会長 | 中山 太郎君 | 自民 | |||
幹事 | 杉浦 正健君 | 自民 | 幹事 | 中川 昭一君 | 自民 |
幹事 | 葉梨 信行君 | 自民 | 幹事 | 平林 鴻三君 | 自民 |
幹事 | 保岡 興治君 | 自民 | 幹事 | 大出 彰君 | 民主 |
幹事 | 仙谷 由人君 | 民主 | 幹事 | 古川 元久君 | 民主 |
幹事 | 赤松 正雄君 | 公明 | 藤 公介君 | 自民 | |
奥野 誠亮君 | 自民 | 川崎 二郎君 | 自民 | ||
倉田 雅年君 | 自民 | 河野 太郎君 | 自民 | ||
近藤 基彦君 | 自民 | 佐藤 勉君 | 自民 | ||
下地 幹郎君 | 自民 | 谷川 和穗君 | 自民 | ||
谷本 龍哉君 | 自民 | 中曽根康弘君 | 自民 | ||
中山 正暉君 | 自民 | 長勢 甚遠君 | 自民 | ||
額賀福志郎君 | 自民 | 野田 聖子君 | 自民 | ||
野田 毅君 | 自民 | 平井 卓也君 | 自民 | ||
福井 照君 | 自民 | 森岡 正宏君 | 自民 | ||
山口 泰明君 | 自民 | 大畠 章宏君 | 民主 | ||
桑原 豊君 | 民主 | 小林 憲司君 | 民主 | ||
今野 東君 | 民主 | 島 聡君 | 民主 | ||
首藤 信彦君 | 民主 | 末松 義規君 | 民主 | ||
中川 正春君 | 民主 | 中野 寛成君 | 民主 | ||
水島 広子君 | 民主 | 遠藤 和良君 | 公明 | ||
太田 昭宏君 | 公明 | 斉藤 鉄夫君 | 公明 | ||
武山百合子君 | 自由 | 藤島 正之君 | 自由 | ||
春名 直章君 | 共産 | 山口 富男君 | 共産 | ||
金子 哲夫君 | 社民 | 北川れん子君 | 社民 | ||
井上 喜一君 | 保守新党 |
第156回国会では、第154回国会・第155回国会と同様、日本国憲法に関する個別の論点についての専門的・効果的な調査を行うため、調査会の下に小委員会を設置することとされ、それまでの各小委員会の調査テーマを改編し、「最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員会」、「安全保障及び国際協力等に関する調査小委員会」、「基本的人権の保障に関する調査小委員会」及び「統治機構のあり方に関する調査小委員会」の4つの小委員会を設置して調査が進められた。
なお、小委員会における調査方法として、従来の、参考人から意見を聴取してこれに対する質疑を行い、参考人が退席した後自由討議を行う方法のほか、参考人を招致せず、特定の憲法上の論点について、小委員(基調発言者)から意見を聴取してこれに対する質疑又は発言を行い、その後自由討議を行う方法も導入されることとなった。
調査会では、2月27日、3月27日、4月17日、5月29日、6月12日及び7月24日に各小委員長からの報告及びこれを踏まえた自由討議が行われた。
なお、小委員長からの報告及び自由討議については、第154回国会・第155回国会ではそれぞれの会期の終わりに行っていたのに対して、第156回国会では小委員会が開催された月の終わりに行うこととされた。
その他、調査会においては、1月30日には「現在の国際情勢と国際協力(特にイラク問題・北朝鮮問題をめぐる憲法的諸問題)」をテーマとする自由討議が、3月20日には「条約と憲法(イラク問題・北朝鮮問題をめぐって)」をテーマとする自由討議が、4月17日には5月3日の憲法記念日を迎えるに当たっての自由討議が、6月12日には「安全保障と憲法」を中心として、今国会での議論を振り返っての自由討議が、7月24日には今国会の締めくくりとしての自由討議が、それぞれ行われた。
5月12日は石川県金沢市において、また、6月9日には香川県高松市において、それぞれ、いわゆる地方公聴会が開会された。
閉会中、8月31日から9月13日までの14日間の日程で、本調査会の委員(4名)で構成された「衆議院米国、カナダ及びメキシコ憲法調査議員団」による海外派遣が行われた。
第1回は、「象徴天皇制(天皇の地位・皇位継承を中心に)」について、参考人から、女子にも皇位継承権を認める必要性、天皇及び皇族の外国訪問から、「皇室外交」と言われるような政治色を排除する必要性等について、意見が述べられた。
