衆議院

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第2号 令和6年3月13日(水曜日)

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令和六年三月十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 新谷 正義君

   理事 大岡 敏孝君 理事 大串 正樹君

   理事 橋本  岳君 理事 三谷 英弘君

   理事 井坂 信彦君 理事 中島 克仁君

   理事 足立 康史君 理事 伊佐 進一君

      秋葉 賢也君    畦元 将吾君

      上田 英俊君    加藤 竜祥君

      勝目  康君    金子 容三君

      川崎ひでと君    塩崎 彰久君

      鈴木 英敬君    田所 嘉徳君

      田畑 裕明君    田村 憲久君

      高階恵美子君    中川 貴元君

      中曽根康隆君    中谷 真一君

      仁木 博文君    西野 太亮君

      堀内 詔子君    本田 太郎君

      三ッ林裕巳君    柳本  顕君

      山口  晋君    山本 左近君

      吉田 真次君    阿部 知子君

      大西 健介君    堤 かなめ君

      西村智奈美君    山井 和則君

      柚木 道義君    吉田 統彦君

      早稲田ゆき君    一谷勇一郎君

      遠藤 良太君    岬  麻紀君

      山本 剛正君    福重 隆浩君

      吉田久美子君    宮本  徹君

      田中  健君    福島 伸享君

    …………………………………

   厚生労働大臣       武見 敬三君

   内閣府副大臣       工藤 彰三君

   総務副大臣        馬場 成志君

   文部科学副大臣      あべ 俊子君

   厚生労働副大臣      浜地 雅一君

   厚生労働副大臣      宮崎 政久君

   厚生労働大臣政務官    塩崎 彰久君

   厚生労働大臣政務官    三浦  靖君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  八幡 道典君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 滝澤 幹滋君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          黒瀬 敏文君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          高橋 宏治君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 三橋 一彦君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           笠置 隆範君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   志水 史雄君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官)          山下 恭徳君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官)            森光 敬子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官)            内山 博之君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官) 田中佐智子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       巽  慎一君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  浅沼 一成君

   政府参考人

   (厚生労働省健康・生活衛生局長)         大坪 寛子君

   政府参考人

   (厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部長)   佐々木昌弘君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            鈴木英二郎君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           朝川 知昭君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    辺見  聡君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  間 隆一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  伊原 和人君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  橋本 泰宏君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 鹿沼  均君

   厚生労働委員会専門員   森  恭子君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十三日

 辞任         補欠選任

  川崎ひでと君     中川 貴元君

  鈴木 英敬君     西野 太亮君

  本田 太郎君     中曽根康隆君

  山本 左近君     山口  晋君

  一谷勇一郎君     山本 剛正君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 貴元君     川崎ひでと君

  中曽根康隆君     本田 太郎君

  西野 太亮君     加藤 竜祥君

  山口  晋君     山本 左近君

  山本 剛正君     一谷勇一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 竜祥君     鈴木 英敬君

    ―――――――――――――

三月十二日

 生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

新谷委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官八幡道典君、内閣府大臣官房審議官滝澤幹滋君、こども家庭庁長官官房審議官黒瀬敏文君、長官官房審議官高橋宏治君、総務省大臣官房審議官三橋一彦君、自治行政局選挙部長笠置隆範君、外務省大臣官房長志水史雄君、文部科学省科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官山下恭徳君、厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官森光敬子君、大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官内山博之君、大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官田中佐智子君、大臣官房年金管理審議官巽慎一君、医政局長浅沼一成君、健康・生活衛生局長大坪寛子君、健康・生活衛生局感染症対策部長佐々木昌弘君、労働基準局長鈴木英二郎君、社会・援護局長朝川知昭君、社会・援護局障害保健福祉部長辺見聡君、老健局長間隆一郎君、保険局長伊原和人君、年金局長橋本泰宏君、政策統括官鹿沼均君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

新谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

新谷委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。柚木道義君。

柚木委員 立憲民主党の柚木道義でございます。

 質疑の機会をいただき、ありがとうございます。

 武見大臣におかれましては、せんだっても、二月の二十八日に、今日、通告もしております訪問介護の基本報酬引下げ、これに対する緊急の、我々、要請もさせていただきまして、本当に、御対応いただき、ありがとうございました。

 その訪問介護も含めて、子育て増税あるいはマイナ保険証問題など通告しておりますが、冒頭この質問をしなきゃいけないのは本当に残念なんですね。厚労大臣も今ちょっとコメント、さっき御挨拶したときに言われていました。もう本当に私、自民党和歌山県連主催、青年局ですね、過激ダンスパーティーとも報道されていて。

 大臣、あさっては何の日か御存じですよね。確定申告の締切りで、この週末も、皆さん、地元を回っていたら、我々は税金を納めるのに自民党の裏金脱税議員の人たちが何で納めないんだと言われているでしょう。私も随分言われましたよ、この週末も。庶民は物価高の中で必死に納めているんだ、それなのに何だと。せめて、八十三人、一人離党して八十二人ですか、この裏金議員の方々、誰か一人でも、やはり間違っていました、修正申告します、納税します、納税しました、そういう人は出てこないんですかと本当に言われますよ。

 そんなさなかで、この自民党和歌山県連。何ですか。女性ダンサーたちには何の非もありませんよ。問題は、こういう会を、主催者の県議の方、世耕さんの元秘書ですか、ダイバーシティー、多様性が目的だったと説明をしている。(発言する者あり)今、くだらない言い訳しちゃ駄目だと。そのとおりですよ。

 職場におけるダイバーシティー推進事業を進められている武見厚生労働大臣、今回のダンスパーティーのどこが多様性、ダイバーシティーと思われますか。いかがですか。

武見国務大臣 御指摘のパーティーの開催については、自民党の青年局長及び青年局長代理が、国民の信頼を損ねたと謝罪をした上で辞任をしたというふうに承知をしております。

 ダイバーシティーという意味は、一般的には多様性という趣旨で使われていて、職場におけるダイバーシティーの推進ということであれば、企業で人種、国籍、性別、それから年齢を問わずに人材を活用するものと理解をしております。

 私の英語力で理解しているダイバーシティーと今回使われたダイバーシティーという言葉の意味は相当に違っているなと、正直に思いました。

柚木委員 私、武見大臣の論文、レポート、全部読ませていただきましたよ、国会図書館から取り寄せて。すばらしい博識なんですよ、本当に。医療分野はもとより、ダイバーシティーについても御所見をお持ちなんですよ。

 大臣、本当に私も、どう考えても、今回の女性ダンサーの皆さんが、まあダンサーの皆さんは悪くありませんよ、繰り返しますが。しかし、男性の方が口移しでチップを渡すような、こういう集まりがダイバーシティー、多様性だとは到底理解できないんですね。武見大臣、さっき冒頭御挨拶に行ったら、けしからぬ、ばかたれと言っていましたよ、本当に。

 今、ダイバーシティーの理解、自分の理解とは随分違うと。どこがどう違うと思われますか。

武見国務大臣 通常、私ども、厚生労働省でダイバーシティーという言葉を使うときには、やはり、英語の語源の基本は、それぞれ一つ一つ異なっていることをしっかりと概念的に整理をして、それを意味づける言葉がダイバーシティーというふうに使われているものでありますから、そういう点で、非常に今、人と人との交流が国境を越えてどんどんどんどん広がっていく中で、職場においても多国籍の人たちが共存して、そして社会の中でも共生するということが島国の日本の中でも求められるという時代の中で、また同時に、性別といったようなことについても、女性の社会参画といったようなことは我が国にとって極めて重要な課題でありますから、そういうことをしっかり丁寧にそれぞれ対応した新しい日本の社会をつくり上げていくときの基本的な概念として、このダイバーシティーという言葉が私は非常に重要な意味を持っておるというふうに思っております。

 したがって、今回どういう趣旨で使われたのかというところは、私にとっては全くちょっと理解のできないところであります。

柚木委員 全く理解できないと。

 この問題に関しては、私は、昨日の報道を見ていてちょっと残念だったのは、女性の閣僚の方々は声を上げられているんですよ。加藤鮎子大臣は、私、子育て増税の通告もしていますけれども、ちょっと不安定な答弁が続いているように思いますけれども、この件は明確に言われていますね。このとおりだと思いますよ。政府が目指すこれらを尊重する社会とは、多様性、ダイバーシティー、この主催者の県議の方の言葉の使い方は、文脈も次元も異なる、自民党の多様性、ダイバーシティーが十分進んでいない問題が今回の事案の根底にあると。(発言する者あり)あり得ない、怒っている、元厚生労働大臣も怒っているんですよ。みんな怒っているんですよ。

 自民党の議員の方々も、あり得ない、こんなもの多様性でも何でもないと言われているこのダンスパーティーに、今回、会場経費百二十万円、自民党本部からの助成金も入っている。助成金ということは、税金が入っている可能性があるわけですから。政党交付金、政党助成法、入っている可能性があるんですよ。

 公金、税金を使って、わざわざこういった、ダイバーシティー、多様性が目的なんといってパーティーが開催される必要性、あったと武見大臣は思われますか。いかがですか。

武見国務大臣 やはり、こうした不適切な、誤解を招くような会合は開くべきではないと、正直に思います。

柚木委員 まさに、このような不適切な会合は、公金、税金が入った可能性、お金に色はないんですから。自民党の滋賀県連なんか、県連の人は会費を払ったと言っているじゃないですか、報道で。税金を使っている可能性は十分あるわけですから、不適切だったと。

 こういうことを是非、私、昨日は、加藤鮎子大臣や自見はなこ大臣や高市早苗大臣、女性の大臣の方ばかりなんですよ、コメントが。やはり男性の大臣が、これは明らかに不適切だ、こんなもの多様性でもダイバーシティーでも何でもない、そういうことを言われないと、まさに、えっ、岸田内閣は、女性の議員はみんな怒っているけれども、男性の大臣、閣僚はオーケーなの、容認しているのと、テレビを見ている人が思いかねませんよ、本当に。田村大臣だったら、ばしっと言ったかもしれないけれども。

 やはり、武見大臣、こういうことは、自民党としても、あるいは岸田政権の進める多様性、ダイバーシティーの方向性とも全く逆行していて、こういうパーティーが税金が仮にも使われるということがあってはならないと明確に発信していただきたい。お願いします。

武見国務大臣 少なくとも自民党の私の知る多くの仲間の議員たちも全く同じように、今回のこうした会合の持ち方については、ダイバーシティーという言葉で表現できるような話ではないというふうに私は理解していると信じております。

 したがって、そうした会合というものはやはり不適切であって、このような形で開催されるべきものではなかったということは正直に申し上げておきたいと思います。

柚木委員 最後にしますけれども、最後のくだりというのは、つまり、御自分のお金で何とかバーとか夜の町のバーとか行かれるのはいいですよ、それははっきり言って。だけれども、公金、税金が使われている可能性があることについても、これは不適切ではないと、そういう認識でよろしいですね、大臣。

武見国務大臣 税金からお金が出ていたのかどうかというのはちょっと私は存じ上げておりませんので、それは改めて確認をしてみますけれども、私は、とにもかくにも、不適切な会合であって、こうした形で開催されるべきものではなかったということを正直に自分自身、認識をしているところであります。

柚木委員 是非、午後から参議院の予算委員会でも岸田総理から説明があると思いますが、総理の発信だけでは私は不十分だと思いますよ。やはり岸田政権を挙げて、昨日は女性の三大臣の報道を私は見ました。みんな否定的でしたよ、加藤大臣、自見大臣、高市大臣。男性の大臣は一人も、閣議後記者会見、昨日、機会はあったのにコメントされなかったと私は確認していますので、記者から聞かれなくても、自分から、こんなものはあり得ないというぐらい、やはり男性の閣僚も声を上げるべきだと思いますよ、改めて。

 通告しているので、訪問介護の方から、時間がなくなってきたので行きたいと思いますので。マイナ保険証とちょっと入れ替えますので、お願いします。

 皆さん、四ページ目以降を御覧ください。

 訪問介護事業、調査結果が出て、三六%、三分の一が赤字なんですよ。

 それで、ずっと見ていただきますと、次のページは、これは、日本介護クラフトユニオンさん、介護現場で頑張っていらっしゃる職員さんたちの組合の方が緊急アンケート調査をやって、びっくりするような、過去にないような回収が、殺到しているんですよ、本当に、数日で。

 見ていただくと分かるように、ベストスリーは、今回の基本報酬の引下げで何が起こるかといえば、結局、今後の事業運営に不安を感じて新しい人材が入ってこない。今日は春闘の一斉回答日で、それは賃上げされるようないい業界には入るかもしれませんよ。でも、もうこの先どうなるか分からない。倒産件数は、昨年六十七件、過去最悪です、訪問介護事業所。そして、そういう業界にやはり新しい人材が入ってこない、七六・七%。そしてまた、結局、そういう業界に入ることを不安を感じて入らないだけじゃなくて、今ある人たちまで不安を感じて離職する人が増える、六八%。同じく、このままいけば、処遇改善加算が幾ら引き上げられても、基本報酬が引き下げられることによってプラマイでマイナスになる事業所が増えるので、賃金が引き下げられる。これがベストスリーなんですよ。

 下を見ていただいても分かるように、介護難民が増える。今でも、もう本当に都内でもそうですよね。一か月待ちなんてざらなんですよ、ヘルパーさんに来ていただくのに。おまけに、過労死、サービス残業が増える、介護難民が増える、そして、この基本報酬の引下げが介護保険の、訪問介護の終わりの始まりになる、こういう切実な声ですね。

 次のページ、六ページ目を見ていただきますと、今回、平均七・八%収支率プラスだということで、基本報酬二・四%引下げにしたわけですけれども、見ていただくと分かるように、サ高住さんとか集約型の事業所、一番右側の訪問回数二千一回以上を見ると、一〇パーを超えていますよ、収支率。でも、見てください、一番左側。本当に地域密着で、一軒一軒、暑い日も寒い日も汗水流しながら、待ちわびている利用者や家族の方のために回っている事業者さん、利益率一%台ですよ。

 こういう中で、このままいくと、まさに倒産、離職。もっと言うと、ヘルパーさんが利用できなくなった方は介護離職しなきゃいけない。

 介護離職が増えるとどういうことになるかというと、今日、九ページ目にもつけていますように、ビジネスケアラー発生による経済損失額は、二〇三〇年時点で約九兆円ですよ、九兆円。今回、削減して、三百億円規模ぐらいですよね、恐らく二百億、三百億。それを削ることで九兆円の損失。

 こういうことを防ぐために、大臣、今日、資料、朝日の記事を七ページ目、八ページ目につけていますが、八ページ目の下段を御覧をいただくと、NPO法人グレースケアの柳本さん、私、昨日も含めてずっと直接やり取りしているんですが、この方が、介護事業の二三年分の実績を基に現行と改定後の報酬を試算すると、処遇改善加算分で年間百四十四万円の増収だが、基本報酬の引下げで年間二百二十二万円のマイナスで、プラマイでいくと全体で七十八万円の減収という答え。いろいろな方がそういうことを試算して、おっしゃっています。

 それで、今日、通告でお願いしていますのは、こういう本当に、大臣も申入れのときにおっしゃっていましたけれども、一生懸命、真っ当に頑張っている小規模あるいは訪問介護事業者さんたちが、結局、プラマイでマイナスになっては何の意味もありませんので。特に小規模ですね、さっきのカテゴリーの左側から二つ目ぐらいまでの、一%台の収支差率の。そういう地域密着で頑張っている、小規模で経営が苦しいけれども頑張っている、そういう訪問介護事業所でも、今回の基本報酬引下げ、我々は撤回、見直しを求めていますけれども、せめて、まず、加算が具体的に取れる要件。そして、要件の緩和も併せてですね。

 この要件については資料の十五ページから十八ページ目につけております。これは取れないんですよね、はっきり言って、キャリアパス要件、月額賃金の改善要件、職場環境等の要件。聞いてみると、とてもじゃないけれども、小規模の事業者さん、事務職も置けないような事業者さんはこんな要件を満たすのは無理なんですよ。制度があっても利用できなければ絵に描いた餅なんです。ですから、こういった要件の見直し、緩和も含めて、具体的に、せめて今月中に。

 これから、パブコメを今精査中で、告示を公布するんでしょう。それより前の段階で、具体的に要件を示して。そして、現場とキャッチボール。担当局、担当者もやると言っているじゃないですか、小規模事業者などの現場の声をヒアリングしたいと。その上で、必要な軌道修正も図ってほしいんですよ。

 是非、具体的に、加算が取れる要件を、要件の緩和も含めて、今月中に提示をすべきじゃないですか。いかがですか。

武見国務大臣 委員御指摘のとおり、在宅介護に関わる収支差率というのが、実際、平均で七・八と、極めて他の施設と比べて高うございます。

 そういう中で、小規模のこうした在宅介護をやっておられるところ、さらには中山間地域といったようなところでは特に、こういう中小規模の事業者の経営状態というものが決してよくないんだということは、これはもう十分に理解した上で、介護全体のバランスを取って財源の配分をする、しかも、その中で、賃金というものをそうした小規模事業者の中においても確実に確保し、引き上げることができるようにする仕組みをつくらなければなりませんでした。

 そういった観点で、訪問介護というのは他のサービスと比べて処遇改善加算の取得状況というのは全体として低い傾向にありますから、小規模事業者を始めとして、訪問介護の介護職員などの人材の確保、処遇改善のための処遇改善加算の取得促進に向けた環境整備は、今委員御指摘のとおり、着実に進めております。

 個々の事業所における収入の状況は、サービスの提供回数や加算の算定状況によって変動いたします。一概に試算としてお示しすることは難しいんですが、今般の改定によって、処遇改善加算未取得の事業所が新たに加算を取得した場合は、見直し後の体系で最も低い場合であったとしても一四・五%の加算率となり、加算を含めて増収となるというふうに設計されております。

 また、現在の処遇改善加算を取得している事業所がどのような要件を満たした場合に六月からの新たな加算体系で何%の加算率を取得できるのかという点は、今後分かりやすくお示しをしてまいりたいと思います。

 今般の改定では、みとり期の利用者へのサービス提供を行った事業所への加算であるとか、さらには認知症に対する加算というものを充実させるなどの見直しをも行ったところでございまして、サービスの質の向上を図りつつ、こうした加算が積極的に取得できるように、今回、改定内容の分かりやすい説明を進めて、特に手続上こうした支障が生じないように配慮をし、丁寧に進めていきたい、こう考えております。

柚木委員 これは是非今月中にやってほしいんですよね、新年度実施より前に。じゃないと、倒産、失業、介護離職、本当に増大しちゃいます。

 先ほどのグレースケアの柳本さんとも昨日やり取りしましたけれども、既に実は一生懸命経営努力して最上位の加算を取れているようなところが今回減収になっちゃうと言っているんですよ。取れていなかったところは、そういういい効果もあるかもしれませんよ。でも、それもハードルが高過ぎて取れないと。

 ですから、例えばまさにグレースケアのような事業所とか、あるいは先ほどのいわゆる訪問回数四百回以下ぐらいの、利益率一%ぐらいの小規模事業者さんの現場の声を、大臣、是非。聞くと担当者はおっしゃっているんですから、あとはセットだけすれば聞けますから、具体的な、何らかのこういう形で要件したら収支プラスになると思うんだけれども、どうかねというキャッチボールを新年度までにやっていただいて。

 具体的にいろいろな話が来ていますよ。特定処遇の新加算二に前のから移行しても結局減収になっちゃう。なぜならば、新加算を一上がるには特定事業所を取る、これもハードルは高いんですよね、結局、利用者負担も大きくなって訪問回数を減らさなきゃいけなくなるとか、だから結局減収になるとか。そういう事業所がどれぐらいあるのか試算してほしいとか、特定事業所加算も、結局、利用者負担にならない形、その部分については公費で補助してくれないかとか、いろいろな要望が出ていますから。

 是非、大臣、今月中に、施行までに、新年度の。今おっしゃったようなモデルケースみたいなものを、ある程度の前提で試算をして、そして小規模事業者さんとやり取り、声を聞いていただけませんか。いかがですか。

武見国務大臣 私も、こうした特に過疎地域における、実際に小規模事業所の果たしている役割の大切さというのは極めて深く認識しているものでありますから、今回の改定によってその経営基盤が損なわれるようなことはあってはならないと思っております。

 したがって、そうした御懸念があるというお話も伺っておりますので、私も、そうした小規模事業者の方々の状況というものの把握に、今現在も努めておりますが、引き続きしっかりと努めて、その状況を把握をしながら、四月から、例えばこうした賃金体系の整備という条件についても、それを実際に誓約するという形で書類を出していただければ、一年間かけて実際にモデル事業もお示ししますので、極めて簡単にこうした加算の措置は手続上取れるように組み込まれております。

 その他の加算についても、同様に、できる限り丁寧に、また取得しやすくなり、それによって、小規模事業者の中における、特に賃金の財源というものが確実に確保できるように取り計らっていきたいと思っています。

柚木委員 今言っていただきましたので、是非事業者さんの声を聞いてキャッチボールをした上で、来月に向けての取組をお願いします。

 それでも駄目だったとき、次の質問なんですね。我々、この十二ページ目以降に示していますように、そもそも介護・障害福祉従事者処遇改善法案を出していて、全体の底上げ、その前のページの緊急要請でも申し上げていますが、それで今の状況で、訪問介護、基本報酬引下げですから、このままいくと、必ず倒産、介護離職、ヘルパーさんの離職が増えますので、経済損失も増えますので、新年度以降、そういう状況が万が一、このままやっちゃって、改善してもやっちゃって起こった場合には、例えば訪問介護緊急支援補助金のような形で、補正予算のタイミングが一番早いと思いますが、そういった形で支援、サポートを是非お願いしたいんですよ。我々、今、場合によっては、議員立法も含めて後押ししますから。

 そういう状況がもし起こったときには、至急手当てを、訪問介護緊急支援補助金のような形での何らかの対応を是非お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

武見国務大臣 まずは、決してそういう状態に陥らないというふうにさせることが最も現状において大切なことと私自身も考えます。

 令和五年度の補正予算で既に、物価高騰への対応として、重点支援地方交付金を追加して、介護分野での重点的な活用を推奨するということのほかに、ICTなどを活用した生産性向上の推進による現場の負担の軽減、職場環境の改善を行う場合や、小規模事業所を含む事業所グループが協働して職員募集などを行う場合への補助といったようなものについて、既にこうした措置は講じておりますので、こうした支援が確実に現場に行き届くよう、徹底してこれを周知し、実現させていくことをまずやってみたいと思います。

 こうした利用者に対して必要なサービスが安定的、継続的に提供されるよう、今般の介護報酬改定の影響等については、介護事業経営実態調査を始めとして各種調査などを通じて状況の把握を常に同時並行的に行いながら、実際に対応していきたいと考えます。

柚木委員 時間が来たので、最後、要請だけして終わりますが、マイナ保険証の問題も、いろいろな、また詐欺事件とかが起こってきていて、これはスマホでも使えるようにするとか河野大臣もおっしゃっていますが、便利になればその分リスクも増えます、犯罪に巻き込まれるリスクも。

 しかも、国家公務員、資料をつけているように、厚労省ですら四・八%の利用率。このまま十二月の二日に、その前に、十月にマイナ保険証の登録を解除する。そのときに殺到する可能性がありますからね。今、国民は、八割ぐらい登録はしていても使っている人は四パーですから。そうしたら大混乱になりますから、国家公務員も含めてこのまま利用率が上がらない、その場合は、是非、十二月二日の期限、今の紙の保険証廃止を延期、我々は選択制を提案しています。そういうことを是非御検討いただくことをお願いをして、今後もこの質疑もさせていただきますので、質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

新谷委員長 次に、早稲田ゆき君。

早稲田委員 立憲民主党の早稲田ゆきです。

 それでは、通告に従いまして質問してまいりますので、武見大臣、よろしくお願いいたします。

 柚木委員からも最後に言われておりましたマイナ保険証についてでありますが、これも四・六%と、国民で使っていらっしゃる方、そしてまた国家公務員でも大変低い、厚労省で四・八という数字が出ておりますけれども、これは十一月のデータでございまして、年明け、もう大分たっておりますが、厚生労働省としてなぜお調べにならないのか。やはり、これ以上上がらないのは恥ずかしい、そういう感じなんでしょうか。

 これはきちんと出していただかないと、国民の皆さんにも示しがつかないというか、そういうところもございますし、これだけ利用率が低いのはなぜなのかということ、やはり公務員の皆さんにも、大臣含め、皆さん、聞いていただきたい、ヒアリングをしていただきたいところですよね。

 カードを胸につけていらっしゃいます、皆さん、通行証として。それをやっていることで、これをマイナ保険証で使うことが、一々外してやるのも大変面倒だというようなことも報道には出ておりましたけれども、大臣として、このことについて国家公務員のデータを調べない、今、年明け、調べていらっしゃらない。いつまでにもう一度調べられるのか、その点について伺います。

武見国務大臣 マイナ保険証の利用を加速化するために、まず、医療DXを推進する立場である厚生労働省において、率先してより多くの職員の方々にマイナ保険証を利用していただくことは重要であるという御指摘は全くそのとおりだと思います。

 したがって、私も、先月の二十九日に全職員宛てのビデオメッセージを放映させていただきましてマイナ保険証の利用を勧奨したほか、副大臣、政務官とも順次ビデオメッセージを放映することや、それから、事務方幹部から順次全職員に対して自身の体験に基づくマイナ保険証のメリットを周知するとともに、知って得するマイナ保険証の一口コラムを案内するということなど、取組を今実施しております。

 厚生労働省の共済組合における利用率については、率先して取り組む観点から、今後も適切なタイミングでの公表を検討してまいりたいと思っております。三月に今入っておりますけれども、一月に底を打って、着実に改善をされてきているというふうに私は聞いておりますので、恐らく、少しいい数字を公表させていただけることになるのではないかなと私は期待をしております。

 職員はマイナンバーカードを入館証として使っているために、マイナ保険証としての利用に不便があるという御指摘もありますけれども、同時に、他方で、ふだんからこうした入館証で使っていることによって、マイナ保険証をふだんから使い慣れるということも極めて重要な効果をまた同時に持っているんだということも是非御理解をいただきたいと思います。

 いずれにせよ、マイナ保険証の利用について国民の皆様方にお願いする立場の役所でございますので、やはり職員一丸となって、マイナ保険証利用に向けて努力を進めていきたいと思っております。

早稲田委員 大臣のビデオメッセージで、マイナ保険証利用率、厚生労働省は上がったんでしょうか、下がってそのままなんでしょうか、横ばいなんでしょうか、大体お分かりになろうかと思いますが。それからもう一点、年度末までに公表していただけますね。お願いします。

武見国務大臣 私のビデオメッセージが効果があったかどうかというのは、まだ数字が出ておりませんけれども、あったということを期待しております。その上で、今月末の状況を取りまとめて公表をさせていただきます。

早稲田委員 是非、その効果があったのかどうか、なければ困るわけでございますし、厚生労働省がやっているわけですから。

 それから、これはやはり、ビデオメッセージ云々じゃなくて、利便性ということが伝わっていないということが一番の大きな課題だと思っております。

 なぜなら、今詳しく申し上げる時間がございませんけれども、保団連の資料によりますと、昨年十月以降も、医療現場のトラブル調査、これも、あったという方が六割ですね。ひもづけ誤りは総点検をされましたけれども、まだまだあるわけです。保団連以外でも、千葉県の保険医協会、それからまた国分寺の市議会でも調べておりますが、これも五割から六割でトラブルがあったということで、改善されていないと考えるのが普通ではないでしょうか。そういう中で、国家公務員の方も使うメリットがないというふうに思われるのは、やはり当然なのではないか。九割の方がまだ使っておられないという、九割以上の方がですね、国民で。

 それからもう一つは、能登半島地震のときです。河野大臣が、マイナ保険証を持って避難する、マイナ避難ということを呼びかけられましたが、残念ながらこれは機能いたしませんでした。そして、Suicaを代用した、そういうこともあります。

 平時にも意味がない、それから災害時には全く役に立たないということであれば、国民の皆さんの理解が進むわけがございません。その意味でも、国民の皆さんの利便性を高めるということよりも、やはり、元々マイナカードというのは任意のものですから、保険証も紙の保険証を使っている方が九割なんですから、これを残す、延期ということもしっかりと、廃止ありきではなく、考えていただくように強く要望させていただきます。

 次の質問に移ります。訪問介護です。

 これも柚木議員も細かくやられましたが、資料一を御覧ください。訪問介護事業、三六%、四割近くが赤字ということでありまして、これについては、私が厚生労働省に資料を要求して、そして団体の方で作っていただいて、それを基にこの報道が出たと思っております。

 その中で、全然今まで、この赤字、四割近いなんという説明は厚生労働省からはありませんでした、この議論のときに。七・八%、利益率が、収支差率があるから大丈夫なんだ、それよりも、処遇改善でやっていけば、これは誰も不利益を得ることはないというような説明ばかりでしたけれども、これは大変不誠実ではないでしょうか。そのことについて一点伺います。

 それから、こんなことをしていたら、小規模事業者は倒産前提であります。まさに切捨て、そして、地域で見守る、地域包括ケアも絵空事になりますし、介護の再家庭化ということがどんどん進みますし、介護離職、そして最後は介護崩壊になってしまうのではないかと非常に多くの心配をしております。

 そのことについて、大臣、やはりこれは考え直していただきたい。私たち、撤回の申入れ、改善の申入れもしておりますけれども、やはりもっと踏み込んでこの改善をしていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

武見国務大臣 実際に、こうした在宅介護の各事業者の平均的な収支差率というのは七・八%、同時に、四割弱の小規模事業所に関しては残念ながら赤字である。こうした状況の中で、実際にどのように介護保険制度というのを、全体として常に持続可能な形に保つための適正化というのは行われなければなりません。

 その観点から、こうした基本料というものを下げさせていただきつつも、特にこうした小規模事業所に対しては、人件費の財源を中心にしてしっかりと加算措置が取れるように、今回の極めて取得しやすい新たな加算措置というものの制度設計を組み込んだというのが事の経緯であったというふうに私は思います。

 そして、この処遇改善加算について、他の介護サービスよりもはるかに高い加算率を設定してきておりますし、また、みとり期の利用者へのサービス提供を行った事業所への加算であるとか認知症に関連する加算というのも更に充実することなどによりまして、訪問介護は全体としてはプラス改定というふうに制度が設計されております。

 訪問介護は他のサービスと比べて処遇改善加算の取得状況は全体として低い傾向にあることは、小規模事業所を始めとして、訪問介護の介護職員等の人材確保、処遇改善のための処遇改善加算の促進に向けた環境整備というのを進めることとしておりまして、オンラインを用いた個別相談なども行いながらしっかりと支援をして、この処遇改善加算を現場で最大限に活用していただけるよう、取得促進を図るということを徹底して行うということをさせていただいております。

 こうしたことを通じて、先生の御指摘の小規模事業者等に関わる課題というものも改善をさせ、そして経営の安定した基盤はそこで確保できるというふうに私どもは施策を進めていかなければならない、こう考えております。

早稲田委員 改善されないんですね。平均値が七・八%とおっしゃいましたけれども、これは大規模事業者が一三%ぐらいの利益率のあるところもあって引き上げている。そして、中央値でいえば四・二%でありますし、七・八%以上は四百七十一か所、それから八%未満というところは八百三十三か所でありまして、赤字の事業所は四百八十一という数字も出ておる中で、とてもとても、この基本報酬を下げるということは、本当に事業所の皆さんのモチベーションも下がりますし、それで、処遇改善でカバーできるということではないから、これだけパブコメにもいろいろな御意見が来ているわけです。

 先ほどもございましたが、小規模事業者の声を余り聞く機会がないと私たちの申入れのときにおっしゃっていました、大臣。是非この機にこれを聞いていただきたいという質問を一点。

 それから、私たちは今、訪問介護の緊急支援法案も視野に準備を進めているところであります。与党の議員の皆様も地域で、本当に大変なんだ、困るんだという苦情をたくさん聞いておられると思います。与野党が対立するものではございませんので、一緒にこの緊急支援ということをやっていきたいと私も切に要望いたしますが、大臣、もう一度、小規模事業者の声を聞いていただきたい、お願いします。

武見国務大臣 先生方の御指摘もあります。小規模事業者の皆様方の声をどのような形で聞けば一番効果的に聞けるか、検討してみたいというふうに思います。

 その上で、収支差率が低い事業所の場合の、一般に、小規模であるがゆえに、ホームヘルパーの確保が困難だったり、事務処理をホームヘルパーが行っていたりと、業務の効率性に課題がある事業所もあります。そのような事業所は、加算取得の事務処理も行い難いために、処遇改善加算も十分には取得できていないということが大体私どもも想定されておりますので、このため、加算未取得の事業所は加算を取得し、既に取得している事業所は新たな処遇改善加算の体系に早期に移行していただくことで、介護職員の賃上げを実現できるように、小規模な事業所も含めて、更なる取得促進に向けた環境整備を進めてまいります。

 そして、この状況というのは、丁寧に、小規模事業者からの意見もしっかりと聴取をしながら進めていきたいと思います。

早稲田委員 是非、小規模事業者の意見を聞いていただきたい、現場の声を聞いていただきたいということを強く要望いたします。

 時間も押してまいりましたので、ちょっと順番を変えまして、DVそれから性被害女性等のトラウマ治療、PTSDへの心理支援ということ、この問題を伺いたいと思います。

 DVや性被害を受けた女性が複雑性のPTSDとなり、そのトラウマ治療に関しては何年もカウンセリングに通わなければならないということで、保険適用を要望する声が大変多く届いております。

 今回の診療報酬改定では、心理支援加算という形で創設されたことは大変画期的だと思っています。医師の指示の下とはいえ、初めて心理職の仕事に保険適用されたことは大きな一歩です。私も、大臣のリーダーシップ、大変評価をさせていただきたいと思っています。

 しかしながら、三月五日に告示されました詳細を見ますと、その点数が、三十分以上、四十分でも五十分でも、これは二百五十点なんですね。スクールカウンセラーの時給相場と見ても半額でありますし、医師の行う認知行動療法の点数の四百八十点の半分であります。これは単価が非常に不十分ではないかと思うんです。利用限度も月二回、二年までと、この根拠も、厚労省に説明を受けましたけれども、よく分かりません。そして、複雑性の場合は、比較的軽い方、比較的軽い原因の場合の単回性PTSDとは違うわけで、そういう方のみが対象となっているのではないかとさえ思われます。

 こうした場合に、DVとか性被害を受けた方々の個々の症状に応じてということを、もっとフレキシブルにやる必要があるのではないかと思います。何も、月二回、二年までとやる必要はなくて、医師の裁量で月三回でも、あるいは、途中、診療も非常につらいときがあるそうなので、こうしたところも、休んでまた再開できるというような、合計せめて四十八回まで全部でできますよというようなことも考えていただきたいと思いますが、参考人、いかがでしょうか。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の加算につきましては、心的外傷に起因する症状を有する患者に対する適切な介入を推進するという観点から、令和六年度の改定において新設することとしたものでございます。

 具体的には、精神科を担当する医師の指示を受けた公認心理師がこうした患者さんに対して心理支援を行った場合に評価する加算としてございます。加算でございますので、これ以外に初診料、再診料といった診療報酬が当然払われたことを前提とした加算でございます。

 この加算の点数につきましては、中医協における関係者の議論等を踏まえて適切に設定されたものと考えておりますけれども、今回、新しい加算でもございますので、今年の六月以降、この心理支援加算が評価する取組の状況等を注視しつつ、さらに、関係学会の御意見、エビデンス等を踏まえまして、必要に応じて中医協において議論するということになるのではないかと考えてございます。

早稲田委員 これから始まるわけですけれども、是非皆さんの御意見を聞いていただきたい。そして、現場の実態調査をしていただきますよう心からお願いをしたいと思います。

 その上で、大臣に伺いたいんですけれども、複雑性のPTSD疑いの診断を受けて、独立開業している公認心理師から心理支援、カウンセリングを長期間受けている方の経済的な負担軽減策を、やはり、今後、国として検討すべきではないかと思います。

