衆議院

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【第163回国会】

1 国務大臣の演説及び質疑

平成17年9月26日に小泉内閣総理大臣の所信表明演説が衆議院本会議において行われ、これに対して、同月28日に各党の代表質問が行われた。

(1) 小泉内閣総理大臣の所信表明演説

(はじめに)

この度の総選挙の結果を受け、三度(みたび)、内閣総理大臣の重責を担うことになりました。改革なくして成長なし、民間にできることは民間に、地方にできることは地方にとの方針の下、自由民主党及び公明党による連立政権の安定した基盤に立って、引き続き構造改革を断行する覚悟であります。

私は就任以来、我が国の再生と発展に向け、金融、税制、規制、歳出にわたる広範囲な構造改革を進めてまいりました。この結果、日本経済は、不良債権の処理目標を実現し、政府の財政出動に頼ることなく、民間主導の景気回復への道を歩み始めました。

改革の芽が様々な分野で大きな木に育ちつつある現在、改革を止めてはなりません。

(郵政民営化と構造改革の加速)

改革を進めていく際、基本的な方針は支持されるのに、個別の具体論に入ると、既得権益の壁にぶつかり根強い反対に直面します。この総論賛成、各論反対の典型で、最も抵抗の大きい分野として長年誰も手をつけようとしなかったのが、郵政民営化であります。

公務員を減らしなさい、行財政改革を断行しなさい、民間にできることは民間に、この基本方針には多くの人々が賛成するのに、なぜ、郵政事業だけは公務員でなければできないのか、民間人に任せられないのでしょうか。

先の国会において、郵政民営化関連法案は否決されました。このため私は、本当に国民が民営化は必要ないと判断しているのか、直接その意思を確認したいと思い、衆議院を解散しました。郵政民営化は、まさに行政、財政、経済、金融などあらゆる分野の構造改革につながる改革の本丸と確信するからであります。

郵政民営化の是非が問われたこの度の総選挙において、これに賛成する自由民主党及び公明党は、多くの国民の信任をいただきました。私は、この民意を大きな支えとして、改めて郵政民営化関連法案を提出し、国民を代表する国会で御審議いただき、成立を期す決意であります。

郵政事業は、26万人の常勤の国家公務員を擁しています。国民の安全と安心をつかさどる全国の警察官が25万人、陸・海・空すべての自衛官は24万人、そして霞が関と全世界百数十か国の在外公館に勤務している外務省職員に至っては6千人にも及びません。今後も公務員が郵政事業を運営する必要があるのでしょうか。

郵政事業を民営化すれば、創意工夫と知恵により、多様でより良い商品やサービスが展開されると思います。国民の大切な資産を民間向け資金として活用することは、経済の活性化につながります。従来免除されていた法人税等の支払いや株式の売却などにより、財政再建にも貢献します。郵政民営化は、簡素で効率的な政府の実現を加速するものであります。

国民の間には、民営化によって、過疎地の郵便局がなくなるのではないか、郵便局で貯金や保険を扱わなくなるのではないかという不安が存在するのも承知しております。国民の貴重な資産である郵便局のネットワークを維持し、国民の利便に支障が生じないようにいたします。

資金の入口の郵政民営化だけではなく、出口の政府系金融機関の改革に取り組んでまいります。

地方にできることは地方にという方針の下、4兆円程度の補助金改革、3兆円規模を目指した税源移譲、地方交付税の見直しの三位一体の改革について、地方の意見を真摯に受け止め、来年度までに確実に実現いたします。

小泉内閣発足以来、公共事業費を約4割削減するなど、既に10兆円に上る歳出改革を断行しました。2010年代初頭には、政策的な支出を新たな借金に頼らずにその年度の税収等で賄えるよう、財政構造改革に全力で取り組みます。国家公務員の給与に関し、都会と地方それぞれで民間の給与実態に合わせるなど給与体系を見直すとともに、国家公務員の定員の純減目標を設定し、総人件費の削減を実行します。