これに対して、天皇の「元首」性、女性による皇位継承を認めることとした場合の諸問題、天皇の国事行為のあり方等について、質疑がなされた。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、象徴天皇制の将来の方向性、女性による皇位継承の是非等について、発言がなされた。
第2回は、「象徴天皇制(天皇の権限・国事行為等を中心に)」について、参考人から、象徴天皇制は、現行憲法の理念に基づき規定されているが、歴史や伝統等を反映した独特の制度であるとの認識が示された上で、天皇の行為の分類に当たっては、象徴に由来する価値を実態に即して分析するなどの観点から五分説を提唱するとの意見等が述べられた。
これに対して、五分説の意義、現行憲法下における天皇の位置づけ、公的行為における責任の所在等について、質疑がなされた。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、20条と皇室の儀式との関係、衆議院解散の根拠についての再整理の必要性等について、発言がなされた。
第3回は、「硬性憲法としての改正手続」について、参考人から、諸外国の憲法改正手続は、通常、「憲法の安定性」及び「国民主権」に由来する要請を充たすように仕組まれている。96条のハードルは高いが世界的に見て最も高いとは言えない、形式的な改正のハードルの高低から諸外国の憲法の改正頻度が直ちに導かれるわけではないとの意見等が述べられた。また、他の参考人からは法哲学の観点から、憲法改正に特別多数決を要するというのは立法者のエゴであって、憲法が通常の法律に優越する理由として挙げられていることの多くは、妥当性を有するものではない。その上でなお、憲法が硬性であることの意義として、「少数者保護」があるとの見解が示された。
これに対して、憲法改正のための国民投票法の制定、日本国憲法における憲法改正の限界、国民による憲法改正の発案の是非等について、質疑がなされた。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、憲法改正のための国民投票法を現時点において制定する必要性、「国のかたち」の観点から憲法を論ずることの必要性等について、発言がなされた。
第4回は、「明治憲法と日本国憲法(明治憲法の制定過程)」について、参考人から明治憲法の制定に関するこれまでの「普通の憲法成立史」には、[1]民権派と体制派の両者の憲法史の相互関係、[2]これらの制定過程と実際の明治憲法の運用上の問題点との関連性が、ともに考えられてこなかったという問題点があるとの意見等が述べられた。
これに対して、明治憲法の制定者の意識、明治憲法の問題点は憲法自体にあったのか運用にあったのか、明治憲法における政治権力の正統性の根拠等について、質疑がなされた。
第5回は、「前文」について、参考人から、現行憲法の前文は、戦後の日本に国民主権の思想を定着させ、民主的な諸制度を確立したという大きな功績があったが、無国籍で政治的な蒸留水のようなものであることから、現在ではアイデンティティ危機を招いていると考えられ、したがって、憲法前文に日本の価値観や新しい理想を盛り込むことには大きな意味があるとの意見等が述べられた。
これに対して、前文と各条文との一体不可分性、前文を置くことの意義、参考人の提唱する前文試案に対する評価、前文に盛り込むべき理念等について、質疑がなされた。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、前文と各条文とは一体不可分性を有していること、憲法前文の有する先駆性、憲法の持つ普遍性と我が国の独自性との調和は今なお課題であること等について、発言がなされた。
第1回は、「非常事態と憲法(テロ等への対処を中心に)」について、参考人から、複雑化かつ過激化しているテロへの対応に当たっては、防衛、外交、情報、出入国管理等を統一方針の下に総合的かつ有機的に機能させる必要があり、そのためには、[1]非常事態に関する規定の憲法への明記を含む国内法の整備、[2]国家・社会体制の確立、[3]国民の意識啓発等が重要であるとの意見等が述べられた。他の参考人からは、「依存型社会」である都市で非常事態が発生した場合は途方もない被害が発生することを直視した上で非常事態について考えるべきであるとの認識の下に、危機対応に当たっては権限の集中とともに事後点検をも重視する必要があるとの意見等が述べられた。
