第12号 令和5年5月25日(木曜日)
令和五年五月二十五日(木曜日)午前十時二分開議
出席委員
会長 森 英介君
幹事 伊藤信太郎君 幹事 上川 陽子君
幹事 柴山 昌彦君 幹事 新藤 義孝君
幹事 山下 貴司君 幹事 階 猛君
幹事 中川 正春君 幹事 馬場 伸幸君
幹事 北側 一雄君
青山 周平君 伊藤 達也君
石破 茂君 岩屋 毅君
衛藤征士郎君 越智 隆雄君
大塚 拓君 神田 憲次君
熊田 裕通君 小林 鷹之君
國場幸之助君 下村 博文君
田野瀬太道君 辻 清人君
中西 健治君 船田 元君
古川 禎久君 古屋 圭司君
細野 豪志君 務台 俊介君
山本 有二君 渡辺 孝一君
新垣 邦男君 大島 敦君
奥野総一郎君 城井 崇君
近藤 昭一君 篠原 孝君
本庄 知史君 谷田川 元君
吉田はるみ君 岩谷 良平君
小野 泰輔君 三木 圭恵君
金城 泰邦君 國重 徹君
浜地 雅一君 玉木雄一郎君
赤嶺 政賢君 北神 圭朗君
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衆議院憲法審査会事務局長 神崎 一郎君
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委員の異動
五月二十五日
辞任 補欠選任
吉田 宣弘君 金城 泰邦君
同日
辞任 補欠選任
金城 泰邦君 吉田 宣弘君
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本日の会議に付した案件
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題(特に、国民投票を中心として))
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○森会長 これより会議を開きます。
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。
本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題、特に、国民投票を中心として討議を行います。
この討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。
それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。
発言時間は七分以内といたします。
発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。
発言は自席から着席のままで結構でございます。
発言の申出がありますので、順次これを許します。新藤義孝君。
○新藤委員 自由民主党の新藤義孝でございます。
本日は、国民投票に関して私の意見を述べたいと思います。
二〇二一年六月に成立した国民投票法改正の附則四条では、第一号で投票の外形的事項である投票環境の向上について、第二号で投票の質に関する事項であるCM規制などについて検討を進めているわけであります。
第一号で規定されております投票の外形的事項につきましては、自民、維新、公明、有志の四会派が昨年四月にいわゆる三項目案を提出し、趣旨説明済みでございます。その内容については公選法で既に措置されている事項であり、審議でも特に異論はなかったものであります。
趣旨説明済みの法案を審議するのは国会の当然の責務でありますが、提出以来、残念ながら立憲民主党と共産党の理解を得ることができず、既に一年以上審議が行われておりません。審議を速やかに行うべきだ、速やかに処理すべきだということを改めて訴えたい、このように思います。
次に、附則四条二号に規定されている投票の質に関するCM規制の問題について述べます。
国民投票運動に関する基本的な考え方は、国民投票法制定時に整理されたように、国民投票は国民主権最大の発露の場であり、国民投票運動はできるだけ自由に、これが、当時の民主党を含めて、法律として作られた根本的な概念でございます。
その結果、投票事務関係者や裁判官等の特定公務員の国民投票運動の禁止、公務員や教育者等の地位利用による国民投票運動の禁止など、それ以外は、放送CMについての投票期日直前二週間の勧誘CMの禁止のみが規定されることになり、これによって、国民投票運動の自由と、その公平公正のバランスが図られているわけであります。
既に、放送CMについては、民放連の参考人質疑を通じ、受け手である放送事業者のガイドラインなど、自主規制の取組は、量的な観点も含めて、公平性を確保するための準備が進んでいることが確認されています。
論点として残りますのは、広告の出し手である私たち政党による取組の在り方、そして、国民投票広報協議会を通じた公平な広報活動をいかに確保するか、この二点になるというふうに考えます。
本日は、既に法定化されている国民投票広報協議会の規定について議論をしたいと考えています。
まず、配付資料の一、組織を御覧ください。
概要にありますように、広報協議会は、憲法改正の発議があったときに国会に設けられる機関です。
1委員の人数は、憲法改正発議時の衆議院議員、参議院議員それぞれ十人ずつの合計二十人と規定されています。
2選任方法については、原則は各会派の所属議員数の比率により割り当てて選任することとなりますが、例外として、憲法改正に反対の会派から一人も委員が選任されないことのないよう、できる限りの配慮をするものとされています。
3会長は、委員の互選によることとなります。
4議事の定足数は各議院の委員十人中七人以上の出席が必要、その議決は出席委員の三分の二以上の多数によることとし、慎重な手続を取ることとなっています。
これらの規定を実施していくためには、右の欄にあります課題に記したように、委員や会長選出の方法、協議会の開催日時の決定その他の議事手続等の細目について、広報協議会規程を定めなければならないわけでございます。この広報協議会規程は両議院の議長が協議して定めるとされており、実際には、衆参の憲法審査会において協議し、両院の議院運営委員会と相談した上で、両院議長に決裁いただくことになるものと思われます。
いずれにしても、現在、この規程はまだ定められておりません。今後、作業をしっかりと進めたい、このように考えます。
次に、二、権限を御覧ください。
広報協議会の権限は憲法改正案の国民に対する広報であり、四つの事務が国民投票法に規定されています。
まず、1国民投票公報の原稿の作成です。これは選挙における選挙公報のようなもので、この公報には、(1)憲法改正案やその要旨等について分かりやすい説明を掲載することになっており、その記述は客観的かつ中立的なものとされています。また、(2)憲法改正案に対する賛成意見、反対意見も掲載することとされており、この部分は公正かつ平等に扱うことになっています。
次に、2投票所に掲示する憲法改正案の要旨の作成についても、国民投票公報と同様に扱うことが定められています。
さらに、3放送及び新聞広告に関する事務について、広報協議会は、憲法改正案の内容を国民に周知広報するべく、テレビ、ラジオの放送メディアや新聞等を使って広告を行うこととされており、その際には、分かりやすい説明を客観的かつ中立的に行うこととされています。また、政党等が無料でテレビ、ラジオや新聞に賛成、反対の意見を掲載することも認められており、その場合には賛否平等の取扱いが定められています。すなわち、賛成の政党、反対の政党、双方に対し同一の時間数、同等の時間帯、同一の寸法、回数を与えるなど、同等の利便を提供しなければならないとされているわけであります。
最後に、4その他憲法改正案の広報に関する事務については、国民投票法制定時に想定されていなかったSNSによる周知広報活動なども、この条文を根拠に行うことができると考えます。
なお、右欄の課題にございます放送及び新聞広告に関する事務の細目は、放送及び新聞広告に関する規程で定めることになっています。例えば放送については、放送事業者の決定手続、各政党等の放送時間枠の割当て手続、無料で行う録音、録画の上限額等について定めることが想定されており、新聞広告は、新聞社の決定手続、広告の寸法、掲載回数、掲載日の決定手続、各政党等の広告枠の割当て手続等を定めることになると思われます。
最後に、三、事務局として、広報協議会の事務を補佐するための事務局を設置し、事務局長その他の職員を置くこととしております。つまり、この事務局規程の制定や国会職員法などの改正が必要になるということでございます。
これら、二の放送及び新聞広告に関する規程と三の事務局規程の制定や法改正は、現状、全く手がつけられておらず、まず、衆参の憲法審査会が共同で案を作らなければなりません。
以上、国民投票広報協議会の組織や権限、残された法整備の課題について述べてまいりましたが、これらは事務的な内容であり、速やかに詰められるものと考えています。
国民投票広報協議会について定めるべき三つの規程、すなわち、広報協議会規程、事務局規程、放送及び新聞広告規程、及び、国会職員法、国会職員育児休業法などの関連法律の改正については、まずは事務方によるたたき台を作成し、それを基に幹事懇談会等において成案を得るべく、各会派との協議を行ってはいかがかと提案をいたします。今後、筆頭間協議や、また各会派の皆さんとよく御相談をさせていただきたい、このように思っております。
