお苦しみに思いを致さなければならないと思います。

 無罪判決後、大西裁判官は異例の説諭を行い、逮捕から十五年以上たって初めて開示された証拠もありました、取調べや証拠開示など、一つでも適正に行われていれば、本件は逮捕、起訴されることもなかったかもしれません、十五年余り、さぞつらく苦しい思いをしてきたと思います、もう西山さんはうそをつく必要はありません、これまで裁判を通して支えてくれる人に出会ったと思います、これからは自分自身を大切に生きてもらいたいです、今日がその第一歩になっていることを願っていますと結んだ裁判官の目は赤く、言葉を詰まらせていたといいます。私も、涙なくしてこのくだりを読むことはできませんでした。

 不当な捜査と証拠隠しで女性の二十四歳から四十歳までの人生を葬り去るようなことがあってはなりませんし、私は、これを個別の事件だといって片づけることができないんです。刑事司法の在り方に対する重大な問題提起です。再審手続において証拠開示のルールのないこと自体が問題だと思います。

 さらに、検察官が不服の申立て、抗告を申し立てていることが再審請求審を長引かせています。

 資料一を示しますが、ほぼ機械的にと言ってもいいほど、検察官の抗告、特別抗告がなされているわけであります。しかも、再審公判になって、そして無罪になれば、検察官は全く控訴していません。それだけでなくて、再審公判になると、今度は立証すらしないという事件も多くあるわけであります。これでは、再審公判が何のためにあるのか分からない。

 もう一つ、資料二を示します。これによりますと、欧米では、再審開始に対する検察官の上訴ができないとしている国が多いです。できるとしている韓国でも、マニュアルを作って慎重に行うようにしているわけでございます。

 私は、検察官の抗告について何らかの制限が必要だと思いますが、大臣の見解を伺います。

小泉国務大臣 既に確定判決があり、そして、法的安定性がそれにより生じている、多くの国民がまたその安定性を前提に生活をし活動する、そういうベーシックな法秩序というものがまずあって、その上に救済の必要性、これも本当に重たいものがあります。本当に重要なものだと思いますが、やり直しをしていく、法的安定性を乗り越えていく、裁判のやり直しをする、そのことが、再審開始事由として、開始できる項目として規定されているわけであります。

 この再審開始事由がないにもかかわらず再審決定が行われた場合には、違法、不当な再審開始決定となるわけでありますけれども、何が起こるかというと、確定判決の軽視。しかるべき手続を踏んで、不服申立ても含めて手続を踏んで、そして裁判のやり直し、再審の正当性を判断するというところを踏みながら、確定判決というものを乗り越えていく、そういう手続を踏むことになっております。

 この検察官による不服の申立て、よく議論の対象になりますけれども、公益の代表者、法的安定性という公益をしょっている、私は、公益の代表者だと思います。そういうものを省いてしまって進めば、確定判決の軽視ということになることも我々は忘れてはならないと思います。

 そういう意味で、検討は必要でありますが、慎重な検討が必要だというふうに申し上げているわけであります。

稲田委員 今大臣がおっしゃった、手続を踏んでなんですけれども、手続の規定がないから問題なんです。全て、裁判官の広い裁量が認められているので、裁判官次第、裁判官がいい裁判官であればしっかりと証拠開示もやってくれるけれども、そうでなければ長年放置されるということなんです。

 また、法的安定性ということをおっしゃいましたけれども、刑訴の四百三十五条に、再審の請求は、その有罪の確定判決を受けた者の利益のためにすると書いてあるわけでありまして、再審というのは無実の人の救済のためにあるということを考えますと、法的安定性ということを言うと、それはもう有罪の維持そのものとなり、私は法の趣旨には合致していないと思います。

 さらに、公益の代表性とおっしゃるんですけれども、もう再審請求手続で検察官は当事者ではありません。公益の代表性と言うのであれば、無実の人を救済するというのが公益の代表性なわけであります。

 少なくとも、機械的に即時抗告、特別抗告を申し立てるということはやるべきではないし、また、先ほどの袴田事件において、静岡地裁で十年前に捜査の違法性が、証拠の捏造が指摘をされて、そして著しく正義に反するとまで裁判官に言わせている再審開始決定について、それに対する抗告をするということが果たして公益の代表者と言えるのでしょうか。その結果、更にまた十年という長い年月が流れたということであります。

 私はやはり、今の大臣の御答弁、公益の代表者、さらに法的安定性の意味についてもう一度考えていただきたいし、また、韓国のように、法改正ではなくても、何か運用上の慎重さを求めるということを検討いただけないでしょうか。

小泉国務大臣 こういった御議論を国会でしていただくことに大変大きな価値があると思います。

 我々の方では、今、在り方協議会というものを動かしておりますので、動いていただいておりますので、こういった国会の議論がおのずと反映されるとは思いますが、重要な論点だと思いますので、そういった点についても、在り方協議会での議論から外れないように、その対象となるように、それは心がけていきたいというふうに思います。

稲田委員 大臣のリーダーシップに期待をしたいと思います。

 再審請求手続の進め方について明文の規定がないことによって、例えば、裁判所、弁護人、検察官による三者協議、これを全く開催せず、審理の進行を行わない、期日の指定もしない、弁護人が請求する事実の取調べも全く行わず、事前の告知もないまま、突如、再審請求棄却を決定するといった不当な審理手続が行われる場合もあります。例えば狭山事件の第三次再審は、二〇〇六年の申立てから十八年が経過しても最初の決定すら出ておりません。

 再審請求手続の審理の適正さ、公平性を担保するために、手続規定の整備、すなわちルールを決めるということですね、それは必要だと思いますが、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 再審請求審の実情において、厳格な手続規定のマイナス面を指摘する、そういう議論もございます。そもそも、再審請求の実情においては、主張自体が失当である、適切性を欠くものや、同一の理由によって請求が繰り返されるものなども相当数存在するという指摘がございます。

 あくまで一般論ではありますけれども、そうした状況の下で、裁判所は個々の事案に応じて柔軟かつ適切な対応をしているというふうに認識をしております。

 再審請求審について統一的な取扱いを確保する観点から、詳細な手続規定を設けることについては、こうした裁判所による個々の事案に応じた柔軟かつ適切な対応が妨げられ、かえって手続の硬直化を招くおそれがあることも考慮に置いて、慎重な検討が必要だと思います。

稲田委員 今の大臣の御答弁はちょっと残念ですね。

 法務省は確かに、主張が入れられる見込みのないものやその見込みが極めて乏しいものが大半を占めているから広範な裁量を認めるべきだとおっしゃっているんですけれども、先ほど幾つか例を挙げたように、その結果、何十年も放置をされているということが起きているわけです。見込みのないものが多いからといって、手続保障が全く要らないということにはならないと思います。

 再審請求の審理手続を定めた規定は、刑訴法四百四十五条と規則二百八十六条のみです。裁判官の姿勢によって大きく異なるわけであります。私は、しっかりと手続を決めるべきだというふうに思います。

 裁判官の除斥、忌避についてお伺いします。

 確定判決、有罪判決をした、また再審請求に関与した裁判官がその後の再審請求の審理を担当することについて、除斥、忌避の規定を設けるべきだと思います。

 一旦有罪判決に関わった裁判官が再審請求手続に関与することは裁判の公平性を疑わせるもの、ここは規定を設けるべきだと思いますが、大臣の見解を伺います。

小泉国務大臣 現行刑事訴訟法の総則規定においては、例えば、裁判官が被害者である、あるいは裁判官が被告人又は被害者の親族であるときなど、不公平な裁判をするおそれが類型的に認められる客観的事情がある場合には、裁判官を職務の執行から除斥することとされております。また、裁判官が除斥されるべきとき、又は不公平な裁判をするおそれがあるときは、裁判官又は被告人は、裁判官を忌避することができることとされております。

 そして、刑事訴訟法のこの総則規定は、その性質に反しない限り再審請求審についても適用されることとされておりまして、こうした裁判官の除斥、忌避の規定も再審請求審について適用をされるわけでございます。

 それを超えて再審請求審に独自の除斥、忌避事由を設けることについては、その必要性、相当性について慎重な検討が必要であると考えております。

稲田委員 私は、再審請求手続においても規定を設けるべきだと思います。

 私は、大臣には本来の大臣らしく、検察目線ではなくて国民目線で、何が正義で何が公正なのか、固定観念にとらわれることなく、憲法の手続保障を再審手続の中でも実現するための法改正を推進していただきたいと思います。

 さて、話題を変えます。

 自民党安倍派の会計責任者の収支報告書の不記載罪についてお伺いをいたします。

 今回の会計責任者の犯罪事実は、政治資金パーティーの対価に係る収入の不記載、議員の政治団体への政治資金寄附についての不記載ということです。この罪は、会計責任者に故意又は重大な過失のある場合に成立をいたします。

 一般論としてお伺いいたします。政治資金規正法二十五条、不記載罪についての故意、二十七条の重大な過失の対象は、不記載であるという事実についての故意又は重大な過失があるということですね。総務省にお伺いします。

海老原政府参考人 お答えをいたします。

 政治資金規正法におきましては、故意又は重大な過失により、収支報告書に記載すべき事項を記載しなかった者について、五年以下の禁錮又は百万円以下の罰金に処する旨の規定があるところでございます。

稲田委員 それでは、重大ではない過失、つまり、単なる過失の場合は不記載罪は成立しないということでよろしいでしょうか。

海老原政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになりますけれども、政治資金規正法におきましては、故意又は重大な過失により、収支報告書に記載すべき事項を記載しなかった者について、五年以下の禁錮又は百万円以下の罰金に処するということでございます。

稲田委員 刑事局長にお伺いいたします。

 今回、検察の起訴においては、派閥の会計責任者が犯罪行為時には認識していなかった、議員の口座にあるパーティー代金についてパーティー収入としての不記載罪、そして派閥から議員の政治団体に対する寄附としての不記載罪が成立をするとしています。

 一般論としてお伺いしますが、政治資金規正法上、記載すべき事象を会計責任者が当時認識していない場合、故意又は重大な過失はなく、不記載罪には当たらないと思うのですが、見解をお伺いします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねは個別事件を前提としたものでございまして、また、犯罪の成否は捜査機関によって収集された証拠に基づいて個別に判断されるべき事項でございますため、お答えは差し控えたいと存じます。

 その上で、あくまでも一般論として申し上げれば、刑法第三十八条第一項本文は、罪を犯す意思がない行為を罰しない旨を定めておりますところ、お尋ねの政治資金規正法第二十五条第一項の罪は、先ほど御紹介ありましたとおり故意犯として定められており、また、この同条につきましては、政治資金規正法第二十七条第二項におきまして、重大な過失により二十五条一項の罪を犯した者を処罰する旨を定めているところ、重大な過失が認められない場合には、同規定により罰せられないと承知しております。

稲田委員 お金の動きがあったことを会計責任者が犯行当時に知らないものを、遡って故意、重過失があったということにはならないと思います。

 今回の事件で、会計責任者が自ら議員事務所に返金したものと、今回調査して議員の口座に残っていたことが発覚したものとは不記載の対応が違う、つまり、故意なのか、重大な過失なのか、単なる過失なのか、その対応によって決めるべきだと思います。

 その意味で、今回、検察がそういったことも全部一緒くたにして確認書を取らせ、そして起訴をしたこと、これについて私は疑問に思っているところです。

 ただ、そうだとしても、今回の事件は、派閥のパーティー券についての不適切な処理が国民の政治不信を招いた大きな事件となりました。国民の皆様におわび申し上げるとともに、政治資金規正法の改正など、国民の信頼を取り戻すために、透明性を確保するための改革に取り組んでまいりたいと存じます。

 最後に、資料三の「検察の理念」を示したいと思います。

 これは、大阪地検特捜部の証拠偽造事件、村木さんの事件ですけれども、これを受けて最高検察庁が作成をしたものです。検察の捜査の在り方の反省の上に作成をされたものです。私は、この理念に是非立ち返っていただきたいと思います。

 最近では、大川原化工機の事件で、一年近く被疑者が拘束をされて、起訴をされて、でも、その起訴は取り消されたということがあります。また、河井法務大臣の事件では、元市議が任意の特捜の取調べにおいて不起訴を示唆をされて買収目的であることを認める供述をしたことに関して、最高検が不適正な取調べであったということを認めているところであります。

 この「検察の理念」において、権限の行使に際し、いかなる誘引や圧力にも左右されないよう、どのようなときにも厳正公平、不偏不党を旨とすべきである、また、自己の名誉や評価を目的として行動することを潔しとせず、時としてこれが傷つくことも恐れない胆力が必要である、権限行使の在り方が独善に陥ることなく、真に国民の利益にかなうものになっているかを常に内省しつつ行動する、謙虚な姿勢を保つべきであるとあります。

 この理念について、最後に大臣のお考えをお伺いします。

小泉国務大臣 法務行政、またその中で、とりわけ検察権というのは大変大きな権力でございます。物理的な権力も伴う法的な権力でもあります。したがって、そこに携わるメンバーは、常に、今「検察の理念」にもありましたように、内省をしていく、自らの権力の行使について、本当に適正に、厳正公平に、不偏不党、謙虚に行われているのかということを自らに問いかけていく、お互いにまた組織の中でチェックをしていく。非常に大事なことだと思います。

 人間は完全、完璧ではないので、やはり、そういった権力のそばにいると、どうしても崩れてしまう部分があるのかもしれません。そういう議論もあります。常にそれを頭に置きながら、心に置きながら我々は戒めていく、そういう気持ちを職員にも共有してもらえるべく努力をしておりますが、なお一層励みたいと思います。

稲田委員 大臣に最後にその言葉を聞けて、本当によかったと思います。再審法の改正におきましても、この「検察の理念」にのっとり、常に謙虚であれという思いで取り組んでいただきたいと思います。

 ありがとうございました。

武部委員長 次に、鎌田さゆり君。

鎌田委員 おはようございます。

 立憲・無所属会派の鎌田でございます。大臣、今日もよろしくお願いいたします。

 今し方は、稲田議員によります再審法に突っ込んだ質問がされて、昨年の四月五日に私は細かく質問をいたしましたので、今日は与党の稲田先生にしていただいて、更に力強いなという感触を受けました。

 まず最初に、私は、旧優生保護法の観点から大臣に伺っていきたいと思うんですが、これは通告していませんけれども、本当に基本的なことなので、共感していただけるか、同じ考えを持っていただけるか、まずお聞きしたいと思います。