これに対して、憲法上の緊急権規定の必要性、緊急事態における国民の権利保護、緊急事態における国会の関与のあり方、テロ対策に係る国際協力のあり方、有事法制と駐留米軍との関係等について、質疑がなされた。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、非常事態体制の整備に関する国会の責任を踏まえた上での国民の安全確保等に係る議論の重要性について、発言がなされた。
第2回は、「非常事態と憲法(自然災害等への対処を中心に)」について、参考人から、憲法を機能させるためには、交通事故に対処するためのドクター・ヘリの整備が遅れていること等の「憲法違反状態」を是正し、防災、医療、交通事故といった基礎問題を解決した上で、外交・安全保障という応用問題に対処すべきであるとの意見等が述べられた。
これに対して、非常事態に関する憲法上の規定の必要性、災害時における自衛隊と消防・警察等の役割分担のあり方、災害に備えた「まちづくり」、日米関係のあり方等について、質疑がなされた。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、日米安保条約及び日米地位協定のあり方、自然災害への対応と生存権規定との関係等について、発言がなされた。
第3回は、「国際協力(特に、ODAのあり方を中心に)」について、小委員(基調発言者)から、国連決議の履行確保のため安保理改革及び紛争解決制度の実効化を図る必要があり、日本も、自らの安全保障及び国際貢献を踏まえた憲法改正を視野に入れ、安保理常任理事国入り等を求めるとともに、経済社会分野での国連活動に積極的に関与する必要があるとの意見等が述べられた。また、他の小委員(基調発言者)からは、ODAの憲法上の根拠はグローバル社会における「人間の安全保障」を求める前文にあり、国際社会の新たなニーズに応じてODAを実施する際には前文の価値を積極的に展開すべきであるとの意見等が述べられた。
これに関連して、国連のあり方、対中国ODAへの評価、人道分野におけるODAの重要性、ODA改革の方向性等について、質疑又は発言がなされた。
これらの質疑又は発言を踏まえた自由討議においては、国連と安全保障との関係について議論する必要性、国連のあり方、ODA改革の方向性等について、発言がなされた。
第4回は、「国際機関と憲法(安全保障・国際協力の分野における)」について、参考人から、日本は、政府組織とNGOとの連携を図り、国民参加型人道援助外交を通じて人間の安全保障を追求するなど、急激に変化する時代に対応するシステムを確立することにより、多様な社会におけるイニシアティブを発揮することができるとの意見等が述べられた。また、他の参考人からは、日本は、国連を重要視し、その改善に尽力すべきであるとともに、自らが常任理事国になるか否かの問題は別として、国連を機能させるため、安保理事国枠の拡大、新常任理事国の選定、拒否権の行使の態様等に係る安保理改革を主導していくべきであるとの意見等が述べられた。
これに対して、「敵国条項」がいまだに存在する理由、日本の安保理常任理事国入りの是非、今後の国連の方向性、NGOと政府との連携のあり方等について、質疑がなされた。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、安保理常任理事国間で対立があった場合の日本の安全保障のあり方、国連改革のあり方と日本の役割、現実に即した外交の必要性等について、発言がなされた。
第5回は、「憲法9条(自衛隊の海外派遣をめぐる憲法的諸問題)」について、小委員(基調発言者)から、[1]平和と安全を武力により担保することもあり得るとの立場から、「(人道上の)人間の安全保障」という考え方を未来志向の強靱な「平和主義」の形として提示し、国際貢献を積極的に行う姿勢を示すこと、[2]9条2項を削除した上で、個別的・集団的自衛の権利及び自衛隊の存在を明記すること、[3]侵略、大規模自然災害等の非常事態への対応に関する条項を設けることを内容とする9条の改正に向けた具体的提言がなされた。また、他の小委員(基調発言者)からは、国家としての平和確立の基本については、憲法に明記するか、少なくとも安全保障基本法を制定することにより国民に提示し、近隣諸国をはじめとする国際社会の信頼を得る必要があるとの認識の下、[1]個別的自衛権と集団的自衛権とを一体のものとしてとらえた自衛権を保持すること及びこれを抑制的に行使すべきであること等を憲法に明記すべきである、[2]日米共同防衛体制を重視すべきである、[3]PKOをはじめとする国連の平和活動に対し積極的に参加する旨憲法に明記すべきであるとの意見等が述べられた。
