衆議院

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第9号 令和6年3月14日(木曜日)

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令和六年三月十四日(木曜日)

    午後二時五十分開議

 出席委員

   委員長 古屋 範子君

   理事 国光あやの君 理事 斎藤 洋明君

   理事 田所 嘉徳君 理事 田中 良生君

   理事 湯原 俊二君 理事 吉川  元君

   理事 阿部  司君 理事 中司  宏君

   理事 中川 康洋君

      井原  巧君    石田 真敏君

      泉田 裕彦君    上田 英俊君

      尾身 朝子君    金子 恭之君

      川崎ひでと君    坂井  学君

      島尻安伊子君    田畑 裕明君

      寺田  稔君    中川 貴元君

      仁木 博文君    西田 昭二君

      西野 太亮君    根本 幸典君

      葉梨 康弘君    古川 直季君

      保岡 宏武君   おおつき紅葉君

      岡本あき子君    奥野総一郎君

      福田 昭夫君    藤岡 隆雄君

      道下 大樹君    中嶋 秀樹君

      吉田とも代君    平林  晃君

      宮本 岳志君    西岡 秀子君

      吉川  赳君

    …………………………………

   総務大臣         松本 剛明君

   総務副大臣        渡辺 孝一君

   総務大臣政務官      西田 昭二君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局長)            小笠原陽一君

   参考人

   (日本放送協会経営委員会委員長)         古賀 信行君

   参考人

   (日本放送協会会長)   稲葉 延雄君

   参考人

   (日本放送協会専務理事) 小池 英夫君

   参考人

   (日本放送協会専務理事) 山名 啓雄君

   参考人

   (日本放送協会理事)   根本 拓也君

   総務委員会専門員     阿部 哲也君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十四日

 辞任         補欠選任

  長谷川淳二君     上田 英俊君

  本田 太郎君     泉田 裕彦君

同日

 辞任         補欠選任

  泉田 裕彦君     仁木 博文君

  上田 英俊君     長谷川淳二君

同日

 辞任         補欠選任

  仁木 博文君     本田 太郎君

同日

 理事阿部司君同日理事辞任につき、その補欠として中司宏君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

三月十三日

 放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出、承認第一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出、承認第一号)


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     ――――◇―――――

古屋委員長 これより会議を開きます。

 理事の辞任についてお諮りいたします。

 理事阿部司さんから、理事辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に中司宏さんを指名いたします。

     ――――◇―――――

古屋委員長 放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題とし、審査に入ります。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本件審査中、参考人として日本放送協会の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として総務省情報流通行政局長小笠原陽一さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

古屋委員長 まず、趣旨の説明を聴取いたします。松本総務大臣。

    ―――――――――――――

 放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

松本国務大臣 日本放送協会の令和六年度の収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この収支予算、事業計画及び資金計画は、放送法第七十条第二項の規定に基づき、総務大臣の意見を付すとともに、中期経営計画を添えて国会に提出するものであります。

 まず、収支予算について、その概要を御説明申し上げます。

 事業収支につきましては、事業収入が六千二十一億円、事業支出が六千五百九十一億円となっており、事業収支における不足五百七十億円につきましては還元目的積立金をもって充てることとしております。

 事業計画につきましては、多様で質の高いコンテンツの確保、受信料の公平負担の徹底、ガバナンスの強化等に取り組むこととなっております。

 総務大臣としては、放送番組の質の維持と事業経費の合理化、効率化、受信料の公平負担の徹底、令和六年能登半島地震を受けた将来の災害への備え、放送に加えインターネットを通じた国民・視聴者への提供の検討、放送番組の流通を支える放送の二元体制を基本とする放送全体の発展への貢献として放送コンテンツのプラットフォームの在り方の検討等を行うことを求めております。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同を賜りますようお願い申し上げます。

古屋委員長 次に、補足説明を聴取いたします。日本放送協会会長稲葉延雄さん。

稲葉参考人 ただいま議題となっております日本放送協会の令和六年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして御説明申し上げます。

 NHK経営計画、二〇二四―二〇二六年度の初年度となる令和六年度は、自然災害の激甚化やフェイクニュースの蔓延、激動する世界情勢などメディアを取り巻く環境が変化する中、健全な民主主義の発達に資するため、情報空間の参照点を提供すること、そして信頼できる多元性確保へ貢献することを基軸として、経営計画に基づいた事業運営を着実に実施してまいります。

 事業運営に当たりましては、適切な資源管理とデジタル技術の活用などによりコンテンツの質と量を確保し、コンテンツ価値の最大化を図ります。命と暮らしを守る報道の深化に取り組むとともに、多様で質の高いコンテンツで公共的価値を創造いたします。また、国際発信を再強化し日本の視座を発信するとともに、全国ネットワークを生かして地域の姿を多元的に伝えます。あわせて、ユニバーサル放送・サービスの提供の充実にも取り組みます。

 インターネット活用業務は、実施基準に示した費用の範囲の中で国内及び国際向けコンテンツを効果的に提供いたします。

 受信料の公平負担の徹底を図るため、時代に即した新しい営業アプローチを推進し、受信料収入を確保するとともに、副次収入、財務収入の増加など、財源の多様化を図ります。

 NHKグループ全体でガバナンスの強化を図り、アカウンタブルな経営を徹底するなど、視聴者・国民から信頼されるNHKの組織運営に努めます。

 次に、建設計画におきましては、緊急報道設備や番組制作設備の整備を進めるとともに、いかなる災害時等にも安定的に放送・サービスを継続するための設備整備等を実施いたします。また、令和六年度に情報棟の建物竣工を控える東京・渋谷の放送センターの建替えを着実に推進してまいります。

 以上の事業計画に対応する収支予算は、一般勘定の事業収支におきまして、受信料などの収入六千二十一億円、国内放送費などの支出六千五百九十一億円を計上してございます。事業収支における不足五百七十億円につきましては、還元目的積立金の一部をもって充てることとしております。

 また、資本収支は、収入として、減価償却資金など総額千二百八十三億円を計上し、支出には建設費など千二百八十三億円を計上してございます。

 最後に、資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に基づいて資金の需要及び調達を見込んだものでございます。

 以上、令和六年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、その概要を申し述べました。役職員一丸となって、事業計画の一つ一つの施策を着実に実行し、公共メディアとして視聴者の皆様の期待に応えてまいりたいと存じます。

 委員各位の御理解と御支援をお願いいたします。あわせて、何とぞよろしく御審議の上、御承認賜りますようお願い申し上げます。

古屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

古屋委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。井原巧さん。

井原委員 自由民主党の井原でございます。

 今、松本大臣、稲葉NHK会長から説明がありましたように、NHKの経営計画、いわゆる令和六年度から令和八年度までの中期経営計画に基づいてただいま令和六年度の収支予算が示されたということであります。

 その中で、インフレ等により国民生活も大変厳しい中でありますが、昨年十月に値下げした受信料の額は維持しつつ、事業収支の赤字五百七十億円が見込まれながらも還元目的積立金を活用して視聴者に還元するとしておりまして、その点は私も高く評価したいと思います。

 他方で、もちろん視聴者の負担の軽減は大変重要でありますけれども、NHKは何より我が国唯一の公共放送であり、公共の福祉のため、あまねく日本全国津々浦々に豊かでよい放送番組を届ける社会的使命があり、この社会的使命を後退させることなく前進させることが重要である、こう思います。

 本日は、こうした基本認識の下に幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 まず、先ほど申し上げましたとおり、受信料が約一割値下げされ、中期経営計画、三年間でありますけれども、この間は赤字予算を編成し、改革を進めながら令和九年度に収支均衡を目指すとの方針が示されております。今年度は、年度途中での受信料値下げだったこともあり、二百八十億円の赤字予算ということでありました。そして、今示された令和六年度予算は通年で低減するということもあって、五百七十億円の赤字の予算が提示されているということです。

 つまり、何も変化がなければ来年度も再来年度もその規模の赤字が出る、こう想定されるわけでありまして、NHKはこれからの三年間で事業支出を大幅に削減し、令和九年度に収支の均衡を図るということでありますけれども、この額というのは、予算規模が六千億に対して六百億円の削減をするということでありますから、事業支出の削減にはかなりチャレンジングな取組が必要というふうに考えております。

 先ほど申し上げた公共放送の使命を損なうことなく、具体的にどういった部分に力点を置いて取り組んでいくのか、会長にお聞かせ願います。

稲葉参考人 委員御指摘のとおり、二〇二七年度までの事業支出削減は、過去に経験のない事業支出の削減でございまして、非常にチャレンジングな目標であるというふうに思っております。

 放送波の削減あるいは設備投資の見直しによる大幅な縮減を行うほか、既存業務の大胆な見直しを行いまして、番組経費や営業経費などに切り込み、既存のデジタルコンテンツの見直しなど、構造改革を断行いたしまして経費削減を実行する必要があるというふうに考えております。

