会長 | 中山 太郎君 | 自民 | |||
幹事 | 愛知 和男君 | 自民 | 幹事 | 杉浦 正健君 | 自民 |
幹事 | 中川 昭一君 | 自民 | 幹事 | 葉梨 信行君 | 自民 |
幹事 | 保岡 興治君 | 自民 | 幹事 | 鹿野 道彦君 | 民主 |
幹事 | 仙谷 由人君 | 民主 | 幹事 | 平田 米男君 | 明改 |
幹事 | 佐々木陸海君 | 共産 | 石川 要三君 | 自民 | |
石破 茂君 | 自民 | 衛藤 晟一君 | 自民 | ||
奥田 幹生君 | 自民 | 奥野 誠亮君 | 自民 | ||
久間 章生君 | 自民 | 小泉純一郎君 | 自民 | ||
左藤 恵君 | 自民 | 白川 勝彦君 | 自民 | ||
田中眞紀子君 | 自民 | 高市 早苗君 | 自民 | ||
中曽根康弘君 | 自民 | 平沼 赳夫君 | 自民 | ||
船田 元君 | 自民 | 穂積 良行君 | 自民 | ||
三塚 博君 | 自民 | 村岡 兼造君 | 自民 | ||
森山 眞弓君 | 自民 | 柳沢 伯夫君 | 自民 | ||
山崎 拓君 | 自民 | 横内 正明君 | 自民 | ||
石毛えい子君 | 民主 | 枝野 幸男君 | 民主 | ||
島 聡君 | 民主 | 中野 寛成君 | 民主 | ||
畑 英次郎君 | 民主 | 藤村 修君 | 民主 | ||
横路 孝弘君 | 民主 | 石田 勝之君 | 明改 | ||
太田 昭宏君 | 明改 | 倉田 栄喜君 | 明改 | ||
福島 豊君 | 明改 | 志位 和夫君 | 共産 | ||
東中 光雄君 | 共産 | 安倍 基雄君 | 保守 | ||
中村 鋭一君 | 保守 | 達増 拓也君 | 自由 | ||
二見 伸明君 | 自由 | 伊藤 茂君 | 社民 | ||
深田 肇君 | 社民 |
第147回国会の調査は、[1]日本国憲法についての各会派からの意見聴取、[2]日本国憲法の制定経緯についての参考人意見聴取及び質疑、[3]日本国憲法についての委員の意見表明、[4]日本国憲法の制定経緯についての委員の意見表明、[5]戦後の主な違憲判決についての最高裁判所からの説明聴取及び質疑を行った。
上述のように、第147回国会の調査会の議論は、日本国憲法の制定経緯に関する調査を中心に進められ、その他に、憲法記念日を迎えるに当たっての日本国憲法に関する委員の自由な意見表明、最高裁判所による戦後の主な違憲判決の説明等が行われた。以下に、「日本国憲法の制定経緯に関する調査」、「自由討議等において表明された各委員の憲法に関する意見等」、「最高裁判所による戦後の主な違憲判決の説明及び質疑」の三つに分けて、そこに現れた議論の概要を記すこととする。
日本国憲法の制定経緯に関する調査では、10名の参考人の意見陳述及びそれに対する委員の質疑、さらに、制定経緯に関する委員の自由討議等を通じて、多岐にわたる論点につき議論がなされ、また、各論点につき参考人、委員双方から多様な見解が表明された。以下に、参考人の発言、委員の発言に分け、主要な論点ごとに概要を記す。
ほとんどの参考人が、GHQから日本側に対する「押しつけ」があったのか否か、また、あったとした場合、そのことを日本国憲法の有効性や改正の必要性とどのように関連させて考えるべきか等について言及した。また、参考人のなかには、まさにこの論点を中心的テーマとして意見を陳述した者もあった。
GHQによる「押しつけ」があった歴史的事実は、ほとんどの参考人が認めている。しかし、その「押しつけ」の事実をどの程度重要視するかについては、参考人の間でも以下のように差違が認められる。
まず、「押しつけ」の事実を重視して、それを主たる理由の一つとして改憲の必要性を主張する参考人は2名であった。他の参考人からは、「『押しつけ』の事実ばかりを強調すべきではなく、日本側も天皇制を護持するために主体的な決断としてGHQ案を受け入れた面があったことも理解すべきだ」との意見等「押しつけ」を過度に重視することに否定的な意見が述べられた。また、「そもそも、ルソーが『外国の賢者だけが国の制度を根本的に変革できる。』と言ったように、旧制度を変革するのに外国からの圧力があるのは歴史上普通のことであり、『押しつけ』があっても、それを問題視する必要はない」という意見もあった。
なお、後述するように、「押しつけ」の観点を重視しない参考人であっても、そのうち3名は、主として憲法と現実との乖離を理由として改憲を主張しており、明確に改憲に反対した者は1名であった。