これに関連して、憲法と現実との乖離及びその解消のための方途、日本と国連との関係、日米関係のあり方等について、質疑又は発言がなされた。
これらの質疑又は発言を踏まえた自由討議においては、イラク攻撃及びイラク復興支援法案の是非、非軍事分野での国際協力の必要性、国連改革の重要性等について、発言がなされた。
第1回は、「教育を受ける権利(教育基本法改正を含む)」について、参考人から、「教育」の能力を開発するという側面を重視する必要性、「生涯にわたり学習する権利」を認識する必要性等について、意見が述べられた。また、他の参考人からは、憲法と切り離して教育基本法を改正することは、教育基本法の性格をいびつなものにし、同時に憲法の精神までないがしろにしてしまうとの意見等が述べられた。
これに対して、教育基本法と教育勅語の関係、教育基本法の改正の必要性、他者の権利に関する教育の必要性等について、質疑がなされた。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、憲法や教育基本法の制定経緯の認識の重要性、教育基本法の改正、教育勅語の失効に関する決議の意味等について、発言がなされた。
第2回は、「労働基本権(公務員制度改革及び男女共同参画の視点を念頭において)」について、参考人から、公務員制度の構築に当たっては、その労働基本権制約の枠組みの成立過程の検討が重要であるとの認識の下、戦後の公務員制度における労使関係の十分な再検討が必要であり、総じて広く意見を徴するプロセスを重視すべきであるとの意見等が述べられた。また、他の参考人からは、雇用の場における男女の機会均等のためには、[1]強制的な命令権限等を持つ救済機関の設置等救済措置の拡充、[2]育児が一段落した後の再就職のための施策の拡充、[3]家庭と仕事との両立のための環境づくりが必要であるとの意見等が述べられた。
これに対して、公務員制度改革や男女共同参画社会の観点からの憲法の評価、ILO中間報告を受けての日本政府の対応のあり方、男女共同参画社会が想定する「平等」の意味等について、質疑がなされた。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、公務員の労働基本権をめぐる問題点、ILO中間報告の背景、夫婦の多様なあり方を認める社会を実現するための環境づくり等について、発言がなされた。
第3回は、「知る権利・情報アクセス権とプライバシー権について(情報公開法・個人情報保護法制を含む)」について、参考人から、日本における知る権利・情報公開論議の経緯及びプライバシー・個人情報保護論議の経緯に関する説明の後、アクセス権について、諸外国の情報関連法での英訳等に見られるように、知る権利や自己情報コントロール権等を含む市民の情報への汎用的な権利としてとらえ、議論を深めていくべきであるとの意見等が述べられた。
これに対して、憲法にプライバシー権に係る規定等を明記することの是非、マスメディアによるプライバシー侵害に対する規制のあり方、個人情報保護関連法案の内容の是非等について、質疑がなされた。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、マスメディア規制の是非、国民のプライバシー権等を保障するためのオンブズマン制度等について、発言がなされた。
第4回は、「基本的人権と公共の福祉(国家・共同体・家族・個人の関係の再構築の観点から)」について、参考人から、日本国憲法の基本的人権と「公共の福祉」の規定をコミュニタリアニズム的に解釈した場合、これまでリベラリズム的解釈では軽視されていた責任や公共性などをその(死文化していた)文言そのものから導くことができ、また、公共哲学で重視されている公的幸福の追求、国家の相対性、地球的視座など新時代に要請される事項についても憲法の中に読み込むことができるなど、日本国憲法は、コミュニタリアニズム的観点からするとアメリカ憲法よりも優れた人権規定を持っているといえ、当面、憲法改正は必要ないとの意見等が述べられた。
これに対して、コミュニタリアニズムが重視する「伝統」・「道徳」の意義、「公」に対し「個」が強調されすぎているのではないかという懸念、コミュニタリアニズムの観点からの政党政治・教育現場・街づくり・マスメディアの現状に対する評価等について、質疑がなされた。
