衆議院

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第4号 令和6年3月22日(金曜日)

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令和六年三月二十二日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 新谷 正義君

   理事 大岡 敏孝君 理事 大串 正樹君

   理事 橋本  岳君 理事 三谷 英弘君

   理事 井坂 信彦君 理事 中島 克仁君

   理事 足立 康史君 理事 伊佐 進一君

      秋葉 賢也君    畦元 将吾君

      上田 英俊君    尾身 朝子君

      勝目  康君    金子 容三君

      川崎ひでと君    岸 信千世君

      塩崎 彰久君    鈴木 英敬君

      田所 嘉徳君    田畑 裕明君

      田村 憲久君    高階恵美子君

      高木  啓君    中谷 真一君

      仁木 博文君    堀内 詔子君

      本田 太郎君    三ッ林裕巳君

      柳本  顕君    山本 左近君

      吉田 真次君    大西 健介君

      堤 かなめ君    西村智奈美君

      山井 和則君    吉田 統彦君

      一谷勇一郎君    遠藤 良太君

      岬  麻紀君    福重 隆浩君

      吉田久美子君    宮本  徹君

      田中  健君    福島 伸享君

    …………………………………

   厚生労働大臣       武見 敬三君

   厚生労働副大臣      宮崎 政久君

   厚生労働大臣政務官    塩崎 彰久君

   厚生労働大臣政務官    三浦  靖君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           朝川 知昭君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           宿本 尚吾君

   厚生労働委員会専門員   森  恭子君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十二日

 辞任         補欠選任

  勝目  康君     岸 信千世君

  田畑 裕明君     高木  啓君

  高階恵美子君     尾身 朝子君

同日

 辞任         補欠選任

  尾身 朝子君     高階恵美子君

  岸 信千世君     勝目  康君

  高木  啓君     田畑 裕明君

    ―――――――――――――

三月二十一日

 じん肺とアスベスト被害根絶等に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第五一九号)

 同(笠井亮君紹介)(第五二〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第五二一号)

 同(志位和夫君紹介)(第五二二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第五二三号)

 同(田村貴昭君紹介)(第五二四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第五二五号)

 同(宮本岳志君紹介)(第五二六号)

 同(宮本徹君紹介)(第五二七号)

 同(本村伸子君紹介)(第五二八号)

 福祉職員の最低賃金を千五百円以上にして、職員配置基準を引き上げることに関する請願(青山大人君紹介)(第五二九号)

 同(小熊慎司君紹介)(第五三〇号)

 同(奥野総一郎君紹介)(第五三一号)

 同(神谷裕君紹介)(第五三二号)

 同(櫻井周君紹介)(第五三三号)

 同(重徳和彦君紹介)(第五三四号)

 同(下条みつ君紹介)(第五三五号)

 同(中谷一馬君紹介)(第五三六号)

 同(長友慎治君紹介)(第五三七号)

 同(本庄知史君紹介)(第五三八号)

 同(宮本徹君紹介)(第五三九号)

 同(屋良朝博君紹介)(第五四〇号)

 同(山崎誠君紹介)(第五四一号)

 同(米山隆一君紹介)(第五四二号)

 同(笠浩史君紹介)(第五四三号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第六二三号)

 同(新垣邦男君紹介)(第六二四号)

 同(大石あきこ君紹介)(第六二五号)

 同(神田憲次君紹介)(第六二六号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第六二七号)

 同(志位和夫君紹介)(第六二八号)

 同(寺田学君紹介)(第六二九号)

 同(徳永久志君紹介)(第六三〇号)

 同(道下大樹君紹介)(第六三一号)

 同(神津たけし君紹介)(第六四六号)

 同(白石洋一君紹介)(第六四七号)

 同(野間健君紹介)(第六四八号)

 同(湯原俊二君紹介)(第六四九号)

 最低賃金全国一律制度への法改正を求めることに関する請願(大河原まさこ君紹介)(第五四四号)

 同(近藤昭一君紹介)(第五四五号)

 同(重徳和彦君紹介)(第五四六号)

 同(下条みつ君紹介)(第五四七号)

 同(牧義夫君紹介)(第五四八号)

 同(柚木道義君紹介)(第五四九号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第五九二号)

 同(伊藤忠彦君紹介)(第五九三号)

 同(笠井亮君紹介)(第五九四号)

 同(神田憲次君紹介)(第五九五号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第五九六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第五九七号)

 同(志位和夫君紹介)(第五九八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第五九九号)

 同(田村貴昭君紹介)(第六〇〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六〇一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第六〇二号)

 同(宮本徹君紹介)(第六〇三号)

 同(本村伸子君紹介)(第六〇四号)

 安全・安心の医療・介護の実現のため人員増と処遇改善を求めることに関する請願(青山大人君紹介)(第五五〇号)

 同(井坂信彦君紹介)(第五五一号)

 同(大河原まさこ君紹介)(第五五二号)

 同(近藤昭一君紹介)(第五五三号)

 同(重徳和彦君紹介)(第五五四号)

 同(下条みつ君紹介)(第五五五号)

 同(柚木道義君紹介)(第五五六号)

 同(笠浩史君紹介)(第五五七号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第六〇五号)

 同(新垣邦男君紹介)(第六〇六号)

 同(大石あきこ君紹介)(第六〇七号)

 同(岡本あき子君紹介)(第六〇八号)

 同(笠井亮君紹介)(第六〇九号)

 同(北神圭朗君紹介)(第六一〇号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第六一一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六一二号)

 同(志位和夫君紹介)(第六一三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六一四号)

 同(田村貴昭君紹介)(第六一五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六一六号)

 同(寺田学君紹介)(第六一七号)

 同(徳永久志君紹介)(第六一八号)

 同(長友慎治君紹介)(第六一九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第六二〇号)

 同(宮本徹君紹介)(第六二一号)

 同(本村伸子君紹介)(第六二二号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第六三九号)

 同(稲富修二君紹介)(第六四〇号)

 同(神津たけし君紹介)(第六四一号)

 同(白石洋一君紹介)(第六四二号)

 同(末松義規君紹介)(第六四三号)

 同(野間健君紹介)(第六四四号)

 同(湯原俊二君紹介)(第六四五号)

 介護保険制度の改善、介護従事者の処遇改善を求めることに関する請願(道下大樹君紹介)(第五九一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)


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     ――――◇―――――

新谷委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省社会・援護局長朝川知昭君、国土交通省大臣官房審議官宿本尚吾君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

新谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

新谷委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。井坂信彦君。

井坂委員 立憲民主党の井坂信彦です。

 本日は、トップバッターなので、法案の理念の部分から伺います。

 大臣は、居住福祉という言葉は御存じでしょうか。これは、神戸大学の早川和男名誉教授が提唱し、阪神・淡路大震災で広まった新しい概念であります。その頃、私は市会議員で、震災復興の市民運動などで早川先生と御一緒しながら、繰り返し、この居住福祉の必要性、重要性についてお聞きをしてまいりました。

 当時は、震災で壊れた家というのは個人の財産という扱いで、その建て直しに税金を投入するなどということは考えられない時代でありました。しかし、神戸を中心に全国で二千四百万人の署名が集まり、そして被災者生活再建支援法ができて、本年一月の能登半島の地震では、金額を倍増しようという議論までできるようになってきたわけであります。そして、今回、福祉と住まいの政策を結びつける法改正が提案をされたということは、これは早川先生も天国から喜んでくださっているというふうに思います。

 居住福祉という考え方は、一言で言えば、住まいが福祉の基礎であるということであります。貧困だから不十分な住環境に住むのではなくて、住環境が不十分だから貧困や病気や孤独になってしまうという考え方であります。

 大臣に伺いますが、この居住福祉という概念についてどのような御見解をお持ちか、お答えください。

武見国務大臣 今の委員からの御説明を受けて、改めて、居住福祉という考え方は大切な考え方であり、かつまた、現在のような、能登の地震の発災後、今の復旧復興の中で、こうした概念というものが活用されることが必要だというふうにも考えます。また、単身高齢世帯の更なる増加、それから持家比率の低下などにより、今後、住まい支援のニーズはますます高まるものと想定をしております。このため、令和四年十二月に取りまとめられた全世代型社会保障構築会議報告書においても、住まい政策を社会保障の重要な課題として位置づけ、そのために必要となる施策を本格的に展開すべき旨が盛り込まれたものと承知をしております。

 お尋ねの居住福祉という概念につきましては、厚生労働省として使用しているものではございませんけれども、住まいは生活の基盤であり、その安定した確保を図られることは重要であると考えます。

 また、居住と福祉の関係について申し上げれば、各種福祉サービスは安定した住まいを基盤として行われるものであることから、居住の支援は重要なものと考えているところであります。

井坂委員 ありがとうございます。

 ちょっと通告の順番を変えて、二番、三番を飛ばして、四番目以降から先に質問いたします。

 居住福祉における住環境には、住宅のハード面だけでなく、そこに訪れる人などの人間関係であったり、あるいは法制度などのソフト面も含まれます。

 今回、国土交通省の住宅セーフティーネット法が改正され、民間の居住支援法人が低所得者や高齢者、また障害者や子育て世帯の見守りをして、必要があれば福祉につなぐ居住サポート住宅というものが創設をされます。居住福祉の理念からも、厚生労働省と国土交通省が単に連携するだけでなくて、福祉や貧困の問題をよく分かっている厚生労働省が住宅の政策に主体的に関与することが重要であります。実際に、住宅セーフティーネット法の第一条「目的」には、主語が国土交通大臣だけだったところに、今回、厚生労働大臣も書き加えられて、国土交通省と厚生労働省が対等に協力して基本計画を策定するように法改正をされております。

 参考人に伺いますが、居住支援法人が生活困窮者に対して見守りをするわけですが、福祉的な観点で見守りができるように、厚生労働省として具体的にどう取り組みますでしょうか。

朝川政府参考人 住宅セーフティーネット法に基づきます居住支援法人につきましては、社会福祉法人でありますとか社会福祉協議会が指定を受けている場合もございまして、現在でも、賃貸住宅への円滑な入居に向けた支援のほか、入居中の見守りなどの支援も行っていると承知しています。

 今国会に提出されました住宅セーフティーネット法の改正法案に盛り込まれております居住サポート住宅につきましては、日常の安否確認や見守りの提供、また、必要に応じて福祉サービスへのつなぎといったサポートを行うことを認定の要件としております。認定に当たりましては、住宅の観点のみならず、居住支援法人等が市区町村の福祉部局や地域の福祉関係者と連携して、入居者に対してこれらのサポートを適切に実施できるかを確認することとしています。

 また、住宅セーフティーネット法の居住支援協議会は、市区町村の福祉部門、住宅部門、民間の不動産会社や社会福祉法人等の関係者が地域の居住支援体制の整備について協議する仕組みでございまして、住宅セーフティーネット法の改正法案におきましても、居住支援協議会の設置の促進を図ることと承知しております。厚生労働省としても、居住支援協議会と福祉部局との連携を進めていくこととしています。

 また、同法案による改正が実現した場合には、居住サポート住宅の要件の確認方法でありますとか認定後の指導監督の在り方につきまして、国土交通省とも緊密に連携して検討を進めてまいります。

井坂委員 参考人が冒頭、微妙に論点をずらして答弁されたと思うんですが、社会福祉協議会とか社会福祉法人が居住支援法人になったときは、そこは心配していないんです。

 ただ、やはり多くは、いわゆる福祉とはこれまで余り関係のなかった民間の企業、団体が居住支援法人になっていることが多いので、そういうところがこれから福祉的な見守りもしていかなきゃいけない、そこをやはり、これは国土交通省というよりも、むしろその部分は厚生労働省がきちんと、福祉的な見守り、きちんとそのための能力を備えた形でやっていただくことが非常に重要だと思っておりますので、是非やっていただきたいというふうに思います。

 次に、自宅以外の居場所ということについて伺います。

 居住福祉における住環境というのは、家だけじゃなくて、近くにある施設や近所の知り合い、あるいは自然環境、また地域の歴史、文化までが含まれて、実際、お寺や神社なども重要な居住福祉資源というふうにされています。自宅以外の行き先や居場所も、まさに重要な居住福祉の場所になってくるわけであります。