この点についても、ほとんどの参考人が言及している。
アの論点で「押しつけ」を重視する参考人も含めて、「押しつけ」があったから日本国憲法は無効であるという立場を取る参考人はいなかった。主な意見を概括すると、「『押しつけ』の側面はあったものの、日本は自らの判断で受け入れており、帝国議会等による適正な手続を踏んでいること、国民にすでに定着していること等から、日本国憲法は有効である」ということが言える。
マッカーサーが、GHQ案の作成に際し取り入れるべき三つの原則を示したマッカーサー・ノートの第2原則で、紛争を解決する手段としての戦争だけでなく自衛のための戦争も放棄するとした真意について、複数の参考人から、「マッカーサーは、平和主義を強くアピールして寛大な日本処理を引き出すことにより、天皇の地位を守ろうとした」、「日本が軍事力を放棄してもアメリカの核によって日本を守ることが可能である、あるいは、沖縄を要塞化すればよいと考えていた」等の見解が述べられた。
衆議院の帝国憲法改正小委員会(芦田均委員長)で、現行の第9条第2項に「前項の目的を達するため」という文言を挿入するいわゆる芦田修正がなされたが、この中心的役割を果たした芦田均は、どのような意図でこの修正を行ったのかに関して、「芦田均は自衛のための戦力の保持に道を開くことを考えてこの修正を行った」と主張する意見があった一方で、「その当時の芦田均の意図は不明である」という意見もあった。
芦田修正が衆議院でなされた後、極東委員会から、国務大臣は文民でなければならないという「文民条項」(現行第66条第2項)を新たに設けるように要求があり、結局、貴族院でその旨の修正がなされたが、この点については、「極東委員会は、芦田修正によって、日本が自衛のための戦力を保有することが可能になったと判断してこのような要求をしてきた」ことを多くの参考人が指摘した。
自衛隊の合憲性については、複数の参考人が言及し、1名が、「芦田修正が自衛のための戦力を持ちうるという趣旨であるとは、必ずしも言えない」として、自衛隊は違憲であるとの立場であったが、他の者は合憲と解し、その中でも芦田修正の趣旨と関連させて合憲とする者が目立った。
第9条と日米安保条約との関係についても複数の参考人が言及し、1名が、日米安保条約は違憲であるとの立場だったが、他の者は、日米安保条約は合憲であると述べるとともに、「日米安保条約があったから日本は第9条を改正せずにやってこれた」、「冷戦後の地域紛争の増加に効果的に対処するためには日米安保条約は重要である」等、日米安保条約を積極的に評価する立場が多かった。
第9条と集団的自衛権との関係については数名の参考人が言及したが、いずれも、個別的自衛権よりも集団的自衛権の方がかえって抑制的であり効果的であることを理由として、これを積極的に認めるべきであると主張した。
憲法と現実との乖離については、ほとんどの参考人が指摘している。これらの見解は、現実に合うよう憲法を改正すべきであるという意見と現実の政策を憲法に適合するように改めていくべきであるという意見に分かれる。
前者の意見が指摘する主な点としては、「世界有数の軍隊を保有しているにもかかわらず、第9条の明文上は軍隊の保持を禁じているように読めるため他国の不信を招いている」、「第89条は私学助成の現実の必要性に合致していない」、「国家緊急時に関する規定が欠如している」等が挙げられている。
後者の意見が指摘する主な点としては、「日米安保条約は日本の主権を侵害するに等しい内容のものである」、「環境保護の充実、住民投票の整備等の地方自治の推進、金のかからない政治の実現、男女共同参画の推進、司法の民主化等未だ実現されていない憲法の理念が多数残されている」等が挙げられている。
憲法を改正すべきかについては、ほとんどの参考人が意見を述べた。
前述したように、「押しつけ」憲法であることを主たる理由の一つとして改憲を主張する参考人は2名であった。
「押しつけ」の観点を重視しない参考人のうち明確に改憲に反対した者は1名であり、「憲法が守られていない現状で憲法改正を議論するのは矛盾であり、また、日米安保体制下で我が国の主権が制限されているに等しい状況下では、憲法改正を議論する前提が欠けている」と主張した。
他方、「押しつけ」の観点を重視しない参考人であっても、3名が現行憲法と現実との乖離を理由として改憲すべきであるとの立場を取った。これらの参考人からは、「『国際社会の公正と信義』に一国の存立を委ねるという前文の内容は不適切であり、前文を改正すべき」、「国際社会の不信を払拭するためにも自衛のための軍隊の保持、国際貢献への自衛隊の参加等を第9条に明記すべき」とする意見が述べられた。