私は、このような構造改革を断行し、政府の規模を大胆に縮減してまいります。

(国民の安全と安心)

少子高齢化が進む我が国は、本格的な人口減少社会を目前に控えており、子や孫の世代に負担を先送りすることなく、国民一人ひとりが豊かな生活を送ることができる活力ある社会を構築していかなければなりません。

年金、医療、介護を柱とする社会保障制度は、国民生活を支える基盤です。国民の将来に対する不安を解消していくためには、適正な給付と負担で持続可能な制度とすることが政治の責任であると考えます。とりわけ年金制度は、長期的な視野に立って改革を進める必要があり、与野党が胸襟を開いて協議を行い、意見の相違を埋める努力をすることが不可欠です。

先日の台風などの災害や米国南部でのハリケーンにより被害に遭われた方々に対し、心からお見舞いを申し上げます。被災者が一日も早く安心した生活を送れるよう、国内の被災地の復旧と復興に万全を期すとともに、建築物の耐震化を促進するなど災害に強い国づくりを進めてまいります。

今後被害の拡大が懸念されるアスベスト問題に対処するため、被害者救済対策やアスベストの早期かつ安全な除去などに政府を挙げて取り組んでまいります。

(世界の中の日本)

我が国の安全と繁栄には、世界の平和と安定が欠かせません。日米同盟と国際協調を外交の基本として、国際社会の責任ある一員としての役割を積極的に果たしてまいります。

国際社会は今、途上国の開発や貧困の克服、地球環境の保全、大量破壊兵器の拡散防止など、かつては想像もできなかったような複雑かつ困難な課題に直面しています。

私は、先日の国連総会で、山積する諸問題に対し効果的に機能する国連が必要であることを訴えました。同じ考えを持つ各国の理解と協力を得ながら、安全保障理事会の改革など国連の強化に向けて全力を尽くします。

テロとの闘いは終わっていません。テロ対策特別措置法の期限の延長を図るなど、国際社会と協力してテロの防止・根絶に取り組みます。

イラクでは、国民が自らの手で平和な民主国家を建設中であり、我が国の資金援助と自衛隊による人道復興支援活動は、住民からの高い評価を受けています。今後の自衛隊の活動については、イラク国民の要望や国際情勢を踏まえつつ、現地の状況をよく見極めた上で判断してまいります。

中国や韓国を始めとする近隣諸国とは、幅広い分野における協力を強化し、相互理解と信頼に基づいた未来志向の友好関係を構築してまいります。北朝鮮との間では、拉致、核、ミサイルの問題を包括的に解決して国交正常化を目指します。

原油価格の高騰は、世界有数の輸入国たる我が国はもとより、東南アジア諸国などに大きな影響を及ぼすことが懸念されます。我が国は、いち早く備蓄している石油を放出するなど国際社会に貢献しておりますが、再び石油危機が起こることのないよう、引き続き各国と緊密に協力してまいります。

二国間の経済連携を積極的に進めるとともに、WTO新ラウンド交渉の最終合意に向けて精力的に取り組みます。

(むすび)

政治は国民全体のものであり、一部の既得権益を守るものであってはなりません。今まで郵政民営化は暴論ではないかとの指摘もありましたが、総選挙の結果、国民は正論であるとの審判を下したと思います。

私は、国民の声を厳粛に受け止め、責任を持って郵政民営化を実現してまいります。痛みを恐れず、既得権益の壁にひるまず、過去の慣例にとらわれず、国民の協力の下、一身を投げ出し、内閣総理大臣の職責を果たすべく、全力を尽くしてまいります。

改革なくして明日はありません。国民の支持なくして改革は実行できません。改革の原動力は国民一人ひとりであり、改革が成功するか否かは、国民の強い意思と政治家の断固たる行動力にかかっています。日本社会には、新しい時代に挑戦する意欲とやればできるという自信が芽生えています。改革を止めることなく、勇気と情熱を持って、日本の明るい未来を築こうではありませんか。

