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6 予算審議の概況

平成12年度総予算

1 予算の概要

我が国経済は、5四半期連続マイナス成長という、戦後初の厳しい局面を経験し、その後の景気回復に向けた各般の諸施策等により、景気は最悪期を脱したが、その回復の足取りは不十分なものであった。そのため平成12年度予算は、財政支援を継続して、公需から民需への円滑なバトンタッチを図り、民需中心の本格的な景気回復の実現に努めていくという観点に立って編成され、平成12年1月28日、国会に提出され、同日、衆議院予算委員会に付託された。

一般会計予算の規模は、84兆9,871億円で、前年度当初予算に対し、3.8%の増加となっている。

歳出については、国債費及び地方交付税交付金の経費を除いた、いわゆる一般歳出の規模は48兆914億円であり、前年度当初予算に対して2.6%の増加となっている。

歳出の主な内容は、次のとおりである。

[1]公共事業関係費については、本格的な高齢化社会の到来を目前に控え、社会資本整備を着実に推進するとの基本的考え方を踏まえた上で、景気の本格的回復を図る観点に立ち、平成12年度の一般会計においては、積極的な対応を行った前年度当初予算と同額の9兆4,307億円を計上するほか、産業投資特別会計社会資本整備勘定において「日本電信電話株式会社の株式の売払収入の活用による社会資本の整備の促進に関する特別措置法」に基づき貸付けを受けて実施される公共的建設事業として944億円を計上し、その配分に当たっては、物流効率化による経済構造改革の推進、環境と調和した持続的な経済社会の構築、少子高齢化等に対応した街づくり・地域づくり、高度情報通信社会の基盤整備といった我が国が直面する政策課題に対応した施策・事業への重点化を図っている。なお、公共事業等の経費に係る予見し難い予算の不足に充てるため、公共事業等予備費5,000億円が計上されている。

[2]社会保障関係費については、今後の急速な少子・高齢化の進展に伴い、社会保障関連予算の増大が見込まれる中、経済の発展、社会の活力を損なわないよう、必要な給付を確保しつつ、制度の効率化・合理化を進め、将来にわたって安定的に運営できる社会保障制度を構築していくために、ゴールドプラン21、新エンゼルプラン及び障害者プランの着実な推進等を図るとともに、医療保険制度の改正等を行うこととし、前年度当初比4.1%増の16兆7,666億円が計上されている。なお、消費税の福祉目的化として、地方交付税交付金を除いた消費税収の使途を基礎年金、老人医療及び介護に限る旨が予算総則に明記されている。

[3]文教及び科学技術振興費については、国と地方の機能分担及び費用負担の在り方、受益者負担の適正化等の観点から、各種経費の見直しを行うとともに、高等教育、学術研究、科学技術、文化等の各分野に対し、資金の重点的配分を図ることとし、前年度当初比0.9%増の6兆5,222億円が計上されている。

[4]経済協力費については、評価制度の拡充等の実施体制の強化、顔の見える援助の推進等により、援助の効率化・重点化を一層進めることとし、前年度当初比0.4%減の9,842億円が計上されている。なお、政府開発援助予算は前年度当初比0.2%減の1兆466億円となっている。

[5]防衛関係費については、平成9年12月19日に見直しが行われた「中期防衛力整備計画(平成8年度〜平成12年度)」等の下、効率的で節度ある防衛力の整備を図ることとし、前年度当初比0.1%増の4兆9,358億円となっている。なお、この経費の中に、SACO(沖縄に関する特別行動委員会)関係経費として140億円が計上されている。

[6]国債費については、一般会計の負担に属する国債及び借入金の償還、国債及び借入金の利子等の支払いに必要な経費と、これらの事務取扱いに必要な経費であって、国債整理基金特別会計へ繰り入れるものとして、前年度当初比10.8%増の21兆9,653億円が計上されている。

[7]地方財政については、大幅な財源不足が見込まれる中、国と地方という公経済の車の両輪がバランスの取れた財政運営を行う必要があるという基本的考え方を踏まえつつ、地方財政の運営に支障を生ずることのないよう、一般会計からの法定加算、臨時特例加算や交付税及び譲与税配付金特別会計の借入金等により所要の地方交付税総額を確保することとし、一般会計の地方交付税交付金等は、前年度当初比10.4%増の14兆9,304億円が計上されている。なお、交付税及び譲与税配付金特別会計から地方団体に交付する地方交付税交付金は、前年度当初比2.6%増の21兆4,107億円となっている。