今朝の幹事会におきましては、次の定例である六月一日にも審査会を開催し、討議を継続することを提案いたしました。引き続き、憲法審査会が安定的に開催され、充実かつ深い論議が行われるよう委員各位の御理解と御協力をお願いして、私の発言といたします。
○森会長 次に、階猛君。
○階委員 立憲民主党の階猛です。
本日のテーマである国民投票法について、私からは、放送CMとネットCMの規制について、我が党の考え方を述べます。
なお、論点を明確にするため、昨年の通常国会以降の、放送CMとネットCMの規制などを含む国民投票法に関する各会派の発言について、私なりの視点で衆議院法制局にまとめていただいた一覧表を提出するべく幹事会で提案させていただきましたが、本日もかないませんでした。
自民党の新藤筆頭は、三月十六日の当審査会において、投票の質に関する国民投票法の論点として、放送CMとネットCMの問題を挙げられた上で、「今後、更に論点を深掘りした整理を行ってみたい」とも述べられていました。それから、はや二か月余りがたちます。いつになったら論点整理を行われるのでしょうか。後ほどお答えいただけますでしょうか。
緊急事態における議員任期延長については早々と論点整理の資料を当審査会に提出される一方、国民投票の際の放送CMとネットCMの規制についてはいつまでも論点整理を行わず、我が党がこれを行おうとすると妨害する、このような手前勝手で御都合主義な態度は許されないということを、冒頭指摘いたします。
さて、国民投票に関するCMについては、国民投票運動、すなわち、憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし、又はしないよう勧誘する行為の手段として有料で行うCM、以下、勧誘CMと言います、これと、国民投票についての意見表明のために有料で行うCM、以下、意見表明CMと言います、に大別できます。
この勧誘CMと意見表明CMの規制について、放送の場合とネットの場合に分けて、我が党の考え方を申し上げます。
まずは、放送のCM規制について。
現行の国民投票法では、放送による勧誘CMについて、主体を問わず投票期日二週間前から禁止していますが、我が党の改正案では、国民投票運動期間全体にわたって禁止することとしています。
改正の根拠となる立法事実としては、第一に、民放連の姿勢の変化です。現行法制定時には、勧誘CMの量を憲法改正案の賛成側と反対側で均衡させる、いわゆる量的規制につき、民放連が自主的に行うこととされていたにもかかわらず、現在は、量的規制が困難であるとして直接的な規制は行わないこととされ、禁止期間を二週間とした当初の前提が変わっています。
第二に、ネットやSNSの普及です。これにより、現行法制定時にはなかったいわゆるアテンションエコノミーという状況が生まれ、CM業界では、人々の関心と時間を奪い合う競争が激化しています。その中で、多くの人々の関心を引きつけるためだけの扇情的なCMや、経営的貢献度が高い資金力のある広告主のCMが増加し、国民が多種多様で適切な情報を得られるようにするための規制の必要性が高まっているわけです。
この点につき、表現の自由の過度な規制に当たるとの批判を幾つかの会派から受けています。しかし、我々が規制しているのは表現の内容ではなく表現の手段であり、表現の内容には踏み込まない内容中立規制です。憲法学の世界でも、表現の自由を規制する法律の合憲性を審査する場合、表現内容規制と表現内容中立規制を区別した上で、前者には厳格な基準が妥当するとしても、後者にはより緩やかな基準が妥当するという二重の基準論が多数説となっており、我々の案はこれを踏まえています。
しかも、意見表明CMについては、我が党の改正案でも、国民投票広報協議会を通じた広報などの代替手段が存在する政党等については禁止するものの、それ以外の主体については、資金規制に抵触しない限り、従来どおり自由に行い得ることとしています。表現の自由の過度な規制に当たるとの批判は当たらないと申し上げます。
次に、ネットCMの規制についてです。
諸外国ではオンラインCMという言い方が一般的になっているようですが、前例に従ってネットCMと言います。
現行の国民投票法では、ネットCMについては何ら規制が設けられていません。改正の根拠となる立法事実としては、放送CMで述べた立法事実の二点目がそのまま当てはまります。しかも、ネットCMの市場規模は急速に拡大し、今や放送CMを上回る規模になったと言われています。ネットCMの規制が欠如した現行法を漫然と放置することは、立法府の怠慢だと言わざるを得ません。
さて、我が党の改正案では、放送CMと同様、政党等の勧誘CM及び意見表明CMを禁止した上で、それ以外の主体によるネットCMについては、勧誘CM及び意見表明CMを問わず、当該CMの主体に関する情報を表示し、資金規制を守っている限りは自由としています。
ただし、ネット事業者等による掲載基準の策定の努力義務、国民投票広報協議会によるガイドライン策定などの規定を盛り込み、まずは強制力を伴わない方法でネットCMの健全化を図りたいと考えております。
なお、一部の会派からは、政党等以外の禁止規定を盛り込んでいない点で、放送CMの規制とバランスを失するのではないかという御批判をいただきました。傾聴に値すると思います。
四月十三日に日弁連が公表した「憲法改正手続法における国民投票に関するインターネット広告の規制に関する意見書」においては、ネットCMにつき、勧誘CMか意見表明CMかは問わず、少なくとも投票期日一か月前から禁止すべきとの見解が示されております。また、五月十一日の当審査会で城井委員が述べたとおり、フランスでは国民投票日の六か月前からネットCMの利用が禁止されているとのことです。それ以外の諸外国のオンラインCM規制の動向についても、国会図書館が詳細な調査を行っています。
幾つかの会派からネットCM規制は困難だとの意見が上がっていますが、日弁連や国会図書館を当審査会に招いて、我が国のネットCM規制の在り方について、議論を深掘りしていくべきと考えております。
なお、ネットの問題は国民投票に限られないという意見が多くの会派から上がっており、これを否定するものではありません。しかし、そうであるからといって、国民投票法にネット等CM規制を盛り込まない理由にはならないということを申し上げます。
むしろ、国家レベルの政策を直接民主主義によって決定する唯一の機会である憲法改正国民投票が適正かつ公平に行われるために、ネットCM規制を国民投票法に盛り込むことは最優先で行うべき課題であるということを申し上げ、私からの意見表明を終わります。
○森会長 次に、三木圭恵君。
○三木委員 日本維新の会の三木圭恵でございます。
本日は、国民投票についてということですので、昨年に意見を述べました部分と重なることも多くありますが、再度、大事な論点について述べさせていただきます。できましたら、何度も同じ議論を繰り返すのではなく、一定の結果を導き出すべきと考えます。
それでは、意見表明に入ります。
まず、令和四年四月二十七日に提出されました三項目については、その内容が、開票立会人の選任に関わる規定整備、投票立会人の選任要件緩和、ラジオによる政見放送にFM放送追加という案件ですから、早急に審議に入り、結論を見るべきと申し上げます。
国民投票における公平公正に関する考え方でございますけれども、我が党の基本的な考え方が、立憲民主党の主張とかなり違う部分がございます。
立憲案の方では、先ほど階幹事の方からもおっしゃられておりましたけれども、まず、1の(1)、(2)に、国民投票運動のための広告放送の全面禁止と言われておりますが、これは、賛否の投票の勧誘である国民投票運動のための広告放送において、主体を問わず全期間禁止され、また、政党等は賛否の意見表明でも一律に禁止するという案でございますが、これこそやはり、表現の自由を侵害し、憲法違反のおそれがあるのではないかという懸念がございます。また、国会の発議に至る議論の当事者である政党による放送を通じた情報提供を一律に規制することは、国民の議論の判断の重要な資料を奪うことにつながると考えます。
民放連でございますけれども、冷静な判断を行うための環境整備を確保するため、賛否の意見表明のための広告放送についても投票十四日前から取り扱わないとの基本姿勢を示しており、その他のことは、既に考査ガイドラインも公表されておりますので、この民放連の自主的取組に加え、広告の出し手である政党の紳士協定、広報協議会による公営放送の充実や指針の策定などで対応としては十分と考えますが、いかがでしょうか。
次に、立憲案の2の国民投票運動等のためのネット等の利用に係る規制について、ネットの動画広告は、ラジオ、テレビと同様に、感情に訴える、扇情的な影響力を持つ広告であると考えられますが、立憲案のように政党等による有料広告を禁止してしまうと、政党等以外のものは賛否の投票の勧誘のための有料ネット広告が禁止されていないため、バランスを失います。政党等のみに規制をかけると、かえって言論空間のゆがみを拡大してしまうおそれがあると考えます。
ネット広告について規制をかけることは非常に難しいので、ネット業者の自主的取組や指針の策定でも全てに網はかけられません。また、ネットCMという形ではなくとも、ユーチューブで配信するなど、意見表明というのは様々な形でなされます。そういった、玉石混交のネット広告の真偽、ネットで流される情報の真偽を国民自身が取捨選択するためにも、テレビ、ラジオなどによる多角的論点の提示が必要ではないかとの見解が、昨年の憲法審査会で民放連の永原参考人より示されました。