 そこに一つの命があったのならば、ひとしく同じ人権が存在している、尊重されるべき命と人権、これは私の考えなんですが、大臣もこれは共感していただけますか。

小泉国務大臣 はい。深く共感いたします。非常に重要な価値観だと思います。

鎌田委員 そこで、旧優生保護法制についてお伺いいたします。

 優生保護法は、御存じのとおり、一九四八年から一九九六年まで施行された法律です。第一条に、「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護することを目的とする。」とあります。つまり、優生思想を持った法律だったんですね。障害を持つ人に中絶や不妊手術をさせるという条文もありました。

 そこで、大臣に伺いたいと思います。

 これは当時です、今はもう母体保護法に変わっていますけれども、当時のこの優生思想政策、これは今、人権上、法務大臣としてどのように評価、検証されるとお考えですか。

小泉国務大臣 これは許されざることだと思います。

鎌田委員 ありがとうございました。私も同じく、許されざる法律そして政策があったというふうに認識をしております。

 そこで、大臣に、この問題には、平成三十一年に政府の談話が出されてはいるんですけれども、今、被害を受けた全ての人々が全国で闘っています。謝罪と補償を徹底すべきだと、この誤った政策について闘っています。人権擁護を所管する法務省のトップの法務大臣として、総理に対して、政府として被害者と面会をし、向き合って謝罪するように進言するべきではないでしょうか。いかがでしょう、伺います。

小泉国務大臣 優生保護法に基づき、又はこの法律の存在を背景として、特定の疾病や障害を理由に生殖を不能にする手術等を受けることを強いられた方々については、今御指摘がありましたが、一時金支給のための法律が成立をしました際に、内閣総理大臣及び厚生労働大臣から、それぞれ、真摯な反省と心からのおわびを表明いたしております。

 政府のこうした立場は今も変わらないものであります。私も同じ思いを持っています。政府の一員として、真摯に反省し、手術等を受けることを強いられた方々に心から深くおわびを申し上げたいと思います。

鎌田委員 今、法務大臣の口から、自らの言葉として、おわびを申し上げますという謝罪の言葉をいただきました。それは非常に、私としては、救いの一言でもあると捉えています。

 改めてなんですけれども、旧優生保護法の下で手術を強制された方々の中には、特に障害のない、ハンディのない方々も大勢いらっしゃいました。それから、聴覚障害、聴覚障害だから聴覚神経に何らかのハンデがあった方々なんですね、そういう方々が何の告知もされずに優生保護法に基づいて不妊の手術をさせられる、強いられるということは、その当時の方々に、私たちは立法府の人間として、あの時代を生きた人間ではないとしても、でも、これは九六年まで続いていた法律ですから、私も六五年生まれですので、本当につい最近まであった法律なんですね。もうおわびのしようもないくらい、闘っている人を応援したい気持ちなんです。

 今大臣からは謝罪のお言葉があったんですけれども、もう一度粘らせてください。大臣、総理に、面会をして謝罪をする、あるいは寄り添って、総理、いかがですかということができないのであれば、法務大臣、小泉法務大臣に期待をしたいです。小泉法務大臣に、今闘っている多くの方々の、代表の方々でもいいです、その方々と面会をし、申し訳なかったという、今ここでお述べになられたそのお気持ちを直接お伝えになったらいかがでしょうか。

小泉国務大臣 優生手術等を受けられた方々との面会、これは訴訟が係属中でもありますので、その方法等については検討させていただきたいと思います。

鎌田委員 では、司法で一旦決着がついて、そのときには、大臣、今の御答弁のとおり、検討していただいて、ちゃんと会って、向き合っていただけますか。

小泉国務大臣 訴訟終了後ということでございますね。(鎌田委員「はい」と呼ぶ)はい、そのときは面会をさせていただきたいと思います。

鎌田委員 大臣の答弁に拍手しちゃったんですけれども。ありがとうございます。是非会って、直接向き合って、大臣のそのお気持ちを寄り添う形で伝えていただきたいと思います。

 今の御答弁は議事録に残りますので、私は非常に評価をする、おこがましいですけれども、評価をさせていただきます。

 次に、私も再審法の改正について伺います。

 議連が立ち上がりました。くしくも三・一一という、私は、東日本大震災から十三年で、地元で慰霊碑の前で手を合わせているときに、三月十一日にこの国会で議連が立ち上がったんですけれども、私どもの立憲・無所属会派では、昨年のうちに再審法の改正を、党内での法案登録はもう既に済ませております。そして、昨年の四月五日に私も細かく質問をいたしました。

 先ほど大臣もお述べになられましたように、二〇一六年に成立した刑訴法等の一部を改正する法律の附則の第九条の三に、この法律の施行後、必要に応じ、速やかに、再審請求審における証拠の開示など検討を行うという旨が明記されています。

 そこで伺いたいんですけれども、これは政府参考人の方でも結構です。関係機関によるここ最近の議論と将来へ向けてのスケジュール見通し、これを伺います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 刑事手続に関する協議会というものと改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会ということについて御説明を申し上げることにしたいと思いますが、まず、刑事手続に関する協議会は、平成二十八年成立の刑事訴訟法等一部改正法の附則第九条第三項で求められている検討に資するため、法曹三者及び警察庁による協議、意見交換の場として、平成二十九年三月から持ち回りで開催されてきたものでございまして、再審請求審における証拠開示についても協議の対象とされてまいりました。これまでに同協議会は一回、同協議会の下に置かれた幹事会は合計十八回にわたって開催されておりまして、そのうち七回にわたり再審請求審における証拠開示に関する協議が行われております。

 また、改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会は、同法、改正法の附則第九条第一項から三項までで求められている検討に資するため、法曹三者、警察及び有識者を構成員として、令和四年七月から法務省が開催しているものでございまして、令和五年十一月八日、それから今年の一月十二日、そして三月十五日の三回にわたりまして再審請求審における証拠の開示等に関する協議が行われたところでございます。

 その上で、協議の進め方につきましては、構成員の方々の御意見を踏まえつつ決するべきものでございまして、ほかにも、取調べの録音、録画制度の在り方など、協議すべき項目等もありますことから、現時点において今後のスケジュールについて確たることをお答えすることは難しいことを御理解いただきたいと思います。

鎌田委員 私が興味を持つのは、今の御答弁、局長の答弁の中で、刑事手続に関する協議会、これも改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会とほぼ同時進行的に、回数は少ないですけれども行われている。両方ともお尻に協議会がついているので紛らわしいんですけれども、刑事手続に関する協議会、これは議事録は取っていますか。

松下政府参考人 失礼いたします。

 発言内容を逐語で記録したいわゆる議事録は作成しておりません。

鎌田委員 議事録は取っていない、そして非公開ということも伺っております。忌憚のない意見を闊達に交わすという点なんでしょうけれども、刑事手続に関する協議会は、法曹の方々、法務省、まさに闊達に議論するんですから、ここの協議会と改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会が有機的に連動していないと、どっちで何を議論してどっちで何を議論しているのか、再審法の改正に私は両方とも有機的なつながりが持たれていないと意味がないと思うんですね。それで、刑事手続に関する協議会、これは非公開、議事録は取っていない、だけれども、証拠開示に関する議論も交わされているということです。

 これは委員長に理事会でお取り計らいをいただきたいのですが、刑事手続に関する協議会の議事録は取っていないということでした。ですけれども、要旨あるいはメモはあるはずです。それをまとめたものでも、要旨のようなものでもいいですから、この委員会にきちんと提示をすることを理事会でお取り計らいをいただきたいと思います。

武部委員長 ただいまの資料要求につきましては、理事会にて協議いたします。

鎌田委員 ありがとうございます。

 せっかく議論しているんですから、私たちはきちんとその議論の内容を承知をした上で再審法の改正に臨んでいかねばならないと私は考えております。

 先ほど稲田委員からの質疑の中でもありました。確定審の裁判官が再審でも関与しないように、忌避や除斥、これは議論をされているのか、知りたいところです。

 私は、昨年四月五日の質疑の際に、確定審の裁判官が再審でも関与している、そういう事件は幾つありましたかという質問をした際に、お答えをいただきました。

 私から今日は申し上げますが、飯塚事件、日野町事件、大崎事件。これは裁判官がかぶっています。これは明らかに、明らかに疑義を持たれますので、どっちの協議会でもいいです、裁判官の忌避、除斥、これは議論されていますか。

松下政府参考人 正確には確認する必要があると思いますけれども、私の承知している限りは議論されていないと承知しております。

鎌田委員 昨年四月、質疑した際、最高裁は、この場所で、きちんと再審法の法制度の中に、確定審と再審で裁判官がかぶってはいけない、そういう規定が盛り込まれたら、それは除斥、忌避に値するという答弁をされていました。

 法務大臣、いかがでしょう。今、再審法の改正、議連も立ち上がって、つまり、国民の世論がこれから盛り上がっていくと思います。その際に、確定審の裁判官がまた再審でかぶるということ、これは避けるべきだと思うんですね。

 ですから、今議論されていないと。二つの協議会、両方で議論されていないんですよ。でも、これからの論点整理をされていく中で、法務大臣、これは、裁判官の除斥、忌避をちゃんとするべきだというふうに明確に御答弁いただけませんか。

小泉国務大臣 議論が今どういう段階で、どういうふうに流れていくか、これからの問題でありますけれども、御指摘のとおり、重要な論点であることは間違いないと思います。そのことに、事務局としては、しっかりと留意をしていきたいと思います。

鎌田委員 しっかりと留意をして、事務局として臨んでいくということは、これから論点に入るという解釈でよろしいですか。

小泉国務大臣 これは委員の方々主導で協議会が進められておりますので、この場で、事務局として、こうしますということは申し上げにくいわけでありまして、意をお酌み取りいただければと思います。

鎌田委員 分かりました。酌み取ります。

 期待をしますので、裁判官の除斥、忌避、確定審と再審とかぶらないようにするということを論点に必ず上げていただいて、再審法の改正の一つの論点にされることを期待をしたいと思います。

 齋藤法務大臣のときに、私、通告なしで、何で、そもそも再審法の改正は、七十年以上、手をつけられず、放置され続けてきたんでしょうかねということを通告なしで質問しました。そうしたら、齋藤大臣は、通告なしでそんなことを質問されても答えられないと言われて、答弁拒否されました。

 私、今回は通告しております。法務大臣、いかがでしょう。

小泉国務大臣 若干繰り返しになりますが、法的安定性と個別の事案の救済、このバランスを取るという非常に難しい論点があります。そういう意味で、慎重に検討が進められてきたということもあります。

 一つの例示として申し上げれば、再審請求審における証拠開示制度、これを設けることについて、かつて法制審議会の部会において議論がなされましたが、様々な問題点が指摘され、法整備がなされなかったということもありました。

 確かに、時間が経過していることは事実でございますので、今動き始めたこの在り方協議会等において充実した議論が行われ、議論が進んでいくことを我々は最大限努力したいと思っております。

鎌田委員 なぜ放置され続けてきたんですかという質問に対しての御答弁には、私は、今は納得ができません。

 結局、私は、これは立法府の不作為だと思っています。その間、もしかしたらですよ、再審請求中に死刑が執行されて、その後新たな事実が出てきたとしても、もう取り返しのつかない、国が殺したわけですから。ただ、死刑という制度があるこの日本という国家において、死刑執行を、法務省は、そして大臣は決定をするという、重く、重く、使命がありますから。ですけれども、再審法を放置し続けてきたということは、私は、立法府の人間は全て反省をすべき案件だと思います。

 次の質問に移ります。

 確定死刑囚の処遇等、死刑制度について伺っていきます。

 まず初めに、次の世論調査の設問内容を伺いたいと思います。これは内閣府が世論調査を行うと承知をしておりますけれども、予定では今年だと思うんですけれども、次回はいつでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 一般に、世論調査につきましては、調査の中立性を確保するなどの観点から、調査が終了するまでその実施予定の有無や実施時期も含めて公表しないものとされていると承知をしておりまして、死刑制度に関する今後の世論調査に関する事柄については、実施予定の有無等も含めてお答えすることは差し控えたいと存じます。

鎌田委員 大臣、おかしいと思いませんか。国民に向けて死刑制度についてどう思いますかというアンケート、世論調査なんです。それを世論調査を行うまで、内容も時期も明らかにしない。

 しかも、大臣御存じだと思いますが、死刑制度に関しての設問の内容は、死刑制度は廃止すべきか、若しくは、できるならばあった方がいい、これは誤導ですよ、はっきり言って。死刑制度の執行の内容ですとか死刑というものがどういうものなのかも国民はほとんど知らない。なのに、死刑制度はない方がいいですか、できればあった方がいいですか、そういう設問を内閣府主導で行われているんです、毎回。

 しかも、次の世論調査がいつかも今言わなかった、答弁。本来なら五年置きですから、今年行われる予定ですよ。そこに法務省として関わっていかないというのはおかしくないですか。大臣、お考えをお聞かせください。

小泉国務大臣 国会の場でどういうお答えをするべきか、それは検討しますけれども、法務省として関わり合いをしっかり持つべきだと私は思います。

鎌田委員 ありがとうございました。

 法務省としてしっかり関わりを持つべきだと。これは大臣の答弁ですから、松下局長、内閣府ときちんと、そして、死刑制度という重い、この国に存在している制度なんです、そこに大臣が今答弁されたとおり、法務省、きちっと関わっていただきたい、設問内容に。今の答弁、私は忘れないで心に留めておきたいと思います。

 続きまして、確定死刑囚に対する処遇なんですけれども、現在、確定死刑囚が置かれている処遇というのは、一時期、私が子供の頃のような時期の処遇とは全く違っていまして、例えば、土に触ることもできない、花に水をやることもできない、生き物を育てることもできない。確定死刑囚は、これらの日常の普通の権利も奪われるんでしょうか。大臣、いかがでしょう。

花村政府参考人 お答え申し上げます。

 刑事収容施設法第一条では、この法律は、被収容者の人権を尊重しつつ、被収容者の状況に応じた適切な処遇を行うことを目的とする旨を規定しているところであり、死刑確定者を含めまして、被収容者の処遇は、その人権を尊重してなされるべきものというふうに考えてございます。

鎌田委員 今、局長、最後に人権を尊重するとおっしゃいました。確かにそのように書いてあります。

 ですけれども、今置かれている確定死刑囚の処遇の状況は、人権を尊重されているとはとても思えません。昔は、ほかの確定死刑囚と会話をすることもできた、鳥を育てることもできた、もちろん、土に触って花を育てることもできた、絵を描くこともできた。やっと最近、色鉛筆、昨年質問したとき、色鉛筆は認められていない、だけれども、いつの間にか色鉛筆も認められて、ただ、鉛筆削りは危ないから、それを使わない色鉛筆が確定死刑囚の下に、しかも、色が青と赤でしたっけ、二色だけに限定していますよね。

