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7 予算審議の概況

平成14年度補正予算(第1号、特第1号、機第1号)

1 補正予算の概要

本補正予算は、平成14年12月12日に決定された改革加速プログラムを実施するために必要な経費の追加等を行うとともに、義務的経費の追加等特に緊要となった事項等について措置を講ずる一方、歳入面において、最近までの収入実績等を勘案して租税及印紙収入の減収を見込むとともに、公債金の増額等を行うこととして編成されたものであり、平成15年1月20日、国会に提出され、同日、予算委員会に付託された。

一般会計予算においては、歳出について、経済・社会構造変革セーフティネット充実対策費、構造改革推進型公共投資の促進、義務的経費の追加等を行う一方、既定経費の節減、予備費の減額等を行い、また、歳入について、租税及印紙収入の減収を見込む一方、公債金の増額等を行っている。

この結果、補正後の平成14年度一般会計予算の総額は、当初予算に対し、歳入歳出とも、2兆4,590億円増加して、83兆6,890億円となっている。

特別会計予算においては、一般会計予算補正等に関連して、労働保険特別会計、道路整備特別会計など22特別会計について、所要の補正を行っている。

政府関係機関予算においては、中小企業金融公庫及び中小企業総合事業団信用保険部門について、所要の補正を行っている。

なお、一般会計及び特別会計において、所要の国庫債務負担行為の追加を行っている。

2 審議経過

平成15年1月20日、塩川財務大臣の財政演説が、衆参両院の本会議で行われた。

衆議院予算委員会においては、同月22日、塩川財務大臣から提案理由の説明を聴取した後、23日(基本的質疑)、24日及び27日の3日間質疑を行った。

主な質疑事項は、小泉内閣の経済財政政策に対する評価、中小企業対策及び雇用対策の充実の必要性、デフレ克服への政府の取組み、イラク問題への我が国の対応、北朝鮮問題、公務員制度改革、政治倫理問題等であった。27日に質疑終局後、討論、採決の結果、本補正予算は賛成多数で可決、同日に開かれた本会議においても、討論、採決の結果、賛成多数で可決、参議院に送付された。

参議院予算委員会においては、1月22日、塩川財務大臣から趣旨の説明を聴取し、28日、29日及び30日に質疑を行った。30日に質疑終局後、討論、採決の結果、賛成多数で可決、同日に開かれた本会議においても、討論、採決の結果、賛成多数で可決され、補正予算は成立した。

平成15年度総予算

1 予算の概要

我が国経済は、輸出の増加や生産の持直し等により、景気に一部持直しの動きが見られるものの、今後の世界経済の動向や不良債権処理加速による影響等、引き続き多くの不確定要因が存在している。

このような状況下、平成15年度予算は、歳出の徹底した見直しを行うため、まず、概算要求段階において要望可能額を大幅に緩和するとともに、重点的・効率的配分を行い、また、予算執行調査の結果等を活用した経費の節減やコストの見直しなどを図り、一般歳出及び一般会計歳出全体について実質的に平成14年度を下回る水準とするとの観点に立って編成され、平成15年1月24日、国会に提出され、同日、予算委員会に付託された。

一般会計予算の規模は、81兆7,891億円で、14年度当初予算額に対して、5,591億円(0.7%)の増加となっている。

歳出については、国債費及び地方交付税交付金等の経費を除いた、いわゆる一般歳出の規模は47兆5,922億円であり、14年度当初予算額に対して、450億円(0.1%)の増加となっている。

歳出の主な内容は、次のとおりである。

[1] 社会保障関係費については、年金等について平成14年の消費者物価の下落に応じた物価スライドを実施するとともに、雇用保険制度改革等を行うこととし、14年度当初予算額に対して、3.9%増の18兆9,907億円を計上している。

[2] 公共投資関係費については、公共投資の水準を抑制する一方、歳出の質的改善を図る観点から、「平成15年度予算編成の基本方針」に掲げた重点4分野に施策を集中し、14年度当初予算額に対して、3.7%減の8兆9,117億円を計上している。このほか、産業投資特別会計社会資本整備勘定において、「日本電信電話株式会社の株式の売払収入の活用による社会資本の整備の促進に関する特別措置法」(昭和62年法律第86号)に基づき貸付けを受けて実施される公共的建設事業として925億円を計上しており、これを加えた公共投資関係費は9兆43億円となっている。