国民並びに議員各位の御協力を心からお願い申し上げます。

(2) 国務大臣の演説に対する質疑要旨

9月26日の国務大臣の演説に対する質疑は、28日に前原誠司君(民主)、武部勤君(自民)、鳩山由紀夫君(民主)、神崎武法君(公明)、志位和夫君(共産)及び阿部知子君(社民)が行った。

質疑の主なものは、次のとおりである。

第1に、総選挙について、「[1]解散権に対する見解、[2]自公選挙協力、[3]郵政公社が税金を使わずに郵政事業を行っていることについて選挙期間中総理の国民に対する説明の欠如、[4]結果を受けての認識と決意」等の質疑に対して、「[1]解散は衆議院議員の身分を失わせる重い行為であると認識しつつ、内閣がその政治的責任において決断すべきものであり、重要案件の実現につき主権者たる国民の信を問うことは憲法上認められた解散権の行使であり濫用に当たらない、[2]総理大臣に就任以来、自民党及び公明党による連立政権の安定した基盤に立って構造改革を進めてきた。今回の総選挙においても自民党と公明党は協力してきたが、各選挙区において個別の候補者のとる協力方法については、それぞれの事情を勘案しながら各候補者が適切に判断すべきものである、[3]郵政民営化の利点を十分説明した上で郵政民営化の是非を問い、多数の支持を得たところであり、国民に語っていないとの指摘は当たらない、[4]総理大臣就任以来の方針と実績について広い支持を得た。この国民の支持を厳粛に受け止め、郵政民営化のみならず、構造改革路線を軌道に乗せていきたい」旨の答弁があった。

第2に、郵政民営化について、「[1]郵貯の規模縮小と預金限度額、[2]民業圧迫の疑念、[3]移行期間の短縮、民営化の移行プロセスを監視する民営化委員会に勧告権を付与することの是非、[4]持ち株会社による株の買戻し、[5]郵政民営化による利用者や現郵政職員の不安、[6]民営化の理念とそのメリット、[7]前回提出法案からの変更点、[8]郵政民営化はアメリカ政府の要求にこたえたものとの指摘に対する見解、[9]340兆円の郵貯・簡保資金を社会基盤の整備に使う必要性」等の質疑に対して、「[1]郵政事業は、郵貯、簡保の収益で雇用やネットワークが支えられており、急激に規模縮小すれば経営は成り立たない。限度額引下げは利用者に不便を強いることになり、ネットワークが維持できなければ地域の利便性は著しく低下する、[2]金融2社は一般商法会社として設立し、全株処分によって国の信用、関与を断ち切り、民営化委員会の意見を聴取の上、段階的に規制緩和していくなど民業圧迫とならないよう配慮している、[3]移行期間10年は、円滑な民営化を実現するための相当程度の時間と勘案した。民営化委員会は内閣総理大臣を本部長として設置される機関であることから、意見は施策に適切に反映させていく、[4]郵便貯金銀行、郵便保険会社の株式の買戻しに関しては、他の銀行や保険会社の株式を取得する場合と同様の一般的なルールのもとで行われるものであり、民営化の基本方針に反するものではない、[5]民営化後も事業の公共性に配慮し、必要な郵便局ネットワークの維持等、さまざまな工夫を凝らしている。公社職員の新会社での雇用を法律により確実に確保し、公社での勤務条件への配慮の義務づけ等、不利益が生じることのないよう措置を講ずる、[6]郵政民営化は構造改革を着実に推進し、小さくて効率的な政府の実現によって経済の活性化を図るものである。民営化後は自由な経営により質の高いサービスが提供でき、約340兆円の郵貯、簡保資金を官から民へ流す道を拓くことになる。郵政公社は固定資産税や印紙税、また預金保険料を民間のように納付しておらず、見えない国民負担が存在するが、民営化し利益が上がれば法人税も期待できる、[7]主な変更点は第一に、民営化の実施スケジュールを半年延期したこと、第二に前回提出法案について、衆議院で修正された事項を法案に反映させていること、[8]米国が郵政民営化の必要性を説いている前から郵政民営化の必要性を訴えてきた。米国の要求にこたえたものであるとの指摘は当たらない、[9]郵貯・簡保資金を民間資金に転化し国民の大切な資産を民間部門で活用することにより、経済の活性化につながる。資金をどのような分野で活用するかは、あらかじめ官のコントロールによって決めるべきではなく、適切な競争環境の中で判断されるべきものと考える」旨の答弁があった。