 大臣、おかしいと思いませんか。確定死刑囚であろうと、芸術活動、土に触る、花を育てる、そういった日常の、最後あとは死を迎えるだけなんです、そのときをただ待っているんです、拘置所の中で。その待っている期間の間、当たり前の日常のそういった権利までも私は奪われるのはおかしいと思う。

 大臣、確定死刑囚の処遇について、改めるお考えを持っていただけませんか。いかがでしょう。

小泉国務大臣 刑事収容施設法第一条では、この法律は、被収容者の人権を尊重しつつ、被収容者の状況に応じた適切な処遇を行うことを目的とする旨を規定しているわけでありまして、死刑確定囚も含め、被収容者の処遇は、その人権を尊重してなされるべきものであると我々も考えております。この中身ですね、先生がおっしゃるのは。

 ちょっと詳細は私はつまびらかではありませんので、今日の御指摘を受けて、まず現状を把握していきたいと思います。

鎌田委員 確定死刑囚の現状を把握するところから始まるわけでございますか。ちょっとそこは残念なんですけれども、でも、じゃ、まず現状を把握してください。東京拘置所へ行ってみてください。各地の拘置所で確定死刑囚がどのような処遇状況に置かれているか、どうぞ、矯正局長、きちんと大臣に御報告をしてください。

 色鉛筆が、いつの間にか確定死刑囚が使えるようになったことも、どの時点で、どの告示によって行われたのか、そして、全ての拘置所にこれが行き渡っているのか、全く分かりません、資料をもらいましたけれども。しかも、色を二色に限定しているなんておかしいですよ。全ての、一般に色鉛筆が使えるような状況に私は変えるべきだ、更に拡充をしていくべきだと思います。

 私は、死刑という制度がこの国にある限り、国家は、確定死刑囚、確定したわけですから、その確定死刑囚の命を奪う、はっきり言えば殺す、国家にはその殺す権利はあると思います、今は死刑制度がありますから。でも、確定死刑囚は、国家によって殺されるとしても、日常の生活、拘置所の中での生活において、様々な基本的な人権のことまで制限をされるべきものではないと私は考えていますので、是非、小泉大臣におかれましては、ただいまの答弁のとおりに動いていただきたい、御検討いただきたいと思います。

 最後になります。

 今日は、資料も配付をさせていただきました、モノクロのものなんですけれども、「少年鑑別所に収容された少年に付く国選付添人の割合」というもの、これは日弁連の資料から引用させていただいておりますけれども、付添人なしが三二%という数字が出ています。

 このグラフで、三二%は、言われているのは、少年鑑別所に収容された少年につく国選付添人の割合なんですけれども、少年院送致の可能性も高いんです。少年院送致の可能性も高いのに、国選付添人の対象事件ではない虞犯、暴行、脅迫など、あるいは対象事件でも裁判官の裁量で選任されなかった事件ということになります。

 そこで、伺いたいんですけれども、二十歳未満の少年による非行事件については、被疑者の段階では、大人と同じく国選弁護人の支援が受けられます。しかし、現状は、暴行、脅迫、公務執行妨害など長期三年以下の罪の事件については、少年法で、家裁送致後には国費で国選付添人をつけることができないという制度になっています。このギャップを、私は小泉法務大臣の下で解消していくべきだと考えている一人です。国選付添人の対象事件を、大人の国選弁護人とそろえるべきではないでしょうか。少年は、自分の意見をなかなか言いづらい、資力もない、そういった少年の置かれている状況を鑑みれば、これは大事な点だと思いますが、大臣、お考えはいかがでしょう。

松下政府参考人 お答えいたします。

 現行少年法では、死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件において、家庭裁判所が検察官関与決定をした場合などに国選弁護人を付するということとしております。

 お尋ねのように、国選付添人制度の対象事件を拡大するということにつきましては、拡大には相応の予算措置を伴いますところ、現下の厳しい財政状況の下で国民の理解を得るためには、その必要性を慎重に吟味する必要がございます。

 その上で、家庭裁判所が少年の後見的役割を果たすという少年審判の構造、刑事事件とは異なる構造に鑑みますと、国費を支出して国選付添人制度の対象を全ての事件に拡大すべき必要性は必ずしも明らかとまでは言えない、言い難いということなどを踏まえますと、慎重な検討が必要であると考えております。

鎌田委員 もう間もなく時間は終わりますので、これで最後にしたいと思いますが、今刑事局長が答弁されたとおり、少年審判と刑事裁判では手続がそれは異なります。ですけれども、事実の確認とか、それから立ち直り、これからどう再起していくのか、その可能性を審理するという点では同じです。さらに、少年は未熟です。成人以上に、大人以上に弁護士の支援が必要だと私は考えています。

 今現状は、少年が置き去りにされているんですよ、大臣。この質問を最後にしますから、今度は大臣に答弁いただきたいです。現状は、多くの少年が置き去りにされています。国選付添人対象事件の範囲が限定されているから、家庭裁判所送致後は国選付添人が選任されていないことが少なくありません。実際の選任数は、少年鑑別所に収容された少年のおよそ七割、これ、二〇二二年です、およそ七割なんです。つまり、いわゆる置き去りにされた少年が多数発生しているということなんですね。ですから、これは、少年法の改正も必要ですし、この置き去りにされている少年というものを、きちんと法律の専門家がサポートをすることが大事だということ。

 そしてさらに、大臣には、是非御認識いただきたいのは、今、日弁連が自分たちで基金をつくって、自分たちの特別会員の会費でもってお金を集めて、そしてこれを賄っているんですよ。ですから、今回、法テラスの充実も、大臣、所信で述べられました。

 ですので、この二点から、是非この問題は今後大臣の頭の中にもしっかり入れていただいて、置き去りの少年をこれ以上生まない、全ての少年に国選付添人を、制度をつくっていくということを前向きに御検討いただけないでしょうか。

武部委員長 小泉法務大臣、答弁は簡潔にお願いします。

小泉国務大臣 先生のお考え、その趣旨、またお気持ち、よく理解します。しっかり受け止めます。

鎌田委員 終わります。ありがとうございました。

武部委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、会派を代表して御質問いたします。

 先ほどの稲田議員の御質問と松下刑事局長の答弁、ちょっと、これを見ていらっしゃる国民の方が誤解する方もおられると思うので、そこをもう一回確認させていただきたいんですけれども、まるで稲田議員は、認識がなかったら重過失でないようなことをおっしゃられたわけですね。その不記載のことを知らなかったんだから、重過失ではないでしょうみたいなことをおっしゃられていたんですけれども、それは全然違いまして、例えば、信号があった、それは赤信号だと思って突っ込んだら故意ですよ。信号を見ませんでした、信号が赤信号なことを認識していませんでした、それなら過失ではないになるわけないですよね。そうでしょう。だから、赤信号を認識していなかったら、それは重過失なわけです。

 会計責任者が、稲田さんですと百九十六万円ほどの不記載を、まあ、知っているのか知らなかったか知りませんけれども、会計責任者が百九十六万円も不記載なのを知らなかったら、それは重過失ですよ、通常ね。知らないことが重過失だと思うわけです。思うというか、それはそうなんです。

 これは確認させていただきますけれども、何かを認識していないから過失でないということはない、何かを認識していないことは、故意を否定することにはなっても、認識していないことは過失でないことにはならないし、むしろ、認識していないこと、認識すべきものを認識していないことは、むしろ過失、何なら重過失の要件になり得るということを確認させていただきたいと思います。お願いいたします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 いずれにしましても、それは重過失が成立するのか過失が成立するのかという犯罪の成否の話でございまして、犯罪の成否につきましては、捜査機関により収集された証拠に基づいて個別に判断されるべき事柄でございますので、お答えは差し控えたいということを前回も申し上げましたし、今回も申し上げさせていただきます。

米山委員 そうしますと、何と、日本の法務行政は、信号を見なかったときに、信号を見ないで突っ込んで、そして事故を起こして人を殺すなり物損を起こすなりしたときに、それは過失かどうかを言わないんですね。それはやってから判断してくれということなんですね。そんな法務行政でいいんですか。

 ちなみに、重過失での犯罪、道交法百十五条とか、定められていますよ、重大な過失。でも、その中身は言わないんですね。もし赤信号を認識していなかったら、それが過失かどうかは大臣も刑事局長も言わない、それが日本の法務行政なんですか。

 もう一度確認させていただきます。別に私、個別のことを聞いていないので。認識していないということは、過失を否定しませんよね。むしろ過失の一要件になりますよね。むしろ当然認識すべき、ドライバーだったら、赤信号、信号を認識していない、会計責任者だったら、入金、百九十六万円もの入金を認識していない、それは別に、個別にはいいですよ、でも、認識していないということは重過失の一要素になりますよねという刑法の一般的解釈を聞いているんですよ。それに対して答えなくて、国民が判断できますか。もう一度御答弁をお願いいたします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 故意犯というのは、おっしゃるように、犯罪事実についての認識があって、それを認容して行為を行うということが故意犯でございます。過失犯は、認識がない、あるいは認識があっても認容はしていない、けれどもそれについて過失があるというような場合でございまして、ちょっと済みません、講学上の正確な言い方を今直ちに御説明できませんけれども、認識がないイコール過失がないということではないということは申し上げておきます。

米山委員 そのとおりだと思います。これは刑法の基礎ですよね。稲田さんは一応弁護士でいらっしゃるはずなので、認識がないから、不記載を知らなかったから重過失じゃないみたいなことを言われるのは非常に、自己弁護が過ぎるといいますか、しかも間違っていますからね。そういうのは是非、見ている国民の皆さんは誤解しないでいただきたいですし、特に、与党の先生方がそんな誤解、ミスリーディングな質問をしていただきたくないと思います。

 それでは、私の予定した質問の方に移らさせていただきます。

 前回の質問に引き続きまして、長野刑務所において男性収容者が低体温で凍死したと報道されている事件について御質問いたします。資料一のところにあります。

 この事件は、人身事故による罰金を納付できずに、労役場留置、おおむね日当五千円程度で労働に従事して罰金を完納させる労役に服していた服役者が、服役者というのか留置されていた人が長野刑務所内で死亡して、当初、明確な死因が分からず病死とされていたのが、司法解剖により低体温症による死亡とされたものと把握しております。

 三月十三日の私の質問で解剖報告書と診療録の本委員会への提出をお願いするとともに、三月十八日には長野刑務所を視察してまいりましたが、解剖報告書も診療録も提出はできないという御回答をいただきました。これはなぜできないのでしょうか。その理由をお答えください。

小泉国務大臣 まず、前提として、今月十三日の本委員会において御説明申し上げましたように、我々は法務行政の視点で本件についてしっかりと現状把握をし、また原因を究明し、我々自身が事の次第を全面的に把握する必要がまずあるというふうに思っております。

 その後、国会にどのようにそれを御報告するかは検討させていただきたいと考えておりますが、この一次資料たる解剖報告書そして診療録、それぞれお出しできない理由がございます。

 まず、解剖報告書の提出についてでございますが、一般論として、司法解剖は捜査機関が捜査活動の一環として行うものであり、本件について、現在、捜査機関において捜査中であるということでございまして、法務省としては、現段階では、現時点では、解剖報告書の存否、その提出の可否については、これは捜査機関の手に委ねられておりますので、我々が今この時点で申し上げるということは難しい面があるということを御理解をいただきたいと思います。

 また、診療録についてでございますが、これは診療録そのものが個人に関する情報を内容とするものであり、情報公開請求に対しては不開示情報に該当するものとして取り扱っております。こういった取扱いの統一性ということから考えましても、診療録の提出は難しい、差し控えざるを得ないというふうに考えております。

 しかし、いずれにせよ、こうした一次資料、我々もまだ手に入れていないわけですが、何とか行政の立場において、それを入手し、分析し、原因を究明し、またそれを国会に報告する、これはしっかりとやっていきたいと考えております。

米山委員 とはいえ、これはもう五か月ぐらいたっているわけですよ、十月三十日に亡くなられたということですからね。そこからもう五か月たっているので、見ていないというのは通常なくないですかと思うんです。

 解剖報告書は、数か月、二、三か月はかかりますけれども、通常、もうそれは届いているはずだと思います。届いているか、少なくとも見られる状態になっているといいますか。さらに、診療録に関しては、だって、刑務所に勤務している医師というのは、刑務所の、非常勤かどうかは知りませんけれども、職員ですから、その文書は法務省の文書ですよ。だから、手に入れるも手に入れないもないわけです。

 法務省で調査されるのはそれは結構なんですけれども、我々も、国会議員として国政調査権に基づいて調査したいと言っているわけなんです。しかも、何せ世の中には今コピーというものがありますから、そちらでどんどんそれは精査していただいていいんですけれども、そのコピーをこちらに出していただく、それは当然のことだと思うんです。

 ちなみに、情報公開法だと言いましたけれども、まず個人情報の保護に関する法律の方では、生存する個人に関する情報が個人情報ですから、個人情報保護法に関しては別に、死亡された方の情報は特に保護対象じゃないんです。

 さらに、だから情報公開法の方だって、例えば五条で、確かに、個人に関する情報が入っていたら不開示ですよとはありますけれども、しかし、次に掲げる情報を除く、ロ、人の生命、健康、生活又は財産を保護するために公にすることが必要であると認められる情報は除いていい、除かれるわけです。

 さらに、六条、開示に係る行政文書に前条第一号の情報が記載される場合において、要は個人情報が記載されている場合において、当該情報のうち、氏名、生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより、公にしても個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは、当該部分を除いた情報は、同号の情報に含まれないものとして、前項の規定を適用するだから、結局、要は名前とか生年月日を外して、ちゃんと出さなきゃいけませんよと書いてあるわけなんですよね。

 どう考えたって、この診療録というのはすごく重要じゃないですか。だって、これは同じことが繰り返されたら、他の受刑者が亡くなるかもしれないわけですよ。他の受刑者にとっての生命や身体に関わる重要な情報ですよ。

 しかも、名前と生年月日をマスキングして、個人なんか特定されないでしょう。だって、この方は中肉中背で、特段、例えば三メートルもあって、そんな人は日本に一人しかいないとかいう人じゃないわけですよ、別に。ごくごく平均的な身長、体重であって、名前と、しかも年齢もそんなに特異じゃない。例えば百五十歳まで生きている方でしたら、それは百五十歳と年齢があった瞬間にこの人と特定されるかもしれませんが、そんなことは全くない。だから、マスクすれば何も個人は特定されないんです。しかも、非常に残念ながら亡くなっているから、その情報を開示したからといって、この方に不利益はほとんどないんです。なのに、何でそうやって開示を拒まれるんですか。その法的根拠をもう一度教えてください。

花村政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの国会への死者の診療録等の提出につきましては、情報公開法及び個人情報保護法の規定に準じて対応する必要があるものというふうに考えてございます。