第5回は、「社会保障と憲法」について、参考人から、21世紀における社会保障制度の理念・制度設計として、当事者たる国民ないし市民の参加と自治、さらには当事者の応分の負担による社会保障と社会福祉の充実がなければならないとの発言等がなされた。また、他の参考人からは、社会保障制度の中核をなす公的年金制度は、老後における最低限度の生活を保障するという点で、25条を具体化する重要な制度であるが、公的年金制度を老後の最低限の所得を保障する基礎年金部分に限定したスリムなものとし、それを上回る報酬比例部分は公的部門ではなく個人の責任とするという改革案が示された。
これに対して、少子高齢化社会における社会保障と生存権の保障のあり方、社会保障の新しい理念としての「社会連帯」の必要性、社会保障の費用負担のあり方、年金制度改革の必要性等について、質疑がなされた。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、社会保障財政の危機に対して国民全体で国を支える意識を持つことの必要性、社会保障制度の構築に当たりグローバリゼーションの視点を持つことの必要性、社会保障に係る問題の根底にある少子化問題等について、発言がなされた。
第1回は、「地方自治(道州制・都道府県合併)」について、参考人から、「自己決定」・「自己責任」という地方自治の基本的な考え方を貫徹するため、行政は優先的に住民に最も身近な市町村が行い、市町村ができないことは都道府県が、都道府県ができないことは国が補完するという「補完性の原理」に基づき、国・地方の役割分担の大幅な見直しを図る必要性、一国多制度の発想と住民との協働という観点から広域自治体の制度を構築する必要性等について、意見が述べられた。
これに対して、道州制や都道府県合併と憲法との関係、市町村合併・基礎的自治体のあり方、地方の自主財源確保の展望等について、質疑がなされた。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、国と地方の行財政改革のあり方、道州制導入の必要性、「地方自治の本旨」に沿った国と地方との関係の構築、ボーダレス化等の時代の変化を踏まえた国・県のあり方等について、発言がなされた。
第2回は、「地方自治(小規模自治体の実態)」について、参考人から、政令指定都市の実現により、人口面や地理的な利点を活かしつつ、空港等の拡充、近隣県との交流、商業の集積等を図り、新しくできる「市」の副都心として、発展していきたいとの考えが述べられた。
これに対して、広域合併により政令指定都市を志向する理由、都道府県の役割と道州制の導入、合併における地域住民の声の反映等について、質疑がなされた。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、間接民主制・直接民主制と住民自治との関係、地方自治・地方分権のあり方と憲法規定との関係を再考する必要性等について、発言がなされた。
第3回は、「司法制度及び憲法裁判所(憲法の有権解釈権の所在の視点から)」について、参考人から、[1]憲法解釈を確定するのは裁判所であるが、憲法に適合するように行政運営を行うためには、事前に政府として憲法解釈を行う必要がある、[2]政府による憲法解釈は、論理的追究の結果であり、政府が自由に変更することはできないとの意見等が述べられた。また、他の参考人からは、[1]我が国の法令違憲判決が少ないことについて司法消極主義であるとの批判があるが、これは、我が国の裁判所を取り巻く環境に起因するものであり、少なくなるべくして少なくなったものである、[2]憲法適合性判断の今後のあり方に関連して、上告受理制度の定着を通じ、憲法判断の必要な事件がより早期に取り上げられるようになるなど、最高裁判所における憲法判断は一段と活性化し、新しい時代にふさわしい憲法秩序を形成していくことになるであろうとの意見等が述べられた。
これに対して、憲法の有権解釈権のあり方、政府の憲法解釈変更の可否、憲法裁判所の設置の是非、議院法制局のあり方等について、質疑がなされた。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、裁判所が政治問題の判断を控えることの妥当性、国民が司法に関与できるシステムの必要性、議院法制局の強化、裁判官報酬の減額の憲法適合性等について、発言がなされた。