 厚生労働省は今、生活困窮者支援等のための地域づくり事業というのをやっていて、サロンとか触れ合い喫茶など、居場所を増やそうとしています。

 そこで、大臣に伺いますが、自宅を訪問する、さっき議論をしたプッシュ型の見守りだけでなく、触れ合い喫茶やサロンなどの居場所を、健康状態や困り事を確認できるプル型の見守りと位置づけてはどうか、さらに、先ほどの居住サポート住宅も、居住支援法人が見守りに行くだけでなく、近所の居場所を紹介をして、連携して見守りを行えないか、大臣に伺います。

武見国務大臣 私も浅草で、NPO法人で地域のコミュニティーを場所を提供してつくっているところを拝見させていただきました。近隣の高齢者の方々が随分たくさん集まって、囲碁をしたり読書をしたり、いろいろ談笑されたりという場所が提供されていて、極めて好ましい、お互いの見守りといったコミュニティーが形成されておりました。

 生活困窮者の見守りというのは、居宅だけではなくて、居場所づくりを含めて地域の中で行うということが重要である。そして、例えば生活困窮者などのための地域づくり事業では、地域のコミュニティーを形成する居場所づくりというものも今回対象にしております。

 また、今国会に提出された住宅セーフティーネット法の改正法案に盛り込まれております居住サポート住宅では、安否確認や緩やかな見守りなどを行いつつ、複合的な課題を抱える者に対しては必要に応じて福祉サービスにつなぐこととしておりまして、地域づくり事業を活用した居場所づくりと連携することも考えております。

 このために、居住サポート住宅における見守り等を担う居住支援法人等に対しまして地域づくり事業の居場所の周知を行うなど、住宅政策との連携を深めるための取組を進めていきたいと考えているところであります。

井坂委員 ありがとうございます。

 次に、公営住宅について国土交通省に伺います。

 議員の皆さんも地元活動で訪れることが多いというふうに思いますが、公営住宅は今高齢化それから過疎化が進んで、活気を失っているところが非常に多くあります。昔の長屋のような交流も減ってしまい、自治会役員のなり手も見つからないというところが増えてきております。

 そんな中で、神戸の県営住宅が学生さんの入居を始めたのをきっかけに、今、全国の自治体で公営住宅への学生受入れが広がりつつあります。地域の行事や自治会活動に参加することを条件に学生や若者が安く入居できるという、双方にとってメリットがある仕組みになっています。

 国土交通省に伺いますが、公営住宅に学生や現役世代の単身者を入れるなど多世代化を促進して、共助による見守り機能を強化してはどうでしょうか。

宿本政府参考人 お答えいたします。

 公営住宅は、住宅に困窮する低額所得者の居住の安定を図る住宅として大変重要な役割を担っております。こうした役割を踏まえつつ、御指摘のように、多世代化する、すなわちコミュニティーミックスを図り、活力ある公営住宅団地にしていくことは大変重要であると考えております。

 近年では、既存の公営住宅を子育てに適した住環境を備えた住まい、すなわち、具体的には、リビングダイニングキッチン、LDKの設置や、フローリングや洋室への改修などを行った上で、若者夫婦世帯や子育て世帯を優先的に入居させる取組ですとか、委員御指摘のように、学生に空き室を提供して自治会活動に参加を促し、高齢者の見守りや地域コミュニティーの維持を図る、こういった取組、公営住宅ストックを活用した様々な取組が進められております。

 国土交通省といたしましては、こうした取組事例を事業主体であります地方公共団体に周知をして、横展開を図ってまいりたいと考えております。

井坂委員 次に、増え過ぎた会議体の整理について伺います。

 今回の法改正で、これまで任意の設置だった生活困窮者支援会議の設置が努力義務化をされます。また、生活保護の関係団体が調整や情報共有を行う新しい会議体も設置をされます。また、国土交通省の住宅セーフティーネット法でも、居住支援協議会の設置が努力義務化をされます。これに加えて、既存の重層的支援体制整備事業の支援会議というのもあって、参加する自治体職員や関係者、関係団体、もうほぼ重複するであろう会議体が乱立をすることになります。

 参考人に伺いますが、似通ったテーマの会議体を一元化をしたり、あるいはテーマによっては共同開催をするなど、関係者が会議に繰り返し忙殺されないよう整理をすべきではないでしょうか。

朝川政府参考人 この法案では、生活保護法におきまして、被保護者に対する支援の関係者により構成されます調整会議の規定を新設をすることにしております。また、この調整会議と、生活困窮者制度の方の支援会議、それと社会福祉法に基づきます重層的支援体制整備事業の支援会議、この三つにつきまして連携規定を設けてございます。

 これらの三つの会議体は、生活に困窮しているなど課題を抱えている方に関する情報の共有や支援の在り方の検討を行うという点で、設置目的や支援の対象者、構成員に対して守秘義務を設けているという点で類似してございます。また、これらの会議体は、地域における支援体制の整備も設置目的の一つでありまして、その地域における共通の課題も多いと考えられます。また、実際、自治体内の担当部局も同じであるか隣接している場合も多いと考えられますので、本法案において連携規定を設けたというのは、そういう趣旨もございます。

 一方、居住支援協議会でございますけれども、こちらは、地域における居住支援体制を住宅、福祉の関係者が協議するための会議体ということで、個別具体的な事案、個別ケースについて検討する会議と共同で開催することがなじまない場合もあると考えています。しかし、住まいに関する地域課題を検討する際は、これらの会議を合同して開催するケースも十分あり得ると考えております。

 本法案の改正が実現した場合には、自治体の事務負担が軽減されますように、こういう一体的開催であるとかそういったことを含めた、ガイドライン等において以上のような趣旨を明示していきたいと考えております。

井坂委員 是非、同じ日に順番にやる程度のことでなくて、一体開催、合同開催ということまで柔軟にできるようにしていただきたいというふうに思います。

 次に、通告の二番に戻って、住居確保給付金について伺います。

 収入も貯金も少ない世帯に三か月から九か月間だけ家賃を支給する住宅確保給付金、今回の法改正で、家賃の安い住宅への引っ越し費用も給付できることになったのは評価をいたします。

 しかし、この給付金は、単に家賃が払えないというだけでは駄目で、仕事を失ってから二年以内という離職要件、それからハローワークで仕事を探していなければいけないという求職要件があります。コロナ禍で仕事を失っていなくても、収入が激減していればよいというふうに、離職要件は今緩和をされております。

 参考人に伺いますが、もう一歩進めて、やはり、家賃の払えない状態に陥った人を生活保護の手前の段階で救うためにも、住居確保給付金の離職要件、求職要件をこの際撤廃をすべきではないでしょうか。

朝川政府参考人 今回、法案で設けております住居確保給付金についての見直しですが、これは、転居する場合に、年金収入なんかが減ることを踏まえて、支出の改善のための臨時的経費として就労要件を緩和する措置を講じているものです。

 一方、現行の住宅確保給付金は、離職等で一時的に住まいを失うようなケースにつきまして、生活の基盤となる住居を安定させた上で、就労に向けた活動を行うことを支援するというものでございまして、原則三か月、最大九か月の間、家賃相当額の支給をする制度でございます。支給に当たりましては、支援終了後に自ら家賃を払って生活していくことができるように、求職活動等の増収に向けた活動を行うことを要件としております。

 現行の給付金がこうした自立を促進するための制度であるという趣旨を踏まえますと、求職活動の要件を撤廃して支給対象者を拡大することはなじまないと考えてございますので、引き続き、就労を通じて生活の安定を目指していただく、こういったことに力を入れていきたいと考えております。

井坂委員 やはり、自立支援の法律の範囲内でこの制度を考えると、そのような答弁にならざるを得ないというふうに思います。

 そこで、大臣に伺いたいと思いますが、立憲民主党は以前から家賃補助の制度を提案をしています。貧困世帯とか子育て世帯にとっては、収入の多い少ないだけでなく、持家なのか賃貸なのかによって生活の実態が大きく変わってまいります。

 日本では、持家を優遇する政策が取られて、住宅ローン減税で毎年巨額の財源が費やされてきました。一方で、ヨーロッパは、住宅手当が生活最低保障の政策の根幹となっており、中高所得者にしか恩恵のない住宅ローン減税はむしろ廃止をされてきております。

 大臣に伺いますが、先ほどの居住福祉という観点からも、家賃の安い住宅の提供と同時に、将来的にはやはり国による家賃補助、国による住宅手当といった制度が必要ではないでしょうか。

武見国務大臣 私ども、今般の法案では、生活困窮者支援の窓口などにおいて住まいに関する相談を包括的に受け止める、そして、入居後の見守り等の支援や社会参加への支援を強化すること、そして、住居確保給付金において低廉な家賃の住宅への転居費用の補助を新たに行うこととしておりまして、家計における支出への配慮を行うことなどの改正は盛り込んでおります。

 こうした取組に加えて、今国会に提出された住宅セーフティーネット法の改正法案、これと併せて、国土交通省と連携をしつつ、生活に困窮した方々などが長く安定した住まいの確保ができるよう、環境整備に取り組んでまいります。

 御指摘の住宅手当制度の創設についてでございますが、生活に困窮した方々に対して個別の事情に応じた住まいの支援を行うことで自立を促していくことが適切であること、それから、そもそも最低限度の生活を保障する制度として生活保護制度が存在する中で、これとは別に住宅費を保障する制度を創設することについては、最低限度の生活保障を超えた保障を行うことについての公平性の問題が新たに生じることになります。こうしたことから、今、私どもとしては、慎重な検討が必要であると考えております。

井坂委員 ヨーロッパではどういう議論があったかというと、住宅ローン減税というのは、やはり誰に恩恵があるかというと、低所得者にはほとんどないんですよね、家が買えませんから。中所得者、もっと高所得者、さらにはお金持ちと言えるような人には恩恵のある制度。そこに結構な金額の税金をつぎ込んできた、減税という形で。それは余りにもバランスを失しているだろうということで、むしろそういった制度は廃止をされてきて、代わりに、本来の政治の役割である、低所得者、これは一時的な低所得も含めて低所得の人にきちんとまともな住居を提供するということで、住宅手当制度が主流になってきているわけであります。

 大臣がお答えになった、最低限度を超える保障になってしまうというのは、これは先週の維新さんの議論とかでもありましたけれども、生活保護の制度は、これは厳然としてあって、必要だと思いますけれども、日本の場合はオール・オア・ナッシングで、生活保護があるのかないのかで全然、いろいろな制度が段違いになってしまう。

 その中間状況で、生活保護に行くまでではないし、貯金も幾ばくかはあるけれども、収入も幾ばくかあるけれども、しかし月々の住宅費が、家賃が非常に厳しい、そういう中間状況に対するまさに適切な規模の支援として、固定費である住宅費の手当てというのはむしろ普通に検討するのが当たり前、できるできないとか財源の問題はまさに検討の過程でしっかり議論しなければいけませんが、しかし、検討すらしないというのは、ちょっとこれはバランスを失しているのではないかなと思うんですが、検討ぐらいできませんか。

武見国務大臣 全く検討しないと言っているわけではなくて、検討する、慎重に検討するということであります。

 実際に、まずは大きく、分厚い中間層を社会の中にきちんと構築していって、そしてその中で貧困層を中間層に吸収していくという大きな政策がまずあって、そして、そこにうまく入ってこれない社会的貧困層というものに対して生活保護というもので対応する。しかし、それでも、生活保護と分厚い中間層の間にどうしてもこうした生活困窮者層というのが現実には存在をする。この人たちに対して、改めて住宅に関わる分野も国土交通省と連携しながら今回新たな制度設計をしたというのが今回の法律の一つの大事な柱になってきておりまして、御趣旨についても、ある程度そうした配慮があったからこそ、こうした仕組みになってきたんだろうと私は思います。

 今後、さらに住宅についての支援が、公平性とか様々な、ここにたくさん課題として、何でできないかという課題が山ほどここに書いてあるんですけれども、それはあえて読み上げることも必要ありませんので、むしろそういうことを一つ一つ丁寧に考えながら、この制度設計というのを継続して考えて検討していくということが必要なんだろうなと思います。