 診療録等につきましては個人に関する情報を内容とし、一般論としてでございますけれども、情報公開法におきましては、開示請求に係る行政文書に個人に関する情報が記録されている場合、原則として、当該部分は不開示とされることとなりますほか、一般的には、死者の名誉、プライバシーに関する我が国の国民感情や、死者の情報開示が遺族のプライバシー侵害になり得ることなどを考慮すると、情報公開法の個人には死者も含むと解するものと承知をしてございます。

 また、死者でありましても、矯正施設に収容されている事実を含めまして、矯正施設収容中の情報については、御遺族のプライバシー保護の観点からも特に取扱いに配慮すべきものと考えており、個人情報保護法の規定にも準じて対応する必要があるものと考えております。

 このように、情報公開法及び個人情報保護法の規定に準じまして、診療録等の提出につきましては差し控えさせていただきたいと考えているところでございます。

米山委員 まず、先ほどもう指摘しているんですけれども、個人情報保護法においては、第二条、「定義」、「この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。」ので、死者は入りません。そういう明らかに違うことをこの国会で言うのはやめてください。この後、それは訂正してください。個人情報保護法になんか入りませんから。

 その次の、もう先ほどこれも読み上げたんですけれども、じゃ、いいですよ、行政機関の保有に関する情報の公開に関する法律、それに準ずるとして、情報公開法に準ずるとして、第六条に書いてあるんですよ。行政機関の長は、開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合において、不開示情報が記載されている部分を容易に区分して除くことができるときは、開示請求者に対して、当該部分を除いた部分につき開示しなければならない。ならないですよ。

 情報公開法の自分たちに都合のいいところだけはピックアップして、都合の悪いところはまるで無視、それはおかしいでしょう。情報公開法に準拠するんだったら、六条にあるとおり、名前と生年月日その他、住所だっていいですよ、個人を特定できるようなものは削除したらいいじゃないですか。容易にできるでしょう、そんなの。黒マジックやるだけですから。そうして容易に分離できるなら、あとは開示しなければならない、それが情報公開法に書いてあるんです。

 今ほど情報公開法に準拠するとおっしゃられましたので、準拠して開示してください。御答弁をお願いします。

花村政府参考人 お答え申し上げます。

 個人情報保護法における個人情報とは、生存する個人に関する情報のことを指し、そのため、委員御指摘のとおり、死者に関する情報については同法の対象とならないというふうなところでございます。

 これは、一般的に、開示請求権等を行使するのは生存者であり、死者の情報が同時に遺族等の個人情報とも言える場合には、死者の情報を同法の対象としなくても、遺族等の個人情報として保護すれば足りることなどによるものと承知しており、死者に関する情報については何ら保護する必要はないというふうな趣旨ではないものというふうに承知をしております。

 また、同法に基づく保有個人情報の開示請求におきましては、開示請求者以外の個人に関する情報は不開示とされますが、一般的に、この個人に関する情報には死者に関する情報も含まれると解するものと承知しておりまして、矯正局としては、死者に関する情報でありましても、原則として不開示とすることとしております。

 いずれにせよ、個人情報保護法における個人情報に死者に関する情報が含まれないからといって、死者に関する情報を直ちに開示すべきではなく、その提出については慎重に対応すべきものと考えております。

米山委員 そういう無意味な答弁はやめていただけますか。さすがにちょっと、これは本当に答弁妨害でしょう。私は、そんなこと聞いていないし。それは訂正だけすればいいんです。だって、含まれていないんだから。直ちに全部含まれるなんて言っていないですよ。でも、少なくとも、それは違うんですから、違うと言えばいいんです。

 そして、大臣にお伺いします。そんな都合のいいことばかり言わないで、ちゃんと、情報公開法第六条に基づいて、個人を特定できるものを除いて開示しなければならないんですから、開示してください。何でそれは無視できるんですか。片方は、自分の都合のいいところは尊重するのに、何で自分の都合の悪いところは無視できるのか、ちゃんと理由を言って、どうするのか聞かせてください。

小泉国務大臣 情報を秘匿しようという意図があって申し上げているわけではないのであります。

 まず、個人情報保護法あるいは情報公開法、こういった仕組みがあって、我々はそれに制約を受けているという説明を一般的に申し上げているわけで、ただ、国会の国政調査権に我々が協力する、応える道、それはあり得ると思っております。

 委員の別の問いで、ウィシュマさんのケースにおいて診療録を出したじゃないか、出ているという御指摘がありました。至急確認しましたら、要約版ですね、個人情報のところは除いているんでしょう、要約版をほかにお出ししているわけであります。

 そういう知恵が既に蓄積されておりますので、そういったものもよく検討した上で、丁寧に、できるだけ情報が開示できるように、しかし二つの法律には抵触しないような形をしっかり検討したいと思います。

米山委員 今、前向きな御答弁をいただきましたので、ありがとうございます。

 もうお答えいただきましたので次の問いは飛ばしますけれども、指摘させていただきますと、ウィシュマ・サンダマリさん、令和三年三月六日に亡くなられて、五か月後の同年八月に報告書が提出されております。ホームページに公開されております。そこには、要約版ですけれども、カルテも、診療録もちゃんと公開されているんですよ。だから別に、やっていらっしゃるわけなので、そういうダブルスタンダードなことを、しかもとうとうとおっしゃられるのは、それはもう本当にやめていただきたいと思います。できることですから、そしてそれは必要なことですから。

 次に、この亡くなられた方の身長、体重、そして年齢、当時の摂取カロリー、これは答えられるところで答えてください。情報に反するというならそれはそれで結構ですけれども。

花村政府参考人 個別の収容者の身体状況等の子細については、プライバシー保護等の観点からお答えは差し控えるところでございますけれども、本件に関してお答え可能な範囲で御説明をいたしますと、年齢は六十代、身長は百六十センチメートル台、体重は五十キログラム台であります。

 摂取カロリーにつきましては、居室内で生活する者に給与する食事として一日当たり二千二百二十キロカロリーを給与していたところ、食事の摂取状況が不良であり、代謝疾患や腎尿路生殖器系の既往歴があり、及び、本人の活動量が低下していることを踏まえ、当該食事の給与に加えまして、経口栄養剤をまずは九百キロカロリー、三百キロカロリーを一日三回投与をして、経過を観察していたものというふうに承知をしております。

米山委員 これは、我々が視察したときに、もう食事は食べておられなかった、その栄養補給剤、それだけを飲んでいたと。そうすると九百キロカロリーになるんですよ。でも、お医者さんは、糖尿病で大した作業もしていないから九百キロカロリーでいいと言っていたと、我々はちゃんと聞きましたので、それは恐らく事実なんですよ。

 ところで、資料六を御覧ください。これは糖尿病に対する栄養指導で、糖尿病学会のステートメントで、そうはいったって、糖尿病の方だって、大体、軽労働、軽い労働の人でもキログラム当たり二十五から三十キロカロリー、だから、五十キロなら千五百キロカロリー、六十キロなら千八百キロカロリー、そのぐらいですよというステートメントが出ているわけです。

 大体、今おっしゃられたように、実際、刑務所で二千二百二十キロカロリーを出しているわけですよ。そうでしょう。だって、要はそのぐらい必要なんですって。そもそも、そうでないなら、九百で済んで二千二百二十キロカロリーを本当に出しているなら、それは太っちゃいますからね。それは明らかに、通常生きていくのに千五、六百から二千ぐらいは要るんです。

 なのに、このお医者さんはなぜか、九百で大丈夫です、九百であることを認識していながらそう言っていたわけなんです。これはさすがに根拠を示していただかないと困ると思うんですよ。もう調査をされていると思われるので、だってこの死亡事案からもう四か月半たっていますから。

 一体全体、このお医者さんはなぜ九百キロカロリーでいいと言ったのか、どのような根拠に基づいてそう言ったのか、法務省の認識しているところをお答えください。

花村政府参考人 お答えします。

 一般に、経口栄養剤の投与を行う際には、食事の摂取状況はもとより、本人の持病の内容や活動量等を踏まえて、必要な投与量を個別に検討するものと承知しております。

 その上で、本件につきましては、通常の食事、一日当たり二千二百二十キロカロリーでございますが、これを給与した上で、実際の摂取状況が不良であったことから、これを補うため、まずは九百キロカロリーを経口栄養剤により投与し、経過を観察することとしたものと承知しております。

 また、当該労役場留置者を診察した長野刑務所医師におきましては、本件に限らず、これまで医師として診療を重ねる中で培われた専門的知見や経験に基づいて本件も対応しているものであり、必ずしも本件対応のために個別に参照した医学文献等が具体的にあるものではないというふうに認識をしております。

 その上で、糖尿病を有する者に対する栄養補給の在り方につきましては、目標とする摂取エネルギー量は年齢や病態、活動量等を考慮して個別に設定すべき旨は、委員御指摘の日本糖尿病学会のコンセンサスステートメントにも記載されているものと承知しております。

米山委員 今の答弁は、要するに、このお医者さんが九百でいいと言ったのは、分からない、若しくは根拠はないとおっしゃられたわけですね。しかも、それは調べた上で根拠はないとおっしゃったわけですよね。しかも、それはどう見ても日本糖尿病学会のコンセンサスステートメントに反しているわけですよ。そこから明らかに過少なわけです。それは結構重大な問題じゃないですか。

 だって、千五、六百要るところを九百しか取っていなくて、それが十日ぐらい続いていたといえば、それは大分カロリーが少ない状態ですよ。しかも、それをお医者さんが認識して放置していたというのは、それこそ重大な過失じゃないんですかね。

 そういうものをちゃんと、もちろん法務省で調査していただいてもそれはいいんですけれども、それを報告していただくのは当然だと思うんですけれども、我々だってちゃんと調査すべきです。だって、私が言うまでこれは出てこなかったでしょう。我々が刑務所に行って確認して初めて今これが出てきたんですよ。それまで四か月もの間、今の話、全く確認していなかったんでしょう。それは明らかにおかしいじゃないですか。それは何度も繰り返しちゃいますよね、今だって。これは是非出していただきたいと思うんですよ。

 ちなみに、私、刑務所を見てきまして、率直に言って、そこそこな建物だなと思いました。しかも、同じ階、隣の部屋に、いろいろな方、別の方も入っているわけですよ。そうすると、幾ら何でも、この亡くなられた人の部屋だけが非常に寒いというのは考えづらいわけですよね。この方の部屋が寒いなら、ほかの部屋も寒いから、だったら、ほかの部屋の方々も寒い寒いと言うはずだと思うんです。そういうことが全くない中で亡くなられた。そうすると、本当に寒い中で凍死したというのは、客観的状況から正直考えづらいと思うんです。

 でも、皆さん結構、私の配った資料の最初の資料を見た人は、日本はそんな、物すごく寒いところに受刑者を放置して凍え死にさせるところなのかと思っていると思いますよ。その疑い、日本はそんなひどいところなのかと思う疑いを晴らすためには、きちんと死因を、どういう死因なのか、どうして凍死と言われているのか、それを示すべきなんです。

 可能性としては、やはり一つあるのは、そもそも凍死という検視といいますか解剖報告が間違いだったかもしれないわけです。それは、死亡推定時刻を間違えてしまって、直前に見ていたときに御存命だった、それなのにこんなに体温が下がっているから、だから凍死したに違いないと思ったけれども、実はもっと前に亡くなられていて、その体温の低下を勘違いした。あり得ますよね。それは、解剖報告書をもう一回見直さなきゃいけないです。

 もう一つは、今言ったみたいに、カロリーが余りにも少なかった、自分で熱をつくることができなかった、それによって、それほど低温ではないんだけれども亡くなられたということだってあり得るわけです。それは、やはりちゃんと診療録を確認しなきゃいけないわけなんですよ。

 ですので、そういうことをすることは、むしろ刑務所の皆さんの疑いを晴らすわけです。日本の司法に対する信頼を取り戻すことなわけです。ですので、是非これは出していただきたいと思いますが、大臣の御所見を伺います。

小泉国務大臣 大きな建物の中の一部屋で低体温症で亡くなった、また九百カロリーであった、様々な疑問があるわけでございます。これを解明しない限りは、法務行政として、同じことが二度起こらないということを保証することはできないので、何としてもその真相を究明したいと考えております。

 今先生の御質問で御指摘いただいた知見も大変鋭いものがあって、仮説でございますけれども、我々にとって非常に有益な情報だなというふうにも思いました。

 また、おっしゃるように、これをはっきりさせないと、日本の矯正施設というのは本当にそういうずさんなことをやっているんだ、非人道的なことも起こり得るんだという誤解が拡散して、それを消せなくなる、そういう大きな問題も抱えています。

 ですから、是非、我々もできる限り努力をしますので、情報提供については、先ほど申し上げた二つの法律の制約はありますが、それをクリアしつつ、情報を共有していただいて、そして、国会のお立場から御検討いただく、我々も行政の立場で検討を深める、そして、その両方を合わせて真相が究明されていく、そういったことが望ましいというふうに思っております。

米山委員 今、大変ありがたい御答弁をいただいたと思います。これは決して誰かをあげつらいたいわけじゃなくて、むしろ真相を究明したいわけですので、是非、御開示といいますか、公開していただければと思います。

 時間がちょっと中途半端になってしまったので、次の特定技能の方はちょっと飛ばさせていただいて、侮辱罪の方をお伺いしようと思うんです。

 これも途中で終わるかもしれませんが、侮辱罪を厳罰化してから一年半ほど過ぎております。二〇二一年九月二十二日の法制審議会の資料によりますと、侮辱罪の科刑件数が、二〇二〇年までおおむね三十件程度で推移しておりますが、二〇二一年から二〇二四年の、これは厳罰化してからですけれども、受理、起訴件数を御教示ください。

松下政府参考人 お答えします。

 検察における侮辱罪の受理件数及び起訴件数についてお答えいたしますと、まず、令和三年については、受理件数は百八十五件、起訴件数は四十二件です。次に、令和四年については、受理件数は二百二十五件、起訴件数は四十三件でございます。一方、令和五年、六年についての受理件数、起訴件数は、現在取りまとめ中、又は把握に努めているところでございまして、まだ外部にお示しできる統計はないと承知しております。

米山委員 では、発信者情報開示請求の件数の推移の方を御教示ください。

福田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 発信者情報開示命令申立てに係る全地方裁判所の新受件数は、いわゆるプロバイダー責任制限法の改正法が施行された令和四年十月が百七十九件です。その後、半年ごとに月の件数を見ますと、令和五年四月は三百三件、同年十月は四百五十一件であり、直近となる令和六年一月は四百十四件と推移しております。