第4回は、「財政(特に、会計検査制度と国会との関係(両院制を含む)を中心として)」について、参考人から、国会独自の立場から政策評価を行うためには、国会自らがデータを収集し、省庁から提供されたデータを国政全体の舵取りという国会独自の観点から分析することが野党のみならず与党にとっても必要であり、国会附属機関として、議員の政策評価に係る活動を専門的立場から補佐する機関を設置すべきであるとの意見等が述べられた。また、他の参考人からは、国民は委託者として政府(受託者)に対して納税を行うと同時に政府の財政活動の受益者として位置づけられるが、財政立憲主義の形式的な適用だけでは、将来世代を含む受益者たる国民の利益を守ることはできず、財政運営上の意思決定者(現役世代)の受託者責任を明らかにすることを通じてパブリック・ガバナンスを強化し、その利益を保護すべきであるとの意見等が述べられた。
これに対して、決算審査と参議院改革、会計検査院のあり方、予算編成システムのあり方、政策評価機関のあり方、オンブズマン制度に対する評価等について、質疑がなされた。
参考人質疑を踏まえた自由討議においては、政策評価の必要性、財政システムを見直す必要性、二院制の機能を向上させる必要性等について、発言がなされた。
第5回は、「国民主権と政治の基本機構のあり方全般」について、小委員(基調発言者)から、現代社会では、政治目的に向けて行政(administration)を指揮監督する「執行権」(executive power)を持つ首相とそれを補佐する国務大臣で構成される内閣を政治の中心ととらえるべきであり、国会の役割については、内閣による政策決定のコントロール機能及び国民に対する争点提供機能の2つが重要となるとの意見等が述べられた。また、他の小委員(基調発言者)からは、[1]内閣機能の強化とこれに対応した議会機能の強化及び政党の憲法上の位置づけの明確化、[2]一院制の導入、[3]政権交代可能な2〜3の大政党の出現を志向する単純小選挙区制度の採用及び一票の格差の是正、[4]統治行為を所管とする憲法裁判所の国会への設置、[5]特別多数による再議決制度の見直し及び憲法改正手続の発議要件の緩和、[6]危機管理組織の憲法上の明記が必要であるとの意見が述べられた。
これらに関連して、内閣と与党の一元化、首相のリーダーシップ、民意の反映と選挙制度、審議会の位置づけ等について、質疑又は発言がなされた。
これらを踏まえた自由討議においては、憲法改正手続のあり方、一院制を採用する必要性、政策秘書制度の拡充の必要性等について、発言がなされた。
「日本国憲法に関する件(現在の国際情勢と国際協力について(特にイラク問題・北朝鮮問題をめぐる憲法的諸問題))」について、自由討議を行った。
[1]イラク問題に関しては、法的な問題と外交戦略上の問題を区別する必要性、米国による先制攻撃の是非、武力行使を容認する新たな国連決議の必要性、査察の継続等により平和的な解決を図る必要性等について、[2]北朝鮮問題に関しては、拉致問題のとらえ方、北朝鮮の不法行為等に対応するための法律改正の必要性、核問題(NPTからの脱退等)への対応、自衛権の発動要件を再検討する必要性等について、[3]その他、国際貢献のあり方、集団的自衛権の行使について検討する必要性、多国籍軍やPKOへの参加の是非、憲法や日米安全保障条約が日本の平和維持に果たしてきた役割等について、発言があった。
各小委員長から報告を聴取した後の自由討議では、[1]「象徴天皇制−天皇の地位・皇位継承を中心として」に関しては、天皇を元首として明文化することの是非、女性による皇位継承の是非及びこれに係る諸問題等について、[2]「非常事態と憲法−テロ等への対処を中心として」に関しては、テロ対策のあり方、憲法に非常事態に関する規定を設けることの是非、我が国の安全保障政策のあり方、有事法制の必要性等について、[3]「地方自治−道州制・都道府県合併について」に関しては、国・都道府県・市町村という三重構造のあり方、地方自治体の権限、市町村合併のあり方等について、[4]「教育を受ける権利−教育基本法の改正を含む」に関しては、教育基本法改正の是非、教育基本法についての議論の方法、教育改革のあり方等について、発言があった。
「条約と憲法(イラク問題・北朝鮮問題をめぐって)−日本国憲法及び国際連合憲章・日米安全保障条約の視点から−」について、委員間の自由討議を行った。