 一方で、業務の効率化それから生産性向上につながる先行投資はしっかり行い、必要な構造改革を着実に進めることが重要だと思っております。各年度の改革の成果を取り込みながら、着実にステップを踏んで事業支出を削減していくという考えでございます。

 重要なことは、コンテンツ戦略六つの柱を基準とした選択と集中を進めることで、コンテンツの総量縮減を図りつつ、適切な資源管理とテクノロジーの力でより質の高いコンテンツを充実させて視聴者の期待に応えていくということではないかと考えてございます。

井原委員 ありがとうございました。

 そこで、少し気になる点についてお聞きしたいというふうに思います。

 よく、健全なる精神は健全なる肉体に宿るという言葉があります。人間でも処方を誤った無理なダイエットはかえって体も壊しますし、精神力、活力も落としてしまう、これは組織にも言えることだろうというふうに思うわけであります。

 NHKが公共放送としてよい番組を作るには、支出削減を図る観点からも、先ほどお話がありましたように、DXとかハード面での改革を進めることはもちろん重要である、こういうふうには考えるわけですが、NHKという組織を構成する人材、つまり人を大切にすることをおろそかにしてはならないし、組織としての活力が低下してはならない、こういうふうにも思うわけです。

 その意味で、今は、働き方改革の推進とか賃上げの実現などを図り、人材を確保していくことがまさに重要なときだ、こういうふうに考えるわけでもあります。また、番組制作には、外部制作事業者、いわゆる下請企業との連携も重要でありまして、物価高などを反映した適切な価格転嫁も必要だろう、こう思います。ある意味削減とは相対する課題と考えるわけでありますけれども、人材の処遇改善や外部制作事業者を含めた番組制作環境の整備についてどのような方針の下で取り組んでいくのか、お聞かせください。

稲葉参考人 委員御指摘のとおり、NHKが質の高いコンテンツを制作するためには、やはり職員一人一人が公共放送の使命に誇りを持って、それぞれの専門性を高め、いわばプロフェッショナルとして能力を発揮する、そういうことができるような環境を整えることが必要だというふうに考えてございます。そのため、長時間労働に頼らない組織風土をつくるとか、業務改革により効率的な働きを追求する、あるいは健康確保と業務改善によるクリエーティビティーを発揮できる、そういう職場環境を整え、そのようなことを通じて視聴者の皆様の期待に応える、そういう組織づくりを進めてございます。

 外部制作事業者につきましては、公共放送を支える大切なパートナーでございまして、健全な取引を徹底し、多様で優れた番組の制作に努めるとともに、コンテンツ産業全体の育成、発展に貢献するということも目指してございます。具体的には、外部制作事業者などを対象に番組提案を募集し、創造性を生かした企画を採択し、制作機会の拡大に取り組んでございます。さらに、来年度からの次期中期経営計画でも、情報空間全体の多元性確保への貢献を目的に、メディア産業全体への投資や、外部との協調、連携の取組などを検討してございます。

 物価や人件費の上昇による影響につきましては、外部制作事業者との協議を丁寧に行うよう周知を行っておりまして、安心してNHKと取引いただけるよう、引き続き取り組んでいきたいと考えてございます。

井原委員 ありがとうございます。

 時間が迫ってきておりますので、最後は一つ飛ばして質問します。

 合理化の中で地方の切捨てはあってはならない、そんな思いを、私なんかは愛媛の地方でありますから感じております。行き過ぎた合理化にならないようにしっかり取り組んでいただきたいというふうに思っておりますが、それに関連することで、放送体制の地方における維持ということであれば、中継局のインフラの維持も課題になっております。この中継局の維持はNHKと民放に共通した課題になります。昨年の放送法の改正によりまして、より効率化へ向けて、NHKと民放が共同で中継局を利用できる制度ができたところでございます。

 そこで、総務省にお伺いします。この中継局の共同利用について、その期待や検討状況、今後の見直しについてお聞かせいただきたいと思います。

渡辺副大臣 井原委員の質問にお答え申し上げます。

 井原委員のおっしゃるとおり、今現在、地上基幹放送事業者はそれぞれが、あまねく番組を届けるために基地局を設置して、かなりの経費がかかっております。そのことが、非常に運営にも厳しい状況になっているということで、さきの通常国会で、先ほど委員からもお声がありましたように、さきの通常国会におきます改正放送法によりまして、経営の選択肢として中継局の共同利用が可能となりました。これによりまして、NHK、民放を含めた複数の放送事業者が連携してインフラのいわゆる整備、維持に取り組むことで、固定費用が削減され、中継局の柔軟な構築、運用がなされることを期待しております。

 昨年十二月には、中継局の共同利用を推進するため、我々総務省も交えてNHKと民放が協議を開始しております。まずは共同利用会社の設置に向け、検討を進めているところでございます。

 今後は、各地域におきまして地域協議会を立ち上げ、地域の実情に合わせた議論を展開するなど、中継局の共同利用に向けた検討を加速させてまいります。

井原委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

古屋委員長 次に、中川貴元さん。

中川(貴)委員 自由民主党の中川貴元でございます。

 今日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 先ほどは、松本大臣より提案理由説明がございました。また、稲葉会長からは令和六年度予算案の趣旨説明がございました。

 私からは、まず稲葉会長に、来年度の予算案に込めた思いをまずはお尋ねしていきたいと思っています。

 稲葉会長は、一年前の就任会見の際に、受信料の引下げに関連して、収支の均衡が表面的に実現したとしても、それによってコンテンツの質や量が落ち込むことがあっては本末転倒だ、デジタル技術を活用して質、量共に豊富に提供していく、こういう決意を述べられたところでございます。一年たちました。この思いはどのように変化していらっしゃるのか、まずこの点についてお尋ねをします。

 あわせて、来年度の予算につきましては、今も議論がありましたが、受信料の引下げによって大変厳しい収支見通しとなっているわけでございます。こういう中で、受信料の引下げのみならず、我が国の人口減少に伴い、世帯数も当然ながら減っていくわけであります。こういう中で、これまでどおりの番組編成等々のやり方ではなかなか収入が増えていくということは難しいのではないか、こんなふうに考えるわけでございます。

 そういう中で、三年間の中期経営計画でどのような見通しを立てていらっしゃるのか、国民の皆様にどういう情報あるいは番組を提供していこうと思っていらっしゃるのか、それらを含めて来年度の予算に対してどのような留意をしながら予算編成をされたのか、併せてお答えをいただきたいと思います。

稲葉参考人 お答え申し上げます。

 就任から一年余りがたつ中で、これまでやはり少々大変だなと思ったこと、あるいは最も心に残っているものは次期中期経営計画の策定作業でございました。計画の策定に当たっては、役員間で繰り返し検討を重ねまして、率直で濃密な議論が行われたと思っておりますが、その努力の結果として、全体としてはよい形で取りまとめることができたのではないかと私自身は満足してございます。

 特に、受信料一割値下げによる一千億円規模の事業支出の削減を行う中で、今回の中期経営計画と新年度予算案は、全体として規模が縮小していくというものではなくて、様々な形で新しい公共的価値を創造する、そういう工夫を織り込んだ非常に意欲的なものだと受け止めていただければと考えております。

 次期中期経営計画と新年度予算案、事業計画案では、放送法に求められている民主主義の健全な発達に資するため、ひいては、日本はもとより世界を含めて、人々が平和で豊かに暮らせる社会の実現にNHKとして貢献していきたい、そういう気持ちを込めて次の三か年で取り組むことを盛り込んだわけでございます。

 具体的には、経営計画で掲げているコンテンツ戦略六つの柱を基軸に、より確かで深い情報を知りたいとか、もっと日常が豊かになる番組が見たいという視聴者・国民の高い期待に正面から応えていくということ、NHKの全国ネットワークを生かし地域の情報をしっかりと提供していくということ、さらには日本の視座を海外にも発信するという観点から戦略的な国際展開を図っていくということなどを織り込んでございます。

 いずれも簡単なことではないのでございますけれども、だからこそ役職員全員が日々たゆまぬ研さんを積んで、その創造性や生産性を一層発揮、向上させていくことによって経営計画あるいは予算、事業計画を着実に実行してまいるということが大事なことではないかと思ってございます。

中川(貴)委員 稲葉会長、御答弁ありがとうございます。率直な御答弁をいただいたかと思っております。

 今、答弁の中で、地域の情報を生かしていくんだ、こういう趣旨の御答弁もいただいたかと思います。中期経営計画の中でも、災害対応あるいは地域取材を基軸にそれぞれの地域に合った形態でサービスを展開していく、こう掲げられているところでもございます。それは、つまり、地域を大切にしていくんだ、こういうことの表れでもあろうかと思っています。

 例えば、今、石川県では大変な地震被害があるわけでございます。そういう中で、例えば東京や、あるいは違う遠くからでも自分のふるさとに思いをはせる、そういったところの情報を絶えずリアルタイムで見ていきたい、そういう思いがあるのは当たり前のことだというふうに思います。そして、これは災害に限りませんけれども、地方にいても、どこにいても、自分の地域、それぞれの地域の情報を知る、それはいわゆるユニバーサルサービスの提供ということにもなろうかと思います。