米山委員 発信者情報開示請求の申立てから開示までの期間の推移を御教示ください。また、時間がかかっているなら、その理由もお答えください。

福田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 全地方裁判所における発信者情報開示命令申立ての既済事件の平均審理期間は、運用が開始された令和四年十月一日から一年後の令和五年九月末までが七十六・三日、令和四年十月一日から直近の令和六年一月末までが八十四・〇日となっております。

 平均審理期間が少し延びておりますのは、手続の運用開始直後は係属期間が比較的短い事案の占める割合が高いためであり、平均審理期間は今後しばらくは徐々に延びていく可能性があります。

 また、時間を要しているかどうかという点ですけれども、平均審理期間は先ほど述べたとおりでございますが、中には発信者情報の開示までに時間を要するケースもあると承知をしています。その原因について網羅的に把握しているわけではございませんので、確たることは申し上げられませんが、今私どもで承知しておりますところを御説明をいたします。

 発信者情報開示命令申立て事件の手続は、申立人がコンテンツプロバイダーに対してアクセスプロバイダーの名称等の提供を求める申立てをし、裁判所の提供命令に基づきコンテンツプロバイダーが申立人にその情報を提供すると、申立人がアクセスプロバイダーに開示命令申立てをし、両プロバイダーに対する開示命令事件が一体的に審理されるという流れが想定をされております。

 しかしながら、裁判所から提供命令が出されたにもかかわらず、コンテンツプロバイダーがこの提供命令を長時間履行しないことから、発信者情報開示に向けたその後の手続を進めるのに時間を要するケースがあるなどと聞いております。

米山委員 ちょっと時間が過ぎておりますが、後ろの道下議員と調整させていただきます。

 これはおっしゃるとおりなんです。侮辱罪厳罰化は、先ほど来の数字からそれほど効果があったとは、それはいろいろな評価があるでしょうけれども、何とも言えないんですが、プロバイダー責任法の方は、それは確かに件数は増えたんだと思われるんです。

 ところが、これは私の感覚として、しかも実体験もあるので、個別の企業の名前を出していいと思うんですけれども、旧ツイッター、Xが全く開示に応じない。幾ら裁判所から開示決定が出ても開示してくれないということが起こっております。

 これはこの法律の中ではない話ですので、是非、改正に向けてしっかりと取り組んでいかなければならないことだと思いますので、そこのところを、今後、法案として出てくることも予定していると伺っておりますので、是非、その点は法務省として取り組んでいただけることをお願いいたしまして、私からの質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

武部委員長 次に、道下大樹君。

道下委員 立憲民主党・無所属の道下大樹でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 ちょっと質問の順番を入れ替えまして、先ほど、米山隆一議員からお話がありました長野刑務所について質問をさせていただきたいと思います。

 我が会派として、長野刑務所を、先日三月十八日、御協力いただきまして、視察をさせていただきました。

 建物としては、平成二十一年ですかね、に完成して、新しい方だということで、環境的にはいいかもしれませんが、ただ、残念ながら、当初の発表では病死、そしてその後、低体温症で亡くなったのではないかという報告があったということでございます。

 ちょっと先に聞きますけれども、この留置者の死因と再発防止について、先ほど来もありましたけれども、改めて、今、現時点で法務省として把握していること、それから、再発防止に向けてどのようなことを検討し、取り組もうとしているのか、伺いたいと思います。

花村政府参考人 お答えいたします。

 死因につきましては、そもそも低体温症と判断された理由につきましては私ども承知しておらず、お答えするのは困難でございます。

 ただ、矯正当局におきましては、現在、捜査機関による捜査活動への影響を考慮しつつ、慎重かつ速やかな調査に努めているところであります。

 まず、調査を適切に行うことが肝要であるというふうに認識してございまして、できる限り速やかに調査を遂げまして、再発防止策を含め、その後の対応の在り方については今後検討してまいりたいというふうに考えてございます。

道下委員 法務省としてもしっかりと捜査当局に情報を求めて、そして、死因がどうだったのか、はっきり認識をした上で再発防止に取り組んでいただきたいと思いますし、先日の米山議員が、このカルテ等の開示を理事会で取り計らっていただくようにお願いしましたので、こちらの方にも情報開示ということで、先ほども長く詰めましたけれども、亡くなられてしまったわけでありますが、しっかりと個人を特定するところはちゃんとマスキングした上で、立法府にも、国会にも提供していただかないと、我々としても、再発防止に向けた議論等、また原因の追求だとかはできないので、是非しっかりとやっていただきたいと思います。

 そこで、なぜ低体温症で亡くなられるという経緯になったのかということを、私、視察をさせていただいたときに質問をさせていただいて、ちょっと思ったことがあるんですね。

 この方は、人身事故を起こして罰金刑を受けたものの支払われなかったため、刑務所内で軽作業に従事する労役場留置で収容されたということでございます。それで、収容されたときに、医師の診察によって、糖尿病や腎機能の障害など複数の持病があったということでありますが、視察したときに、この留置された方は糖尿病や腎機能の障害を治すような薬を持参していたのかというふうに聞いたら、持参していなかったということなんですよ。薬がなかったんです。

 つまり、これは推測なんですけれども、罰金を支払うこともできなかったということは、非常に生活的には困窮していた、日頃、腎機能、糖尿病などの治療も、病院に行けなかった、だから薬ももらえなかったのではないかというふうに思います。

 今、日本国内、国民皆保険制度です。一割負担、三割負担、いろいろありますけれども、誰もが日本の高い医療水準の診察を受けられる、そして薬も処方されるという中で、本当にこのような残念な状況で通院できなかった、薬ももらえなかった、そういう方が刑務所に収容されることによって、私は、本来、刑務所外の医療と同等の医療を受けられるべき環境でなければいけないというふうに思うんですが、健診をしたときに糖尿病や腎機能の障害など複数の持病があったということは分かったのにもかかわらず、直ちに入院の必要はないと判断されてしまった。

 私はここに、今、刑務所や、例えばウィシュマさんのことだとか、又は、冤罪で今回不起訴になりました大川原化工の顧問でいらっしゃいましたっけ、長期勾留されている中で持病が悪化して亡くなってしまったということがあるわけですよ。

 そう考えれば、なぜ、こういう刑務所や留置されているときに日本の医療が受けられない環境になってしまっているのか、長野刑務所で収容されたときに、医師による診断が出て、糖尿病や腎機能の障害がある、そのとき、薬も持っていない、じゃ、軽度だけれども薬を出そうということにならなかったのか。もし、薬が出されて処方されて、そしてこれを服用していたら、もしかしたらこのようなことにならなかったのかもしれないというふうに私はそのときに十分感じました。

 私は、罪を犯したから、又はその疑いがかかっているからということで十分な医療を受けさせないという環境であってはならないというふうに思うんです。このような状況について、一般論で結構ですけれども、法務大臣に、今の刑務所や留置場、またそうした環境の中での医療体制、十分だと思われますか。私はもっと、少なくとも、刑務所外の、留置場外の、私たち一般国民が受けられる医療と同程度の医療を受ける権利があると思いますが、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 ウィシュマさんが亡くなられた事件を契機としまして、我々は、矯正施設の医療体制充実にしっかり取り組まなければいけないという問題意識の下で最大限努力を続けております。

 その中で、今回またこういう事案が起こりました。正確な因果関係等はまだ分かりませんけれども、診断を受けたけれどもそれに見合う処方がなかったというところを捉えれば、ここも究明するべき、どうしてそうなったのか理由を究明するべき一つのポイントだというふうに思います。

 考え方としては、刑務所の外であれ中であれ同じ医療を受けられる、当然のことであります。日本国民として同じ医療を受けられる国民皆保険、そういう思想は、刑務所の外であれ内であれ境を持つものではないと思います。

 ただ、実効性を伴わなければそれはお題目で終わってしまいますので、きちっと刑務所の中でそれが行き届いた形で医師が対応できているのか、医師の数が足りているのか、専門性は大丈夫なのか、継続性があるのか、そういったことを不断に見直していく、そういう努力をしていきたいと思います。

道下委員 大臣からは、非常に、これから前向きに取り組まれるような答弁をしていただきました。是非ともよろしくお願いしたいというふうに思います。

 今の刑務所の医療体制というのは、例えば、近隣の医療機関に協力というか委託をして、医師を派遣していただいて定期的な診察をしているだとか、あとは、これも出入国管理庁さんからもお話しいただきましたけれども、それぞれの全国のセンター、ここは常勤医師がいなければならないけれども、まだ常勤医師がいないところもあるというところもあります。

 私は、塀の中であっても外であっても、しっかりと医療を受けられる権利は誰しもが持っているというふうに思いますので、その点は、人員と予算も含めてしっかりと拡充していただくようにお願いしたいというふうに思います。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 前回の三月十五日の当委員会においても質問させていただきました、三月十四日の同性婚訴訟における札幌高裁の違憲判決と東京地裁の違憲状態判決の受け止めについて大臣に伺いました。そこで、この判決を受け止めて、同性婚を法律で認めるべき、その法制化に向けて取り組まれませんかというような内容の質問をさせていただきましたが、法務大臣からは、国民的なコンセンサスと理解がなければ、それを得た上でなければ進めることは難しいと考えておりますと答弁されました。

 私は非常に残念でございましたが、法務大臣のおっしゃる国民的なコンセンサスと理解がないというふうに判断している理由や根拠について、お示しいただきたいと思います。

小泉国務大臣 同性婚制度の導入の問題については、複数の報道機関等による各種の調査が行われております。賛成の意見、反対の意見等がそこでは示されております。

 また、七つの裁判でございますけれども、これらの結果もやはり国民各層の意見を把握するための一つの参考資料ではあると思いますが、この七つの判決においてはいずれも原告らの国に対する請求を棄却し又は原告らの控訴が棄却されたものの、その理由中において、憲法に違反しない、憲法に違反する、又は憲法に違反する状態にある旨の判断が示され、その判断が分かれているということは否めないと思います。

 したがって、国民各層の意見、なかんずく国会における議論、こういった状況をつぶさに見て、こういったものをしっかり把握しつつ、注視しつつ、地方自治体におけるパートナーシップの制度の導入や運用の状況等も見ながら、コンセンサスの状況を判断していきたいと思っております。

道下委員 前回の答弁とほぼ変わらないんですけれども。

 改めて伺いますけれども、法務大臣としては、何がどのようになれば国民的なコンセンサスと理解が得られているというふうに判断されるのか、是非御答弁をお願いしたいというふうに思います。

小泉国務大臣 同性婚導入の問題は、我が国の家族の在り方の根幹に関わります。そして、国民生活の基本に関わる家族法制にも、これは重大な影響が及んでまいります。これらと相互に密接な関係にある国民の家族観というものにも関わってくる問題であります。そのため、同性婚の導入について議論を進めるには、国民各層の意見を十分に踏まえる必要があるということは否めないと思います。

 御指摘の、どのような状況がコンセンサスが得られたという判断につながるのかというお尋ねでありますけれども、この御指摘の点については、事柄の性格上一概にお答えすることは困難でありますが、国民の代表者である国会議員の間における議論の状況、これは私は特に重要な要素として考える必要があるというふうに思います。これらを含め総合的に判断するべきものであると考えております。

道下委員 これまでの判決を見ていきますと、今の、大臣がおっしゃったような、家族観を大きく変えるだとかそういったところよりも、判決として共通しているのは、同性カップルが深刻な社会的不利益を被っていることは全ての判決で一致しているとか、又は、同性婚を法律で認めることでほかの誰かに被害や損害を与えることがあるかといったら与えないということで言ってきているんですね。

 ですから、一つ、家族観ということを理由にされることで何か壁をつくられていると思うんですが、私は、この同性婚訴訟の原告団の方々は、自らの幸せを願いたいという、本当に誰しもが思うことだと思うんです、それについては、他の人を傷つけたり、被害や損害を与えることではないと思います。

 家族観については、日本の国内の家族観はそうだというふうにおっしゃるかもしれませんが、先ほども、私は世論調査を申し上げました。マリッジ・フォー・オールという団体が印刷しているチラシでは、二〇二三年の二月の産経新聞とFNNの行った世論調査では、無党派層で七六・三%が同性婚の法制化に賛成、自民党支持者も六〇・三%が賛成しているんですね。

 こうしたことで、普通、世論というのは、いろいろと流されることもあるかもしれませんが、どの政党の支持者においても、また無党派層においても、この同性婚というものは法制化を認めるべきだということを言っていますし、よく、この後議論される民法改正の共同親権の導入についても、今回の法案の共同親権の導入に賛成する方々も含めて、与党の方々も含めて、外国でそれが行われているからと言われているんですけれども、じゃ、この同性婚の法制化は外国でどうなっているのかといえば、ほとんどの国で同性婚は法制化されているんですよ。選択的夫婦別姓、選択的夫婦別氏制度もそうなんですよ。

 こういったことを考えると、家族観とかいうことと、外国で導入されている、何か非常に、政府が自ら行うことの根拠とするものが、国内はこうだからとか外国ではこうだからとか、何かちぐはぐだと思うんですよね、私自身は。このようなことを考えると、しっかりとした理念や根拠に基づいて、同性婚を法制化するかどうかを判断しなければならないと思う。そのときに重要なのが、これまで行われている同性婚訴訟の判決であるというふうに思います。

 私は、先日質問したときに、自治体のパートナーシップ制度については伺っていなかったんですけれども、法務大臣がパートナーシップ制度の導入の状況を注視するというふうに答弁されました。では、なぜ地方自治体がパートナーシップ制度を導入、運用してきているのか。そういう自治体が増えてきているのか。その理由について、また背景について、どのように受け止めていらっしゃるでしょうか。

小泉国務大臣 パートナーシップ制度は、婚姻に関する法的効果を認める趣旨のものではなく、地方自治体における行政サービスとして行われているものと承知しております。そういったパートナーシップ制度の導入状況等については、各地方自治体の施策に関する事柄でありまして、法務大臣としてお答えすることは難しい、そのことを御理解いただきたいと思います。

道下委員 国が法制化しないから自治体がやっているんですよ、パートナーシップ制度は。その自治体に住む市民などから、こうした異性婚と同等の、又はそれに近い権利というかサービスを受けたいということを要望して、国に要望して、地方自治体にも要望して。地方自治体は、地方行政の範囲内においてできる限りのことをやろうということで、このパートナーシップ制度を導入してきている。その導入してきている自治体がどんどん増えてきているんですね。

 公益社団法人マリッジ・フォー・オール・ジャパンの調査によりますと、二〇二四年、今年の三月一日時点での導入自治体は少なくとも三百九十七自治体で、これは市町村と都道府県も入るんですが、人口カバー率にすると八〇%を超えているということなんですよ。