[3] 文教及び科学振興費については、義務教育費国庫負担制度の見直しを進めるとともに、各種経費の見直しを行う一方、教育改革等の推進、科学技術予算の戦略的重点化を積極的に図ることとし、14年度当初予算額に対して、3.5%減の6兆4,712億円を計上している。

[4] 防衛関係費については、「中期防衛力整備計画(平成13年度〜平成17年度)」の第3年度目として、多様な事態(生物兵器攻撃等)への対処能力の強化、各種災害への対応、情報機能の強化等の重要施策を推進するとともに、自衛隊の任務遂行や維持運営のため、所要の経費を計上しており、14年度当初予算額に対して、0.1%減の4兆9,530億円を計上している。

[5] 経済協力費については、全体の量的規模を縮減しつつ、国際協力の観点から、我が国の責任を十全かつ適切に果たし得るよう、援助対象分野等のさらなる戦略化、効率化等を図ることとし、14年度当初予算額に対して、4.7%減の8,161億円を計上している。

[6] 中小企業対策費については、創業・経営革新の推進や中小企業に対する円滑な資金供給を確保するための基盤強化等を図る一方、既存事業の見直し等により支出の抑制を図り、14年度当初予算額に対して、7.1%減の1,729億円を計上している。

[7] 国債費については、一般会計の負担に属する国債及び借入金の償還、国債及び借入金の利子等の支払いに必要な経費と、これらの事務取扱に必要な経費を国債整理基金特別会計へ繰り入れるものとして、16兆7,981億円を計上している。

[8] 地方財政については、国と歩調を合わせつつ、地方歳出の見直しを行った上で、通常収支の財源不足に関して、新規の特別会計借入金を解消するなど、地方財政の効率的な運営に向けた措置を講ずるとともに、所要の地方交付税総額を確保することとし、一般会計の地方交付税交付金等として、14年度当初予算額に対して、2.3%増の17兆3,988億円を計上している。

なお、交付税及び譲与税配付金特別会計から平成15年度に地方団体に交付する地方交付税交付金及び地方特例交付金の総額は、14年度当初予算額に対して、6.7%減の19兆755億円となっている。

歳入については、現行法による租税及印紙収入の収入見込額は、43兆4,090億円である。この金額から平成15年度に予定されている法人関連税制、相続税・贈与税、金融・証券税制、土地税制、酒税・たばこ税等の改正による減収を差し引き、更に自動車重量譲与税の譲与割合の引上げによる減収を差し引くと、14年度当初予算額に対して、10.7%減の41兆7,860億円になると見込まれる。その他収入については、14年度当初予算額に対して、19.4%減の3兆5,581億円が見込まれており、その主なものは、外国為替資金特別会計受入金、日本銀行納付金、日本中央競馬会納付金及び国有財産売払収入等である。

公債発行額については、14年度当初予算額に対して、21.5%増の36兆4,450億円を予定しており、公債依存度は44.6%(14年度当初予算36.9%、同補正後41.8%)となっている。

特別会計及び政府関係機関予算についても、資金の重点的、効率的な配分に努め、事業の適切な運営を図ることとしている。特別会計の数は郵政事業特別会計等が廃止され32となり、政府関係機関の数は9で前年度と同様である。

財政投融資計画については、行財政改革の趣旨を踏まえ、全体規模を縮減しつつ、構造改革に資する分野に重点を置き対象事業を見直すとともに、現下の経済金融情勢を踏まえ、企業再生・中小企業金融等資金需要に的確に対応することとしている。その規模は、14年度計画に対して、12.6%減の23兆4,115億円となっている。

2 審議経過

平成15年1月31日、小泉内閣総理大臣の施政方針演説、塩川財務大臣の財政演説等政府4演説が行われた。また、これに対する各党の代表質問は、2月3日から3日間、衆参両院の本会議で行われた。