 NHKさんはそうした社会的な使命も果たす、そういう役割があろうかと思いますが、この点についての見解、併せて、現状、地方のニュースにはどれぐらいの時間を割いておられるのか、来年度あるいは今後、それらの地域に割く時間はどのように変えていこうと思っていらっしゃるのか、この点についても言及いただければと思います。

山名参考人 お答えいたします。

 地域の情報をお住まいの地域に向けて詳しく発信していくこと、そして全国に発信していくことが地域放送・サービスの両輪でございまして、全国にネットワークを持つNHKの重要な役割だと認識しております。

 新年度、二〇二四年度の総合テレビの一日当たりの地域向け放送時間は、ニュースや気象情報などで二時間程度を見込んでおります。そして、地域情報の全国発信につきましても、二四年度は列島ニュースの放送時間をこれまでの一時間から二時間に拡大するなど、更なる強化を行うことにしております。さらに、NHKプラスでは十八時台の地域向けニュース番組の見逃し配信を拡大しておりまして、二〇二三年の六月からは全国各地の四十八の全番組の配信を行っているなど、インターネットによる地域情報の発信にも力を入れております。

 今後も、放送とインターネットのそれぞれの特性を生かしながらサービスの充実を図ってまいりたいと考えております。

中川(貴)委員 ありがとうございました。

 本当は国際展開についても質問をさせていただく予定でございましたが、あっという間に十分たってしまいましたのでこれで質問を終わりたいと思いますが、一言だけ。どうぞNHKさんには国民の皆さんの期待に応えていただく、そういう取組をお願いさせていただきまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

古屋委員長 次に、平林晃さん。

平林委員 公明党の平林晃と申します。

 令和六年度NHK予算について質問させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 先ほどから御説明がありましたけれども、今回の予算では、昨年十月から受信料の値下げがありまして、収入が四百十八億円減の六千二十一億円となる、一方で事業支出は大変な構造改革をしていただけるということで見直しをして、百二十八億円減の六千五百九十一億円。その結果、収支が五百七十億円不足しているということですけれども、これは繰越金を還元目的積立金に組み入れて、そこから充当されるということであり、受信料の値下げを維持しつつ不足分を還元目的積立金から充当する、この点、私も評価をさせていただいております。

 その上で、基本的な事柄について質問させていただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 この度の能登半島地震においてお亡くなりになられた皆様に心からお悔やみを申し上げまして、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 この度の地震では、災害時における公共放送の重要性、私も改めて認識をさせられました。

 第一に、正確な情報を途切れることなく伝えることの難しさであります。能登半島地震においては、停電が発生して、非常用電源を用いて放送を継続していたところがバッテリー燃料が枯渇してしまって、翌二日から放送を停止する、こういったこともお聞きをしましたし、また、ケーブル断線等によって避難所でテレビが見られない状況になったとも伺っております。こうした事態に対応するために、避難所に衛星アンテナを設置したり、作業要員を現地に派遣したりされるなど、現場の御苦労は察して余りあったと考えております。こうした災害への事前の対策は本当に重要であります。

 また、情報の正確さを担保することも必要であります。能登半島地震においても、地震そのものや津波に関する誤情報、あるいは不安をあおる偽情報が拡散いたしました。これらの情報の打ち消しや注意喚起は、今回も御対応いただきましたけれども、今後もますます重要になると考えております。

 こうした認識はNHKにおいても共有をされておりまして、今回の経営計画冒頭の二つの基軸の第一、情報空間の参照点の提供でありまして、その中身は、信頼できる基本的な情報を提供することとなっています。

 そこで、まず第一の質問をさせていただきます。この第一の基軸を災害時においてこそ実現していくためには、設備の災害に対する頑健化が重要であり、また、偽・誤情報への対応も重要です。これらの対策がこの度の予算にどのように盛り込まれているのでしょうか。会長の御意見を伺います。

稲葉参考人 災害時の正確な情報発信というのは、御指摘のとおり、NHKの重要な責務だと考えてございます。設備の災害に対する頑健性、これについては常に念頭に置いて取り組んできてございます。

 お尋ねの二〇二四年度の予算案について申し上げますと、東京・渋谷の放送センターでは、今、耐震性の高い建物の中に報道機能を集約した情報棟を建築している最中でございます。自家発電設備の整備あるいは燃料備蓄といった停電対策を徹底し、首都直下地震に対応した整備を進めてございます。必要となる予算は、情報棟の建物設備に三百八億円、それから放送設備整備に四百六十八億円を計上してございます。

 一方、お尋ねの情報空間における偽情報、誤情報への対応でございます。インターネット上の投稿などを二十四時間体制で確認しておりまして、誤情報や偽情報の拡散を確認した際には、取材部門で確認、検証を行って、注意喚起を含めて正確な情報を発信してございます。こうした取組の費用は報道取材費の中に盛り込んでございます。

 こういう形で、今後も、公共放送として、視聴者・国民にとってよりどころとなる、正確で信頼できる社会の基本的な情報を提供してまいりたいと考えております。

平林委員 ありがとうございます。

 これと並びまして、第二の基軸には、信頼できる多元性確保への貢献として、民主主義の基盤である多角的な視点を確保するために、伝統メディアが競い合い、それぞれの信頼性を高めることに寄与とあります。これは、第一基軸とも相まって、放送法第一条第三号の健全な民主主義の発展に資するようにするためには大変重要であります。

 だからこそ、その意味を改めて確認させていただければと思います。とりわけ、多元性ということが何を意味するのか、また多角的な視点をNHKはどのように提供していこうと考えているのか、これらの点を踏まえまして、第二基軸の意義と実現方法について、NHKの御見解を伺います。

稲葉参考人 自然災害が激甚化しており、国際秩序が混迷を深めている、こういう中にありましてフェイクニュースの拡散などが社会の混乱を招いている、そういうことが大きな課題になっていると思っております。

 公共放送NHKには、情報空間の健全性を確保するということで、平和で豊かに暮らせる社会を実現し、民主主義の発展に寄与することが求められているというふうに考えております。

 民主主義の基盤である多角的な視点を提供するということはNHKだけで実現できるものではございませんで、取材、制作体制をしっかり持った新聞あるいは民放などと切磋琢磨しながらコンテンツの提供に取り組んでいくことが大事だと思っております。こうした伝統メディアが信頼できる価値を視聴者・国民の皆様にもたらす状況、まさによく言う高い水準での多元性というんでしょうか、こういったものを地域を含めて確保していくということが重要だと認識してございます。情報空間で正確な情報を発信する担い手としての役割をNHKは共に果たしてまいりたいというふうに思っております。

 また、メディアを取り巻く環境が厳しさを増す中で、コンテンツ産業を支えている外部の制作会社や地域のジャーナリズムとの協調あるいは連携も重要だと認識してございます。このため、次期中期経営計画では地域を含めたメディア産業全体の多元性確保への貢献を掲げておりまして、人材育成への支援など、業界全体の底上げにも取り組んでまいりたいと考えております。

平林委員 ありがとうございます。

 今、後ろの方でもありましたけれども、様々な者との連携をしていくということでございますが、今回の経営計画の中では、二元体制に関しまして、それを維持していくために、二〇二四年度から二六年度の三年間で六百億円規模の予算を想定し、将来の受信料負担軽減に貢献するというふうに述べられてあります。より具体的には、今回の予算案には共同利用型モデルの導入に十一億円が計上され、持続可能な代替手段の検討などに取り組まれることとされています。

 この点、本当に私も重要と思っておりまして、人口が減少し、加速化も危惧される地方においてユニバーサルサービスとしての放送を維持することは容易ではないと思います。だからこそ、地域の民放の皆様と協力できる業務は協力すべきであると私も考えます。これにより事業コストは一定下がりますけれども、それがそのまま受信料の負担軽減につながるかというと、若干距離があるようにも感じます。

 そこで、伺います。基幹となる二元体制維持としてどのような取組を検討し、また将来の負担増にどうつなげていくお考えなのか、NHKの見解を伺います。

根本参考人 お答えいたします。

 今回の放送ネットワークインフラ共同利用などの取組につきましては、民間放送事業者との二元体制を堅持して、地域の皆様にNHKと民放の放送を将来にわたって届けていくことを目的としております。

 その際に重要なのは、地域の放送ネットワークインフラを維持していくことだと考えてございます。設備の維持管理コストが課題となっている中で、全国各地の民放各社と協力しまして、維持管理コストの抑制や保守管理の人材確保などの検討を進めております。また、ブロードバンド回線の普及など、通信のユニバーサルサービスの最新動向を踏まえながら、効率的な伝送手段への代替などの検討も進めております。こうしたことは放送業界全体のコスト抑制を推進するだけでなくて、NHKの効率化にも寄与しますので、視聴者負担の軽減にもつながると考えているところでございます。