歳入については、租税及印紙収入について、民間投資等の促進等、16歳未満の扶養親族に係る扶養控除制度の見直し等及び関税率の改定等を行うこととし、前年度当初比3.3%増の48兆6,590億円が見込まれている。税外収入については、前年度当初比0.7%増の3兆7,181億円が見込まれており、その主なものは、日本銀行納付金、日本中央競馬会納付金、国有財産売払収入、外国為替資金特別会計受入金等である。

公債金については、前年度当初比5.0%増の32兆6,100億円となり、公債依存率は38.4%(平成11年度当初予算37.9%、第2次補正後予算43.4%)となった。

特別会計予算及び政府関係機関予算についても、一般会計に準じ、資金の重点的・効率的な配分に努め、事業の適切な運営を図ることとしている。特別会計の数は38、政府関係機関の数は9である。

財政投融資計画については、財政投融資の抜本的改革を視野に入れ、対象分野・事業の見直し等を行いつつ、景気への配慮等、現下の社会・経済情勢に鑑み、真に必要と考えられる資金需要には適確に対応し、資金の重点的・効率的な配分を図ることとしている。その規模は前年度計画比17.4%減の43兆6,760億円となっている。

また金融システムの安定化のための措置に関し、一般会計予算総則において、預金保険機構の一般勘定、特例業務勘定、金融再生勘定及び金融機能早期健全化勘定の借入金等について、それぞれ4兆円、10兆円、18兆円及び25兆円の政府保証限度額が定められている。さらに、預金保険機構の特例業務勘定に交付される国債の円滑な償還を確保するため、国債償還に充てる財源を国債整理基金特別会計に繰り入れるために必要な経費として、4兆5,000億円が計上されている。

2 審議の経過

第147回国会は平成12年1月20日に召集されたが、1月26日、衆議院議員比例定数を20削減する「公職選挙法の一部を改正する法律案」が衆議院政治倫理・公選法改正特別委員会で、採決に反対する民主、共産、社民の野党3党が欠席のまま、自民、公明、自由の与党3党の賛成で可決された。野党3党は採決に抗議し、翌27日の衆議院本会議を欠席し、同法案は与党3党などの賛成多数で可決され参議院に送付された(2月2日成立)。野党3党はこれに強く抗議し、以後の全ての国会審議を拒否する方針を決め、28日、衆参両院本会議を欠席したため、3野党不在のまま小渕総理大臣の施政方針演説、宮澤大蔵大臣の財政演説等政府4演説が行われた。また31日から2月2日までの衆参両院での政府4演説に対する各党の代表質問も3野党不在のまま行われた。

このような事態の中、2月2日午後3時、衆議院予算委員会が開会されたが、野党3党は開会冒頭から出席せず、委員長が出席要請をしたが、なお出席しなかったため野党3党欠席のまま、宮澤大蔵大臣から平成12年度一般会計予算外2案の提案理由を聴取した。翌3日は午前9時に委員会を開会したが、野党3党は冒頭から出席せず、委員長の出席要請にも応じなかったため、与党3党のみで基本的質疑(総理大臣及び全閣僚に対する質疑)を行った。4日も、前日同様、開会冒頭から野党3党が出席しなかったため、委員会は休憩となり、その後、休憩のまま流会となった。週明けの7日になっても、依然として野党3党は委員会に出席せず、与党3党だけで質疑が行われた。8日に至り、議長の斡旋による国会正常化の動きが見られ、この推移を見守るため、理事会は、午前10時開会予定の委員会の開会を延ばすこととし、理事会は休憩となった。同日午前、議長から、[1]3野党不在のまま行われた本会議での代表質問に代わる野党質問の機会を設けること、[2]予算委員会の基本的質疑における野党の質問時間に配慮すること等を柱とするあっせん案が与党と野党3党の幹事長・書記局長に提示された。このあっせん案を与党3党及び民主党は受け入れ、共産党及び社民党は受け入れなかったが審議には加わることとなり、国会は約2週間ぶりに正常化された。なお、8日の委員会はその日の夕刻流会となった。