2月4日の衆議院予算委員会理事会では、平成15年度一般会計予算、平成15年度特別会計予算及び平成15年度政府関係機関予算(以下、「平成15年度予算」という。)について、同月5日に提案理由の説明を聴取し、同月6日及び7日に基本的質疑を行うことに協議決定した。

同月5日の予算委員会においては、塩川財務大臣から平成15年度予算の提案理由の説明を聴取した。

同月6日の予算委員会においては、デフレ不況に伴う中小企業に対するセーフティネット保証の実績等、インフレターゲットの設定及び達成手段について政府の見解、金融機関の融資姿勢及び顧客サービスの在り方、医療費3割負担の凍結方針及び年金を巡る諸問題、民主党の平成15年度予算案、対アジア経済戦略、教育基本法の基本的考え方、国連安保理決議1441の解釈と我が国の立場、国連安保理に対するパウエル米国務長官のイラク問題に関する情報開示について政府の見解、北朝鮮の核開発問題の国連安保理付託と我が国の対応等について、質疑が行われた。

同月7日の予算委員会においては、デフレ克服策としての平成15年度予算、政策不況と財政再建、平成15年度税制改正の目的、郵政民営化等小泉内閣の諸施策と景気回復の関係、医療費の自己負担3割引上げ等国民負担増が経済に及ぼす影響、国連安保理決議678及び687をイラク攻撃の根拠とすることの可否についての政府統一見解の必要性、テロ対策特措法に基づき派遣されている海上自衛艦のイラク攻撃時における対応、北朝鮮の脅威に対する警戒態勢、ILO勧告(平成14年11月)に対する政府の姿勢、公共事業受注企業からの政治献金問題等について、質疑が行われた。

同月12日からは一般的質疑が行われた。

同月12日の予算委員会においては、景気の現状に対する政府の認識、政府系金融機関による支援制度充実等中小企業対策、インフレターゲット導入問題、公務員の再就職及び非常勤国家公務員の採用の在り方、雇用・能力開発機構の在り方、政治献金と公共事業受注の関係、サラリーマン患者の3割自己負担の凍結、大量破壊兵器保有等イラク問題、武器輸出・不審船等北朝鮮問題、シベリア抑留者問題等について、質疑が行われた。

同月13日の予算委員会においては、新たな雇用対策の必要性、犯罪増加と検挙率低下の原因及び犯罪予防と検挙率向上のための対策、道路4公団民営化問題、医療分野における構造改革特区問題、公務員制度改革とILO勧告、川口外務大臣の対イラク政策及び対北朝鮮政策への取組み、WTO交渉における日本政府の立場、住民基本台帳ネットワークシステムの本人確認情報利用の在り方、在外被爆者健康管理手当支給問題等について、質疑が行われた。

同日の理事会において、2月20日に、特に政治資金問題等に関して一般的質疑を行うことに協議決定した。

同月14日の予算委員会においては、インフレターゲット導入に関する見解、失業問題の現状認識及び長期化への対策、地方の経済及び雇用情勢についての見解、証券税制改革の在り方、エネルギー(特に天然ガス)に係る基本戦略と安全保障、米軍のイラク攻撃が日本経済に与える影響、イラクに対する査察の成果及び武力行使に関する我が国の対応、日朝平壌宣言署名の背景及びその後の北朝鮮の対応、小泉内閣総理大臣の靖国神社参拝及び国立追悼施設建設問題についての対応方針、竹中金融担当大臣・経済財政政策担当大臣のETFを巡る発言と証券取引法等との関係等について、質疑が行われた。

同日の理事会において、与党側から同月24日及び25日に公聴会を開会する提案があったが、野党側は、大島農林水産大臣の元秘書に係る政治資金問題に関する参考人招致の件などが決着していないと反対し、与野党筆頭理事間で引き続き協議することとなった。

同月17日の予算委員会においては、平成15年度一般会計及び特別会計予算の諸問題、年金積立金の運用問題、介護保険制度、障害者用ETC設置等障害者支援策及び日本版ADA制定の必要性、ETFに関する竹中金融担当大臣・経済財政政策担当大臣の発言の根拠及び証券取引法との関係、WTO農業交渉における政府の取組み、イラクに対する査察の追加報告(2月14日)と我が国の対応、市町村合併問題、住民基本台帳ネットワークシステムの本人確認情報の他目的利用問題、名古屋刑務所刑務官による受刑者暴行事件等について、質疑が行われた。