第3に、道路公団問題について、「[1]橋梁談合問題、[2]民営化凍結及び会長人事見直し、[3]談合防止強化」等の質疑に対して、「[1]公共工事の入札、契約について、官製談合等の不正行為はあってはならないことであり、日本道路公団幹部が逮捕・起訴された事件は遺憾である、[2]既に日本道路公団において不正行為防止策を実行に移し、民営化後も徹底して取り組むこととしており、民営化の凍結や会長人事の見直しは考えていない、[3]官製談合防止法等の強化については、国民意識の動向、刑罰体系全体の中での整合性など、種々の観点を総合考慮しながら、今後検討していく。国土交通省と日本道路公団では既に入札談合の再発防止対策を取りまとめたところであり、一般競争入札の拡大等、公平中立で透明性の高い競争を促進し、談合防止の徹底を図る」旨の答弁があった。

第4に、税財制改革について、「[1]債務残高累増の責任、[2]財政健全化、[3]増税の必要性の認識とその時期や規模、対象となる税目、[4]定率減税廃止、[5]大企業・金持ちへの減税も廃止する必要性」等の質疑に対して、「[1]近年の債務残高累増の主たる要因は、高齢化の本格的な進展による社会保障関係費の増加や、経済情勢の深刻な悪化等による税収の低迷等であると考える、[2]2010年代初頭に支出を借金に頼らずにその年度の税収等で賄うことを目指して、歳出歳入一体の財政構造改革を進めていく、[3]まずは徹底した行財政改革に取り組むべきと考えているが、他方、国債依存度が40%に達しており、歳出削減だけで財政再建は困難。税制全体の在り方を総合的に考えて、国民的な議論を深め、平成18年度内をめどに結論を得たいと考えている。在任中に消費税を引き上げる考えはない、[4]景気対策として導入された暫定的な税負担の軽減措置であり、経済情勢等に応じてその規模を見直していくべきであり、経済情勢等を十分に見極めつつ今後議論していく、[5]平成11年度税制改正において実施された個人所得課税の最高税率及び法人課税の実効税率の引下げは、景気対策である定率減税とは位置づけが異なる」旨の答弁があった。

第5に、年金改革について、「[1]年金制度の持続可能性、[2]実質破綻をしている国民年金の対策、[3]短時間労働者の厚生年金の適用問題、[4]年金制度の一元化に向けた協議、[5]議員年金改革への決意」等の質疑に対して、「[1]年金制度にとって、長期的な給付と負担の均衡を確保することは制度の根幹にかかわる重要な問題であり、昨年の年金改革によって、将来に向けて持続可能な制度とすることができたと考えている、[2]国民年金の未納、未加入問題の解消は、年金制度への信頼にかかわる重要課題であり、強制徴収の実施や免除制度の適用など、的確な対策を強力に推進している、[3]短時間労働者の厚生年金の適用拡大等については、平成16年の改正法においても検討条項が規定されていることなどを踏まえ、早急に検討を進める、[4]被用者年金の一元化に向け、制度間における給付や負担の水準の相違等、幅広く議論し、処理方針を早く取りまとめるよう指示した。両院合同会議における議論が、早急に再開されることを期待している、[5]議員年金は廃止を前提に検討している」旨の答弁があった。