井坂委員 慎重にとおっしゃる中にやや前向きな雰囲気を感じ取らせていただきましたので、これは本当に普通に検討すべき主流の政策の一つだというふうに思います。

 次に、通告八番、就労準備支援事業について伺います。

 今回の法改正で、生活保護の就労準備支援事業とそれから生活困窮者の就労準備支援事業がスムーズにつながるようになります。生活保護から抜けたら急に裕福になるわけではないので、今回さらに生活困窮者が就労体験をする際の交通費が支給をされるようになるのは、これも一歩前進と評価をしております。

 大臣に伺いますが、今後更に進めて、就労準備支援事業を利用している間の生活費も支援をする仕組みが必要ではないでしょうか。

武見国務大臣 就労準備支援事業というものについては、直ちに就労することが著しく困難な状態にある方などに対して、就労に必要な生活習慣の改善や、本人の希望する就労を目指すための知識、能力の向上のための支援を行う事業であります。多くは、最近、引きこもりをされておられるような方々がその対象になってくると思います。

 本事業を利用している方の生活費が足りないなどの課題を有している場合には、まず、家計改善支援事業により家計の適切な管理を促すことや生活福祉資金の貸付制度を利用することが考えられるほか、就職活動を行うよりも就労準備支援事業を短期間、集中的に利用した方が早期の就職につながると判断される場合には、原則三か月、最大九か月間、住宅確保給付金として家賃相当額の支給を受けることも可能でございます。

 生活に困窮する方々は様々な事情を抱えておられることから、単にこうした現金給付を行うというものだけではなくて、家計改善支援、貸付け、それから給付金など、個別の事情やニーズに応じた支援をきめ細かく行っていくことで自立を促するということが大事だというふうに考えています。

井坂委員 最後、ちょっと駆け足で就労準備支援事業の受皿企業について伺います。

 小さい自治体は、受皿となる企業がなかなか見つからずに、近隣の自治体の広域実施に加わる形で対応しています。この就労準備支援事業の受皿となる企業、団体を増やすためにも、そうした企業に対する優先発注であるとかあるいは助成金活用などのインセンティブを設けてはどうでしょうか。

朝川政府参考人 就労準備支援事業につきましては、先ほどもありましたが、直ちに就労することが著しく困難な状態にある生活困窮者に、就労に必要な生活習慣の改善、知識、能力の向上を図るための支援を行うということで、現在約八割の自治体で実施されておりますが、小規模な自治体等においては適切な事業の委託先が見つからない場合などもあるということでございます。このため、例えば、都道府県が主体となって複数の市町村が共同で事業を実施するといった事例も見られますので、そういう広域の実施についても取組を支援していきたいと思っています。

 一方、隣接する事業で認定就労訓練事業というのもございます。こういったものについては、社会福祉事業と位置づけて税制優遇なんかもしておりますし、そういう事業所から優先して物品やサービスを購入することなどの取組事例を自治体に周知するとか優先発注の増大を求めることで、事業の実施にインセンティブを与えています。

 また、就労準備支援事業、就労訓練事業の一環として訓練、実習等を実施した事業主につきましては、様々な理由によって就職が困難な方をハローワーク等の紹介で継続して雇用する労働者として雇い入れた場合であって一定の要件を満たす場合には、特定求職者雇用開発助成金を活用できます。

 引き続き、こうした取組の実施、活用を通じて就労準備支援事業などを推進していきたいと考えております。

井坂委員 終わります。ありがとうございました。

新谷委員長 次に、田中健君。

田中(健)委員 国民民主党、田中健です。よろしくお願いいたします。

 私からは、まず、居住支援強化についてから伺わせていただきます。

 生活困窮者自立相談支援事業において、今回、住居に関する相談支援等が行われることが明確にされたということは大変に重要で意義あることであると思っています。切れ目のない相談支援体制を強化するためには、住宅セーフティーネットの制度、また居住支援法人との連携、空き家や公営住宅の活用を含め、住宅支援に関する施策を省庁横断的に進める必要があると考えています。

 今回の法改正、さらに住宅セーフティーネット法の改正も進んでおりますし、また、国交省や厚労省、法務省によります住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討会、この議論も今行われておりますが、これらを全て含めて包括的な居住支援に対してどのように取組を進めていく考えか、まず大臣にお伺いいたします。

武見国務大臣 委員御指摘のとおり、居住支援について切れ目のない支援体制を強化するためには、省庁横断的に施策を進めることが必要であります。

 そのため、本法案におきましても、厚生労働省が所管する生活困窮者支援の窓口等において住まいに関する相談を包括的に受け止めるようにするとともに、国土交通省が所管する住宅セーフティーネット法に基づく居住支援法人との連携を図ることも明確化することとしております。

 それから、住宅セーフティーネット法の改正法案では、大家に安心して賃貸住宅を提供していただけるよう、居住支援法人等が緩やかな見守りなどのサポートを行う仕組みを構築する一方で、入居後に生活や心身の状況が不安定になった場合には、本法案に盛り込まれた入居後の見守りなどの支援や社会参加の支援の強化について対応するなど、両省の施策を組み合わせて居住支援の強化を図ることとしております。

 このほか、住宅セーフティーネット法の改正法案では、居住支援協議会と生活困窮者自立支援制度の支援会議などとの相互の連携に努めることとされておりまして、厚生労働省としても、引き続き、生活困窮者自立支援の関係機関に対しまして居住支援協議会への積極的な参加を促してまいりたいと考えております。

 このように、国土交通省としっかりと連携をしながら、包括的な居住支援の実現に取り組んでいきたいと考えています。

田中(健)委員 住まいのまず確保等に対する相談支援から入りまして、さらに転居時、また住まいが決まった後、さらに退去の支援まで、生活困窮者に対しては恒常的な居住保障の仕組みというのはこれからも是非検討していただきまして、誰もが居住を確保して安心して暮らせる社会を、今まさに厚労省と国交省が共に力を合わせているということなんですが、省庁横断して構築を求めたいと思っております。

 それでは、法案の中身について伺います。

 今回、一時生活支援事業を生活困窮者の居住支援事業に改称して、努力義務を課したということでありますが、対象者を、元々の生活支援事業がホームレスを限定として捉えている自治体も多く、実施自治体も三百三十一自治体、実施率も三七%、そして、そのうちさらに地域居住支援事業を実施している自治体は一五%という率にとどまっておりました。

 今回、居住支援事業を実施する自治体を更に拡大していく必要があると思いますが、国としてはどのような方策を取っていくのか、伺います。

朝川政府参考人 これまで一時生活支援事業のうち、地域居住支援事業、見守りなんかを行う事業ですが、につきましては、令和五年九月まで、ホームレスの方を含む不安定居住者を対象としたシェルター事業の実施を前提とする運用としておりましたが、昨年、令和五年の十月から、シェルター事業の実施の有無にかかわらずに事業を実施できることといたしました。

 さらに、この法案では、一時生活支援事業の名称を居住支援事業に改めるとともに、居住支援事業を構成しますシェルター事業と地域居住支援事業のうち必要な事業を実施することを福祉事務所設置自治体の努力義務とすることとしています。

 また、これまで、一時生活支援事業の立ち上げを支援するために、未実施の自治体に対しまして、専門スタッフを派遣して事業実施上の助言やノウハウの提供を行うことや、事業の立ち上げや実施の参考となるような好事例を収集して周知するなどの取組も行ってきました。

 こうした取組に加えまして、令和六年度から、社会資源が限られ適切な事業の委託先が見つからないような小規模自治体等においても事業が実施できるように、市町村域を超えた広域的な事業の実施に係る専門スタッフを派遣する取組を実施することとしています。

 引き続き、一時生活支援事業の実施自治体が増加するように取組を進めてまいります。

田中(健)委員 十月からはシェルター事業は前提でないということは承知をしておりますけれども、やはり、全ての自治体で居住支援事業を行うためには、先ほど小規模自治体の話がありましたけれども、小さい自治体はなかなか単独ではできないということで、広域ということは言っていただいたんですけれども、更に踏み込んで、補助率を引き上げるとか、何か、努力義務等課したからには国としての支えやまたサポートというのも必要かと思いますが、是非その検討というのを今後も進めていただきたいと思います。

 さらに、先ほどもお話ししていました住宅確保給付金についてもお伺いいたします。

 今回、支援対象の範囲を拡大されて、転居費用の支給が可能となります。家賃の低いところに移りたい、しかし転居費用がない、なかなかコロナ禍でジレンマの中、実行できなかったことに対して応えることができるようになりますが、この転居費用を補助する場合の要件、また補助する費目等、まだこれらは詳しく定められておりませんが、どのように考えていらっしゃるか、伺います。

朝川政府参考人 転居費用の補助に関する具体的な内容につきましては、今後、詳細を検討した上で省令等で規定することになりますが、対象者につきましては、例えば、高齢夫婦世帯で、配偶者が亡くなって世帯としての年金収入が減少した場合など、著しく収入が減少し、家計改善のために低廉な家賃の住宅への転居が必要と認められる、そういうような方に対して補助をすることを想定してございます。

 また、転居費用として補助する対象につきましては、転居先への家財の運搬費用でありますとか、礼金でありますとか、初期費用として必要な経費を想定してございます。

田中(健)委員 詳細はこれからということですけれども、今、高齢者ということをお話しいただきました。もちろん高齢者の方は年金だけでは大変であるというのは理解しますけれども、若い人も含め、誰もが使えるような制度にしていただきたいと思いますし、今、敷金、礼金やそういった諸経費まで使えるということでありますので、使いやすさを第一に検討していただきたいと思います。

 さらに、この住宅確保給付金、本当に困ったときに誰もが使えるような制度にしなくてはならないと思っています。先ほども住宅手当制度という話、井坂議員からありましたけれども、今、住宅セーフティーネットの議論の中でも、住宅の手当というのをどうするかという議論が進んでおりますが、是非、住宅セーフティーネットの枠組みの中でも住宅手当制度というのを再編したり、また拡充できるようなことができないかというようなことを考えていますが、今後そのような検討、先ほど大臣からは、住宅手当制度を検討すると言っていただいたんですけれども、これらについて検討していただけることは可能でしょうか。伺います。

朝川政府参考人 住宅手当制度につきましては、先ほど大臣から申し上げたとおりなんですけれども、恒久的なそういう手当制度を設けることについては、やはり、最低限度の生活を保障する生活保護制度がある中で、それを超えて保障することの公平性の問題という非常に難しい問題もあると思っています。

 一方、国交省の提出している住宅セーフティーネット法の改正もそうですけれども、高齢者等に大家さんがなかなか住宅を貸したがらないといういろいろな事情がございますので、そういう事情を取り除いていくような支援を強化して、市場に高齢者や低所得者が借りやすい住まいがたくさん供給されるような、そういう環境整備を進めていきたいと考えてございます。

田中(健)委員 借りやすいように、大家さんとの議論というのは今回の法案の中に出ていると思いますので、住宅手当といった意味で、是非、大臣も、もちろん課題はあるという話がありましたけれども、まさに先ほど、国交省とそして厚労省が一緒になってこれから議論をしていくというお話を冒頭にいただきましたので、是非、住宅セーフティーネットの議論も進んでいるところでありますので、検討を進めていっていただければと思います。

 引き続き、質問、移ります。就労準備支援事業と家計改善支援事業です。

 これらは、前回の附帯決議の中でも、また今回の部会の最終報告の中でも、必須事業化する方向で検討するということが言われておりました。必須事業化するのかなと私も最終的に思っていたんですけれども、今回は、法改正は見送られました。この理由について伺いたいと思います。

 全国どこに住んでいても必要な支援を受けることができる体制の整備というためには、やはり必須事業化していくことが必要かと考えていますが、どのようにこれを具体化していくんでしょうか。

武見国務大臣 生活困窮者が困窮状態から脱却するために収入面と支出面の両面から生活を安定させることができるように、就労準備支援事業や家計改善支援事業の実施を推進することが重要だと考えます。

 法案の検討の過程では地方団体の代表者との議論などを進めてまいりましたけれども、まず、支援の需要が少ない地域や支援を担う地域資源が不足している地域があることを踏まえますと、全国一律での事業実施の義務化ではなくて、広域的な事業実施に向けた環境の整備や、ノウハウ、好事例の提供などを通じて、地域の実情に合わせて自治体への伴走支援を進めることにより、より効果的、効率的に事業の実施を推進することが可能だというふうに考えました。