 資料をいろいろつけておりますけれども、五枚目の、これは御本人からのメール、これは御本人の了承を得て載せさせていただいております。大変費用がかかるということで、ちゅうちょしてしまう、そういう実態もあるようでございますし、当然ながら時間もかかりますので、そこのところ、負担軽減ということを大臣も今後検討していただけないかと思いますが、いかがでしょうか。

武見国務大臣 お尋ねのような、PTSDの疑いや診断を受けた方を含めて、適切な心のケア等の支援を進めるための心理学の専門的知識や技術を有する公認心理師は、非常にその役割が期待されております。公認心理師は資格創設から六年程度の新しい枠組みではございまして、各分野で活躍いただけるよう取組を進めてまいります。

 例えば、診療報酬における対応については、令和六年度の改定において、PTSDの疑いや診断を受けた方が医療機関において公認心理師から適切な支援を受けられるよう、心的外傷に起因する症状を有する患者に対して、精神科を担当する医師の指示を受けた公認心理師が必要な支援を行った場合の加算も新設をしております。

 なお、独立開業している公認心理師については、開業者の判断で自由に支援の内容なども決定されていることから、その費用等については、顧客との間で民民の契約に基づいて決定されるべきものだというふうに考えております。

早稲田委員 もちろん民民のことなんですけれども、診療の金額ですね、ですけれども、やはりそこがネックになっていて受けられないという方がいらっしゃるわけです、このメールでもそうですけれども。

 昨日の記者会見で、実の父親から長年性的虐待を受けていた女性の記者会見を、大臣、御覧になったでしょうか。私も、大変胸に、もうえぐられるような思いでこれを拝見いたしました。結局、中学から高校までそういうことを受けていたけれども、大変、相談もできない、その中で、今、大人になって、自分が記者会見を実名で顔出しでするのは、こうした方たちがもう次にないように、そして相談ができるようにしてほしいという思いからだったそうです。

 その方がおっしゃっているのは、被害がたとえ終わったとしても心が癒やされるわけではない、思い出しても苦しむ、カウンセリングとか精神科もお金がかかりますから、そういったサポートがあると大変いいと思いますと実名でお話をされていました。

 大臣におかれましても、きっとそういう立場の方々に寄り添うお気持ちは十分大臣はお持ちでしょうから、今後、やはり民民とはいえ、この実態を調査していただいて、そういう負担軽減についてもお考えを、御検討を是非いただきたいと思います。

 そして、困難女性の支援の立場からですけれども、女性自立支援の通所型モデル事業というのが来年度予算に計上されています。こうした心的な方たちも含め、支援をしていただくということが大変重要かと思いますが、時間もないので、大臣、端的にこのことについてはお答えをいただきたいと思います。

武見国務大臣 複雑性PTSDを抱えて日常生活などでも困難を抱えていらっしゃる女性についても、DV被害や性被害等への支援の観点から、本モデル事業による生活習慣の定着支援やピアサポートなどの支援の対象になり得るものと考えております。

 こうした事業を通じて、先生御指摘のような様々な困難を抱えられている女性が、心身の状況等に応じた適切な支援を受け、安心して自立した生活が送れることができるように、厚生労働省としてしっかり取り組んでまいりたいと思います。

早稲田委員 PTSDの方々へのトラウマの治療というものを前に進めるように、せっかくいい制度をつくっていただきましたので、診療報酬もありますので、是非その後をまた進めていただきたい、負担軽減も含めてお願いしたいと思います。

 最後でありますが、障害福祉報酬改定の一部撤回ということを私は求めたいと思います。

 この報酬改定、先ほど訪問介護がありましたが、これも、障害福祉の報酬改定、今週中にも告示をされると聞いております。六日に締め切ったパブコメでも、現場の声として大変多くの懸念の声が届いております。

 一つは、重い障害児や生活介護、児童発達支援、放課後等デイサービスの日払いの基本報酬が、今度、時間刻みの報酬改定になります。こうしますと、ほとんどのところが年額数百万円の減収にもなります。

 それから二つ目は、就労継続支援B型、これの平均工賃一万五千円未満の報酬単位の減額であります。これも、工賃が低いという理由で切り捨ててしまってはならないと考えます。

 三つ目はグループホーム、つけさせていただきました資料二ですけれども、これはほとんど、支援区分の六以外はもう全部減収になります。こういうことですと、いかにもこれは、支援区分が六でなくても、五でも四でも三でも、非常に支援が継続的に必要な方たちが多いわけです。これは、あくまでも区分というのは医療的に見た場合ですから、実際の生活、それから、その方たちが社会で生きていくための支援ということは大変重要でありまして、これを切ってしまうということは、障害福祉の現場からしてはあり得ないことだということが大変届いています。

 以上の三つの改定、減額、廃止は、終わりの見えない物価高騰と、それから、本当に危険水域に入っている職員不足問題に苦しむ障害福祉の現場を見ていない。こういう実態を見ていただきたいと思います。介護報酬の訪問介護の基本報酬減額同様、私は撤回を求めたいと思いますが、大臣、やはり検討をしていただきたいと思います。お願いします。

武見国務大臣 令和六年度の障害福祉サービス等報酬改定では、処遇改善を行うとともに、障害者が希望する地域生活の実現に向けて、新規参入が増加する中でサービスの質の確保、向上を図る観点から、経営実態を踏まえたサービスの質に応じた報酬改定を行うということとしております。それによって、単なる人的な配置の基準だけではなくて、時間というのも組み込ませていただいたわけであります。

 例えば、生活介護については、サービス提供の実態に応じてきめ細かく基本報酬の設定をするとともに、医療的ケアが必要な方への支援体制の整備のため、介護職員を手厚く配置し支援を行った際の加算の拡充、入浴支援を実施した場合の加算の新設、専門的な支援を必要とする強度行動障害を有する障害者等への加算の拡充など、手厚く加算で評価することとしておりまして、今回の改定はその点で適切と考えております。

 障害者が希望する地域生活を実現できるように取り組んでいきたいと思います。

早稲田委員 これで終わりますが、手厚くならないんです、人員が。元々、人員不足が本当に深刻な状況の中で、事業者が立ち行かなくなりますので、是非そこを再考していただきたいと強く要望いたします。

 以上です。

新谷委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 有志の会の福島伸享でございます。

 今日は、朝、農業政策系の勉強会に行って、今から厚生労働委員会に行くんですよと言ったら、みんなから似合わないなと言われたんですけれども、私は農政とか国交とかそういうガテン系が似合うのかもしれませんけれども。

 かつて、二〇〇〇年に通産省の職員であったときに、バイオ課というところにおりまして、その頃、小渕政権のミレニアムプロジェクトということでITとバイオという予算がつくときに、まさにこれからバイオ産業を振興していこうという行政に携わっておりました。そのときに、バイオ課、通産省は生物化学産業課の中に事業環境整備室というのをつくって、医薬品とか医療機器の産業構造政策的なものを講じるための新しい部署ができまして、私、そこの初代の筆頭の課長補佐を務めさせていただいて、そうした観点で、そのときに思ったことを基に、今日は、大臣も所信で創薬基盤の強化ということをお話しになられておりますので、そのことをお聞きしたいというふうに思っております。

 まず、資料を御覧になっていただきたいんですけれども、紙芝居的に見ていきますけれども、資料一を見ると、いろいろな統計の取り方がありますけれども、主要製薬企業の売上高というのを見ると、トップ二十の中に日本企業が入っているのは、十三位の武田だけです。

 資料二というのを御覧になっていただくと、日本起源の医薬品の世界でのシェアを見ると、まさに私がミレニアムプロジェクトだった頃の十数%から一〇%を切るまで落ちていて、でも、二〇〇〇年のときにこのシェアは著しく低いと言われていて、元々発射台は低いんですけれども、それから更にじりじりと下がり続けております。

 医療機器はというふうに見ますと、次の資料三ですけれども、トップ三十のうちに、十九位がオリンパス、二十位がテルモでありまして、多少医薬品よりは入っているかもしれませんけれども、やはり上位は全部外国の企業ということです。

 その次を見てみますと、品目ごとに医療機器を見ると、横軸が市場規模、縦軸がシェアなんですけれども、この青い丸が日本企業ですけれども、ほとんどが五〇%以下のシェアで、オリンパスの内視鏡だけ非常に高いシェアを誇っておりますけれども、例えば、右下の方にステントというのがありますけれども、市場規模が大きいにもかかわらず日本企業のシェアは著しく低いですし、放射線治療装置といった治療に関わるような医療機器のシェアは著しく低い、そうした状況にあります。

 日本というのは自動車とか電気機器とか素材とか、本来は物づくりが比較優位な国であるのに、最近は多少衰えつつあるとはいえ、これだけ、医療機器とか機械ですから、あるいは、素材が大きな影響を及ぶ、あるいは化学の製品である製薬といったものがこれだけシェアが低いというのは私は異常だと思うんですけれども、大臣はどのように認識され、その原因はどの辺りにあるか、後ほど細かく議論をしてまいりますけれども、大臣の個人的な、大臣としての、政治家としての所見をお伺いできればと思います。

武見国務大臣 私、委員と全く同じ認識を、この分野について、危機意識として持っております。

 したがって、我が国のメディカルデバイスのみならず医薬品含めて、我が国のそうした分野における、例えば創薬の基盤というものをいかに再強化していくか、これは我が国にとって喫緊の課題になってきている、しかも、この分野は、将来、自動車産業と匹敵するぐらい大きな産業に、国際社会でなっていくと予測されているわけでありますから、その中における我が国のシェアというものを広げるようなそうした産業政策というものについても、厚生労働省は経済産業省ときちんと連携をしながら進めていくべき必要がある、こう思っております。

福島委員 ありがとうございます。全く同じ認識を共有できてうれしく思います。

 最近、私の出身元の経産省が、医療機器産業ビジョン二〇二四というのをつくりました。医薬品と医療機器、違うところもあるんですけれども構造的には同じものなので、最新のものを取り上げたんですけれども、その次の資料を見ていただくと、この青い実線が国内市場で、今大臣がおっしゃったように、国内でも自動車産業に匹敵する産業になるように右肩上がりで上がっているんですけれども、肝腎なのは点線でありまして、青の点線が国内の企業の出荷額、これは横ばいです。輸入額は赤線で、伸びている。

 つまり、国内市場の伸びが輸入で補っているという意味では、この報告書でもありますけれども、成長の大部分は輸入に吸収、国内企業による製品の競争力が低い、グローバル市場に対する日本のシェアも、一九九〇年の二二・一%から二〇一八年は七・三%まで低下している、そのためにイノベーション創出のための研究開発投資とグローバル展開による投資回収の二つの循環による産業成長が必要だとしているんですけれども、大臣、この経産省のビジョンに対する御評価はいかがでしょうか。

武見国務大臣 これは、経済産業省が三月一日に取りまとめた医療機器産業ビジョン二〇二四と承知をしております。今後目指すべき具体的な取組等の方向性として、成長が限られる国内市場に依存せず、グローバル市場の獲得による成長を目指すべきこと、そして、グローバル展開までに必要な活動に対して産業支援リソースを戦略的かつ集中的に投下することにより、イノベーション創出のための研究開発投資とグローバル展開による投資回収の二つが循環していく姿を目指すべきことなどが盛り込まれたと承知しております。

 このビジョンの取りまとめに当たった検討会には実は厚生労働省もオブザーバーとして参加をしておりまして、厚生労働省としては、医療現場のニーズに合った医療機器の開発を推進することがグローバル市場の獲得にもつながると考えておりまして、このビジョンは医療機器産業の更なる振興にもつながるものとして評価できると考えており、経済産業省とも緊密に連携を取りながら、この施策の推進に取り組んでいきたいと思っております。

福島委員 ありがとうございます。

 御評価はありがたいし、一定の評価はできるんですけれども、今読み上げた大臣の答弁が、典型的な駄目な経産省の政策なんですよね、資源の投入とかなんとか。これの政策をつくるときに国内の医療機器企業四十五社へのヒアリングをしているんですけれども、そこで出た意見は大体こういうことなんです。

 海外事業と比較して製品価格が低く評価され、その後も下落が大きい、日本市場への投資がリスクであるとか、数量ベースで伸びても価格が下落するから結局売上げが落ちるとか、治験だけで二十から三十億を超える、医療機器の価格が下がり切っており、回収見込みが乏しく新技術開発に投資できないとか、新規製品の価格は価格が下がり切った既製品の価格を基準としたものとなってしまうから、コスト構造が全く異なる、イノベーションが評価される仕組みをと。あるいは、国内で投資の一定の回収ができないと海外展開のための投資が困難と。まだいっぱいあるんですけれども、つまり価格なんですよ。

 要するに、投資ができない価格、投資もできないんだから海外なんて行きようがないでしょうという話であって、イノベーションが価格として評価されず、投資資金の回収の見込みがないということが最大の問題となっていて、それに対する回答は経産省のレポートにはないんです。つまり、すれ違っているんですね、現状認識と行われている政策が。

 それでも、ちょっと宣伝タイムとして、今回の薬価改定でそれを補うような見直しもされているやに聞いておりますけれども、どんなことをされているか、宣伝いただければと思います。

武見国務大臣 令和六年度の薬価制度や保険医療材料制度の改革では、創薬力の強化などを実現するために革新的な医薬品や医療機器へのイノベーションの適切な評価を推進するための改定、委員御指摘のとおり行いました。

 具体的には、薬価制度について、イノベーションを促進する観点から、革新的新薬の有用性を評価してその加算を充実すること、企業や研究開発資金の回収にも資するよう、特許期間中の薬価の維持を行うこと、また、保険医療材料制度においても、革新的な医療機器を評価し、そのイノベーションを推進する観点などから、保険適用された医療機器を再評価して加算を行う仕組みの対象を拡大したところでございます。

 今回の制度見直しが企業における革新的な医薬品、医療機器の開発に着実につながるように、関係団体を通じて周知していくとともに、今後とも、このようなイノベーションの評価を推進し、取組を進めることによって、各企業が将来に対する経営見通しをちゃんと持ちながら投資ができるようにしていきたいと思います。

福島委員 それの結果が今の医薬品産業であり、医療機器産業なんです。やはり、政治は結果だとよく安倍総理は私に質問のときにおっしゃっておりましたけれども、これまでも、薬価制度の抜本改革とか言いながら、ほとんど状況は変わっていないんですね。全然抜本改革ではないと思うんです。

 問題は、やはり、二年に一回の診療報酬改定で大部分の医薬品、医療機器が段階的に価格が下がっているんです。私はこれは制度上の問題だと思います。私、制度というのは、非常に、経済学で中心にこれまで勉強してきたんですけれども、理由は、償還価格が公定価格として決められるけれども、実際の取引価格が下がっていくから、その差益の分が二年に一回切り下げられて、これも政治力なんですけれども、財源を出すためには薬価を下げる方がいいといって、必ず下がっていくわけですね。

 なぜ、そもそも薬価差益を生ずると考えているか、ちょっと端的に短くお答えいただけますでしょうか。

内山政府参考人 お答えいたします。

 医薬品につきましては、今先生も御指摘いただきましたように、医療保険から医療機関等に対して償還する価格、薬価が統一的に定められている中で、製薬企業、医薬品卸売業者、それから医療機関等との取引は自由取引に委ねられていることから、これらの間で取引される価格、いわゆる実勢価格と薬価の間に差額、いわゆる薬価差が発生しているものと考えてございます。

 この薬価差につきましては、ベンチマークを用いた価格交渉とか総額での一律値下げを求める総価取引など、薬価差を得ることを目的とした取引が増えていることなどが指摘されておりますので、私どもとしましても、安定確保医薬品などについては総価交渉とは別枠とした単品単価交渉とすることなどを盛り込んだ流通改善ガイドラインの改定を三月一日に実施して、この対応を考えてございます。

福島委員 今日は、そういう詳細な細かい政策を議論をする目的ではないので大きな議論をしたいんですけれども、これは経済学的にいうと、買手独占なんですよ。しかも二重価格制なんです。私、かつてミャンマーという国に一九九五年に行ったときがあるんですけれども、外国人の通貨と現地のチャットの二重価格制、社会主義から移行する国でよくある、それと同じ状況なんですね。

 経済学的にいうと、買手独占で、買手は医療機関とかですから、買手のバーゲニングパワーが圧倒的に強いんですよ。だから、MRの皆さんがもう本当に腰を低くしてお医者さんに売りに、営業しに行かなければならない。医療機関から見れば、保険償還価格が公定価格で決まっていって、安く仕入れればその分利益が上がるわけだから、一生懸命買いたたくインセンティブが湧いて、つまり、経済学的にいうと、上方硬直性というんですよ。価格が上がらないで一方的に下がるマーケット構造に、今の薬価制度自体がそうしてしまっているわけですね。

 かつて、ファイザーにマッキネルさんという会長がいて、私、よく二人で飯食ったりしていたんですけれども、彼が、一々政府が一つ一つの薬の値段まで決めて、しかも二年に一回下げられる日本は資本主義の国だと言わない、中国の方がまだましだということを言われて、すごい屈辱的な思いをしたんですね。

 ただ一方、こうした薬価制度を織り込んだ経営をすれば生き残っていけるんですよ。つまり、ある程度の薬価に合う薬を作れば、画期的な新薬なんて目指さないで、小さな研究開発投資で、そこそこ短期間で資金を回収できるような薬をやれば生き残っていけるから、私が経産省にいたときはまだ八十数社、研究開発型の薬の企業があって、今はもう五十数社ですよね。

 ほかの例えば自動車とか鉄で見ても、重電で見ても、日本国内シェアは寡占なんですよ、数社、一、二社。だから、私は産業構造政策が必要だと。それの上で世界で戦わないと、五十社も研究開発型企業がいる中で世界と戦えというのは私は無理だと思うんですね。

 厚生労働省も、医薬品産業ビジョン二〇二一というのがあるんですけれども、そこで、日本市場は、国民皆保険制度による安定、確実な販売見通しと予見性が比較的高い薬価制度がその特徴であり、引き続き国民皆保険制度の持続性と企業としての投資回収見込みを両立させ、つまり、今の制度がいいんだと言っているんですよ。今の制度でいいと言っているから、今のこの日本の医薬品産業であり、医療機器構造になっちゃっているんですね。現状の制度の下で考えた結果が、また言いますが、政治は結果ですから、このような制度になっちゃっていると思うんです。

 ちょっと、先ほど医療機器の話をしましたので、物づくりに優位性を持っていた日本が、例えばさっきのステントとかカテーテルとか治療用の医療機器で特に世界でのシェアがゼロ%に近い、一桁というのは異常な低さなんですけれども、その原因はどこにあると考えているか、是非厚労省の見解をお聞かせください。

内山政府参考人 お答えいたします。

 医療機器産業、これは主に内視鏡とか超音波画像診断機器、診断等の診断機器には強みを有しておりまして、先ほど先生が御提示いただきました資料でも、上位三十社のうち日本企業は五社含まれているということでございます。

 一方で、御指摘もございましたけれども、ステントやカテーテルといったような治療用医療機器については輸入に頼っているのが現状でございまして、世界でのシェアが低い状況であるというふうに考えてございます。

 その治療用医療機器が世界でのシェアが低い理由としましては、我が国におきましては、製品開発の人材が不足をしていること、それから、企業と医療機関等との協力体制が不十分であることに加えまして、治療用医療機器というのは特に医療現場のニーズが求められる製品でございますけれども、医療現場のニーズに合った製品の実用化とか市場獲得に至っていないということが挙げられるかと思ってございます。

福島委員 ありがとうございます。

 今の認識が厚労省のずれているところだと思うんですね。済みません、批判するようで申し訳ないんですけれども。

 資料六というのがございます。それを見てほしいんですけれども、これはまさに医療機器の国内と海外企業のキャッシュフローと臨床試験数というグラフなんですけれども、青が国内です。赤が海外の上位五社、青が日本企業。圧倒的に臨床試験件数も低ければ、キャッシュフローも低いわけですね。これじゃ全く世界で勝負になりません。大人と子供だけの差になるんですね。

 私は、世界の医薬品、医療機器産業は、さっき言った医者のニーズ、医療のニーズが、やっていないとかというよりも、これはもう金融ビジネスなんですよ。多額の研究開発、自社で集めることができませんから、世界中のマーケットからお金を集めて、膨大な資金を、まず自社で開発を行ったり、次のページ、これは薬の方ですけれども、このグラフは何を示しているかというと、世界の売上高は大手製薬企業が六四%を占めておりますけれども、創薬開発品の品目を見るとベンチャーが八割なんです。つまり、ベンチャー企業に投資をしたり、MアンドAを通じてベンチャーが開発した技術を入れるという意味では、投資ビジネスなんですね。

 次の資料八を見てみると、こっちの方はまた日本における医療機器です。左側が日本企業なんですけれども、SUというのはスタートアップです、薄いグリーンのところ。日本企業の医療機器の国内承認はほとんど自社開発品。これは日本での承認ですよ。右側のグラフは日本での承認の海外企業なんですけれども、それはほとんどスタートアップ企業なんですね。つまり、ビジネスモデルが全く違うんですよ。今までの薬屋、機械屋、用具屋の世界では絶対いけない、金融ビジネスなんですね。

 ただ、その金融が、なぜお金がつくかといったら、資本主義ですから、いいものを作ったらそれに見合う値段がマーケットでつく、しかもそこに余計な関与がない、政府によって価格が左右されたりしないという前提じゃないとお金は集まりません。やはり金のにおいのするところにしかお金は来ないんですね。それが現実なんですよ。でも、それを阻害しているのが今の薬価制度に残念ながらなってしまっているんじゃないかと思うんです。

 元々日本はこんな一物一価の薬価制度はつくっていなくて、国民皆保険をつくっていく過程でこういう仕組みになりましたし、また世界を見ても、その次の九ですけれども、一番最後の資料ですけれども、大部分の会社は、交渉で、まさにマーケットの中で薬価が決まっているんですね。ただ、日本は国民皆保険の国ですから、しかもその国民皆保険制度は国民の支持もそれなりに高いものがある中で、でも、私は、薬とか機械とか、物はやはり資本主義のメカニズムの下で価格が決められないと資金調達ができないと思うんです。

 薬価制度の小手先の見直しでは絶対できない。政府が価格を決定するかつてのミャンマーのような国じゃできないんです。今、日本がやっていることは、社会主義の国が資本主義に挑戦するという二十世紀の実験をもう一回繰り返しているのと一緒なんです。中国ですらこんな一物一価の公定価格は入れていないというふうに私は聞いております。

 これは、厚生労働省からは、絶対、医療保険の中における薬価制度の、あるいは医療機器の価格の制度の抜本的な見直しと言わないんですよ。日本の製薬企業も、勉強会をやっていると、そうだそうだとみんな言うんですけれども、じゃ、製薬企業として出しますかと言ったら、ううんと口ごもっちゃうんですよ。一個一個の薬価収載のときにいじめられるのが嫌なのかどうか分からないですけれどもね。製薬メーカーは残念ながら大した政治力もない。厚生労働省の感覚で議論してはいけないんですね。これは政治がやらなきゃならないんです。私が政治を志したのは、それをやりたいというのも一つあって、政治を志したんですね。

 ですから、大臣、大臣は、もう医療だけの分野じゃない、先ほどの冒頭のダイバーシティーの議論でもありますけれども、多様な知見と教養をお持ちな方だと思うので、私は、そろそろ、政治の主導で、あるいは官邸主導でもいいんですけれども、小手先じゃない、国民皆保険制度を維持しながら、マーケットでちゃんと価格が原則決められる、いろいろな制度があると思います、今日はあえて申し上げませんけれども、そうした制度をまず検討の俎上にのせることも大事だと思うんですよ。ようやく日本は資本主義の世界に戻ってきたかと世界のマーケットから思ってもらえるような、そうしたスタートを切ることが必要かと思うんですけれども、大臣の御認識をお聞かせください。

新谷委員長 武見厚生労働大臣、申合せの時間が経過しておりますので、答弁は簡潔に願います。

武見国務大臣 はい。

 我が国の皆保険制度というのは、極めて高い平等性という考え方の中で実に丁寧につくられ、運営されてきて今日に至ってきております。私は、やはり、世界の中でも最も優れた皆保険制度を我が国は確立していると思います。

 ただ、問題は、先生御指摘のように、新たな医薬品や医療機器の開発コストがすごく高くなり、かつまた、その開発のプロセスが従来とは違って、既存の企業の中で開発されるというよりも、アカデミアと連携したスタートアップがベンチャーの投資を得て初期におけるそうした技術革新というものを行うことによってそれが創薬と結びつき、製薬企業、製薬機器企業と結びついて、エコシステムとして国境を越えてそうした仕組みができて、今日の産業構造が国際社会の中につくられていると理解しております。

 したがって、その中に、日本がどのように再びしっかりとしたそうしたアカデミアの創薬及び医療機器に関わる開発のシーズを、開発能力を高めることができるか、そして、そこに、当然リスクマネーになりますけれども、そうしたリスクマネーを投じることができるような仕組みをそこにいかに官と民が連携をしながらつくり出すことができるか、ここに私は、新たにチャレンジするところが、余地が十分にあるんだというふうに考えております。

福島委員 最後、一言だけ。

 結局すれ違いになったと思うんですけれども、ただ、私は、食料とか医療は大幅に輸入に頼って……

新谷委員長 既に時間が経過しておりますので。

福島委員 はい。

 医薬品とかいわゆる人の命に関わるものまで輸入しなければならないという国にしてはいけないと思いますので、政治の責任で制度的な問題を検討することを求めて、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

新谷委員長 次に、岬麻紀君。

岬委員 日本維新の会、岬麻紀でございます。

 大臣の所信表明を受けまして、質疑の柱、本日八つ御提示をさせていただいております。今回の質疑、初めての試みとしまして、私ども、足立理事率いる厚労チームとして連名で質問通告をさせていただいております。トップバッターを務めますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 今通常国会ですけれども、争点は、少子化対策であり、子ども・子育て支援金の在り方、是非であると考えております。

 まず、少子化、超高齢社会の急速な進展によりまして、人口の減少という歴史的な一大転換期を迎えています。国民の価値観の多様化であるとか、様々な諸問題が絡み合い、複雑化しています。そこで、人口問題の所管大臣は、まずはどなたなのか。国立社会保障・人口問題研究所の所管が厚労省ですので、人口問題は厚労省という認識でよろしいでしょうか。

武見国務大臣 厚生労働省は人口政策を確かに所管をしておりまして、当省の施設等機関である国立社会保障・人口問題研究所において、人口問題に関する調査及び研究を行っております。

 ただ、人口政策というのは、単独の役所だけで対応できるような規模のものではなくて、各省庁が共通の考え方の下で連携をして初めて成立すべき、そうした幅の広い政策分野だ、こう理解をしております。

岬委員 ありがとうございます。

 では、厚労省として、今後の日本における人口減少問題をどのように捉えていらっしゃるのか。また、何が課題かを明確にして取り組んでいかなくてはいけないと危惧しておりますが、どのようにお考えでしょうか。

武見国務大臣 これはまさに少子高齢化、両方であります。二〇二二年に我が国の人口は八十万人減少しました。今後も、百万人の大都市が毎年一つずつ消滅するようなスピードで人口減少が進みます。急速な少子高齢化、人口減少局面に直面をしていることはもう明白であります。

 こうした急速な人口減少に歯止めをかけなければ、例えば社会保障制度においてサービス提供の担い手確保の課題が生じるなど、我が国の経済社会システムの維持に様々な困難が生じる可能性がございます。

 こうした厳しい状況の中で、国民一人一人が健康で、そしていつまでも活躍をし、社会のダイナミズムが維持向上される社会を目指して政府が一丸となって取り組むべき課題、こう理解をしております。

岬委員 ありがとうございます。

 では、少子化対策にどれだけ政策資源を投じていくかという問題ですけれども、三・六兆円と言われています。将来的な人口規模であるとか、外国人の活用であるとか、さらには移民政策の是非といったような人口問題に関する政見がなければ決められないことも多いと感じています。

 そこで、少なくとも、人口問題に関して、将来的な人口規模、また目標設定等はどのようになっているんでしょうか。厚労大臣所管ということですので、見解をお聞かせいただけますでしょうか。

鹿沼政府参考人 お答えいたします。

 結婚、妊娠、出産、子育て、こういったものにつきましては個人の自由な意思決定に基づくものだというふうに考えておりまして、お尋ねのような人口数の国家目標、こういったものは定めていないところでございます。

 一方で、我が国は、先ほど大臣からも御答弁させていただきましたように、急速な少子高齢化、人口減少局面に直面しておりまして、非常に強い危機意識を持って対応していることでございまして、昨年末に閣議決定したこども未来戦略においても、急速な少子化、人口減少に歯止めをかけなければ我が国の経済社会システムを維持することは難しい、こういったことがされているところでございます。

 このため、まずは、少子化、人口減少の流れに歯止めをかけるべく、こども未来戦略の加速化プランを着実に実行していくことが重要であり、厚生労働省としてもしっかりと取り組んでいきたい、このようにも考えております。

岬委員 今、将来的な人口規模、推計は少しお話しいただきましたけれども、明確に目標設定はないということを御答弁いただきました。これはとても私としては疑問です。

 人口目標の設定をしなくていいんでしょうか。もちろん、今お話ありましたように、結婚であるとか出産については個人の問題でございますから、それを国がどうこうと口出しをすることは私も反対でございます。ですが、国として政策資源を的確に投じる上で、少子化対策の規模であるとか、また外国人労働者に関して、さらには移民の是非といった各論を判断するには、やはり日本国民全体の人口目標は必要なのではないかと思うんです。

 人口目標をつくらない、これは大臣の御判断でそうなっているのか。だとしたら、どのような理由で決めていないんでしょうか。

武見国務大臣 人口目標を具体的に策定するということは、ある意味で政策を硬直化させることにもつながります。

 人口問題というのは、将来の社会のありようというものを大きく制約していく内容になってまいります。そういう点で、今現在、我が国は、全世代型社会保障という考え方で、将来の我が国の社会の在り方というものを今つくろうとしているわけであります。そうした社会のありよう、例えば、少子高齢化というものは政策的に完全に歯止めをつくることはまずは難しいでしょうから、こうした少子高齢化というのをどの程度抑制をしながら、しかも我が国の社会がしっかりとしたダイナミズムをきちんと持って、それによって経済的にも社会的にも国民一人一人が有意義な人生を楽しく過ごすことができるような社会環境をつくる、これがやはり大きな将来の目的として求められる社会のありようになるんじゃないかと思います。

 そういう枠組みを、国民の合意をきちんとつくって、つくっていきながら、その過程で具体的にこうした人口問題に関わる政策というものが組み立てられていくので、まず最初に数字ありきという観点で人口政策を策定すると、そうした未来社会の設計の仕方というものについて制約が生まれることに対する懸念というのがあるというのが一つ、私の見解であります。

    〔委員長退席、大岡委員長代理着席〕

岬委員 ありがとうございます。

 今の御答弁ですと、目標設定しないのは、硬直化してしまう、数ありきではよろしくないという御答弁だと思いますけれども、それでは、少子化対策のエビデンスについてはどのように考えていらっしゃるんでしょうか。

武見国務大臣 目標の設定の仕方によって、それが実現できたかどうかのエビデンスの在り方というものは変わってきます。したがって、一概には、エビデンスというものはこれだというふうに言うことは、なかなか申し上げにくいところでありますけれども、ただ、例えば、少子化対策であれば出生率といったようなものが一つのエビデンスになることはあると思います。それから、結婚をされる若者の数、そしてまた、その中で、お子さんをお持ちになる希望がある、そういった方の数といったようなものも、こうした政策を組み立てていく上での重要なエビデンスにはなっていくだろうと思います。

岬委員 ありがとうございます。

 はっきり言ってしまえば、少子化対策というのはエビデンスがまだまだ整っていないのではないかと思うんです。なぜならば、世界的に見ても、こうすればこういうふうに解決ができるというものは、はっきりとした解決策、答えはどこにもないわけですよね。ですから、手探りになったり試行錯誤されていくということだと思うんですが。

 そうなるとEBPMの観点が大変重要になるかと思います。試行錯誤を繰り返しながら根拠に基づく政策立案を進めていくのは当然であると考えますが、そうなると恒久財源の確保を急ぐべきではないというふうに考えますが、その辺りはいかがでしょうか。

工藤副大臣 岬委員にお答え申し上げます。

 加速化プランの実施に当たっては、その実施状況や各種施策の効果等について検証しつつ、適切な見直しを行っていく必要があるものと考えております。

 また、少子化対策は、その効果が表れるまでに一定の時間を要することから、継続的に取り組んでいく必要があり、そのためには安定的な財源が必要であると考えています。

 少子化対策は待ったなしの瀬戸際にあるため、安定的な財源を確保しながら、加速化プランをスピード感を持って進めてまいります。

岬委員 お答えいただきましたけれども、例えば、税収の上振れもあれば、当面の国債発行においても否定することでもないと思います。急いでいるように感じるのは私だけなんでしょうか。

 例えば、もっと少なくても済むかもしれませんし、逆に、更に対策の規模が大きくなる、増額をしていかなくてはいけないかもしれません。どのようなエビデンスだというものがないのに三・六兆円と決めているのが不思議というか、なぜそのように決められるのかということを不思議に思いますが、納得のいく御答弁、もう一度お願いできますでしょうか。

鹿沼政府参考人 私、全世代型社会保障の事務局長も務めていることもございまして、こども未来戦略の策定にも携わったという立場もございますので、御答弁をさせていただきます。

 三・六兆円ありきというよりは、まさに、児童手当とかもろもろの施策について、これだけやはりやっていく必要があるのではないか、そういったことを考えていきながら、また、その施策については、経済的な負担だけではなくて、全ての子育て家庭に寄り添う支援ですとか、また、共働き、共育て、そういったもろもろのことについてしっかりやっていかなきゃいけない、こういった認識の下に施策を積み上げ、そういった金額が三・六という数字になって、それをいかに財源として確保するかということをこども家庭庁において御議論されたというふうに思っております。

岬委員 この件に関しては、二〇二九年以降は見直しになると考えてよろしいでしょうか。

鹿沼政府参考人 こども未来戦略の中におきまして、まず令和十年度、二〇二八年まで、この加速化プランに基づいてしっかりと対策を行い、その中で加速化プランの内容についてPDCAを回していって、そして検証を行っていきながら、それ以降については、またあらゆる選択肢を考えて倍増を目指すというようなことが書かれているものだというふうに承知をしております。

    〔大岡委員長代理退席、委員長着席〕

岬委員 ありがとうございます。

 そうだとするならば、恒久財源の制度化は、二〇二九年に向けて準備を進めながら議論を重ねていくということでもよかったのではないかと思いますが、その辺りはいかがでしょうか。もう一度お願いします。

鹿沼政府参考人 こういった子供、子育て支援、少子化対策については、非常に待ったなしの課題だというふうに思っております。時間がたてばたつほど、どんどん加速度的にそういった人口減少の流れは進んでいってしまうというふうに思っておりますので、まず、やはり財源をしっかり確保し、対策を一刻でも早く行っていかなければいけないという認識の下に対策を講じていくということと、あわせて、そういったことのそれぞれ効果検証なども行いながら、さらに、どういった施策を行っていくのかということを進めていくというものだと承知しております。

岬委員 ありがとうございます。

 人口の目標もなかったけれども、エビデンスもないけれども、三・六兆円だけは決まっているということなんでしょうか。こども未来戦略、子供、子育て加速化プランといった、いわゆる少子化対策の財源として社会保険料を徴収する合理的な理由がどうしても理解ができないのですが、少子化対策の財源として社会保険料を徴収することが少子化対策の趣旨にまず合っているんでしょうか。反するのではないかとも思われますが、こども家庭庁の答弁を求めます。