第6に、アジア外交について、「[1]6者協議、[2]日朝国交正常化、[3]中国や韓国首脳との関係、[4]近隣諸国との信頼醸成、[5]宗教的に中立で国立の追悼平和祈念施設の設置、[6]12月開催の東アジア首脳会議での成果に対する危惧」等の質疑に対して、「[1]今般の6者協議において北朝鮮がすべての核兵器及び既存の核計画の検証可能な廃棄を約束したことは、朝鮮半島の非核化を実現する上で重要であり、これを実行に移すべく、各国と協調し、問題の解決に努力する、[2]日朝平壌宣言にあるとおり、核、拉致、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決して日朝国交正常化を実現し、その上で経済協力を行うという考えは一貫している。エネルギー支援等については、日朝関係全般の状況も踏まえ検討していく、[3]中国の胡錦濤国家主席とは平成17年4月に、韓国の盧武鉉大統領とは同年6月に首脳会談を行い、それぞれの二国間関係が極めて重要であるとの認識を共有するとともに、忌憚のない意見交換を行っている、[4]中国、韓国を初めとするアジア諸国とは、地域の平和と繁栄を実現していくことが重要である。意見が異なる個別の問題についても対話を深め、幅広い分野の協力と国民各層における交流を強化することを通じ、相互理解に基づいた未来志向の関係を構築していく、[5]設置に向けた調査をするか否かも含め、国民世論の動向や与党の意見も踏まえながら検討する必要がある、[6]東アジア首脳会議においては、多様性を認めながら経済的繁栄を共有する開かれた東アジア共同体の構築に向け、積極的な役割を果たしていく」旨の答弁があった。

第7に、三位一体改革について、「[1]地方分権、三位一体改革の進め方、[2]いわゆる補完性の原理に基づいた地域主権の発想についての見解、[3]義務教育費国庫負担金の存廃問題、[4]地方6団体提出の国庫補助負担金等に関する改革案への対応」等の質疑に対して、「[1]地方にできることは地方にという理念のもと、国の関与を縮小し、地方の権限、責任を拡大して地方分権を一層推進していく。地方の意見を真摯に受け止め、平成18年度までに確実に実現する、[2]地方が自由に使える財源を増やし、自立を可能にして、自らの創意工夫と責任で自治体の政策を決定できるようにすることが重要であり、国は本来果たすべき役割を重点的に担うようにすべきと考える、[3]昨年末の政府・与党合意に基づき行われている中央教育審議会の審議結果を踏まえつつ、本年中に結論を出す、[4]昨年の政府・与党合意を踏まえ、かつ地方の意見を真摯に受け止めて補助金改革を進めていく」旨の答弁があった。

第8に、構造改革について、「[1]特別会計・特定財源制度の見直し、[2]政府系金融機関の改革、[3]その他の特殊法人改革、[4]天下りの抑制、[5]公務員の給与、人件費」等の質疑に対して、「[1]すべての特別会計、特定財源制度の事業内容等の精査等により、非効率なものを洗い出し、温存を許すことなく根本的に見直し、国全体としての一層の歳出の合理化、効率化の観点から、政府・与党一体となって、一層徹底した改革を行っていく、[2]事務事業の徹底した見直しの結果、住宅金融公庫の直接融資を廃止する等の成果が上がっており、住宅金融公庫を除く8機関については、経済財政諮問会議において、11月をめどに基本方針を取りまとめるため、統廃合・民営化等を含めて議論していく、[3]公営競技関係法人は、組織の在り方や助成金交付事業の透明化等について議論を行い平成17年度中に結論を得る。NHKは、国民・視聴者の信頼回復や受信料の公平負担及び健全経営の確保に向けた取組がなされることを期待している。今後とも、特殊法人等から移行した独立行政法人も含め、事業の廃止、縮小、重点化等を通じて財政支出の縮減を図るなど、改革の実施に取り組んでいく、[4]国家公務員型の独立行政法人の役職員については、離職後に民間の営利企業への就職が制限されている一方、全ての特殊法人、非公務員型の独立行政法人の役職員に対して営利企業への就職の制限を課することは、職業選択の自由との関係も考慮しつつ、なお検討すべきである、[5]国、地方を通じ、公務員の給与に関し、地域の民間の給与実態に合わせるなど給与体系の見直しを進めるとともに、公務員の定員の純減目標を設定し、削減を平成18年度より行っていく」旨の答弁があった。