 このため、本法案では、家計改善支援事業の国庫補助率については就労準備支援事業と同じ三分の二に引き上げておりますほか、両事業の全国的な実施や支援の質の向上を図るための指針を公表することとしておりまして、これに加えて、ノウハウや好事例の提供、広域的な事業実施に向けた環境の整備などを通じまして、家計改善支援事業や就労準備支援事業が全国で適切に実施されるよう取り組んでまいりたいと思います。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 まさに地方からの具体的な声があったということなんですけれども、やはり附帯決議は重いと思いますし、また最終報告書でここまで必須事業化ということが言われていたので、ちょっとそれだけの理由では弱い感じがいたしますので、地域資源の不足ということを言われましたけれども、財政面ですとか人材面とか、ないしは制度面の課題があるならば、是非それを解決できるようにこれから議論をしていただきたいと思っています。そうでなければ、やはり、先ほど大変重要だと大臣はこの就労準備支援事業を言っていただきましたけれども、各自治体でばらつきが出てしまったり、実際、格差というものにつながってしまうんじゃないかという懸念もありますので、お願いをしたいと思います。

 さらに、人材の確保、定着についても伺いたいと思いますが、生活困窮者自立支援制度を行う相談支援員の件でございます。

 相談支援員が大変重要な役割を果たすと思いますけれども、なかなか、単年度契約で一時金も退職金もないと、家庭を持ち、維持することも大変だ、また、入れ替わりも激しいということで、取り組んでいる方は大変思いはある方が多いとは思うんですけれども、なかなか思いだけでは限界といった声があります。

 全国の相談支援員の賃金水準や雇用形態の実態をどこまで国として把握をしているのか。また、支援員と同じように、生活保護においてはケースワーカーというお仕事がありますけれども、このケースワーカーは今充足が図られていますが、同種のこの業務との比較をして適正な水準となっているのかということを検証すべきではないかと思いますが、見解を伺います。

朝川政府参考人 生活困窮者自立支援制度における自立相談支援機関などには、自治体が直接運営しているものや民間団体に委託されているものがございまして、自治体が直接運営する自立相談支援機関では、会計年度任用職員が相談支援員を担っている場合もあると承知しています。

 このため、任期の定めのない常勤職員である生活保護のケースワーカーと単純には比較できないのですが、令和四年度の調査研究事業におきまして、生活困窮者自立支援制度の相談支援員等の賃金及び雇用形態等についてアンケート調査を実施いたしました。その結果は、相談支援員等の平均年収は、正規雇用職員の場合が約四百五十万円、非正規雇用で常勤の職員の場合が約二百九十万円、非正規雇用で非常勤の職員の場合が約二百六十万円という結果でございました。また、雇用形態につきましては、正規雇用と非正規雇用が約半数ずつでありました。

 生活困窮者自立支援制度は人が人を支える仕組みでございまして、各種事業を担う支援員は制度を実施する上で重要な基盤でございます。このため、これらの調査を踏まえまして、令和六年度当初予算におきまして、自立相談支援事業等の国庫補助基準を見直すことにしています。その中で、支援の実施状況に応じた基準額になるような見直しをするということと、あと、有資格者等の良質な人材の確保やアウトリーチの体制整備など、支援の質を高める取組を評価する加算を新設することとしています。

 こういう取組を踏まえまして、引き続き、自治体における支援員の処遇改善や資格取得等を推進してまいります。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 半数が非正規で、二百万円台というのでは大変に厳しいと思っています。これから、多くの仕事がある中、是非、支援相談員が誇りと安心を持って働ける環境整備のために更なる改善を求めて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

新谷委員長 午後三時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前九時四十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時五十分開議

新谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。堤かなめ君。

堤委員 皆様、こんにちは。立憲民主党の堤かなめでございます。

 生活困窮者自立支援法、これは二〇一三年、およそ十年前に成立したものです。この法律により、支援を早期に行うことで生活困窮状態から脱却することや貧困の連鎖を断ち切るための新しい制度ができました。この法律は、民主党政権下の社会保障と税の一体改革において、生活困窮者の自立に向けた生活自立支援サービスの体系化のため、必要な法整備も含め検討するとされたことを受けたものです。民主党政権の成果の一つであると思っております。

 先日、地元の社会福祉協議会で、この法律に基づく支援事業に実際に携わってこられた方にお話を伺いました。今回の改正により、支援で有効に使える事業が盛り込まれたことはありがたいということでした。しかし使える支援がまだまだ不十分で、支援の現場の方々は大変な御苦労をされていることもよく分かりました。

 以後、支援の現場の方からの貴重な御意見に基づき、残されている課題についてお聞きいたします。午前中の田中委員と重なるところがありますので、少し聞き方を変えております。よろしくお願いします。

 まず、昨年四月の時点で、例えば福岡県内では、二十九市のうち就労準備支援事業は二十五市、二十九市のうち二十五市、家計改善支援事業は二十八市、二十九市のうち二十八市と、かなりの市が実施しています。しかし、法の施行から十年近くたっても、まだ実施できていない市が残っているということです。現場では、これらの事業は自立への一歩を歩み出せるようになる大事な事業であると評価されております。これらの事業は是非必須化してほしいという強い要望がありますが、いかがでしょうか。

 あわせて、これらの事業と自立相談支援事業とを一体的に行う体制を確保するとのことですけれども、これまでの運用と変わるところがあるのか、お聞きします。

朝川政府参考人 生活困窮者が困窮状態から脱却するためには、収入面と支出面の両面から生活を安定させることが必要と考えております。それぞれ、自治体で、就労準備支援事業、家計改善支援事業、この両事業を実施をしていただくことが重要と考えています。

 一方、地域ごとにこうした支援のニーズでありますとか地域資源にばらつきがあることを踏まえますと、広域的な事業実施に向けた環境の整備でありますとか、ノウハウ、好事例の提供等を通じて、地域の実情に合わせて自治体への伴走支援を進めることによって、効果的、効率的に事業の実施を推進することが重要と考えております。

 このように、地域資源を有効に活用し、事業の質を向上させる観点から、家計改善支援事業及び就労準備支援事業は、自立相談支援事業、相談、入口の事業ですが、それと一体的に行われることが望ましく、かつ、既に多くの自治体においてこれら三つの事業が一体的に行われております現状を踏まえますと、こうした実施手法を標準的なものとして法律に位置づけることで、全国の生活困窮者への支援体制を充実させていくことが必要と考えています。

 これらを踏まえて、本法案では、家計改善支援事業の国庫補助率を、就労準備支援事業と同じ、一律三分の二に引き上げる財政支援の強化でありますとか、両事業の全国的な実施や支援の質の向上を図るための指針の公表を行うことでありますとか、あるいは未実施の自治体に対する事業実施支援の強化などを通じまして、家計改善支援事業及び就労準備支援事業の適切な実施を進めてまいりたいと考えています。

堤委員 朝川局長、ありがとうございます。

 次に、細かい点ではありますが、ちょっとした工夫で支援をもっと行いやすくするための方策について、現場から御示唆をいただきましたので、三点お聞きいたします。

 一点目です。今の時代、スマートフォン、スマホがなければ就職活動もままならないというのが現状です。レンタルスマホを貸し出す費用について予算化していただけると助かるとのことですが、いかがでしょうか。

 二点目に、相談窓口から自宅に帰るための交通費やその日の食費すら持ち合わせがないという相談者に、窓口の担当者の方、支援者の方はこっそり自腹で何がしかのお金を渡すといったこともあるとのことです。そういう方へ、一人一回例えば三千円程度でも、緊急小口支援といった制度化も是非御検討いただきたいと思います。

 三点目に、生活保護世帯の子供たちや引きこもりの方など支援対象者の御自宅へ訪問する際に、ちょっとした手土産、例えば季節の果物ですとかお菓子とかそういった、二、三個でも持っていくと、ドアを開けてもらいやすいし、話のきっかけにもなるのではないかと思います。例えば訪問支援金などという名目で、訪問一回につき三百円でもよいので制度化いただければ、支援員と対象者の方の間の信頼関係づくり、ラポールづくりもしやすいのではないか、そうすれば支援者の方の御苦労、気苦労、精神的負担を少しでも軽くできるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

朝川政府参考人 生活困窮者自立支援制度では、地域の実情や生活困窮者の個々の状況に応じましてきめ細やかな支援を実現するために、様々な地域資源を活用しながら支援を行うことが重要と考えています。

 その上で、三つの方策について御提示いただきました。これは、現場で様々な工夫をしていっていただいている一環と考えております。

 まず、携帯電話の件につきましては、困窮者の場合、携帯電話の契約が難しい方というのがいらっしゃいます。そういった方々に携帯電話の貸出しを行っている自立相談支援機関もあると承知しておりますし、厚生労働省において、携帯電話の契約に一定の配慮を行っている通信事業者のリストを作成しまして、自立相談支援機関の窓口で本リストを活用した支援を行っていただいているということもあります。

 また、二つ目でございますけれども、その日の食費でありますとか交通費を工面することが難しい方が窓口にいらっしゃることもあります。その場合、例えば生活福祉資金の貸付制度で緊急小口資金というものもありますのでその利用でありますとか、あるいは、一定期間、衣食住を提供するシェルター事業というのがあって、その緊急的な活用というのも来年度予算で進めていくことにしております。それらなども含めて、地域資源を活用して、必要な支援に早期につなげていくことが重要と考えています。

 三つ目でございますが、支援対象者との関係づくりをしていくということについてですけれども、例えばフードバンクによる食料支援を活用するといったことも考えられまして、地域資源を活用した関係づくりのための取組を行うということは重要と考えています。

 いずれにいたしましても、様々な地域資源を活用して、地域の中で支え合いを深めて必要な支援が創出されていくということも重要と考えておりまして、本法案では、地域の関係機関が生活困窮者に関する情報共有や支援の検討を行って、地域課題の解決に向けた体制整備について議論を行う支援会議の設置も進めることとしております。国としても、そういう設置が進むように、自治体への働きかけを行っていきたいと思います。

堤委員 確かに、小口貸付制度とかもありますが、やはり申請してすぐにというわけにはいきませんし、フードバンクも利用していらっしゃるということもお聞きしました、ただ、いつもあるわけでもないし、どこででも使えるわけでもありませんので、地域の事情とか現場の事情である程度自由に使える支援金のようなものを是非御検討いただければと思います。よろしくお願いします。

 次に、相談支援員の方々の処遇改善についてです。人をもっと大事にしてほしいということです。せっかく様々な研修を受け、支援の現場での経験を積み、支援対象者との信頼関係を築いても、その相談員が辞めてしまうとこれまでの努力が全て無駄になってしまいます。自立支援を持続可能なものとするためにも、相談支援員の方々の処遇の改善がどうしても必要です。

 このような、支援の必要な人と実際に関わって支援、援助活動を行っている人のことを、対人援助職といいます。生活困窮者の相談支援員だけでなく、医師、看護師などの医療職、教師や保育士、ソーシャルワーカー、ケアワーカー、心理職の方々なども含みます。

 対人援助職は、人のためになる、人から感謝される、人の成長を実感できる仕事です。AI、人工知能で多くの仕事が失われると言われておりますけれども、対人援助職は、AI時代になっても残り続ける、いえ、もっと重要性を持つ仕事であると思います。しかし、その一方で、対人援助職は、感情労働でもあり、そのストレスと責任はとても大きく、バーンアウト、燃え尽きてしまうリスクも抱えています。逆に言えば、セルフケア、人のケアばかりするんじゃなくて、自分自身もケアしないと非常に続けられない仕事です。ですから、十分なセルフケアや充電ができるように、給与と時間の余裕は必須だと思います。そして、その余裕は、よりよい支援やケアとして社会に必ず還元されます。

 厚労大臣、通告しておりませんけれども、対人援助職の量や質の充実、これは厚労省のまさに根幹ともいうべき役割ではないかと思いますが、対人援助職の処遇改善についての御見解をお聞かせください。

武見国務大臣 生活困窮者自立支援制度は、人が人を支える仕組みでございます。各種事業を担う支援員は、制度を実施する上で重要な基盤でございます。支援体制の強化に取り組んでいく必要が大いにあるというふうに考えます。