テレビ、ラジオに規制をかけることは、ネット広告に規制がかけられないことを念頭に慎重であるべきと考えます。片方は規制しているのに片方は規制できないという状態は、公平性の観点から非常に問題です。よって、テレビ、ラジオに民放連が示している考査ガイドライン以上の規制を行うことは必要ないのではないかと考えます。
フェイクについても、情報があふれて、次から次へと雪崩のように押し寄せてくるネットの環境は、法規制ではなく、自律的な取組を通じた誤情報の自然淘汰に委ねるべきではないかと考えます。また、ファクトチェックを自発的に行う民間サイトなども出てきておりますので、そういったサイトを運営する民間企業とも広告協議会が連携することは、方策としてあり得るのではないでしょうか。
プラットフォーマーの努力も欠かせません。フェイクについて、またマイクロターゲット広告については、一定の常識的運営が望まれます。
受け手の課題もございます。情報リテラシーとして、小学生の頃から、教育現場でも、ネットの情報は玉石混交であることをきっちりと教えることが大切になってくると考えます。
しかしながら、こういった数々の課題は、国民投票のみに限られた課題ではなく、この憲法審査会で議論するのが果たしてふさわしいのかどうか、論点を整理することが必要と考えます。
次に、資金規制についてです。
どの範囲のものまで規制の対象とするかが課題となっていると考えます。政党等については規制の対象とすべきとも考えられますが、既に政治資金規正法で透明化されています。
一方、民間の団体や個人についてまで資金規制の対象とする必要があるかということは、事務の煩雑化により潜脱的な支出等が行われ、かえって不透明化するのではないかとの懸念があります。実際に国民投票が行われるとなれば、政党等以外の団体は多数に上ると予想され、一団体当たりの上限額を設けたとしても、団体数が制限できない限り無意味となるので、その意義が乏しいと考えます。また、個人についてまで資金規制の対象とする必要があるかどうかは、事務の煩雑化により、過度な事務負担が生じることとなります。
団体にしても個人にしても、収支報告書の作成や公表は国民投票の期日後に行われるため、投票結果に影響を与えづらいので、過度な事務負担が生じる割に意義が乏しいと考えられます。よって、資金規制については、無駄に煩雑な事務作業を増やすだけで、成果に乏しいのではないかと思われます。
我が党はそのような考え方ですので、立憲案に、国民投票運動に関する支出が一千万円を超える団体の届出制及び収支報告書の提出等とありますが、まず、団体の支出が一千万円を超えるかどうかを把握することが困難である上に、一千万円を超す団体の数が多数に上ると、広報協議会や中央選管、都道府県選管に過度な事務負担が生じてしまいます。
支出限度額の設定については、立憲案では五億円とありますが、複数の団体に分けて支出すると容易に規制を潜脱することができてしまい、実効性に乏しいと考えます。仮に広告規制や資金規制を設けるとしても、それらの違反行為には違反者の罰則等で対応すれば足りるのではないかと考えます。
さきにも述べましたが、収支報告書の公表は国民投票の期日後に行われることになるはずですが、その意義が果たしてどこまであるか、疑問でございます。それは、選挙の場合は当選取消しなどがありますけれども、国民投票で結果を覆すようなことはちょっと考えられないかなと思われます。
次に、外国人等からの寄附の受領の禁止等とありますけれども、外国人にも政治活動の自由は保障されており、公選法上、外国人の政治活動だけでなく、選挙運動も規制されていません。政治資金規正法上、政治活動に関する寄附を受けることは禁止されておりますけれども、それ以外の外国人等からの寄附については規制がないことを考えると、選挙制度における取扱いと整合性が図られないのではないかと考えられます。
無効事由についても、国民投票が無効になる場合として挙げておられますけれども、国民代表機関である国会と主権者たる国民の判断が明確に示されたにもかかわらず、司法判断で事後的に国民投票の結果が容易に覆ることは適切ではないと考えます。
そのため、無効起訴における無効事由をむやみに拡大すべきではないと思います。明らかな虚偽や、規制に重大な違反があった、支出、寄附行為につき重大違反があったということが無効事由として挙げられておりますけれども、それがどれぐらい国民の投票判断に影響を及ぼしたかを定量的に測ることは不可能でございます。
そのほかの考え方でございますが、一つには、国民投票と国政選挙は同時に行うべきではないとの考え方がございますが、法律で一律に禁止すると、例えば技術上の改正で高い投票率を期待し難いような場合、例えば憲法七十九条や八十九条の改正などの場合は、同時実施により投票率の向上を期することができなくなり、硬直的になってしまいます。
また、特に衆議院の解散との関係で、既に設定されていた国民投票の期日を機械的に延期することとなれば、多大な影響と混乱が生じることにもなります。また、同時実施は投票に係る経費を大幅に節約することができる利点もございます。
国民投票と国政選挙の同時実施の可能性を法律で排除することは柔軟な運用を阻害すると考えますので、そのような考え方には維新としては反対でございます。
いつまでもCM規制の件で国民投票法案が膠着状態のままなのは、非常に憲法審査会としても問題であると私たちも考えております。
新藤筆頭幹事から御発言があったように、国民投票広報協議会の組織等に関する課題、細則や規程をどうするか等の議論を深め、早急に全てのことにおいて結論を出すことをお願い申し上げまして、私の意見表明といたします。
ありがとうございます。
○森会長 次に、國重徹君。
○國重委員 公明党の國重徹です。
本日は、国民投票法について意見を述べさせていただきます。
まず、投票環境の向上についてです。
これに関する立憲民主党の御主張は、憲法改正国民投票は、通常の選挙とは異なり、主権者である国民が国の在り方を直接決める重要な機会であるから、通常の選挙以上に投票環境の整備が求められ、三項目案以外についても必要な事項がないか検討すべきというものであります。
憲法改正国民投票が主権者国民にとって重要な機会であることは、そのとおりです。しかし、投開票の手続の在り方について、選挙と国民投票で求められるものは基本的に同じです。この点、憲法審査会には、既に公職選挙法で措置済みである三項目について、国民投票法改正案が約一年前に提出、付託され、趣旨説明聴取もなされています。公職選挙法で措置済みのものは国民投票法に反映させる必要性が明らかですので、この三項目案は速やかに成立させるべきです。
次に、放送CM規制やネット規制に関する問題についてです。
これらの問題を考えるに当たっては、表現の自由の制約は必要最小限度のものでなければならず、過度な制約は許されない点、また、国民投票法の理念である国民投票運動は原則自由とする点を踏まえなければなりません。つまり、表現の自由や国民投票運動の自由の保障と投票の公平公正の確保について、バランスの取れたものになっているのか、この点を常に念頭に置いて検討する必要があります。
この観点から、私どもは、現行の国民投票法を超える法規制には極めて慎重であるべきとの立場です。結論から申し上げますと、政党や事業者の自主的取組を進めるとともに、国民投票広報協議会を充実強化するという方向性で検討していくべき問題と考えます。
放送CM規制について述べます。
立憲民主党は、放送CMについて、現行法の投票日前十四日間勧誘CMを禁止するとの規制では足りないとした上で、法律により、主体を問わず発議後の全期間において勧誘CMを禁止する、そして、政党については意見表明CMについても禁止するとの考えを示されています。
しかし、主体を問わず発議後の全期間において勧誘CMを禁止するとの法規制は、先ほど階幹事がおっしゃった、内容規制ではなくて内容中立規制であることを前提にしたとしても、表現の自由や国民投票運動の自由に対する過度な規制ではないかという懸念が拭えません。
また、政党のみ意見表明CMを禁止するという点については、憲法改正案について、その内容を最も把握しているはずの政党だけを禁止対象とすることの合理性という観点から、慎重な検討が必要と考えます。
さらに、立憲民主党は、ネットCMについても政党のみ禁止するとの考えを示されています。この点についても、放送CMと同様、憲法改正案について、その内容を最も把握しているはずの政党だけを禁止対象とすることの合理性に疑問があります。政党以外はネットCMを自由に行えることから、ネットCMにおける情報発信の内容に偏りが生じ、かえって言論空間がゆがめられる危険性があるように思います。
また、ネットCMについては、例えば出稿の仕組みが複雑であること、業界団体に属していない広告主や媒体運営者、いわゆるアウトサイダーが多数存在していることなど、ネット特有の特徴があります。これらを踏まえると、実効的な法規制は困難であり、政党側の自主規制と事業者側の自主的な取組を併せて推進していく方策が適切と考えます。
他方で、ネットCMに限らず、ネットの利用に関しては、政治的なマイクロターゲティングなどによって民主主義に悪影響を及ぼすおそれがあるなどの指摘があります。このような、デジタル社会において人権や民主主義をどのように守るのかという点については、私も、これまで当審査会で度々問題提起をしてまいりました。