 それだけ、地方自治体の方が先行してというか、もう海外では同様の取組をしている、その法制化をしていない日本の中において、私は、地方自治体の方が先に住民サービスの一つとして、こうしたパートナーシップ制度を導入してきていると思うんですよ。だから、これは、同性婚訴訟もそうですが、地方自治体からも国にこの同性婚の法制化が求められているというふうに受け止めているんですが、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 これらの措置の本来的な位置づけ、性格づけを先ほど申し上げたわけであります、法務大臣として所掌するものではない。しかし、おっしゃるように、婚姻制度にこれは関わり合いのある施策として打ち出されております。我々も、婚姻制度の在り方に関する議論の重要な参考になる、このように考えております。

道下委員 重要な参考になるということでありますけれども、いつまで、どれだけの情報や、また判決や、様々な自治体を含めた、また当事者等の活動を、行動を見て判断されるのでしょうか。

 先日の委員会の私の質問に対する法務大臣の答弁の中で、いずれも現段階では確定前の判決であり、また、他の裁判所に同種訴訟が係属していることから、その判断も注視してまいりたいと答弁されていますが、これは判決の確定を待つ必要があるんでしょうか。なぜ判決の確定を待つんでしょうか。確定しないと同性婚の法制化に着手できないという法律や決まりは何もありませんけれども、やろうと思えば今からでもできるんです。先日も言いましたけれども、我が立憲民主党は婚姻平等法案を昨年提出しておりますので、これも参考にしていただいても結構ですので、是非、政府からの法案提出ということもお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。なぜ判決の確定にこだわるんでしょうか。

小泉国務大臣 確定前だということは、高裁あるいは地裁で同じ事案について引き続きまだ審議が係属しているということであります。もちろん、その途中経過でどういう判決が出たかということも参考材料にはもちろんなります。検討の視野に入れるべきものです。しかし、また同じ事案について別の結論が出てくる可能性もあり、それも見極めなければならない、そういうことを申し上げているわけです。

道下委員 見極めるということは、じゃ、逆に、今、同性婚を法律で認めていないことが正しい、でも、裁判で、最高裁まで出て、上告が出て、そして、最高裁で今の同性婚を法律で認めないのは違憲であるという判決が出なければ、法制化には着手しないということなんですか。

小泉国務大臣 いえ、そこまで申し上げているわけではありません。総合的に判断をしていくということでございます。

道下委員 まあ、よかったなと思うんですけれども、もし、その判決が確定するまでは着手しないということであれば、政府として同性婚というものは法律で認めないという立場を貫かれているというふうに受け止められますので、私は、今の答弁では、そうではない、判決確定までこだわるわけではないというようなニュアンスの答弁だったと思いますが、私自身は、これは、政府のメンツに懸けても、判決確定まで待つべきではないと思うんですよ。もし、判決確定、最高裁の判決が違憲だということが出された場合、それは、政府の敗北や駄目出しになるんですよ。なぜそこまでやってこなかったのか、これは政府だけじゃなくて、我々国会、立法もそうなんですけれども。

 先日、マリッジ・フォー・オール・ジャパンの集会が、三月二十二日に院内集会が開かれたときに講演された慶応義塾大学法学部教授の駒村圭吾先生は、これまでの判決について、国会が何らのアクションをしなくてもいいと言っている判決は一つもないということなんですよ。だから、我々国会議員にも判決は突きつけられていると思うし、それはやはり政府にも突きつけられているというふうに思うんですね。そういうことを考えると、私は、最高裁判決を待たずしても、やるべきことはやるべきじゃないかというふうに思います。

 そこで、その最高裁への上告なんですけれども、ちょうど昨日、三月二十五日、札幌高裁での原告団が上告されました。これは非常に重たい、そして重要な行動だと思います。

 この原告のお一人である中谷衣里さんは三月二十二日の院内集会、マリフォー国会でこのようなお話をされました。

 三月十四日、札幌高裁でのあの判決を言い渡すために三人の裁判官は、私たち控訴人の声に耳を傾け、弁護団がとてつもない時間をかけて作った書面に目を通してくれました。丸五年間訴訟に臨み続けるというのはとても大変ですが、司法は私たちの願いに寄り添った判決を書いてくれてうれしかったです。判決を聞いて、同性と生きる私自身が人として尊重されていると感じられました。翻って、国会はどうでしょうか。各地で判決が出るたびに、確定前の判決であるから動向を注視していくと何年間も同じことを言い続けています。この発言をニュースで聞くたびに、自分の人生を先延ばしされ、生き方を軽んじられているように感じてきました。どうかこれ以上、好きな人と結婚したいという私たちの願いを無視せず、きちんと議論をしてください。今日集まってくださっている国会議員の皆様のお力をどうかかしてください。よろしくお願いします。

 ということで、これは、我々立憲民主党や、維新、共産、国民民主党のみならず、自民や公明党の皆さんもお集まりになりました。この原告団の、そして今回上告された原告の方の思いをお聞きして、どのような御感想をお持ちになったのか伺いたいと思います。

小泉国務大臣 我々行政としましては、司法のその時々の判断、最高裁も含まれる様々な判断、そして国会での御議論、行政権としては、立法府と、また司法権のこの問題に対する在り方、どういう議論が行われているのか、どういう姿勢なのか、どういう状況なのか、そういったものもつぶさに見て、丁寧に見て検討を進めていきたいと思っています。

道下委員 是非進めていただきたいと思いますが、そのマリフォー国会に出席された、党を代表してというわけではないですけれども、当時登壇された牧島かれん衆議院議員は、同性婚を法制化するかということで、丸と三角の旗を上げられたんですね。そこで発言された内容は、党内では、現状、議論の場がない、判決を受け止め議論の場をつくりたいというふうに、自民党の中では非常に積極的な、いや、しかし、本当に大変な中でこのような発言をされたのかなというふうに思います。

 しっかりと私は、行政府も大変重要であると思いますが、国会での議論も加速させていきたいというか、是非、与党の皆さん、共に同性婚を法制化させていく取組を進めていきましょう。どうぞよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

武部委員長 次に、阿部弘樹君。

阿部(弘)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の阿部弘樹でございます。

 まず最初に、外国人の土地取得についてお伺いしたいと思います。以前から通告しておりましたが、なかなか時間がありませんで、今回質問に至りました。

 まず、法務省所管では外国人土地法というものがありますが、これは現実的に運用ができるんでしょうか、その辺を答弁いただきたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 外国人土地法は、大正十四年に大日本帝国憲法の下で制定された法律でありまして、一定の場合に外国人の土地取得等を政令で制限できることについて規定をしております。ただし、外国人土地法は、制限の態様等について政令に包括的、白紙的に委任していることが憲法第四十一条等に違反するおそれがあること等を指摘されております。

 そのため、現行憲法の下では同法に基づく政令は制定されたことがなく、外国人土地法に基づいて外国人による土地取得を制限することは困難であると考えております。

阿部(弘)委員 そうなんですよね。

 私は、国会が閉会中に対馬あるいは国境離島を訪問させていただきました。特に対馬については、海上自衛隊の基地の隣にホテルが設けられてありまして、そこにハングル文字が多く記載してありました。ということは、ある週刊誌、本によりますと、その隣には外国籍の方がホテルを経営し、そしてまた通信などを容易に行えるということでございます。

 それがきっかけとなりまして重要施設周辺の外国人の土地取得については法整備が行われましたが、内閣府にお尋ねしますが、どういう法ができましたか。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 重要土地等調査法、重要施設などに対する、委員御指摘の対馬の自衛隊とかですね、自衛隊施設や海上保安庁の施設、そういう重要施設などに対する機能阻害行為を防止することを目的としておりまして、令和三年に成立しております。

 その後、内閣府の方で、調査法に基づきまして、これまでに注視区域二百八十四か所、特別注視区域百十五か所の合計三百九十九か所の区域を指定いたしました。加えて、昨年末に開催された第八回土地等利用状況審議会において、四回目の区域指定の候補として注視区域百五十一か所、特別注視区域三十三か所の合計百八十四か所を提示し、指定に向けた検討準備を進めております。

 これらを踏まえまして、現在想定している区域指定の作業は最終段階にあります。間もなく指定が完了する見通しとなっていることから、本法に基づきまして、対象となる区域内の土地等の所有、利用状況の実態把握を着実に進めていきたいと考えております。

阿部(弘)委員 確かにそのとおりなんですね。

 特にここで注目したいのは、特別注視区域、百八十か所でありますかね。法律が成立するときには五年後の見直しを附則でうたってありますが、そのことも既に検討していただいて、安全保障上に特に問題がある施設についてはそういう調査を、法改正も含めて議論を進めていきたいと思いますが、いかがですか。

伊藤政府参考人 御指摘のとおり、法律の附則第二条には法の施行後五年を経過した時点での見直し規定が置かれております。今後の法の執行状況や安全保障をめぐる内外の情勢などを見極めた上で、更なる政策対応の在り方について検討をしっかりと進めたいと考えております。

阿部(弘)委員 国交省にお尋ねします。

 かつて、バブル景気のとき、土地が異常に値上がりしたとき、価格が上がったときに、国土利用計画法に基づく土地取得の規制に関する措置というのがあったというふうに伺っておりますが、そのような法律を駆使しながら、市町村を指定しながら外国人の土地取得を制限するようなことはできないんでしょうか。

川野政府参考人 お答え申し上げます。

 国土利用計画法は、適正かつ合理的な土地利用等を確保し、総合的かつ計画的な国土の利用を図るため、主体を問わず、一定規模以上の土地取引に係る届出制度などを定めているものでございます。

 議員の御指摘の件でございますけれども、一般論として、個人や法人の権利を制限することにつきましては、権利制限の目的が正当であるか、制限手段が必要かつ合理的であるかについて慎重に検討する必要があると承知しております。

 なお、先ほど、安全保障の観点から、重要土地等調査法において、防衛施設周辺などの土地について、外国人、外国法人に限定しない内外無差別の枠組みによって利用状況の調査や取引の届出義務などが定められていると承知をしております。

 引き続き、実態把握を含め、関係省庁と連携しながら対応してまいりたいと考えております。

阿部(弘)委員 軍事では、特に通信の役割というのが非常に重要でございます。そういった点からも、通信を容易に傍受でき、通信を妨害できるような施設が設置できるような仕組みを、日本国内にあるというのは余りよろしくないことでございますので、国を挙げて様々な対応をしていただきたいというふうに思っております。この質問はこれで終わります。

 さきの質問で、障害者の年金のことをお伺いいたしました。障害者が六十五歳になって、あるいはそれ以降になって年金を申請をした場合に、額が下がるのではないかということで、なかなか、答弁者がそろっていませんでしたので、答弁が曖昧になってしまいましたので、厚労省、そこのところ、答弁をもう一度お願いします。

巽政府参考人 お答えいたします。

 障害年金と老齢年金のどちらの支給額が高くなるかにつきましては、それぞれの方の状況によりまして異なります。

 例えば、障害厚生年金に反映されない障害年金受給開始後の厚生年金への加入履歴が老齢厚生年金に反映されること、あるいは、配偶者等がいる場合に支給される加給年金につきましては、老齢年金の場合は特別加算がなされること等によりまして、老齢年金の支給額の方が高くなる場合もございますので、一概には申し上げられません。

阿部(弘)委員 是非とも、障害者の皆さんに、年金の受給年齢になったときには丁寧に御説明をいただきたい。

 もう一つ、答弁を忘れてあると思うんですが、もし額が低くなっても、元に戻ることができるのかどうか、その点についてお願いします。

巽政府参考人 お答えいたします。

 公的年金では、老齢年金や障害年金などの支給事由が異なる二つ以上の年金を受けられるようになったときには、受給する年金を選択いただくことになります。例えば、障害年金を受給している方が六十五歳に達し老齢年金を請求する場合、請求書に併せまして、障害年金、老齢年金のいずれを受給するか選択する年金受給選択申出書を提出いただくことになります。

 提出に当たりましては、意図しない形で年金額が減額となることにならないよう、年金事務所において相談対応を行っているところでございます。

 なお、一度受給する年金を選択いただいた後、障害等級の変更など諸事情により受け取る年金を変更したい場合には、改めて今の申出書を提出いただくことで受給する年金を変更することが可能でございます。

阿部(弘)委員 では、この質問はこれで終わります。

 次に、死への準備教育ということで、自殺幇助や安楽死のことについてお伺いしたいと思います。

 まず、刑法六十二条、正犯を幇助した者は従犯とするというふうに定めてあります。また一方で、二百二条は、人を教唆し若しくは幇助し自殺させ、又はその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六か月以上七年以下の懲役又は禁錮、これは嘱託殺人のあれですか。

 それで、六十二条に、正犯を幇助する者はと規定してありますが、自殺罪というものは、そもそも日本の刑法の中にはあるんでしょうか。

松下政府参考人 お答えします。

 日本の刑法には、自殺を処罰する規定はございません。

阿部(弘)委員 自殺を処罰する規定がないのに、幇助する規定はある。罪でもないのに、それを助けたら、幇助すると。全く不可解な法体系になっているということは、私じゃないですよ、いろいろな方々が書物で書いてあります。

 ここは本題なんです。命は地球より重い、これはさきの質問の、山口良忠裁判官のときに、初めて国民が、裁判官が使うようになった言葉であります。食管法を守って、自分は闇米を食べなかったから餓死した裁判官の話なんですね。それ以降、当然、日本人の心情としては、やはり命は大切ですよということで、もう最後の最後まで、死ぬ間際まで手を尽くす、医療の最善を尽くすというのが昭和の時代の話でございました。

 私は昭和三十六年生まれですが、この頃というのは、出産は、自宅分娩と施設分娩の半々の時期であります。当然、日本人のほとんどは病院で死を迎えない。ですから、それ以降、医療が発達して病院施設ができましたが、私よりも年配の方々は、ほとんどは自宅で出産を迎えている。ですから、自宅で死を迎えたいと在宅医療を希望する方も多く見受けられるわけでございます。

 ですから、自宅医療になりますと、終末期医療は、当然、それほど高度な先端医療を施すこともなく、死を迎える。先週に私の岳父も亡くなりましたが、ほぼ自宅で介護を受けながら、そして病院に行って二日目で亡くなられました。

 そういうことを考えている人たちが、私よりも上の世代は非常に多い。終末期医療について、死をどのように考えるかということが大切になってくるというふうに考えるわけでございます。

 アイ・アム・ビコーズ・アイ・シンク、これはデカルトが言った言葉。コーギトー・エルゴー・スム、同じ、ラテン語ではこのように言いますが、一方で、メメント・モリという、諸君、死ぬことを忘れるな、これはローマ時代の話でございます。いつも、人間は生まれて、そして死ぬということは、哲学の世界も、みんなが知っている寿命であります。