 昨年十二月でございますが、総務省、民放、NHK等が構成員となります中継局共同利用推進全国協議会が発足し、協議が開始されました。各地域の協議会の設立に向けた調整も順次進められているところでございます。

 御質問の六百億円でございますが、今後検討していくこととなりますけれども、放送法で定められました共同利用型モデルの導入、代替可能性があるインフラ等の普及、環境変化も踏まえまして、民間放送事業者とも意見を交換しながら、放送業界全体の経済合理性を追求した持続可能な仕組みに活用していくことを考えてございます。

平林委員 ありがとうございます。

 設備のコスト削減、受信料の削減等も含めて、どちらも大切な取組ですので、是非お願いできればというふうに思っております。また、少しお話がございました通信との融合、これもしっかりと進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 続きまして、現在検討されている放送法の改正に関しましてお聞きできればと思います。

 今回の改正案におきましては、NHKの必須業務に、放送番組の同時配信、放送番組の見逃し配信、番組関連情報の配信、これら三点を追加することが検討されている。ここで、第三の番組関連情報とは、放送番組と密接な関連を有するものであって、放送番組の編集上必要な資料によるものに限定し、従来の理解増進情報の制度については廃止をされるということになっております。また、番組関連情報の配信に係る業務規程の策定、公表、実施状況の定期的な評価、総務大臣への届出の義務づけが検討されています。

 この業務規程の策定が非常に重要になってくると考えますし、これによって番組関連情報が定まってくる、そうしますと配信内容が確定いたしますので、その結果、配信されるものは有料で提供されるのか、あるいは無料の部分も残されるのか、この点が気になってまいります。現状、NHKプラスなどを拝見しますと、放送部分は有料ですけれども、理解増進情報と言われているテキスト情報は受信契約に関係なくアクセスできる、こんな状況にあるわけでございます。こういったことも含めまして今後どうなるのか、気になっておりますので、NHKの見解を伺います。

根本参考人 お答えいたします。

 放送法の改正案は、放送と同じようにインターネット経由でもNHKのコンテンツをお届けすることをNHKに義務づけるとともに、インターネットのみでサービスの利用を開始した人には受信契約の対象として相応の費用負担をしていただく内容だと承知してございます。御指摘の放送番組の同時配信、見逃し配信、番組関連情報の配信につきましては、この考え方の対象になるというふうに認識してございます。

 ただ、既に受信契約を結んで受信料をお支払いいただいている人は追加の負担なく利用いただけます。また、災害時など、生命、安全に関わる伝達の緊急度の高い重要な情報をお届けする際は、すぐに見ていただけるようにしたいというふうに考えてございます。

 業務規程につきましては、御指摘のとおり、番組関連情報の配信を規律するものでございます。番組関連情報の配信では、放送の価値をインターネットならではの特性に合わせて提供しようと考えております。国内外の様々なニュースを動画や記事で提供していくことなどを検討しております。

 業務規程の策定に向けましては、国民・視聴者のニーズを満たす公正な競争を確保する等、改正法に定める要件に適合させつつ、配信する内容等について今後更に検討をしてまいります。

平林委員 ありがとうございます。他の有料メディアにおいても無料アクセス部分もありますし、こうしたことを考えますと、NHKのネット配信においてもそういった部分はあってもいいのではないかと考えておりますので、引き続きの御検討をお願いできればと思います。

 関連して伺えればと思います。

 今回の放送法改正案に伴って生じるインターネット専用の契約について、料金や一アカウントの接続数、あるいは2の見逃し配信や3の番組関連情報の配信期間など、詳細をどのように考えておられるのか、NHKの見解を伺います。

根本参考人 お答えいたします。

 放送法の改正案が成立した場合のインターネット配信に関わる契約の在り方につきましては、現在検討中でございます。

 料金に関しましては、既にテレビを設置して受信料をお支払いいただいている人は、インターネットのサービスについても追加の負担なく利用いただくことになると考えております。

 一方、テレビを持たず、インターネットでサービス利用を開始した人は、テレビを設置した人と同じような受信環境にある者として受信契約の締結対象となっております。受信契約の内容はテレビを設置されている場合と公平に定めなければならないと改正案に明記されております。このことを踏まえて検討してまいります。

 一アカウントの接続数や配信期間など、サービスの具体的な提供方法につきましても、こうした公平性などの観点を踏まえつつ今後検討を進めてまいります。

平林委員 ありがとうございます。公平性の観点を基に検討していただけるということでございます。

 私も、現行のNHKプラスをよく利用させていただいております。見ておりますと、時折、テレビでは配信されているんだけれども、NHKプラスでは配信されていない。権利許諾によってこういうことが起きると説明をいただきましたけれども、こういったことは今後も起きてくる可能性もあろうかと思いますし、また、インターネット専用の契約においては通信費用が受信側の負担になっている、こういった観点もあろうかというふうに思います。今までと違う観点が発生してくるインターネット専用の契約になろうかと思いますので、こういった点も総合的に御考慮をいただいて、国民が納得しやすい、また、複雑だというような話もちょっと伺いましたので、分かりやすさということも含めて料金体系を決定していただければと思いますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。

 最後の質問をさせていただきます。

 今回の事業計画では、受信料公平負担のために新たな営業アプローチを推進し、支払い率は現行水準維持とあります。この点について、具体的にどのようなアプローチを検討しておられるのでしょうか。

 あわせて、地域スタッフ制度を二〇二三年度末、この三月に終了し、二四年度からは収納業務を中心とした新たな委託制度を開始とあります。この委託制度、具体的にどのようなものであり、これによってどのような効果が期待されるのでしょうか。

 これら二点について、見解を伺います。

小池参考人 お答えします。

 新たな営業アプローチとは、デジタル、書面、対面など、複数の施策を組み合わせることによって、NHKの公共的価値に共感し、納得して受信料をお支払いいただける方を増やしていく取組でございます。

 この取組の定着には一定の時間が必要となることや、世帯数の減少、テレビ所有率の低下の影響などもありまして、二〇二四年度は、契約数が三十七万件減少し、支払い率は七八%となる計画を立てております。

 新たな委託制度となりますNHKの収納スタッフは、受信料が未収となっている方に対面でお支払いをお願いする活動を行います。NHKとしましては、こうした対面だからこそできるコミュニケーション活動に効果があると見ております。

 視聴者の皆様と様々な形で接点をつくりまして、できるだけ早く新たな営業アプローチを確立して支払い率の維持向上につなげてまいりたいと考えております。

平林委員 ありがとうございました。

 今回の改革によって、受信契約も拡大し、支払い率も拡大させていく、このような取組と理解をさせていただきました。是非本当にそれを達成していただきたいと思います。

 その一方で、テレビ受信機を設置しない世帯も増えていく現状もあろうかと思います。インターネット専用契約は極めて重要であり、今までの契約と両者が相まって、日本の公共放送を維持していっていただきたい、我々もそのことを後押しさせていただきたいと思います。

 時間がちょっとだけ残っておりますので、最後に一言だけ。

 NHKの番組を拝見させていただきますと、映像作成技術の高さに驚かされることがよくあります。よくこんな映像が撮れたなと感動させていただきますし、また、様々な番組で勉強させてもいただいております。こうした質の高い番組作りの取組については引き続き飽くなき挑戦をしていただきまして、さすがNHKと言われるようなものを御提供いただきたい、このことを念願させていただきまして、少し早いかもしれませんけれども、私の質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。

古屋委員長 次に、道下大樹さん。

道下委員 立憲民主党、北海道一区の道下大樹でございます。

 それでは、二〇二四年度NHK予算案について質問させていただきますが、まず、一月一日に発災した能登半島地震で犠牲となられた方々に御冥福をお祈り申し上げますとともに、被災者の方々に心からお見舞いを申し上げたいというふうに存じます。

 NHKは、能登半島地震への対応をしっかりとされてきたと私も承知しております。

 発災当初、津波警報発令から注意報に変わるまで、全波で臨時ニュースを約九時間半放送した。特に印象深いのは、当時、アナウンスされていたアナウンサーの方が強い口調で、テレビを見ていないで急いで逃げてくださいというふうにテレビを見ていた方々に呼びかけた、被災地の方々に呼びかけたということが非常に印象に残っております。これでどれだけの方々の命などが救われたかというふうに思います。

 その後、地域に向けたニュース、またそれぞれの避難所ごとのライフライン情報をきめ細やかに放送されておられました。デジタル展開としては、インターネット同時提供、また避難所、給水所マップなども情報を提供され、訪日、在留外国人への対応としては、英語のテレビ、国際放送で特設ニュースを放送、英語など十七言語でラジオ国際放送を発信していたということもされています。

 また、今、こんなにもインターネット、SNSが発達している中で、残念ながらフェイクニュースも多く出されております。その中では、フェイクニュースについて、誤情報であるだとか偽情報であるということをNHKがテレビなどで必要に応じて発信していたということは、私は高く評価させていただいております。

