第146回国会は、平成11年10月22日に召集詔書が公布され、同月29日に召集された。
召集日の衆議院本会議において、議席の指定を行い、会期を同年12月15日までの48日間と議決した後、議院運営委員長外15常任委員長の選挙を行い、従来から設置されている災害対策特別委員会外7特別委員会を設置した。
この国会は、「中小企業国会」と位置づけられ、経済新生対策のための平成11年度第2次補正予算及び中小企業関連法案等を審議するために開かれたものであるが、衆議院比例代表定数削減の公職選挙法改正案、年金制度改正関連法案、原子力災害対策特別措置法案及び無差別大量殺人行為団体規制法案なども主要な議題となった。
なお、今国会から国会審議の活性化の一環として政府委員制度は廃止され、政府の答弁は大臣及び政務次官が行うことになった。
召集前の9月21日には、自民党総裁選挙が行われ、小渕総理大臣(自民党総裁)が再選された。小渕総理大臣(自民党総裁)は、自由民主党、自由党及び公明党・改革クラブの自自公連立政権樹立に向けた政策協議に着手し、衆議院議員の総定数500人から50人削減することとし、そのうち比例代表定数を20人削減し、残りの30人削減については小選挙区などを中心に平成12年国勢調査結果を踏まえて所要の法改正を行うことで合意され、連立政権を樹立することになった。
また、次期通常国会から、総理大臣と野党党首が国政の重要問題について直接討論を行う場として「国家基本政策委員会」が、英国議会のクエスチョンタイムをモデルとして衆参両院に設置されることとなった。今国会では、試行的に11月10日及び17日の両日、小渕総理大臣と民主、共産、社民の野党3党首の党首討論が、衆参両院による予算委員会合同審査会で行われた。
召集日当日、開会式に引き続き、衆参両院の本会議において、小渕総理大臣の所信表明演説が行われた。
この中で、小渕総理大臣は、安定した政局の下で、政策を共有できる政党が互いに切磋琢磨し、より良い政策を練り上げ相協力して実行に移していくことが国民や国家のためであると考え、3党派の広範な政策合意をもととして、連立内閣を樹立したと述べた。
次に、核武装等をめぐる西村前防衛政務次官の発言問題に関し、任命権者として国民に対し陳謝し、非核三原則の堅持を言明した。
また、経済政策では、景気は厳しい状況を脱していないものの、緩やかな改善を続けているとして、平成11年度実質経済成長率0.5%の達成に自信を表明し、その上で、中小企業対策を日本経済新生のカギと位置づけ、中小企業支援策などを盛り込んだ事業規模で10兆円超の経済新生対策を実施すると述べた。
さらに、危機管理体制に関しては、国民一人一人の生命や安全な生活を守ることは政治や行政が負うべき極めて重要な課題とし、茨城県東海村の臨界事故を教訓とした原子力に関する安全規制及び防災対策の強化のための法案や、オウム真理教を念頭に置きつつ、無差別大量殺人行為を行った団体に対する規制法案を提出する方針を示した。また、介護保険制度については、予定通り平成12年4月からの実施に向け、準備に万全を期する考えを表明し、その負担軽減等の制度見直しについては、与党間の協議を踏まえ適切に対応すると述べた。
また、沖縄が抱える諸問題の解決と、来年の九州・沖縄サミットの成功に向け、全力を挙げる決意を表明した。
これに対する衆議院本会議の各党代表質問は、11月2日に行われ、自自公連立問題、企業・団体献金、介護保険、社会保障、オウム対策、有事法制、商工ローン、原子力行政及び財政再建などについて論議が展開された。
参議院においては、同月4日に各党代表質問が行われた。
政府は、11月25日に経済新生対策を実施するための総事業規模約18兆円の平成11年度第2次補正予算を提出し、同日、衆参両院の本会議において、大蔵大臣の財政に関する演説が行われ、12月1日には、各党の代表者による質疑が行われた。
第2次補正予算は、衆議院予算委員会で、12月1日に提案理由の説明を聴取した後、同月6日、7日の両日質疑を行い、7日の委員会で賛成多数で可決され、同日の本会議で可決、同月9日の参議院本会議で可決、成立した。