 そのために、令和六年度当初予算案におきまして、自立相談支援事業等の国庫補助の基準の見直しを行いました。支援の実施状況に応じた基準額になるよう見直すとともに、有資格者等の良質な人材の確保や、アウトリーチ、これは訪問による支援でありますが、その体制整備など、支援の質を高める取組を評価する加算を新設することとしております。

 また、令和五年度の調査研究事業では、自治体が自立相談支援事業の委託先を選定する際に、委託先における相談支援員の処遇の改善の取組を評価しているかどうかの実態把握も進めることになっております。

 今後、その結果も踏まえて、自治体に対しては、好事例などをガイドラインの形で周知していきたいというふうに考えております。

堤委員 今後に大いに期待しておりますので、よろしくお願いします。

 また、運営する法人自体が変わってしまうようなことになりますと、全て一からのスタートになってしまいます。委託の期間を最低五年以上とすることですとか、委託の費用だけの一義的な評価、委託費用が安いというだけで決めるのではなく、支援の質や実績を総合的に評価することを全国の自治体に通知などで周知徹底していただきたいと考えますけれども、いかがでしょうか。

朝川政府参考人 生活困窮者自立支援法に基づきます自立相談支援事業等は、自治体が自ら実施するほかに、事業を適切、公正中立かつ効率的に実施することができる社会福祉法人でありますとか特定非営利活動法人等に委託することが可能でございます。事業を委託するに当たりましては、委員御指摘のとおり、事業運営の継続性でありますとか支援の質の確保が重要と考えております。現在も、自治体向けの事務マニュアルにおきまして、委託先選定の際には事業の継続性の観点にも留意すべきことでありますとか、価格のみの評価ではなくて、事業の内容を中心とした総合的な評価を行うことが適切であることを示しております。

 また、今年度の調査研究事業におきまして、自立相談支援機関の支援体制の強化を図る観点から、自治体が委託先事業者を選定する際の選定方法等について、複数年度契約や選定時の評価方法も含めた実態把握を進めてきたところでございます。

 今後、その結果も踏まえまして、自治体等に対し、委託先選定時の留意点について、ガイドラインの形でまとめて周知をしていきたいと考えております。

堤委員 ありがとうございます。

 一時生活支援事業、いわゆるシェルター事業についてお聞きします。

 例えば、福岡県では、これは二十九市のうち九市しか実施していません。御自分が相談員だと想像してください。相談に来られた方が今晩泊まるところがない、持ち合わせもないというふうに言われたときに、もしシェルターがなければどうすればいいのか、行く当てのない方にお帰りいただくのがどんなにつらい、心苦しいことかと思います。

 現場の方からは、単独の市だけではなく、広域でシェルターを確保できたら助かるという声をお聞きしました。田中委員からも御質問ありましたけれども、人口五万、十万くらいの市ではシェルターの必要があるケースはそれほど多いわけではありませんが、あったらすごく助かる、だから幾つかの市町村で共同で使えるシェルターを是非つくってほしいとのことでした。

 一時生活支援事業を全国の全ての自治体で利用できるように、是非、そういった広域での設置や補助率の引上げなどが必要だと考えます。国としてどのような方策を取っていくのか、お聞かせください。

朝川政府参考人 本法案では、シェルター事業と見守りなどを行う地域居住支援事業、この二つの事業のうち必要な事業を実施することを福祉事務所設置自治体の努力義務とすることで、各自治体における事業の実施を促進することとしております。

 また、これまで、一時生活支援事業を始めとしまして、生活困窮者自立支援制度の任意事業の立ち上げを支援するために、未実施の自治体に対しまして、自治体コンサルティング事業を通じて、専門スタッフを派遣して事業実施上の助言やノウハウの提供を行うことでありますとか、事業の立ち上げや実施の参考となるような好事例を収集して周知することなどの取組を行ってまいりました。

 こうした取組に加えて、社会資源が限られ適切な事業の委託先が見つからないような小規模の自治体等もございますので、そういったところにおいては、市町村域を超えた広域的な事業の実施が有効な手段の一つであると考えています。例えば、熊本県では、一時生活支援事業の実施に際しまして、熊本県管轄の三十一町村と九市で共同実施しております。令和六年度からは、自治体コンサルティング事業におきまして、希望する自治体に対して広域実施に係る専門スタッフの派遣を行うこととしています。

 一時生活支援事業のシェルター事業につきましては、委託して民間の部屋を確保してやる事業形態もございますので、そういう事業形態も活用しながら、実施自治体が増加するように取組を進めてまいりたいと思います。

堤委員 朝川局長、ありがとうございます。

 それでは、生活困窮者の自立支援についてお聞きしてまいりましたけれども、この問題の根幹には格差の問題があります。大臣、日本社会の所得格差についてどのような認識をお持ちか、お聞かせください。

武見国務大臣 所得の格差というのは、社会の不安定の一つの重要な原因であろうというふうに思います。社会の在り方としては、でき得る限り安定した中間層というのが存在をすることが極めて重要で、政策の全体もそこに焦点を当てたものがやはり福祉国家としての基本になってくるんだろうと思います。

 その中で、先生御指摘のジニ係数は、一つの格差の指標で、OECDなどでも使っておりますけれども、例えば我が国のように医療保険で現物給付なんかをしておりますと、これは実はジニ係数のOECDの算定の中には入りません。

 実は、我が国の場合には、一九六一年に皆保険制度が成立をして、そして、その時点で保険制度というものが所得の分配の中で果たした役割というのは所得税とかそういう税制よりもはるかに大きくて、実際には政府の所得分配機能の七割以上はこうした現物給付の医療保険制度を通じて、保険と給付の中で実際にその機能が果たされていたというデータがございます。こうしたことを踏まえて、我が国の所得格差の問題というものを国際比較していくことがやはり必要かなということは、正直に思いました。

 他方で、様々な事情によってそうした中間所得層が大きかった我が国の時代状況というのは一九九〇年代の半ばぐらいから変わってきて、通常のOECD基準の中でも、平均的に、我が国の格差の広がりというのはその平均を超える状況にまでなってきたというのが実態であろうかと思います。

 ただ、そうした中で、様々な事情によって経済的な困窮状態にある方というのが現にいらっしゃるわけでありますから、生活困窮者自立支援制度であるとか生活保護制度などの重要なセーフティーネットによってこうした自立に向けた必要な支援を行っていくことがやはり非常に重要になってきているというふうに思います。

 こうした中で、現下の単身の高齢世帯の更なる増加や持家比率の低下などによって、住宅の確保が困難な方の住まい支援のニーズなどが今後ますます高まることが想定されるものでありますから、こうした対応策を私ども取らせていただいているというのが私の基本的な考え方でございます。

堤委員 大臣、ありがとうございます。

 今、資料一についても言っていただきました。ジニ係数というのは、ゼロから一の数値で表されますけれども、一に近いほど格差が大きいということです。

 日本の当初ジニ係数は、一九九〇年で〇・四三、この表には載っていませんけれども、直近の二〇二一年では〇・五七と、この三十年、じわりじわりと格差は拡大してきたということになります。

 大臣も、安定した中間層、先ほど我が会派の井坂委員の質問のときには、分厚い中間層が大事だと言いましたけれども、分厚いのがだんだん薄くなってきているということです。ですから、井坂委員が言われたような住宅の補助というのも大変大事だと思っております。

 もちろん、改善度も少しずつ上がってきて、再分配後の所得ジニ係数はそれほど大きくは変わっていないんですけれども、でも、この分配は、先ほど医療保険のことをおっしゃいましたけれども、高齢者には手厚いけれども、若者には余り再分配がされていないという指摘もされています。

 そして、大臣が、次の資料二、裏のページを御覧いただきますと、我が国の再分配効果は国際的にも非常に低いということで、公的移転ですね、社会保障などによる所得分配効果、これが、韓国が一番下ですけれども、韓国、アメリカに次いで、日本は、OECD諸国の中で下から三番目ということです。

 これが、もし武見大臣がおっしゃるように医療保険が、ここの現物支給が入っていないとすれば、これが入ったものも是非出していただきたいと思いますので、委員長、それが可能かどうか、お取り計らいいただけませんでしょうか。

新谷委員長 また、後刻理事会で確認させていただきます。

堤委員 また、税による再分配効果、こちらはもっと深刻です。OECD諸国の中で、何と日本は最下位でございます。やはりこれは大きな問題だと思います。

 本当に、この三十年、自民党政権、これは特に若者、現役世代の経済的に厳しい方々に冷たかったということは明らかだと思います。人を大事にしない国に将来はありません。これでは、異次元ではなく、低次元の少子化対策と言わざるを得ませんので、これからしっかり少子化対策をよろしくお願いします。税制の改善もお願いします。

 また、なぜ今の政府は生活に困っている方々に冷たいのか。生活に困窮している方々は、自民党に献金したり、パーティー券を大量に買ったりできません。武見大臣は業界団体から多額の献金を受け取っておられます。もし政治献金を受け取っていても、そのことによって政策がゆがめられることがないというのであれば、もっと再分配機能を強化したり、生活困窮者の自立支援のための予算、住宅の補助なども設置したり増額すべきであると申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

新谷委員長 次に、山井和則君。

山井委員 よろしくお願いいたします。三十分間、質問させていただきます。

 冒頭はちょっとお茶の健康効果のことを聞きたいんですが、後半は、生活困窮者という視点から、障害者雇用、年金、賃上げ、その辺りについても、法改正の部分そのものずばりではないですが、今も堤議員から話がありましたように、年金生活者、あるいは実質賃金が上がらない、そしてまた、生活困窮者の中には、障害があるために十分な収入を得られない、そういう方も多いですので、そういう問題も質問をさせていただきたいと思います。

 まず、今年の予算委員会で、与野党合意で、マイボトルを持ち込んで、そこでコーヒーやお茶とか、良識の範囲内でこういう飲物を飲むということについて解禁をされました。それに倣って、この厚労委員会でもマイボトルに様々な飲物を入れるということを許可していただき、ありがとうございます。

 私は、自宅の隣が茶畑ですのでお茶を入れさせていただいておりますが、私も今朝、武見大臣にお聞きをしたんですが、武見大臣のお父様の武見太郎先生が、国会図書館で調べますと、茶と健康、そういう論文を書いておられるんですね。医学博士武見太郎、緑茶の造血機能に及ぼす影響ということで、ほかにもたくさん書いておられます。

 例えば、茶業界という、静岡県の茶業組合会議所が発行された昭和十四年の機関誌の中には、慶応医科大学食養研究所医学博士武見太郎先生のこういう文章が出ております、日本緑茶の効用と飲み方。やはり、健康というのは、医療とともに、厚生労働省にとっても厚労委員会にとっても重要ですので、少しだけ読み上げさせていただきます。

 我々日本人は平素、ビタミンCのたくさんある野菜や果物を食べているから、緑茶からビタミンCを取る必要はないようですが、一朝何らかの事故のために野菜、果物を食べられない場合には、緑茶から取ることが極めて必要です。老人などは野菜、果物を多く食べないので、緑茶を好んで飲むことも生理的作用によるものです。そのくらい緑茶は多くビタミンCを含有しており、しかも、これが熱や酸にあっても破壊されない特質を持っているということは、日本の緑茶の尊いところであって、我々は久しい間これを知らず緑茶を飲んで、恩恵にあずかっていたわけであります。特に、食後のお茶は胃液の分泌を促進します。だから食後お茶を飲みながらある時間を閑談することは最も生理的であります。以上は紅茶やコーヒーになくて日本の緑茶のみが持つ貴重な点でありますということを武見太郎先生は書いておられます。

 また、単に嗜好上よりのみでなく、こういう栄養を有することを認識して緑茶を用いんことを希望する、これも武見太郎先生が、熱にも酸にも強い緑茶のビタミンCということで書いておられます。

 全部は読みませんけれども、あともう一点だけ。茶と健康という論文では、茶が日本人にとって不可欠の飲物である以上、これが人体にいかなる影響を及ぼすかということは国民保健上、極めて大切なことであります、また、個人的に見ましても、道義的な茶道の中に生理的意義を見出すことは無益ではなかろうと存じられますというふうに。