 ここのフェイクニュースの対応についてちょっと伺いたいんですけれども、これはフェイクニュースですよというような発信をすることは非常に重要だと思いますが、例えばNHKのロゴを使った偽情報の被害を受けるなどした場合、NHKとして法的措置、削除要求などはしてきたのか、つまり発信者情報開示請求などを行ってプロバイダーや発信者に削除要求などを、そして法的措置をやってきたのか、伺いたいと思います。

山名参考人 お答えいたします。

 能登半島地震関連では、旧ツイッターのXに、志賀原発で放射性物質を含む水がおよそ四百二十リットル漏えい中という内容でNHKのロゴを不正に使った偽の投稿が行われておりました。NHKは、この投稿に対しまして、誤解を生む内容が含まれ、放射性物質を含む水が漏えいしているかのように示された写真は実際には故障した変圧器で油が漏れている様子を捉えたものなどと、投稿を打ち消すニュースをテレビやラジオ、インターネットを通じて発信いたしました。この件に関しましては、その後、投稿自体が削除されたことを確認したため、削除要請や法的措置などは行っておりません。

 ただ、能登半島地震関連に限らず、NHKのロゴなどを使った偽情報の発信が確認された場合、必要に応じまして放送やインターネットなどで打ち消したり削除要請を行ったりしております。

道下委員 情報を発信するのみならず、誤情報や偽情報に対するNHKとしての毅然とした対応、これは法的措置という形で是非今後も取っていただきたいというふうに思っております。

 次に、NHK予算の推移について伺いたいと思います。

 事業収入について、二〇二〇年度予算の七千二百四億円から八年後の二〇二七年度の見通しは五千七百七十億円と一千四百三十四億円の減額、率にして約二〇%もの減額です。事業収入のうち受信料収入については、二〇二〇年度六千九百七十四億円から二〇二七年度見通しで五千五百九十億円と千三百八十四億円の減額、率にするとこちらも約二〇%の減額。非常に大きな減額になっていると思います。民間企業では、これだけの収入の落ち込みは非常に厳しい経営状況であるというふうに認識されると思います。受信料の値下げが大きく影響しているのではないでしょうか。NHKの見解を伺います。

根本参考人 お答えいたします。

 受信料収入を含む事業収入は、二〇二五年度には六千億を下回る想定でありまして、二〇二七年度は二〇二〇年度に比べて約二割の減少となると見込んでおります。

 事業収入の減の主な要因は御指摘のとおり受信料の減収であり、昨年十月から実施しております受信料の一割値下げと、二〇二一年度の新型コロナや経済情勢の悪化に伴う影響以降、受信契約件数の減少による影響が大きいということでございます。受信料の減収を副次収入や財務収入の増などでカバーしつつ、構造改革を着実に実行、推進することで事業支出を段階的に縮減していく方針でございます。

 また、デジタル、書面、対面など複数の施策を組み合わせた新たな営業アプローチをできるだけ早く確立しまして、支払い率の維持向上につなげていくことで安定した業務運営を図ってまいりたいというふうに考えてございます。

道下委員 後で受信料収入の新たな営業アプローチについては伺いたいと思いますが、受信料の減額というのはNHK自身で決めたことだというふうな答弁は以前ありましたけれども、私はやはり、その当時の菅総理やそのときの総務大臣の政治的な圧力があったのではないかと。私はそのように思うんです。しっかりとした自主的な合理化だとか適正な効率化というもので受信料が減額され、受信者の負担が軽減されることであればすばらしいんですけれども、私はある意味でこれは本当に、NHKが非常に危機的な状況に今あるというふうに思います。

 収入に対して支出について見てみますけれども、二〇二〇年度予算七千三百五十四億円から二〇二七年度見通しは五千七百七十億円と千五百八十四億円の減額、これも率にして約二一%強。特に二〇二四年度からの三年間の事業支出の減額幅は、この三年間、前年度と比べて二百億円前後ずつなんですけれども、二〇二六年度から二〇二七年度にかけては一気に四百二十五億円も減額させる計画となっています。

 そもそも、二〇二四年度から三年間の事業収支差金、つまり赤字なんですけれども、千二百二十億円は受信料値下げのために確保した還元目的積立金から充当することで赤字解消をするとしていますけれども、この積立金も二〇二六年度で残金ゼロになります。

 これは問題の先送り、二〇二七年度に問題を先送りしているのではないかというふうに捉えられかねません。更なる抜本的な構造改革というか、これまでにない大規模なサービス低下が起きてしまうおそれもあるのではないかというふうな危惧をする声があちこちから聞こえてきますが、この点について説明を求めます。

根本参考人 お答えいたします。

 二〇二七年度までの事業支出削減、これは過去に経験のない大きなチャレンジだというふうに認識してございます。

 放送波の削減、設備投資の大幅な縮減を行うほか、既存業務の大胆な見直しを行い、番組経費や営業経費への切り込み、また既存のデジタルコンテンツの見直しなど構造改革を断行しまして、二〇二七年度までに一千億円規模を超える事業支出削減を行う計画でございます。一方で、業務の効率化や生産性向上につながる投資を前倒しで実施しまして、必要な構造改革をしっかり進めます。

 各年度の改革の成果を取り込みながら、着実にステップを踏んで経費を削減していくため、収支均衡を目指す二〇二七年度の削減額が大きくなっているということでございます。

 一千億円規模の事業支出の削減を行いますけれども、ニュース、番組というコンテンツを全ての起点といたしまして、適切な資源管理とテクノロジーの進化で質と量を確保してまいります。そして、今目指すべきものとして掲げているコンテンツ戦略六つの柱の実現を通じて、視聴者・国民の皆さんに公共的価値を実現してまいります。

 サービスが低下したといった指摘が出ることのないよう、創造性や生産性を一層発揮、向上させまして、経営計画や予算、事業計画を着実に実行してまいりたいというふうに考えてございます。

道下委員 今、サービス低下のないようにというふうにおっしゃいましたけれども、現に渋谷の新しい放送センターの建設に関しても、当初の見込みからは遅れたり、また当初の計画を縮小、ダウンサイジングしているということも伺っております。そうしたことを考えれば、受信料の一割減額が非常に私は響いているというふうに思います。これがNHKの柱というか根本に大きな影響を与えているのではないかというふうに非常に心配するわけであります。

 一つの望みが事業収入のうち大きな割合を占める受信料収入の新たな営業アプローチの推進なんですけれども、これが本当にうまくいくのか。二〇二四年度では五千八百十億円と見込んでいるこの受信料収入、受信料の支払い率は実はじわりじわりと減少傾向にあり、二〇二四年度で七八%に踏みとどめ、さらに二〇二七年度には七七%で維持しなければならない、僅かな低下でも許されない厳しい状況と言えます。

 前執行部時代に営業活動を従来の巡回訪問型を終了させ、デジタル、書面、対面、外部団体等の協力等による新たな営業アプローチを推進するとしていますけれども、皆様御存じのとおり、今後の人口減少、世帯数の減少、そしてテレビ保有者減少、そもそもテレビは持たないでスマホなどで動画配信サービスだけを見るというような方が増えてきている中で、受信料収入、支払い率の更なる減少が容易に想定され、現場の営業部門には強い圧力がかけられているとも伺っています。

 今後の受信料収入確保の方策並びに支払い率八〇%超えに向けた何か秘策はあるのか、伺いたいと思います。

稲葉参考人 次期中期経営計画で掲げました受信料収入を確保するためには、やはり支払い率は現在の水準を維持するということが前提となってございます。

 計画では、支払い率は今よりも一、二ポイント低下するという見通しでございますが、これは、先ほど来御説明しています訪問営業を主体とする営業活動を転換し、新しい営業アプローチを定着させるため一定の時間が必要だということによるものでございます。

 委員がおっしゃるように、支払い率八〇%超えに向けた策はなかなか見つからないものでございますが、新しい新たな営業アプローチにおいては、多くの方にNHKの放送・サービスに触れていただき、その公共的価値に共感して、NHKを必要だと感じていただくことが重要だというふうに考えてございます。

 加えて、NHKと視聴者という関係性に加えまして、外部企業との連携も強化するということがあっていいのではないかと考えております。その企業の従業員の方にもコンテンツに触れていただくためのアプローチを行うといったようなことを通じて、NHKとの接点をこれまで以上に増やす取組を行っております。

 こうした方針を現場の職員としっかり共有し、役職員が一体となって支払い率の維持向上に向けて前向きに取り組んでいく環境をつくってまいりたいというふうに思っております。

道下委員 NHKは皆様御承知のとおり受信料で支えられている、受信者が支えているというこの気持ちをNHKも私たちも決して忘れてはならないと思いますが、昨今の新聞離れ、テレビ離れ、この影響はNHKにも襲いかかっているというふうに私は思っていますので、しっかりと、NHKが今後も必要であるというように多くの国民の皆様に理解され認識されるように是非頑張っていただきたいと思っております。