9日に開かれた理事会では、野党側は、基本的質疑について1週間程度を要求し、また「一巡」とは総理大臣に野党の全委員が質疑することであると主張。一方、与党側は、与党と民主党の国対委員長間において合意された「国家基本政策委員会等の運用等、国会審議のあり方に関する申合せ」のなかで、総理大臣の予算委員会への出席は、各党一巡の基本的質疑と締めくくり質疑のみとなっており、従来、総括一巡は2日間であると主張。結局、14日に野党が基本的質疑を行うことについては合意したものの基本的質疑の日数については合意に至らなかった。10日の理事会においても先の「申合せ」における基本的質疑の各党一巡についての解釈、基本的質疑の日数について話し合いがつかなかった。

14日、野党3党による基本的質疑が行われたが、このなかで野党側は、小渕総理大臣の古川秘書官によるNTTドコモ株取得問題を取り上げ、同氏の証人喚問を要求した。なお同日の理事会でも、基本的質疑の各党一巡についての解釈について合意が得られなかったため、同日夕刻から自民党と民主党の国対委員長会談が行われた。この会談結果を踏まえ、委員会散会後開かれた理事会で、民主党は「総理出席が2日間しかないことは遺憾である。「申合せ」が2日間でないことを堅持しつつ国対の協議に沿っていくしかない」として了承した。共産党と社民党は反対を表明した。なお15日以後の理事会においても、野党側から質疑への総理大臣出席の要望があったが、与党は、民主党との国対委員長間の合意があり、総理大臣の出席はあり得ないとした。

15日から23日までは、要求大臣に対する質疑が行われた。この間、15日の理事会では、野党側から[1]NTTドコモ株関連で古川俊隆総理大臣秘書官、金融機関から自民党に対する献金関連で杉田力之第一勧業銀行頭取の証人喚問要求[2]NTTドコモ株関連で、上毛通信サービス(株)について、取締役会議事録、株式譲渡承認請求書、株主名義変更請求書と付属資料、株主名簿、鈴木弘氏の代金受取証付きの名刺及び小渕光平氏名義の株式にかかる売買代金受領証の資料提出要求[3]総理大臣出席の下、財政、金融、社会保障、政治倫理についての4日間の集中審議要求があった。また与党側からは公聴会の日程を協議したい旨の提案があった。17日の理事会においては、集中審議及び公聴会の開会について協議がなされたがまとまらず、委員長は理事会の大勢の意見であるとして、24日に公聴会を開会することとし、18日の委員会の冒頭、公聴会を24日に開会することを決定したが、同日の理事会において野党側から、公聴会の開会が1日だけであることについて抗議がなされた。また23日の理事会では、25日に質疑を行い、分科会は、25日の質疑終了後と28日の両日開くことが合意され、23日の質疑終了後、分科会の設置を決定した。

24日、公聴会が1日の日程で開かれ、翌25日は、午前9時から質疑を行ったが、野党は、19日に越智金融再生委員長が栃木県での地方銀行幹部らとの会合で、金融検査に手心を加える意向を示したと受け取られかねない発言をしたことに関し、金融行政の信頼性が失われているとして追及し、越智金融再生委員長の辞任を求めると同時に金融再生委員会と金融監督庁長官の権限関係についての内閣の統一見解を求めた。統一見解については理事会協議となり、同日昼の理事会協議の結果、午後の委員会において青木官房長官から政府の統一見解が述べられた。なお理事会では、与党は29日の締めくくり質疑を提案し、野党は、越智金融再生委員長の発言に関し、総理出席の下での金融問題の集中審議を要求したが協議はまとまらず、夜再開された理事会で、委員長は29日に締めくくり質疑を行うことを決定した。同日の質疑終了後、午後4時から分科会が開かれた。また同日夕刻、越智金融再生委員長が辞任し、後任には、谷垣元科技庁長官が就任した。28日にも分科会が開かれ、29日、委員会の冒頭に分科会の主査報告を行った後、締めくくり質疑を行い、平成12年度予算の質疑は終局した。

質疑の主なものは次のとおりである。

まず、景気対策と今後の財政運営については、「国及び地方の長期債務残高は645兆円に達し、国債発行額も過去最高となる中で、これ以上の財政出動は将来に借金を先延ばしするだけである。財政構造改革は、単に緊縮財政を行うこととは違う。予算編成方法の変更などにより構造改革は可能であり、今後は景気対策と財政構造改革を並行して行う必要があるのではないか」、「景気が回復した後に財政再建をやると言うが、経済が回復軌道に乗った場合、財政状況が好転する見通しがあるのか。財政再建の見通しを示すべきではないか」との趣旨の質疑があった。