 日本は高度成長の頃には病院で亡くなるというのが当たり前でありましたが、今は、自宅で亡くなるということに、厚労省の政策を見ても、在宅医療を充実させるということで、それがよく分かってきたなと思っておるところでございます。

 死を自覚するから充実した生き方をしていくというのは、ヨーロッパ社会、ヨーロッパの教育では当たり前のように教える。メメント・モリを教えているわけじゃないですよ。メメント・モリの後は、飲めや、歌えや、さあ楽しめというローマ時代の考え方ですが、ヨーロッパの、死学の、死への準備教育の教えは、死ぬことは誰にでも起こることだから、その残された人生をしっかりと充実して、君はどう生きるのかということを教えていくわけでございます。

 文科省にお伺いしますが、死ぬことについてどういう教え方をしてありますか。

淵上政府参考人 お答え申し上げます。

 一人一人の個々人が生命の尊厳や命の大切さを理解した上でよりよく生きていくということは非常に大事なことだというふうに考えております。

 このため、例えば、学校教育におきましては、児童生徒の発達の段階に応じまして、道徳科などにおきまして、生命の貴さや、よりよく生きる喜びなどについて指導することにしております。例えば、中学校で、生命の貴さを扱う授業におきまして、延命治療や尊厳死を題材として、自他のかけがえのない生命を尊重する心を育てるといったような取組事例もございます。

 また、社会教育の分野では、地域の公民館などにおきまして、例えば、終活の講座の開催などを通じまして、より充実した現実の人生を過ごせるようにするといったような様々な取組も行われているところと承知をしております。

阿部(弘)委員 私が医者になったのは昭和六十三年でございます。その頃は、末期のがん患者さん、治療方法がありませんよという方々には、がんであることを家族にしかまだ教えていなくて、本人に告知をしていなかったんですね。それが時代とともにいろいろ告知などについても、お知らせするようになってきましたが、その変化というものはいかがでございますか。

鳥井政府参考人 お答えいたします。

 患者が納得して医療を受けるというのは極めて重要な課題でございまして、そのためにはインフォームド・コンセントが重要であると考えております。

 医療法におきましては、平成四年の医療法改正で、医師、歯科医師、看護師その他の医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るように努めなければならないと規定をされてございます。

 また、このような理念に基づく医療を推進するため、患者に診療情報を積極的に提供するとともに、患者の求めに応じ原則として診療情報を開示すべきであるという基本的な考え方の下に、厚生労働省では、診療情報の提供等に関する指針を作成し、周知をしているところでございます。

 このような方針にのっとり、個別のケースに即して臨床の現場では対応いただいているものと考えております。

阿部(弘)委員 六十三年から急速に、医療情報は患者さんのためにあると。ですから、たとえ余命幾ばくの命であっても、その情報を患者さんに告知する、ただし、告知をしたら、突然自分の命があと何か月、何年だということが分かってしまいますので、絶望のふちに入るわけでございます。

 それを学問は、エリザベス・キューブラー・ロスという方が死への思想についていろいろな論文をそれ以前に書いてありまして、日本では、アルフォンス・デーケン上智大学教授が、この人は宗教家でもあるんですけれども、普及活動に努めて、死ぬことを恐れない、死ぬことを受容して、そしてまた力強く残された人生を生きるんだということを語られて亡くなられてあります。

 そのことがあって、曽野綾子さんなどを中心に、死ぬこと、そして死を自覚して、より一層自分が願う人生を生きることということを、当時、自覚してある本を読んだことがあります。

 中年期の八つの危機というのがありまして、ちょっと時間を省きますが、やはり残された人生、あるいは人生の目的とは何だったのかということを問いながら、中年期以降の人たちはしっかりと生きていく。

 映画で、児童文学者の吉野源三郎さんの書物から題材を取ったジブリ映画が賞を取りましたが、そういったことも、戦時中ですから、死を自覚する、戦争期の書物でございます。戦中派の書物。

 私は、西田哲学など京都哲学派の方々が、例えば三木清さんが書いた「人生論ノート」などを学生時代に読んだ記憶を思い出しております。

 今般、時間がありませんのでまた続きますが、歌舞伎役者の市川猿之助さん、この方は自殺幇助ということで、睡眠薬を御両親に飲ませて、そして結果的に御両親が亡くなったということでございます。

 世界の潮流は、安楽死についても様々な議論がございます。安楽死について大臣に御意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 安楽死の是非、これは国民の基本的な道義観、倫理観、死生観、生きるとは何か、死ぬとはどういうことか、そういう深い心の問題に関わるとともに、一方で、現実的な世界でありますけれども、医療の在り方にも関係する、非常に精神的な深い問題であり、また現実的にも重たい問題であります。

 この問題については、種々の観点からの議論、これが十分に積み重ねられることが重要であり、その動向を見守っていきたいというように思っております。

阿部(弘)委員 京都哲学の西田幾多郎博士や和辻哲郎博士、やはり東洋的な形而上学の哲学を展開していただきました。それは西洋哲学ではなくて、日本独特の習俗なり美しさ、美感、家族制度など、もろもろを含めた哲学の展開だったと思いますので、安楽死についても、まだ議論は始まってはいないとは思いますが、是非ともそういう議論をお願いして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

武部委員長 次に、美延映夫君。

美延委員 日本維新の会・教育を無償化する会の美延でございます。よろしくお願いを申し上げます。

 本日は、自民さん、立憲さんからも再審制度について御議論がありましたが、私も再審制度について議論をさせていただこうと思っております。皆さんと、先ほどの先生方とかなりかぶる部分があるんですが、ここは、お互い打合せをしておりませんので、御容赦願いたいと思います。

 それでは、質疑に移ります。

 昭和四十一年六月に発生した強盗殺人、放火事件の犯人として逮捕され、その後の裁判で死刑判決を受けた袴田巌さんの再審公判が、現在、静岡地方裁判所で続いております。袴田事件と言われるこの裁判は、本年の五月に結審、夏頃判決と報じられております。

 国民の耳目を集める裁判であり、この事件を通して、再審制度に対する国民の関心も高まっているのではないかと思います。

 再審については、刑事訴訟法の第四編に規定があり、これが再審法と呼ばれております。しかし、僅か十九条しかないこともさることながら、戦後、新憲法の施行に併せて旧刑事訴訟法が改正されたときも、再審法は根本的な改正がなされなかったという経緯があります。

 御存じのとおり、再審制度については問題も多く、えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟も発足しております。

 そこで、本日は、再審に関する論点について確認しつつ、いろいろ質問していきたいと思います。

 現在の再審制度の問題点については、専門家や日弁連などの有識者が様々な角度から指摘をされておりますが、まずは、再審における証拠開示制度について取り上げたいと思います。

 先ほども述べさせていただいた袴田さんの再審決定までの経緯を見ますと、争点となっていた衣類などを撮影した写真のネガについて、当初、検察は存在しないとしてきたにもかかわらず、後に、警察で保管していたことが明らかになりました。

 また、平成十五年五月に滋賀県で発生した入院患者の死亡事案で、看護助手の西山さんが殺人の罪で有罪判決を受けた、いわゆる湖東記念病院事件の再審でも、再審開始決定後に、警察が検察官へ送致していなかった証拠の存在が明らかになり、検察による新たな証拠が開示されました。その中には西山さんの無罪を裏づける証拠もあったということがありました。

 そもそも、こういう証拠は、なぜ最初の裁判で出てこなかったのかという疑問を持つところであります。しばしば、通常第一審でも、被告人に不利な証拠しか提出されないため、冤罪を生んでいるのではないかという指摘もあります。

 刑事訴訟法第一条では、刑事訴訟法の目的として、事案の真相を明らかにすることもうたわれており、裁判では、被告人にとって有利、不利にかかわらず、証拠隠しのようなことはあってはならないと考えます。

 そこで、まず、現在の通常第一審における証拠開示制度について、その概要も、改正経過も含めて、御説明を願えますでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 現行法上、公判前整理手続等において証拠開示制度が設けられておりますけれども、その以前から、検察官、これは被告人も弁護人も一緒ですけれども、当事者が取調べを請求する証拠につきましては、あらかじめ相手方に閲覧する機会を与えなければならず、また、判例上ですが、証拠調べの段階に入った後、一定の条件の下で、裁判所が検察官に対し、弁護人への証拠開示を命ずることができることとされておりました。

 現行の証拠開示制度は、第一回の公判期日の前から十分な争点整理を行うなどして、公判の充実化、迅速化を実現するという目的で、平成十六年の刑事訴訟法の一部改正により導入されたものでございまして、具体的には、公判前の整理手続等におきまして、検察官は、まず、検察官請求証拠の証明力を判断するために必要な一定の類型の証拠、これを類型証拠と呼んでおりますけれども、これを開示し、そして、それを踏まえて、被告人側の主張が明示されてから、その主張に関連する証拠、これを主張関連証拠と呼んでおりますけれども、これを開示するというルールができました。

 その後、こうした枠組みを前提としつつ、公判審理の更なる充実を図るということで、平成二十八年の刑事訴訟法等の一部改正によりまして、検察官、被告人又は弁護人に公判前整理手続等の請求権を付与する、また、証拠開示制度の利用に資するよう、被告人側から請求があったときは、検察官に保管証拠の一覧表の交付を義務づける、また、開示すべき類型証拠の範囲を拡大することとされたと承知しております。

美延委員 まあ、開示するということなんでしょうけれども、ただいま御説明いただいた第一審における証拠開示制度の導入や拡充を検討した法制審議会や検討会などでは、再審請求手続においても同様の証拠開示を制度化することについて議論があったと聞いております。

 結果として、どのような理由で再審請求手続における証拠開示制度が導入されなかったのか、教えていただけますでしょうか。

松下政府参考人 お答えします。

 御指摘のとおり、平成二十三年六月から二十六年七月までの間、法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会というところにおきまして、再審請求審において証拠開示制度を設けることについて議論がなされましたが、その際、再審請求審に通常審と同様の、先ほど申し上げたような証拠開示を転用するということについても議論がありましたけれども、再審請求審は通常審と手続構造が異なるので、通常審の証拠開示制度を転用するということは整合しないですとか、再審請求審における証拠開示について一般的なルールを設けることは困難であるといった問題点が指摘をされまして、法整備がされなかったところと承知をしております。

美延委員 ちょっと分かりにくいなというところだと思うんですけれども。

 第百九十回国会の平成二十八年五月に成立した刑事訴訟法等の一部を改正する法律の審査の際に、衆議院での修正として、再審請求審における証拠の開示について、政府に検討を求めるよう、附則の修正を行っています。

 それを受けて、現在、刑事訴訟法に関する刑事手続の在り方協議会が開催されています。協議会では、当初の予定を早めて、再審請求審における証拠の開示について議論が行われたと聞いております。

 そこで、どのような議論、意見があったのか、御紹介をお願いいたします。また、協議会で今後再審請求審における証拠の開示について議論される予定があるのであれば、併せてお答え願えますでしょうか。

松下政府参考人 改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会の方についてお答えしますけれども、こちらでは、令和五年の十一月八日、本年一月十二日、それから三月十五日の三回にわたりまして、再審請求審における証拠開示等についての協議が行われました。

 その際には、まず、関係者、事務当局や最高裁、弁護士などの構成員から説明がなされまして、再審請求審の手続構造ですとか、再審請求事件に関する統計的な事項、日弁連による法改正の提案などがその会議の場で共有されたわけでございます。

 その上で、この会議におきましては、例えば、再審請求審における証拠開示について、再審請求審における証拠開示の規定がないため、事件が係属した裁判体によっては証拠開示に極めて消極的であったり検察官が証拠開示に応じないことがあるといった意見が示された一方で、再審請求の事件の内容も請求の理由も様々である中で、現行法上も、各裁判体において個々の事案に応じて必要があれば証拠開示の勧告も含め検討しているですとか、あるいは、検察においても、請求の理由との関連性や開示の必要性、開示した場合の弊害等を勘案しつつ適切に対応しているなどの意見が示されたところでございます。

 また、日弁連による法改正の提案内容について専門的、技術的観点も含めて意見交換が行われました。

 その上で、この協議会における協議の進め方などにつきましては、構成員の方々の御意見も踏まえつつ決すべきものであります上、この協議会では、取調べの録音、録画制度など平成二十八年の法改正で導入された様々な制度に関する協議すべき項目もございまして、その協議の状況にもよりますので、現時点において今後のスケジュールについて確たることをお答えすることは困難ではございますが、法務省としては、附則の趣旨を踏まえて、引き続き充実した協議が行われるように力を尽くしてまいります。

美延委員 今、最後に局長が、充実したということで、これは是非前に進めていただきたいと思います。

 次に、証拠開示と並んで再審制度の論点とされる再審開始決定に対する検察官による不服申立ての禁止について取り上げたいと思います。

 平成二十六年三月二十七日、静岡地裁は、袴田さんの第二次再審請求事件について再審を決定し、死刑及び拘置の執行を停止する旨決定をし、同日、袴田さんは釈放をされました。この事件の静岡地裁の再審開始決定から確定まで十年間、その間、検察官による不服申立てが行われました。

 袴田さん以外の再審請求事件においても、再審開始決定に対する検察官の不服申立てが行われ、再審請求の確定までが長期化していることが指摘されております。

 日本弁護士連合会は、利益再審のみを認め、再審制度の目的を無辜の救済とした現行の再審請求手続においては、検察官は公益の代表者として裁判所が行う審理に協力する立場にすぎないことから、検察官には再審開始決定に対する不服申立て権を認める必要はなく、法改正によって禁止すべきと主張をしております。また、検察官が確定判決の結果が妥当だと主張するのであれば、再審公判においてその旨を主張する機会が保障されているため、それで不都合でないともしております。

 この点について、昨年四月の当委員会でも、法務省は、再審開始決定に対する検察官の抗告につきましては、これをなし得ることは公益の代表者として当然のことであって、これによって、再審請求審における審理、決定が適正かつ公正に行われることが担保されるものと考えております、検察官の抗告権を排除することについては、違法、不当な再審開始決定があった場合にこれを是正する余地をなくしてしまうという問題がございまして、また、司法制度全体の在り方にも関連するものでございまして、慎重な検討を要すると考えておりますと答弁をされました。

 日本において開かずの扉と言われるほど、再審が認められることはまれだと思います。そのような中で裁判所が再審決定を出すということは、これは非常に重みのあることだと思います。

 そこで、伺います。過去の再審開始決定に対する検察官の不服申立ては、どのような理由で行っているのか、事件を別に特定していただく必要はありませんし、一例でも構いませんので、是非御紹介いただきたいと思います。また、再審公判で、その違法、不当の主張ができないものかについても、併せて御説明願えますでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 まず、前提といたしまして、再審に関する手続について申し上げますと、刑事訴訟法におきましては、再審を開始するかどうかを決めるという再審請求審という手続と、その後、開始されるとなったときに改めて裁判をやり直す再審公判という二つの手続がございます。