 また、受信料についても、一割削減しましたけれども、私は、必要に応じては受信料の増額ということも、国民の皆様の理解を求めつつ、必要があるときにはそれはしなければいけないんじゃないかなというふうに思います。

 次に、地域放送について、ちょっと順番を変えて伺いたいと思います。

 NHKはこれまでも全国にある五十四の放送局で地域放送・サービスの充実に取り組んできているとしておりますけれども、今年度と二〇二四年度を比較すると、地域放送番組費としては、百六十五・八億円から百六十一・五億円と四・三億円の減額、一日当たりの地域放送時間としては、総合テレビが一時間減の二時間程度、ラジオ第一放送は二十五分減の二時間十五分程度、FM放送は四十分減の四十分程度となっております。予算や放送時間が減少している中でどのように地域放送・サービスの充実に取り組んでいくおつもりなのか、説明を伺いたいと思います。

山名参考人 お答えいたします。

 NHKは、全国五十四放送局のネットワークを生かして、地域の情報や課題を地元だけでなく全国、世界へと発信して、地域の課題解決や発展に貢献していくことが重要な役割だというふうに考えております。

 御指摘のとおり、二〇二四年度の地域放送番組費は二三年度から四億円減少の百六十一・五億円としておりますけれども、地域では、ニュースや番組を効率的に制作しながら、それぞれの地域に合った形態でサービスを展開していくということでございます。

 また、地域放送時間につきましては、これまで、全国放送番組のうち、地域を取り上げた一部の番組を含めて集計してまいりました。この集計方法を見直しまして、地域向けの放送時間は二〇二三年度とほぼ変わっておりません。地域におきまして災害報道や地域取材にしっかり取り組み、地域放送やサービスの充実を図ってまいりたいと思っております。また、二〇二四年度からは列島ニュースという番組の放送時間を拡大するなどいたしまして、地域情報の全国発信、これの強化にも努めてまいりたいと考えております。

道下委員 私の選挙区札幌というか北海道でも地域密着の放送が行われておりますし、北海道内でも放送局ごとに番組を持っていたりしていますが、今回、記者さんなどは放送局にそのままにしたまま、一部の事務職だとかディレクターさんは近くの大きな放送局から出張するだとか、やはり一部効率化されているということでございます。

 その中で地域放送・サービスを維持していくというのはなかなか大変かと思いますけれども、そうした、やはり地元に記者さんとかNHKの方々がいるということでの信頼関係が生まれて、そこで情報が収集され、そして頼りにされる、そういうNHKというものがこれまでも続いてきたものだと思いますので、これからもしっかりと、地域密着というものは人員も含めて是非続けていただきたいというふうに思っております。

 次に、NHK職員の賃上げについて伺いたいと思います。

 昨日、春闘の集中回答日がありまして、昨年を上回るような賃上げ、大手企業では賃上げのニュースが飛び交っております。一方で、NHKは、二十二年間賃上げされていない、ベースアップされていないというふうに伺っております。NHKの労働組合、日本放送労働組合は昨年の春から経営側と賃上げの交渉を始めて、二十三年ぶりのベースアップを要求していると承知しています。

 働いているNHK本体や関連団体の職員の皆様には、経営者側にきちんと労働の価値を給与の面で認めてほしいという意見が多いわけであります。政労使で昨年に続く賃上げの流れを更に加速させよう、今そういう状況であります。NHKにおける春闘交渉と賃上げについて、稲葉会長から見解を伺います。

稲葉参考人 次期中期経営計画では、先ほど来御説明していますように、一千億円の事業支出削減とともに二〇二七年度の収支均衡を目指す方針、こういうものを掲げてございます。

 こうした事業支出削減の取組の中においても、NHKの使命達成に向けて、公共放送として果たすべき役割というのは大きくなっているんだろうというふうに考えております。そのためには、職員一人一人の役割が大変大事でございます。大きな事業支出削減をしておりますが、その下でも現在の給与水準は実質的に維持するという中で、むしろ職員一人一人は質と生産性の向上に向けて努力をするということが不可欠ではないかとしてございます。

 昨今、経済社会の情勢が動いてございまして、景気動向、消費者物価動向、同業マスコミの各社の動き、あるいは国家公務員等の動きをよく見極め、さらには自分たち自身の生産性向上がどうであるかをよく見極めた上で給与について検討を進めていくべきだというふうに思っておりますが、今後、組合の皆さんと話をよくいたしまして決めていく考えでございます。

道下委員 受信料を減額してこの五年間で一千億円の支出削減という状況の中で、今、国内における賃上げムードが広がっている中、今の段階で賃上げしないと、私はタイミングを失うのではないかというふうに思います。

 なぜそんなことを言うかというと、実は今、地方局でも、余裕のない職場だったり、きつい職場ということで、離職者が目立ってきているというふうに伺っております。

 受信料減額、それで事業収入が減額したのは、経営陣が決めたことでありまして、働いている職員が決めたわけではなく、事業収入の減額と働いている職員の賃上げは私は別の話だというふうに思います。私は、NHKの皆さんは一生懸命働いていると思いますので、是非その点をしっかりと考慮というか評価していただいた上で交渉に臨んでいただきたい、そしてベースアップをしていただきたいというふうに思っております。

 時間的に最後になりますでしょうか、インターネット活用業務の必須業務化について伺いたいと思います。

 先ほど来質問がありましたけれども、NHKのネット配信は現在、任意の業務の位置づけでありますけれども、今国会において必須業務に格上げすることを柱とする放送法改正案が審議される予定でございます。

 この法案について、日本新聞協会は三月八日、NHK番組のインターネット配信について、必ず実施することが求められる必須業務とすることを受け入れると表明しました。これまでは、ネット業務の際限なき拡大につながり、公正な競争が阻害されるとして反対していたようですけれども、配信の範囲が一定程度限定的となる見通しが立ったとして評価し、方針を転換したということでございます。新聞協会は、引き続きネット配信についての具体的な制度設計の議論に参加していくとしているそうでございます。

 この日本新聞協会の表明について、NHKの受け止めを伺いたいと思います。

根本参考人 お答えいたします。

 NHKでは、次期中期経営計画で明記しておりますように、取材体制をしっかり持った新聞社や民放との信頼できる多元性確保への貢献は非常に重要だというふうに考えてございます。

 インターネット活用業務の位置づけ等につきまして、これまで総務省の作業部会などの場で、新聞協会や民放連の皆様とも議論する中で、地域を含めたメディアの多元性が重要であることを確認いたしました。取材、制作体制をしっかり持った新聞社や民放などと切磋琢磨し、民主主義の基盤である多角的な視点を提供するという高い水準の多元性の確保が必要だという点で考え方が一致し、今回の見解を示されたものと受け止めてございます。

 多元性の実現には、インターネット活用業務に関する透明性の高い競争評価が行われることが重要でありまして、今後も、新聞協会、民放連の皆様とともに、総務省の準備会合でしっかりと検討を進めてまいりたいというふうに考えてございます。

 そして、インターネット上におきましても、命と暮らしを守る正確な情報を始めとする様々なサービスをきちんとお届けすることで、視聴者・国民の皆様の期待に応えるよう努力してまいりたいと思っております。

道下委員 ありがとうございます。

 その関連だと思いますけれども、私は、テキストベースのコンテンツである政治マガジンなど六サイトが更新停止になるというニュース、非常に残念だと思っています。私は、政治マガジンをよく拝見しております。

 これは、インターネット活用業務の必須化とともに更新を停止するというふうに私は思うんですけれども、今後はそうした政治マガジンを含めた六サイトに代わるような新しいサービスを是非提供していただきたい。先ほどもちょっと委員の質問があって答弁されていましたけれども、結構こういうものも我々はNHKの重要なサービスだというふうに思いますので、他の民放連や新聞協会などの意見を踏まえながら、より充実した新サービスをネットで配信していただきたいとお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

古屋委員長 次に、奥野総一郎さん。

奥野(総)委員 立憲民主党の奥野総一郎でございます。よろしくお願いをいたします。

 まずは、災害報道、能登半島地震についてでありますけれども、今なお多くの方が仮設住宅等におられます。被災された皆さんに心よりお見舞い申し上げたいと思います。

 発災当初、数日たって、携帯もそうなんですけれども、放送が一部地域で途絶するんじゃないか、こういう懸念が起きました。自衛隊のヘリで中継局に燃料を運搬されたり、相当な努力をされたようでありまして、情報をいかに被災者の皆さんに運ぶかということで、相当NHKさんを含め皆さんは御尽力されたと思いますが、それでも一部地域で放送が途切れた、あるいは通信が途切れたということがあったようであります。その状況について、改めて総務省に伺いたいと思います。

小笠原政府参考人 それでは、能登地震における放送の停波状況及びその復旧状況についてお答え申し上げます。

 能登の地震におきまして、地上波テレビ放送でございますが、一月の二日以降、輪島市の一部地域を対象とする中継局が停波いたしました。こうした停波の局は、一部地域を除きまして一月五日までには予備電源にて復旧しまして、一月二十四日までには商用電源の復旧により全ての局が復旧しております。