これに対して、小渕総理大臣及び宮澤大蔵大臣から、「内閣発足以来、経済再生内閣ということであらゆる手法を講じてきた。財政再建は必須の課題であり、平成12年度予算においても財政構造改革を十分視野に入れているが、現時点では、景気回復を最優先に掲げ、安定成長につなげていくことにすべての政策課題があると認識している」、「我が国経済が成長軌道に乗ったことを確認しなければ、税収や歳出削減の見通しも立たないし、全体の作業のフレームワークもできない。積極的予算は平成12年度までとし、平成13年度予算からは中立型の予算編成を行いたい。財政再建に転じるのは経済が成長軌道に乗ってからになる」旨の答弁があった。

また、経済見通しについて、「積極型予算を組むことにより、今後の我が国経済の景気状況はどうなるのか」との趣旨の質疑があった。

これに対して、宮澤大蔵大臣及び堺屋経企庁長官から、「我が国経済は、最悪の時点は過ぎたと思うが、まだ内需は弱い。今回の思い切った予算措置により、4―6月の経済成長率が発表になる今年の9月ごろには、回復基調が鮮明化し、設備投資も上向き、日本経済は民需中心により、自力で歩いていけるようになるのではないか」、「設備投資については、昨年9月ぐらいから、先行指標である機械受注が増えてきている。新たな情報技術などが生まれ、今年後半には明るさが期待できる」旨の答弁があった。

第2に、公共事業について、「公共事業は景気対策に本当に有効なのか」、「効率的な公共事業を行うために、事業評価システムを確立する必要があるのではないか」との趣旨の質疑があった。

これに対して、宮澤大蔵大臣及び中山建設大臣から、「昨年の補正予算から、公共事業を重点化するための新たな方針を決定した。重点項目は、経済構造改革、環境対策、少子高齢化対策、情報通信関係の4分野であり、平成12年度予算にも、この4分野で2兆円を超える額を計上している」、「公共事業に対する国民の理解を得る上で、どのような環境で、どのような経済効果があるのかなど、さまざまな評価手法の高度化に取り組んでいきたい」旨の答弁があった。

第3に、社会保障制度について、「年金、介護、高齢化医療など、社会保障の給付と負担が増大する中で、高齢化社会で国民が安心して生活できるような社会保障制度を構築する必要があるのではないか」との趣旨の質疑があった。

これに対して、小渕総理大臣及び丹羽厚生大臣から、「21世紀の社会保障については、年金、医療、介護を制度的、横断的かつ総合的に検討していくために、社会保障構造の在り方について考える有識者会議を設置した。将来の少子高齢化社会を見据えて、安定化した社会保障制度の確立に向けて全力を挙げて取り組んでいきたい」旨の答弁があった。

以上のほか、予算委員会の審議の在り方、衆議院の解散・総選挙の時期、衆議院議員の定数削減法案の審議の在り方、我が国の将来像、憲法調査会と憲法論議の在り方、教育改革と教育基本法改正、自自公連立政権の政策と評価、政治献金問題、小渕総理大臣の古川秘書官によるNTTドコモ株取得問題、ペイオフ解禁の1年延期、ゼロ金利政策、長銀譲渡、金融行政の在り方、中小・ベンチャー企業対策、雇用対策、東京都の外形標準課税の導入と政府の対応、沖縄米軍基地問題、九州・沖縄サミットへの取組み、ODAの在り方、吉野川可動堰建設問題についての住民投票、警察不祥事、東海村ジェー・シー・オー事故と原子力政策、愛知万博に係る諸問題、宇宙開発事業の一元化、情報技術革命の推進、個人情報保護法の制定、少子化対策、児童虐待問題、廃棄物対策など国政の各般にわたって質疑が行われた。

2月29日の締めくくり質疑終了後、共産党から提出された「平成12年度予算3案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議」について趣旨説明を聴取し、討論の後、採決の結果、動議は否決され、予算3案は賛成多数で可決された。同日の本会議において、討論を行い、記名投票による採決の結果、賛成346、反対133で予算3案は可決された。

参議院の予算委員会は、2月29日に宮澤大蔵大臣から提案理由説明を聴取し、3月1日と2日の両日に基本的質疑を、3日から13日まで質疑を行った。その後14日には公聴会を行い、15日と16日午前の委嘱審査を経て、16日午後、参考人質疑を行い、17日の締めくくり質疑の終了後、討論、採決の結果、平成12年度予算3案は賛成多数で可決された。同日の本会議においては、討論の後、記名投票による採決の結果、賛成141、反対102で可決された。


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