また、改憲について賛否を明確にしなかった4名の参考人のなかにも、「単に制度をいじるのは無意味であり、まず、現憲法に掲げられた理念を実現するための具体的な施策を実行することの方が重要である」ことを指摘した者があった。
この点については、約30名の委員が何らかの形で発言している。
まず、「押しつけ」の事実があったことは、会派を問わず、ほとんどの委員が認めている。そこでは、「日本国憲法は、日本の弱体化を図る占領政策の一環として作成されたものである」、「GHQが、検閲、命令等で日本に対する徹底的な介入をしたこと、憲法制定議会の代表者を選出する総選挙はGHQの指示の下に行われた不透明なものであること」等が指摘された。
しかし、明確に「押しつけ」の観点を重視して、それと結び付けて日本人による新たな憲法の制定を主唱する委員は数名だけであり、その他の委員は「押しつけ」の観点を一応重視はするものの、それを直ちに改憲論には結びつけないか、あるいは「押しつけ」の観点を重視すること自体に否定的な立場と言える。これらの見解の主要なものとしては、「『押しつけ』があったとしても、日本国憲法は当時の国民から圧倒的支持を受けた」、「政府に対する『押しつけ』はあっても、国民に対しては『押しつけ』ではなかった」等が挙げられる。
いずれにしても、「押しつけ」を重視しない委員であっても改憲を主張する者は後述のように多くの会派で見受けられるので、「押しつけ」論と憲法改正についての賛否の議論が必ずしもリンクしていないということが看取できる。
日本国憲法を無効と解するべきかについては、「押しつけ」論との関係、ポツダム宣言、ハーグ陸戦法規等の国際法規との関係等からの発言があったが、 いずれにしても、日本国憲法が無効であると発言した委員はいなかった。
第9条の成立過程については、芦田修正の背景には自衛のための戦力の保持に道を開く意図があったことを複数の参考人が指摘したことを受けて、「このような芦田の意図を踏まえて、現行第9条を解釈すべきである」との意見が複数の委員から述べられた。
各委員の憲法に関する意見は、「憲法記念日を迎えるに当たっての日本国憲法についての自由な意見表明」(4月27日)においてだけでなく、「日本国憲法の制定経緯に関する委員の自由討議」(5月11日)や5回にわたる「日本国憲法の制定経緯に関する参考人質疑」の際にも随時開陳された。以下に、これらすべての機会における発言を合わせて、そこにおいて表明された委員の憲法に関する意見を主要な論点ごとに概説する(日本国憲法の制定経緯に関する論点に係る発言は(1)で記載したので、ここでは触れない。)。
この点については、ほとんどすべての委員が発言している。
改憲を主張する委員からは、「国際化、情報化等の進展の中で、21世紀の国家像、社会像を見据えた憲法論議をすべきである」、「時代の要請に合わなくなった点は、変えていくべきである」等、憲法と現実との乖離を改める必要性や国際社会の中での将来の国家像についての議論が不可欠であることに関する言及が多かった。他方、護憲の立場の委員からは、「現実の政策が憲法の理念から乖離している現状を少しでも憲法の理念に近づける努力が必要である」、「憲法改正を議論するより、まず、法律によって憲法の足りないところを補うべき」等の意見が述べられた。また、改憲・護憲の立場を明らかにしない委員の多くからも「21世紀に向けて、現在の憲法で十分なのか、新しい国家論、人権論を積極的に議論すべき」等の意見が述べられた。
その他に、改憲・護憲という立場を超えて、「『押しつけ』論に拘泥すべきではない」、「イデオロギーにとらわれず、未来を指向した議論をすべきである」、「現憲法の基本原則は、守っていくべきである」、「国民に情報を提供し、国民参加の議論をすべきである」等の意見が複数の委員から述べられた。
今後の憲法論議をする上での全般的な事項に関する発言の主要なものとしては、「日本国憲法の三原則は守っていくべきである」、「日本のアイデンティティー、日本の伝統、歴史を憲法に盛り込むべきである」、「分かりやすい日本語に憲法を改めるべきである」等の意見が複数の委員から述べられた。
前文については、「翻訳調で分かりづらい」、「安全保障の観点が欠けている」等の指摘が複数の委員からなされ、これらの委員は、改正の必要があるとの意見を述べた。
天皇制については、「国民主権との関係を議論すべきである」との意見が複数の委員から述べられた。