 武見太郎先生はこのようなお茶の研究家であられたわけですけれども、そういうことを踏まえて、ただ、もちろん、今、武見大臣は厚生労働省の責任者ですから、厚生労働省の見解あるいは御自分の個人的なお父様から言われていたことまでも含めて、お茶の健康効果について御答弁をいただければと思います。

武見国務大臣 私は、子供の頃から、お茶はビタミンCが含有されていて栄養にとてもよいのだということを言われ、戦前、自分は集中的に茶と健康について研究をし、論文を発表したことがあるんだということだけは知っていたんですが、今日初めて、先生からこんなに詳しく、こういう論文を私の父親が書いていたんだと、正直初めて知りました。済みません、大変感謝申し上げます。

 その上で、厚生労働大臣としての御返事をさせていただくとすると、お茶の健康への効果については、茶の種類やその摂取方法、摂取する人の健康状態などによって異なると考えられるため一概にお答えすることは困難であるが、例えば、血中のコレステロールや中性脂肪を低下させるといった効果を示唆する研究報告があると承知している。これが答弁でございます。

山井委員 幾つかの、今、健康効果を言っていただきました。

 今日の配付資料二十二ページに千葉県栄養士会のホームページがございまして、健康は一杯の日本茶から、緑茶は最高の健康茶、こういうふうなことも栄養士会のホームページに載っております。

 また、その前のページの十九ページにも、これは農水省の資料と下半分は京都府のホームページに出ておりますけれども、お茶に含まれておりますテアニン、お茶を飲むとほっこりする、テアニンを摂取すると脳波にアルファ波が出現し、リラックス状態を示すこと、記憶学習能力への影響や、アルツハイマー病、認知症予防にもその効果が期待されていますと、これは京都府のホームページに出ております。

 私も、昔、松下政経塾というところで五年間学ばせていただいておりましたけれども、松下幸之助塾長が、裏千家、茶道を趣味にされていまして、毎週一回、政経塾内のお茶室で茶道を研修して、お抹茶も飲ませていただいておりましたけれども、松下幸之助塾長も、一日一回はお抹茶を飲む、そうすると、やはり脳が活性化するといい考えが出てくるというようなこともおっしゃっておられました。

 ついては、これもちょっと申し上げにくいんですけれども、もちろん、このマイボトルというのはコーヒーでも紅茶でも牛乳でも何でも良識の範囲内でオーケーなんですけれども、武見太郎先生もそうおっしゃっていたので、試しに武見大臣も一度マイボトルにお茶を入れて審議のときに飲まれてはいかがと思いますが、いかがでしょうか。

武見国務大臣 今はミルクコーヒーを入れさせていただいておるのでありますが、一度試してみたいと思います。

山井委員 もちろんこれは、好き嫌いですから、別にミルクティーでも牛乳でもリンゴジュースでもどんなものでも良識の範囲内ならオーケーなんですけれども、やはりなかなかエビデンスというのは難しいし、薬事行政をつかさどる厚生労働省が余り、この病気に効きますというのは軽々に言えないというのは分かりますけれども、コーヒーもすばらしいし、紅茶もすばらしいけれども、お茶というものも非常にいいですので、何よりも、私は、こういうお茶を飲みながら議論すると、余りヒートアップせずに和やかに議論できるんじゃないかと。田村議員も伊勢茶の振興をされていますし、田中議員も静岡茶の振興をされていますが、そういう意味では、脳を活性化して、本当に国民の健康や福祉に役立つ議論が、充実した議論ができればいいんじゃないかと思っております。

 それでは、次の質問に移らせていただきますが、ちょっとこれも生活困窮者支援法の前にお聞きしたいんですけれども、ホームヘルプの問題。

 これは、申し訳ないですけれども、今までから厚労委員会でも多くの議論が出ております。

 今日の配付資料の中に、介護クラフトユニオンさんによる実態調査、アンケート調査が出ていると思うんですけれども、そこを見ていただければと思います。

 このことに関しては大きな批判が出ております。

 配付資料からいきますと、八ページ右の、公益社団法人認知症の人と家族の会の鎌田松代代表、京都の方であります。この方も、自宅で最期まで暮らし続けたいが認知症の人や家族の願い、訪問介護サービス基本報酬引下げは自宅での暮らしを崩壊させると、危機感を訴えておられます。

 隣の読売新聞の社説にも、訪問介護のヘルパーを確保できないため、高齢者宅への訪問回数を減らさざるを得ず、経営が不安定にならざるを得ない事業者も目立っていると書いてあります。

 次のページの九ページ。結城先生は、ホームヘルプの基本報酬引下げについて、えっ、うそだろう、在宅介護は机上の空論へと突き進む、世間から国は在宅介護の推進を諦めたと見られても仕方ないだろうと言われております。

 そういうふうなことで、今回、介護クラフトユニオンが実態調査を緊急でされました。十一ページからございます。全員の不安、怒りを知ってほしいということで、全員のアンケート調査をここに許可を得て載せさせていただいております。

 これについてのクラフトユニオンの見解を読み上げます。

 訪問介護員の賃金は、処遇改善加算だけで支払われているわけではなく、そのほとんどは基本報酬から支払われており、その基本報酬を引き下げることは暴挙である。訪問介護員の有効求人倍率は十五倍を超え、既存職員の高齢化が課題となっており、人材確保できないことを理由に事業所の廃止が増加している。基本報酬を引き下げることにより、事業運営に不安を感じた職員の離職等で更に人材の確保が厳しい状況になる。人材確保ができずに事業所が廃止になれば、必要な訪問介護サービスを受けられない介護難民が増加し、介護離職者が増加するということです。

 もう一つだけ読み上げさせていただきますと、配付資料の十八ページ左、どういうことが基本報酬引下げによって起こると思われますかということに関しては、六三%、事業所が廃止、休止になる。四一%、事業所が統合される。六六%、訪問介護等サービスの事業運営に不安を感じ、退職する人が増える。七八%、訪問介護サービスの事業運営に不安を感じ、新しい人材が入ってこない。六九%、賃金が引き下げられる。

 こういう不安の声が出ておりまして、先日の審議会の中でも、早急に実態調査をして、実態が悪化しているのであれば何らかの策を講じてほしい、そういう声が続出をいたしました。

 そこで、武見大臣にお伺いをしたいと思います。

 この引下げに対する影響について、ホームヘルプ事業所の規模別、大規模のところと小規模のところも含め、そういう規模別も含め、実態調査をし、その結果により、ホームヘルプ事業所の閉鎖、倒産、廃業や統廃合が今までより増えたり、ホームヘルパー不足が今より深刻化したことが明らかになった場合は、速やかにホームヘルプの基本報酬の引上げを、三年待たずに途中改定するか、あるいは予備費や補正予算によりホームヘルプ事業所を財政支援する補助金をつける、これらのことを、もし実態調査をしてそういう深刻なダメージがあるという結果が出たら、今のような取組を速やかにするということをお約束いただけませんか。

武見国務大臣 今般の介護報酬改定の影響などについては、介護事業経済実態調査を始め、各種調査などを通じて状況の把握を行うこととしております。六月から施行されます。おおよそ、こうした調査を通じて、九月から十月頃にその取りまとめができると今の時点では予測をしておりますが、この令和六年度実施予定の調査において、地域の特性や事業所の規模等を踏まえ、社会資源が十分でない地域を中心に、小規模な事業所を含め、介護現場の実態を総合的に調査する予定でございます。

 その上で、これらの各種調査等の結果を踏まえて、現場の介護職員等の人材確保、処遇改善を着実に進める観点から、必要な対応を検討していくべきものと考えております。

山井委員 残念ながら、多くの事業所が潰れてしまった、ヘルパーさんが辞めてしまったと分かってから、これは大変なことになったと言って、もう一回ホームヘルプ事業所をつくってくださいと言っても、それは誰もつくりませんから。そういう意味では、もちろん、今言ったことは最低限のことで、一回、在宅介護が崩壊して、今、もう事業所やホームヘルパーさんがどんどん離れつつあります。もうその流れはできてしまっています。厚生労働省はホームヘルプ、在宅介護はもう諦めたんだなと多くの人が思ってしまっています。

 ついては、一旦その流れができたらもう取り返しがつかなくて、十年、二十年後、あの年、厚生労働省が大失敗したことによって日本の介護は崩壊したなと言われかねませんので、そうならないように、今からでも、今すぐにでも、小規模を含め、ホームヘルプ事業所が統廃合、廃業、倒産しないような手を今すぐにでも打つべきだと思いますが、どのようなことを考えておられますか。

武見国務大臣 訪問介護の事業者数は、二〇一九年以降、増加傾向にあります。小規模な事業者を含めて、今般の介護報酬改定の影響等については、介護事業経営実態調査を始め、各種調査等を通じて状況の把握を行うこととしております。調査結果をあらかじめ見通すことはできませんが、適切な調査の設計、検証をしっかりと進めていきたいと思います。

 また、訪問介護については、介護のサービスと比べても給与費の割合が高く、人手が確保できなければ経営の維持拡大が特に難しい事業であるというふうに私どもは認識をしております。その意味で、まずは訪問介護員の処遇の改善を行い、人材の確保、定着を図っていくことが、訪問介護員の方の暮らしの安定はもとより、訪問介護事業所の安定的な運営のためにも重要であると考えております。

 このため、最も課題となっている人材の確保に向けて、高い水準の加算率を設定した処遇改善加算の取得促進や各種加算の充実などを通じて、地域で必要な介護サービスが安定して受けられる体制を整備してまいりたいと考えております。

山井委員 まずは、幾ら加算をつけても、事業所が潰れたり統廃合されたら意味がないですので、是非早急な対策をお願いしたいと思います。私も、議員になる前は、高齢者福祉を大学で教えておりまして、高齢者福祉の本は十冊書きましたので、非常に思い入れがありますので、強く申し上げたいと思います。

 それでは次に、これも、今までから、武見大臣、また朝川局長に大変御尽力いただきましたが、能登の震災に対する被災者への支援金です。

 私たち、一月二十六日に、日本維新の会、国民民主党、そして立憲民主党三党の共同で議員立法を提出させていただきまして、被災者支援金の上限の倍増を強く要望させていただきました。それを受け入れていただいて、今回、一〇〇%同じものではございませんし、ちょっと欠けるところはありますけれども、新しい交付金というものを、朝川局長、武見大臣の御尽力の下、八割ぐらいがカバーされるのではないか、被災者の方々に対してそういうものをつくっていただきました。

 ついては、この新しい交付金はいつから、何世帯ぐらいに支給される予定か、被災世帯の何割、何世帯ぐらいが対象で、地方負担も含め、予算の総額は幾らか、答えられる範囲でお願いいたします。

武見国務大臣 この新たな交付金制度は、能登地域六市町において住宅が半壊以上の被災をした高齢者等のいる世帯、資金の借入れや返済が容易でないと見込まれる世帯を給付の対象としております。重複を排除できないなど、給付の対象となる世帯の割合を厳密に計算することはなかなか難しいのでありますが、大まかに計算いたしますと、対象地域における住宅半壊以上の被害を被った被災世帯のうち、八割程度が給付の対象になるものと考えております。

 それから、先般の予備費使用の閣議決定に当たっては、新たな交付金制度について、足下で把握している能登地域六市町の住宅の被害状況や対象世帯の考え方などを踏まえて、給付の対象となり得る世帯を約二万世帯と見込んだ上で、過去の被災者生活再建支援金の執行状況等も参考に、住宅再建分よりも早期の支給が見込まれる家財等再建分の年度内執行分と、給付に必要な事務費等の合計として、約六十一億円の国費を計上をしております。また、石川県におきましても、地方負担分として約十五億円を計上しているものと承知しており、現時点において、事業費としては合計約七十六億円が措置されております。

 予備費の措置は年度内執行分を計上したものであり、来年度以降の執行が見込まれる住宅再建分も含めた総事業費については、今後の執行状況を見ながら精査をしてまいりたいと思います。

 なお、交付金の支給時期については、石川県において、早期の支給が開始できるよう、準備を進めているものと承知しております。

山井委員 是非、幅広く支給をしていただきたいと思います。

 それでは、生活困窮者支援という立場から、配付資料五ページにありますように、残念ながら、生活が困窮する一つの理由というのは、やはり障害があって十分に仕事ができないという方が多いんですね。そういうことで、障害のある方々に対する雇用支援、雇用創出に厚労省としてはどのように取り組んでいるのか、もっと力を入れるべきだと考えます。