第9に、少子化対策について、「[1]少子化対策についての有効な手段、[2]人口減少社会を乗り越えるための構造改革、[3]働き方の見直し、[4]子育ての経済支援策」等の質疑に対して、「[1]昨年末に若者の自立、働き方の見直し、地域のきめ細かな子育て支援など幅広い分野で施策内容や目標を提示した子ども・子育て応援プランを策定したところであり、これを着実に進めていく、[2]少子化に対処するため、保育、働き方の見直し、教育、経済的支援など各種施策を、少子化社会対策会議を中心に、政府を挙げて総合的に推進していく、[3]時短促進法の改正案を今国会に再提出する。短時間正社員などの働き方を広げることによるワークシェアリングの普及促進、長時間にわたる時間外労働の是正、両立支援ハローワークにおける再就職の援助等の促進などに取り組んでいる、[4]地域や家庭の多様な子育て支援、働き方にかかわる施策、児童手当等の経済的支援など多岐にわたる施策について、総合的かつ効率的な視点に立って、財源も確保しつつ、その在り方を積極的に検討していく」旨の答弁があった。

第10に、医療制度について、「[1]医療費の伸び率の適正化、[2]医療制度改革、[3]不必要な医療費の削減と高い質の医療を提供するための仕組み、[4]保険者の再編統合、診療報酬の見直し」等の質疑に対して、「[1]医療費は今後、高齢化の進展に伴い、国民所得を上回る勢いで伸びていくことが見込まれていることから、国民皆保険制度の持続可能性を確保するため、医療費を適正化する仕組みを構築することは早急に取り組むべき重要な課題である、[2]医療費適正化の実質的な成果を目指す政策目標の設定や、保険給付の内容、範囲の見直しなどについて年内に結論を得た上で、医療保険制度改革関連法案を次期通常国会に提出するよう取り組んでいく、[3]高齢者の特性に応じ、世代間、保険者間の負担の公平化を図る新たな高齢者医療制度を創設する。患者本位の良質、かつ効率的な医療提供体制を構築する、[4]保険者機能の発揮を促す都道府県単位を軸とした保険者の再編統合、経済、財政とのバランスを踏まえるとともに、患者の選択や医療機関の機能を反映した診療報酬の見直しなどの改革案を年末までに取りまとめる」旨の答弁があった。

第11に、政治とカネの問題について、「[1]談合参加企業からの政治献金、[2]ヤミ献金事件の真相解明、[3]迂回献金、[4]政治資金規正法の改正」等の質疑に対して、「[1]個別企業がどういう行為をしているかについて常に把握することは難しく、また、一般論として企業は経済活動とあわせて政治活動の自由が認められているところであると考える。しかし、問題を指摘されている企業からの献金については、個別の状況をチェックした上で、対応を検討していく、[2]政治家が政治資金を受け取る際には、政治資金規正法にのっとって適正に処理されなければならない。国会における関係者の証言が必要かどうか、国会において決めるべき問題であり、各党各会派において十分に議論していただきたい、[3]自民党では、昨年秋に調査をした結果、政治資金規正法に違反するいわゆる迂回献金を行った事実はないという報告を受けている、[4]先の国会において、与党は改正案を提出し、野党案とともに御審議いただいたところであるが、規制の対象や内容についてはいろいろなご意見があるので、規定の実効性などの点も含め各党各会派で十分ご議論いただきたいと考える」旨の答弁があった。