ただ、この問題は、国民投票の場面に限られる問題ではありません。選挙においても同様の危険があります。また、マイクロターゲティングやフィルターバブル、さらにはフェイクニュースなどによって個人の政治的信条が知らないうちに影響を受けてしまうとすれば、憲法改正の発議から国民投票までの期間だけを規制しても十分とは言えません。国民投票法だけで解決できる問題ではなく、言論空間全体をどのように適正化していくのかという観点から議論すべき問題です。
さらに、デジタル社会の問題は、個人の尊重や平等など憲法全体の議論が必要な問題でもあり、幅広い議論が必要です。この問題に対しては、一つには、国民のリテラシー能力の向上も必要です。そのためにも、国民が、どこに正確な情報が掲載されているかを容易に知ることができることも極めて重要です。
この観点からも、国民投票広報協議会がネット上においても正確な情報を多く発信し、その情報に国民が簡単にアクセスできるようにする必要があります。この点、我が党の北側幹事が当審査会で、国民投票広報協議会からの発信について、各メディア事業者の方々の協力をいただき、例えば、ネット検索をしたら広報協議会の情報発信が一番上に出てくるというふうな協力をしていただくというようなことが大事である旨の指摘をしましたが、重要な指摘と考えます。
今申し上げた国民投票広報協議会については、その具体的な役割について一定の合意を形成していくべき時期にあるように思います。組織や事務の在り方を整理した上で、それを明文化した規定を作っていかなくてはなりません。この議論を深めていくべきことを申し上げ、私の発言といたします。
○森会長 次に、玉木雄一郎君。
○玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。
私も国民投票広報協議会のことについて述べたいと思います。
現在の国民投票法は、百五条で、投票期間前十四日間については、テレビ、ラジオのCMを禁止しています。
そして、同法百六条で、その禁止期間は国民投票広報協議会が憲法改正案の広報のための放送をするものと定めています。また、放送に関しては、賛成の政党等及び反対の政党等の双方に対して同一の時間数、同等の時間帯を与えるなど同等の利便を提供しなければならないとしています。改憲に賛成する政党等及び反対する政党等について、協議会の費用で各自の広告が行える規定が整備をされています。
また、同法百七条では、新聞について、憲法改正案の広報のための広告をするものとするとされており、この広告に関しては、憲法改正案に対する賛成の政党等及び反対の政党等の双方に対して同一の寸法及び回数を与えるなど同等の利便を提供しなければならないとしています。
しかし、現在の憲法改正の手続法には、協議会のインターネットを利用する広報についての規定がありません。また、協議会の費用で、賛成、反対する政党等の広告をインターネットで行うことの規定もありません。インターネットがテレビやラジオと同等又はそれ以上に国民が情報を獲得する媒体となっている状況を考えると、協議会がインターネットを利用した広報や禁止期間における政党等の広告を行うための具体的な法整備が必要だと考えます。
ただし、その際重要なのは、禁止期間中に協議会の負担で行うインターネット広告について、どのようなルールを定めれば公平性、公正性が担保されるかです。特に、テレビ、ラジオ、新聞における同等の利便の提供をインターネット広告でどのように担保するのか。つまり、テレビやラジオ放送での同一の時間数及び同等の時間帯や新聞広告での同一の寸法及び回数を、インターネット広告でどのように確保し、公平性、公正性を担保するのか、具体的に検討する必要があると思います。
例えば、静止画の広告では、同一の寸法として左右上下に一体に並べるような表示をしたり、動画の場合は、賛否の一連の動画として、順次、同じ秒数表示をさせるようなことが考えられますが、例えば、今、公明党さんからもありましたけれども、検索をしたときの検索連動型広告についてはどうするのか。検索の画面上で、例えば、同一の寸法で左右上下などに一体に並べるように、賛成意見と反対意見が表示されるようにすることまで求めるのか。これは、技術的な可能性も含めて、業界の意見もきちんと踏まえた上で検討する必要があると思います。
次に、禁止期間のみならず、発議後から投票日までのインターネット広告について、プラットフォーム事業者が守るべき、放送法四条のような政治的中立性を求める一般ルールの必要性であります。これについては、必要だという意見がある一方、そういったルールが果たして可能なのかの議論も必要だと思います。そして、これは国民投票法に限らない議論であります。ちなみに、新聞には放送法四条のような政治的中立義務はかかっていません。
そして、難しいのは、インターネットのプラットフォーム事業者の多くは海外事業者であることが多いために、公的規制やその適切な法執行が果たして可能なのか、できるのかという議論も重要です。欧州では、インターネットのプラットフォーム事業者に対する公的規制の試みが見られる一方で、プラットフォーム事業者等の自主的な措置も取られつつあります。我が国では、公的規制と自主規制とそして協議会によるインターネット広告の充実とを適切に組み合わせていくことが現実的なアプローチだと考えます。
なお、個人が発信主体を明示してSNSで発信するような憲法改正に対する賛否の意見については規制すべきではないと思いますし、できないと思います。そして、個人に限らず、SNS等によるいわゆるフェイクニュースや誤情報の発信の問題も、これも憲法改正に限った問題ではないので、SNS一般の問題として、公職選挙法なども含めて包括的に取り組むべき課題だと思います。リテラシー教育の充実も同様です。
そして、個人の発信を制限できない以上、膨大なフェイクニュースの情報発信に協議会の発信だけで対抗できるのかという疑問もあります。例えば、国民民主党の緊急事態条項は国会機能を低下させ、人権を侵害するものだといったフェイクニュースに対して、広報協議会は果たして十分な対抗をしてくれるのかということは、非常に疑問が残ります。
そこで、少なくとも、協議会に何らかのファクトチェック機能、本体が行うのか、あるいは民間機関との連携、あるいはファクトチェックの一定のルールとかガイドラインを示す、こういったことも新たな協議会の機能として検討すべきだと思いますし、少なくとも現行法にはこういったことが書かれていないので、ファクトチェック機能についても併せて議論が必要だと思います。
最後に、前回の参考人の質疑について一言申し上げたいと思います。
お二人の先生方には改めて感謝を申し上げたいと思いますが、長谷部先生の発言は、立憲主義とはそもそも何なのかということを考えさせられるものでありました。すなわち、四十日や三十日といった憲法に具体的に数字も入って明記されている準則規定は、平時には一〇〇%守らなければいけないけれども、緊急時においては、生き残るのが最優先だから、必ずしも一〇〇%従わなくていいとの主張です。しかし、これはリベラルの皆さんが最も恐れる事態ではないのでしょうか。
つまり、緊急事態においては、既存のルールを行政の解釈で、書いてあるルールを恣意的に拡大してもいいということなので、危険です。この法理が許されるのであれば、例えば憲法九条の規定や解釈は全く意味がなくなってしまいます。国家の存亡をかけた究極の緊急事態が戦争であり、そのときに、国家の生き残りのためであれば、敵基地攻撃どころか、フルスペックの集団的自衛権の行使も今の憲法九条で可能となります。ふだん憲法の条文を守れとおっしゃっている方は、このようなモーリス・オーリウ流の緊急事態の法理を許すんでしょうか。
立憲主義の基本は、まず、憲法に書いてあることをできるだけ書いてあるとおり尊重することではないでしょうか。私も、緊急時には赤信号を無視していいと思います。だからこそ、それを事前に憲法や法律に書いておきましょうと提案しているんです。憲法に書いてあることを緊急事態の名の下に無視することこそ、最も立憲主義に反する行為ではないでしょうか。
できれば、次回、共産党や立憲民主党さんを始めとした各会派の皆さんの意見を伺いたいと思いますので、改めて緊急集会についての集中討議を求めたいと思います。
以上です。
○森会長 次に、赤嶺政賢君。
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
初めに、今も玉木委員からありましたが、緊急事態を理由にした国会議員の任期延長について意見を述べたいと思います。
先週の参考人の意見陳述は、この問題を考える上で大変貴重なものでした。何より重大なのは、国会議員の任期延長が権力の恣意的な延命につながるということです。
長谷部参考人は、緊急時への制度的な対応は平常時とは明確に区別し、臨時の暫定的措置にとどめるべきだとして、参議院の緊急集会を極めて優れた制度と評価されました。その上で、国会議員の任期を延長すれば、任期の延長された衆議院と、それに支えられた従前の政権とが長期にわたって居座り続ける、緊急事態の恒久化を招くことになる、緊急時の名をかりて、通常時の法制度そのものを大きく変革する法律が次々に制定されるリスクも含まれていると警告されました。