工藤副大臣 お答え申し上げます。

 社会保険制度は、社会連帯の理念を基盤として支え合う仕組みでありまして、子供支援金制度も、こうした連帯によって、子供や子育て世帯を少子化対策で受益がある全世代、全経済主体で支える仕組みであります。

 その中で医療保険者に医療保険料と併せて徴収していただくこととしたのは、医療保険制度が他の社会保険制度に比べ賦課対象者が広いこと、出産に関する給付など幅広い給付体系となっており、後期高齢者支援金など世代を超えた支え合いの仕組みが組まれていること、さらに、急速な少子化、人口減少に歯止めをかけることが医療保険制度の持続可能性を高めること等の理由からであります。

岬委員 今、工藤副大臣から御答弁いただきましたけれども、社会保険料がまず所得をベースにした負担制度であるということは、現役世代の負担が重くなりがちではないかという考え方があります。厚労省は、この考え方、一般論としてどのようにお考えなのか、認めていらっしゃるのか、どうなんでしょうか。

武見国務大臣 厚労省の考え方としては、少子高齢化対策の中で、全世代型の社会保障という考え方を取っております。そもそもがそれを実現する仕組みとして社会保険の仕組みがあって、その骨格が医療保険という仕組みになります。

 その医療保険というものは最も国民に幅広く保険料の徴収などもすることができる仕組みになってきておりますので、例えば、二〇〇〇年以降、急速に高齢者人口が増えることが予測されておりましたので、そのために、この仕組みを使って介護保険制度というものをつくりました。これによって、確実に高齢者対応がより大きく改善されるようになりました。

 加えて、二〇〇八年に、後期高齢者医療制度という高齢者対策の仕組みをそこに組み込むことによって、更に高齢者に関わる医療というものを安定的に提供できる仕組みをつくり、そこに公費を五〇%組み込むという形も整えてきたわけです。

 それに加えて、今度は少子化対策というものが非常に重要だという認識が出てきましたので、出産育児支援金というものを設けて、少子化対策としての仕組みをこの制度の中に盛り込みました。

 その上で、今回、改めて、こうした少子化対策を充実するための支援金として、この仕組みの中に組み込んで、少子化対策を充実させるという考え方で、今日の保険料を通じた徴収の仕組みというものが支援金にも適用されている。

 これによって、全世代型の社会保障という観点で、バランスよく各世代で負担を、特に応能負担という観点から再構築していくことによって、持続可能な形でこの目標を達成できる、こういう考え方で今進めているところであります。

岬委員 御答弁ありがとうございます。

 子育て世帯を全国民、みんなで支えていこう、そういうことなんだと思いますけれども、所得に応じた形の負担で拠出すること等を通じて公平に支え合う連帯の仕組みということだと理解します。これは何となくふわっとまだしているのではないでしょうか。具体性に乏しくて、ちょっと分かりづらい。抽象的過ぎるので、私としてはまだぴんときていないんですね。ましてや保険料です。保険料でそれを行うんでしょうか、税ではなくてでしょうかという、ちょっと疑問もあります。

 もっと負担構造をやはり明確にして、選択肢を正面からもっと丁寧に議論していく必要性があると考えますが、その辺りはいかがでしょうか。

武見国務大臣 基本的に、先ほども申し上げたように、医療保険という仕組みの中で、それが国民に定着をし、給付と負担というものがしっかりとその中で形として社会につくり出されました。これを踏まえて、当初は高齢化対策として新たな制度を設けるときにこの仕組みが活用されるようになり、なおかつ、少子化対策というのがさらに重要だという認識が広く持たれることによって、同じくこの仕組みの中に、高齢化対策に加えて少子化対策という観点での仕組みが組み込まれるようになった。その最初が出産育児支援金という形になっていて、その次が今回の少子化対策の支援金という形になるわけでありますから、その経緯を考える上においては、誠に、一つの政策的には一貫性を持った実際の取組だと私には思えます。

岬委員 大臣のおっしゃるとおりで、そもそも、保険の原理というものは給付と負担という対応関係が明確な分野にふさわしいと思います。社会保険料で負担する分野を拡大させ過ぎていないだろうか、境目が侵食されているのではないかという懸念を持っています。つまり、保険と税の線引き、しっかりと明確にした方がよいと考えます。この線引きが曖昧となった結果が子ども・子育て支援金だというふうにならないように申し上げて……

新谷委員長 申合せの時間が経過しております。

岬委員 質問を終了いたします。ありがとうございました。

新谷委員長 次に、遠藤良太君。

遠藤(良)委員 日本維新の会の遠藤良太でございます。

 先ほどの岬麻紀さんに引き続いて質問していきたいんですけれども、まず確認したいんですが、今、政府としては、現役世代の可処分所得を増やしていくという、この方向性については同じ意見なのか、まずお伺いしたいと思います。

武見国務大臣 現役世代の負担というものについては、できる限りこれは抑制をしつつ、実際に、高齢化対策、少子化対策というものを、財源をバランスよく確保していくというのが基本的な考え方であります。それと、あと、そのときに応能負担という考え方がそこの骨格に入ってくることも申し上げておきたいと思います。

遠藤(良)委員 ありがとうございます。

 加速化プランの中では、若い世代の所得を増やすことを基本理念の第一に掲げるということを書いているんですけれども、その中で、先ほどからありましたけれども、税と社会保障の、これが、社会保障がどんどんいろいろな分野に支援金という形で入っていっている中で、実際、保険と税の線引き、どこまでこれをやっていくのかということが非常に重要だと思います。

 その中で、後期高齢者医療保険制度のところでお尋ねしていきたいんですけれども、当時、二〇〇八年四月、平成二十年にスタートした制度ですけれども、この中で、少子化が進む中で保険原理が維持できなくなってきたんだというふうに思うんですけれども、その中で、先ほど大臣も紹介いただきましたけれども、公費が二分の一入っている。実際、元々は現役世代とは異なる保険原理を適用する考えがあったんじゃないかなというふうに思うんですけれども、この辺り、いかがでしょうか。

武見国務大臣 従来の医療保険制度に加えて後期高齢者医療制度を構築していくというときに、様々な議論が行われました。しかし、その中で、公費負担五〇%、それから他の保険者からの協力金四〇%、残り一割は自己負担、こういう形の構成の中で、実際に医療保険と組み合わせた形で、しかも、特定の疾患にかかる確率の高い高齢者人口層に対しては、医療費も着実に増えていくことが想定されておりましたから、それに堪え得るような形でのバランスで、こうした仕組みが当初、二〇〇八年につくられたというふうに理解をしております。

遠藤(良)委員 この中で、民主党政権のときに後期高齢者向けの診療報酬体系が廃止されたというところなんですけれども、その中で、実際、後期高齢者向けの診療報酬体系については、政策論であったりとか政策の選択肢としては今でもあり得るのかどうか、確認したいと思います。

武見国務大臣 診療報酬の体系については、後期高齢者の制度については、他の医療保険制度とは異なる診療報酬の体系をつくろうとし、一時実践した経緯はございました。しかし、それは結果としてはうまくいかなかったものでありますから、これが実際、医療保険の診療報酬に再び統一をされた、こういう経緯であったかと理解しております。

遠藤(良)委員 結果としてうまくいかなかったということなんですけれども、今現在は、後期高齢者医療制度というのは七十五歳以上が対象ということですけれども、この線引きについて、七十五歳というこの線引きについては意義があるようにも思うんですけれども、この辺りはいかがでしょうか。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 まず、七十五歳という形で独立型を設けられたちょっと経緯だけを申し上げますと、後期高齢者医療制度ができる前は、老人保健制度という仕組みで長年やってまいりました。ただ、この仕組みが、現役世代と高齢者の費用負担関係とか、それから財政責任を誰が負うかということについて不分明だ、こういう批判がございまして、その後、四つの案が長年にわたって議論されました。

 四つの案は、いずれも社会保険方式という形でやりながら、それをどういう形でやるかについてけんけんがくがくの議論があり、最終的に、七十五歳という形の線引きで導入されたと思います。そういう意味で申し上げますと、まず、保険料の負担の在り方を七十五で線を引くということについて一つの整理がなされたと思います。

 一方、先ほど先生が御質問されました、診療報酬体系として、じゃ、七十五歳で線を引くことについてどうかということで、一度実施いたしましたけれども、やはりそういう線引きについて国民の方々の御理解をなかなか得にくかった、それから、実際としても、その診療報酬点数については余り広がらなかったという経緯がございました。

 したがいまして、現在では、そういう具体的な年齢で線を引くのではなくて、あくまでも疾病の態様、その状況に応じたふさわしい診療報酬は何かということで今設けているところでございます。

 したがいまして、ちょっと申し上げますと、財政の仕組みとして七十五歳の線引きというのは考えられますけれども、報酬体系としてどうするかについてはちょっと別物だというふうに考えてございます。

遠藤(良)委員 我々、日本維新の会として提言書を作ったんです。医療維新という政策提言書を作りました。その中で、後期高齢者の公費負担のところです。ここに関しては税財源化を提案しているんです。つまり、今までは社会保険の枠組みの中で支えてきたんですけれども、一方で、これは税で支えるべきだというふうに税財源化を提案しているんです。

 先ほど、冒頭お話ししたように、現役世代の負担軽減を含めて、加速化プランも含めて、ここに書いていますけれども、現役世代の負担を軽減していく、現役世代の可処分所得を増やしていくということが今の少子化対策にもつながっていくというふうに思うんですが、その中で、後期高齢者制度の税財源化も選択肢の一つだと思いますけれども、公費を二分の一にとどめておかなければならない理由を教えていただきたいと思います。

武見国務大臣 後期高齢者医療制度では、給付と負担の見合いで後期高齢者にも必要な保険料を負担していただくことを基本としつつ、世代間で支え合う観点から、公費負担に加えて、現役世代による支援金による拠出を行っております。おおよそ四割で、七・二兆円ほどになります。

 御提案のように、後期高齢者医療制度を税財源化するということになりますと、必要となる巨額の税財源を、どのような税項目に着目して国民の理解を得て、それを徴収することができるか、国民の理解をどのように求めていくのかということが一つ極めて大きな課題になってくるだろうと思います。

 こうした見通しがない限りにおいて、こうした公費負担というものに、私は、現状の形での頼り方というものがやはり必要になってくる、こう考えております。

遠藤(良)委員 税財源化の見通しがないということですけれども、この中で、税の負担の在り方が、例えば二分の一、一方で、三分の一であったりとか三分の二であったりとか、そういう考え方であってもよかったと思いますけれども、一方で、公費負担が大きいと保険原理に反していくようにも思うんですけれども、保険原理の維持とこの関係性について、どういうふうにあるのか、お尋ねしたいと思います。

武見国務大臣 やはり大きな枠組みの中では、保険の原理の中で、実際に各世代ごとの応能負担を組み込んで後期高齢者医療制度というものも運営されていると理解をしております。

 したがって、一割負担というものにはなっておりますけれども、一定の所得のある方々については二割負担をお願いしたり三割負担をお願いしたり、それによって、高齢者の中でも応能負担で御負担をいただくという仕組みもこの中でつくっていることになります。

 これによって、若い世代に対する負担というものを実際に軽減させていくという仕組みが後期高齢者医療制度の中にもあるわけでございますから、大きく、こうした保険という枠組みの中での制度の位置づけ、こう理解しております。

遠藤(良)委員 保険の中の枠組みでということなんですけれども、例えば、先ほどから税財源化というところのお話をしていますけれども、子ども・子育て支援金は、実際は社会保険料から転用したりしていると思います。要するに、目的外使用をして、効果が不明瞭な子育て支援とかということに回していると思うんですけれども、要するに、税で投入している過去の支援金の中でも、社会保険料の中から支援金というのは出していっていると思いますけれども、一方で、子ども・子育て支援金制度、これは税であると思いますけれども、何で子ども・子育て支援金制度は税の投入を考えたのか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 支援金制度につきましては、支援金が児童手当など対象者の広い給付に充てられる一方、危機的状況にある我が国の少子化傾向を反転させることが我が国の経済社会システムや地域社会を維持することにつながるほか、国民皆保険制度の持続可能性を高めることから、全世代、全経済主体で子供や子育て世帯を支える仕組みとして、保険料として位置づけておるというものでございます。

遠藤(良)委員 失礼しました。児童手当が税だと思います。

 過去に児童手当が税で投入されて、昭和四十七年にスタートした児童手当、これは税で投入されたと思いますけれども、一方で、今回の、先ほどもお話しいただきました子ども・子育て支援金であったりとか後期高齢者医療制度、これも社会保険でカバーしてきていると思います。

 これは何で税でやらなかったのかというのをお尋ねしたいと思います。

伊原政府参考人 医療保険制度で、後期高齢者の支援金とかあるいは出産育児支援金というものについても賄っております。

 ちょっとそこの考え方を御説明させていただきますと、まず、後期高齢者医療制度というのは、相互扶助の考え方を基盤としまして、給付と負担の見合いで高齢者自身に必要な保険料を御負担いただきながら、世代間で支え合うことから、現役世代にも出していただくべきだ、それから、医療保険制度全体で見ると、幼児期から高齢期まで生涯を通じて給付と負担の対応関係が明確である、そういう意味で、医療保険制度の枠組みの中でやらせていただいております。

 さらには、子供の出産育児一時金につきましたり、あるいは子供の医療費につきましても、従前は医療保険全体でカバーしておりましたが、後期高齢者医療制度ができて以降は、後期高齢者医療制度は拠出しないという仕組みがございました。他方、やはりこれからは世代全体で子育てのことを考えていくべきだという発想の中で、昨年の健康保険法の改正で、そうした子供の費用についても医療保険の枠組みの中で出そう、こういう形で出てきたものでございます。

 したがいまして、後期高齢者支援金あるいは子供の費用につきましても、全世代でその負担能力に応じて出していくことがこれにかなうという発想でやっているところでございます。

遠藤(良)委員 全世代でということなんですけれども、後期高齢者医療制度の、先ほどから、二分の一は公費であるということで、これは以前、平成十九年から二分の一になったということで、七十五歳以上の割合が増加してきたことで二分の一というふうに、要するに、実態に即して公費を上げたというふうに判断したのではないかなというふうに思うんです。その辺り、いかがでしょうか。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 まず、後期高齢者医療制度ができる前の老人保健制度も、長らく公費負担割合は三分の一という形でやってまいりましたが、平成十四年の改正のときに、当時、対象年齢を七十歳から七十五歳に引き上げるという形にしまして、より重点化をするということの議論の中で、公費五割という見直しを行ったというふうに承知してございます。

遠藤(良)委員 その中で、昨年十一月二十四日、予算委員会の我が党の足立さんの質問の中で、岸田総理の答弁の中で、社会保障と税の一体改革は継続的な取組であるというふうに答弁があった。

 今後、七十五歳以上の割合というのはますます増えていく中で、実際、高齢者医療保険への税財源の投入拡大については引き続き検討課題があると思いますけれども、その辺りのお考えをお尋ねしたいと思います。

武見国務大臣 御指摘の税財源の投入に関しましては、必要となる巨額の税財源というものについて、どのような税目に着目して国民負担を求めるのか、こうしたことを検討しながら、後期高齢者における公費負担の在り方というものを検討していくことになるんだろうというふうに思います。

遠藤(良)委員 先ほど、検討しながらということでありますので、検討していくということだと思いますが、実際、潜在的にこの選択肢があり得るのかどうかをお尋ねしたいと思います。

武見国務大臣 選択肢としては当然にあります。ただ、現状においては、応能負担という考え方の中で、一割負担を原則としつつも、所得の高い方々については二割負担、三割負担という形をお願いすることによって、後期高齢者医療制度としての役割、そして全世代型社会保障制度全体としての持続可能性の強化を図る、こういう考え方でやっております。

 しかし、将来にわたって、実際にそれだけで対応できるかどうかという問題が生じた場合には、新たな選択肢が当然検討されることになるだろうと思います。

遠藤(良)委員 新たな選択肢ということなんですけれども、冒頭お話ししたように、現役世代の可処分所得を増やす、これはやはり、税ではなくて、社会保障の中で、社会保険の中で、今回も後期高齢者も増やしていっていると思いますけれども、一方で、この四割、後期高齢者の中の四割が現役世代が負担している。これがやはり、今の現役世代の給料が上がっていかない中で、社会保険料、これもまた負担していかないといけないであったりとか、今国会でもいろいろ議論がありますけれども、五百円が千円に、負担していかないといけない、子育て支援のためにこういう形で社会保険料がまた増えていくのかということ、これはすごく、今の現役世代の方は本当に注目されていますし、やはり社会保険が増えていくことというのは、現役世代の可処分所得を圧迫してもいきますし、要は、子供を育てようであったりとか、子供を産み育てるという環境になかなかなっていかないと思います。

 なので、後期高齢者制度の中の、この税財源化というのは本当に重要なテーマだと思いますし、一番の目的は、やはり現役世代の可処分所得を増やして、経済を回していく。ここにも書いていますけれども、賃上げをしていくということを書いています。要は、社会保障改革の徹底をして賃上げをしていく、これが加速化プランの主な目的であるんだということになっていますけれども、賃上げしていくということは、つまり、消費が増えていくということを目指していると思いますけれども、その中で、別の財源として税を充てていくというのは普通の理屈になってくると思いますけれども、その辺りはいかがお考えでしょうか。

武見国務大臣 賃上げ自体は様々な目的がありますが、全体としては、我が国の経済のダイナミズムをしっかりと維持していくための好循環を支えるための一つの重要な手段として、賃上げというものが大変優先順位の高い課題として位置づけられ、今実行されようとしております。

 この賃上げが現実に進むと、保険料というものが、実際、料率で換算されますから、結果的には、賃上げがされることによって保険料の財源も自然に増えていくという格好になります。これによって、実際に社会保障における財源というものも着実に増加していく。これについても、常に配慮をしながら、実際に、私どもとしては、給付と負担の在り方というものを考えていくということになります。

遠藤(良)委員 是非、政府としても、税と社会保障の一体改革というのが今の現役世代の可処分所得を増やしていく一番の手だてだと思いますので、是非ともその辺りを、しっかりと議論をまた今後進めていきたいと思います。

 質問を終わります。

新谷委員長 次に、一谷勇一郎君。

一谷委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の一谷勇一郎です。どうぞよろしくお願いをいたします。

 今回の少子化対策、子供支援金というのは、子供支援金の額が幾らというような議論も大事ですが、この議論を通して、やはり、国民皆保険の在り方であるとか、少子化に対しての世代間のアイデンティティーを変えていく、大きな環境変化を生む一歩になるのではないかなというふうに私は捉えています。そういった捉え方をしながら、今日は質問をさせていただきたいと思います。

 武見大臣が参議院の方へ行かれたので、政府参考人の方で結構ですので、お答えをいただけたらと思います。

 先ほど、第一問目の更問いになりますけれども、人口政策、これは各省庁が連携をしてやっていかなければならないとおっしゃいました。厚労だけでできるものではないということです。

 ただ、人口の少子化というのは一九七四年からもう始まっているように思うんですが、約五十年間たって少子化という問題は解決がしていっていませんが、各省庁の連携というのがやはりうまくいかなかったのではないかというふうに、今、武見大臣のお話を聞きながら思ったんですが、その辺りのことを、お答えがもしできるのであれば、参考人の方で結構ですので、お願いをいたします。

鹿沼政府参考人 お答えいたします。

 既存の施策につきまして多分いろいろな御意見があろうかと思っております。今まで子供の関係につきましては、エンゼルプランですとか様々な対策を行ってきたことは事実でございます。当然ながら、関係省庁とも連携をしながらやってきたところはあろうかと思います。

 もう一方で、やはり、高齢化という中でそれをどういうふうにしていくかという問題が社会保障のもう一方の大きな問題として突きつけられており、そういったことにかなり注力していたことと、あと、特に、少子化問題の中では待機児童の問題が非常に大きな問題でございました。保育園、保育所の受入れ枠の拡大、こういったところにかなり力を注いできたというところもございます。

 そういった中で、いわゆるそれ以外の一般の御家庭の子育て家庭に対しての支援が必ずしも十分でなかったとか、また、女性の働き方ということで、仕事と育児の両立ということで育児休業制度については充実をしっかりしてきたわけではございますが、一方で、男性の育休というところの視点が十分だったのかどうか、要するに、女性が社会に進出する中において、女性の方が仕事と子育て、育休は取るにしても仕事と子育てを両方の御負担がかかっていたというような問題があるのではないか、こういった御指摘もいただいているところでございます。

 今回のこども未来戦略につきましては、そういった点も踏まえ、また、待機児童につきましても、保育所の受入れ枠の拡大と、もう一方で、出生児数自体がちょっと減っているということもあるんですが、大分地域によっては改善されている状況もございますので、そういった中で、全ての子育て家庭に、また、共働き、共育て、そういったところにも力を注ぎながらまとめているというふうなものだというふうに理解をしております。

一谷委員 今答弁いただきましたとおり、待機児童の問題、確かに、私も第二次ベビーブームですので大変ボリュームが多くて、そういった政策をするのに大変時間がかかったというふうにも思います。それだけ一つの問題を解決するのにまた違う問題が出てきて、それを解決するのにやはり時間がかかるということですので、少子化の問題というのはかなりスピードを上げて大胆にやっていかなければならないというふうに今思いました。

 また、予算委員会でも武見大臣に質問をさせていただいて、これからはダブルケアの問題も出てきて、私も子育てをしながら親の介護も始まるという状況になってくる中で、やはり介護と子育てをどう両立させていくか、これはこども家庭庁と厚労省の連携が更に必要になってくると思いますので、ここは武見大臣からもしっかりやっていくんだということを予算委員会でいただきましたけれども、やはりスピード感も大事だと思いますので、是非しっかり取り組んでいただきたいと思いますし、我が党もそれを応援していきたいというふうに思っております。

 次は、先ほど、目標人口を決めると政策が硬直化するということを武見大臣がおっしゃったんですが、二〇一五年には、戦後初めて政府が公式に掲げた出生率目標一・八、これは希望出生率ですけれども、この出生率を、目標を決めたということは、ある一定、やはり、人口をこれぐらい維持していこう、人口はこれぐらい要るんじゃないかということを決めたということになるのではないかと思うんですが、この辺り、武見大臣がいらっしゃいませんので、政府参考人の方でお答えできたらお願いいたします。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の希望出生率一・八ということでございますけれども、政府といたしましては、あくまで結婚、妊娠、出産、子育ては個人の自由な意思決定に基づくものであり、個人の決定に対し特定の価値観を押しつけたり、プレッシャーを与えたりしてはならない、こういう考えでずっと来てございます。若い世代の結婚、妊娠、出産、子育ての希望をかなえること、これが少子化対策における基本的な方向というふうに考えてございまして、その当時、希望出生率、計算すると一・八になったということでございますけれども、あくまで若い世代の希望に応えることが政府としての考え方だということでございます。

一谷委員 今、希望に応えるということで、この一・八、これは間違っていたらおっしゃっていただきたいんですが、一・八という数字は、夫婦が希望するのが二人以上で、少し離婚もあるんじゃないかというようなことで一・八にしましたみたいなことが書いてありましたが、これはまさに、裏づけが全くなく、エビデンスなくこの希望出生率を決めていったというふうな解釈でいいんでしょうか。

 この目標に対しての政府の考え、達成していっているのか、いっていないのか。いや、これはただ決めただけで、それに向かって政策を打ち立てていくとかいうものではなくて、ただちょっと目標としてふんわり決めたものだということでいいのかどうかということを追加で御質問させていただきます。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 数字といいますか、その一・八の実現というよりかは、繰り返しで恐縮でございますけれども、あくまで若い世代の希望に応える、かなえるということを政府として取り組んでいくということでございます。

一谷委員 若い方が子供を持ちたいという中で、やはり所得がしっかりあるかということが大事になってくると思うんです。

 そうなってくると、これは七番目の問題をさせていただきます。

 加速化プランでは、社会保障経費の伸びを抑制し、財政を生み出すこととなっている。改革しない場合の伸び、改革による抑制、今般の報酬改定の位置づけはどうですかという質問をさせていただくんですが、私が今持ってきた資料で、これは日本経済新聞なんですね。二四年一月二十二日のです。ちょっと読ませていただきます。

 三菱総合研究所が政府の社会保障の改革工程案などを踏まえ計算した。一八年度時点の保険料や公費負担を基にその後の経済成長を踏まえると、四〇年の医療・介護給付費は最大で二三年の六割増しとなる八十九兆円まで膨らむということになっています。とりわけ若い世代にしわ寄せが行く。これは、医療費の財源は五割が保険料、四割弱が税金、一割を患者の窓口負担でということですので、収入が多いほど支払う保険料が増えるということは、現役世代の負担が重くなります。それに対して、高齢者の方の窓口負担は一割から二割に対して、現役世代は三割だということです。そして、政府は一八年に発表した医療、介護、年金などの社会保障の将来見通しで、二五年度の給付費はGDP比で二一・八%の百四十兆円程度と見ていた。しかし、二三年度の予算ベースで既に二三・五%に達しており、推計を上回る負担増になっているということになっていますと。

 これを踏まえると、私も予算委員会で質問をさせていただきましたけれども、なかなか、医療の歳出改革というのは、高齢者の数の伸びよりも多いのではないかというふうに思います。私が調べると、令和二年度だけ抑制をされていますが、その内容は、コロナ禍の中で手洗い、マスクをしっかりしたので呼吸器の疾患が少なかった、受診が少なかったというデータが出ていましたけれども、いかにして、この問い七の問題、これは改革をしない場合の伸び、改革による抑制ということがありますが、しなかった場合と、したとしても今増えていっている状況、これをどのように解決をするかということをどうお考えか、政府参考人の方にお答えを求めます。

鹿沼政府参考人 社会保障につきましては、骨太の方針の中で、高齢化の伸びの範囲に収めるということで、社会保障費は、自然増で増えてくる部分を、毎年度毎年度の予算編成過程の中で様々な改革をしながら抑制に努めてきたところでございます。

 また、今回、改革工程、こども未来戦略等の流れの中で改革工程というものをまとめさせていただきましたが、これもそもそもを言えば、これから少子高齢化、人口減少社会の中で社会保障の給付と負担も非常に厳しい状況になる、またマンパワーの問題も非常に深刻な問題になる、こうした中において社会保障制度を持続可能なものとしていくためにはやはりしっかりとした改革をしていく必要があるというような認識で取り上げているところでございます。

 中には、介護ロボットですとか医療DXとか、そういういわゆる生産性の向上というものを盛り込んでいますし、また、高齢者の健康増進、活躍といったものも入っております。またあわせて、先ほど来大臣からも御答弁いただきましたが、全世代の支え合い、能力に応じた支え合いという観点からの見直しも入っております。

 こういったものに基づいて、しっかりと、現役世代の負担のことも考慮しながら、対応していきたいというふうに思っているところでございます。

一谷委員 今答弁いただきました介護のロボット化とかDXというふうにありますけれども、それで歳出改革のこの伸びを私は抑えられる規模にはいかないのではないかというふうに思いますし、そもそも、私は、提供体制を絞っていかないといけないんじゃないかということで、この委員会でも再三、介護に関しては、要介護一、二の方を地域支援事業になぜしないんだという話をしましたが、結局二七年以降に考えるという答えの中で、やはり、提供体制を絞っていくとか、私たちは後期高齢の費用を福祉化したらどうだということを申していますが、そういった大胆なことが必要ではないかと思います。

 もう一つ、今の質問の更に質問をさせていただくと、二三年度と二四年度と歳出改革の内容を見てみますと、〇・三三兆円程度改革されたということですが、これはほとんど薬価改定だけではないかというふうに思うんですが、大きなところはですね。これで三年で一兆円を生むということは、薬価改定をずっと続けていくというふうに私は取るんですが、このことに対して政府の考えを述べていただけたらありがたいと思います。

鹿沼政府参考人 お答えいたします。

 先ほど来お話しした医療DXとか介護ロボットだけというつもりはもちろんございませんで、改革工程の中には、かかりつけ医の問題も含めて、地域医療構想の問題も含め、医療提供体制の改革、効率化ですとか、そういった様々なことが盛り込まれているところだというふうに承知しております。

 また、今、薬価改定、二〇二三、二〇二四年度の薬価改定が大きかったのではないかという御指摘をいただきました。確かに薬価改定の部分がかなり占めていることも事実ではございますが、また、前期財政調整における報酬調整とか後期高齢者の保険料負担の見直しとか様々な改革もしてきたところでございますし、また、今後につきましても、先ほど来言っておりますような、薬価改定だけではなくて、提供体制の問題も含めた効率化の問題、様々なことについて取り組んでいきたいというふうに思っているところでございます。

一谷委員 ここは本当に丁寧に議論をしていかないと、薬価は全世代だと思いますが、歳出改革でシニアの、高齢者の方の医療が、高齢者世代が受けにくくなっているというふうに思って、なぜ子育てのところに金を回すんだというふうな分断も生まないようなことが必要であって、これは私も、現場にいながら、シニアの方から、子育てのために頑張ってくれと言われる方と、何で子育てのことばかりを言うんだと言われることがあって、非常に政府も苦しいところだったと思いますが、これは我々も力を合わせてやっていかないといけないというふうに思います。

 そうしたら、四番目の質問の更に問いをさせていただきたいんですが、まず、後期高齢医療が七十五歳からになったというところに対しては、説明がちょっと、しっかり、不十分ではないかなというふうに思うんですね。あと、七十五歳の後期高齢に関しては、老化ということが問題になってくるのではないかと。医療がどこまで効果が出てくるのかというところもありまして、我々は本当にこの後期高齢医療の福祉化をすればいいのではないかというふうに考えております。

 少し文書を読ませていただきますと、我々が考えていることですが、現役世代から後期高齢者医療制度への支援金を廃止し、全面税財源化することにより現役世代の保険料負担を大幅に軽減するとともに、後期高齢者向け診療報酬体系の再構築、後期高齢者の心身の特性を踏まえた診療報酬体系導入を行い、民主党政権下で廃止されたまま現在に至っている、後期高齢者の生活を重視し、その尊厳に配慮した後期高齢者向け診療報酬体系の再構築に私たちはチャレンジをしたいと思っています。

 これは、大事なのは、生活を重視して尊厳を持っていくということが重要ではないかというふうに思います。やはり、終末期医療一つ見ても、非常に財源がかかりながらも、一体誰が幸せな最終ステージを迎えているんだということもあると思いますし、これを政府に問うと、まだまだ民意が、そういった終末期医療の意識が高まっていません、リビングウィルですか、そういったことに対して二割ぐらいしか意識を持っていないということですけれども、これは私は、国民が意識を高めていく一つの引き金は我々が政策を打ち出していくことではないかというふうに思いますし、今の後期高齢の医療を見ていますと、やはり慢性疾患が多い、その慢性疾患の医療費がかなりかさんでいることも踏まえて、後期高齢の医療の診療報酬体系というのは、もう一度聞くことになりますが、改めてどのように考えていかれているのかというのを、政府の答弁をお願いいたします。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 先ほどもちょっと答弁させていただきましたけれども、後期高齢者医療制度を導入した際に、まさに七十五歳以上の方を対象とした別体系の診療報酬、これを導入しましたが、国民の方々の理解を得られなかった、それが普及しなかったということから、対象年齢を全年齢に拡大したという経緯がございます。

 先生御指摘のように、後期高齢者の方々を中心に、心身の状態というのは当然、急性期医療だけじゃなくて、要介護の方も多いですから、そうした高齢期における医療そして介護との連携みたいなものをセットで考えられなきゃいけない、そう考えておりまして、先ほど全年齢に拡大したと申し上げましたけれども、まさにそうした後期高齢者の方をある程度念頭に置いた診療報酬、これは現行制度の中に持ち込んでおります。

 ただ、申し上げたかったことは、七十五歳で線を引いて、七十五歳以上の方にはこれで、七十四歳の方にはこれでという形よりは、むしろそれぞれの患者さんの状態に合った形で、その症状に合わせた診療報酬体系がふさわしいということで今導入しているところでございます。

一谷委員 まさに、少子化そして支援金を含めて、やはり応能負担、真の応能負担をどうやってつくっていくかということが重要だと思いますし、本当に幸せな最終ステージを高齢者の方が迎えられれば、分断を生むことなく、子供たちへの手当、支援金、これは幾ら出しても問題がないというようなアイデンティティーの変化を生んでいく大きなチャンスだというふうに私は捉えていますので、これは是非、私たちは足立リーダーの下で質疑をばんばん打っていきますが、全政党、政党間を超えて、社会保障の持続も考えて議論を深めさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 時間になりましたので、私の質疑を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

新谷委員長 午後零時十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時十分開議

新谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。足立康史君。

足立委員 維新の会の足立康史でございます。

 今日は、先ほどからあったように、維新の会、四名のバッターが今日立ちましたが、一貫したテーマでやらせていただくということでございます。私が言い出しっぺで、こうやって一貫してやっているんですが、一問だけ、ちょっと筋からそれる話を一点だけさせていただきます。

 四月から、障害者総合支援法の例えば一時的な併用とかそういうことが、大きく世界が前進をするというか、ルールが変わっていきます。そのときに、再三いろいろな政党からも議論があって、私もずっと厚労省にお願いというか、むしろ筋論としてやるべきだと言ってきたことが、いわゆる一般就労と就労支援サービスの併用について。特に精神障害をお持ちの方々は、完全に一般就労に移行するのがもちろん理想なんだけれども、それを短時間併用する。例えば、午前中二時間は障害福祉サービスを利用する、午後の二時間は一般就労をする、あるいは、自ら、個人事業主、フリーランスとして働く、そんなことが恒常的にできるべきだということをずっと訴えてきました。

 まだ関連のQアンドAは公表はされていないんですが、どうも、私たちが申し上げてきた方向で出口ができつつあるやに仄聞をしています。今日お答えいただける範囲内で、部長からで結構ですから御紹介をいただきたいと思います。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 現行の障害者総合支援法におきましては、就労系の福祉サービスは、通常の事業所に雇用されることが困難な方に対して提供されるものでございますが、今回の改正に伴いまして、四月より、通常の事業所に雇用されることが困難な方以外に、一般就労中の障害者であっても、企業等で働き始めた時点で週十時間以上から勤務時間を段階的に増やしていく場合などに、就労系の福祉サービスを一時的に利用できることが法律上位置づけられたところでございます。

 これに伴いまして、通常の事業所に雇用されることが困難な方につきましても市町村が認めて給付が行われる場合があるわけでございますが、これにつきまして、企業等で働く所定労働時間が週十時間未満であっても、市町村により通常の事業所に雇用されることが困難であると認められた場合は、今般の法改正後でも、一般就労と就労系福祉サービスの併用ができる旨を、経緯等々を含めてQアンドAで市町村に、施行までの間、今月中を目途にお示しをしたいというふうに考えております。

 また、この中におきまして、足立先生から御指摘を受けておりました、フリーランスや個人事業主といった雇用以外の形態で就労している障害者についても、同様に、通常の事業所に雇用されることが困難な障害者と認められて、当該利用者が日中活動サービスを受ける必要があると市町村が認めた場合には、支給決定を行うことができるという点についても、このQアンドAの中にお示しをしたいというふうに考えているところでございます。

足立委員 ありがとうございます。大変大事な見直しが行われると。魂は細部に宿るといいますが、法改正も大事ですが、運用に当たって、まさに新しい考え方で制度が整備されていくことは、現場にむちゃくちゃ大きな波及があります。だから、部長を始め厚労省の皆様のお取組に敬意と感謝を申し上げます。

 実は、平成十九年のQアンドAでは、すごいネガティブに書いてあったんです。今部長がおっしゃったようなことについて、サービスを利用しないことが想定されているとか、要は、併用しないことを想定しているんだ、でも、こういう場合にはぎりぎり併用しても差し支えないと書いた上で、それでも精査して抑制的にやりなさいということで、極めてネガティブなQアンドAがありました。それを、今般、今部長から御紹介をいただいたような形で、むしろ国として方向づけをしていただいたので、これからは、今までは大阪市と京都市でやっていることが違うとかいうことがありましたが、これが、全国である程度平仄を合わせながら障害福祉が前進をしていくことを期待をいたしたいと思います。