同日の理事会において、同月25日及び26日に公聴会を開会すること、24日及び他の1日間に集中審議を行うことに協議決定した。

同月18日の予算委員会においては、道路4公団民営化推進委員会意見書の前提条件、日銀の銀行保有株式購入、原子力発電所運転停止による電力逼迫等エネルギー問題、集団的自衛権に関する見解、防衛分野における研究開発の必要性、広島県沖美町によるNLP(夜間離発着訓練)誘致撤回問題、武力行使のための新たな国連決議に対する我が国の対応等イラク問題、査察追加報告についての我が国の受止め方、北朝鮮における日本人拉致事件等及び北朝鮮軍事情勢、名古屋刑務所における特別公務員暴行陵虐事件等について、質疑が行われた。また、同月25日及び26日の公聴会開会承認要求に関する件を、全会一致で決定した。

同月19日の予算委員会においては、予算書の提出時期及び予算の単年度主義、平成15年度特別会計予算に関する諸問題、平成15年度予算における精神保健福祉政策、年金、医療、介護等社会保障制度改革、道路4公団改革の目的及び今後の高速道路建設方針、能力等級制度導入の是非等の公務員制度改革、ETFを巡る竹中金融担当大臣・経済財政政策担当大臣発言、利根川河川敷における産業廃棄物不法投棄問題、警視庁情報公開センター設置ビデオカメラ問題、旧正田邸の文化財としての価値等について、質疑が行われた。なお、名古屋刑務所における特別公務員暴行陵虐致死事件に関する森山法務大臣の答弁を巡り、一時審議が中断し、同日の理事会で、野党側は集中審議を要求、21日に特に同事件に係る審議を行うため、委員会を開会することに協議決定した。

同月20日、特に政治資金問題等に関して一般的質疑が行われ、政党及び政治家の政治資金の在り方、公共事業受注企業からの寄附の在り方、自民党長崎県連違法献金事件、熊谷組への政治献金返還に関する福井地裁判決、大島農林水産大臣の元秘書を巡る諸問題、野党4党提出の「政治資金規正法等の一部を改正する法律案」についての所見、秘書名義貸し及び秘書給与流用疑惑の真相究明の必要性、良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法の成立を巡る政治献金等について、質疑が行われた。

同月21日、特に行刑及び人権等に関して一般的質疑が行われ、一連の名古屋刑務所における特別公務員暴行陵虐事件の原因及び防止策、受刑者死亡の平成13年12月事件及び平成14年5月事件を森山法務大臣が最初に認知した時期、平成13年12月事件に関する森山法務大臣の委員会及び記者会見における発言の齟齬、同事件の法務省及び森山法務大臣への報告時期及び内容、同事件の司法解剖鑑定書の内容、刑務所の監督体制及び監督者の責任、森山法務大臣の責任及び法務省矯正局長の責任、情願制度について森山法務大臣の所見、情願申立て却下の決定について森山法務大臣の責任、情願制度の運用と監獄法の精神等について、質疑が行われた。

同日の理事会において、与党側は、分科会を同月27日及び28日に開会することを提案したが、野党側は、審議がいまだ十分でないこと、大島農林水産大臣の元秘書ら参考人招致に対する回答がない等として、与党側の分科会日程案を拒否し、引き続き協議することとなった。

同月24日の予算委員会においては、午前に、経済・財政・金融・雇用等に関して集中審議を行い、経済政策の基本姿勢と経済運営のプライオリティ、インフレターゲットに対する政府及び日銀の見解、株価下落の現状認識と対策、中小企業への貸し渋り、貸し剥がしの実態調査の必要性、大手銀行による各種手数料引上げ問題等について、質疑が行われた。また、午後に、医療・福祉等に関して集中審議を行い、年金・医療保険等今後の社会保障の在り方、高齢者医療費自己負担等医療制度改革、野党4党提出の医療費3割引上げ凍結法案、カネミ油症被害者対策、ハンセン病患者非入所者生活支援の必要性等について、質疑が行われた。