[1]イラク問題に関しては、米国等の武力行使による解決か、国連の査察による平和的解決かといったイラク問題への対処のあり方、イラク攻撃の国際法上の根拠として自衛権や安保理決議678、687及び1441によることの正当性、武力行使による解決を図るとする米国等を支持する我が国の対応の是非等について、[2]北朝鮮問題に関しては、北朝鮮情勢への我が国の対処のあり方等について、[3]その他、専守防衛や集団的自衛権行使に係る考え方の見直しの必要性、我が国の安全保障と国連との関係、憲法上に有事への対応を規定する必要性等について、発言があった。
各小委員長から報告を聴取した後、委員間の自由討議(安全保障及び国際協力等に関する調査小委員会にあっては、イラク問題・北朝鮮問題に関する自由討議を含む。)を行った。
[1]「象徴天皇制−天皇の権限・国事行為等を中心として」に関しては、天皇の国事行為と行為分類論、天皇を元首として明文化することの是非等について、[2]「地方自治−小規模自治体の実態について」に関しては、市町村合併・道州制導入の是非等について、[3]「労働基本権−公務員制度改革及び男女共同参画の視点から」に関しては、公務員の労使関係制度と28条・41条・83条、男女共同参画を実現するための施策のあり方等について、[4]「非常事態と憲法−自然災害等への対処を中心として」に関しては、非常事態法制の整備、イラク・北朝鮮問題等について、発言があった。
最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員長及び安全保障及び国際協力等に関する調査小委員長から報告を聴取した後の自由討議では、[1]「硬性憲法としての改正手続」に関しては、「憲法改正のための国民投票法」を早期に制定すべきか否か、同法律が制定されていないことが「立法の不作為」に当たるか否か等について、[2]「国際協力−特に、ODAのあり方を中心として」に関しては、持続可能な開発や人間の安全保障の観点からのODAの必要性、ODAの実態についての国民の正しい理解と協力を得る努力の必要性、国際協力に関する規定を憲法に明記する必要性等について、発言があった。
次いで、5月3日の憲法記念日を迎えるに当たっての自由討議では、[1]最高法規としての憲法のあり方に関しては、天皇が元首であることを憲法に明記する必要性、憲法改正手続等について、[2]安全保障及び国際協力のあり方等に関しては、イラク攻撃の不当性、国連のあり方等について、[3]基本的人権の保障に関しては、教育基本法の改正の是非、公共の福祉の意味等について、[4]統治機構のあり方に関しては、中央集権から地方分権に移行する必要性、道州制の導入等について、[5]その他憲法調査会の今後の進め方、憲法を調査・審議する機関の常設化の是非、憲法改正の必要性等について、発言があった。
小委員長報告を聴取した後の自由討議では、[1]「国際機関と憲法−安全保障・国際協力の分野における」に関しては、安保理の実態等を踏まえた上での我が国の国連への関与のあり方、イラクの戦後復興に対する支援のあり方、NGOと政府との密接な連携を図った上での外交の必要性等について、[2]「明治憲法と日本国憲法−明治憲法の制定経緯」に関しては、明治憲法の制定過程に学ぶべきもの、21世紀に受け継ぐべき現行憲法の理念、明治憲法制定以前に起草された民間憲法草案(私擬憲法案)に対する再評価、明治憲法が制憲議会によらずに制定されたことの問題点等について、[3]「知る権利・アクセス権とプライバシー権−情報公開法制・個人情報保護法制を含む」に関しては、「新しい権利」を憲法に明記することの是非、個人情報保護関連法に対する評価、マスメディアによるプライバシー侵害にどのように対処するか等について、[4]「司法制度及び憲法裁判所(憲法の有権解釈権の所在の視点から)」に関しては、憲法改正の必要性、憲法裁判所の設置の是非、集団的自衛権の行使に関する憲法解釈の変更等について、発言があった。
統治機構のあり方に関する調査小委員長及び基本的人権の保障に関する調査小委員長から報告を聴取した後の自由討議では、[1]「財政(特に、会計検査制度と国会との関係(両院制を含む))」に関しては、政策評価の結果を予算等に反映する必要性、会計検査院を国会に設置すること等について、[2]「基本的人権と公共の福祉(国家・共同体・家族・個人の関係の再構築の視点から)」に関しては、コミュニタリアニズムの視点から憲法を見る必要性等について、発言があった。
「安全保障と憲法」を中心として今国会での議論を振り返っての自由討議では、9条を改正する必要性、自衛隊のイラクへの派遣、イラク攻撃の違法性等について、発言があった。