 ついては、まず、ここの五ページにもありますように、例えばですけれども、特別支援学校の生徒さんが、より安定した雇用、一般就労も含めてですけれども、より高い賃金の雇用に就けるように、もちろん障害の程度によってできること、できないことはあるんですけれども、今言ったような、より安定した、より高い賃金の雇用に、安定雇用に就けるように、厚労省としては特別支援学校に対してどのような支援、連携をしているのか。例えば、京都にも地域障害者職業センターというのがございますが、そういうことも含めてお答えください。

武見国務大臣 障害のある方が一人一人、その障害特性や希望に応じて能力を有効に発揮して活躍するためには、職務内容や業務執行に必要な能力、それから職場環境等の適切なマッチングが重要となります。

 こうした観点から、特別支援学校の生徒に対しては、ハローワークや地域障害者職業センターなどが、特別支援学校と連携をし、在学中から、職場実習の実施や、障害特性を踏まえた専門的、個別的な相談支援などのきめ細かな就職支援を実施するとともに、就職後の職場定着に向けた支援を実施しております。

 引き続き、特別支援学校と連携をし、その卒業生が希望や能力に応じて活躍できるよう支援をしていきたいと思います。

山井委員 私も特別支援学校にお子さんを行かせておられる保護者の方々ともよく意見交換させていただきますが、やはり雇用、卒業後のこと、また人生のことを一番心配に、不安に思っておられます。ですから、文科省が特別支援学校、厚労省が障害者雇用の担当で、ちょっと縦割りがあるんですけれども、是非、連携をしていただければと思います。

 また、それに続きまして、より多くの特別支援学校の生徒が安定的に就労でき、生活困窮に陥らないように、障害者雇用の法定雇用率の引上げや障害者雇用の創出、拡大などについて、厚労省はどのような支援、取組を今後するんでしょうか。

武見国務大臣 特別支援学校の生徒を含め、障害のある方一人一人が、その希望や障害特性に応じて能力を有効に発揮し活躍できるよう必要な支援を行うことが重要であり、きめ細かな就職支援、職業定着支援を実施しております。

 こうした求職者への支援に加えまして、企業における障害者の雇用を促進するために、事業主に対して、ハローワークによる各企業の状況を踏まえた個別の求人開拓、それから、職場に出向いて職務や職場環境の改善に対する助言などを行うジョブコーチによる支援も実施をしております。

 また、全ての事業主に対して一定割合の障害者雇用を義務づける雇用率制度について、現在、一般の事業主に対しては二・三%が適用されておりますが、本年四月からは二・五%、令和八年からは、令和八年七月でありますが二・七%と、段階的な引上げが予定されているところであり、これを踏まえて、引き続き積極的に事業主や求職者を支援してまいりたいと思います。

山井委員 障害のある方々に対する雇用拡大、生活困窮に陥らないための支援策について、もう一問だけお聞きしたいと思います。

 そのような趣旨からも、例えば、今後、障害者雇用の更なる拡大のために法定雇用率を今予定されている以上に引き上げることや、残念ながら、法定雇用率を守らずお金を払って済ませる企業というのが半分ぐらいあるわけですけれども、それを達成する事業者の割合をどうやって高めていくのか。さらには、一方では、一般就労できない方々が通所の障害者の作業所、通所施設で働いておられますけれども、工賃が低過ぎる、何とかしてほしいという悲鳴も、私、聞いておりますが、このような低過ぎる工賃も厚労省の指導で引き上げるべきではないでしょうか。

武見国務大臣 雇用率制度でございますが、社会連帯の理念の下で、全ての事業主に対して、その雇用する労働者の数に応じて一定割合の障害者雇用を義務づけるものであり、五年に一度、設定をしております。現在既に、令和九年度、二〇二七年度までの雇用率が決定しており、まずは、その雇用率の達成に向けて企業等における障害者雇用の取組を着実に進めてまいりたいと思います。

 このため、法定雇用率を達成しない企業に対しては、労働局、ハローワークによる雇用率達成に向けた計画的な助言、指導や、障害者雇用に関する環境整備を実施する事業主に対する助成制度など、各種支援策の実施を通じて法定雇用率の達成を促すことで障害者の雇用の促進を図ってまいりたいと思います。

 そして、就業継続支援B型の工賃についてでありますが、利用者の経済的自立を促す観点から、今般の報酬改定において工賃向上の取組を評価する見直しなどを行うこととしております。また、専門家の派遣により経営力の強化や品質向上、販路拡大を支援する工賃向上計画支援等事業等により、工賃の更なる向上に向けた取組を進めてまいります。

山井委員 是非、支援拡大をお願いしたいと思います。

 次に、もう時間がありませんので、ラスト、二、三問を一括して、年金と賃金についてお聞きしたいと思います。

 といいますのが、七年間連続で、物価高に対して年金引上げが追いつかずに実質目減りをしているわけですね。その大きな目減りになっている理由は、いわゆる年金カット法案ということで、キャリーオーバーしたやつを一気に下げるとか、賃金の上昇率を勘案して物価だけではなく下げるとか、様々なことをやったせいであります。このようなことをやり過ぎたということについて、今後、年々実質的に年金は下がる一方なんですね、これは。さすがにやり過ぎで、まさに生活困窮者を増やすことになると思います。このようなことに関して、目減りする年金の改善策を考えるべきではないか、特に生活困窮者に対しては打撃が大きいのではないかということ。

 それと最後にもう一点、似たような話で、実質賃金が二年連続減少しているんですね。岸田総理はこれを引き上げると言っているわけですけれども、二年間、実質賃金が下がった原因はどう考えていて、どう上げるつもりなのか。特に、今、春闘で大企業とか正規雇用の人は賃金が上がっていますけれども、非正規雇用の方々とか中小企業は上がらなくて格差が拡大していくんですね。こういうふうなことについても、生活困窮者を増やさないという視点からどう考えているのか。

 これらを、答えられる範囲で、一括してお答えください。

武見国務大臣 まずは、賃金の変動が物価の変動を下回る傾向が続いたこと、これは二〇一八年から二〇二四年まででありますが、マクロ経済スライドの発動により年金額の改定率が物価の変動率を下回っている、これは確かにそのとおり、事実であります。

 しかしながら、これは、我が国の年金制度では年金の原資となる保険料収入が現役世代の賃金に連動することから、賃金の変動が物価の変動より低い場合には賃金を基に改定するルールとなっていることがあります。また、マクロ経済スライドにより長期的な給付と負担のバランスを確保することで、これは将来にわたって持続可能な年金制度の仕組みを構築していることによるものでございます。将来世代の負担が過重なものとなることなく将来の給付水準を確保するために必要な仕組みがこれである、こう考えます。

 その上で、御指摘のような方を含めて低所得の高齢者に対しては、高齢年金のみならず、社会保障制度全体で総合的に支援していくことが重要であります。具体的には、年間最大六万円の年金生活者支援給付金の支給であるとか、介護保険における低所得者の方を対象とした補足給付の支給であるとか、あるいは、医療保険、介護保険における低所得の方々への保険料軽減措置や、所得に応じた自己負担、利用者負担の上限額の設定などによってこうした経済的な支援を行っております。

 さらに、今般の改正法案においては、例えば、高齢夫婦世帯において配偶者が亡くなって世帯としての年金収入が減少した場合など、著しく収入が減少し、家計改善のために低廉な家賃の住宅に転居する必要があるときには、住宅確保給付金としてその転居費用を補助することとなっております。

 さらに、御質問の内容は多岐にわたっているわけでありますけれども、中小企業の賃上げについては、中小企業が賃上げできる環境の整備が重要であると考えておりまして、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針の周知の取組に加えまして、中小企業の生産性向上の取組も業務改善助成金で支援しております。中小企業庁などと連携をしつつ、引き続き中小企業への支援にも取り組んでまいりたいと思います。

 また、非正規雇用労働者の賃上げについては、最低賃金の引上げや、同一労働同一賃金の遵守徹底を図っていくとともに、希望する方の正社員への転換に向けた支援に取り組んでまいります。

 このほか、これまでも、生活困窮者自立支援制度における相談体制の整備や、支出の面から生活の安定を図る家計改善支援事業を実施してまいりましたが、可能な方については、自立相談支援機関からハローワークなどにつなぎ、職業訓練等によりスキルアップ、キャリアアップなどを目指すなど、取り組んできたところでございます。

 本法案においても、住まい支援や家計改善支援の強化など、生活困窮者などへの更なる支援策を講じているところでございます。

 引き続き、賃上げに向けた取組と併せて、生活困窮者等の生活の安定に努めてまいりたいと思います。

山井委員 どうもありがとうございました。

 終わります。

新谷委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 まず、法案の問題点からお伺いいたします。

 本法案では、都道府県の新たな役割として、医療扶助について調査等を行い、市町村に対して医療扶助の適正な実施について必要な援助を行うように努めることというのを設けまして、厚労大臣は都道府県が調査等を行うため必要な支援を行うものとするとしております。

 厚労省の医療扶助の見直しに向けた整理を見ますと、国による参酌標準としての数値目標の設定というのが明記されております。前回の法改正において、医療扶助については後発医薬品の使用を原則化するという、生活保護利用者への差別的取扱いが盛り込まれました。

 本法案が改正された場合、医療扶助の適正化ということで、国による参酌標準として後発医薬品の使用割合というのが入るんでしょうか。

朝川政府参考人 医療扶助における後発医薬品の使用につきましては、平成三十年の生活保護法改正により原則化が図られておりまして、令和四年度の数量シェアは八六・四%となっています。

 後発医薬品の使用割合については、新経済・財政再生計画改革工程表二〇二三におきまして、毎年度全ての都道府県で八〇%というKPIが既に設定されておりまして、これに基づいて進めていくものと考えております。

 一方、本法案で新たに設ける都道府県による援助等の仕組みでは、都道府県が広域的な観点からデータ分析を行い、市町村に対して取組目標の設定、評価等を行うに当たって、国から都道府県に対して参考となる考え方をお示しすることを考えておりまして、その具体的な内容につきましては、今後、有識者の意見も踏まえて検討を進めてまいります。

宮本(徹)委員 否定されないという答弁なわけですよね。

 既に、後発医薬品の使用割合というのは、生活保護利用者の方がかなり高い状況になっているわけですね。一方で、人権に配慮した運用をしている自治体なんかもあるわけです。今回の法改正が圧力となって、差別的取扱いが更に進む危険があるのではないのかということを大変懸念をしております。

 もう一点、医療扶助でお伺いしますけれども、こういう話をよく聞くんですね、神奈川の難病患者の方が東京の医師に受診したいと言っても拒否をされると。こういうことが行われているわけです。

 配付資料を見ていただければいいんですけれども、医療扶助運営要領にはこういう文言があります。生活保護制度は、国民の最低限度の生活の需要を超えないものでなければならないという原則において、他制度と基本的な差異があることに留意して、実施の適正を期すること。大変な差別的な考え方だと思います。

 そして、生活保護は事務監査をやられているわけですけれども、事務監査実施要綱に出ている監査の着眼点というのを見ますと、医療機関の選定は、真にやむを得ない場合を除き、患者の居住地に近い医療機関となっているか、こういうことを監査の着眼点として厚労省は示しているわけですね。

 こういう考え方の下で、現状でも医療へのフリーアクセスを実質的に制限する事態というのが様々、医療扶助については起きております。今回の改正案によってこういう事態が加速するという懸念があるんですけれども、いかがでしょうか。

朝川政府参考人 医療扶助の実施につきましては、例えば福祉事務所における医療扶助の取扱いの一つとして、居住地に比較的近距離に所在する医療機関を選定することを基本としつつ、患者の医師に対する信頼なども考慮し、本人の希望を参考として取り扱うことなどを通知で定めております。

 こうした通知で定めました医療機関の選定等を含めて、福祉事務所等における生活保護法の執行事務につきましては、都道府県等が監査を実施しております。監査においては、施行事務の適否を関係法令や通知等に照らして検討するものとされています。