 今日の本題に入っていきたいと思いますが、今日、維新の委員の皆様から少子化対策の話を議論させていただいた。これはまさに今国会の最大のテーマですけれども、私たちはやはりおかしいと思うんですね。

 予算委員会でもいろいろな議論をされましたけれども、何か、政府の、負担が増えないという言い方はおかしいんじゃないかとかですね。だって、それは政府の言い方だから仕方ないよね。だから、それを、言い方がおかしいとか、歳出削減できるのか、歳出削減、やっていますよね。歳出抑制している。では、野党が政権を取ったときに、今自民党が、自公がやっているだけの歳出削減ができるのか。心もとないですよ。だから、私は、政府が言っている、やろうとしていることとか、歳出抑制をしようとしていることとか、あるいはその説明の仕方について、もちろんベストだとは思わないけれども、別にそれを、足を引っ張るつもりはありません。でも、そもそも、社会保険料という形で財源を集めることには、やはり違和感があるんですね。

 まず、幾つか理由があるんですけれども、例えば、大臣、今日、大臣は何度も応能負担とおっしゃった、応能負担。まさに、例えば後期高齢者医療でいえば、税が五、支援金が四、保険料が一ですね。その保険料の部分について、特にその一の部分を含めて応能ということをおっしゃっているんだと思いますが、努力されているのは分かりますが、大臣がおっしゃる応能という考え方には、所得だけじゃなくて資産も入りますか、所得だけですか。どっちですか。

武見国務大臣 基本的には所得になります。ただ、一部、資産というものを考慮する仕組みも組み込まれていると聞いております。

足立委員 まさに資産に手を出してきているんですよ、今、政府・与党は、自民党、公明党は。

 ところが、その資産というのは政府は捕捉しているんですか。要は、そういう社会保障制度、今回いろいろな議論をしている、厚労省、こども庁も含めた、子供政策を含む社会保障について資産も一部考慮する、その資産というのは捕捉しているんですか、政府は。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 昨年末に閣議決定しまして、改革工程というのを決めております。

 こうした中で、我々の方向としましては、まず、金融所得につきましては、税制における確定申告の有無による保険料負担の不公平な取扱いを是正するという観点から、金融所得の情報、金融機関から報告を受けている部分がありますので、それを使って把握するなどの課題をしながら検討するとしてございます。

 また、金融資産につきましては、現行の制度でも、介護保険においては、施設入所者についての光熱費の支援に当たって行っておるところでございますが、それ以外につきましては、預貯金口座へのマイナンバー付番の状況等を踏まえつつ今後検討する、こういう扱いになってございます。

足立委員 だから、チャレンジをしている最中なんです。むしろ、私はもう十年前からこれをやれと言ってきたのに、ようやく何か、マイナンバーカードが、マイナンバーがどうとか言って河野大臣が悪戦苦闘されているけれども、ようやく真面目にやっているなと。私は、誰も何も注目していなかった頃から、マイナンバーだということを言ってきたわけです。ようやく政府・与党も、マイナンバーを含むインフラ、様々な政策、制度をつくるために必要な制度インフラ、基盤制度を整えなあかんなということで。

 でも、今、伊原局長がおっしゃったのは検討でしょう。ねえ、局長。これからなんです、本格的には。だから、現時点では、十分に資産を捕捉し、それを制度に反映させる準備ができていない。いいですね、大臣。

武見国務大臣 御指摘のとおり、資産の把握を公平に行うという仕組みは、まだ現実にはできておりません。

 ただ、委員御指摘のマイナンバーカードなども活用しながらこうした資産の公平な捕捉ができるように努めていけば、先生のおっしゃる、いわばインフラ部分というものがつくり出されていくことになると理解しています。

足立委員 制度オブ制度ズと僕は言っているんですけれども、制度の中の王様ですよ、制度を支える制度。これができていないのに、なぜ子供支援金という恒久財源制度をつくっちゃうんですか。何でそんな急ぐの。今日も岬委員からもありました、何で急ぐんだと。

 だって、今日申し上げたのは、少子化対策のエビデンスがはっきりしていないのに、三・六兆で済むのか二兆で済むのか十兆かかるのか分からないのに、三・六兆を前提に、五百円とか千円とか何か悶着している。そんな議論はどうでもいいんですよ。要は、まず、少子化対策の歳出についてフィックスできていない。これは今日あった。でも、私が申し上げているのは負担ですよ。公正公平な、透明で公正な負担を求める制度インフラができていないんですよ。

 何で先に恒久財源の仕組みを急いでつくるんですか、大臣。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに少子化対策というのが待ったなしの課題になっておりまして、先生御案内のとおり、昨年の末に加速化プランという形で決定をいたしました。

 少子化対策というものは効果が表れるまで一定の時間を要するということでございますし、また、今、待ったなしということで、スピード感を持ってやらないといけないということで実施をさせていただくということでございます。

足立委員 今御答弁があったのは、給付の部分ですよ、受益、歳出。出のところは待ったなしだから、やったらいいじゃない。どんどんやったらいいんですよ。税収の上振れもある。日本経済をちゃんと軌道に乗せるためには、別に国債だって発行したらいいですよ、短期的には。幾らでも出したらいいですよ。

 私が申し上げているのは、何で、お金を集めるところが透明で公正な基盤制度がない中で、公正ではない集め方を急いでやるんですかと言っているんですよ。誰でもいいから、ちょっとそこだけ答えて。そこだけ。

武見国務大臣 これは、公平で公正な徴収の仕方が今回の支援金の徴収の仕方だと理解をしています。

 実際に、委員御案内のとおり、医療保険から出発をした社会保険の仕組みというものは、今日、全世代型の社会保障というものを実現するための仕組みとして機能していて、それは、当初は高齢化対策で、後期高齢者制度、あるいは介護保険制度がそこに加わってきたけれども、今日は、それが少子化対策として、出産育児支援金といったものに加えて、新たに少子化対策としての支援金がそこに加わったという経緯がありますから、その観点における公平性というものはしっかりと歴史の中で担保されてきている、こう理解しています。

足立委員 中身ゼロですね、大臣。だって、今、何も言っていないじゃない。抽象的に、全世代型ですと言っているだけでしょう。誰か助けてあげてくださいよ。

鹿沼政府参考人 お答えいたします。

 まさに、負担の議論についてしっかり公平公正な立場でやっていくべきじゃないか、それは非常に大切な議論だと思っております。今も、医療保険、介護保険、年金保険、それぞれ、保険、税制、いろいろな形で入れて、それぞれの仕組みで御負担をいただいているところでございます。

 もちろん、この仕組みについて、もっと、例えば資産とかいろいろなことを勘案して検討しなきゃいけないんじゃないか、それはもちろんそうだとは思いますが、その上、改善もしていかなきゃいけないとは思いますが、一方で、子供について三・六兆円というお金が必要になり、財源を出さなければ国債という形でやらなければいけなくなりますし、その国債というのは、結局、子供たちのためのお金を子供たちに借金を背負わせるということにもつながりかねないと思っております。

 そうした中で、社会保険の負担の議論はしっかりやるにしても、しっかりと今回の恒久財源という形は進めたい、そういうものでございます。

足立委員 こども未来戦略にもこう書いてあるんですね。こども未来戦略の実は本文じゃないんです。脚注二十七というところに書いてあるんですよ。こども未来戦略の脚注二十七にこう書いてあります。「若者・子育て世帯の手取り所得を増やすためにも、歳出改革と賃上げによりこのギャップを縮小し、」このギャップって、まあいいや、その後にこう書いているんです。「保険料率の上昇を最大限抑制する。」と書いてあるんですよ。

 当たり前ですね。だって、社会保険料というのは所得にひもづいているから、基本的には現役世代なんですよ。少子化対策をやると言いながら、さっき申し上げた透明で公正な制度基盤がない中で、かつ、政府・与党が消費増税を封印したために、消費増税だけではない、税制の議論を封印したために、仕方なくこの子供支援金というところに流れ込んでいるわけですよ。でも、子供支援金というのは社会保険だから現役にかぶさるわけですよ。

 資産、資産と言っているのは、私が言っているんじゃないですよ。何かネット上では、足立は何か預金税を主導しているとか。ばかかと。ばかというのは言わないんだけれども、本当、田村さん、笑っちゃいますよね。本当にレベルが低い議論が多過ぎる。

 そうじゃなくて、所得ベースの社会保険料と、消費ベースの消費税と、それから資産ベースの何らかの、例えば固定資産税、負担構造が全然違うじゃない。どの負担構造で負担を分かち合うのが一番国家の未来にとって未来につながるのであるかという議論をせなあかんのに。

 そうしたときに、誰か説明できますか、今回の子供支援金がベストなんだと。ちょっとその理由を端的に教えてよ、端的に。もう田村さんでもいいですよ。端的に、ごちゃごちゃ言わなくていい。既存の資料は全部読んでいます。

 今申し上げたように、なぜ少子化対策の財源を工面するときに所得ベースの社会保険料を採用したんですか。それも、社会保険料、医療保険ベースでやるということは、その負担は全部世帯に乗ってくるんですよ。企業も、まあ社会保険だから半分、折半ということはあるけれども。消費税だったら家計は半分ですよ。資産ベースだったらまた全然バランスが違ってくる。社会保険は世帯に全部乗せるんですよ。それも、現役世帯ですよ。ねえ、田村さん。ほら、うなずいている。違うんだという人、ちょっと手を挙げてくださいよ。

 だから、答えられる人はいないんですよ。だから、この話は、突き詰めれば政府・与党は倒れます。倒れないんだという人は、誰でもいいから答弁してください。

武見国務大臣 御指摘の公平性というもの、それから安定した資金を調達する能力といったことを考えたときに、やはり、医療保険を中核とする社会保険の仕組みというのは、最も幅広く国民の負担を得ることができる仕組みであるという点においては、これは間違いないものであります。

 その上で、その中の保険料というものを、社会保険の中の保険料というものを活用して、医療保険に加えて、介護保険、そして後期高齢者医療制度、それから出産育児支援金、こういったような対高齢者対策、対少子化対策を進めてきたという経緯があります。

 こういう経緯の中で、新たに少子化対策の安定財源として、この支援金を、この仕組みの中で保険料という形で徴収するということを通じて、この財源というものを確保しようという考え方を取ったわけであります。

 ただ、委員御指摘のとおり、将来的にそれだけで全部十分対応できるのかと言われれば、それだけで済むかどうかはまだ全く未知数であります。引き続き、将来的に少子化対策の財源というものが必要ということとなるとすれば、そのときには改めて、公平性がきちんと担保された、そうした新たな資金の確保の仕方というものを国民の皆さんにきちんと御説明を申し上げ、理解を得ながら、そうした仕組みをつくっていくことが、その時点においては改めて必要になるだろうと思います。

 いずれにせよ、こうした議論は丁寧に議論をしていかないと誤解を招くことがありますので、是非、委員におきましては、こうした私どもの今回の、保険料の一部としてこの支援金を確保する、少子化対策の新たな財源の確保の仕方ということについての御理解をいただければ大変幸いであります。

足立委員 御丁寧にありがとうございます。

 公正で正しいから選んだ手段じゃないんですよ、これは。取りやすいから選んだんですよ。だから、それは国民の幸福にはつながらないので間違っているのではないですかと申し上げているし、かつ、恐らく、厚労省の中にも反対意見はあったと思いますよ。

 さっき伊原局長からも何度もあったように、あるいは大臣から経緯等あったように、経緯を見ると、御苦労されているのはよく分かるし、ロジックがどんどん拡張されてきている。先ほどずっと伊原局長が言った歴史がある。その歴史の中で医療保険制度が高齢化対応に広がり、そして少子化対策に広がってきた。分かるんですけれども、少子化対策はやり過ぎですよ。やり過ぎというのは、保険でやるのはね。伊原さんだってそう思っているに決まっていますよ、そんなの。だって、高齢者はまだ、みんな年を取るんだからというせりふがあるわけですよ。でも、少子化対策、子供支援は、後期高齢者はもうそこには行くことはないんですから。人生は一方通行なんですから。そういう中で、いやいや、子供が増えれば保険財政が助かるからというロジックで言うんだったら、日本中のあらゆる政策が、産業政策から国土政策まで全部、保険でやらなあかんことになりますよ。

 では、なぜ少子化対策だけ保険料を徴収してもいいのかということで、それはよく分からないよねということで、先ほど遠藤良太議員からも、児童手当。だって、児童手当は税でやってきたじゃないですか。それが当たり前なんですよ。ところが、税でやってきたところを、今、税と言うと選挙で負けるから保険料と言っているんですよ。(発言する者あり)増税眼鏡と言われたくない。福島伸享議員の発言でありますが。ちゃんと議事録に残しておかないと。

 伊原局長、そこはやはり少子化対策まで保険は行き過ぎだと内心思っていると思うので、ちょっとお願いします。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 まず、医療保険制度においても、例えば出産、これが保険事故として明確に書かれておりまして、やはり次世代の育成に関して責任があるというのは、保険事故としてでも入っております。そういう意味で、例えば、去年の法改正では、出産の費用については高齢者の方も含めて出すという制度を昨年新たにつくったわけでございまして、医療保険だから少子化対策は無縁であるという整理では一つないんじゃないかと思います。

 それからもう一点、先ほど先生から、児童手当は税だというお話がございましたけれども、元々、児童手当が昭和四十七年に発足したときは、事業主拠出金で運営してきたと思います。税は補足的に入っている、こういう仕組みだったので、やはり、その時々、どういう財源がいいかは、経済情勢、財政状況、そうしたことの中で御判断されてきたんじゃないか、このように考えてございます。

足立委員 私は、社会保険はやはり受益と負担、給付と負担の対応関係が国民に理解されてこそ運営できると思っていますので、税を全く入れるなとは言いませんが、さすがにやり過ぎだということで、私たちは、少子化対策は当然税だ、そして、後期高齢者医療でさえ、少子高齢化が進展する中でますます保険原理からは遠ざかっていっているので、だから、この際、せっかく後期高齢者医療制度をつくったのであるから、そこは税もちゃんと正面から、二分の一にこだわらず税の議論をしたらどうかということで、医療維新という政策提言を出させていただいた。そこには当然、猪瀬直樹さんの産業論とかいろいろなものを全部含めて、維新の会の総力を挙げてまとめたわけであります。だから、是非、大臣、正面からこの議論をしていきたい。これからこの国会まだまだありますので、議論していきたいと思いますが。

 もう一つだけちょっと大臣とやって。これは切りがないんだけれども、人口問題というのがありましたよね、一番最初。いや、もう別に答弁書は役に立ちませんから、もういいと思うんですが。

 大臣は、人口目標をつくったら政策を硬直させる、させかねないなどなどなどのことをおっしゃったわけですけれども、一方でもう一つおっしゃいました。やはり人口問題というのは国の繁栄あるいは社会の在り方を大きく縛っていくんだと。だからこそ重要なんですよね。

 そのときに、今日もあったように、人口の見通しは計算しているけれども、例えば三十年後、五十年後に日本国がどういう国家として繁栄しているのか、繁栄をしていっているのかということをイメージを持たずに、少子化対策もできなければ、外国人政策だってできないというのが、今日の岬さんの質問だったわけでありますが、大臣もそれは同意ですね。

武見国務大臣 御指摘のように、未来の我が国の社会の在り方というものを一定のイメージ化をして共有できるようにしておくことは、これからも確実に必要になります。それを実現する一つの手段が全世代型社会保障制度という形に私はなっていくんだろうと思います。

 そうしたときに、少子高齢化というのは、幾ら政策で対応したとしても、元のようには戻ることはほぼ不可能なことは明らかであります。

 そうすると、人口政策という観点から、例えば、人でやるべき仕事はロボットやITでやってもらうとか、あるいは、元気な高齢者の皆様方に、もしお仕事をするという御希望があれば、生産性の高い仕事も含めて活動していただく、そうした期間を長くする、それをまた支援するとか、それから、女性、我が国の場合には女性の社会参画がまだまだ不十分でありますから、こうしたことを実行していくこと、さらには、外国人の労働者をその中で組み込んで労働力として補填をしていくこと。

 これらの仕組みは、いずれも、日常生活のそれぞれライフスタイルを非常に大きく変え、かつまた、地域社会の在り方を大きく変えます。そういったことをきちんと考えて、国民の理解を得ながら一つ一つのそうした具体策というものを組み立てていくことが、集大成としての人口政策であり、その結果として、我が国が望むべき未来の社会というものが構築されるということになるんだろうと思います。

 その点についての御議論は、まだまだこれから我が国の中で進めていかなければならないと理解しています。

足立委員 是非よろしくお願いします。

 もう時間が来ますので、もうあと独り言で終わりますが、今日申し上げた所得、消費、資産という話は極めて普遍的な議論であります。

 ところが、子育ての加速化プランの財源は、結局、社会保障改革の改革工程をやっていく、そこで生まれた歳出、まあ社会保障経費の伸びを抑制したその果実は、公費と社会保険料と両方あって、それを両方減らすんですね。だから、何というのかな、みんなでよろしくということになっているんですが。

 今日申し上げた、財源をどこに求めるのがより国家の未来にとっていいのか、少子化対策にとっていいのかということでいえば、削減できた部分は社会保険料を下げることに全部使って、社会保険料を抑制することに全部使って、税は税なんだから、歳出改革、国家全体の、政府全体の歳出改革でやっていけばいい。あくまでもこれは社会保障の世界なんだから、社会保障の歳出改革については、そこで生まれた果実は社会保険料の抑制、低減に全てを使うべきであると。

 質問はもうやめておきましょう。質問はまた次回続けてやりますので、是非御準備のほどをお願いして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

新谷委員長 次に、田中健君。

田中(健)委員 国民民主党、田中健です。

 大臣始め皆様、よろしくお願いいたします。

 私からは、まず、障害者福祉サービスについて伺いたいと思います。

 昨年もこの問題について取り上げさせていただきました。日本が国際的に極めて低い障害福祉予算の水準にあるということを指摘をし、具体的には、各国のGDPに占める障害福祉予算の割合が、OECDの平均は二%であるのに対して、日本は僅か一%にとどまっている、それがしかも二十年間続いていることを取り上げました。

 そのときに、大臣は答弁の中で、OECDの調査は国によって計算方法が違う、比較が難しいということを答弁しましたが、しかし、財務省の様々な社会保険の比較の調査や、また障害福祉に関わるGDP比の国際比較等々、様々なデータを使われています。この障害者福祉だけOECDのデータは使えないということをこの場所では言ったのか。あのとき時間がなくて終わってしまったので、まず大臣に認識を伺いたいと思います。

武見国務大臣 社会保障関係を含む財政状況をOECDのデータに基づいて他の先進諸国と比較するということは、私は意義があるものと思っておりますから、それは否定しておりません。

 その上で、他方、議員御指摘の障害者関連支出に関するOECDのデータなんですけれども、社会的支出のうち、疾患、それから先天的、後天的障害、それから労働災害に関するものについて、現物給付それから現金給付の様々な制度について、幅広く公共、民間の支出の双方を合算してこのデータが作られております。したがって、これらに含まれる制度の内容や対象者、それから社会的背景など国ごとに異なる中で、この合計額を障害福祉予算として単純に比較することは難しいと思うというのが、私が申し上げた趣旨であります。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 であるなら、それをしっかりと大臣は述べ、また、OECDの調査を使うとき言うべきだと思うんですが。

 そういえば、先ほど言ったこの国際比較でも、二〇二〇年、三十八か国中三十位と大変低いというのを、あちらこちらでこのデータがあり、またこれを団体やいろいろなところで説明で使われています。それを、やはり、じゃ、今言った大臣の現物支給や様々なものを加えたときに本当は高いのか低いのかというのが、今、現時点で私は分かりません。ですから、それが分かるような、国としてデータを出すなり、そうしていただきたいと思うんです。そうでないと、団体やまた私自身も、そのデータで低いという前提の下、議論をしておりますが、大臣としては低くないという御認識だと、全く議論がかみ合わないと思っています。

 そのOECDのデータはおいておいたとしても、そもそも、障害者福祉の予算というのは低いというふうに大臣は、他国との比較ではなく日本の予算としては、お思いになっていらっしゃるでしょうか。

武見国務大臣 我が国の障害福祉関係予算、平成十八年、これは二〇〇六年でありますけれども、障害者自立支援法施行時から比べますと、令和六年度予算案では四倍近くの規模となっております。近年、障害福祉サービスは拡充してきているところでもあり、障害者がその希望に基づいて安心して地域で生活できる社会を実現するために、引き続き、障害福祉サービスを必要とされる方へ適切なサービスを提供できるように努めよう、こう考えております。

 したがって、四倍近くの規模にまで近々で拡大をしてきているということは是非御理解をいただきたいと思います。

田中(健)委員 その四倍は前回の質疑の中でもお答えいただいたんですけれども、それだけ充実してきているというのは、逆に言えば、低いからまだ充実が必要だということとも捉えられますので、私は、低いんじゃないかという視点で今日は質問に移らせていただきたいと思います。

 先ほども、午前中、早稲田議員からも最後、一点質問があったんですけれども、障害福祉サービスの報酬改定がいよいよ決定をいたします。今回、基礎報酬が減額ということに対して、事業所からは様々な不安の声が届いています。生活介護、児童発達支援、放課後等デイサービス、日額払い制度から時間払いになるということでありますが、特に生活介護について取り上げてお伺いをしたいと思います。

 今回新しく、三時間未満や、三時間から四時間、四時間から五時間というふうに、時間刻みの制度ができました。しかし、今まであった、五時間から六時間、六時間から七時間という時間帯がありますけれども、その中で、六時間以上七時間未満が大きく減額となりまして、逆に、八時間以上九時間未満というのが増額となります。

 通所の利用者が最も多いのが六時間以上から七時間未満という時間帯と言われている中、この時間帯が最も大きく減額をされ、通所の施設の方たちは大変懸念をし、また、これによって大きく報酬が下がるということを言われていますが、この時間帯を減額した理由というのをお伺いします。

武見国務大臣 令和六年度障害福祉サービス等報酬改定では、生活介護につきまして、サービス提供の実態に応じた報酬体系とするため、利用者にサービスを提供する時間の長さに応じてきめ細やかに基本報酬を設定をさせていただいております。

 医療的ケアが必要な方への支援体制の整備や強度行動障害を有する障害者等への専門的な支援については加算を充実するなど、サービスの質を手厚く加算で評価することとしておりまして、全体としてサービスの質の確保、向上を図る観点から、こうした新たな時間設定の仕方というのは適切なものであろうと考えます。

田中(健)委員 今の答弁、午前中も一部あったんですけれども、何か、それを聞くと、ああそうかなと思ってしまうんですが、私が言ったのは、六時間から七時間という時間が最も、これまでの特に通所、小規模の事業所で使われていると。それは三枚目の資料の、生活介護の営業時間及び利用時間の図表二にもあるんですけれども、生活介護の一日の平均利用時間、図表二ですね、下になりますけれども、通所型事業所の時間帯を見ますと、六時間から七時間、真ん中のブルーのところ、四六・六%、約半数がこの時間帯を利用しています。ここが今回、大きく報酬減ということになりました。この理由、合理的な理由があるならば教えていただきたいということでお願いをいたします。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 大臣からお答えいたしましたとおり、今回の生活介護の報酬設定につきましては、サービスの提供の実態に応じたものとするために、提供時間の長さに応じてきめ細やかに報酬を設定をしているところでございます。

 こうしたことから、先生御指摘のように、提供時間が長いところと短いところでの差ができてくるところでございますけれども、こうしたことに加えて、サービスの質を手厚く評価をする加算の拡充などを併せて講じることとしているところでございまして、全体として個々の事業者がサービスの質の確保、向上を図る観点から適切なものであると考えているところでございます。

田中(健)委員 いやいや、実態に応じてと言ったんですけれども、実態に応じてならばここが最も多い利用の時間帯なんですけれども、ここを減らしたのはどういう理由かということです。

 例えば、ここが大変に負担が大きいから額を減らすためにそこの報酬を減らしたのか、いやいや、そこの利用は実はこうじゃないということなのか、そこが分かりませんと、減らされた通所の介護事業者の人たちは大変に不安だということなんですけれども。

 なぜならば、六時間から七時間は減らしたけれども、八時間から九時間は大きく増額したんですね。ですから、そこが、何をもってその時間帯を狙ったかということです。そこでどういうふうに誘導していきたいのか、若しくは、その中で全体の予算を調整しているのか、そこをお聞かせください。

辺見政府参考人 障害福祉サービスに関する報酬につきましては、基本的に、事業提供に要しているコスト等を勘案して設定をしていくものと考えておりますけれども、そうした中で、サービス提供の長さというもの、また、加算に関しましては、医療的ケアが必要な方など特に人的配置が必要な場合、こうした場合にかかるコストが他と比べて厚くなる、こういったようなことを踏まえて設定をさせていただいているところでございまして、時間が長い場合、また、特別な方に対してのケアということでコストがかかるような場合、こうした場合に評価をすることによってサービスの質の確保、向上を図ることが必要であるというふうに考えております。

田中(健)委員 分かりませんが、言っていることが。

 例えば、この時間を減らすということは、通所の利用者が減って、八時間から九時間を一番使っているのは障害者支援施設ですね。ですので、入所の人です。ですから、単純に考えれば、通所を減らして入所を増やすのかという政策方針に見られてもおかしくないというか、そこだけ見ればそういうふうに思ってしまうんですけれども、そういった政策的誘導の意図があるのかどうかということです。

辺見政府参考人 生活介護の報酬設定に関しまして、その生活介護の方、確かに通所の方、入所の方が使われておられるところでございますけれども、あくまで、今回のサービス提供時間の長さに応じた設定につきましては、その提供の実態に応じたものということでございまして、先生御指摘のような、入所から地域へ、通所への、逆行するような形で、通所から入所に誘導するというものではございません。

 むしろ、報酬改定全体の中では、入所施設の方に対して、地域への移行についての意思確認を行うことなどの工夫を行っているところでございまして、全体として、障害者について地域での生活ということを支援していくような報酬改定としているところでございます。

田中(健)委員 是非分かるように説明をしていただきたいと思います。

 もっと言うならば、通所は、増えました八時間以上、その図表の一番右、一・八%しかおりません。逆に、施設の人は、三〇%が今回増えた八時間以上なんですよ。これだけ見ると、ですから、通所から入所へという大きな流れを、逆行するんじゃないかというふうに思ってしまったので、これを確認したかったんですが、適切な、私、理解できませんので、是非。今回、時間でなければいいんですよ。なければ、このような時間による報酬は変わりませんからいいんですけれども、時間による報酬にしたからこそ、今言った実態というか、実態に応じてと言ったからには、それに応じた診療報酬にしてほしいと思ったことをお伝えしたいと思います。

 ちょっと、時間がありませんので、グループホームについても伺います。

 グループホームは、入居者四人また五人に職員一人という配置を廃止をしました。そして、利用者六人に対して職員一人という新たな支援体制基準の単価が設けられました。それぞれ、加算を加えたとしても、区分六は増えますが、それ以外はほぼ減額となります。全て六対一という単価基準にした理由を伺います。

辺見政府参考人 グループホームの基本報酬の見直しにつきましては、地域生活を希望する障害者に対してのサービスの質の向上という観点から、人員配置に応じた区分を改めまして、サービスの提供時間の長さに応じて設定するという、サービスの提供時間の実態に応じて新たに加算で評価をする体系へと見直しをしたところでございます。これに加えて、重度者の受入れなどサービスの支援内容を踏まえた単価の見直しや、加算の拡充も行っているところでございます。こうしたことを併せて講じることによって、グループホーム事業全体としてサービスの質の確保、向上を行うという観点から行っているものでございます。

 さらに、グループホームにつきましても、人材確保の観点から、処遇改善加算の一本化等の効果もございますので、こうしたことを踏まえて、全体としてグループホームの質の確保に取り組んでまいりたいと考えております。

田中(健)委員 今の説明も、なぜ六対一にしたのか分かりません。

 これも、お話を聞きますと、これは最後の三枚目になりますけれども、手厚い人員配置を行っている事業所ということで、グループホームの人員配置のそれぞれの事業所数があるんですけれども、七・五対一のグループホームの報酬が大きく今回減収となります。ですから、全て六対一にすると、七・五対一以上の従業員配置数の人たちは工賃が下がり、大変に厳しい状態になるんですけれども、どうして六対一にしたか、改めてもう一度伺います。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的な考え方として、先ほど申し上げましたように、人員配置に応じた区分を改めて、サービスの提供時間、これに着目したものということでございますが、人員配置基準に着目した現行の状況によりますと、配置されている職員ごとに週の所定勤務時間の長短等がございます。こうしたことに着目をして、むしろ、実際に、所要時間の違いを丸めて人員配置だけで評価をするのではなくて、サービスの提供時間の実態に応じて評価をする、こうした考え方も取ったところでございます。

田中(健)委員 私が事前に聞いたお話ですと、全部六対一が多く、また六対一に全て寄せていくということであったんですけれども、そういう説明がなかったのでちょっと分かりづらいんですけれども、六対一にこれから持っていくという流れであるならば、七・五対一以上の人たち、これは事業所の中でも四〇%近くいますが、この人たちは置いてきぼりになってしまうということであります。ですから質問をさせてもらっているんですけれども、全体的にと、加算がと言われても、今、現時点の実際に運営されている事業者さんがいらっしゃって、そしてその人たちが大変に危惧をしているということは是非分かっていただきたいと思っています。

 そして、今回、基本報酬の減額と加算頼みの傾向というのは、そもそも現状の人手不足を放任しているのではないかという指摘があります。障害者福祉の現状については、危機的状況である、人が入ってこないということが昨年度から何度も指摘がされてきました。特に、訪問介護事業者の基本報酬引下げはですね、今回の、訪問サービスですね、訪問介護事業者サービスと全く同じ構図ではないかということが言われています。

 午前中の審議の中でも、訪問介護事業者サービスの質疑がありました。収支差率が全体で七・八と高い、全てのサービス平均を大きく上回る、さらに、全サービスで最も高い加算率を設定した、報酬全体は増額されるはずだと。さらに大臣も、加算措置を通じてプラスになるようにしっかり設計してあるというふうに言いました。まさに障害福祉サービスにも同じようなことが言えるのではないかと思って。基本報酬は下げた、しかし加算ですれば皆プラスになるようになっているんだと。しかし、今回の訪問介護も、四割が、中小事業者を中心に赤字だということが明らかになっています。これは同じじゃないかと思うんです。

 ですから、私は、懸念して、まだ決定をしておらず、パブリックコメントがちょうど先週まで行われていたところでありましたから、様々な声を集め、また事業所にもお伺いしてお話を聞いてきました。

 この基本報酬の減と加算頼みの傾向というのは、このように同じような結果を生むんじゃないかと思うんですが、大臣、今までの議論を聞いて、御意見をいただければと思います。

武見国務大臣 令和五年の経営実態調査によりますと、生活介護事業者の収支差率は約八%以上であります。障害福祉サービス全体平均の約五%に比べて相対的に高くなっております。

 その上で、今回の生活介護の基本報酬の改定は、必ずしも、御指摘のように、収支差率が高いから基本報酬を下げるというような考え方で行うものではなくて、先ほど申し上げましたけれども、サービス提供の実態に応じた報酬体系とするため、提供時間の長さに応じてきめ細やかに基本報酬を設定するとともに、サービスの質を手厚く評価する加算の拡充等を併せて講ずるものであります。個々の事業者がサービスの質の確保、向上を図る観点から、こうした新たな設計をさせていただいております。

 そして、先ほどのように、人員配置だけで、六対一、五対一、四対一、これで、それぞれ単位で、時間で報酬をやりますと、大体三十二時間で報酬が取れちゃうところと、それから四十時間のところと、それぞれに格差が出てきてしまいます。したがって、これを六対一で共通化することによって、実際により公平で評価のしやすい報酬体系になっているというふうに私は理解をいたしました。

田中(健)委員 また他の障害福祉サービスに比べると高いということがあったんですけれども、一枚目を御覧ください。

 これは生活介護またグループホームの収支でありますけれども、マーカーさせてもらいました。上の表十六が生活介護です。確かに高いんですけれども、高いのは、おっしゃられているのは、営利法人です。営利法人のところだけマーカーしましたけれども、これは一四%です。グループホームも、営利法人のところ、これは一三%です。さらに、グループホームの営利法人のところの横を見ますと、NPO法人などは二%ということであります。

 これも先ほどの訪問介護と同じで、やはり営利法人や大企業また大きなグループは、確かに売上げを上げていますし、また、利益も得ていますけれども、どうしても、今回の報酬改定があるところは、小さな、特に通所などは、三十人、四十人のところとか、まさにそこが減らされたということで議論をしていたんですけれども、そういうところは、決して他の福祉サービスに比べてもうかっているわけではないと思うんです。ですから、基本報酬を減額することは、今、現時点でも厳しい事業所を更に苦しくしていくということを、私は是非御理解いただきたいと思っています。

 そして、先ほどの中では、職員の人員配置のことを何度も言っていましたし、また、重度支援加算ということもありました。それは細分化する、対応できるというふうに言っていますけれども、多くの加算や要件というのは、これも同じです、訪問介護と一緒なんですが、事務量を課せられてなかなか小規模な事務所では受けられないというのが現状です。

 そして、人員配置加算、今回は人員配置体制加算が大きな割合を占めるんですけれども、職員を雇って研修を受ければ確かに大きな加算になるのは分かっていますが、しかし、そもそも人がいないんです。そもそも障害福祉は、人を雇いたいといっても来ないんですね。それは、昨年度も何度も他の議員からもありましたし、また、報道等でも取り上げられていました。

 ですから、このままでは、もちろん大手やまたグループ企業はこのままこの報酬改定で大きく更に事業を伸ばせるかと思いますが、しかし、中小の事業所は大変に困窮する、赤字になってしまうというふうに思っておりますので、是非、午前中の議論の中では、中小の事業者の声を大臣自ら聞くような形をつくっていきたいというような答弁もいただいておりましたので、今回、最終確定はこれからでありますから、是非現場の声を聞いていただき、また、先ほどの議論の中、私もまだ納得しておりませんし、理解できておりませんが、どうしてこのように今回の報酬改定の中で分かりづらい報酬になったのか、明確に、例えばこうすれば利益も上がるし、また改善するというふうに議論の中で分かれば、私も、そうであるならばそうかと分かるんですけれども、今の議論ではとても分かりませんでしたので、是非努力をしていただきたいと思っております。

 最後、済みません、その中で、成果主義が更に強化となった就労支援B型のことです。

 平均工賃一万五千円未満の基本報酬は全て減額となりました。この一万五千円以下ですね、更に努力すればどんどん上がるという今回、報酬改定になりましたけれども、一万五千円以下というのは、障害の重い人や、また精神障害を持った人とか、なかなか努力してもそれ以上上がらない、何とかそこでやっているという人であると思っています。ですから、この一万五千円以下という人のを下げるということは、支援の水準も引き下げ、また、現在働いている人たちの就労のやる気もそがれるということで、私はマイナスしかないかと思っていますが、これについての今回のお考えはいかがでしょうか。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の報酬改定におきまして、就労継続支援B型につきましては、障害者の経済的自立を促す観点から、工賃の更なる向上のため、平均工賃月額が高い区分については報酬単価の引上げを実施し、あわせて、平均工賃月額が低い区分の報酬単価を下げるものでございます。

 就労継続支援B型につきましては、これまでも重度の障害者の受入れを評価する加算を設けているところでございますが、こうしたことに加えまして、今回の報酬改定では、人員配置六対一の報酬体系を新たに創設し、多様な利用者への対応を行う事業所が更に手厚い人員配置ができるようにすることなどの措置を講じているところでございます。