各小委員長から報告を聴取した後、今国会の締めくくりとしての自由討議を行った。[1]最高法規としての憲法のあり方に関しては、天皇を元首として明文化することの是非、憲法改正手続等について、[2]安全保障及び国際協力のあり方等に関しては、9条改正の是非、イラク復興支援のあり方等について、[3]基本的人権の保障に関しては、新しい人権を憲法に明記すること、家庭・家族の大切さを憲法に明記することの是非等について、[4]統治機構のあり方に関しては、両院の役割分担の明確化、内閣と与党の一体化、地方自治のあり方等について、発言があった。
第156回国会中に行われた2回の地方公聴会は、それぞれ、「非常事態(安全保障を含む)と憲法」、「統治機構(地方自治を含む)のあり方」、「基本的人権の保障のあり方」をテーマに開催された。各地方公聴会における議論の概要は、以下のとおりである。
意見陳述者からは、[1]愛国心、郷土愛及び「利他の心」を明記するとともに、憲法改正手続を他の項目に優先して改正すべきであるとの意見、[2]北朝鮮による邦人拉致は重大な人権問題であり、この問題の解決のためには、最終的には武力行使をも辞さないとの強い態度で臨むべきであって、そのためにも、前文及び9条を削除すべきであるとの意見、[3]今求められているのは、日本と世界の現実の中で憲法の理念を確認して活かすことであり、北朝鮮問題についても、憲法の求める武力によらない平和的解決の手段を模索すべきである、9条の改正は歯止めなき軍事拡大路線へと進む可能性が大きく、断じて認められないとの意見、[4]13条が規定する幸福追求権により「新しい人権」を保障することは可能であり、同条で保障された人権を具体的に立法化することによってその目的は達成できるとの意見、[5]地方自治は、住民の自己決定権という人権保障の原理及び国民主権の原理に由来するものであって、地方自治体には国と対等、並立の関係に立って国民に対して協働する権限があるとの意見等が述べられた。
その後、委員から、教育のあり方、北朝鮮による邦人拉致や核開発の問題についての解決策のあり方、北東アジア地域における平和構築のための方策、地方分権改革のあり方、市町村合併のあり方、「新しい人権」の保障のあり方や憲法への明記の是非等について、質疑が行われた。さらに、傍聴者4人から意見が述べられた。
意見陳述者からは、[1]平和の維持には、秩序ある、力を伴う「法の支配」が必要であり、日本の安全保障は将来創設される国連軍により保障されることを目標としつつ、それに至る過程として、北東アジアの地域的安全保障体制を構築すべきである、また、9条改正には反対であるとの意見、[2]「新しい人権」の保障に必要なことは、憲法上に規定することよりも立法化による具体化である、人権を制限するよりも人権を最大限尊重することを通して生まれる公共の福祉が大切である、また、国内における人権保障の充実が積極的な国際貢献につながるとの意見、[3]戦後の日本の平和は、9条によるものではなく、日米安保条約の恩恵によるものであるが、在日米軍は9条との整合性において問題があるので憲法を改正すべきである、また、9条改正により、自衛隊を正式に軍隊として明示すべきであるとの意見、[4]教育権は、平等権の保障の前提となるほか、主権者としての権利行使の前提として大切であるが、現実には、不登校、低学力の問題など憲法や教育基本法の軽視に起因する弊害が生じており、憲法を改正するよりは、憲法を活かすよう努力すべきであるとの意見、[5]日本を取り巻く安全保障環境が大きく変化する中で、憲法と現実の矛盾が深まっていることを踏まえ、安全保障の分野など見直しを急ぐべき分野は、当面、解釈変更で対応し、その後、世論等を踏まえて憲法改正を考えるべきであるとの意見、[6]合併による地方自治体の規模拡大は、財政問題等から必要な場合があるとしても、「住民自治」の実質化の観点から、その具体的仕組みや、地方自治は直接民主制を基本とすることを憲法に規定すべきであり、また、基礎自治体の強化の観点から、法律と条例との関係や課税自主権を憲法に規定し、一定の行政組織権限が地方自治体に認められるようにすべきであるとの意見等が述べられた。
その後、委員から、今後の社会保障のあり方、「地方自治の本旨」の意味、我が国の今後のあり方、「新しい人権」を憲法に明記することの是非、教育問題が生じている原因、憲法の平和主義を踏まえたイラク問題への対処のあり方、武力攻撃事態法に規定されている首相のいわゆる「代執行」権限と地方自治との関係、教育の現状と勤労観の関係等について、質疑が行われた。さらに、傍聴者4人から意見が述べられた。