 再審請求審の手続は、有罪か無罪かを含めた事実審理を行う再審公判の手続とは峻別されておりまして、再審は、あくまで確定判決の存在を前提といたしまして、法定の、法律で定められた再審開始事由がある場合に限って開始をするということとされております。これは、通常審の方で、様々な権利保障の下で、しかも三審制の下で慎重に事実認定がなされて有罪が確定した判決というものを前提とした上で、それを覆す再審ということですので、一定の事由がある場合に限定しているということでございます。

 そのため、検察官は、刑事訴訟法四百三十五条に規定している再審開始事由がないのに、これがあるとして再審開始が決定されたときなど、これを違法、不当な再審開始決定と言っておるわけですけれども、その場合には、これを是正するために即時抗告等を行っているものと承知をしております。

 具体例ということですけれども、個別のことはおきまして、公刊物で確認できた決定文において、検察官が不服申立てをした理由について判示されているものの一例を御紹介しますと、例えば、再審開始事由の中で六号というものがございまして、無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したときというのが一つの開始事由ですけれども、それに該当するということで再審を開始したことは失当である、無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したときに当たらないのに当たるというふうに判断をして再審開始決定を出したことが不服申立ての理由だとして判示されているものがあったと承知をしております。

 このように、再審を開始すること自体に違法、不当がある場合に、これを放置したまま再審公判に進むということは、確定判決の存在を軽視するものでありまして、法の予定しないところであると考えております。

美延委員 次に、現行法の再審請求の審理手続を定めた規定は、刑事訴訟法第四百四十五条、刑事訴訟規則第二百八十六条しか存在しておりません。この現行法の再審請求の審理手続を定めた規定が整備されたのは、七十年以上前と相当昔のことであります。現行の再審制度が職権主義とされている経緯については、戦前の再審の規定が残っているにすぎないとか、最低限の改正のみがされていて、再審法の規定についても後回しにされていたなどと様々な説明がされています。

 そもそも再審手続は通常審と異なりなぜ職権主義とされているのか、その経緯について教えていただけますでしょうか。

松下政府参考人 御指摘のとおり、再審請求審については、職権主義的な手続構造が取られているとされております。これは、具体的には、その再審を請求する者が、再審開始事由があることを主張するとともに、これに対応する証拠を提出し、請求を受けた裁判所が、職権で再審開始事由の存否を判断するために必要な審理を行う、そういう手続構造だということでございますけれども、その理由につきましては、文献等において、例えば、再審請求審が、既に通常審において当事者主義的な手続を経て判決を確定した事件についての手続であって、被告人の罪責そのものを決定する手続ではないということ、あるいは、現実の再審請求には、およそ理由があると認められる見込みに乏しいものが多いと思われることなどが指摘されているところでございます。

美延委員 今るる聞いてきたんですけれども、これはやはり、再審請求をした方の立場からすれば、これから自分の無実を証明しようとする、これは非常に差し迫った場面であると思うんです。

 そのような場面で、職権主義を採用するとしても、具体的な手続規定が定められていない現行法の在り方が果たして適切なのか。適正手続保障を定めた憲法第三十一条の趣旨から考えても、職権主義を取るのか、また、全く別の制度を導入するのかは別として、やはりこれは一定の手続規定が必要でないかと思うんですが、この点について大臣の御所見を伺います。

小泉国務大臣 御指摘のような御意見があることは承知をしております。

 ただし、再審請求の実情としましては、主張自体が失当であるものや、同一の理由によって請求が繰り返されるものなども相当数存在するという指摘もございます。こうした状況の下で、再審請求を受けた裁判所は、個々の事案に応じて柔軟かつ適切な対応をしているものと認識しております。

 再審請求審について、統一的な扱いを確保する観点から、詳細な手続規定を設けることについては、裁判所によるこうした個々の事案に応じた柔軟かつ適切な対応が妨げられ、かえって手続の硬直化を招くおそれがあることなどから、検討が必要ですけれども、慎重に検討していく必要があると考えております。

美延委員 時間が来たので終わります。ありがとうございました。

武部委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 今国会に提出をされております総合法律支援法の改定案に関わって質問をさせていただきたいというふうに思います。

 法テラスによる犯罪被害者、御家族の方々への援助を早い段階で包括的に継続的に、公費も含めてやっていこうということなんですけれども、その対象者は法律婚の配偶者、家族に限定をしております。

 実質、法律婚と同じような生活実態のある事実婚のカップルですとか同性のカップルも支援の対象にするべきだというふうに考えますけれども、まず大臣に御見解を伺いたいと思います。

小泉国務大臣 御指摘のように、法律上の婚姻関係を有する配偶者は援助対象とするものの、いわゆる事実婚の状態にある者は援助対象とはしておりません。

 本制度は、被害者等が被害直後から迅速かつ円滑な援助を受けられるようにするには、法テラスが援助対象を速やかに判断していく必要があります。

 法律上の婚姻関係を有しない方々については、その生活実態等が様々であり、事実婚の状態にあるか否かが必ずしも明確ではない場合がございます。

 こうした方々を援助の対象とした場合、法律上の婚姻関係を有する配偶者と比べ、法テラスにおいて個々の事情を詳細かつ実質的に確認、検討する必要があり、迅速かつ的確、公平に援助の可否を判断することが難しくなる、そういう理由で本制度の対象外としておりますが、法務省としては、制度創設後も、真に犯罪被害者等に寄り添った援助となるよう、運用状況を見極めつつ、不断の検討を行ってまいります。

 その一環として、事実婚の状態にある方々への援助の必要性を訴える声に真摯に耳を傾け、先生の御議論も踏まえ、家族関係をめぐる諸制度等の在り方等も注視しつつ、必要な検討を行っていきたいと思います。

本村委員 殺人罪ですとか大変重い罪の被害者あるいは御家族の方々に、法律婚じゃないからといって排除するような、そういうつらいことが重なるようなことは是非やめていただきたいというふうに思っております。

 選択的夫婦別姓がないから、制度がないから事実婚にされておられるカップルもいらっしゃいます。選択的夫婦別姓も認めず、そして同性カップルの婚姻の平等も認めず、その上、犯罪被害者支援も対象外というのは、二重の排除になっており、本当に理不尽だと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 選択的夫婦別氏制度や同性婚制度がないことに伴って、その結果、法律上の婚姻関係にないカップルがいらっしゃるということは、御指摘は承知をしております。

 先ほどの答弁の繰り返しになりますけれども、事実婚の状態にある方々の状況は様々でありまして、それを見極めるのに時間がかかる、迅速な対応が難しくなるという理由で援助対象とはしておりませんが、法務省としては、犯罪被害者等支援弁護士制度の創設後も、真に犯罪被害者等に寄り添った援助となるよう、運用状況を見定めつつ不断の検討を行っていく考えであり、その一環として、事実婚の状態にある方々への援助の必要性を訴える声に真摯に耳を傾け、家族関係をめぐる諸制度の在り方等も注視しつつ、必要な検討を行ってまいりたいと思っております。

本村委員 自治体にはパートナーシップ制度、ファミリーシップ制度がございます。そうした資料をそろえれば認めるというような、同等の資料を認めればこうした支援も受けられるというふうにするべきだというふうに思います。

 先ほども道下議員からお話がありましたように、札幌高裁の判決の中で、例えば同性愛の方々に関してなんですけれども、人として、同じく人である同性パートナーを愛し、家族としての営みを望んでいるにもかかわらず、パートナーが異性ではなく同性であるという理由から、当事者以外の家族の間で、職場において、社会生活において、自身の存在の意義を失うという喪失感にさいなまれているというふうに判決の中で指摘をされておりまして、こうした制度が、また排除されてしまうということになれば、またそうした思いが積み重なってしまうのではないかということを大変懸念をしております。早急にもう一回出し直して、是非こうした方々を対象にしていただきたいというふうに思っております。

 パートナーシップ、同性愛の婚姻の平等に関してはあしたも質問させていただきたいというふうに思うんですけれども、選択的夫婦別姓の導入に関して、この間、大きな動きがあったというふうに認識をしております。日本経団連を始め、経済団体から要請があったというふうに思います。

 どういう要請があったのか、どういう不利益が生じているという訴えがあったのか、大臣にお示しをいただきたいと思います。

小泉国務大臣 御指摘の要請は、海外訪問時にパスポート上の戸籍名と旧姓の不一致によるトラブルが生じる、また、改姓後に旧姓時代の研究論文の実績が認められない、また、多くの金融機関でマネーロンダリング対策の観点から旧姓での口座作成ができないなど、氏を改めることによる職業生活上や日常生活上の不便、不利益の解消、選択肢の多い社会の実現などの観点から、選択的夫婦別氏制度の早期の法制化を求めるものでございます。

 選択的夫婦別姓制度の早期の法制化を求める声がビジネス界においても高まっていることを改めて認識いたしました。

本村委員 先ほども大臣からお話がありましたように、とりわけ海外に行ったときに不利益が生じているという、国内でももちろん、後で申し上げますけれども、不利益がございます。

 指摘されているのは、社内ではビジネスネーム、通称で通しているため、現地のスタッフが確保してくれたホテルもその姓名で予約をしている、しかしパスポートの姓名と異なるため宿泊を断られたというお話ですとか、先日、三月十二日の参議院の予算委員会の公聴会でも、首藤若菜立教大学の教授が、旧姓を通称として使用している、特に国際学会に出るときに本当に不便なんだ、日々いら立ちを持って過ごしている、私は自民党の推薦の公述人なんだけれども、選択的夫婦別姓を強くお願いしたいというふうな発言もございました。なぜこういう切実な声が届かないのかというふうに強く思います。

 婚姻の際に男性と女性と姓を変えている数、割合、それぞれ改めてお示しをいただきたいと思います。

青山政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省の人口動態統計における二〇二二年、令和四年の婚姻件数は五十万四千九百三十九組でありますが、このうち夫の氏となったのは四十七万八千百九十九組で九四・七%、妻の氏となったのは二万六千七百三十一組で五・三%となっております。

本村委員 もう皆さん重々御存じだというふうに思いますけれども、圧倒的に女性の方が、結婚で名字を変えている、姓を変えている。不利益が女性の方に集中しているというのはお分かりいただけると。もちろん男性の方も、姓を変えた方に不利益が生じている。私たち日本共産党国会議員団の中にもおりまして、不利益を生じているということは訴えを続けているわけでございます。

 改めて、そういう、結婚をしたときに名前を変えて生じる不利益もございますけれども、離婚のときに不利益がまた生じてしまう、大変プライバシーに関わる離婚ということが、その氏が変わることによって世間にさらさなければいけないという、そういう問題もございます。

 そこでお伺いしますけれども、離婚、この十年間で件数をお示しをいただければと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 直近十年間、平成二十五年度からの離婚の届出件数ですが、次のとおりです。平成二十五年度二十三万四千三百四十九件、二十六年度二十二万八千二百十八件、二十七年度二十二万九千八十四件、二十八年度二十一万九千三百五十八件、二十九年度二十一万三千八百八十二件、三十年度二十一万二千五百七件、令和元年度二十一万二千四百六十三件、二年度十九万一千六百九十一件、三年度十八万三千九百八十一件、令和四年度十八万四千三百四十三件でございまして、直近十年間の離婚の届出件数は合計で二百十万九千八百七十六件であります。

本村委員 離婚というプライベートなことを旧姓に戻すことによって世間にさらさなければいけない、様々な手続で旧姓に変えなければいけないということで不利益が生じております。その点、大臣はどのようにお考えでしょうか。

小泉国務大臣 御指摘は、結婚後に生ずる不利益だけではなくて、離婚後、離婚によって生ずる不利益もあるという御指摘だと思います。

 そうした様々な不利益、支障が生じているとの声、これをしっかりと我々は承知をしておりますし、また、昨今の社会情勢に十分配慮していく必要があると考えております。

本村委員 離婚する際もかなりの不利益があるんだということを是非分かっていただきたいというふうに思っております。

 それで、別姓にすると子供がかわいそうだという御認識の方もいらっしゃるんですけれども、父母どちらかと姓が違う子供はこの日本の中に何人ぐらいいるのかということをお示しをいただきたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 申し訳ありません。当局においては、そのような数値を把握しておらず、特に推計もしていないところでございます。

本村委員 この日本の社会の中には、事実婚の方々の子供さん、シングルマザーの方々、シングルファーザーの方々、また、別の事情で父親、母親、保護者の方と名字が同じではない子供は多いわけです。

 別姓にすると子供がかわいそうという方がみえるんですけれども、子供さん自身が、そうじゃない、名字は関係ないと、自分が大切にされているか、自分が愛されているか、こういうことがやはりキーというふうになるというふうに思います。

 既に名字、姓が違う子供たちはたくさんいるわけで、そういう全ての子供たちが幸せになるように、そういう、姓が同じだから幸せ、姓が違うから不幸せという、そんなことじゃないんだということを、是非、法務省の方にもそういうことを広報していただきたいんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 広報。(本村委員「はい。啓発」と呼ぶ)法務省から、社会に向かってですか。そういう御議論も当然あり得ると思いますが、他方で、平成二十七年の最高裁判決は、氏には、家族の呼称としての意義があり、家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位として捉えられるので、その呼称を一つに定めることには相応の合理性が認められるという判示もございます。

 おっしゃる趣旨はよく分かりますが、社会全体における家族の在り方に関わる問題でありますので、より幅広い、それぞれのお立場で議論を広げていただき、そして、より広い国民の理解、そういったものにつながっていくことを我々は望ましい道だと思っています。

本村委員 家族の在り方、価値観は様々だからこそ、選択的夫婦別姓にしてほしいということなんです。

 家族の在り方に関する価値観は様々ですけれども、現在は、国家が家族は同姓であるべきという価値観を押しつけていると私は考えております。

 普遍的価値である個人の尊厳、人権に重きを置き、選択的夫婦別姓を実現するべきだというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 国が押しつけているものではないと思います。家族というものが自然発生的に生まれ、そして、統一的な呼称を持つことによって社会生活が営まれ、国民が形成してきた一つの社会制度だと思います。ですから、国民の考え方が変わっていけば、それに応じてこれは変更するべきもの、未来永劫のものではございません。

本村委員 個人の尊厳を大切にする、そうした立場から選択的夫婦別姓を是非実現していただきたいと思います。

 人権を保障することに足を引っ張ることをもうやめていただきたいということを強く求めて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

武部委員長 次回は、明二十七日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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