 先生先ほど御指摘がございました、事務方の説明の中で六対一への誘導という話につきましては、この就労支援B型の新たな六対一に関することではないかと考えておりますけれども、いずれにいたしましても、障害者が様々な障害特性等に応じて希望や能力に応じて働けるように、引き続き支援を行っていくことが大事だと思っておりますし、また、こうした報酬がきっちりと適用されるよう、考え方も含めて、自治体、事業者等に説明をしていくことが重要であるというふうに考えております。

田中(健)委員 失礼しました。最後の資料は、そうです、これは就労Bのですけれども。

 つまり、六対一ですと確かに上がるんですけれども、それ以下の、七・五対一、十対一が四〇%近く占めるんです。この人たちは、今回減額になっているということは、大変厳しい……

新谷委員長 既に申合せの時間が経過しておりますので、御協力お願いいたします。

田中(健)委員 はい。

 現状ということは是非御理解いただければと思っております。

 時間になりました。済みません。失礼いたしました。

新谷委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 立憲民主党の大西健介です。

 今日は、所信に対する質疑ということですので、まず大臣の政治姿勢に関して質問していきたいと思うんですけれども、私は、予算委員会で、岸田首相の地元広島で開かれた総理大臣就任を祝う会、これが、政治資金収支報告書に記載されていない、脱法パーティーではないかということを指摘させていただきました。これが何で問題かというと、任意団体の主催ということにして収益を寄附でもらえば政治資金パーティーではないということになってしまって、仮に政治資金パーティー禁止みたいなことを言っても抜け穴になってしまうということで指摘をさせていただきました。

 実は、武見大臣も脱法パーティーを行っていたことが分かっています。武見氏が代表を務めている政治団体、敬人会、二〇二一年に四回、勉強会、セミナーをオンラインで開催をしていますけれども、これは、政治資金収支報告書には全て、その他の事業として記載をされています。

 これに関して、武見大臣は一月のBS朝日の番組で、実質的な政治資金パーティーとして開こうとした、大臣がこういうふうに発言されています。そういうふうに発言をしているんですけれども、大臣自身も、政治資金規正法の第八条の二の政治資金パーティーだ、こういう認識を持っておられたということでよろしいかどうか、端的にお答えいただきたいと思います。

武見国務大臣 二〇二一年のこの時期でありますけれども、まさにコロナが蔓延をして、そして二類で分類をされて、様々な教育活動あるいは仕事の場というものが制限されていた時期でございました。

 私は、政治家として、やはりこうしたコロナ禍においても、政治活動はその感染を防止する立場の中でしっかりと継続して行われるべきものであるという考え方に基づいて、オンラインにおけるこうした敬人会勉強会というものを開かせていただきました。

 そして、これを開くに当たって、実際に総務省と相談をしたところ、オンラインでやる場合においてはその他事業に属するというふうな指摘を受けたことによって、その他事業の分類の中で政治資金報告をさせていただいたという経緯がございます。

大西(健)委員 私が聞いているのは、BSの番組で、実質的な政治資金パーティーとして開こうとしたと発言されていますけれども、大臣も政治資金パーティーとして開こうと思ったけれども、総務省からはその他事業だと言われたからそうしたということでよろしいですか。一言だけ。

武見国務大臣 全くそのとおりであります。

大西(健)委員 先ほど、コロナの中でもパーティーはやろうと思ったということですけれども、世間はコロナの中でいろいろな行事とかイベントは中止したわけですけれども、大臣は金集めのパーティーはやろうとしたということなんですけれども。

 今のお話で、例えば、製薬産業政治連盟の令和三年分の収支報告書を見ますと、三月四日、三十四万円。六月十日、十六万円。九月十日、二十万円。十二月八日、四十万円。これはいずれも、そちらの方の収支報告書にはパーティー券購入という名目で記載されているんです。つまり、払った方も政治資金パーティーだと思っている。大臣も、認識としては政治資金パーティーだろうなと初めは思っていたけれども、総務省からそれではないと言われたから違う処理をしたということなんです。

 そこで、総務省に確認したいんですけれども、総務省から、オンライン開催はパーティーの定義に当たらないと言われたということでありますけれども、この点、オンラインの開催は政治資金規正法第八条の二の政治資金パーティーに該当しないということでよろしいかどうか、政府参考人から端的にお答えください。

笠置政府参考人 お答えをいたします。

 一般論でございますけれども、政治資金規正法におけます政治資金パーティー、これは同法の第八条の二に定義が規定をされておりますが、同条で申し上げます催物とは人を集めて行う様々な会合と解されておりまして、人を集めずにオンラインで開催するものは、人を集めて行う会合と解することは難しいと考えております。

 現行の政治資金規正法上、政治団体が各種事業をやることは自由でございますが、政治団体がオンラインによる動画配信事業を行うことについて、これを制限する規定はございません。一般論といたしまして、政治団体がオンラインで動画を配信し、動画視聴者から得た収入については、動画視聴に対する対価の支払いとしてなされるものと考え、事業として行う場合には事業収入として収支報告書に記載をするということでございます。

大西(健)委員 今の答弁のとおりで、総務省は、これは第八条の二のパーティーじゃない、だからその他事業だと言われたので、大臣もそちらで処理した、これは大臣の答弁どおりなんですけれども、お手元に、先ほど申し上げた四回の勉強会、セミナーが書かれた令和三年分の収支報告書をお配りしていますけれども、令和三年三月八日、グランドパレス、千六百三万二千円。六月七日、グランドパレス、千二百十三万円。九月十三日、都市センターホテル、千百六十二万円。十二月十三日、都市センターホテル、千七百六十万五千円。合計しますと五千七百三十八万七千円の収入があるわけですね。

 ただ、政治資金パーティーであれば、対価に係る内訳、特に二十万円を超えるような大口の購入者については、ここにその名前それから住所等が記載をされるわけです、日付も。ところが、その他事業だと全く分からないわけですよ。ですから、こういうふうに不透明になってしまう。しかも、飲食を伴うパーティーとこれは同じ二万円会費でやっているんです。でも、医療関係者との対談をオンラインで配信して、それをDVDで配るだけなので、経費は低く抑えられます。ですから、利益率は高くなる。

 これが認められるんだったら、私は、岸田方式の祝う会同様に、こういう大口の購入者が分からない形での、大臣自身もパーティーだと思ってやったとおっしゃっているわけですけれども、これがやりたい放題になってしまうんじゃないか。

 武見大臣も、先ほど私が言ったBSの番組でこう言っているんですよ。その他の事業とすることに違和感を感じた、法律が対応できていなかった、改正しなきゃいけないと述べていますけれども、そういう御認識でしょうか。

武見国務大臣 やはりコロナ禍において、改めて、こうした政治活動を継続する、私の場合には、党でもコロナ対策本部の仕事などをしており、実際にそうしたコロナ対策に関わる喫緊の課題に直接関わっておりました。したがって、そうした私自身の知見というものをできる限り多くの私の支援者にも理解をしていただく政治活動というものはこの時点で極めて重要だと思って、これを実行してきたわけであります。

 その中で、そういう必要が政治活動上認めたにもかかわらず、実際にそれを実行しようとする場合に明確な法律上の規定ができていなかったことによって、実際に、その他事業の項目の中でその事業を行い、政治資金規正報告を行うという形になったわけであります。

 これは、コロナに関わる経験をもうここでしたわけでありますから、改めて立法府の中でこうしたケースに関わる在り方というものをやはり御議論していただければそれは適切だろうと考えて、このテレビの番組の中でそうした発言をさせていただいたという経緯があります。

大西(健)委員 繰り返して確認ですけれども、要は、今の法律は対応できていないから、今回の件を実際御自身が経験されて、それは法改正しなきゃ対応できないですよねということですか。

武見国務大臣 現行の法の中では、こうしたやり方をする以外に、コロナ禍におけるこうした私の政治活動の継続ができなかった。しかし、それを実行しようとするときには、その他事業という枠組みしか法的にはなかった。したがって、改めてこうした事態に関わる法律の在り方というものを考えていただくことがあってもよいだろうと考えて、こうした発言をしたわけであります。

大西(健)委員 私も大臣と同じく、何とかしないと、これは法の穴になっていて、先ほど言ったように、その他事業でやっちゃえば大口の購入者は見えなくすることができてしまう。いわゆる政治資金規正法の法の趣旨というのは、まさに入りと出を透明性を高くして有権者の御判断を仰ぐということでありますけれども、まさにそれを見えにくくするという抜け穴になっていると思うんです。

 今日、総務省副大臣に来ていただいていますけれども、これは現行法では対応できていない法の穴ということでよろしいでしょうか、そして塞ぐべきとお思いになりますでしょうか。

馬場副大臣 お答えします。

 個別の事案については、具体的な事実関係に即して判断されるべきものでありますので、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。

 その上で、一般論で申し上げると、現行の政治資金規正法上、オンラインによる動画配信事業については、これを制限する固有の規定は存在しておりませんが、これについて政治資金パーティーや寄附と同じような規制を課すためには、法律の規定が必要と考えられます。

 政治資金の規制や収支の公開の在り方については、政党、政治団体の政治活動の自由と密接に関連していることから、各党各会派において御議論いただくべき問題と考えております。

大西(健)委員 私は、これはやはりちゃんと、今の答弁、はっきりは言われなかったですけれども、今の法律では対応できていないんですよ。だから、結局、これが許されるということになったら、みんなこれをやれば、別に、大口の購入者を見えない形にして、パーティー同様の効果を生む。実際、大臣だって、パーティーと思ってやったけれども、それでは書けないと言われたからこう書いたんだとおっしゃっていますから。ですから、これは私は改正すべきだというふうに思います。

 武見方式のこういう脱法パーティーだけではなくて、過去三年分の大臣の資金管理団体、敬人会及び自民党東京都参議院選挙区第三支部の政治資金収支報告書を見ますと、寄附とパーティー券だけで、ざっと見ただけで、一億三千万円以上の政治資金を医療あるいは薬業の関係団体から受け取っています。

 岸田首相は、先月二十九日の衆議院の政治倫理審査会で、我が党の野田元首相の質問に対して、首相在任中は自身の政治資金パーティーは開催しない、こういうことを表明されましたけれども、武見大臣、改めて、岸田首相に倣って、在任中は政治資金パーティーを開催しないと表明してはいかがかと思いますけれども、いかがでしょうか。

武見国務大臣 私自身、閣僚をやりつつも事務所の管理運営というのは継続してやらなければならないことがあり、その中での政治活動も当然継続して行うわけでありますから、それに必要な政治資金というものは、やはり何らかの形で、法に基づいて適切に確保するということを、しっかりと大臣規範にきちんと基づいた形ですることが適切かなというふうに考えます。

 したがって、私としては、大臣規範の趣旨というものを踏まえてこれから対応していきたいというふうに考えます。

大西(健)委員 まさに今、答弁の中でも大臣規範というのを言っていただきましたけれども、大臣規範には何と書いてあるかというと、政治資金の調達を目的とするパーティーで、国民の疑惑を招きかねないような大規模なものの開催は自粛すると。先ほど私が言った、コロナ禍でも、要は、この四回は、いずれも一千万円をはるかに超える収入を得ている、いわゆる、まさに大臣規範に書かれている大規模パーティーに私は当たると思うんですけれども、こういうものはやらないと。

 それから、そもそも、今、政治資金の問題が、予算委員会でもいろいろな議論をされていますけれども、日産の社長から経済同友会代表幹事に就任した石原俊氏は、かつて、企業が政治にお金を出せば必ず見返りを期待すると発言をしています。医療関係者が大臣のパーティー券を購入しているのは、まさに見返りを期待しているからじゃないんですか。

 ですから、やはり、国民の疑惑を招きかねない、そういう、監督する団体からパーティー券を買ってもらって、一千万円を超えるような大規模なパーティーをやるということ自体が、私はまさに国民の疑惑を招くことであって、これは大臣規範に触れるので、そういうことはおやめになった方がいいと思いますけれども、いかがでしょうか。

武見国務大臣 改めて、こうした大臣規範というものの趣旨に基づいて私は対応させていただきたいというふうに考えております。

大西(健)委員 大臣規範ということは、いわゆる特定パーティーと呼ばれるような、一千万円を超えるような大規模なものはやらない、こういうことですか。

武見国務大臣 私自身は、とにかく、大臣規範の中に書かれているもの、それから、この通常国会の中でも政治と金に関わる御議論がされ、かつまた、政治資金規正法の改正についても御議論がこれから進められていくものと理解をしております。したがって、そういうことを受けて、大臣規範の趣旨に従って私としては対応していきたいと思います。

大西(健)委員 岸田首相もせっかくパーティーをやらないと言われたのに、非常に残念な気がいたします。

 総務省、ここまでで結構です。

 次に移りたいと思います。

 令和六年度の診療報酬改定において、ふだんから訪問診療を受けていない患者やかかりつけ医以外の医療機関による往診、これは大幅な減算になりました。これを受けて、オンライン診療とともに往診サービスを行っていた事業者が相次いで往診サービスの提供を終了することを発表して、動揺が広がっています。

 まず、厚労省はこのことをどう受け止めていますか。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 医師が患者の求めに応じて可及的速やかに往診が必要となった場合、緊急往診というのを行います。ここにつきましては、昨年の中医協の中で、日常的に医療の提供が必要な医療的ケア児などに対して二十四時間の在宅医療の提供体制を充実させるべきだという御議論がある一方で、こうした医療的ケア児などへの往診とは別に、発熱等の一般的に軽症とされる患者に対する往診が、現在、同等の経済的評価になっているということにつきまして議論がなされました。

 こうした議論の末、今回の改定におきましては、定期的な訪問診療を行っている患者等に対する緊急往診の評価は維持しつつ、さらに、ICTの活用等を通じて地域における二十四時間の医療提供体制を構築した場合の評価を新たに新設しました。他方、日常的に医療を必要とする患者さん以外の、先ほど申し上げたような発熱等の一般的な軽症のようなケースですけれども、これの緊急往診に係る評価の適正化を図る、こういう対応を行ったところでございます。この診療報酬が決まった後、一部の株式会社がこうしたサービスを見直す動きを公表していると承知してございます。

 先ほど申し上げましたように、先ほど申し上げた議論の中で決まった内容でございます。そういう中で、我々としましては、夜間救急を含めた医療提供体制につきましては、緊急往診の推進に加え、夜間の電話による医療相談、それから救急搬送体制の確保といった地域全体での医療の確保、この取組がしっかり進むよう対応してまいりたいと考えてございます。

大西(健)委員 いわゆる救急の場合には、ふだん訪問診療を使っているという人は少ないと思うんですよね。だから、こういう、いわゆる緊急往診のところが本当に大幅な減算ですから、すごい影響を受けている。だから、もうやめるところが続出しているということなんですけれども。

 一方で、緊急往診というのは、当初は救急搬送の抑制につながることを期待したんじゃないか、だからこそ高い点数をつけていたのではないかと思うんですけれども、この点、厚労省は、この緊急往診による救急搬送抑制効果というのはなかった、こういう判断をされているのか、また、そのエビデンスというのはどこにあるのかを教えてください。

伊原政府参考人 まず、全国の往診の最近の状況を申し上げますと、近年、夜間、深夜、休日の往診の回数が大きく増加してございます。

 一方、救急搬送の件数につきまして、例えば東京都を例にとって令和元年と令和五年の実績を比較しますと、特に十五歳未満や七十五歳以上の搬送人員、件数が大きく増加してございます。

 こうしたことから考えますと、個々のケースでは一概には申し上げられませんが、全体的に捉えると、往診の回数と救急搬送の件数が共に増えているという状況からすれば、逆相関の関係、いわゆる往診が増えることで救急搬送が減少していると評価することは難しいのではないかと考えております。

大西(健)委員 今の判断でいくと、いわゆる訪問診療を受けていないような緊急往診というのは、もうほとんどサービスとして必要ないみたいな、こういう認識に立っているということでしょうか。

伊原政府参考人 先ほど、最初の問いでお答えいたしましたように、昨年、令和六年度の報酬改定において、緊急往診をめぐりましては、日常的に医療の提供が必要な医療的ケア児などの方について、しっかり家で暮らせる体制をするためには、夜の急変とか、こうしたことへの対応が必要であり、それを充実させることが必要だ、こういう御議論がありまして、そこにはしっかり対応していこうと。

 ただ、こうしたケースとは違って、日常的に余り医療を受けていない方への対応は別の考え方があるのではないかということで、改定を行ったということでございます。

大西(健)委員 いずれにしても、先ほど東京都の例を出されましたけれども、これは余りにも急激な減算なので事業者への影響も大きいので、こういう方針転換をする場合には、さっきの訪問介護事業の話じゃないですけれども、やはりちゃんとエビデンスを持ってやらないと、なかなか納得感が得られないんじゃないかなというふうに私は思います。

 次のテーマに移りたいと思いますけれども、一型糖尿病については、小児慢性特定疾患として医療費の助成を受けることができますけれども、これは二十歳になると患者負担が跳ね上がります。このことに関しては、関係者が長年にわたり、何とかできないものかと改善を求めてまいりました。

 先月、京都で、第五十八回糖尿病学の進歩という学会が開催されて、その中の世話人特別企画として、一型糖尿病への公的助成制度の確立を求めてというシンポジウムがありました。私も参加をさせていただいて、厚労省からも登壇をされていましたけれども、そこで慈恵医大の西村先生が、我が国の成人一型糖尿病患者を取り巻く経済的、社会的影響という発表をされていました。

 お手元の資料の三ページにつけていますけれども、このアンケートの結果を見ますと、対象は、大阪公立大学附属病院と東京慈恵会医科大学附属病院という大都市にある病院に通院している、主に現役世代の患者さんたちということになっていますけれども、この回答の中で、医療費のために血糖管理が不十分と回答した人が三三・三%、つまり三分の一いるということです。さらに、その中身を見ますと、受診回数を減らしているという人が四九・二%、インスリン量を減らしているという人が一九・七%いることが分かりました。

 経済的理由で必要な治療を制限せざるを得ないということは、これは私はあってはならないことだというふうに思いますけれども、武見大臣、これを御覧いただいて、若い一型糖尿病患者の中に実際にそういう人がいるということをどう思われますでしょうか。

武見国務大臣 改めて、委員の御指摘で、一型糖尿病のケースでそういう受診抑制ということがあり得るかどうかということについて、やはり実態を把握すべきかというふうに思いましたので、まずは実態をしっかり把握して、対応を考えたいと思います。

大西(健)委員 まさに私は今そのことを言おうと思ったんですけれども、これはサンプル数も限られていますし、西村先生が独自に調査をされたものでありますけれども、繰り返しになりますけれども、お金がないからということで受診を控えてインスリン量を減らしたりすると、これは命に関わることでありますし、合併症によって失明とか人工透析になるリスクもあるということなので、これはやはりしっかり、私も、実態を、西村先生たちの調査にお任せするんじゃなくて、国が責任を持って、経済的理由で治療の制限をしているという実態がないのかというのを、今大臣、御答弁いただきましたので、是非調査をしていただきたいというふうに思います。

 二〇一四年の法改正で、潰瘍性大腸炎が指定難病になりました。生涯にわたって患者負担が継続する疾患で、長期間の経済的不利益を是正する制度がないのは一型糖尿病ぐらいじゃないかと言われています。厚労省は、確定した診断基準があることという要件を満たしていないということで今まで指定難病への追加を渋っていましたけれども、既に二型糖尿病と明確に区別される診断基準というものも示されています。私は、前回質疑したときも言いましたけれども、機は熟しているんじゃないかと思います。

 この点、厚生科学審議会疾病対策部会指定難病検討委員会での検討対象になる疾病というのは、小児慢性特定疾患のうち、指定難病の検討に資する情報が整理されたと日本小児科学会が判断し、同学会から要望のあった疾病であることとされているようですけれども、この点、一型糖尿病の指定難病検討に当たっては、日本糖尿病学会からだけではなくて、日本小児科学会からも要望を上げないとこれは駄目だということなのかどうなのか、この点、厚労省に確認をさせてください。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、既に小児慢性特定疾病、これに指定されている疾患につきましても、難治性疾患政策研究事業において、指定難病の検討に資する情報が整理されているというふうに判断をされ、研究班から情報提供があった疾病としての要件を満たせば、日本小児科学会の要望、これは必ずしも必要ではございません。

大西(健)委員 ありがとうございました。確認をさせていただきました。

 次に、私は一型糖尿病を指定難病に加えてもらうのが一番いいと思っているんですけれども、例えば、二十代だと大学生もいますよね。バイト代や仕送りをやりくりして、友人との食事を控えたり、衣服にかける費用を節約したりしている学生に充実した学生生活を送らせてあげたいと大臣も思われませんでしょうか。

 社会人になりたての頃は、給料も安いし、医療費の負担のためにデートにも満足に行けない。自己負担の重さが結婚のハードルにもなるかもしれません。せめて、一番苦しいこういう二十代の患者さんへの支援だけでも私は考えられないものかなというふうに思っております。

 この点、資料の最後につけましたけれども、これは佐賀新聞の記事なんですが、佐賀市の認定NPO法人、日本IDDMネットワークは、若者を切れ目なくサポートしようと、佐賀県内の二十五歳までの患者を対象に、月額最大三万円の医療費支援を四月から始めます。財源は企業版ふるさと納税ということなんですけれども、私はこれはすばらしい取組だと思います。佐賀県だけではなくて、全国の一型糖尿病患者が同様の支援を受けられるように本来すべきであって、国がやらないから、NPOや自治体がやむを得ずやり始めるということだと思います。

 国は、この佐賀での取組の実施状況を注視して、これをモデルに全国に、若い一型糖尿病患者への経済的支援、この仕組みを検討すべきだと思いますけれども、大臣、これを見ていただいていかがでしょうか。

武見国務大臣 委員御指摘の一型糖尿病は、児童福祉法における小児慢性特定疾病でありまして、原則十八歳未満の児童を対象として、引き続き治療が必要と認められる場合には二十歳まで医療費助成の対象であります。

 佐賀県では、企業版ふるさと納税の制度を活用して、寄附者である企業から自発的な支援を原資として、主に二十歳から二十五歳までの一型糖尿病患者への医療費助成が行われるものと承知しております。

 若年の一型糖尿病患者の医療費の負担については、既存の制度であります医療保険の高額療養費制度などを御活用いただくことによって、その負担の軽減が図られるものと考えております。まずは、実情に応じて、既存の制度の活用をしていただきたいと考えます。

大西(健)委員 実は、これは高額じゃないんですよ。余り、額はそんなに大したことはないんですけれども、これが一生涯続くわけですよね。しかも、若い間は非常に経済的にも、給料が安いとか、学生のときは仕送りだとかで生活しているわけですから、だから佐賀の取組というのは非常に私は先進的な取組で、せめて若い間だけでも支援する。本来は私は指定難病にしていただきたいと思いますけれども、これは是非もっと前向きに、大臣、ちゃんと、四月から始まりますから、検討状況、ちょっと見ていただいて、これはいいなということになれば、佐賀だけの人たちが恩恵を被るという話じゃなくて、全国に広げていただきたいというふうに思います。

 ちょっと時間がなくなったので、最後に、先月群馬県で、小学生ら十二人が犬にかまれて、五人が病院に搬送されたという事件がありました。飼い主は狂犬病の予防接種を受けさせていなかったために、県警は狂犬病予防法違反の疑いでも調べを進めています。飼い主は、ワクチンが犬の体に悪いと考えていたと言っているそうです。

 狂犬病は致死率が一〇〇%という恐ろしい病気ですけれども、平成五年は九九%を超えていた接種率が全国平均で七〇・九%まで低下してきている。狂犬病の予防接種の接種率の低下の背景には、ネット上で、ワクチンの接種が犬の寿命を縮めるという誤った情報が流布されているということにあると言われています。

 狂犬病は、国内では昭和三十二年を最後に発生はありませんけれども、平成十八年及び令和二年には、フィリピンで犬にかまれて、日本に帰国後発症したという例があって、注意は必要だと思います。

 誤った情報によって接種率が低下している現状に対してどのように対応しようとしているのか、大臣から御答弁いただきたいと思います。

武見国務大臣 委員御指摘の、ワクチン接種が犬の寿命を縮めるとの情報は、科学的根拠は全くありません。こうした狂犬病ワクチンについて事実と異なる情報が一部のSNS等で発信、拡散されているということは極めて不適切であります。

 厚生労働省としては、狂犬病の発生の予防や蔓延防止のため、犬の所有者の方々に、正しい理解の下、予防注射や市町村への登録等の狂犬病予防法で定められた義務を果たしていただくことが重要と考えております。

 これまでも、自治体や獣医師などの関係者を通じたポスターなどの配布、それからホームページやSNSでの発信等を通じて狂犬病予防接種の呼びかけを行ってきておりますけれども、引き続き、正しい情報を確実に、厚生労働省としては発信していきたいと思います。

大西(健)委員 時間になりましたので、終わります。

新谷委員長 次に、吉田統彦君。

吉田(統)委員 立憲民主党の吉田統彦でございます。

 本日は大臣所信に対する質疑ということで、早速始めさせていただきたいと思います。

 まず、先週八日の大臣所信での大臣の御発言に関してお伺いしてまいります。

 先週の大臣所信をお聞きして、私、正直なところ、愕然といたしました。話された内容そのものは、耳触りのよい言葉が並んでいます。しかし、もしかしたら、大臣は現場の状況を全く御存じないのではないか、おっしゃられた内容を本当に理解されているのか、極めて疑わしい、まさに画餅、紙上に兵を談ずという印象を私は受けました。

 まず最初に、医療DXの推進に関して伺います。

 先日の大臣所信の中で武見大臣は、電子カルテ情報の標準化や電子処方箋の普及拡大、診療報酬改定DXによる医療機関等の間接コストの軽減などを着実に進めますと発言されましたね。しかし、これは現場の実感、事実と全く反しています、大臣。

 私は以前から、電子カルテの導入など医療DXの推進で間接コストが減少することはない、むしろ、そもそも導入の際に莫大なコストが必要です。それ以降も、継続的なメンテナンス、保守管理料を毎月取られます。そして、定期的に電子機器は交換しなければいけません。これは新規導入と同じぐらいコストがかかるんです。

 電子カルテ、電子処方箋、電子レセプトなどを取り扱う人件費の増加、つまり、このDXを扱う人の雇用が、一般のクリニックにおいてすら最低一人、多いと数人必要になり、特に小規模なクリニックで、医師、看護師一人ずつでやっているようなクリニックで、業務の余力もないわけですから、人を雇う財政的な余力もなくて、廃院になる例も本当にあるんですよ。

 このような状況を本当に大臣は認識されて、あの御発言をされているのか。その上で、なぜ、所信において、医療DXが間接コストの軽減に資すると発言されたのか、具体的に教えてください。

武見国務大臣 電子カルテ情報を医療機関の間で共有するためには電子カルテシステムの標準規格化が必要であって、厚生労働省としては、令和六年三月末から、病院を対象に、標準規格化の導入のために改修費用を補助することとしております。また、電子カルテ未導入の小規模な医療機関については、厚生労働省で標準型電子カルテを開発をし、そして提供していくこととしておりまして、クラウド技術を活用して医療機関システムを共有することで維持負担が軽減されるよう、現在、その仕組みを検討しているところであります。

 なお、ランニングコストに対する補助そのものではありませんけれども、令和六年度診療報酬改定において、新たに医療DX推進体制整備加算を設けております。これは、オンライン資格確認により取得した診療情報、薬剤情報を実際に診療に活用可能な体制を整備をして、また、電子処方箋及び電子カルテ情報共有サービスを導入をし、質の高い医療を提供するため医療DXに対応する体制を確保している場合の評価として、これを導入をさせていただいております。

 こうした取組を通じて、電子カルテの導入を引き続き後押ししてまいりたいと思います。

吉田(統)委員 全く答えていないですし、全く分かっていないですね。全然足りないんです。大臣、全く足りない。何とか加算でごまかそうとしているけれども、現実的にマイナスなんです。ちょっと、じゃ、試しに、大臣、調査してみてくださいよ。全部マイナスですよ。全医療機関、どんな加算をされていようが、今までのところ、マイナス、大幅に。これを理解して言っていらっしゃらない。

 あと、マイナ保険証でも、じゃ、一言申し上げますよ。あれは最新の、直近の薬の情報とかは得られないんですよ、大臣。遅れるのは分かっていますよね、大臣。本来、我々が知りたい、医者の委員もいますけれども、一番知りたい最新の状況が知れなくて、何が医療情報の共有なんですか。厚生労働省、本当にもうちょっと考えた方がいいですよ、これは。一番知りたいデータがない。それで、どうやって最新の情報を共有するんですか。紙の紹介状でもらった方がよっぽど正確なんですよ。分かっていますか、本当に。

 本当に皆さん、現場を知らなさ過ぎる。浅沼さんなんかは尊敬していますけれどもね。審議官とか局長、こんなにたくさん来なくて、大臣が答えれば本当はいいと思うんですけれども、皆さん来られているからあれだけれども。

 大臣、全く分かっていない。じゃ、一回調査してくださいよ、どれだけこの医療DXが医療機関に負担をかけているか。大病院になればなるほど本当に悲惨ですよ、これは。今大臣がおっしゃったことは、役人が書いているんだろうけれども、ごまかしているだけなんですよ。加算、加算、加算、でもマイナスです。分かっていますよね、厚労省、賢いから。だから、根本的に、それだったら、ちゃんと人一人雇えるぐらいの、そして大病院だと十人ぐらい雇えるぐらいの加算をしてくださいよ。本当に困ります、これは。

 じゃ、次に行きます。

 創薬基盤の強化等についても大臣はおっしゃっていました。

 アカデミアが、海外ベンチャーやアカデミア、製薬企業等と相互協力して、スタートアップの立ち上げ、成長を支えて、創薬の基盤拠点となることを目指す、これは大変よいと思います。その後で、海外の主要な関係者とも連携しつつ、アカデミアの研究を質の高い製品として創製していく上でのガバナンスを確立しますと発言されています。

 これはまさに、私が以前から申し上げている、遺伝子治療などの、製薬会社に頼らずに、アカデミアだけで完結する最先端医療の推進の話だと思って私は聞いていたんですが、いかがでしょうか。確認させてください。

 また、この話、以前この件に関して質問した際に、答弁は次第にだんだん前向きになってこられたんですね、各大臣。最後は審議会で検討中とお聞きしたように記憶しておりますが、その進捗状況を教えてください。

武見国務大臣 特に遺伝子治療を進めるに当たっては、製薬メーカーによる製品化の場合に加えて、アカデミアが治療に活用する場合においても、その安全性の確保は重要な課題であると考えております。

 そして、これらのアカデミアが創薬のシーズというものを開発する能力を高めていくことをいかに支援していくか、ここが私は我が国における創薬の基盤を再構築していく上での一番基本的なところだろう、そう考えて、所信の中でもそうした思いを込めて説明をさせていただいた次第であります。

 その中で、まだ様々に再生医療につきましてもその整備が整っていないところがございますから、そこは確実にその都度改正をしていく必要性があると考えております。

吉田(統)委員 私は、大臣、ここは本当にすばらしい所信であったと思って申し上げているんですけれども、ただ、私の感覚では、シーズというのは、逆に言うと、世の中にそもそも存在する、そういった、薬というのはそうですね、大臣はお詳しいと思いますけれども、元々存在するものを使ってシーズというのは出てくると思うんですよ。

 遺伝子治療とか再生治療というのは、ちょっと私は違うと思うんですよ。ないところから作るわけですよね。遺伝子治療というのはそうですよね。CRISPR―Cas9とかが今あるので、本当に遺伝子編集がすごくやりやすくなって、ないところから作り出すことができる、これが遺伝子治療なわけなんですね。もちろん、ベクターとかを使ったり、いろいろなことはするんですけれども。だから、本当のシーズというものとは違うと思うんです。本質的なシーズ、広義のシーズというふうにお考えになっておっしゃっているのかもしれないですけれども、大臣、そことは違うんですよ。

 だから、遺伝子治療というのは、製薬会社がなくても治療できるんです、本質的に。やはり、狭義のシーズと言い換えましょうか、狭義のシーズを使った創薬というのは、製薬会社の力が絶対に必要ですし、製薬会社に頑張っていただかなきゃいけない。しかし、遺伝子治療の場合は、時として、アカデミアが作ったものの方が安価で質がよくなることも多いんですね。

 ですから、ここは何も製薬会社を介して高い医療を作り出さなくても、そういうことなんです、大臣。例えばゾルゲンスマ、一億超えていますよね、大臣。ウェルドニッヒ・ホフマンとかに使う、病気、命を救うすばらしい薬だと私は思います。キムリアとかも数千万しますよね。オプジーボ、今大分安くなりましたが、高いですよね。ただ、こういったものを作らなくても、アカデミアでやらせれば、これは一つの例ですけれども、数千万かかるところが百万円で済むものもあるんです。

 だから、こういったことをやはりやっていかないと、保険財政だって、昔は影響はないと厚労省は答えていたけれども、影響も考えますと答弁が変わってきましたよね。昔、私が聞いたときは、影響はないと。ゾルゲンスマとか、その辺になってくるとちょっとあるかなみたいな感じになってきたので。そういったことを、大臣、考えてやっていただきたいんです。

 だから私は、大臣、もう一度問いますが、遺伝子治療に関しては、アカデミアだけで完結させてもいいんですよ。ただ、そのためには、ルール、クライテリア、ガバナンスが、大臣がおっしゃったように大事なんです。だから、もう一度私が聞きたいのは、これは日本で遺伝子治療をやっている医学者や医師を非常に勇気づける発言になる可能性が高いので伺いたいんですが、大臣、アカデミアだけで遺伝子治療として成立させていく、そういったお気持ち、つまり、製薬会社なしで、大学病院あるいはアカデミアだけで遺伝子治療を完結させる医療というのを今後日本で育ててつくっていくお気持ちがあるのかということを聞かせてください。

武見国務大臣 日本のアカデミアのレベルは、私、まだまだ相当高いというふうに理解をしております。

 ただ、問題は、従来のアカデミアの中で、いわゆる創薬と結びついたシーズに関わる研究開発能力という点に関しては、そこを十分に焦点を当ててアカデミアとしての基礎研究を含めた研究というものが我が国の中で十分発展してきたかというと、そこはまだもう一つ強化すべき対象になっていると思います。

 その上で、こうしたアカデミアに対するそうした研究というものについては、実際にどこまでそれが創薬として成功するかどうかというのが不透明なために、アカデミアだけで資金を調達をして、アカデミアだけでそれを創薬として完成させるというのはなかなか無理のあるところだろうと思います。

 したがって、スタートアップといったところ、さらにはバイオのベンチャーキャピタルといったようなところも組み込みながら、そして、それが第一相、第二相の治験と結びつくという過程になってくると、ここは製薬企業というところとも連携をして、そして創薬として完成させる、これがいわゆるエコシステムと呼ばれているものだと私は理解しております。

 しかも、先生御指摘のように、こういったバイオに関わる新たな創薬の基となるところは、もはや製薬企業の中の研究所ではなくて、様々な、アカデミアを含めた、そうした研究機構の中で実際にそうした研究の初動時期ができていますから、そこをいかに育てるかという考え方を私は持っております。

吉田(統)委員 全然分かっていない。駄目だ、これは。

 ちょっと役所から答えて、ちゃんと。これは全然駄目。申し訳ないけれども、分かっていない。現場が分かっていないし、世界のレベルを分かっていないし、今の話を学者が聞いたら、これはやばいぞ、これはまずいなと思います。理解を全くしていないし、申し訳ないけれども、適当な答弁をしてごまかしているとしか思えない。だって、分かっていないし、私が言っていることに答えていないんだから。ちょっと役所から答えてもらえますか、ちゃんと。