まず、全体的な議論を通じて、第9条第1項の平和主義については、これを堅持すべきであるとの意見が多くの委員の共通認識であった。
次に、自衛権、自衛のための戦力の保持については、「自衛権は国家固有の権利であり憲法に明記するまでもない」との意見が数名の委員から出された反面で、「現行の第9条第2項では自衛隊が合憲か違憲か不明確であり、解釈で対応するよりも、第2項を改正して自衛隊を明文で認めるべきである」との主張が複数の委員からなされた。他方で、第9条を改正すべきでないとの意見も複数の委員から述べられた。
集団的自衛権については、複数の委員から、「国際情勢を踏まえて議論をしていくべきである」との意見が述べられた。また、日米安保条約については、「これを双務的なものにすべきである」と主張した委員がいた一方で、「同条約は第9条に違反しているので破棄すべきである」と主張した委員がいた。
また、「国連を中心とした平和維持活動に積極的に貢献するべきである」との意見が多くの委員から述べられたほか、「緊急事態への対応を憲法に規定すべき」との指摘が複数の委員からなされた。
基本的人権関係で主として議論があったのは、国家、社会に対する義務を軽視する風潮への批判、公共の福祉による権利制限の強化の必要性、新しい人権を憲法に明記することの必要性である。
まず、義務を軽視する風潮及び公共の福祉に関しては、複数の委員から、「権利のみを主張し、国家、社会に対する責任と義務を軽視する風潮がある」、「公共の福祉の概念を明確にした上で、行き過ぎた権利行使を制約すべきである」等の意見が述べられたが、他方、公共の福祉が伸縮自在に使われていることに対する危惧を指摘する委員もいた。
また、新しい人権については、多くの委員が、「プライバシー権、環境権、知る権利等を憲法に明記すべきだ」と主張したのに対して、「新しい人権は現行憲法でも解釈上読み取ることができる」、「環境基本法の制定に不熱心だった議員が環境権を保障するために改憲を主張するのは矛盾だ」との主張も何人かの委員からなされた。
国会の在り方については、現在の衆参両院が同じ様な性格を持っている点を問題視し、参議院の在り方を検討する必要があることを多くの委員が指摘した。また、端的に一院制を主張する委員もいた。
内閣制度に関連する議論は首相公選制の導入論に絞られており、複数の委員が首相公選制の検討を主張した。
司法制度に関する議論は、抽象的審査権をも行使しうるドイツ型の憲法裁判所の創設の議論に絞られており、複数の委員が憲法裁判所の創設を主張した。
地方自治について発言した委員は、いずれも地方分権を進めるべきであるという認識では一致している。複数の委員が道州制の導入、連邦型国家への移行を主張した。
日本国憲法は改正手続が厳格な硬性憲法であるが、この点について、複数の委員が改正手続が厳格すぎることを指摘し、また、「それが原因で解釈改憲を行わざるを得なくなっている」と指摘する意見もあった。他方、「現行の厳格な改正手続が望ましい」という意見を数名の委員が述べた。
今後の調査会の進め方については、「調査会の調査期間は、申し合わせで、5年となっているが、前倒しで行うべきである」、「調査は2年で終了し、その後改正作業に入るべき」、「3年後に改正案提示、5年後に改正作業に入る」等の意見があった一方で、「調査会では改正のための議論ではなく、調査に徹するべきだ」との主張も見られた。また、「総選挙、参議院議員選挙で各党が国民に改正案を提示して国民の審判を受ける必要がある」ことが複数の委員から指摘された。
最高裁判所事務総局行政局長から戦後の主な違憲判決について説明があった後、中山会長及び各会派を代表して7名の委員から質疑が行われた。その質疑の要点は、[1]いわゆる「統治行為論」等を理由とし、憲法判断をしなかった判例はどの程度あるか。また、どのような理由で憲法判断をしなかったのか、[2]我が国における裁判の長期化の原因は何か。また、その改善策として、どのようなことが議論されているか、[3]アメリカやドイツにおける違憲審査制度及びその運用の実態はどのようなものか、[4]我が国も抽象的違憲審査制の導入を検討するべきではないか、[5]地方自治体の財務会計処理の問題を裁判で争う場合には住民訴訟(地方自治法第242条の2)の手段が用意されているが、国のこのような問題についても裁判で争う手段を設けるべきではないか、[6]議員定数に関する最高裁の違憲判決は、国会に対していかなる効力を持つのか、[7]最高裁判所裁判官に対する国民審査等の既存の方法以外に、裁判所に対する国民の信頼を獲得するためにいかなる方法が考えられるか等であった。