第12に、アスベスト対策について、「[1]今国会にアスベスト対策法案を提出しない理由、[2]労災認定されずに現に闘病されている方への支援策及びアスベスト被害者の実態調査と建造物の総点検の必要性、[3]アスベストの全面禁止」等の質疑に対して、「[1]既存の法律で救済できない被害者の救済について実態把握を行い、新法を第164回通常国会に提出することとしているほか、関係閣僚会合を開催し、アスベストの使用の実態把握、建築物の解体時の対策、早期の全面禁止など、関係省庁で緊密な連携を図りつつ、機動的に対策を進めている、[2]労災認定されない者に対する救済、被害者や使用実態についての調査と公表、建築物の解体時等の対策等は、いずれも重要な課題であり、関係省庁の緊密な連携のもとに誠実に対応していく、[3]現在使用が許されているアスベストについても、早急に全面禁止を行う必要があると考える。厚生労働省は石綿代替化等検討会を立ち上げ検討し、来年1月までに取りまとめた上で、全面禁止を前倒ししたいと考えている」旨の答弁があった。

第13に、災害対策について、「[1]被災者生活再建支援のための現行制度の見直しの必要性、[2]政府の危機管理体制、[3]水害対策、[4]地震対策」等の質疑に対して、「[1]これまでも支給限度額の引上げ、居住安定支援制度の創設等の改正を行い、また、領収書の添付の廃止、概算払いの限度額の拡大等の運用改善を行ったところであり、今後とも制度の積極的活用を図る、[2]関係省庁の機能を活かしながら政府全体として総合力を発揮できるよう、これまでも内閣危機管理監を設置するなど内閣を中心とした体制の強化を図ってきたところであり、引き続き不断に検討を行っていく、[3]豪雨災害対策緊急アクションプランを策定するとともに、ハザードマップの整備を義務化する水防法の改正を行い、これらの施策に取り組んでいる、[4]住宅・建築物の地震防災推進会議において、緊急に取り組むべき施策について取りまとめた。中央防災会議においては、耐震改修を促進する制度見直しに直ちに取り組むことが決定され、耐震改修促進法の改正案を、第163回国会に提出する。また、耐震改修に要した費用の一定割合を税額から控除する耐震改修促進税制創設の実現に向けて取り組んでいく」旨の答弁があった。

第14に、テロ特措法について、「[1]テロ特措法の延長について説明する必要性、[2]日本の給油活動がイラク戦争に参加する米軍艦船に転用されているとの指摘の真偽、[3]日本がテロの標的になっているとの認識の有無及びその対策」等の質疑に対して、「[1]テロの脅威は依然として存在しており、これを除去するための国際社会の取組に引き続き寄与していく必要があることから、テロ特措法の延長が必要である、[2]給油が別目的に使用されたのではないかと指摘があることは承知しているが、相手国との確かな信頼関係のもと、そのような事実はない、[3]国際テロリストのものとされる声明において標的の一つとして名指しされるなど、日本がテロの標的とされる可能性があるものと認識しており、関係省庁が緊密な連携をとりながら、テロ関連情報の収集分析、出入国管理、ハイジャック対策、重要施設や公共交通機関の警戒警備等、各種テロ対策の徹底に努めている」旨の答弁があった。

第15に、イラク特措法について、「[1]状況が悪化しているサマーワをいまだ非戦闘地域とすることの妥当性、[2]イラクから自衛隊を撤退させる必要性」等の質疑に対して、「[1]サマーワの治安情勢は予断を許さないが、イラクの他の地域と比べれば比較的安定しており、非戦闘地域の要件を満たさなくなったとは考えていない、[2]派遣期間終了後の対応については、国会での議論を踏まえ、国際協調の中で日本の果たすべき責任、イラク復興支援の現状、諸外国の支援状況等を見ながら、日本の国益を十分に勘案して判断すべきと考えている」旨の答弁があった。

第16に、憲法改正について、「[1]憲法改正に関する理念、[2]憲法9条改正についての考え」等の質疑に対して、「[1]民主主義、平和主義及び基本的人権の尊重という基本理念については多くの国民からも広く支持されてきたものであり、将来においても堅持すべきものと考える、[2]憲法9条や自衛隊の在り方については、軍国主義否定、国際的平和と安定に寄与する方向を堅持しながら、我が国の実態に合致するものを模索すべきである」旨の答弁があった。