さらに、長谷部参考人は、憲法が衆議院の解散の日から四十日以内に選挙を行い、選挙の日から三十日以内に国会を召集することを定めているのは、民意を反映していない従前の政府がそのまま政権の座に居座ることを許さないためだと述べ、衆議院議員の任期を延長し、政権の居座りを認めることは本末転倒の議論だと強調されました。この指摘は、緊急事態条項の議論の本質をつくものだと思います。
これまで述べてきたように、国会議員の任期延長は国民の選挙権の停止にほかならず、国民が政権を替える機会を奪い、国民主権の侵害につながります。長谷部参考人は、緊急の事態においても基本権は可能な限り十全に保障されるべきであり、速やかに選挙を粛々と実施することが要請されていると述べています。この指摘を真摯に受け止めるべきだと思います。
さらに、参考人が強調されたのは、想定外の上に想定外のことを仮定して改憲議論を行うことの問題です。
審査会では、国会議員の任期延長の理由として、東日本大震災やコロナ感染症の蔓延が殊更に強調されています。大石参考人は、災害や感染症などは立法措置によって対応すべきであり、それを全部踏み越えて議論することの問題を指摘されました。長谷部参考人は、衆議院議員の総選挙を行うことが長期にわたって困難な状況やそれを事前に予測できる状況が起こり得るのかと疑問を呈し、慎重に考えるべきだと述べられました。
仮定の上に仮定を置いて議論することの問題は、これまでも、この審査会に参考人として出席した憲法や災害の専門家から繰り返し指摘されてきたことです。この場で何度も紹介したように、東京大学の高橋和之名誉教授は、極端な事例を出して議論をすれば間違う危険性が高いと警鐘を鳴らされました。
しかし、審査会では、こうした専門家の意見を全く無視し、あれこれの事態を仮定して国会議員の任期を延長するための改憲が必要だという議論が繰り返されています。全く通用しない議論だと言わざるを得ません。
そもそも、私たちが繰り返し述べてきたように、国民は改憲を政治の重要課題とは考えていません。今の改憲議論は、安倍首相が二〇二〇年と期限を区切って九条改憲を提示したことが発端です。その下で自民党は憲法審査会を動かしてきました。しかし、改憲を望まない国民の声は大きくなるばかりでした。安倍首相自身が辞職の記者会見で、国民的な世論が十分に盛り上がらなかったと認めざるを得ませんでした。にもかかわらず、岸田首相が任期中に改憲を実現したいと述べていること自体が国民に改憲を押しつけようというものであり、認められません。
五月三日の憲法記念日に合わせて共同通信が行った世論調査では、改憲機運は高まっていないと答えた人が七割を超え、国会と国民の意識の乖離が明らかとなりました。
国民が改憲を求めていない中で、審査会をどれだけ動かそうとも、国民との矛盾は一層深くなるだけだということを強く指摘しておきたいと思います。
次に、国民投票法についてです。
私は、現行の国民投票法については、国民の民意を酌み尽くし正確に反映させるという点で、重大な欠陥があるということを述べてきました。
具体的には、最低投票率の規定がないこと、公務員や教育に携わる者の投票運動を不当に制限していること、改憲案に対する広告や意見表明の仕組みが公平公正なものになっていないことの三点を指摘してきました。
こうした欠陥を放置したまま、自分たちの都合のよい改憲議論だけを推し進めることは幾重にも許されないと指摘し、発言を終わります。
○森会長 次に、北神圭朗君。
○北神委員 有志の会の北神圭朗です。
本日は、私も、国民投票法のネット規制について意見を述べたいというふうに思います。
これは、階幹事がおっしゃったようなフェイクニュースとかアテンションエコノミーとかマイクロターゲットだけじゃなく、やはり我が国の選挙、国民投票だけじゃなくあらゆる選挙について、外国からのよからぬ意図を持った偽情報の問題に備える必要があるというふうに思います。
これを言うと、北神もとうとう陰謀論者になったと皆さん思われるかもしれませんが、いわゆるサイバー攻撃の最たるものが偽情報によって国民を分断するというのは、ロシアが一番得意なんですけれども、世界的な常識になっていますし、今まで日本語の壁によってある程度守られてきましたけれども、これも、玉木委員が大好きなチャットGPTの翻訳機能もかなり飛躍的に向上して、これがなかなか正確な日本語になるということで、私は非常にこの問題について、もちろんこれは国民投票だけじゃなくあらゆる選挙に関連しますけれども、だからといって放置していいのか、憲法改正をこのままの状態で、この法案でいくべきなのかということは、やはり真剣に議論すべきだというふうに思います。
この点について、階幹事は、内外のフェイクニュースの蔓延により憲法改正に関する世論が誤った方向に導かれる可能性が増しており、民間のファクトチェック機関から国民投票広報協議会に対してフェイクニュースの疑いがある情報について照会があった場合に、国民投票広報協議会が現に保持する情報を提供するなど、両者が連携することを可能とする規定を設けるといった具体案が示されました。
私も、民間のファクトチェック団体との連携は重要だというふうに考えます。ただ、我が国のファクトチェック団体の実情を見てみますと、まず、そもそも量的に、数的に心もとない。
世界のファクトチェック団体を研究する米国のデューク大学のリポーターズラブという機関によりますと、本年五月現在、世界で登録されているファクトチェック団体の総数は四百団体となっています。そのうち、北米に八十三団体、欧州には百十団体あり、韓国の十三団体を筆頭にアジアでも九十団体もありますが、我が国で登録されている団体は五団体のみとなっています。五団体で十分じゃないかと思われる方もいるかもしれませんが、この中には、自らファクトチェック活動を行わず大手メディアに調査を依頼するような形の団体も実は含まれているということです。
東京工業大学の准教授であります西田亮介先生は、こうした我が国のファクトチェック団体の現状について論文を書いています。その一説を引用しますと、
日本における偽情報対策は、表現の自由に強く配慮し、もっぱら民間の自主的な規律を重視する欧州型の対策にも似た標準的な規制枠組みを採用している。他方で、実務的にみれば、欧州各国における制裁金等の強力な規制ツールが乏しいことに加えて、偽情報を検証する民間のファクトチェック団体の存在感も小さく、プラットフォーム事業者とファクトチェック団体の本格的な協働も機能しているとは言い難い現状がある。
理論的には民間の自主的な規律を重視するという至極まっとうな選択をしながら、実務的な視点では、未だに強力なマスメディアと、脆弱なネット・メディアと非営利団体といった日本独特のメディア・エコシステムの実状が対策の実効性に懸念をもたらしているようにも見える。
と分析されています。
要は、我が国のファクトチェックの担い手は、体制面でも能力面でも必ずしも十分ではないという指摘だと思います。このことと、冒頭申し上げた、数も少なく多様性も確保されていないことからして、果たして、国民投票広報協議会と民間団体が連携するだけで氾濫する偽情報に対応し切れるのかという疑問を抱かざるを得ません。
他方、アメリカ、イギリス、ドイツ等では、民間機関だけでなく、政府としても、偽情報による干渉、特に選挙に対する干渉について何らかの対策を講じています。例えばドイツでは、内務省の連邦選挙管理委員会が選挙過程全般に関係する偽情報を特定し、これに対処する責任を負っており、特定した情報についてはファクトチェックサイトを通じて公表しています。
以上の国内外のファクトチェック体制の実情を踏まえると、我が国でも、民間に任せるだけではなく、政府か、あるいは公的機関か、例えば国民投票広報協議会において、ファクトチェック機能を担わせる必要があるのではないか。同時に、意図的に偽情報を植え付ける外国からのサイバー攻撃に対しても、政府の関係部署との連携も併せて確保すべきだと思います。さらに、国民投票広報協議会の機能として、各政党の主張を大量にインターネットに流すことにより、正確な情報を広く、そして頻繁に普及させることも検討すべきだというふうに考えています。
どうも、憲法九条あるいは緊急事態条項の議論をしていても、我が国では外国よりも自分たちの政府や公的機関の関与を疑い、忌み嫌う向きもありますが、逆に、民間だからといって思想的、信条的に公正中立とは限りません。諸外国では、官と民とで偽情報を公表し説明することを通じて、多様性があるがゆえに幅広く選択可能なファクトチェックの言論空間がつくられています。やはり、多様性が確保される中で、可能な限り正確な情報が幅広く流通して初めて、偽情報がある程度淘汰されていくのではないでしょうか。
同時に、我が国でも、外国からの選挙介入を突き止める能力の向上や有権者に正確に事実を伝達する体制が強く求められます。公正な選挙の実現、とりわけ憲法改正に関する国民投票は民主主義の根幹であります。国民の自律的な意思が阻害されないためにも、我々も責任を持ってより積極的な姿勢で臨むべきと申し上げて、私の意見とします。
―――――――――――――
○森会長 次に、委員各位による発言に入ります。
発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。
発言は自席から着席のままで結構でございます。
なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。