内山政府参考人 お答えいたします。

 先ほど大臣からもお答え申しましたように、遺伝子治療についての御質問だったと思います。

 遺伝子治療につきましては、当然、製薬メーカーによる製品化の場合はもちろんあるわけですけれども、御指摘のように、アカデミアが治療に活用し、アカデミアで完結するといいますか、アカデミアだけで行うという場合もあると思っていまして、先ほど、ここのところは大臣から、製薬メーカーの製品の場合も、当然アカデミアでも安全性の確保は重要であるということを申し上げて、そのために、先ほど審議会の検討のお話を答弁させていただきましたけれども、今回、エクスビボ遺伝子治療に加えてインビボ遺伝子治療も再生医療等安全確保法の対象とするような法改正について閣議決定をさせていただいたところでございます。

吉田(統)委員 ちゃんと答えていますね。

 ごめんなさい、大臣、これは役所の書いた人が悪い。僕は細かくこれはレクしておいたので。だから、ごめんなさい、ちょっと、大臣よりも役所の書いたのが悪かったなと思うんだけれども。

 これは、今役所が、今の答弁でいいんです。だから、これは、大臣、全然違うと思った方がいいんです。大臣が思っている一般的な創薬と、遺伝子治療というのは全然違うんです。さっき言ったように、ゼロから、無なんですよ、遺伝子治療というのは。だから、作り出すんですよ、ラボで。だから、そこが、本質的に理解をして、全く別物と捉えて法律とか行政もやっていってくれていると思うんだけれども、しないと、世界の潮流に本当についていけなくなっちゃうので。

 大臣、ちょっと是非、ごめんなさい、私がかなり……(発言する者あり)元大臣から、今、高度過ぎるという話がありましたけれども、ただ、役所にはちゃんと細かくレクしたので。ほら、うなずいていますもん。ちゃんと役所は分かっていますよ。

 だから、ごめんなさい、これでやめますが、大臣、ここは、一度ここにコミットして、大臣の思いはやはり日本の創薬を前に進めるということで、私はそれは本当に信じています、分かっています。分かっていますが、一般の薬と遺伝子治療というのは、大臣、全く別物だと考えてほしいんです。

 そして、再生治療も別のカテゴリーだと思っていただいた方がよろしいかと思います。ただ、再生治療はなかなか、フラッグシップであった網膜の加齢黄斑変性の治療なんか、はっきり言ってうまくいっていないので。iPSよりやはりES細胞の方が現実的に使いやすいという、クオリティーが高くなるというやはり状況もあるので、難しいと思うんですが。

 ただ、遺伝子治療に関しては、また、大臣、ここは世界に日本が勝てる可能性がある、今、唯一と言ってもいいポイントなんですよ。世界から、まだ今、日本は優秀な人材が教授で戻ってきてくれているんです、この遺伝子治療に関しては。ここで大臣、勝ち切らないと、遺伝子治療も日本は世界に負けますから、大事なポイントなので、大臣、ちょっとしっかりコミットしていただいて、私は、大臣は医療のことはお詳しいし、大変聡明な大臣だと信じておりますので、是非またそこは検討していただいて。

 もっと言えば、アカデミアでどんどん遺伝子治療、安全性はもちろん、クライテリアは大事ですけれども、やらせればいいんです。やらせて、世界のトップクラスのものを生み出させればいいんですよ。是非頑張ってください。

 では、次に行きますね。

 大臣はまた所信の中で、医薬品の安定供給の確保は、国民の健康、命を守るための重要課題です、ドラッグロスの解消については、未承認薬のうち我が国に必要性の高い医薬品を優先して対応し、企業における開発が進むように戦略的に対応するための取組を進めてまいります、また、後発医薬品の供給不足に対応するため、せき止め薬など、更なる増産への企業の投資を支援するとともに、少量多品目生産といった非効率な製造が行われている産業構造上の課題解決等にしっかりと取り組んでまいりますと発言されましたね。

 この後段のところは合っていると思います。確かに医薬品の安定供給の確保は重要な課題ですが、現状は大臣が思っているよりもっと悲惨ですよ。

 最近ですと、沢井製薬の問題で、ジェネリックの不足ということが盛んに言われていますよね。ただ、実は先発薬も足りていないんですよ、大臣。

 実は、後発品が存在しない先発品というのが、大臣、あるじゃないですか。あるんです。昔からある薬ですね。こういった薬は、普遍的に使われている、つまりユビキタスなものです。よく効くので国民生活や医療にとって非常に大事な薬なんですが、ここ二、三年で、供給状況、一番ひどいのは今です。供給不足、今が一番ひどいです。本当に初めてですよ、私も二十五年、四半世紀、医者をやっていますが。今や、もう毎月のように、この薬がない、今度はあの薬が足りないと薬品卸の担当者から言われ続けます。

 こういった薬は、大臣、なぜか薬価が安過ぎて生産中止とか製造停止になるんですよ、簡単に。これは当然ですよ。さっき福島委員からもあったんですが、毎回薬価が減額改定されている、この診療報酬上のシステムが最大の問題です。そのツケがもう臨界点を超えて、日常の診療が成り立たなくなってきているんです。

 大臣、所信での発言どおり、本当に医薬品の安定供給が実現できるのか。現状は大臣が思っているより最悪な状況です。政府が対応を始めてからでも一番悪い状況ですが、どうでしょう、大臣。

武見国務大臣 御指摘のとおり、後発品だけじゃなくて、先発品というものの安定供給というのが大変重要であるということは、共通の認識をちゃんと持っております。

 こうした安定的な供給について、せき止め薬などの一部の感染症対症療法薬が現在課題となっていて、そして、令和五年度の補正予算によって、製薬メーカーにおいて更なる増産への投資を行っていただくための緊急的な補助事業も設けました。これで、増産ラインとともに、そこで必要とされる人件費まで対応できるようにしてあります。今のところ十四社が応募してくれていて、そのうち五社はその事業にそろそろもう入る段階に入ってきております。

 これらの事業に対して、多くの企業からこのように申請をいただき、採択を行ったところでありますけれども、その採択先としては、後発メーカーのみならず、これは先発品メーカーも対象としているんです。

 また、後発品だけでなく、先発品に係る医薬品の供給不安の事案が生じた場合は、製薬メーカーから出荷量や代替薬等の報告を受けて、在庫量等の詳細のヒアリングや、医療機関等への適正使用依頼などを行うといった取組も実施しているところでございます。

 医薬品の報告徴収の仕組みについては、供給不足をより早期に把握して速やかに対応を可能とするために、供給不足が実際に生じた場合の報告と、供給不足が生じるおそれが生じた場合の報告に時期を区分して求めることとするなど、本年四月から運用の改善強化を図ります。

 こうした取組を通じて、先発品も含めた医薬品の安定供給に向けて、足下の供給状況の把握及び供給不足の解消などにしっかりと取り組んで、国民に必要な医薬品を確実に届けていきたいと思います。

吉田(統)委員 全然改善されていないですよ。大臣、頑張ってください。頑張ってくださいと言うしかないので。

 ただ、大臣、本当に、さっき申し上げましたけれども、薬価を下げて診療報酬本体に足すというやり方をやめないと、これは延々と起こりますよ、次から次に。

 じゃ、もう一つ、ちょっと関連で言いますね。

 大臣、さきの所信の中で、大臣は、花粉症を含むアレルギー疾患対策についても着実に推進しますと発言されましたね。大臣、覚えていますね。大臣、アレルギーの治療薬が今むちゃくちゃ不足しています。大臣、聞いていますか、ちゃんと。

 眼科でいうと、例えば、アレルギー性の眼瞼皮膚炎などに使用する眼軟膏は、後発品が存在しない先発品なんですよ、全部。これは全部、今ありません、不足。ステロイド点眼剤も、今年、どうもアレルギーがひどいので必須なんですけれども、ほぼ全部、調整がかかったり、出荷停止になっています。本当に大臣のお話は、全く現実離れ、浮世離れしているんですよ。

 今まさに、もうアレルギーのシーズン、みんな、目がかゆい、鼻がぐじゅぐじゅする、熱、感冒様症状が出る、こういった状況になっているんですけれども、薬がないんです、大臣。だから、アレルギー政策を着実に進めるどころか、アレルギー対策が今、現実的に、大臣、できないんです。この状況をどうされるんですか。

武見国務大臣 眼科で用いるコルチゾン含有の点眼薬については、一部の製造販売業者において製造工程の調査及び改修が必要となった中で、さらに花粉症を含むアレルギー疾患等による需要の増加のために、多くの品目において限定出荷又は出荷停止が行われている状況だというのが深刻な状況だというのは理解しております。

 厚生労働省においては、その製造販売業者に対して、製造工程の調査及び改修が必要となった原因、それから在庫状況それから出荷再開の見込みなどを確認をいたしまして早期改善を指示するとともに、他の製造販売業者が代替品について可能な限りの出荷を行っていることを確認しております。また、当該製造販売業者においては、四月には出荷状況の改善が見込まれていると聞いております。

 アレルギー疾患対策については、アレルギー疾患対策基本法や指針を策定をし、例えば、治療法に関する研究の推進、それからアレルギーポータルというウェブサイトを通じた治療法や医療機関情報等の情報の発信、それからアレルギー疾患に対する医療提供体制の整備、それから医療従事者等に対する研修会の実施などに実際取り組んでおります。

 花粉症を含むアレルギー疾患対策は重要であるというふうに認識しておりますので、アレルギー疾患における医薬品供給不安の早期の解消のために取組を着実に実行していきたいと思っておりますので、共通認識であろうと思います。

吉田(統)委員 大臣、ありがとうございます。

 四月だと杉花粉は大体、大臣、もう収まってきますので、ちょっと遅いのでございますけれども。今まさに困っている、委員の中にも困っている方はたくさんいらっしゃる。本当に、四月だとちょっと流行期を過ぎて、まあ、年中花粉症はあるので、大臣、頑張ってやってください。期待しています。今おっしゃっていただいた、ちゃんと前に進むことを期待します。

 時間がなくなってきたので、文科省、せっかく来てくださっているので、ちょっとやります。

 以前から質疑でも私は申し上げておりますが、我が国における研究職の待遇はかなり低く抑えられているんですね。これは金額面でもそうですし、雇用条件でも任期つきとか、これは先日の予算委員会の第四分科会でも少し話しました。実は最近、余りにもひどい求人をネットで見つけましたので、申し上げたいと思います。

 これは、国立大学法人である電気通信大学の助教の求人です。時給が千二百九十三円。さらに、これは時給が安いだけでなく、驚くべきことに、付随する条件も悪く、任期制かつ、次がやばいんです、テニュアトラックなしなんです。研究職という専門職の求人がこんなに低い条件になって、しかも、これは電気通信大学、皆さんのお膝元の大学と言ってもいい。

 文部科学省として、こんなことをやらせて大丈夫ですか。どうぞ、政府参考人。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまの電気通信大学の特任助教、ポスドク等だと思いますけれども、その方の時給の関係でございますけれども、私どもも大学の方に少し確認をしてみました。

 そうしましたところ、電気通信大学サイドの話といたしましては、この募集を行うに当たりまして、本来であれば、給与について、本人の経歴と大学の規定する俸給表に照らして金額を決定するという旨が記載されるべきところ、今回恐らく、御指摘の件につきましては、大学院生のリサーチアシスタントの単価を誤って募集に記載をしてしまったということでございまして、その旨大学の方も気づきまして、本来のきちんとした記述ぶりで今募集をかけているというふうに聞いておるところでございます。

 以上でございます。

吉田(統)委員 間違いでよかったですよ、逆に。これは本当に、見たとき、この国はどうなっちゃうんだろうなと思ったんですよ、本当に。だけれども、学生向けですか、これは。学生、大学院生ね。

 とにかく、ただ、恐らく、それでもなお、多分募集は来るんですよ。この条件で間違いじゃなかったとしても、来ちゃうんですよね。

 だから、こういう募集に関しては、今回は、自分たちで取り下げたのか、あるいは募集が来て取り下げたのか知りませんけれども、文部科学省としては、ちょっとここはしっかりと今後も。だって、文部科学省としても、これはあってはならない求人という理解でいいんですよね、うなずいてくれれば結構ですけれども。うなずいてくれればいい、時間がないから。あってはならない求人ということですよね。分かりました。こういう求人はちょっと、間違いでも出さないでください、びっくりしますから。分かりました。ただ、労働基準は一応満たしてもいるので、あれですけれども。

 じゃ、ちょっと最後、医師の働き方改革が喫緊の課題なので、大臣に聞きます。

 大臣、四月から医師の働き方改革、大臣も医師の団体からたくさん応援をいただいていらっしゃるということはよく分かっておりますが、大学の研究者が特にこれはまずいんですよ。例えば、まず、専門医を取るための何か講習を受けたりとかも時間外にされちゃったり、あと、僕はこれは本当にまずいと思いますね、講習会、時間外に入れられちゃったり、あと、何といっても、アルバイトなんですよね。

 大学病院は、給料は高くないんですね、大臣。アメリカの大学病院は給料が高いですけれども、日本の大学病院は給料が安いです。ある大学教授が、退官のときに最終講義というのをやるんですけれども、このときに、俺は、余り安過ぎるから給与明細を出したいと言ったんですね。すごい有名な教授ですけれども、「プロフェッショナル」とかにも出た。私はそれを止めましたよ。それは、大学としての品位もありますから、先生のお立場もありますからと私も必死に止めましたよ。そうしたらスライドを削除していましたけれども。安いんです、本当に。

 やはり大学病院の医師たちは、アルバイトに行ったり講演をしたり、そういったことで何とかなりわいをそれなりに保っている。大学病院にいるとお金がかかりますから、学会費だとか結構そういうのもかかるので、海外の学会に行ったら何十万とかかります。こういった中で、アルバイトとか専門医の更新の時間も時間外にされちゃうと、要は、アルバイトをまずできなくなるんですよね。給与が減るので、じゃ、どういう発想になるかというと、もう辞めようかな、開業しようかなとなるわけですよ。

 大臣、本当に日本の医療は、アカデミアに一生いる医者、勤務医を一生やってくれる医者をいかに保つか、これが、日本の医療を守るため、医療崩壊をさせないためには最も重要ですよね。だって、開業医が増えればパイの取り合いになるし、また、経営的なことも考えても、医療費だってやはり増えていくと思いますよ、それは当然。

 ですから、ここは本当に非常に大事なポイントで、今これはまさに失政と言ってもいい状況にはなっているんです、大臣。どんどんどんどん開業していきます、大学のアカデミアの医師たちが。そうすると、今度は、大学の医者がいなくなると大学の機能が保てなくなるので、派遣している医者を引き揚げざるを得ないんですよ。だから、三重なんか、元大臣、田村大臣の地元三重なんて本当に、大学が尾鷲とか地方に医者を送って何とか医療を守っているんです。これを引き揚げなきゃいけなくなっちゃう。そうすると、地域の基幹病院も成り立たなくなるし、地域の私立の病院なんかも、大学からの医師の派遣に頼って地域の医療を守っているんです。これは全方位的に悪いんですよ。ありがとうございます。田村元大臣からも声援をいただきました。

 もう一度言いますが、医師の働き方改革で大学のアカデミアの医師たちが、アルバイトをできなくなる、あるいは専門医の時間も加算されちゃうなんということで、どんどんどんどん開業しようとしている。そうなると、開業医はパイの取り合いにどうしてもなる。そして、医療費だって恐らく上がってくる。そして、大学の機能は低下をする。大学の機能が低下をすると、中核病院や地域の病院に医者が送れなくなる。私立の病院なんて、本当に当直がやばいんですよ、大臣。当直してもらう大学の先生たちが寝当直で時間外にされちゃったら、もう成り立たなくなっちゃう。

 これは現実に四月から起こるので、大臣、どういったお考えで、どう対応していくのかをお答えいただけますか。

武見国務大臣 医師の働き方改革については、やはり大学を含めて、こうした病院の勤務医の働き方については様々な問題が現実に発生していることは委員御承知のとおりであって、そこが一つの問題意識となって、こうした医師の働き方改革というのにつながってきているように思います。

 ただ、御指摘のように、大学病院のように研究と教育と臨床の三者を全部一遍にやらなきゃならないというところが、実質的に我が国におけるこうした医師の人材を育成をして供給する元になっておりますから、そこが実際に、安定的にそうした人材を育成して、そして、地域医療の中でも実際に診療所等において働く医師としてその力を発揮させていただけるように、バランスよく組み立てなければならないんだろうと思います。

 ただ、現状では、やはりこの働き方改革というものを通じて、厚生労働省では、大学病院における働き方改革をまず進めようと。

 令和六年度予算案では、地域医療介護総合確保基金で、勤務環境改善の取組の上乗せ支援であるとか、長時間労働の医師が所属する医療機関への医師派遣に対する支援などを計上しておりますし、また、令和六年度の診療報酬改定では、四十歳未満の勤務医師、事務職員等の賃上げに資する措置として、入院基本料などの見直しなども行おうとしているわけです。

 文部科学省においても、令和六年度予算案では、医学系大学院生等がティーチングアシスタントやリサーチアシスタントとして研究に参画する場合に人件費等の経費を支援する事業を計上するなど、大学病院における研究の更なる推進に取り組んでおりまして、厚生労働省と文科省、連携しながらこれを進めております。

 これをまずは着実に実行していくということで、実際にその後、先生御指摘のような課題が生じてくるという予兆が見えたとすれば、それにいち早く対処することを再度考えるということになるだろうと思います。

吉田(統)委員 予兆は、大臣、もう見えています。やめるなら今が最後のチャンスです。急いだ方がいいですよ。大臣、今おっしゃったように、もうやめますが、予兆はもう既に見えていますので、やめさせてください。これが最後、乾坤一擲のチャンスであることを申し上げて、終わります。

新谷委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 立憲民主党の阿部知子です。

 冒頭は、予告、通告しております以外の質問で恐縮ですが、武見大臣にお願いいたします。

 武見大臣は、現在、厚生労働大臣でいらっしゃいますが、元々、外交、経済、幅広い見識をお持ちの方と思っております。そして、今年二月の予算委員会で、私が、現状、パレスチナのガザ地区における人道状況が極めて深刻になっておると。その中で、パレスチナの難民救済支援事業を担うUNRWAへの資金停止ということを日本政府が決めて、現地からは保健局長、清田さんがわざわざ日本に来られて、何とか本当に命をつなぐために再開をしてほしいということをお話しにもなり、辻外務副大臣にもお伝えしたと伺っております。

 この件に関しましては、最近、カナダとスウェーデンがUNRWAへの資金の再開ということを始めております。人道状況の悪化等、一定の国連での調査の進捗を見てのことでもあろうかと思います。また、公明党の皆さんは、政府に、UNRWAへの支援再開を申し入れられております。

 大臣は政府の中で特に重要なお立場と先ほど申し上げた見識をお持ちと思いますので、UNRWAへの支援の再開、急がれますので、大臣からも是非政府全体をプッシュしていただきたいが、いかがでしょう。

武見国務大臣 私も、この間、清田先生が御帰国されたときにお会いをし、今、ガザ地区における極めて非人道的な状況についてのお話は伺いました。また、その際にも、UNRWAに対する支援というものの早期再開の要請を受けております。

 その上で、これは所轄は外務省でありますけれども、やはりこうした人道的な課題に関わるUNRWAへの支援というものはできるだけ早く再開をしたいというふうに私は思います。

 ただ、やはりその中で必要とされるのは、国連が今まさに第三者でこうした調査を行っていることによってその結果がこの三月中にも公表されるということでありますので、その結果をきちんと踏まえて、実際になるべく早くUNRWAに対する支援を再開することが最も適切ではないかと思います。

    〔委員長退席、大串(正)委員長代理着席〕

阿部(知)委員 今大臣の御答弁にもありましたように、国連が調査中であると。そのことをもって支援を停止した国と再開した国がございます。毎日、百人から百五十人の子供たちが死んでいきます。刻一刻の問題と思います。人道ということを考えたときに、どちらかに寄るものではない、そこにある命をどう支えるかであることは、大臣も、人間の安全保障・外交議連をやってこられましたので、どなたよりも御存じと思います。改めて私から要請しておきますので、御答弁はそれ以上のものがないと思いますので、この件についてはここまでといたします。

 さて、本日は、ハンセン病対策についてお伺いをいたします。

 大臣は、三月八日の所信の中で、ハンセン病の元患者の御家族への補償制度を着実に実施するとともに、ハンセン病に対する偏見、差別の解消等に全力で取り組みますというふうにおっしゃっておられます。

 そして、大臣、まず一枚目の資料から御覧いただきたいですが、ここには、現在十三あるハンセン病の療養所で、入所者の数、そして平均年齢というものを昨年の五月一日現在の数値で挙げさせていただきました。

 既に指摘されているように、入所されている方が減少し、御高齢化されて、さらに、元々ハンセン病による病以上に、例えば施設内で作業活動などに関わったために手足の変形がひどいなど、また様々な問題を抱えておられます。そして、現状減っていく入所者数等々を考えると、いわゆる存続の危機に関わると言われているところであります。

 患者さんの入所者、全療協などからも、しかし、ここで命が最後まで支えられる体制を望むということは繰り返し協議会等々でも発言されていると思いますが、厚生労働省にあっては、この間、特に看護体制において人員削減を実施しております。二〇一五年から一八年はいわゆる定員削減の実質、枠除外ということがなされてきましたが、二〇一九年から二四年にかけては五年間で一〇%の削減ということになり、今年また二〇二五年以降の見直しがなされるところであります。

 私は武見大臣にお伺いしたいですが、この五年間の一〇%削減で果たしてどんな事態が起きているのか、厚生労働省としては入所者の安全面、あるいは入所者からの御意見など聞き取りをなさったのかどうか、そして、そもそも削減ありきではない対策が必要とされると思うが、いかがでしょう。一点目です。

武見国務大臣 先生御指摘のこの合理化の話でありますが、現在の定員合理化計画においては国立ハンセン病療養所の定員も対象となっており、入所者の減少に合わせて今後も一定の合理化を求められていくものと考えられます。

 一方で、入所者の高齢化、先生御指摘でありますけれども、それに伴い、医療、介護を要する入所者が増加している現状を踏まえますと、入所者の療養環境の充実のために必要な定員は確保していく必要があることから、厚生労働省としては、今後、関係省庁と必要な調整はそのために行ってまいります。

 その上で、医師の確保は非常に重要な課題として認識しておりますので、療養所近隣の大学などを直接訪問して協力の依頼をし、就職説明会への参加やパンフレット等の作成、配布などを積極的に行って、人材の確保に努めております。

 引き続き、入所者の皆様が良質な療養を受けることができるよう、必要な人員の確保に取り組んでまいりたいと思います。

阿部(知)委員 医師の人員確保に御尽力いただいていることは、例えば外務省に、海外公館にお勤めだった方が帰国されて勤められるなど、いろいろな工夫をされていることは承っております。

 一方、私が今お尋ねしたかったのは、やはり、この五年間の削減でどんな影響が出ているのか、少し実態を調べるべきだと思います。

 例えば、お手が御不自由なので直接お皿に口をつけて食べ物を食べる、取らなければいけない、介護にも看護にも人手がかかる、入浴も同じです、そこで事故に等しいようなことが起きているということで、入所者の皆さんも大変御心配であります。安心して療養できるために一番大事なのは、やはり事故防止であります。命にも直結いたしますので。

 これは是非、医政局としてもそうした実態をお調べいただきまして、ヒアリングもしていただきまして、しかる後に、どの程度の人たちのサポート、医療、看護体制が必要かを検証していただきたい。単に数値ありきではないということ、大臣お分かりと思いますので、是非そのようなことをしていただきたいと思います。

 同時に、大臣に、資料の二枚目、お示ししてございますが、これは、ハンセン病施設というと入所施設だけと思われがちですが、実は、ハンセン病で退所された後、外来を通院したい方、あるいは、積極的に地域の患者さんの特に皮膚科の診療などをやっていただいているところ、それで一番先進的な取組は、奄美和光園というところで、ここは、地域の患者さんも一緒に診てさしあげる、入所者自治会がそれを希望されたということで、地域に開かれた医療ということになっております。

 ハンセン病も伝染力の低い感染症ですから、これだけが分け取られて隔離なされてきたことには歴史的経過もあると思います。しかし、再びそれを地域に開くということも考えられていかねばなりませんし、各病院の医師の数などもあるとは思いますが、こうした試み、例えば沖縄の宮古にある南静園でも熱心でありました。あと、駿河の療養所というところも、これはハンセン病の隔離政策があるときから、患者さんを外に出して外来で治療するためということで、外来診療に取り組んでこられました。

 隔離の逆をどうしていくかということも今後の大勢になると思いますので、今日は、一応、私が大臣に、こういうこともあるということと、検討というか、いろいろ考えていただきたいというふうにお伝えすべくこの資料を出しましたが、いかがでしょう。

    〔大串(正)委員長代理退席、委員長着席〕

武見国務大臣 先生御指摘のとおり、国立ハンセン病療養所における地域開放、それから地域との交流に関する取組は、良好な生活環境の確保を図る観点からも極めて重要だと認識をしております。

 そのために、各療養所において、療養所の土地等を活用して保育所や特別養護老人ホームなどの施設を誘致したり、あるいは、入所者に対する医療の提供に支障がない範囲内で地域住民に対する診療などを行っておりまして、先生御指摘の奄美和光園というのは、令和四年度は約三千四百名の地域における患者の診療を実際に行っておられます。

 厚生労働省としては、各療養所の入所者が地域社会から孤立することなく、良好かつ平穏な生活を営むことができるように、引き続き、入所者自治会の御意向をしっかりと踏まえながら、必要な対応をしていきたいと思います。

阿部(知)委員 今日示した資料は、実は、平成二十八年から経過を追っていただきました。外来診療というのはもう一九六〇年代から始めているところもおありで、ここに書き切れませんでしたが、見ていただきますと、今大臣御指摘の奄美和光園の三千三百九十一、平成二十八年は六千八百六十三、もう少し多うございました。コロナ等々もございましたので、必ずしも今の数値がそのままとは思いませんが、こうした先進的な試み、特に皮膚科という科は診療科でなかなかお医者様の数も地域によってはおられませんし、また、奄美和光園ではフットケア、足のケアも一般外来でやっておられます。

 医療で隔離したものは医療で戻していくということも私は重要だと思っております。その前提に、大臣がおっしゃるように入所者の皆さんのお気持ちと、またその園全体の運営があろうことは心得ておりますが、様々な、今後の減っていく入所者の皆さん、しかし、地域にもう一度戻りたい、あるいは地域とつながりたいという思いをどう実現していくかで、大臣には今日少しお話をいたしましたので、よろしくお願いいたします。

 さて、そうやって入所者の減っていく療養所ですが、同時に、そこには社会交流会館というものが設けられるようになっております。これは、二〇〇一年に国賠訴訟、政府がそれを受け入れまして、その後、二〇〇二年、資料館施設整備等懇談会というものが持たれて、多磨全生園の資料館、あるいは栗生楽泉園にございます重監房などを国立の施設として、あと、各園に社会交流会館というものを持っていこうという計画でありますが、見ていただきますと、十三園いずれも、主な課題と書いておりますが、専従職員が不足しているとか、入所者が高齢者で語り部がいないとか、あるいは運営費が不足とか、大変これは深刻な状況が並んでおります。

 これは、実は四年ほど前、田村大臣のときにも御質問したことがあって、少しよくなっているかなと期待したんですけれども、ちょっと、改善よりは後退かなと思うところもございますので、大臣は、これについて何か御所見があればお願いいたします。

武見国務大臣 まず、令和三年に起きた長野県でのハンセン病患者台帳の流出問題などがありまして、厚生労働省としては、各都道府県が保有しているハンセン病に関連する文書であるとかその保管状況について、令和四年から実態調査を開始したところであります。

 社会交流会館の運営につきましては、ハンセン病に関する普及啓発を担当している健康・生活衛生局も運営に関与しつつ、予算については、現在、医政局が一か所当たり年間三百万円の予算を配賦しておりますが、引き続き、この両局が連携をして、厚生労働省全体として、社会交流会館が着実に運用していくように努めていきたい、こう考えております。

阿部(知)委員 大臣は私のためを思って次の質問の答えも併せて御答弁であったかと思うのですが、私はここでは学芸員の問題を少し掘り下げたいと思いまして、現在ここに十四名の学芸員がおられて、どの館も学芸員の不足だという声が上がっております。

 一応これは委託契約で笹川財団になさっていますが、委託契約の書面を見ますと、定員二十人と、常勤二十人となっておりまして、しかしこれは十四人であります。括弧して追加募集中とかありますが、私は、委託契約書を見ると、その数がそもそも充実されることというような書きぶりになっていて、なぜこれでまた同じ委託契約が財団になされているのか、もう少し努力していただかないとお任せするのもなかなかだと思います。

 実は、前回、田村大臣にいろいろお尋ねして、資料の保存とかは鋭意大変努力していただきました。私は感謝しておりますし、でも、この学芸員問題は、政府が直接ではなくて財団に委託するという形、委託契約でございますので、その委託するときにしっかりと現員保障といいますか、定員を満たしていただくようにこれは強く要請をしていただきたいところですが、大臣、何か。じゃ、大坪さん。

大坪政府参考人 恐れ入ります。お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、この学芸員の確保、これは重要でありまして、私どもも、笹川保健財団にお願いするだけではなく、副大臣をヘッドとしております対策協議会、ここにおいても個々に入所者の皆様方ともお話をしている中で、今日先生がお出ししていただいたこの主な課題、これはうちの方で取りまとめて協議会に出している資料でございます。

 こういったところで、それぞれの十三か所の療養所で実態をこちらでも丁寧に聞いておりまして、例えばここで、宮古ですとか東北の新生園ですとか、募集をしていないところもございます。ここにつきましては、それぞれの御事情の中で、例えば東北新生園であれば、職員で学芸員の対応をするので派遣は不要である、こういったお返事をいただいておりましたり、宮古の南静園におきましても古くから地元のNPOの方に御協力をいただいていたりと、それぞれの事情があると承知をしております。

 その中で、私どもも情報を収集しておりますし、そこは丁寧に、笹川財団とも会話をしながら、園の御要望に応じた確保ができるように努めてまいりたいと思っております。

阿部(知)委員 今おっしゃったような状況にこれまでもあるわけです。しかし、これからを考えますと、入所者は減っていかれます。

 また、先ほど大臣がおっしゃった長野県におけるいわゆるらい病患者並びに血統、家系調査の結果が流出をいたしまして、これは、県の警察が持っていた資料が、県のどこかに保管されていたであろうが、それが流出した。よく被差別部落の方の戸籍の流出が問題になりますが、それと同じように、癩病患者並血統家系調、これは明治三十二年のものですが、流出をしております。県における資料の保管、これもまだ原因も分かっておりません。

 同時に、園における資料の保管も共に問題になっております。例えば、二〇一四年、菊池恵楓園で骨格標本というものの資料が出てきて、これがどうしてこうした形でそこに放置されているのか。あるいは、二〇二〇年には今度は解剖の記録、やはり菊池恵楓園で三百八十九人の解剖記録。さらに、二〇二〇年、邑久光明園、引き続いて、二〇二一年には長島愛生園など。長島愛生園では千八百三十四人の解剖録、邑久光明園では約千百八十四件の解剖録。

 解剖録と申しませば大変重要な書類であり、それが園のどこかに埋蔵されているというか、埋もれてしまっている実態もあるわけです。もちろん、医政局の皆さんが園の管理としてそういう調査をなさる、あるいは、場合によっては学芸員の皆さんも状況を御一緒に見ながら、どうやって資料を保存するかという大事なときにかかっております。

 決して園の意向や関わるNPOの皆さんの意向を無視せよというものではなくて、国賠訴訟とは、国が何を起こしたかについて国として検証することを意味いたします。私はその意味で、この間、様々に起きている事案を考えたときに、もう少し、今の園の所有する資料の調査、あるいは県の調査もまだ答えが出てまとめられておりませんので、大臣にお願いしたいのは、こうしたものは貴重な歴史資料であります。内閣府の方でも公文書管理に関わる部署等もおありですし、県にも公文書管理の部署、あるいは様々な専門家もお持ちです。もちろん、園が中心になり、今何があるか、どう生かすかを考えていくべきと思いますけれども、適宜適切に国からも助言すべきと思います。

 ウェートが分かりません。どれだけのものかが分かりません。どう分析すべきかも難しいと思います。その辺を是非、厚労省も自らのことと考えてやっていただけまいかと思いますが、いかがでしょう。

武見国務大臣 厚労省におきましては、調査の状況等について、ハンセン病訴訟の統一交渉団と相談を始めております。調査結果がまとまり次第、その内容を公表するとともに、各都道府県に対して、こうした文書等保存に関する方向性をそこでしっかりと示していくという予定にしております。

阿部(知)委員 私がお手元につけました資料の三が長野県の事案で、知事が直接記者会見をされて、県としての資料保管の在り方等々も検証するということでございます。

 また、今大臣の御答弁は、私の資料の四以下でございますが、国立ハンセン病施設における資料保存についてということで、厚生労働省も様々に園にも通達、メールでですがお出しになって、調査をされております。

 しかし、調査の手法が必ずしも統一されていない部分もあり、物は切り方、見方で変わってまいります。私は先ほど菊池恵楓園の例を挙げましたが、菊池恵楓園は、骨格標本の問題もございまして、非常に、資料をどう保管するか、そして、身分帳などもほとんど残されておりまして、それらを事務方と学芸員の皆さんで熱心に残そうと努力をされております。

 今日お配りした資料のページの五の下の方に、各園が現在どこまで資料を整理しているかというものの厚労省のおまとめがございますが、ここにはちょっと数値の違和感が残るとも言われております。要するに、分類方法が変われば結果が変わるというので、今後どういう保管をしていくかという、プロスペクティブというか、前を見て、後ろを見てみるという作業も必要かと思いますので、是非、非常に重要な局面になっていると思いますので、大臣もできれば菊池恵楓園には行っていただきたいですが、もしかして行かれたことがあるでしょうか。済みません、突然で。

武見国務大臣 私はまだ伺ったことがございません。

阿部(知)委員 資料の七枚目になりますが、見ていただきたいんですが、これは菊池恵楓園でお作りになっている、いわゆる優生手術を含めた人工妊娠中絶を受けられた入所者が何をどう思い、何を残しているか。もちろん、手術件数等々はいわゆる行政文書、公文書に残りますが、こうした、受けた方が思ったこと、何であったかは、今度は資料館の中の文書に残されるという形になっております。この両方が合わさって、何が起きたかが分かるわけであります。

 私は、ここに書かれている、大変、ここで、例えば、菊池恵楓園歴史資料館図書室所蔵で、番号が振ってあって、それがどこの、資料整理番号C一―一―二十八とか書かれていることは、そのようにもう資料が整理されているということであります。それだけ園が一生懸命やってこられたことでもあります。それを、全体、園にそれだけの陣容がない場合もありますし、しかし、好事例として考えていただいて、何が起きたのかが立体的に歴史に残るよう、是非大臣にはこれから御尽力をいただきたいと思います。

 さて、最後に、予算のことを聞かせていただきます。

 先ほど大坪健康局長も御答弁でしたが、ここの学芸員の予算は健康局から出ております、運営費は医政局から出ております、極めていびつな形だと私は思うんです。どんなものを計画して、どんなものを歴史検証しようかというときに、最初は各館百万円、今は三百万円、これが医政局のマルメ予算の、この入所者の患者さんをケアするための予算の一環で、元々、交流館というものがそういう歴史でできたものですから、そこからお金が出ています。

 でも、これからは歴史検証ということが大きく前面に出なければならないし、入所者が少なくなっていく、機能が館として落ちていく、そのままでは残せないと思いますので、是非、健康局の役割として、歴史に残すために、現地の交流館へのお金はどこから出るのか、そのことも含めて支援の在り方を考えていただきたいですが、時間の関係で、大臣でいいですか。じゃ、短くお願いします。