中小企業を我が国のダイナミズムの源泉としてその基本理念を「格差の是正」から「独立した中小企業の多様で活力のある成長発展」へと転換し、それに伴う基本方針、基本施策及び関係法律の規定の改正の措置を講ずる中小企業基本法改正案は、11月5日の衆議院本会議で趣旨説明を聴取した後、商工委員会において、同月9日に提案理由の説明を聴取し、質疑入りした。同月11日には、参考人質疑を行い、同月16日に原案のとおり可決された。同日の本会議で可決、同月25日の参議院本会議で可決、成立した。
中小企業の事業活動の活性化を図る中小企業事業活動活性化法案及び新たな事業分野の開拓を図る事業活動を支援するための措置を講ずる新事業創出促進法改正案の両案は、12月1日に商工委員会で提案理由の説明を聴取し、質疑入りした。同月3日には、参考人質疑を行い、同月8日に原案のとおり可決された。同月9日の本会議で可決、同月14日の参議院本会議で可決、成立した。
将来世代の保険料負担の上昇を抑制するため、給付水準の適正化及び老齢厚生年金の支給開始年齢の引上げ等を行い、併せて、国民年金及び厚生年金保険の積立金を自主運用することにより、年金制度の長期的な安定等を図ることを目的とする国民年金法等改正案、年金資金運用基金を設立することにより、年金資金運用の透明性等を確保する年金資金運用基金法案及び年金福祉事業団を解散させるとともに、同事業団が行ってきた年金担保融資事業を社会福祉・医療事業団において新たに実施させる等の年金福祉事業団解散及び業務承継法案の年金制度改正関連法案は、11月16日の衆議院本会議で趣旨説明を聴取し、厚生委員会において、翌17日に提案理由の説明を聴取した後、質疑に入った。上記3案について、同月26日、質疑終局の動議が可決され、採決を行ったところ、国民年金法等改正案は、賛成多数で修正議決され、その他の2法案もそれぞれ可決された。
この採決過程に、民主、共産、社民の野党3会派が反発し、審議を全面的に拒否したため、国会は空転したが、11月29日、伊藤議長が審議再開のための裁定を示し、これを与野党が受け入れ、国会は正常化した。議長裁定により、厚生委員会で年金制度改正関連法案の補充的質疑等を行い、国民年金法等改正案は、12月7日、本会議において委員長報告のとおり修正議決され、その他の2法案もそれぞれ可決されたが、参議院で継続審査となった。
第146回国会では、その他にも平成13年実施の中央省庁等改革の一環として、中央省庁等改革関連法案の施行のための中央省庁等改革関係法施行法案及び独立行政法人個別法59法律案等、無差別大量殺人行為を行った団体に対する規制措置を定める無差別大量殺人行為団体規制法案、茨城県東海村の核燃料施設での臨界事故を受けて、原子力に関する安全規制及び防災対策強化を図る原子力災害対策特別措置法案などが成立した。
会期終了日前日の12月14日、政治倫理確立・公職選挙法改正特別委員会において衆議院比例代表定数を50人削減する公職選挙法改正案の審議に入り、同日、質疑終局の動議が可決され、採決を行ったところ、同法案は、比例代表定数を20人削減する等を内容とする修正を加え、賛成多数で修正議決された。野党側は、採決の無効を伊藤議長に申し入れた。伊藤議長は同法案の採決を議長預かりとする裁定を示し、与野党ともにこれを受け入れ、衆議院で継続審査となり、次期通常国会で再び審議することとなった。翌15日の本会議において、茨城県東海村核燃料施設事故による被害者救済に関する決議案が全会一致で可決され、また、両院の本会議で閉会中審査の手続きや請願採択など一連の会期末処理が行われ、第146回国会は終了した。
会期終了日の平成11年12月15日、自民党及び自由党の両党は、衆議院比例代表定数を20人削減する公職選挙法改正案の次期通常国会冒頭での成立を目指すことで合意した。
第146回国会における衆議院の各会派所属議員数及び役員等の氏名並びに内閣の閣僚氏名は、次のとおりである。
○各会派所属議員数(召集日現在)
会派名 | 所属議員数 |
---|---|
自由民主党 | 265 |
民主党 | 93 |
公明党・改革クラブ | 52 |