発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。
また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。
発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。
それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。
○神田(憲)委員 自由民主党の神田憲次です。
本日は、国民投票におけるCM規制に関し、発言をいたします。
CM規制の在り方については、既に三年前、我が党の新藤筆頭が、考えられる国民投票におけるCM規制の在り方として論点整理メモを提示されております。その整理を踏まえつつ、改めて、国民投票の公平公正を担保するためのCM規制のポイントを考えてみたいと思います。
まずは、国民投票の公平公正を担保するためのCM規制の在り方として、法的規制が考えられます。
この法的規制について、あらゆる主体について法的にCMを禁止するという考えを聞くこともありますが、憲法で保障された表現の自由と国民投票の公平公正のバランスを図ることについて、よく検討すべきではと考えております。
また、政党のCMを規制することについては慎重な議論が必要です。国会における議論を一番よく知っている政党が、国民投票の公平公正を担保しつつ、国民に対し国会での議論を知らせていくことは大変重要なことです。政党によるCMの出し方についても、今後、審査会で議論を深めていく必要があります。
なお、市場規模において放送CMを超えるネットCMの公平公正をどのように図るかについても大変重要な問題です。ネットCMは出し手や方法が多岐にわたり、実効性ある規制がどこまで可能か、難しい問題が多く存在します。インターネットの根本的な思想は、世界中の誰もが自由に意見表明できるということであることも踏まえておく必要があるかと思います。
次に、国民投票の公平公正を担保するためのCM規制の在り方として、自主的取組が考えられます。この自主的取組については、CMの受け手側が行う取組と出し手側が行う取組が考えられます。
まず、受け手側については、放送事業者による自主的取組が考えられます。この点につきましては、既に民間放送事業者において自主規制のガイドラインが量的なものも含めて整備されていることが確認されております。
令和四年四月二十一日の参考人質疑では、我が党の新藤筆頭からの、民放連は量に特化した自主規制ではないが、量も考慮要素の一つとした自主規制をもう既に準備していると理解してよいかとの質問に対し、民放連の永原専務理事が、そのとおりである旨明確に述べており、放送事業者については既に一定の整理がなされていると理解しております。
とすると、放送CMについて残る課題は、出し手側の自主的取組として、我々政党側が自主的にどのようにCMの公平公正を図っていくかということになると思います。
また、ネットCMにつきましては、大手プラットフォームなどが加盟する業界団体も存在しており、ネットCMに関する受け手側の自主的取組も更に検討していく余地があると思われます。出し手である我々政党側の自主的取組については、放送CMと同様に、今後、更に議論を深めていきたいと考えております。
第三に、これまで述べた法的規制と自主的取組の折衷的な方法として、自主的取組を後押しするための法的措置を定めるという方法があります。例えば、各事業者の自主的取組を促す規定を定めることや、各事業者の自主的取組に関するガイドラインの作成といった方法が考えられます。
最後に、国民投票広報協議会の広報活動を充実強化する方法があります。これは、冒頭、新藤筆頭からの詳細な説明があったところです。
以上、CM規制について考えられる四つのポイントを述べてまいりましたが、これまで繰り返し議論されているように、国民投票法の基本的な考え方は、国民投票運動はできるだけ自由にということでありまして、規制の在り方を考えるに当たっては、国民投票運動の自由と国民投票の公平公正のバランスを図ることが重要です。
本日述べた四つのポイントを念頭に置きまして、このバランスをいかに図っていくかという観点から、憲法審査会において建設的な議論が更に進んでいくことを改めて求め、私の発言といたします。
○奥野(総)委員 立憲民主党、奥野総一郎でございます。
まず、国民投票法に関して申し上げますが、制定後十年以上がたって、当時想定していなかったグローバル化やAIの実装など、社会環境の大きな変化が生じています。ブレグジットやアメリカ大統領選挙、これはトランプが勝ったときということになるんでしょうけれども、見てください。
我が国の憲法改正国民投票でもこうした事態は起こり得ます。附則四条というのは、このような状況を踏まえて、施行後三年をめどとして、投票環境向上のための措置だけではなく、公平公正確保のため、CM規制、ネット規制、そして国民投票運動等の資金規制等について、必要な法制上の措置その他の措置を講ずることを求めたものであります。
こうした立法趣旨から、附則四条に基づく措置が講じられるまでは憲法改正発議はできません。この点は、附則四条の審議の際に、発議者そして原案作成者としての私の答弁としても残っているところであります。
また、この施行後三年の期限は二〇二四年九月であり、来年の通常国会までに必要な法制上の措置その他の措置を講じなければならないということになります。憲法改正に真剣に取り組もうというのであれば、国民投票法改正の検討をしっかり急ぐべきであります。
特に、附則四条二号ロの国民投票運動等の資金に係る規制については、先ほど三木委員からも発言がございましたけれども、ほとんど議論が行われていません。これは、海外では実際に資金規制が行われて、国民投票が実行されています。
南部義典先生によれば、EU離脱の際のイギリス、ブレグジットの国民投票では、運動期間中、一万ポンド、これは今、レートが円安で一ポンド大体百七十円ですから、今のレートだと百七十万円ぐらいですね、を超える支出を見込む個人、団体は登録義務があって、登録をすると、登録運動者には支出上限額が七十万ポンドという上限が定められていました。そして、この登録運動者の中から、賛否それぞれについて主導運動者、運動を主導する者の認定を行って、主導運動者になると七百万ポンドまで支出できました。これは十数億円ですかね、支出ができることになっていました。
そして、登録運動者は、五百ポンド以上の全ての寄附及びローン等について、これは投票期日前に、先ほど投票後で意味がないとおっしゃいましたけれども、投票期日前に寄附については分けて報告するようになっていました。そして、支出については投票期日後に報告する。それぞれ報告が義務づけられていました。そして、外国人、外国法人による寄附は原則禁止でありました。
ニュージーランドの国民投票でも、ほぼ同様の仕組みが取られているというふうに理解しています。
そして、オーストラリアでは、今年の三月に成立した改正国民投票法で、期間中の一定額を超える寄附、支出に関する報告書の中央選管への提出、そして、外国人の百豪ドル、オーストラリア・ドル、これは、今、一オーストラリア・ドル九十円ぐらいなんですかね、一万円弱を超える額の寄附の禁止を定めていますということであります。
資金の多寡で国民投票の結果が左右されることは防がなければならない、これは皆さん、ほぼ共通した合意だと思うんですが、そして同時に、憲法改正に対する外国人それから外国政府の干渉が絶対にあってはならないということだと思うんですよ。そのためにどうするかということでありまして、先ほど実効性云々という話もありましたが、実際に国民投票が行われてきたこうした国々の例を参考に、どうすれば実効性のある資金規制ができるのか、きちんと議論をした上で結論を出すべきだと思います。
運動資金規制について、集中討議及び参考人質疑を求めたいというふうに思います。
それから、次に、先週の参考人質疑について少々申し上げたいと思いますが、まず、両参考人が意見が一致したのは、任期満了後の総選挙の実施不能の場合にも参議院の緊急集会の招集が憲法上可能であるということは、両参考人は一致をしていました。ただし、七十日を超えて緊急集会が開催できるかどうかについては意見が分かれました。
大石先生は、参議院の緊急集会が両院同時活動の原則に対する例外を成すものであることを考えますと、その存続期間は、憲法上、やはり最大七十日という制約に服すると考えるのが合理的とおっしゃっておられました。一方、長谷部先生は、憲法はこれを容認しているとおっしゃられました。その理由というのは、七十日という制約は、現在の民意を反映していない従前の政府がそのまま政権の座に居座り続けることのないようにとの考慮からであり、その間接的、派生的な効果にすぎない。そして、従前の衆議院の任期を延長する、そしてさらに、従前の政権の居座りを認めるというのは、まさに本末転倒の議論ではないかと断じておられました。いずれの先生の議論も私は一理あると思います。
そして、選挙困難事態に関しては、参考人質疑では余り議論になりませんでした。長谷部先生からは、衆議院の定足数を確保できないような事態が本当に起こり得るのかという御趣旨の発言がございましたが、この点に関連して、一部選挙区が選挙困難事態となった場合、北側先生なんかもおっしゃったと思いますが、全国一律に選挙そのものを延期すべきかどうか、そして、どのような場合に選挙全体の延期ができるのかという点について、もう少し詳しく議論をすべきであります。