その他、市場化テスト、地球温暖化対策、原油価格高騰への対応、安保理改革等について、質疑が行われた。

2 主な議案等の審議

年月日 議案等
平成17年
9月21日
○議長の選挙
  • 選挙の結果、河野洋平君が当選
○副議長の選挙
  • 選挙の結果、横路孝弘君が当選
○内閣総理大臣の指名
  • 小泉純一郎君を内閣総理大臣に指名
9月26日 ○国務大臣の演説
  • 小泉内閣総理大臣の所信表明演説
9月28日 ○国務大臣の演説に対する質疑

質疑

前原誠司君(民主)、武部勤君(自民)、鳩山由紀夫君(民主)、神崎武法君(公明)、志位和夫君(共産)、阿部知子君(社民)

答弁

小泉内閣総理大臣、竹中経済財政政策担当大臣・国務大臣、中川経済産業大臣、尾辻厚生労働大臣、北側国土交通大臣

10月6日 ○趣旨説明
  • 郵政民営化法案(内閣提出)
  • 日本郵政株式会社法案(内閣提出)
  • 郵便事業株式会社法案(内閣提出)
  • 郵便局株式会社法案(内閣提出)
  • 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出)
  • 郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)
  • 郵政改革法案(松本剛明君外7名提出)
説明

竹中国務大臣、大串博志君(民主)

質疑

石破茂君(自民)、笠浩史君(民主)、桝屋敬悟君(公明)、塩川鉄也君(共産)、重野安正君(社民)

答弁

竹中国務大臣、伊藤金融担当大臣、谷垣財務大臣、馬淵澄夫君(民主)、原口一博君(民主)、永田寿康君(民主)
10月11日 ○郵政改革法案(松本剛明君外7名提出)〈否決〉

○郵政民営化法案(内閣提出)〈可決〉

○日本郵政株式会社法案(内閣提出)〈可決〉

○郵便事業株式会社法案(内閣提出)〈可決〉

○郵便局株式会社法案(内閣提出)〈可決〉

○独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出)〈可決〉

○郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)〈可決〉

討論(以上7件)

石関貴史君(民主)、大前繁雄君(自民)、笠井亮君(共産)、重野安正君(社民)

○趣旨説明

  • 平成13年9月11日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
説明

細田内閣官房長官

質疑

後藤斎君(民主)、佐藤茂樹君(公明)

答弁

細田内閣官房長官、町村外務大臣、大野防衛庁長官
10月18日 ○政治資金規正法等の一部を改正する法律案(松本剛明君外7名提出)〈否決〉

○政治資金規正法の一部を改正する法律案(佐田玄一郎君外6名提出)〈可決〉

討論(以上2件)

近藤洋介君(民主)

○平成13年9月11日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)〈可決〉

討論

達増拓也君(民主)

○趣旨説明
  • 障害者自立支援法案(内閣提出、参議院送付)
  • 障害者の自立の支援及び社会参加の促進のための身体障害者福祉法等の一部を改正する法律案(山井和則君外5名提出)
説明

尾辻厚生労働大臣、村井宗明君(民主)

質疑

菅原一秀君(自民)、菊田真紀子君(民主)、高橋千鶴子君(共産)

答弁

尾辻厚生労働大臣、谷垣財務大臣、山井和則君(民主)、園田康博君(民主)
10月20日 ○電波法及び放送法の一部を改正する法律案(内閣提出)〈可決〉

討論

西村智奈美君(民主)
10月31日 ○障害者の自立の支援及び社会参加の促進のための身体障害者福祉法等の一部を改正する法律案(山井和則君外5名提出)〈否決〉

○障害者自立支援法案(内閣提出、参議院送付)〈可決〉

討論(以上2件)

田名部匡代君(民主)、福島豊君(公明)、笠井亮君(共産)、阿部知子君(社民)
11月1日 ○請願18件〈採択〉


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