自由党 | 39 |
日本共産党 | 26 |
社会民主党・市民連合 | 14 |
無所属の会 | 2 |
さきがけ | 2 |
無所属 | 7 |
計 | 500 |
(備考)平成11.12.27(閉) さきがけ解散
○衆議院役員等一覧
役職名 | 氏名(会派) | 備考 | |
---|---|---|---|
議長 | 伊藤 宗一郎君 | ||
副議長 | 渡部 恒三君 | ||
常任委員長 | 内閣委員長 | 植竹 繁雄君(自民) | |
地方行政委員長 | 斉藤 斗志二君(自民) | ||
法務委員長 | 武部 勤君(自民) | ||
外務委員長 | 井奥 貞雄君(自民) | ||
大蔵委員長 | 金子 一義君(自民) | ||
文教委員長 | 鈴木 恒夫君(自民) | ||
厚生委員長 | 江口 一雄君(自民) | ||
農林水産委員長 | 松岡 利勝君(自民) | ||
商工委員長 | 中山 成彬君(自民) | ||
運輸委員長 | 仲村 正治君(自民) | ||
逓信委員長 | 前田 武志君(民主) | ||
労働委員長 | 赤松 広隆君(民主) | ||
建設委員長 | 平田 米男君(明改) | ||
安全保障委員長 | 二見 伸明君(自由) | ||
科学技術委員長 | 北側 一雄君(明改) | ||
環境委員長 | 細川 律夫君(民主) | ||
予算委員長 | 島村 宜伸君(自民) | ||
決算行政監視委員長 | 中村 正三郎君(自民) | ||
議院運営委員長 | 大島 理森君(自民) | ||
懲罰委員長 | 池端 清一君(民主) | ||
特別委員長 | 災害対策特別委員長 | 中村 鋭一君(自由) | 平11.10.29設置 |
政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員長 | 桜井 新君(自民) | 同上 | |
石炭対策特別委員長 | 土肥 隆一君(民主) | 同上 | |
消費者問題等に関する特別委員長 | 河上 覃雄君(明改) | 同上 | |
沖縄及び北方問題に関する特別委員長 | 佐々木 秀典君(民主) | 同上 | |
国会等の移転に関する特別委員長 | 井上 一成君(自由) | 同上 | |
行政改革に関する特別委員長 | 西田 司君(自民) | 同上 | |
青少年問題に関する特別委員長 | 石田 勝之君(明改) | 同上 | |
政治倫理審査会会長 | 奥野 誠亮君(自民) | ||
事務総長 | 谷 福丸君 |
○内閣閣僚一覧
小渕第2次改造内閣 (平11.10.5〜) | 備考 | |
---|---|---|
内閣総理大臣 | 小渕 恵三君(自民) | |
法務大臣 | 臼井 日出男君(自民) | |
外務大臣 | 河野 洋平君(自民) | |
大蔵大臣 | 宮澤 喜一君(自民) | |
文部大臣 | 中曽根 弘文君(自民) | |
厚生大臣 | 丹羽 雄哉君(自民) | |
農林水産大臣 | 玉沢 徳一郎君(自民) | |
通商産業大臣 | 深谷 隆司君(自民) | |
運輸大臣 | 二階 俊博君(自由) | |
郵政大臣 | 前島 英三郎君(自民) (八代 英太) |
|
労働大臣 | 牧野 隆守君(自民) | |
建設大臣 | 中山 正暉君(自民) | |
自治大臣 | 保利 耕輔君(自民) | |
内閣官房長官 | 青木 幹雄君(自民) | |
国家公安委員会委員長 | 保利 耕輔君(自民) | |
金融再生委員会委員長 | 越智 通雄君(自民) | |
総務庁長官 | 続 訓弘君(公明) | |
北海道開発庁長官 | 二階 俊博君(自由) | |
防衛庁長官 | 瓦 力 君(自民) | |
経済企画庁長官 | 池口 小太郎君 (堺屋 太一) |
|
科学技術庁長官 | 中曽根 弘 文 君(自民) | |
環境庁長官 | 清水 嘉与子君(自民) | |
沖縄開発庁長官 | 青木 幹雄君(自民) | |
国土庁長官 | 中山 正暉君(自民) | |
国立国会図書館連絡調整委員会委員 | 中曽根 弘文君(自民) |