また、衆議院が不存在となるような選挙困難事態があるとして、それは誰が認定するのか。私は、これまでも、憲法裁判所等の司法を関与させるべきと申し上げてきましたが、この点についても議論が必要だと思います。
選挙困難事態の議論を緊急集会と併せて深める必要がありますので、この点についても質疑を求めたい、集中討議を求めたいと思います。
大切なことは、何が何でも緊急集会によるとか、何が何でも議員任期延長によるということではなくて、どうすれば危機に際して民主的な正統性を保ちながら国会機能を維持できるような制度をつくるか、制度論なんですよね、だというふうに思います。
参議院と合同で議論をして、これはやはり結論を出すべきなので、長期の選挙困難事態についてきちんと議論をして結論を出すべきだと思います。しっかり議論を詰めていきたいと思います。
私からは以上です。
○岩谷委員 日本維新の会の岩谷良平です。
本日、私の手元には、六百八十三ページに及ぶ衆議院憲法調査会報告書があります。これは、御案内のとおり、平成十二年の憲法調査会設置時から五年余りの間、中山太郎会長の下で、自民党も公明党も当時の民主党も含む各党が加わって調査、議論し、作成されたもので、自民党の新藤筆頭幹事や立憲民主党の中川筆頭幹事も当時委員を務められたと承知をしておりますが、総計四百五十時間を超える精力的な調査、議論をされた当時の委員の皆様の大変な御努力の結晶だと伺っております。
この報告書の中で、何々とする意見が多く述べられたとの記述がありますが、これは、おおむね三分の二以上の委員が述べた意見を多く述べられたと記載しているものです。この点に関して、立憲民主党の枝野議員も、去る三月三十日の本審査会において、報告書には合意形成の見通しが示されている、幅広い、真の合意形成に向けて建設的な議論を進めるのであれば、報告書がスタートラインになることは間違いない旨を述べておられることから、多く述べられたで取りまとめられた論点について、具体的な改正作業に入っていくことに異論はないものと思われます。
そこで、この報告書を見ますと、緊急事態条項について、憲法に規定すべきであるとする意見が多く述べられたとあり、その論拠として、非常事態においては、内閣総理大臣に権限を集中し一元的に事態を処理し、人権を平常時よりも制約することが必要となる場合がある、そのような措置を発動し得る要件、手続及び効果は憲法に規定すべきである。地域紛争、テロリズムの蔓延等、現代社会は多様な危険を内包しているにもかかわらず、非常事態への対処規定が設けられていないのは憲法の欠陥である。非常事態への対処に当たっては、為政者に超法規的措置の発動を誘発することが多く、それを防止するためには、憲法保障の観点から、非常事態に関する規定が必要であるといったものが挙げられています。
このように、非常事態、すなわち緊急事態条項について、憲法に規定すべきであるとする意見が多く述べられたとあるにもかかわらず、それから十八年が経過し、いまだに憲法改正発議が行われていないどころか、緊急事態条項創設に消極的あるいは否定的な議論を続けられる党がいらっしゃるということに驚きを禁じ得ません。本報告書とこの間の議論を踏まえて、結論を出すべきときが来ていると考えます。
次に、この報告書では、憲法裁判所についても、設置すべきであるとする意見が多く述べられたとあり、その論拠として、司法消極主義により、司法権が行政権をチェックする機能を果たしておらず、また、付随的違憲審査制の下では、最高裁判所に憲法の番人としての積極的な役割を期待することは無理である。最高裁判所が憲法判断に消極的であるため、行政の一部局である内閣法制局に事実上の憲法解釈権が委ねられており、その解釈が有権解釈として扱われているため、憲法解釈が恣意的なものとなりやすい。政策的課題として必要な法律が憲法裁判所によって憲法違反とされた場合、国会は、その政策を実施するために、憲法改正を検討するという関係こそが権力分立の本来の在り方ではないかといったものが挙げられています。
憲法裁判所が必要だと多く述べられたにもかかわらず、この間二十年近く、制度設計の詳細について議論がなされていないどころか、憲法裁判所設置の是非すらも結論を出さないまま今に至り、当時、影も形もなかった我々維新の会が最も積極的に憲法裁判所の設置を主張しているという今の状況は、ある種滑稽で、本報告書取りまとめ以降、国会議員は一体何をしていたのかと批判を免れません。
本報告書がまとめられた平成十七年当時、私は二十五歳で、ちょうど大学院で法律を学んでいた頃でした。十八年たち、学生だった私は衆議院議員に当選させていただき、本審査会の委員になってみたら、私が学生だった頃の十八年前と同じような議論ばかりがいたずらに繰り返されている現実を目の当たりにして、愕然としています。
岸田総理は御自身の任期中に憲法改正を目指すとおっしゃっておられますが、そうであるならば、自民党さんは憲法改正発議に向けたスケジュールをお示しされるべきではないでしょうか。
以上、本報告書をまとめられた各党各委員の皆様に敬意を表するとともに、改めてその重みを我々は自覚し、もう結論を出すべきときが来ているということを申し上げまして、私の発言を終わります。
ありがとうございました。
○北側委員 公明党の北側一雄です。
今日、国民投票法についての議論が集中して行われております。
冒頭、新藤委員から、国民投票広報協議会についてのお話がございました。そして、三つの規程、そして法改正も含めまして、是非事務方でたたき台を作ってもらいたい、こういうお話がございました。私も大賛成でございます。是非とも事務方の方で、国民投票広報協議会の役割等について具体的な規程案等のたたき台を作っていただいて、是非幹事会等で議論をさせていただければと思います。
やはり、広報協議会で何ができるのか、どういう役割を持たせるのかということがだんだん議論がなされていきますと、そもそも今一番問題になっております広告規制に対してどうしていくのかということについても、その議論の大きな参考に、また前提になってくると思いますので、是非、広報協議会についてのたたき台を事務方の方に、私からもお願いを申し上げたいと思います。
もう一点、今日申し上げたいのは、先週の参考人質疑についてでございます。
両先生には本当に、お忙しい中出席をしていただいたことに感謝申し上げたいと思いますが、参考人の御意見の中で幾つか、私からしますと少し違和感を感じるところがありました。その最も最たるところは、長谷部先生の御発言の中で、憲法五十四条一項の趣旨、目的について触れられたところなんですね。
憲法五十四条が四十日そして三十日と日数を限っているのはなぜかと申しますと、これは長谷部先生の御発言ですが、解散後も何かと理由を構えていつまでも総選挙を実施しない、あるいは総選挙の後いつまでも国会を召集しないなど、現在の民意を反映していない従前の政府がそのまま政権の座に居座り続けることのないようにとの考慮からであります、このような御発言があったんですが、恐らくここにいらっしゃる議員の皆さんも、そんなことないよと思っていらっしゃる方が多いんじゃないかと思うんですね。それほど日本の民主主義というのは熟度がないのか、そのように思われているのかと私なんかは感じました。
そもそもこの憲法五十四条一項の目的、趣旨というのは、何度も申し上げてまいりましたが、日本の憲法の国会のところは、二院制であること、そして同時活動の原則、衆参の同時活動の原則、これが大原則なわけですね。この大原則があるんだから、衆議院が不在の期間というのは当然のことながらできるだけ短くしないといけない、本来の国会に早く戻さないといけない、だから、この四十日、三十日という規定があるわけで、あくまで目的というのは、国会の二院制、同時活動の原則、本来の憲法で定められた国会に戻すというところに目的があるわけであって、長谷部先生のおっしゃっているような、現在の民意を反映していない従前の政府がそのまま政権の座に居座り続けることのないようにという趣旨というのは、少しちょっと違うんじゃないのかという印象を私は受けました。
これは、恐らく長谷部先生も、それからほかの憲法学者の先生方も多くはそうだと思うんですが、そもそも緊急集会の役割、権限というのはオールマイティーじゃないんだということはほぼ共通におっしゃっているんですね。例えば、内閣総理大臣の指名は、これは緊急集会ではできないよね、それから緊急性の乏しい条約の承認とか、それから憲法改正国民投票の発議、憲法改正の発議、これはやはり緊急集会ではできないよね等々、そもそも緊急集会には一定の制約があるんだということはほぼ共通におっしゃっている。その緊急集会、適用範囲というのはどこなのかという議論を私どもはしてきたわけでございます。
国会というのは、我々議員任期の延長の大きな大前提として、どんな緊急事態が生じようとも国会の機能は維持をしなければいけないということが趣旨なわけでございますけれども、そこで言う国会というのは、衆参そろった国会、そして同時活動の原則がなされている国会、この国会、憲法上定めているこの国会の機能を維持をしなければいけないという趣旨でございまして、それが大原則だというふうに思うわけでございまして、五十四条一項の趣旨もそういう目的で理解をすべきだというふうに思っています。