 一方、本法案で創設する仕組みは、都道府県が市町村に対して医療扶助等の実施に関して支援を行うものでありまして、監査とは法律上の位置づけや内容等が異なっております。

 具体的には、本法案で創設する仕組みは、都道府県が広域的な観点からデータ分析を行い、市町村に対して都道府県が取組目標の設定、評価や助言等の支援を行うことにより、地域全体を通じた医療扶助の適正かつ効率的な実施の促進をするものでございます。

 このため、この仕組みによって通知で定めました医療機関の選定等の取扱いが変更されるといったものではなく、御指摘の点は当たらないと考えてございます。

宮本(徹)委員 通知の中身で今いろいろおっしゃいましたけれども、実際には、監査だとか、あるいは運営要領に基づいて、既に患者の希望が通らない事態というのがいっぱい起きているわけですよ。そういう苦情は皆さんのところにも寄せられるわけでしょう。それが実際に起きているわけですよ。都道府県がデータ分析をする、取組状況を評価する、そして助言をする、そういう中でこうしたことが更に進みかねないじゃないかということを私は指摘をしているわけですよね。

 元々、運営要領の文言を変えるんだったらいいですよ。あるいは監査の着眼点を変えるんだったらいいですよ。こういうのをそのままにした下で都道府県から自治体に対して様々助言するということになったら、当然、こうしたものを踏まえてということになるじゃないですか。本当に、生活保護利用者の医療へのアクセス権、自己決定権を医療扶助の適正化の名の下に制限しかねない危うさがあるということを指摘しておきたいと思います。

 次に、単身高齢女性らへの経済支援等についてお伺いしたいと思います。

 阿部彩先生の集計で、単身高齢者の相対的貧困率が四四・一%にもなるということが報道されました。女性は年金が十万円未満の方が多く、私たちのところにも、貯金を使い果たして生活保護を利用する、こういう相談がよく来ます。家賃の支援があればやっていけるのにと、こういう声もたくさん聞いているわけです。

 大臣にお伺いしますけれども、単身の高齢者の貧困の割合を政府としてはどう分析しているのか、経済的支援を更に強めなければならないという認識はあるのか、そして、その支援の中で住居費への支援のニーズが極めて高い、こういう認識はあるのか、お伺いしたいと思います。

武見国務大臣 六十五歳以上の高齢者の相対的貧困率については他の世代と比べて高くなっており、このうち単身世帯では、男女共に相対的貧困率がより高くなっていると認識しております。

 このため、単身の高齢者も含め経済的に困窮している方々に対しては、社会保障制度全体で総合的に支援していくことが必要であると考えており、具体的には、年間最大六万円の年金生活者支援給付金の支給、そして、介護保険における低所得者の方を対象とした補足給付の支給、それから、医療保険、介護保険における低所得の方への保険料軽減措置や、所得に応じた自己負担、利用者負担の上限額の設定などにより、経済的な支援を行っております。

 また、生活困窮者自立支援制度におきましては、生活にお困りの状況に応じて、家計改善に向けた支援や住まいの支援等を行っております。特に今般の法改正では、単身高齢世帯の増加等により居住支援のニーズの高まりが想定されることを踏まえまして、居住支援の強化を図ることとしております。

 御指摘の家賃負担の軽減に関しても、本法案において住宅確保給付金を拡充し、家計の改善により自立を目指す高齢者等が低廉な家賃の住宅に転居する際の費用を補助することとしておりまして、こうした取組により、単身の高齢者も含めて経済的に困窮している方々に対して必要な支援を行ってまいりたいと思います。

 以上です。

宮本(徹)委員 今の支援では足りない、全く足りないから、年金生活者の皆さんが生活保護を利用されるということにどんどんなっているわけですね。

 さっき大臣から説明がありましたように、今回の法案は住宅確保給付金を拡充するというわけですけれども、中身というのは、家賃の支払いが困難になった人に、家賃が低いところに住み替える際の転居費用を出すという話ですよね。

 私は、東京の多摩の北部の地域が選挙区です。二十三区から転居してくる高齢者もかなりいらっしゃいます。もちろん、転居費用の支援があれば助かるというのはそれはそのとおりだと思いますけれども、しかし、高齢になってから引っ越して、一から人間関係をつくるというのは本当に大変なんですよね。私は、住み慣れたコミュニティーで暮らし続けたい人には、そこで暮らせる経済支援というのも必要だと思うんですよ。

 大臣にお伺いしたいと思いますが、高齢者の転居に伴うリスクというのはどのようなものがあるというふうにお考えですか。

武見国務大臣 高齢者が転居する場合のリスクでありますが、例えば、転居の際のストレスや疲れが原因で体調を崩すおそれがあることであるとか、それから、新しい生活環境に適応するのが容易でなかった場合、今委員御指摘のとおりであります、周りに知り合いがいなかった場合など、転居に伴う環境や人間関係の変化などによって認知機能や意欲が低下するおそれがあるといったようなことがリスクファクターとして想定できると思います。

 こうした観点も踏まえて、転居が必要な場合は、本人の希望を踏まえながら、可能な限り住み慣れた地域において住まいの確保と入居後の生活支援を一体的に切れ目なく行っていく必要があると考えております。

 本法案には家賃の低廉な住宅への転居のための初期費用を補助する内容を盛り込んでおりますが、家賃が下がればどこへ転居してもよいというわけでもなく、あくまで御本人の自立に資するかといった観点から転居の支援を行うよう、自治体にも周知をしてまいりたいと思います。

 また、本法案では、見守り等の支援の実施を自治体の努力義務としておりまして、転居後も地域で安定した生活ができるように支援をしていきたいと思います。

宮本(徹)委員 転居のリスクがあるというのは、大臣も当然認識されているわけですよね。ですから、住み慣れたコミュニティーで住み続けられるようにするというのがやはり最善の策だということだと思うんですね。

 では、住み慣れたコミュニティーでより安い家賃で暮らせるところがあるかといったら、そうないですよ。同じ地域は大体家賃は同じ相場ですし、東京では、御存じのとおり都営住宅の入居倍率は極めて高い、入りたくても入れないわけですね。ですから、家賃の低い多摩の西へ西へと引っ越さざるを得ないということが起きているわけです。

 家賃に困っているのは単身高齢者だけじゃないわけですね。中高年のシングル女性団体が調べた調査というのを前、国交委員会で紹介したことがありますけれども、四十代、五十代の単身女性は、住まいはどこに住んでいるかというと民間賃貸住宅が一番多くて、大変住居費が重くのしかかっているという状況がございます。ですから、住み慣れた地域で生活が困窮されても住み続けられるためには、住み替えの支援をしていくというのじゃなくて、やはり、そこでしっかり住める家賃補助をしていくというのが私は極めて大事だと思います。

 資料の三ページ目を御覧いただきたいと思うんですけれども、これは国交省と財務省と厚労省、それぞれの住宅への支援政策を並べておきました。大変、日本の住宅支援の政策というのはいびつなんですよね。

 持家への支援である住宅ローン減税、二〇二三年度の予算ベースで見ますと、減収見込額は約八千億円程度、適用見込み者は五百四十万人程度。五百四十万で八千億を割ると、一人当たり年十五万円弱になります。これは十三年間受けられますから、平均的にはお一人二百万円近い支援ということになるわけですね。

 一方、一番下が国交省のセーフティーネット住宅の家賃低廉化補助というものですけれども、これはもう始まってしばらくたつわけですけれども、家賃を最大四万円引き下げるという、これ自体は非常にいい制度な面はあるわけですけれども、ただ、いかんせん、ほとんど使われていないわけですね。全国で四百五十七戸、執行額は七千二百八十万円。住宅ローン減税の一万分の一しか予算をかけていないということになるわけですね。

 この家賃低廉化補助がなぜ使われないのかというと、自治体負担があるので自治体が手を挙げない、仮に自治体が手を挙げても、大家さんにもいろいろな不利益があるから、大家さんも手を挙げないということで、つくってもう七、八年たつと思うんですけれども、七年ぐらいですかね、これは平成二十九年からですから。もう何年たってもほとんど広がっていないという状況であります。

 一方、厚労省のやっている住宅確保給付金、二〇二二年度の実績は、支給済額で七十七・二億円、支給決定件数で、再支給も含めて三万七千七百九十件とあります。これはコロナの影響もあって特例再支給というのもあったわけですけれども、二〇二三年度の実績、十二月までで見ますと、新規の決定件数は七千四百四十四件で、支給済額は十九・四億円ですから、恐らくこのペースでいけばせいぜい三十億円程度の支援ということになるんですね。

 ですから、片や持家に対しては八千億円支援されながら、民間賃貸住宅で大変苦労されている方には、厚労省と国交省の支援両方合わせても、その百分の一にもいかない。これが私たちのこの国の住宅政策なんですよね。

 大臣の認識をお伺いしたいと思いますけれども、この数字を見て、持家で暮らす人に対する支援に比べて民間賃貸住宅で暮らす人への支援が大変弱い、こういう認識はございますか。

武見国務大臣 生活困窮者自立支援制度において、生活に困窮した方々に対して個別の状況に応じた支援を行うこととしておりまして、現在の住居が持家か賃貸住宅かにかかわらず必要な支援を実施しております。

 特に、離職等により住居を失うおそれが生じるような方に対しては、求職活動中にも安定した住まいを確保できるように、民間の賃貸住宅の家賃相当分を住居確保給付金として支給をしております。また、住まいの確保等に困難を抱える方が地域の中で安定して生活ができるように、地域居住支援事業において民間賃貸住宅等への入居支援や見守り支援なども行っております。

 さらに、本法案におきましては、個々の状況に応じて切れ目のない支援を講じていく観点から、生活困窮者支援の窓口等において住まいに関する相談を包括的に受け止めること、それから、入居後の見守り等の支援や社会参加への支援を強化することといった内容が盛り込まれております。

 厚生労働省としては、今国会に提出された住宅セーフティーネット法等の一部改正法案と併せて、民間賃貸住宅を含めて、高齢者などが長期にわたって安定した住まいを確保できるような環境整備に取り組むこととしており、国土交通省とも連携をして、民間賃貸住宅にお住まいの方に対しても様々な支援を講じてまいりたいと思います。

宮本(徹)委員 せっかく数字を紹介したんですよね。これはどう見ても、民間賃貸住宅の方々へ国の施策としては支援が余りにも弱いんじゃないかと思うんですよ。私は、家賃補助制度にしっかり発展させていかなきゃいけないというふうに思いますけれども……(発言する者あり)ちょっと、大臣の認識を聞け聞けといって、時間が来ちゃうからなかなか悩ましいのがあるんですけれども、じゃ、二つお答えください。

 厚労省のさっきのペーパーは横に置いて、住宅ローン減税と比べて民間賃貸住宅への支援というのは大変弱いという認識があるのか、大臣の率直な認識をお答えいただきたい。加えて、家賃補助制度、これは本当につくっていくべきだと思うんですよね。その点について、この二点をお答えいただきたいと思います。

新谷委員長 武見厚生労働大臣、簡潔な御答弁でお願いいたします。

武見国務大臣 はい。

 現行の制度の中では、先ほど申し上げた家賃の補助だけなんですね。それを今度の法律によって引っ越し等の支援金の補助まで追加されて、これによって選択肢が増えているということは、私は、重要な一つの新たな、課題をきちんと解決する糸口を示したと思います。

 したがって、そうした観点で、民間の賃貸に関わる支援というものと組み合わせて、新たに全体として御理解をいただきたいと思います。(宮本(徹)委員「答えていないです」と呼ぶ)

新谷委員長 申合せの時間が経過しておりますから、御協力を。

宮本(徹)委員 いやいや、ちゃんと、委員長、差配してもらわないと困るんです。私が聞いたことを答えてもらわなきゃいけないですよ。まあ、また続き、やらせていただきます。

 終わります。

    ―――――――――――――

新谷委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る二十六日火曜日午前九時三十分、参考人として特定非営利活動法人抱樸理事長奥田知志君、日本労働組合総連合会総合政策推進局長佐保昌一君、名古屋商科大学ビジネススクール教授原田泰君、一般社団法人いのち支える自殺対策推進センター地域連携推進部地域支援室長生水裕美君、国民の住まいを守る全国連絡会代表幹事坂庭國晴君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

新谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十六日火曜日午前九時十五分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時九分散会


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