 一方、ラジオでございますが、一月一日の発災以降、これも一部地域で中継局が停波いたしましたが、一月十四日までには中継ルートの変更等により一部を除き復旧、一月二十四日までには商用電源の復旧により全ての局が復旧しております。なお、ラジオにつきましては、NHKのAMラジオ中継局につきましては発災後から停波することなく放送が継続されたところでございます。

 そして、今御指摘のありました輪島関連の中継局でございますが、市役所付近を含めた輪島市の多くをカバーするNHK及び民放の輪島中継局につきまして、自衛隊等関係機関の協力を得まして、合計六回の発電機への燃料補給が行われ、商用電源復旧までの間、停波が回避されているところでございます。

 災害時において放送は信頼できる情報を入手する手段として極めて重要な役割を果たすと考えておりまして、総務省としても必要な方策を講じ、また講じてまいる所存でございます。

奥野(総)委員 我が国は山林が多いですし、半島も多いんですね。私は千葉県ですが、千葉県も半島ですし、今回のこういったことを踏まえて対策を打っていかなきゃいけないと思います。

 今話がありましたけれども、AMは大丈夫だったと。要するに、AMは電波が飛ぶので、多分小まめに中継局を配置しなくてよくて、遠くから飛ばせるということがあったと思います。それから、衛星は上から降ってきますから、衛星も実は一波削減の一波を使ってローカル放送をずっと流し続けていた。こういうことなんですが、特性によっていろいろあると思うんですね。

 だから、今回でいえば、AMが大事だと。今FMに切り替えようという動きもありますが、AMはやはり災害時は大事だということだし、衛星も、一波削減といいますが、実はこういうときのためにもう一波を取っておいてもいいんじゃないかということを改めて思った次第であります。

 NHKさんとして、今回の地震でどういう課題が明らかになったか。そして、先ほど大臣からも、能登半島地震を受けて将来の災害への備えをより一層やっていかなきゃいけないということを求めるという話がありましたけれども、NHKとして今後どのようにしていくかということを会長に伺いたいと思います。

稲葉参考人 今ほどお話がございましたように、能登半島地震では、道路等の寸断により、一部の停電しているテレビ・FM中継局に行くことができない状況が長期間続きまして、非常用電源によるバックアップを維持できなかった輪島町野のテレビ・FM中継局が停波したということでございます。

 NHKは、これまで東日本大震災などの大規模災害を教訓に放送設備の強靱化を図ってまいりましたけれども、能登半島地震では電波を各家庭に届ける中継局の電源の維持に課題があったと認識してございます。このため、地理的条件を踏まえた電源を維持するためのバックアップ方式や、各地域の民放と連携した電源の確保といったような点につき、対策を検討してまいりたいというふうに考えております。

奥野(総)委員 今の御答弁は、地上波をどう維持するかという話だったと思うんですが。

 いろいろなメディアの組合せがあると思いますし、ともするとAMはもう聞かないとか、そういうことを思われがちなんですが、やはり災害時はAMだし、電池のトランジスタラジオ、もうないのかな余り、ラジオで聞くのは実は大事かということだと思います。その辺もしっかり訴えていただきたいというふうに思います。

 それで、ちょっと順序を変えますが、今日は新しく古賀経営委員長にお見えいただいております。お忙しいところありがとうございます。私、NHK予算で毎年毎年、経営委員会の議事録をきちんとしてくださいと毎年毎年言ってきたんですね。裁判になりまして、今回判決が出ました。その内容というのは、経営委員会の録音データをということだったんですが。

 大分たったんですが、そもそもの経緯をはしょって説明しますと、二〇一八年の十月に当時の上田会長が経営委員会に呼ばれて厳重注意を受けたということですね。これは、当時のかんぽの不適切な営業についてクローズアップ現代が二〇一八年四月に特集をした、その特集の第二弾をやろうとしたんだけれども、なぜかそれがお蔵入りになってしまった、こういう話がある中で、こういうことが関連してあったということだったんです。

 問題は、会長の厳重注意という一番大事なこと、ほとんどないことなんですが、それが当初の経営委員会の議事録には全くなかったんですね。NHKのホームページの経営委員会のところを見ると、しばらくたつと議事要旨のようなものが出るんですが、それについて全く記述がなくて、後で新聞報道で明らかになった。

 しかも、それについて情報公開請求が民間から出されたことについて、NHKの情報公開・個人情報保護審議委員会が全面開示を答申したのに、二〇二〇年五月に答申したのに、最終的に全部出たのが二一年の七月。一年数か月にわたって経営委員会は開示を、あえて言いますが拒んできた。私も何回も出してくださいと。最初は森下代行だったんですが、途中から経営委員長に替わられて、出さない、出さない、こういう話だったんです。

 それに対して裁判が起こされ、完璧な議事録は存在しないんだが、その基になった音声データがあるので、それを出してください、たしかそういう判決だったと思うんですね。これについて、まず会長の受け止めを伺いたいと思います。

 というのは、やはり経営委員会というのはNHKの一番の意思決定機関ですから、そこの情報はきちんと開示されなきゃいけないと私は思うわけです。そこで、経営委の監督に当たる部分ですが、会長への厳重注意というような大事なことが経営委員会の議事録に一切出されていなかったというのは私は非常に問題だとずっと思ってきて言ってきているんですが、今回こういう判決が出たことについて、会長としての受け止めをまず伺いたいと思います。

稲葉参考人 お答え申し上げます。

 判決の中で、現時点においても録音データを保有していると認められるという判断がなされて、こちらの主張が認められなかったというふうに受け止めてございます。

 当時の録音データは既に削除されたと私どもは聞いておりますが、いずれにしても、本件の直接的な対応というのは経営委員会の方の取扱いということになるものであるために、執行部側としてはこれ以上申し上げることはできないというふうなことでございまして、この点、御了解いただきたいと思います。

奥野(総)委員 録音データがあるかないかというのは、これからまた裁判の中で、恐らく控訴されて議論になるかと思うんですが。

 一つだけ、さっき言った情報公開審議委員会の名宛て人はNHKなんですよね。だから、会長も実は連帯して開示の責任があったんです、答申を受けた時点では。一義的には経営委員会の議事録の作成、公開を義務づけられているのは経営委員長なんですが、審議委員会から受けた開示の義務は実は連帯して会長も持っているということなので、そこは全く知らないという話ではないと私は思うんですけれども。もう少し前向きな答弁をいただければと思います。

 裁判についてはそういう御答弁になるかもしれませんが、それ以前についての経営委員会の対応、あるいは審議委員会の開示決定を受けての対応については、私は会長からもう少し踏み込んで遺憾の意が表明されてもよかったんじゃないかと思いますが、その点はいかがですか。

稲葉参考人 先ほど来申し上げましたように、この件につきましては経営委員会がどう考えるかということでございます。どう対応すべきであるかということでございまして、執行部としては、その結論を得た上で、あるいはその結論が了とされた中で、組織としてその結果について対応するということになるというふうに思いますので、これ以上私どもの方からはちょっとコメントができないということでございます。

奥野(総)委員 経営委員会という話になるんですが。

 じゃ、今度は経営委員長、新しく古賀さんが就かれていますが、この判決についてどう受け止めますか。作成権者は、公表を義務づけられているのは経営委員長ですからね。

古賀参考人 古賀でございます。

 今御質問がありました、その件の経緯そのものというのは、私、正直わきまえておりません。したがって、ここで、それに関してどうすべきだという意見は持ち合わせておりません。係争中でもありますし、推移を見ながらしか判断できないと思っております。

 ただ、やはり放送法が規定する開示義務というのはあるわけでありますから、開示義務につきましては、今後につきましては、私、就任いたしましたので、どうあるべきかというのはもう一回しっかり考え直して対応してまいりたい、このように考えております。是非御理解ください。

奥野(総)委員 是非お願いしたいんですよ。私はずっと、三年、四年、森下さんとここで、開示してくださいとずっと申し上げてきたんですね。そもそも放送法違反の疑いがあったわけですよ。放送番組の内容に経営委員は介入しちゃいけないんですが、そこを、口を挟んでいるんじゃないかという疑念が持たれていたわけですね。だからそれを明らかにするためにも開示すべきだ、こう申し上げてきたんですが、一向にお答えがなかったということなんですね。

 この問題についてはそうなんですが、それ以外でもよく、議事録を見ていただきたいんですが、例えばこの前、受信料の引下げの話がありました。今回、受信料を引き下げたのでこうなっているんですが、下げ幅が急に変わったりしたんですね。議事録を追っていくと、ある日突然がらっと下げ幅が変わったりしたわけです。その経緯が全然追えないんですね。集中討議といって書いてあるだけでして、受信料についての集中討議と書いてあるだけで、一切それがオープンになっていないわけですよ。