同月25日及び26日午前、公聴会を開会した。

同月25日の理事会において、分科会設置に関する件について、委員会において採決を行うことに協議決定し、同日、公聴会に引き続き委員会を開会し、同月27日及び28日に分科会を開会することを全会一致で決定した。

同月26日の理事会において、野党側は、衆議院法制局が大島農林水産大臣の予算委員会における答弁作成に関与していたとして、衆議院法制局長及び法制次長の参考人招致を要求し、その協議の間、同日の委員会の開会が遅れた。

同日の委員会では、自賠責特会から一般会計への繰入れ・繰戻し状況、イラクへの特使派遣及び新たな国連決議案に対する我が国の対応、北朝鮮ミサイル発射問題、市町村合併問題、府中刑務所及び横須賀刑務所における受刑者死亡事案の報告内容、情願制度、日銀総裁人事、女性の生涯を通じた健康支援、サービス残業の実態調査結果及び労働基準監督官の増員問題等について、質疑が行われた。また、大島農林水産大臣の予算委員会における想定問答を衆議院法制局が作成した事実の有無について、大島農林水産大臣は、法律上誤りのない認識を持つために法制局に問いかけをし、返事をもらったとの事実関係は認めたものの、議員の立場での依頼であり、想定問答作成の依頼は行っていない旨答弁した。衆議院法制局長も、閣僚としての立場での依頼ではないとの認識に立って作業を行った旨答弁したが、野党側は納得せず、委員会は再三中断した。

同月27日の理事会において、衆議院法制局長が、事実経過等について報告を行ったが、野党側は納得せず、集中審議を行うよう要求し、28日以降の審議日程に関しては、与野党筆頭理事間で引き続き協議を行うこととなった。

同月27日及び28日、分科会を開会した。

同月28日の理事会において、藤井予算委員長は3月3日に委員会を開会し、平成15年度予算の採決を行うことを裁定したが、野党側はこれに反対した。

3月3日午前の理事会において、衆議院法制局の大島農林水産大臣に対する想定問答作成問題等について協議が行われ、同日の委員会は断続的に質疑が行われた。

同日の委員会においては、午前に、特に外交等に関して一般的質疑、午後に、締めくくり質疑を行い、平成15年度予算の景気対策としての有効性、小泉内閣の政治姿勢、イラク問題に対する我が国の基本的立場及び戦費負担、新たな国連決議と米国によるイラクに対する武力行使との関係、日朝平壌宣言の有効性、大量破壊兵器の完全廃棄と日朝国交正常化及び経済援助との関係、在韓米軍の再編が在沖縄米軍基地に与える影響、公共事業受注企業からの政治献金、名古屋刑務所における特別公務員暴行陵虐致死事件、大島農林水産大臣に対する献金疑惑及び衆議院法制局による想定問答作成問題等について質疑が行われ、平成15年度予算の質疑は終局した。

平成15年度予算審査における質疑の主なものは次のとおりである。

第1に、経済財政政策について、「小泉内閣総理大臣は構造改革なくして景気回復なしと宣言しているが、いつになれば景気がよくなるのか」、「改革は道半ばであり、成果が現れるまでいまだしばらく時間が必要と言うが、計画が未達成ではないか」との趣旨の質疑があった。これに対して、小泉内閣総理大臣から、「改革と展望の中においても示しているように、2005年から06年の段階でプラスの成長に持っていく」、「2、3年は痛みに耐えていただきたいと言って総理に就任した。確かに成果はいまだ出ていないが、これから進める改革が将来必ず大きな果実となって現れるよう不断の努力を続け、いずれ国民が審判を下してくれる」旨の答弁があった。