新谷委員長 浅沼医政局長、簡潔にお願いします。

浅沼政府参考人 はい、簡潔に申し上げます。

 令和六年度の予算案で、先ほどの三百万円に加えまして、社会交流会館の展示資料の充実等に対しまして新たに二千六百万円の増額を計上したところでございます。

 歴史の検証、展示資料の充実などの要望に応えられるよう、引き続き必要な予算を確保してまいりたいと思います。

阿部(知)委員 大臣に聞けなくてごめんなさい。

 私は、医政局の問題ではないのではないかということを申し上げたかったです。被害者とも健康局が歴史の継承、検証をお約束されたわけで、更に御検討いただきたい。額が増えたことは存じておりますが、また引き続き努力していただきたい。学芸員も足りませんし、よろしくお願いいたします。

 終わらせていただきます。

新谷委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

新谷委員長 速記を起こしてください。

 次に、中島克仁君。

中島(克)委員 立憲民主党の中島克仁でございます。私からも質問させていただきます。

 今日、大臣所信ということで、大臣に全てお尋ねいたしますので、大臣の言葉で御答弁いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 能登半島地震関連に関してと、あと介護報酬改定に伴う訪問介護、また医薬品の供給不足について、大きく三点質問したいと思うんですが、訪問介護の件については他の委員もたくさん質問しておりますので、ちょっと順番を変えて、まず能登半島地震関連から質問、そしてその次に薬の供給不足について質問したいと思います。

 大臣所信の中で、やはり真っ先に能登半島地震に所信の中で触れられておられました。被災者の方々の命と健康を守ることが重要で、避難先等における保健医療、福祉的支援の強化に全力を尽くすと、まず冒頭におっしゃられた。

 これまでも最大限努力してこられたと思いますが、発災から二か月半がたって、これまで保健医療、福祉的支援の体制整備、どの程度できてきたのか、どのように評価されているのか、今現在どの程度整備されているとお考えか、お尋ねしたいと思います。

武見国務大臣 厚生労働省では、地震の発災直後から速やかに保健医療、介護、福祉の専門チームを被災地に派遣をし、そして人命の救助、それから災害関連死の防止、こうしたことのために、各施設整備など、財政支援を行うなど、医療・介護施設の機能維持や被災者の方々の福祉的支援を含めて、全力で取り組んできたと自覚をしております。

 実際に私も被災地を視察しまして、半島という非常に地理的な制約の中でこうした甚大な被害が生じた今回の震災の特徴を踏まえて、医療、福祉の職員の応援派遣の強化であるとか、それから避難所における診療活動拠点の設置など、石川県と連携して必要な支援は進めてきたつもりであります。

 今後、奥能登における医療、福祉の復旧復興が課題となりますけれども、現在、石川県において復旧・復興本部を立ち上げて、病院、福祉施設の今後の機能や必要な人材の確保などを検討していると承知をしております。

 厚生労働省としても、これまでの対応の成果であるとか課題を踏まえつつ、石川県と連携して、こうした保健医療、介護の基盤も含めた、地域の復旧と復興に取り組んでいきたいと考えております。

中島(克)委員 私は、発災から六日目の一月七日に医療支援に入りました。そして、今も大臣御答弁されましたが、奥能登、もうこれは交通アクセスが本当に想像以上に悪く、そして、能登特有の目まぐるしく変わる天候、寒さですね、厳しい寒さ、加えて、避難所においては感染症が拡大、蔓延していました。そして、基盤となる地域が、人口減少、脆弱な地域、こういう複合的な要因が重なり合った、私は行ってすぐ、これは大変厳しい状況だと認識をしました。

 資料の一枚目に、復興に向けたタイムライン、これは一般的な復旧復興に向けたタイムラインを示しているんですが、赤の緊急対応からオレンジの復旧、大体一週間ぐらいだと思うんですね。そして、復旧から復興計画策定、実行、黄色の復興までに大体一か月後ぐらいから入っていく、これが一つの目安になると思うんです。

 私が能登に入ったのは一週間目ぐらいだったわけでありますけれども、避難所の体制も含めて、先ほど言った、決して、石川県の方、私は輪島に行きましたけれども、また厚生労働省を始め支援する方々が駄目だとかそういう意味ではなくて、一般に、複合災害を呈すると、事態はより深刻となって、復旧復興には時間を要する。まさに今回の能登半島地震は現在もそういう状況に陥っているというふうに私は考えております。今現在も一万人以上の方が避難所での生活を余儀なくされておる。

 そして、輪島のDMAT本部、ちょうど一週間目ですから人が入れ替わるときだったんですが、本来、DMATの目標というのは、一人でも多くの命を救う、これが、一人でも多くの健康を守るに、大きく紙に、目標が変わっていたんですね。これは何を意味するかというと、今回の災害のポイントは、高齢者支援、これに特化した支援、そして、複合災害で時間が長時間かかるということはもう状況から分かっていましたから、ふだん受けている介護サービスとか医療をどうやって維持、元に戻していくか、ここに特化した対策がやはり瞬時に必要だったのではないかなと私は思っています。

 そして、そういう高齢者とか障害を持った方、また妊婦さんなど、配慮が必要な方が避難されるべき福祉避難所ですね。これは資料の二枚目になりますが、これは一月末の新聞記事ですけれども、福祉避難所、想定の二割と。二月に入ってようやく三割ぐらいになったわけでありますけれども、指定、協定されている福祉避難所の稼働率ですね。

 こういう状況を私は目の当たりにして、これは今回の能登半島地震だけではなくて、東日本大震災、一昨日は十三年目を迎えましたけれども、熊本地震のときにも、本来配慮、支援が必要な方が入る、避難される福祉避難所がやはり今回も機能できなかった、こういう状況から、私は、今後、この福祉避難所の在り方、今回の課題も含めて、抜本的にその在り方を見直していく必要があると思いますが、大臣の見解を伺いたいと思います。

武見国務大臣 今回の能登半島地震では、福祉避難所となる介護施設なども大きく被害を受けていたほか、担い手となる介護施設等の職員も御自身が被災をしていたということなどから、予定していた福祉避難所の開設が困難なケースがあったものと承知をしております。

 厚生労働省におきましては、被災により従業員が不足する施設や避難者を受け入れる施設等への介護職員などの応援派遣を進めておりまして、避難所においてもDWATの派遣などの支援を行っております。

 今後、災害発生時に介護施設等が福祉避難所として適切に機能するように、平時からこうした介護施設等の耐震化などに向けた財政的支援を行うとともに、介護施設等における業務継続計画、これをしっかりと策定をしていただいてその徹底を図るということが、平時においてこうした福祉避難所というものが有事に機能するように準備しておく一つの基盤になる、こう考えております。

中島(克)委員 今大臣がおっしゃった取組、これは毎回同じことを言われているんですよ。当然です。被災地にある避難所、その支援に当たる方も被災者、場所も被害を受けた場所。協定、指定を受けている福祉避難所の多くは、バリアフリーであったりしなきゃいけませんから、元々既存の介護施設、障害福祉施設だったりするわけで、例えば特養であれば、もう既に入所している方々の対応で手いっぱい、そして受け入れるはずだった方々を受け入れられない、これがもうずっと続いているんですね。

 先ほど、今回の複合災害、事態はより深刻になり、そして高齢者支援が最大のポイントになるということは発災直後から私は分かっていたというか、その対策に特化するならば、例えば厚生労働省もDMAT、DWATも含めていろいろ取り組んではいるとは思いますが、やはり保健、医療、福祉に特化した人材を大量に投入していく。

 若しくは、今回、一・五次避難所という、これは石川県と政府、いろいろ連携しながら、これは非常に私はよかったことだと思うんですが、残念ながら、一・五次避難所、その先の二次避難所になかなかスムーズな移行ができなかった。こういう反省を含めて、そもそも福祉避難所は、設置、運営は内閣府、でも協定して結んでいる施設は介護施設などがほとんどですからそこは厚生労働省管轄、ここの中でお見合いのような感じになることが、非常に、私、過去から言われていて、そろそろ本当に見直していかないといけないのではないのかな、そういう問題意識です。

 そして、もう一点、今の平時の対応について、介護施設とか、特に短期、ショートステイなど、定員超過の特例について、これは私、災害のたびに厚生労働省に要請しているんですけれども、災害時に定員を超過しても介護報酬など減額しない特例措置、今回も発災から一週間目に事務連絡として出されておりますが、先ほども言っておられたように、被災地の介護施設、当然働いている方も被災者であって、これは減額しない。例えば十人定員のところに十五人、これは減額しないから、その分増えるからいいでしょうと。

 そういうことじゃなくて、水道が止まっていたりして、ただでさえ負荷がかかっている、そこで事業を継続しようとしている介護施設、これは、人的支援ももちろんですけれども、定員が増えた分介護報酬が入るからいいじゃないかじゃなくて、やはりプラスアルファ。

 別に、お金がないからやらないと言っているわけではなくて、やはり、一か月、二か月すると、介護職離職や福祉職離職も続いているわけです。改めて、慰労金というのか報奨金というのか分かりませんが、そういうものを、減額しないだけではなくて、改めて、被災地で事業を継続しようとしている事業所にプラスアルファの支援を是非お願いをしたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

武見国務大臣 先生御指摘のとおり、介護施設等において、災害の発生時には定員超過利用を認めております。それから、特例的に報酬の減算は行わないこととしております。そして、今回の能登半島地震においても同様の取扱いをしております。この場合に、介護施設等は超過受入れ分を含めて介護報酬を請求することが可能というふうにしてあります。

 介護施設等に対する支援については、災害復旧に対する財政支援を行うこととしているほか、人手が不足している介護施設に対しては、介護職員等のニーズを現場の自治体等を通じて丁寧に把握した上で、関係団体等と連携をして、全国からの応援職員の派遣に取り組んでまいりました。

 これまでの震災などの災害時にも慰労金等の財政支援は行っていないところではございますが、私もその点に関わる強い思いもありますので、自らも被災する中でサービスの提供に御尽力をいただいている介護現場の職員の方々には深く感謝を申し上げるとともに、引き続き、こうした介護施設等に対する必要な支援は検討していきたいなと思います。

中島(克)委員 さっきも言ったように、お金がないからやらないとかそういうことではなくて、やはり、目の前にいる支援が必要な方々を、毎回そうですけれども、一月一日に発災してそれから一週間ずっと継続して支援を続けていたり、それから一段落した後、今度何とか事業を継続しようとして頑張っておられる方に、政府が、厚生労働省が、しっかり見ているよ、こういうメッセージを発しないと、本当に疲れ果てて、介護事業所も介護人材ももう諦めてしまう。こういう状況には絶対しないように、継続した介護サービス、被災地においても維持できるように、是非対応についてお願いをしたいと思います。

 そして、神奈川県庁の阿南先生、DMATで入られた、我々も部会でヒアリングをして、そのときに、一つの私案として、今回のような複合災害、災害医療福祉緊急事態宣言案、要するに、日常運用をしている地域との危機感共有と協力への対価の仕組みという私案を私も聞いて、まさに先ほどの福祉避難所の抜本的な見直し等、こういったことを、阿南先生の私案ではありますけれども、厚労省として取り組んでいく必要、御指摘をさせていただきたいと思います。

 そして、薬価の問題とそして薬の供給不足、先ほど吉田委員もお話をされておられましたが、私、もう三十年近く医者をやっておりますが、これだけ薬が足りなかった、しかも、ふだん使うせき止めとか、場合によっては抗生物質も、こんな状況は初めてですよ。その原因については、先ほど、薬価の問題、そしてもう一つは、いわゆるジェネリック、後発医薬品、GMP違反、こういった問題がよくクローズアップされますが、私は、もう一つ大きな大事な視点、流通の問題。

 資料の四枚目、これは流通改善ガイドラインのものでありますが、四枚目の真ん中の辺り、取引先ごとの取引条件やコストを加味しない独自のベンチマークでの交渉やコンサルタント業者による不当に価格を下げていく値引き交渉の実態が指摘されていると問題提起しています。

 そして、資料の三枚目は、これは厚労省からの事務連絡ですね。同じような内容、ベンチマークを用いた取引交渉や成果報酬を目的とした過大な値引き交渉を行うこと、流通ガイドラインに抵触する可能性がある、こういう業者がありますよということを事務連絡で伝えているわけです。

 大臣にお尋ねいたしますが、薬価、公定価格という形で、出口は患者さんに、同じ値段で固定されておる、流通過程において自由な価格交渉がなされるという現在の医薬品の流通慣行について、どう大臣は考えておられるのか、厚生労働省として、医薬品の流通における自由な価格交渉や交渉代行業者の存在についてどのように認識しているのか、お尋ねしたいと思います。

武見国務大臣 この医薬品の取引において、実際、医療機関や薬局が医薬品の卸との価格交渉をコンサルタント業者に委託をして、価格交渉を代行させているというようなことが現実に行われている。しかも、コンサルタントを雇う事業者というのは大体、中小規模が多いということもおおよそ伺ってきております。多少これは、その価格差の問題というものがこのような新たなビジネスをつくり上げてきていて、事態をより複雑化させているなというふうに私は思いました。

 したがって、これをどのように改めて、卸の在り方も含めて検討をして、こうした不必要なビジネスが介在しないでスムーズにこうした薬価の制度と価格設定というものが機能するようにやはり進めていかなければならないと思います。

中島(克)委員 このガイドラインというか報告にも問題意識があるんですが、私は、先ほど言った薬の供給不足にここが関わっている可能性は否定できないんじゃないかなと。

 例えば、不当な買いたたき、値引きですね。例えば、本来だったら百錠でいいところを五百錠買えば三割引きにしますよ、こういう状況で、あるところには薬はあるけれども、ないところにはない。コロナの検査キット、これは、厚労省が、薬局でも手に入れられるということで、生産要請をしたり、再三しましたが、あるところにはあるけれども、ないところには全くない。

 こういう状況が、薬価やジェネリックの問題もそうですが、価格交渉代行業者、この不当な買いたたきによって薬の品不足、これが影響を及ぼしている可能性は私は高いのではないかなと考えるんですが、薬の品不足と価格交渉代行業者の関係性について、大臣はどのように認識をされていますか。

武見国務大臣 現状では、どこまで直接的にこうした新手のビジネスが医薬品不足につながっているのかという点について、その因果関係、まだ詳細に私、確認しているわけではございませんが、ただ、実際にこういう価格交渉というものの代行というビジネスが、取引条件を考慮しないベンチマークを用いての値引き交渉であるとか、あるいは医薬品の価値を無視した過大な値引き交渉というようなことを行わないように、流通関係者が遵守すべき流通改善ガイドラインを策定した上で、厚生労働省としては、それを守るよう、各卸の関係者、あるいは医薬品、医療の提供各事業者に周知をさせなければいけない、こう考えております。

中島(克)委員 もう時間ですのでやめますが、これはインターネットを見ればすごいですよ。出口は公定価格なのに、そのさなかに利益を生み出して、そうしないと薬局、病院が成り立たないならこれは制度の問題、そして、それを利潤を上げている存在があるならこれは大変大問題ですから、どちらにしても問題だと。早急な調査を求めて、質問を終わりたいと思います。

新谷委員長 次に、福重隆浩君。

福重委員 公明党の福重隆浩です。

 早速ですが、質問に入らせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず初めに、武見大臣にお伺いをいたします。

 今、日本経済は、三十年に及ぶ長期の停滞を打破し、デフレからの完全脱却を図れるか否かの大きな岐路に立っております。そのためにも、大企業はもとより、雇用の七割を占めると言われる中小企業も含め、昨年を上回る賃上げによって経済の好循環を実現しなければなりません。

 昨年の春闘においては、政労使会議などが大きな力となり、賃上げにおいて三・五八%という、実に三十年ぶりとなる高い伸びとなりました。そして、現在、春闘において、大手企業の労使交渉が佳境を迎える中、中小企業の賃上げをテーマに、我が党が求めた地方版の政労使会議が二月末までに三十五都道府県で実施され、さらには、今月中には全ての都道府県において開催されると伺っております。

 政府としても、確実なる賃上げを促進されるよう、二〇二四年度税制改正では、賃上げ促進税制を強化し、女性活躍や子育て支援に積極的な企業への法人税控除の上乗せ措置を創設し、中小企業の最大控除率は四〇%から四五%に拡充されることとなりました。さらには、賃上げに取り組む企業の裾野が広がるよう、赤字であっても賃上げを行う中小企業などを対象に、控除し切れなかった税額控除分を五年間にわたって繰り越せる措置が創設されました。賃上げに向けて、様々な環境の整備が行われております。

 一方で、実際に働く方々の名目賃金は上昇しておりますが、三月七日に厚労省から公表された毎月賃金統計調査では、一人当たりの賃金は実質で前年同月比〇・六%減と、二十二か月連続のマイナスとなりました。物価高に賃金の上昇が追いつかず、実質賃金のマイナスが続いております。

 この現状においての御認識と賃上げについての思いを武見大臣にお伺いをいたします。

武見国務大臣 毎月勤労統計調査による名目賃金は、令和四年一月から令和六年一月まで二十五か月連続でプラスとはなっておりますが、一方、実質賃金は、消費者物価指数の高い伸びによりまして、令和四年四月から令和六年の一月までの二十二か月間連続でマイナスになっております。

 やはり、経済の好循環により国民生活を豊かにしていくためにも実質賃金の上昇というのが最も重要であろうというふうに認識をし、賃上げのためにできる限りの努力を私どももしていかなければいけないと考えております。

福重委員 ありがとうございました。

 今、本当に実質賃金が最も大事だという大臣のお言葉でございますけれども、政府が一丸となって賃金を上げていく、これが一丁目一番地だというふうに思っておりますので、是非リーダーシップを取っていただいて頑張っていただければというふうに思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 次の質問に入ります。

 昨年九月に、中小企業庁において、価格交渉促進月間フォローアップ調査が行われました。価格調査の状況について、発注側企業から交渉の申入れがあり価格交渉が行われたという割合は、前回調査された三月時点からおおむね倍増いたしました。他方、価格交渉を希望したが交渉が行われなかった割合は一〇ポイント程度まで減少しております。

 この結果は、下請Gメンや政府の価格交渉の指針が功を奏したのではないかと考えております。

 また、同じ調査では、労務費、エネルギー費は、原材料費と比較して約一〇ポイント低い水準でありました。労務費の価格転嫁はなかなか進んでおりません。

 連合の芳野会長は、労務費の価格転嫁が進まない現状について、原材料費に比べて労務費は価格転嫁が難しく、中小企業は自助努力で解決を求められていると指摘されております。

 この価格交渉促進月間フォローアップ調査は中小企業庁が公表した資料ではありますが、賃上げについては政府が一丸となって取り組まなければならない問題であり、労働行政を所管する厚労省において、労務費、賃上げについて関わりがあると思います。この調査結果を厚労省としてどのように捉えておられるのか、御答弁をお願いいたします。

三浦大臣政務官 委員御指摘のとおり、賃上げは現下の最重要課題でございまして、特に、我が国雇用の七割を占める中小企業における賃上げが必要不可欠でございます。そのためには、サプライチェーン全体で、労務費を含め、適切な価格転嫁を定着させることが賃上げの原資を確保することで大変重要なものだと思っております。

 そこで、厚生労働省では、昨年十二月以降、関係省庁と連携しながら、社会全体での力強い賃上げの機運が醸成されるよう地方版政労使会議を開催しており、この会議におきまして、業務改善助成金等の厚生労働省の賃上げ支援策に加え、内閣官房、公正取引委員会において作成された労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針、そして、経済産業省が進めているパートナーシップ構築宣言など、取引適正化に向けた取組や、省力化等補助金、賃上げ促進税制などの賃上げ支援策について周知をなされておられます。

 なお、厚生労働省といたしましても、ビルメンテナンス業を始めとした所管の関係業界八十六団体に対しまして、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針の周知徹底を行っているところでございます。

 引き続き、中小企業における労務費の価格転嫁や持続的な賃上げが図られるよう、関係省庁と連携しながら取り組んでまいりたいと考えております。

福重委員 御答弁ありがとうございました。

 今お話のございました地方版政労使会議に関しまして、私、地元は群馬なんですけれども、群馬の開催状況について県庁の部長に確認をしたところ、政府の思いもしっかりとどめていただいて、しおり等を作成して丁寧な説明をしっかりとしていただいたと、これが大きな機運となって、群馬県でも、しっかり中小企業の皆さんが賃上げできる環境を、県庁としても一生懸命応援をしていきたいというようなお話がございました。本当にこれはオール・ジャパンでしっかりと連携して、物価高を超える実質賃金アップ、これをしっかりと目指してまいらないといけないと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 続きまして、中小企業の人材のつなぎ止めの問題に関しましては、時間の関係上、ちょっと割愛をさせていただきます。

 次に、中小企業の活性化協議会と年金機構との問題について質問をいたします。

 二〇二二年四月から、中小企業再生支援協議会と経営改善支援センターが統合され、中小企業活性化協議会が各都道府県に設置されました。この協議会は、端的に言うと、中小企業のあらゆるフェーズにおける駆け込み寺であります。金融機関や民間の専門家、各種機関と連携し、中小企業の事業再生を地域全体で支えるものと承知しております。

 一部報道では、新型コロナ禍、売上げが減少し、年金や健康保険料の社会保険料について納付の猶予を受けていた事業者の方々が、その猶予期間が終わり、納付に窮する事業者も一部発生しているとの報道がございました。

 そこで、質問をさせていただきますが、厚労省として日本年金機構宛てに発信された事務連絡に、必要に応じて協議会を滞納事業者に紹介する等、社会保険料の徴収の一助になると認められる場合は連携してくださいとありました。厚労省として、この問題についての認識及び対応について、お伺いをいたします。

巽政府参考人 昨年十月、厚生労働省から日本年金機構に対しまして、中小企業活性化協議会との連携を求める旨の通知を発出したところでございます。全国の年金事務所に対しまして、社会保険料徴収の一助とするため、必要に応じて、例えば、協議会のリーフレットを配布する、あるいは協議会を事務所に紹介する、あるいは協議会における検討状況等を踏まえた納付協議を行う、そういったことを、連携するようにということで図っているところでございます。

 引き続き、その実態を踏まえまして、日本年金機構と中小企業活性化協議会との連携について指導してまいりたいと思っております。

福重委員 今、指導してまいりたいということでございましたけれども、報道によると、年金機構が特例で猶予した保険料の総額は合わせて九千七百三十七億円に上り、このうち昨年の三月末時点で納められていない分は、およそ一五%の千四百四十三億円とありました。コロナ禍を乗り越えた事業者さんにおいては、毎月発生する通常の支払いに加えて、積み上がった未納分を上乗せして納めなくてはなりません。

 今、私の元には、年金機構より厳しい取立てや差押えの要求まで来ている、やっと事業がコロナ前に戻りつつある状況において、国は我々を潰したいんですかねとの悲痛な声が寄せられております。国として抜本的な対策を講じるべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。

 また、あわせて、最新の猶予された保険料の総額及び納められていない金額はどのくらいになるのか、御答弁をお願いいたします。

巽政府参考人 お答えいたします。

 日本年金機構における厚生年金保険料及び健康保険料等の納付のコロナの特例猶予につきましては、約九・八万事業所、厚生年金保険料、健康保険料など合わせまして合計約九千七百億円となっております。そのうち、令和六年一月時点におきまして、合計九百八十億円が、督促をして、指定期間を超えているという状況でございます。

 また、保険料の徴収対策でございますけれども、その納付が困難となった場合、直ちに財産の差押えを行うのではなく、まずは事業主に電話や文書で連絡を取り、事業所の経営状況や将来の見通しなどを丁寧に伺いながら、猶予による分割納付の仕組みを活用するなど、事業所の状況に応じた丁寧な対応を行うよう、各年金事務所に対して指導しているという状況でございます。

 加えまして、日本年金機構におきまして、昨年十月を始めとして、各年金事務所が猶予を適用している事業所ごとに猶予期間を再点検する、納付計画が不履行の場合、猶予期間内での計画見直しを協議する、毎月の納付額が均等でない変動型の納付計画を承認することが可能であること等を年金事務所に対して周知していると承知しております。

 いずれにせよ、年金機構において法にのっとり適切に運用がなされるよう、引き続き指導してまいりたいと思っております。

福重委員 御答弁ありがとうございました。

 今、丁寧に対応していくというふうなお話でございましたけれども、この問題に関してもう一つお聞きしたいのですが、支払いの猶予を受けている事業者さんは特例によって最長五年の猶予がなされていると思います。この間の利率は〇・九%だと思いますけれども、この五年の特例が過ぎた場合には、税金と同じ八・七%の利息が発生することになると思います。これら通常の保険料とプラス上積み分を頑張って返していこうと思っておられる事業者さんにとっては、積み上がった金額に対してもし八・七%の利息が発生するとなれば、事業者さんにとっては大変厳しいものになると思いますが、いかがでしょうか。御答弁をお願いいたします。

巽政府参考人 猶予適用後、その期間が満了してもなお滞納保険料が残る場合、委員御指摘のとおり、滞納保険料に対しましては、国税と同様、年八・七%の延滞金が発生する制度となっております。

 先ほどお答えしましたように、日本年金機構におきましては、事業所の状況に応じて期間内に納付ができるように丁寧な対応を行っているものと承知しております。

 さらに、三月八日に策定されました再生支援の総合的対策におきまして、公租公課の分割納付の相談等について関係省庁との間で情報共有する仕組みを構築するとされたところでございます。

 この取組を踏まえまして、個々の状況に応じながら適切に対応できるよう、日本年金機構を指導してまいりたいと思っております。

福重委員 ありがとうございました。

 一月末で九百八十億、大きな金額だと思います。それぞれの事業者さんにとって、公租公課ということもございますし、税金との関係等もあるとは思うんですけれども、やはりこの問題は柔軟に対応していただいて、本当にしっかりと納めていこうという思いのある事業者さんはしっかりと守っていくというような形の中で対応していただきたいと思います。

 この問題に関しましては、また今後もいろいろな声をいただいた上で御質問させていただきたいと思いますので、どうか御検討を進めていただければと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 次の質問に入ります。

 障害の有無に関係なく共に生きる社会の実現は、大変に重要な施策であります。今回の障害者差別解消法改正の主眼は、事業者に対しても合理的な配慮の提供が義務化されることだと認識しております。この法律を所管しているのは内閣府ですが、合理的配慮の提供は各事業者であり、その事業を所管している各省庁に、障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針の策定が義務づけられていると聞いております。

 障害のある方は、それぞれ、社会的障壁の除去のためにこうしてもらいたい、こういう場所があれば便利だ等の御希望があると思います。このため、内閣府は、各省庁に対して対応指針の策定を求めるだけではなく、事業者においても合理的配慮の提供が義務化されることを受け、関係省庁と連携し、合理的配慮の事例の情報収集、共有等の取組を行うことにより、電車、バスにおける優先座席が今や当たり前の存在になったように、合理的配慮の提供が義務と言わずとも当たり前に提供される社会になっていくことが、障害の有無に関係なく共に生きる社会の実現のためには重要だと思います。

 改正障害者差別解消法の施行を契機に、共生社会の実現に向けてどのように取り組まれるのか、内閣府の意気込みをお伺いいたします。

工藤副大臣 お答え申し上げます。

 全ての国民が障害のあるかないかにかかわらず、分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現することは、大変重要であると考えております。

 改正法を円滑に施行するためには、相談体制の充実や参考にできる事例の収集、提供等が重要であることから、内閣府といたしましては、障害者、事業者等からの相談に対して、法令の説明や地方公共団体等の適切な相談窓口につなぐ役割を担う試行的な相談窓口であるつなぐ窓口の開設、各省庁や地方公共団体から提供された参考となる事案の概要等を分かりやすく整理したデータベースの公表等の取組を進めてきたところでございます。

 今後も、各省庁や地方公共団体と連携協力し、改正法の円滑な施行等を通じ、合理的配慮の考え方等の社会への浸透を図ることにより、共生社会の実現に向けてしっかりと取り組んでまいります。

福重委員 最後、しっかり取り組むということでございますので、御期待申し上げます。よろしくお願い申し上げます。

 私、先日、地元の、腎臓病を患い腹膜透析を行っている方より相談を受けました。内容は、腹膜透析が可能な環境についての御相談であります。

 腹膜透析は、衛生環境が整っている場所、外気が入りづらい場所等、幾多の条件があります。腹膜透析は、一日三回から五回程度、自宅や職場でできる透析療法であり、通常の病院での血液透析に比べ、体の負担が少なく、日常生活に近い状態でできる透析治療と言われております。

 ある病院のホームページには、世界では十万人、日本では一万人の方が腹膜透析を続けています、日本では腹膜透析を受けているのは透析患者さんの全体の五%にすぎませんが、ヨーロッパの多くの国では、デンマーク二四・七、オランダ二五・六、スウェーデン二二・四など、高い率で腹膜透析を選択されておりますと。

 そこで、質問させていただきますが、最新の国内における腹膜透析の比率、また、腹膜透析の普及率が低い理由、原因について、厚生労働省の御見解をお伺いいたします。

新谷委員長 大坪健康・生活衛生局長、簡潔にお願いします。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 腹膜透析は、透析方法の一つの種類でありまして、令和四年の日本透析医学会の調査によりますと、慢性的に透析を行っている患者のうち、腹膜透析を実施している患者の割合は二・四%でございます。

 先生御指摘のとおりでありますけれども、腹膜透析は、自宅や職場など透析を実施する場所が様々ありますことと、体液量の急激な変化が少ないものですから、患者様の循環器系への負担が少ないといった利点がございます。

 その一方で、腹膜透析の導入に当たりましては、患者様御自身で実施していただくため、無菌操作で行う透析液の注液、排液、これの清潔管理が難しい場合、また、腹膜透析の導入や指導に対応していない透析医療機関があるといった課題がありまして、結果として我が国では血液透析の患者の数が多い、こういう現状にございます。

 厚生労働省といたしましては、透析療法の導入に当たりまして、患者様が様々な治療法を専門医から十分な情報提供を受けた上で選択することが重要であると考えております。

 そのため、例えば、診療報酬におきましては、令和二年から、患者に対する腎代替療法に係る情報提供を評価するための腎代替療法指導管理料、これを設けるなど、学会が作成をされたガイドラインを参考に、腎臓専門医から患者様への情報提供を促すことを取り組んでおります。

 引き続きこうした取組を進めて、透析患者の治療の選択肢、これを広げてまいりたいと考えております。

福重委員 丁寧なる御答弁、ありがとうございました。

 法改正によって、患者さんたちは、こういった機会が増えるということを切に望んでおりますので、ワンチームになって、こういった腹膜透析ができる場所の確保を目指して頑張っていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

新谷委員長 次に、柳本顕君。

柳本委員 自民党の柳本顕でございます。

 大臣所信に対する質疑の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 過日の武見大臣、所信表明で次のようにおっしゃっておられました。我が国が本格的な少子高齢化、人口減少時代という大きな変革期を迎える中で、全ての世代の生活基盤を支える持続可能な社会保障制度を構築し、誰もが安心して挑戦することができる社会を実現することが重要ですと。

 全くそのとおりだと感じております。そして、所信では医療・介護制度改革の文脈で出てきたことではありますけれども、全ての社会保障制度に通じることだというふうに思っております。

 私は大阪市西成区というところで生まれ育ち、そして、大阪市会議員として一九九九年から十六年間活動を続けさせていただきました。その中で、社会保障制度の構築、改革、さらには運用、執行ということに際して、次の三点が大切だと思っております。

 一つには、医療、介護、年金、福祉など各制度については、総合的な視点を持ち、税制も含めて各制度間での整合性に配慮すること。二つ目といたしましては、国と地方との役割分担を明確にしながらも、制度の執行に当たっては、所得の多寡であるとか、あるいは世代間、あるいは地域間などでの分断や対立が生じないように心がけること。そして、三点目といたしましては、広くそういった社会保障制度を国民の皆様方に周知し、理解を求めるだけではなくて、一定納得が得られるような分かりやすい説明、広報に努めることだというふうに思っております。

 以上の視点を持ちまして、配付させていただいている資料については後ほど触れることといたしまして、今通常国会で法改正も予定されている生活保護制度を中心に質問をさせていただきます。

 厚生労働省は先週の六日、全国の生活保護の利用申請件数が昨年十二月まで十二か月間連続で前年同月を上回っていることを発表されました。生活保護を受けている世帯は全国で百六十五万三千七百七十八世帯ということで、世帯数としては過去最多を更新しているということであります。

 生活保護申請件数が増えているという背景としましては、もちろんコロナ禍もさることながら、やはり現下の物価高騰に対しての生活の行き詰まりがあるのではないかと想像されます。もちろん、低所得者に対しては給付金などでの緊急の対応もなされているところではありますが、それで十分とは言えないケースが少なからずあるという現実がこの実態から表れているというふうに思われます。

 年金生活者にとっては、年金額が変わらなければ、物価高騰でこれまでと同等の生活は難しくなってしまう。これは生活保護者にとっても、生活扶助額が変わらなければ、同じような状況に陥ることになります。今後、デフレからの完全脱却や賃上げということが実現し、現状の物価が続くとなれば、現在の最低限度の生活費というものはおのずと上昇するということになります。

 そこで、生活扶助費は物価高に対してどのように対応しているのか、また、基礎年金の支給額については対応をどのようにされているのか、お聞かせいただきます。

朝川政府参考人 お答えいたします。

 生活保護基準につきましては、一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られますよう、五年に一度の頻度で社会保障審議会生活保護基準部会におきまして検証を行って、社会経済情勢等も勘案して設定しております。

 令和五年十月に実施しました生活扶助基準の見直しにおきましては、令和四年末に部会がまとめた消費実態の検証結果を基本としながら、令和六年度までの臨時的、特例的な対応として、一人当たり月額千円を検証結果による額に加算するとともに、加算を行ってもなお従前の基準額から減額となる世帯につきましては従前の基準額を保障するということにしまして、結果的に、見直しの基準額と比べて引上げか従前の基準額を保障する措置を講ずることで、足下の物価上昇を含めた社会経済情勢等を総合的に勘案した対応を行っております。

 さらに、令和五年度補正予算におきましては、物価高により厳しい状況にある生活者等への支援として、住民税非課税世帯への給付金が生活保護受給世帯も対象に措置されているところであり、この給付金は保護費とは別に生活費に充てることができる取扱いとなってございます。

橋本政府参考人 年金の方についてお答えいたします。

 公的年金制度につきましては、前年の物価等の変動に応じて年金額を改定する、これを基本といたしております。同時に、世代間の支え合いの仕組みであることを踏まえまして、将来世代の負担が過重にならないように、マクロ経済スライドにより長期的な給付と負担のバランスを確保することで、将来にわたって持続可能なものといたしております。

 令和六年度の年金額の対応について具体的に申し上げますと、法律の規定に基づきまして、名目賃金変動率三・一%、ここからマクロ経済スライドによる調整分〇・四%分を差し引きまして、プラス二・七%という引上げになってございますので、お尋ねの基礎年金の額で申し上げますと、満額の月額が令和五年度の六万六千二百五十円から令和六年度は六万八千円ということで、千七百五十円プラスというふうなことを予定しております。

柳本委員 ありがとうございます。

 生保については五年に一度ということでございますけれども、緊急的な対応にはなかなかおぼつかない部分があるかというふうに思います。その点につきましては、令和五年、六年度の二年間の間、月額千円、特例に加算ということでございますけれども、この辺り、やはり令和七年に向けても必要になってくる可能性が高いということで、御認識をお願いします。

 あわせて、年金については物価スライドということで御対応いただいているということでありますけれども、この点については、現役世代の負担あたりが増加するということも勘案しながら今後の対応を図っていかなければならないということも申し添えておきます。

 その一方で、最低年金支給額に対して生活保護支給額の方が高くて、結果的に、生活保護であれば医療扶助や住宅扶助などのサポートもあって、年金を払い続けることより生活保護を受けた方がいいのではないかという不平等やモラルハザードを招いているということが言い続けられております。