 それは全て経営情報を明らかにするというわけにはいかないのかもしれませんが、受信料の問題というのは一番NHKにとって私は大事だと思うんですね、国民・視聴者の皆さんにお支払いいただいているわけですから。それが幾らになるかというような話はきちんと後追いできるように、議事録の中で私は公開すべきだと思います。

 そういったところもよく過去の経緯を見ていただいて、きちんと、視聴者は会社でいえば株主ですから、株主の皆さんにきちんと堪え得るような議事録にしていただきたいんですね。株主総会がなくて、そこで手を挙げてというわけにいかないわけですから、きちんと議事録を整備していただくことを私はまず古賀委員長に求めたいというふうに思います。

 もうちょっと言うと、非公式の、のみの会という非公式の会があって、経営委員会なんだけれども一切公開しなくていいというような慣例もあるようですから、その辺も是非やめていただきたい。最低限、議論の後追いができるように古賀さんにはお願いしたいというふうに思います。

 大臣に、放送法四十一条で経営委員長には議事録の作成と開示義務が課されていますが、この趣旨をもう一回改めて伺いたいと思います。

松本国務大臣 放送法第四十一条でございますが、委員からお話がありましたように、NHK経営委員長は、経営委員会の定めるところにより、その議事録を作成し、これを公表しなければならないと規定されております。

 委員からもお話がありましたが、経営上の事情等も考えた上で、透明性は確保されなければいけないという点からこの規定が定められているというふうに理解をいたしておりまして、NHK経営委員会議事運営規則では、NHKの審議、検討又は協議に関する情報であって、公表することにより、その審議、検討又は協議が円滑に行われることを阻害するおそれがあるもの等を除き議事録として公表すると定めているというふうにお聞きしているところでございます。

 透明性の確保につきましては、令和六年度予算に付しました大臣意見も踏まえまして確保に御尽力をいただきたいと思っておりますし、新たに御就任をいただきました古賀委員長におかれましても、御就任に当たって、視聴者である国民を元気にし、またNHKで働く方を元気にすることが二つの視座、ベンチマークだというふうにおっしゃっておられました。委員もおっしゃるように、NHKの透明性の確保も視聴者の理解には必要なことだという認識は私どもとしても共有をしてまいりたいと思っております。

奥野(総)委員 一定の基準はそれはやむを得ないと思うんですが、私はずっともう十五年ぐらい総務委員会にいますが、非常に恣意的なんですね。

 籾井会長のときは、一言一句たがえず議事録が、こんなことまで書いていいのかというようなことまで議事録が書かれて公表されていたんですよ。ところが、森下さんになって、会長への注意という一番大事なものが、最終的には公表されましたけれども、当初は載っていない、開示されていないということがあったんですね。これはどう見てもそのときの経営委員長の恣意的な判断によっているようにしか見えないので、是非、古賀委員長、もう一回ですが、開示の基準をしっかり見直して改革をお願いしたいと思います。最後、いかがでしょうか、もう一度。

古賀参考人 開示の在り方というのは、非常に本当は難しいものだと私は考えています。全てをつまびらかにすればそれが分かったようなふうに見えますが、多くなればなるほど、本当はささいなことにとらわれて変な展開になることもあるのは、今までの私の経験でも十分してまいりました。

 ただ、国民にきちっとその過程が分かるようにというのは非常に大事な観点でありますから、今後工夫をして、これは放送法四十一条でもそう書いてあるわけですから、その趣旨にのっとった形はどういうものかというのは今後探求してまいりたい、このように考えております。

奥野(総)委員 今日は早速来ていただきましたが、是非お願いしたいというふうに思います。

 次、受信料の話なんですが、先ほど道下委員からもありましたが、支払い率が一ポイント低下しています。これはどのような要因か。さらに、経営計画によれば七七%で下げ止まるということになっていますが、これはどういう要因で、なぜ一ポイント下がり、どうして下げ止まるのかということをもう一回説明いただきたいと思います。

小池参考人 お答えします。

 現在進めております新たな営業アプローチへの転換には一定の時間が必要だと考えております。それに加えて世帯数の減少、それからテレビ所有率の低下の影響などもあり、契約数は三十七万件減少する計画を立てております。また、物価高の影響などもありまして、未収の数は十一万件増えると見ておりまして、支払い率は一ポイント低下し、二〇二四年度は七八%となる計画でございます。

 こうした中、以前のように支払い率を向上させるために外部の法人に委託して多くの経費をかけることは、社会的に納得を得ることが難しいと考えております。限られた予算の中で受信料の公平負担を図っていくため、デジタル接点の拡大、外部企業との連携強化、それに特別あて所配達郵便等の活用を進めて、新たな営業アプローチを早期に確立してまいりたいと考えております。

 次期中期経営計画では、支払い率は一ポイントから二ポイント低下する計画で、二〇二六年度は七七%という計画を立てております。公平負担の観点から、支払い率の維持向上に向けた道筋を立てていくことは重要な課題だと認識しております。

 先ほど申し上げました新たな営業アプローチを早期に定着させるとともに、職員や関連団体の社員らが直接お会いして受信料制度の意義を御説明する機会を設けるなどして、支払い率の低下に歯止めをかけていきたいと考えております。

奥野(総)委員 世帯数が減るとどういうふうに利いてくるかというと、分母も減るし、分子も減るので、支払い率は多分長い目で見ると影響は中立的だと思うんですが、一番の問題は収入自体が減ってしまうということです。払う人が減ってしまうということだと思うんですね。

 さらに、世帯数の減少と併せて、テレビ離れ、見ないから、電波をつながないでネットで見ますから払いません、こういう人が増えてくると思うんですが、副次収入で補うと書いてありますね。ただ、今年の計画を見ると、副次収入は四十億かな、極めて少ないんですよね。いろいろありますが、極めて少ないんですが、海外への番組の販売とかは考えているんですか。

根本参考人 お答えいたします。

 副次収入は、NHKの放送番組に関連します番組テキストやDVDの販売、国内外の放送事業者へのコンテンツや映像素材の提供などコンテンツの活用による収入ですとか、NHKが開発した技術の特許料など受信料以外の収入でございます。

 NHKのコンテンツを海外の放送事業者や配信事業者などを通じて幅広く届けていく海外展開を行うことによって、何とか中期的に副次収入の増収につなげていくことを考えてございます。

 これまでも、アニメ、ドラマなどのエンターテインメントを中心に、海外の放送事業者などに対しまして、番組の放送権の販売や、番組、ニュースの素材提供によって放送コンテンツの海外展開を進めてまいりました。

 今後は、日本の視座や優れた日本文化を伝えられる様々なコンテンツの提供を一段と強化してまいりたいというふうに考えてございます。

奥野(総)委員 「ゴジラ」が低予算でアカデミー賞を取ったというのは一つ勇気づけられるんですが、NHKのドラマの予算を見ますと、最大で七千九百万円かな、こっちの冊子に出ていますが、一本当たり千三百五十万円から七千九百万円、多分高いのは大河ドラマだと思うんですが。

 ところが、ネットフリックスの実写版「ワンピース」は一話当たり千八百万ドル、二十七億円ですか、むちゃくちゃ違うんですよね。だから、費用だけでいうと、およそ勝負にならない。もちろん受信料で作っているという制約はあるんですが、なかなか勝負にならない。しかし、番組制作費を増やしていいものを作っていかないと、制作陣を海外に引き抜かれてしまうというような話もあります。その辺り、もっとコンテンツに予算を割くべきじゃないかと思うんですが。

 今年度予算を見ても、オリンピックで番組制作費が増えているのは分かるんですが、それ以外のところは余り増えているように見えないんですよね。報道取材費が減っていたり、ローカル局の予算が減っていたりして、そう見えないんですが、会長、その辺りはいかがですか。どこに力を入れていくか。

稲葉参考人 次期中期経営計画では、全てはコンテンツ起点で考えるというふうにしてございまして、何よりも重要なのは、幅広い世代の視聴者の皆様にNHKの公共的価値を実感していただく、そういうようなコンテンツを開発し充実させることが大事だというふうに考えております。

 そのためには、経営計画でお示ししましたように、コンテンツ戦略六つの柱、これを踏まえまして、ジャンルごとには、インパクトコンテンツ、定時番組の強化、あるいは効率的制作による質、量確保というふうな観点から選択と集中を行ってまいりたいというふうに考えております。経営計画では、重点投資三百億円規模のうち約二百億円をコンテンツの充実に充てるということにしてございます。めり張りをつけて配分していきたいと考えておるところであります。

 この先も、質が高く競争力のあるNHKならではのコンテンツの充実につながるよう、経営資源のシフトを着実に進めてまいりたいと思っております。

奥野(総)委員 時間が来ましたけれども、やはりNHKのコンテンツ制作力は日本で一番だし、世界的にもかなり高い水準にあると思っていますが、それをどう生かすかということ、制度の在り方ですね。受信料の在り方、制度の在り方も含めて、これからしっかり考えていかなければいけないと思っています。その辺りを質問したかったんですが、時間が来てしまいましたので、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

古屋委員長 次回は、来る十九日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十一分散会


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