また、インフレターゲットの設定に関して質疑があった。これに対して、竹中金融担当大臣・経済財政政策担当大臣から、「重要な点は、マネーサプライを増やすことである。場合によっては、物価目標のようなものも有効に作用している国もあり、前向きにいろいろな形、可能性を考えていただきたい。実現への政策手段については、日銀が独立性を持って決める問題である」、速水日本銀行総裁から、「努力目標的にインフレターゲットを導入しても、効果が期待できないだけでなくて、逆に市場や経済を著しく不安定化させる危険があると思う」旨の答弁があった。

第2に、小泉内閣総理大臣の公約について、「(公約を守れなかったことは)大したことではない」(1月23日予算委員会)との発言に関して質疑があった。これに対して、小泉内閣総理大臣から、「不適切な発言だったと反省している。今後の行動で信頼を得られるように努力する」旨の答弁があった。

また、新規公債発行30兆円枠に代わる新たな目標である「2010年代初頭のプライマリーバランス黒字化」に関して質疑があった。これに対して、塩川財務大臣及び竹中金融担当大臣・経済財政政策担当大臣から、「一時後退したが、方針としては2013年をめどにプライマリーバランスをゼロにする」、「2010年代初頭にプライマリーバランスを回復させるシナリオは十分に達成できる」旨の答弁があった。

第3に、社会保障制度について、医療費の自己負担の増加に関して質疑があった。これに対して、小泉内閣総理大臣から、「医療負担で痛みはあるが、負担額だけではなく医療保険全体のことを考えていただきたい。現行どおりの場合、税金投入等、他にはね返りが出てくる。そういうことも考慮して、高齢者も若い世代もともに皆保険制度を維持して、適切な医療が受けられる制度を安定的に維持する点に配慮すべきである」旨の答弁があった。

また、平成16年度からの基礎年金国庫負担を2分の1へ引き上げる際の財源に関して質疑があった。これに対して、小泉内閣総理大臣から、「年金制度を持続可能な安定した制度にしていくかというための議論は、消費税を上げる以外にたくさんある。保険料をどれくらいにするか、消費税以外に安定した財源はどういうものがあるか、じっくり議論する必要がある」、「消費税引上げやむなしとの声が各方面から出ているが、9月の総裁選で再選された場合、3年間ぐらいの在任中は消費税を引き上げない」旨の答弁があった。

第4に、イラク問題について、米国等によるイラク攻撃が予想される状況下、「新たな国連決議がないまま、米国等がイラクに対して武力攻撃を行う場合の我が国政府の対応」に関して質疑があった。これに対して、小泉内閣総理大臣から、「国際協調体制と日米同盟の重要性を十分考えながら、日本の国益を考えて判断する」旨の答弁があった。

また、「新たな国連決議がないまま、米国等がイラクに対して武力攻撃を行うことはできない」との趣旨の質疑があった。これに対して、川口外務大臣から、「国連決議1441に基づいて武力行使を行うことはできないが、過去の国連決議に基づいて武力行使が行われたケースがある」旨の答弁があった。

第5に、北朝鮮問題について、北朝鮮への我が国の対応に関して質疑があった。これに対して、小泉内閣総理大臣及び川口外務大臣から、「米国、韓国はもちろん、中国、ロシアをはじめ関係国との緊密な連携のもとに、北朝鮮側に、国際社会からの孤立から国際協調体制への転換を働きかけることが今後も必要である」、「日朝平壌宣言の精神と原則にのっとり、核問題、安全保障問題、そして拉致問題等二国間問題も含め、さまざまな問題をこの地域の平和と安定が増す形で解決をして国交を正常化し、その後で経済協力を行う」旨の答弁があった。

また、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合の日本の対応に関して質疑があった。これに対して、石破防衛庁長官から、「日本に向けて撃ち込まれた場合には、基本的には、いかにしてその被害を最小限にするかということに限定せざるを得ず、自衛隊等の災害派遣という枠組みになる」旨の答弁があった。

第6に、政治倫理問題について、大島農林水産大臣の元秘書に係る政治資金問題に関して、「元秘書が600万円を受け取りながら政治資金収支報告書に記載していなかったのは政治資金規正法違反ではないか」との趣旨の質疑があった。これに対して、大島農林水産大臣から、「元秘書が自分に報告することなく1年半預かったままにし、一部を流用したため、処理のしようもない」旨の答弁があった。