 制度として異なるというのは分かるんですけれども、事実このような声があることに対して、厚労省としてどう認識して、どう対応しているのか、お聞かせください。

橋本政府参考人 今お尋ねいただきました生活保護と年金の関係につきましては、まず、生活保護というのは、年金を含めた収入や資産、働く能力など、あらゆるものを活用した上でもなお生活に困窮する方を対象にして、最低限度の生活を保障する最後のセーフティーネットでございます。

 一方で老齢基礎年金は、現役時代に構築した生活基盤や貯蓄等と合わせて、老後に一定の水準の生活を可能にするという考え方で設計されておりまして、また、収入や資産にかかわらず、保険料の納付実績に応じた給付が権利として保障されるというものでございます。

 このように、それぞれの役割や仕組みというものが異なりますので、給付水準を単純に比較できるものではないという点は御理解をいただきたいというふうに思います。

 その上で、低所得の高齢者の方々に対しましては、公的年金のみならず、社会保障制度全体で総合的に支援していくということが重要でございますので、具体的に申し上げれば、年間最大六万円の支給になります年金生活者支援給付金の支給ですとか、あるいは、介護保険における低所得者の方を対象とした補足給付の支給ですとか、あるいは、医療保険、介護保険における低所得の方への保険料軽減措置や、所得に応じた自己負担、利用者負担の上限額の設定、こういった経済的な支援を行ってきておりますので、引き続き総合的な支援を行ってまいりたいと考えております。

柳本委員 制度が異なりまして、先ほど御答弁いただきましたように、年金生活者も資産がなくて生活に困窮するなら、生活保護の受給をすることで足らずを生活扶助でサポートすることができるというのは分かるんです。分かるんですけれども、それは何か役所の論理のような気がしまして、生活保護率が高くなって、周りでそういうふうに受給されている方が出てくれば、年金の保険料を払おうという思い、意識が薄らぐという現実については是非受け止めていただきたいと思います。

 また、生保であれば、生活扶助に加えて住宅扶助があり、また医療扶助ということで、医療費までもが公費負担ということに不公平感を感じるという声もあります。ましてや、この医療扶助の額が非常に大きいということに対しては、広く国民の納得が得られ難い状況を招いているとも考えております。

 今回の法改正でも医療の適正化がうたわれておりますけれども、生活保護者、とりわけ高齢者については、一割とも言いません、被保護者に少しでも意識を持ってもらうように、一回百円でも御負担いただくようなことを検討すべきとの意見も常に出てくるんです。これまでの議論の動向などがあれば、確認させていただけますでしょうか。

朝川政府参考人 医療扶助につきましては、医療費の全額を公費で負担するものでございまして、制度の信頼性の維持向上のためにも適切な運用を図ることが重要と考えています。

 医療扶助制度に御指摘のような自己負担を導入することにつきましては、一つとして、医療扶助は、最低生活保障の観点から、自己負担なしで必要な医療が受けられるようにしているということ、二つとして、自己負担額を用意できずに、被保護者の必要な受診まで抑制するおそれがあることなどを踏まえまして、慎重な検討が必要と考えてございます。

 一方で、各福祉事務所におきまして、頻回受診対策を始めとした医療扶助の適正化や、生活習慣病の発生予防のための被保護者健康管理支援事業、これらに取り組んでいます。

 さらに、おっしゃっていただきましたとおり、今国会に提出しております生活困窮者自立支援法等の一部改正法案におきまして、都道府県がデータ分析を行って、市町村に対して取組目標の設定、評価や助言等の支援を行う仕組みを創設するとともに、社会的孤立等を原因とする頻回受診、そういった方、頻回受診の未改善者を対象としまして、多様な居場所につなぐことも含めて、被保護者健康管理支援事業を活用して支援を行うことを検討しております。

 引き続き、適正受診の更なる推進に取り組んでまいります。

柳本委員 医療抑制につながる、結果的にそれが重症化を招きかねないという理屈は理解できます。

 ただ、子供医療費助成制度、あるじゃないですか。これは、各自治体がそれぞれ取り組む中で、ナショナルミニマムとして、国として無料化を実施しない理由の一つとして、受診行動へ影響する、すなわち頻回受診などを招く可能性を示唆する答弁を実はこども家庭庁はしているんですよ。これを考えると、無料の医療扶助も同じではないかということになるわけで、整合性が取れていないというふうに私は思います。

 今どうこうしてくださいということは求めませんけれども、継続してこの点についても課題認識を持っていただくようにお願いをいたします。

 生活扶助費については、就労をもって一定の収入を得るとなれば、支給額が減額されることになります。これでは自立に向けての意識を損なうことになるのではないでしょうか。

 ただ、説明をいろいろお聞きしますと、現在も、一定の収入額であれば、それについては控除されることであるということなんですけれども、こういった事業、控除ですね、これは自立に向けてどのような効果があると厚労省は考えているのでしょうか。

 積極的に一般的な労働を強いるものではないんですけれども、高齢者にとっても、就労とかあるいは有償ボランティアのようなものをすることによって、社会との接点にもなるし、生きがいにもつながるというふうに考えるわけです。

 一方で、賃金とか収入がそのまま全額プラスとならずに保護費が減るとなれば、これは働くインセンティブはそがれることにもなります。厚労省として、認識と対応状況についてお聞かせいただけますでしょうか。

朝川政府参考人 生活保護は、要保護者の需要、最低生活費のうち、その者の金銭で満たすことができない不足分を補う程度において行うものでございまして、就労による収入を含めて収入がある場合は、その分保護費が減額される仕組みとなっています。

 その上で、就労による収入につきましては、就労へのインセンティブを促進する仕組みとして、収入の増に応じて控除額も増える勤労控除を設けております。これによって、就労による収入のうち、控除額分は収入認定せずに、最低生活費に上乗せして生活保護受給者の手元に残るようにしているところでございまして、このような取扱いは就労意欲の増進や自立の助長に効果を有しているものと考えております。

 また、生活保護受給者の支援におきましては、経済的自立に加え、日常生活自立や社会生活自立の観点からの支援にも取り組んでおりまして、高齢者の方も含め、社会参加等により社会的なつながりをつくる支援も重要と考えています。

 このため、例えば、福祉事務所において、直ちに就職することが困難な生活保護受給者を対象として就労準備支援事業というものを実施しておりまして、例えば公園の清掃への参加促進等の取組を行っています。

 今国会に提出しております改正法案におきましても、これまで予算事業として実施しているこうした就労準備支援事業について法定化するなど、地域活動への参加も含めた生活保護受給者の自立支援を推進してまいります。

柳本委員 今まで質疑を重ねてきましたように、医療との向き合い方、就労も含めての自立への道筋、社会とのつながり、いずれにしても、被保護者と関わるケースワーカーさんの責務は非常に重要となります。ただ、ケースワーカーも、昨今の人材不足で、なかなか配置が十分でないという話も聞きます。

 生活保護世帯、とりわけ高齢世帯の増加傾向や昨今の多様な被保護者の状況に応じて、ケースワーカーの配置並びにその業務については、よりきめ細かな対応等、的確な対処が求められると考えます。

 例えば、自立に向かう被保護者と、八十代以上の高齢者で基本的な生活サポートを要するけれども経済的自立に向かう見込みがないという被保護者によっては、配置や業務に濃淡をつけるなど、効果的なサポートをしていくべきではないでしょうか。

 また、ケースワーカーのみに頼るのではなく、地域の民生委員さんであるとかNPOや各種団体などとの連携も重要でありまして、地域性もあって各自治体に委ねられる部分もあるかとは思いますけれども、国としても、濃淡をつけながら、しっかり対処するところには財政的な支援も含めて対応すべきと考えますが、副大臣の御所見をお伺いいただけますでしょうか。

宮崎副大臣 ケースワーカーの関係で、濃淡という御指摘は非常に重要な視点だなと思っております。

 まず、事実だけ申し上げますと、ケースワーカーの配置につきましては、生活保護の受給世帯に応じて適切になされるということが重要でありまして、地方交付税の算定上、ケースワーカーの増員を図ってきた結果、ケースワーカー一人当たりの担当世帯数自体は減少しているという事実はございます。

 ただ、その上で、ケースワーカーが生活保護受給者の支援を行うに当たっては個々の世帯の援助方針と年間の訪問計画を策定することとしている中で、稼働能力の活用が不十分であるなど、十分に働いていただけていないとか、そういう状況で積極的な指導助言を要する世帯などについては、その状況に応じて訪問頻度を毎月や二月に一回とするなど重点的に訪問するとする一方で、これらの事情がない高齢者世帯などについては六月に一回という目安も示すなど、世帯の状況に応じて訪問するということで、先生御指摘のような、世帯に応じた濃淡に配慮をさせていただいているところです。

 また、生活保護受給者の自立に向けた就労支援については、ケースワーカーだけではなくて、就労支援員が相談、助言を行う被保護者就労支援事業、ハローワークと福祉事務所とのチーム支援、また福祉事務所の体制強化、こういったことによって、制度としても、必要に応じた事業を実施するという意味での制度上の濃淡もつけさせていただいていると考えております。

 さらに、今国会に提出した生活困窮者自立支援法の改正法案、この中では、生活保護受給中の子育て世帯に対して、専門知識や経験を有する職員がケースワーカーによる支援を補って、訪問などによって必要な支援を行うなどの事業を法定化するという措置も盛り込んでいるところでございまして、生活保護受給世帯の状況に応じて必要な支援が提供されるように、さらに濃淡という観点もしっかり踏まえた上で支援体制の整備を図ってまいりたいと思っております。

柳本委員 ありがとうございます。

 濃淡、よりめり張りをつけた対応を引き続きお願いしたいというふうに思いますが、その上で、経済的な自立のみならず、先ほど御答弁の中でもありましたけれども、日常的な自立、社会的な自立も図っていけるような取組へとつなげていただければと思います。

 今日、ちょっと資料についても若干質問したかったんですけれども、時間がありませんので、要望にとどめさせていただきます。

 先ほど御答弁をいただきました宮崎副大臣の御地元の沖縄も生活保護率は比較的高いんですけれども、それをはるかに上回る大阪府あるいは大阪市、そして私の地元西成区の生活保護率なわけなんですけれども、何が言いたいかといいますと、やはりここにはあいりんという日雇労働者の集積する場所があって、これが保護率の高さや、あるいはこの上にあります高齢率、あるいは単身高齢化率の高さになっているわけなんですね。

 このことを否定的に見るのではなくて、ある意味前向きに、社会的包摂ができているエリアに今なっているというふうに思いますので、私はそれはある意味において誇りに感じてはいるんですけれども、こういう実情、実は、全国から生活に困窮された方々が、あるいは労働者の方々がかつて大阪に集まり、西成区に来られという経過があって、その流れの中で、今現在も、生活に困窮されている方々が大阪に来られて、西成区に来られるという現状がありますから、全国の中でも、この地域における状況に対して、是非、国としても責任を持って対応いただきたいということを求めておきます。

 最後に、ちょっと毛色は変わりますけれども、子供支援金について、今日もこの委員会の中でも議論がありましたけれども、一点だけ厚労省にお伺いをさせていただきます。

 保険医療も関わることから、これは、こども家庭庁を中心に議論されていますけれども、厚労省としてもやはり主体的に被保険者に対して説明をしていくことが、分かりやすい説明をすることが求められるかと思いますけれども、いかがでしょうか。

新谷委員長 では、簡潔に一言で。

浜地副大臣 今委員御指摘の子ども・子育て支援金、これは、社会保障制度の一環としての、社会連帯の理念を基盤に、子供や子育て世帯を少子化対策で受益がある全世代、全経済主体で支える仕組みでございますので、しっかりとこの旨を皆様方に御理解いただけるよう、そして拠出に御理解いただけるよう、これからも、こども家庭庁と連携しながら、丁寧な説明をしてまいりたいと思っております。

 以上です。

柳本委員 ありがとうございました。

 終わります。

新谷委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後三時五十分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時二十分開議

新谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 今日は、まず、東京都でのスクールカウンセラーの大量の雇い止めの問題についてお伺いしたいと思います。

 二百五十名も雇い止めされました。従前は十年、二十年と更新することができたわけですが、会計年度任用職員の制度が始まりまして、東京都は、公募によらない再任用の上限を四回として、あとは公募に応じてくださいとなりました。今回の公募ではこれまでの勤務実績や評価は採用基準とせず、面接だけで合否を決めたとされております。その結果、学校長がA評価をつけたなど学校からも継続を望まれた方々が大量に不採用になるという事態が起きております。

 御存じのとおり、スクールカウンセラーは、子供、保護者、学校教員を継続的に支援する専門職であります。リストカットを繰り返している子供の相談に乗って、命を守る仕事もしているわけであります。今回の事態で、私も当事者の皆さんにお話をお伺いをいたしましたが、突然の雇い止めで子供たちが不安になって泣いている、保護者も先生がいなくなったら誰に相談すればいいのかと不安になっている、若い教員も、私、どうすればいいの、こう言ってくるというわけですね。

 今日、労組が集めたアンケートもお配りしておりますけれども、自分の不採用で学校現場が困惑していると答えた方が六五%にも上る事態であります。今起きている事態は、子供が安心して相談できる環境とはとても言えないと思います。スクールカウンセラーの雇用の安定を図る必要があると思います。

 資料の後ろに、十六ページ目のところに、消費者庁が消費生活相談員について会計年度任用職員制度が始まったときに出した通知をつけました。こう言っているんですね。任用回数に一律に制限を設けることなく専門性に配慮した任用と処遇をお願いすることは変わりません、引き続きいわゆる雇い止め解消に御協力をお願いいたしますと。

 同趣旨のものは厚労省が婦人相談員についても出しているわけですけれども、こうした同様の通知をスクールカウンセラーについても文科省は出すべきだということを、私、この間求めてまいりましたけれども、検討はどうなったでしょうか。

あべ副大臣 宮本委員にお答えいたします。

 スクールカウンセラー、この採用条件、任用方法につきましては、各自治体の権限と責任の下に適切に判断されるものでございまして、お尋ねの東京都の事案につきましても、東京都教育委員会の判断によるものと認識しております。

 文部科学省といたしましては、不登校児童生徒が増加するなど、学校や教師が直面する課題が多様化、複雑化する中にございまして、教師とは異なる専門性を有するスクールカウンセラー等が果たす役割は重要であるというふうに考えておりまして、職務の遂行上必要となる専門性を考慮するなどして十分な能力を持った者を任用することが大切だと、委員のおっしゃるように考えているところでございます。

 御提案の件につきましては、繰り返しになって大変申し訳ございませんが、スクールカウンセラーの採用方法、任用方法に関しましては、各自治体の責任と権限の下に適切に判断されるべきものでございまして、各教育委員会などにおきまして、様々な悩みを抱える児童生徒に対し適切な対応がされるような体制整備に努めていただきたいと考えているところでございます。

 以上です。

宮本(徹)委員 各自治体の権限と判断だということをおっしゃるんですけれども、スクールカウンセラーの制度自体は国の制度としてやっているわけですよね、ですから、当然、国として、スクールカウンセラーの雇用はどうあるべきなのかというのは示してしかるべきだと思うんですよ。

 消費生活相談員では示している、婦人相談員では示している、しかしスクールカウンセラーについては、雇い止めを解消すべきだ、こういうことは言わないというのは、スクールカウンセラーの仕事というのは消費生活相談員や婦人相談員みたいに雇用の安定は図らなくていいという逆のメッセージにもなりかねないと思うんですよね。そこはしっかり検討される必要があるんじゃないでしょうか。

あべ副大臣 宮本委員にお答えいたします。

 本日の午前中に追加でいただきましたものでございまして、十分なお答えができるかどうか分かりませんけれども、しっかりと答弁をさせていただきたいというふうに思います。

 文部科学省といたしましては、各学校の現場において、様々な課題を抱える児童生徒等に対して適切な対応が実施されるような体制を整備することが、委員のおっしゃるように重要だというふうに考えているところでございます。

 そのため、文部科学省においても、毎年度の予算についてスクールカウンセラーの配置充実を進めているほか、会計年度の任用職員の任用に関する運用マニュアルの周知を行っているところでございまして、御指摘の通知を出していないことのみをもって、スクールカウンセラーについての業務の継続性や雇用の安定性を求めていないという指摘は当たらないものと認識しております。

 以上でございます。

宮本(徹)委員 私、午前、文科委員会の議論、大臣の答弁を聞いて、それで加えて聞かせていただいたわけですけれども。

 今の答弁でいうと、通知を出していないことをもって雇用の安定を求めていないわけではないということは、雇用の安定は求める立場だということでよろしいわけですね。

あべ副大臣 宮本委員にお答えいたします。

 スクールカウンセラーの活用に当たりましては、一般的には、安定的な任用の下に、適切な人材の確保によりまして児童生徒への相談対応が行われることが望ましいと私どもも考えているところでございます。

 そのため、文部科学省といたしましては、令和六年度予算について、この案につきまして、スクールカウンセラーの配置時間において、全ての公立小中学校に対して行う基礎配置に加えて、いじめ、不登校対策や虐待対策、貧困対策などに対して課題に応じた重点配置を一万校に対して行い、配置時間の充実を図っているところでございます。

 その上で、実際のスクールカウンセラーの任用については、各自治体の権限と責任の下、御判断をいただくものと考えているところでございます。

 以上でございます。

宮本(徹)委員 いや、配置のことを今日聞いているんじゃないんですよね。雇用の安定のことを伺っているんですよ。

 安定的な運用ということをおっしゃいますけれども、その安定的な運用というのは、雇用の安定も入るということでよろしいんですか。

あべ副大臣 宮本委員にお答えさせていただきます。

 繰り返しになって大変申し訳ないのでございますが、スクールカウンセラーの活用に当たりましては、一般的には、安定的な任用の下に、適切な人材の確保により児童生徒への相談対応が行われることが望ましいと私どもも考えているところでございます。

宮本(徹)委員 安定的な運用じゃなくて、安定的な任用とおっしゃったわけですね。安定的な任用というのは、安定的な雇用だと。そういう考え方を持っているということですから、だったら、通知をしっかり出して東京都にも指導していただきたいと思いますので、今日のやり取りを踏まえて、大臣とも是非御相談をいただきたいというふうに思うんですね。

 東京都でいうと、一校、二校、三校と、何校担当しているかにもよるんですけれども、二校担当したら年収でいえば大体四百万ぐらい、三校担当していれば六百万円ぐらいの年収なんですね。これが突然なくなるわけですよ。生活設計が壊れちゃうわけですね。ですから、私、お話を聞きましたら、家を手放した、子供の学費が払えない、離婚した、うつを発症した、こういう話が既に起きているわけであります。

 労組の調査では、経験がある人ほど雇い止めされていると。採用された方も、明日は我が身と、憤りと不安が広がっております。学生の中でも心理職を選んで将来の見通しが立つかと動揺が広がっていると聞きました。

 今日配っている資料の一番最後のページに、日本公認心理師協会の声明も載せておきました。この中でも、単年度ではなくて継続して雇用する形としてほしいということが書かれております。

 公認心理師の所管というのは、厚生労働省も所管なんですよね。ですから、公認心理師の雇用の安定というのは、もちろん相談者との関係でもそうですし、なり手の確保ということでも私は非常に重要なことだと思うんですけれども、大臣の認識もお伺いしたいと思います。

武見国務大臣 公認心理師は、公認心理師法に基づいて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、心理に関する支援を要する者に対して、様々な機関、当然学校が入りますけれども、等において支援を実施するなど、重要な役割を担っております。公認心理師が安心して働くことができる環境整備は重要であるという認識を持っております。

 そこで、厚生労働省としては、公認心理師の活動状況や支援内容を明らかにするための調査、これは令和五年度公認心理師活動状況等調査でございますけれども、これを実施しているところであり、その調査結果を踏まえて、引き続き、公認心理師が各分野において活躍できるよう、公認心理師の資質の向上をさせることなど、必要な取組を確実に進めていきたいと考えます。

宮本(徹)委員 公認心理師法、これは議法で作ったわけですけれども、このときの議論では、これが待遇の改善、身分保障につながることを期待したいと、当時、自民党の議員の方が提案者として答弁されているわけですよね。それと逆行する事態が今起きているわけですから、これは本当に、与野党超えて、スクールカウンセラー職の雇用の安定のためにちょっと力を尽くさなきゃいけないんじゃないかと思います。

 加えて、これまで現場で高く評価されてきたのになぜ不採用になったのか、スクールカウンセラーの皆さんは全く示されていないということをおっしゃっておられます。

 そして、面接が職業能力を判断できるようなものではなかった、圧迫面接があったという声も複数寄せられております。ある面接では、管理職にどれだけイエスと言えますか、あなたのカウンセリングの仕方が間違っていると管理職に言われた場合どうするんですか、管理職に修正してくれと言われたときにどうするかという趣旨のことを聞かれた、こういう話なんですね。

 スクールカウンセラーというのは、教員から子供への暴言、暴力などがあった、大人と子供の利害対立があった場合、子供の側に立つのがスクールカウンセラーの仕事なわけですね。このスクールカウンセラーが学校の管理職の顔色をうかがって萎縮するようなことになったら、子供たちの権利を守る立場で動けなくなってしまう、これが恣意的な採用、不採用の一番の大きな問題だとお伺いしました。

 不透明な採用の仕方によってスクールカウンセラーが自らの雇用を守るために萎縮してしまって、子供の権利を守る立場で動けないような事態を招いては決してならないと思いますが、いかがですか。

あべ副大臣 宮本委員にお答えいたします。

 東京都のスクールカウンセラーの採用基準の明確化、採用プロセスのところでございますが、採用条件につきましては各自治体の権限と責任の下に適切に判断されるものと認識しているところでございまして、文部科学省といたしましては、教師とは異なる専門性を有するスクールカウンセラーが果たす役割は大変重要だと、宮本委員と同じように考えておりまして、スクールカウンセラーに求められる一般的な役割についてはガイドライン等において周知するなど、教育支援体制の充実に努めているところでもございます。引き続き、学校における教育相談体制の構築のため、必要な支援の充実に努めていくところでございます。

 また、もう一つ御質問のございました、萎縮して子供の権利を守る立場で動くことができない事態は招いてはならないという御懸念の点でございますが、スクールカウンセラーは児童生徒のニーズを踏まえ心理的な支援を行う専門職であると私どもも考えておりまして、学校の教職員として校長の監督の下でその職務に従事することとされているところでございます。

 スクールカウンセラーを任用する各自治体において、こうしたスクールカウンセラーの職務の性質等を踏まえた上で、適切な教育相談体制が整えられることが重要だというふうに、宮本委員と同じように考えているところでございますので、文部科学省としてもしっかり取り組んでまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。

宮本(徹)委員 どこが同じなのかという声が上がっているわけでございますけれども、やはりこういう不透明な採用の仕方というのは、本当にこれはまずいと思います。

 これまで通例的に任用が継続してきたので、子供の側に立って頑張ることができたわけですよね。もし学校の先生と、あるいは管理職と対立するようなことがあってその学校から配置転換されても、別の学校に配属されていたわけですよ、今までは。ところが、今度のようなやり方になったら、子供の側に立って管理職や学校の先生と代わりに対立するようになったときに、理由も知らされずに雇用が継続されないということが起きるんじゃないか、こういう不安に駆られる事態になってしまうわけですよ。そうして、本当に子供のために動けるのかということになります。ですから、私は、こういうやり方というのは、一番犠牲になるのは結局子供になってしまうんじゃないかと思うんですね。

 今回、都教委は公募による選考は面接と書類選考だけでやっているわけですが、このスクールカウンセラーの採用選考について、短時間の面接だけではなくて、やはり勤務実績や評価も加えて行う方が適正に私は判断ができると思うんですけれども、そういうところをしっかり明確にする必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。

あべ副大臣 宮本委員にお答えさせていただきます。

 文部科学省としては、不登校児童の生徒が増加するなど、学校や教師が直面する課題が多様化、複雑化する中にありまして、教師とは異なる専門性を有するスクールカウンセラーが果たす役割は大変重要だというふうに考えております。

 そのため、職務の遂行上必要となる専門性を考慮するなどいたしまして十分な能力を持った者を任用することがまさに大切でございまして、文部科学省のスクールカウンセラーの活用事業に関するQアンドA、先生もお読みになっているというふうに思いますが、ここにおきましても、任用に当たっては面接等を通じて活動実績等についても十分踏まえた上で選考を行ってほしい旨を示しているところでございます。

 繰り返しになって申し訳ございませんが、スクールカウンセラー等の採用条件や任用方法については各自治体の権限と責任の下に適切に判断されるものでございますが、各教育委員会におきましても、様々な悩みを抱える児童生徒に対して適切な対応がなされるよう、体制整備に努めてまいりたいと考えているところでございます。

宮本(徹)委員 QアンドAの中で、活動実績等を十分に踏まえて選考しなさいと書いてあるんですよね。その活動実績というのは、その前にちゃんと修飾語がついていますよね、学校現場での活動実績等を十分に踏まえて選考してくださいと書いているわけですよね。

 ところが、今回は学校現場からA評価が上がった方々が落とされる、そうしたものは今回は考慮に入れない、短時間の面接だけ、しかもその面接の中身はあたかも初めから落とすのが決まっている人がいるかのような圧迫面接が幾つも確認されている、こういう話なんですよね。

 これはちょっと余りにもやり方がひどいと思いますので、これはしっかり文科省としても調査をしていただきたいと思います。

 今日、総務省に来ていただきましたが、総務省が出しております「会計年度任用職員制度の適正な運用等について」という通知では、複数回の任用が繰り返された後に、再度の任用を行わないこととする場合には、事前に十分な説明を行う、ほかに応募可能な求人を紹介する等配慮をすることが望ましいとあります。

 東京都のやっていることというのは、この通知に反するんじゃないですか。

馬場副大臣 お答えします。

 会計年度任用職員に関して、結果として複数回にわたって同一の方を同一の職務内容の職に再度任用している場合に、何の予告もなく再度の任用を行わないことは、その方に多大な影響を及ぼすことが想定されます。

 御指摘の通知に関しては、このような事情を踏まえ、事前に十分な説明を行うなどの配慮が望ましいことを助言しているものでありますが、一律の対応を義務づけているものではありません。

 こうした対応を含め、会計年度任用職員の任用に係る具体的な運用については、制度の趣旨に反しない限りにおいて各自治体の判断に委ねられているものであり、各自治体において、通知の趣旨を踏まえ、適切に対応いただきたいと考えております。

宮本(徹)委員 通知の趣旨を踏まえていないから質問させていただいているわけですね。ですから、ここは、ちゃんと通知の趣旨を踏まえなさいと総務省からも是非働きかけていただきたいと思います。

 一般的に、民間でいったら、こんな、雇い止めの理由も示さずに雇い止めするというのは許されないですよね。

 民間の労働契約について、ちょっと大臣、紹介してください。

武見国務大臣 議員御指摘の民間の労働者のケースでありますけれども、有期労働契約に関しては、労働者と使用者との間の紛争を未然に防止するために、労働基準法第十四条第二項に基づく告示として、有期労働契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準を定めております。

 この告示では、使用者が有期労働契約を更新しない場合において、更新しない理由についての証明書を労働者が請求したときには遅滞なくこれを交付しなければならないということとされておりまして、これに違反した場合には労働基準監督署による指導が行われます。

宮本(徹)委員 民間でいえば労基署から指導されるようなことが、自治体現場ではまかり通っているわけですよね。なぜ自分が雇い止めになったのかも示されない、これは本当に、公務の現場こそしっかり正されていかなきゃいけないと思いますので、こういう点は、民間の労働法制に、労働契約の関係に是非倣った対応を公務の現場でもやっていただきたいと思います。

 残された時間で、障害福祉の報酬改定についてお伺いしたいと思います。

 就労継続支援B型では、平均工賃月額の算定方法の改善だとか、あるいは利用者六人対職員一人という新たな報酬体系の創設がある一方で、従来の職員配置の基準では、平均工賃一万五千円未満の基本報酬が全部減額されております。地元の就労継続Bの事業所でも、このままいけば年間百七十万円の減収になる、今でもぎりぎりの収支状況でやっているので大幅な赤字になる、こう言われました。

 お伺いしたいんですけれども、経営実態調査で、就労継続支援B型での赤字の事業所の割合は幾らなのか。そして、平均工賃一万五千円未満の事業所に限れば赤字の事業所の割合は幾らなのか。今回の報酬改定で、就労継続支援B型で基本報酬が減収となる事業所の比率をどの程度と見込んでいるのか、お答えいただけますか。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 令和五年経営実態調査におきまして、就労継続支援B型事業所全体のうち、収支差がマイナス、いわゆる赤字となっている事業所の割合は四三・三%となっているところでございます。一方、同調査においては平均工賃月額を調査項目としておりませんので、平均工賃月額ごとの収支差は把握をしていないところでございます。

 また、御指摘のように、基本報酬が減額になる事業所の比率の試算は行っておりませんが、今回の就労継続支援B型の基本報酬の見直しは、障害者の工賃の更なる向上の観点も含めて、報酬全体を見直すものでございます。また、事業所の収支は、基本報酬だけでなく、各種加算も含めた報酬により決まるものであることから、御指摘のような形で、部分的な基本報酬の改定のみで収支について評価をするということは適切でないと考えております。

宮本(徹)委員 四三・三%は赤字ですから、今日もずっと議論になっております訪問介護の赤字比率が三六%ですから、それよりも障害福祉の就労継続Bの方が赤字の事業所の比率は高いわけですね。恐らく、基本報酬が低いですから、平均工賃一万五千円未満だったらこの比率はもっと上がるんじゃないかと思われるわけですよね。

 今日、田中委員からも指摘がありましたけれども、平均工賃一万五千円未満の事業所は、障害が重い人など支援度が高い人たちが多く通っている事業所であります。そこで報酬を切り下げると支援の水準を下げざるを得ない、こういう事業所も出てしまう。平均工賃は高くなくとも、利用者のために日々尽力している事業所はたくさんあるわけですね。作業が上手でなくとも、安定して通所できるようになることは非常にすばらしいことだと私は思います。

 平均工賃が低い場合に基本報酬の単価を引き下げるというのは、私は、障害者への合理的配慮に反する、ある意味、障害が重い方に対する差別的な報酬と言ってもいいと思うんですね。そういう認識はございますか。

辺見政府参考人 今回の障害福祉サービスの報酬改定におきましては、就労継続支援B型につきまして、障害者の経済的自立を促す観点から、工賃の更なる向上のために、平均工賃月額が高い区分については報酬単価の引上げを実施し、あわせて、平均工賃月額が低い区分の報酬単価を引き下げるものでございます。

 一方、基本報酬の単価設定のほか、更なる手厚い人員配置ができるように、手厚い人員配置を行うことによって手厚い支援が行われるということを評価するものとして、新たに人員配置六対一の報酬体系の創設を行っております。あわせて、工賃目標を達成した場合の加算の新設も行っております。

 こうしたことを通じて、手厚い支援を評価しつつ、工賃の更なる向上につながるような質の高い支援を行う事業所について、高い報酬が得られるような報酬体系としているところでございます。

 なお、障害者への合理的配慮につきましては、事業者が事業を行うに当たり、障害者から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があり、その負担が過重でないときには合理的配慮を行うということを求めているものと認識をしておりまして、お尋ねの部分の報酬改定につきましては、合理的配慮に関連するものとは考えていないところでございます。

宮本(徹)委員 平均工賃が高ければ質が高い支援だ、こういう考え方自体が障害福祉の考え方と違うと私は指摘をしておきたいと思います。

 そして、六対一を取れば報酬は上がるじゃないかという話がありました。確かに、六対一を取れば報酬は上がります。私の地元の事業所の中でも、頑張って六対一にしようとしているところもあります。ただ、問題は、物すごい人手不足なんですよ。一年かかってやっと一人応募があって採用できた、こういうところもあれば、ずっと応募を求めていても、一年たっても応募は来ない、こういう事業所もあるんですね。それだけの大変な深刻な人手不足の下で、六対一があるから大丈夫ですよという話にはならないんじゃないですか。これは多分、与野党を超えて、皆さんの地元でも同じことが起きていると思いますよ。

 ですから、これはちゃんと、基本報酬が下がるというのはやめるべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

武見国務大臣 御指摘の趣旨は理解をいたしますが、実際に障害者に関わるこうした基本報酬の単価の設定というものについては、先ほどから担当が説明しておりますように、やはり、更なる手厚い人事の配置ができるように新たな人員配置六対一の報酬体系の創設を行ったり、工賃目標を達成した場合の加算の新設などを行っておりますので、こうした支援の質の向上ということを考えながら障害者の工賃の更なる向上を図るという考え方は、私は適切だと思います。

宮本(徹)委員 私は先ほど、幾ら六対一を新設しても、六対一のために努力をして応募をかけても人が来ないですよ、それぐらいの人手不足というのが今分かっているんですかということを申し上げているわけですよ。

 生活介護も、先ほど指摘がありましたけれども、時間払いが導入されて、七時間未満だと報酬が下がり、利用時間六時間未満だと大幅に単価が下がるわけですよね。送迎の時間もあります。でも、送迎をやっている時間というのは、営業時間には入っても利用時間には入らないわけですね。ですから、支援区分六のように送迎がなければ生活介護の事業所に来れないような方々、もちろん送迎の時間も介助しているわけですけれども、ここは支援の時間にカウントされない。そうすると、六時間未満になる方がたくさんいるわけですね。ですから、ほとんどの事業所が大幅な、生活介護でいえば、報酬がマイナスになっているんですね。

 もう質問時間が来ちゃいましたからこれで終わりにしますけれども、本当に、福祉の心で誠実に取り組んでいる事業所の皆さんが人手不足の中で一生懸命支援しているんですから、ここがマイナスになるようなものは絶対やっちゃならないですよ。これは今からでも考え直していただきたい、そのことを強く大臣に申し上げておきたいと思います。

 終わります。

     ――――◇―――――

新谷委員長 次に、内閣提出、生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。武見厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

武見国務大臣 ただいま議題となりました生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。

 単身高齢者世帯の増加や、持家比率の低下等が進む中、今後、高齢者や生活困窮者等の住まいに関する支援のニーズはますます増加していきます。また、世代を超えた貧困の連鎖を防止するため、生活保護世帯の子供について早期から支援につなげつつ、その自立に向けた環境整備を促進するとともに、多様で複雑な課題を抱える生活困窮者等に対する支援体制を強化していくことが求められています。

 こうした状況を踏まえ、生活困窮者等に対する安定的な居住確保の支援、生活保護世帯の子供に対する支援の充実等を通じて、生活困窮者等の自立の更なる促進を図るため、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、生活困窮の相談窓口等における居住支援の明確化、住居確保給付金の支給対象者の拡充、生活困窮者に対して日常生活の見守り支援等を行う事業の努力義務化等を通じて、住まいの確保に関する相談から入居後の支援まで、切れ目のない支援を推進いたします。また、無料低額宿泊所について、事前届出の実効性確保のための措置を講じます。

 第二に、子育て中の生活保護世帯への訪問等により、学習、生活環境の改善等に関する相談、助言等を行う事業を創設をいたします。また、生活保護世帯の子供が高等学校等卒業後に就職して自立する場合に、生活基盤を確立することができるよう、新生活の立ち上げ費用に充てるための一時金を支給することといたします。

 第三に、生活困窮者の家計改善を支援する事業の国庫補助率を引き上げ、同事業の全国的な実施を推進するとともに、生活困窮者自立支援制度と生活保護制度との間で切れ目のない支援を実現できるよう、被保護者が生活困窮者向けの事業を利用できる仕組みを創設いたします。また、多様で複雑な課題を抱える生活困窮者等への支援を強化するため、支援関係者が情報交換や支援体制の検討を行う会議体の設置を推進します。

 第四に、生活保護制度における医療扶助の適正化や健康管理支援事業の効果的な実施等を図るため、都道府県が広域的な観点からデータの分析等を行い、市町村に情報提供等の援助を行う仕組みを創設いたします。

 最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、令和七年四月一日としております。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容の概要でございます。

 御審議の上、速やかに可決していただくことをお願いいたします。

新谷委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十五日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十四分散会


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