先週、あのような形で参考人質疑、両先生から御意見を賜ったわけでございますので、是非とも次回は、緊急集会の役割、意義、適用範囲についてもう一度しっかり審査会で議論をさせていただければと思いますので、よろしくお願いします。
○中西委員 会長、御指名ありがとうございます。
自由民主党の中西健治です。
本日の審査会でも、新藤筆頭、そして維新、公明の委員からも指摘がありました、言及されています、昨年四月に共同提出されている、自民党、日本維新の会、公明党及び有志の会の四会派で共同提出し、趣旨説明も行われたまま審議されていない国民投票法改正法案、いわゆる三項目案の子細について発言させていただきたいと思います。
国民投票法に関しては、投票の外形的事項である投票環境整備については公職選挙法並びにすべきとの考え方にのっとり、平成二十八年の公職選挙法改正の内容を国民投票法に反映させる、いわゆる七項目案が、提出時より三年の期間を経て、一昨年の令和三年、可決、成立しております。
その時点で、公職選挙法については更なる二項目の改正が行われており、そこで、七項目案の附則において、その二項目の内容を国民投票法に反映させることについての検討条項が設けられております。加えて、昨年の令和四年には、更に公職選挙法の改正が成立いたしまして、一項目追加になっていますので、合計三項目について、国民投票法のアップデート、更新が必要な状況になっております。
これより、三項目案の主な内容を改めて御説明させていただきたいと思います。
まず、第一の項目は、開票立会人の選任に係る規定の整備であります。
平成二十九年の衆議院議員総選挙において、悪天候によって離島から投票箱を運べなかったという事例を踏まえまして、安全かつ迅速な投票を行うという観点から、投票日に近接して現地で開票所を設けることとなった場合の開票立会人の選任規定を追加するとともに、併せて、開票立会人の選任要件を緩和することとしております。
次に、第二の項目は、投票立会人の選任要件の緩和であります。
投票所の円滑な設置及び運営を図るため、投票立会人の選任要件を、各投票区における投票人名簿に登録された者から、投票区に限らず投票権を有する者に緩和することとしています。
最後に、第三の項目は、FM放送の放送設備による憲法改正案の広報のための放送の追加であります。
これは、現在AMラジオ放送により行われている憲法改正案の広報のための放送、これを、基幹放送事業者のAM放送からFM放送への転換、これに伴いまして、FM放送でも広報を行えるようにするものであります。
以上の説明のように、この三項目案は投票の外形的事項を整備するものであり、その内容については、公職選挙法改正の審議時にも各会派から特に異論もなく、早急に措置すべきものとされたところであります。
こうした投票環境の利便性を向上させる改正は国民投票の際にも反映すべきものであり、内容に異論がないにもかかわらず、残念ながら、立憲民主党と共産党の反対により、審議が行われないまま、昨年の趣旨説明から既に一年が経過しております。
なぜ審議に入れないのか、明確な理由を示していただきたいと考えていますが、また、これとは別に、一部の意見として、三項目案を成立させてしまうと、国民投票法に関する議論が蓋をされてしまい、それ以上の改正が行われなくなるのではとの声を聞くこともあります。
しかし、これまでの審査会において委員の方々から何度も言及されてきましたように、国民投票法には、投票環境整備などの外形的な事項と、CM規制など投票の質の向上に関する事項の二つの要素があり、どちらかの議論が終われば他方が不要になるものではなく、いずれも、時代や社会の変化を踏まえ議論しなければいけない事項であると考えております。
特に、投票環境整備については、今後も公職選挙法の改正により国民投票法に反映させるべき項目が発生すると予想されます。選挙における投票環境の整備は常に見込まれることであり、内容に特に問題がなければ、公選法の改正に合わせ、国民投票法についても機械的に反映させるような仕組みづくりを検討すべきではないかと提案させていただきます。
そもそも、趣旨説明済みの法案を審議することは国会の当然の責務であります。既に趣旨説明から一年が経過した三項目案については速やかに処理すべきであるということを強く申し上げ、私の発言とさせていただきます。
○本庄委員 立憲民主党の本庄知史です。
まず、本日の主題である憲法改正国民投票に関し、安全保障との関係について申し述べます。
一昨日の本会議で防衛財源確保法案が可決されました。本法案の正式名称は、我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案です。
しかし、それは名ばかりであり、実態は、防衛力の抜本的な強化にも、必要な財源の確保にもならない、重大な欠陥法案です。にもかかわらず、政府・与党は、防衛費倍増、GDP比二%といった数字ありきで、他の政策との優先順位やバランス、財政状況も考慮せず、五年で四十三兆円もの常軌を逸した予算をつぎ込もうとしています。
総合的な見地から安全保障上なすべきことは、ほかに幾らでもあります。その最たるものが、憲法改正国民投票に外国政府や外国資本が介入し、国家国民の意思決定が支配されることを未然に防ぐための措置です。とりわけ、インターネット、SNS等、オンライン広告の規制は極めて重要です。しかし、テレビ、ラジオ、新聞広告と比べても、オンライン広告の規制はほとんど議論がなされていません。三月の当審査会でも述べましたが、外国勢力によるフェイクニュース、偽情報の流布、巨額の資金を用いた世論操作等も想定される中、これらを規制するための国民投票法の改正こそ、今、国会で行うべき安全保障論議です。
次に、今回の防衛財源確保法案に関連して、財政民主主義について申し述べます。
四月の当審査会でも指摘いたしましたが、憲法が規定する財政民主主義は、今、空文化しています。その最たるものが巨額の予備費です。予備費は、予算審議の中で具体的な使途が議論されず、事後に形式的な議決がなされるのみで、事実上政府の自由裁量となっています。
例えば、昨年度、二〇二二年度は、当初予算と補正予算で、合計約十二兆円もの予備費が計上され、そのうち四兆円近くが不用額となる見込みです。もはや、憲法第八十七条に規定する予見し難い予算の不足に充てるためと言える状況ではありませんが、本年度予算でもまた五・五兆円もの予備費が計上されています。しかも、その財源は実質的には赤字国債です。
今回の防衛財源確保法案は、この巨額の予備費の不用額が決算剰余金として防衛財源になるという、まるで国家的マネーロンダリングのような仕組みを採用しています。巨額の予備費を計上し、事実上それを別の政策に流用するこの法案は、憲法第八十三条、第八十五条に規定する財政民主主義の趣旨に反するものです。また、今後五年間にわたって財源と使途を縛るという点では、憲法第八十六条、予算単年度主義を有名無実化しかねません。税金の使い道は国民を代表する国会で決めるという財政民主主義は、今や瀕死の状態です。この認識を当審査会で共有し、財政民主主義の在り方について、集中的に討議すべきです。
最後に、この防衛財源確保法案と表裏一体であるミサイル反撃能力、敵基地攻撃能力について申し述べます。
本件については、私は三月と四月に二度取り上げましたが、憲法上の重要な論点を多く含んでいるにもかかわらず、その後も全く議論が深まっていません。
例えば、憲法上保持が許される、戦力に当たらない必要最小限度の実力としての反撃能力とは、質、量共にどういうものなのか。日米同盟に基づき盾と矛の役割分担がある中で、他に適当な手段がないとして憲法上許される反撃能力の行使とはどういう場合なのか。政府は、存立危機事態、すなわち、限定的な集団的自衛権としての反撃能力の行使も可能としていますが、我が国自身が武力攻撃を受けていない中での反撃能力の行使が果たして限定的な集団的自衛権の行使と言えるのか。相手の攻撃の着手段階での反撃能力行使は先制攻撃に当たらず、国際法に違反しないとも政府は言っていますが、技術的、能力的な可能性はもちろん、そもそも他国の意図や行動を我が国が立証できるのか。
そして、より基本的な問題として、従来想定していた我が国の領土、領海、領空に対する侵害を物理的に排除することを専らとする武力行使と、単なる物理的な排除にとどまらず、相手国の領土、領海、領空に対して武力行使することを前提としているミサイル反撃能力は、同じ必要最小限度の実力や専守防衛といっても、その合憲性の基準や論理構築はおのずと異なるのではないか。
こういった反撃能力の憲法上の論点について、政府は正面から答弁していませんが、私は、相当深い議論が必要であり、それがなければ国の行く末を誤りかねないと危惧しています。
以上、三点申し述べました。
憲法改正国民投票への外国勢力の介入防止、財政民主主義の在り方、そして反撃能力の憲法上の課題につき、それぞれ本審査会で集中的に討議するよう会長にお取り計らいをお願いして、私の発言といたします。
以上です。
○森会長 ただいまの件につきましては、幹事会等で協議をいたします。
予定した時間が経過いたしました。
この討議の取扱いについては、ただいま与野党の筆頭間で協議をいたしておりますので、今後については、これを踏まえ、幹事会等において対応をいたしたいと存じます。
これにて討議は終了いたしました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時三十五分散会