また、公共事業受注企業からの政治献金について質疑があった。これに対して、小泉内閣総理大臣から、「党内の意見、識者の意見、各党の意見を踏まえて、どういう制限がいいかという点について検討している」、「当然制限は必要であるが、企業献金を全面禁止する考えには立っていない」旨の答弁があった。

3月3日の締めくくり質疑終局後、民主、自由、共産及び社民の4会派から提出された「平成15年度予算3案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議」について趣旨の説明を聴取し、討論、採決の結果、動議は否決され、平成15年度予算3案はいずれも原案のとおり可決された。

翌4日の本会議において、民主、自由、共産及び社民の4会派から提出された「平成15年度予算3案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議」について趣旨弁明があり、討論の後、動議は否決され、記名投票による採決の結果、賛成283、反対177で平成15年度予算3案は可決、参議院に送付された。

参議院の予算委員会は、2月5日に塩川財務大臣から平成15年度予算3案の趣旨説明を聴取し、3月5日及び6日に基本的質疑を行った。同月7日から質疑を行い、11日に政治資金等に関する集中審議、20日に公聴会、24日に外交・経済に関する集中審議を行った。同月28日、質疑終局後、討論、採決の結果、平成15年度予算3案は賛成多数で可決、同日に開かれた本会議においても、討論、採決の結果、賛成多数で可決され、平成15年度予算3案は成立した。

(予算通過後の主な動き)

予算の衆議院通過後の3月14日、衆議院予算委員会において、大島農林水産大臣元秘書の政治資金問題に関する参考人質疑を同月19日に行うことを決定した。しかし、参考人予定者から委員会に出席できない旨の連絡があったため、同月18日の理事懇談会において、同月19日の委員会は開かないこと、また、今後の日程等は委員長に一任することに協議決定した。

3月17日、米軍等によるイラク攻撃が開始され、同月20日の理事懇談会で、同月24日に委員会を開会することに協議決定した。

同月24日の予算委員会においては、イラク問題等に関して集中審議を行い、米国等によるイラク攻撃の法的根拠や米国に対する我が国政府の支持の是非を中心に質疑が行われ、小泉内閣総理大臣は、日本を攻撃する意図を持った国に対して大きな抑止力となる日米同盟関係は不可欠である旨述べた。

5月17日、りそな銀行の15年3月期決算における同行の自己資本比率が健全行の国内基準である4%を下回る2%程度に低下するとの報告を受け、同日、政府は金融危機対応会議を開催し、預金保険法第102条第1項に規定する「信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれ」があると認め、公的資金の投入を決定した。

5月28日、予算委員会において、外交・経済等に関して集中審議を行い、りそな銀行への公的資金注入問題、北朝鮮問題等を中心に質疑が行われた。審議の中で、りそな銀行に対する公的資金注入に至った経緯及び政治責任について、小泉内閣総理大臣は、「未然に金融危機を防止する必要があるという観点から、対応会議を開き、公的支援、注入を決定した」、「公的資金注入が将来返ってくるような健全化に努力させていきたい、自主的な努力を促していきたい、また、金融庁も監督していきたい、そういうことによって、金融健全化に向けて努力を傾けていくのが責任だと思っている」と答弁した。

6月23日、予算委員会において、構造改革問題等に関して集中審議を行い、いわゆる三位一体の改革、規制改革等について、質疑が行われた。審議の中で、地方に移譲する基幹税の具体的税目を示さなかったことについて、小泉内閣総理大臣は、「大枠を示すのが私の仕事であり、今から具体策を決める方がおかしい」旨答弁した。

7月18日、予算委員会において、経済問題等に関して集中審議を行い、デフレ対策、マニフェスト作成の必要性等について、質疑が行われた。審議の中で、

次の衆議院選挙に際してはマニフェストを作成すべきである旨の質疑があった。これに対して、小泉内閣総理大臣は、「マニフェスト、いわゆる公約はしっかり国民に訴えなければならないと思っている。自民党総裁選の総裁候補の公約は、その候補が当選すれば当然党の公約になり、自分が再選すれば、従ってもらうのは当然である」旨答弁した。


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