衆議院

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【第169回国会】

1国務大臣の演説及び質疑

平成20年1月18日に福田内閣総理大臣の施政方針演説、高村外務大臣の外交演説、額賀財務大臣の財政演説及び大田経済財政政策担当大臣の経済演説が衆議院本会議において行われ、これに対して、同月21日及び22日に各党の代表質問が行われた。

(1) 福田内閣総理大臣の施政方針演説

(はじめに)

第169回国会の開会に当たり、国政に臨む所信の一端を申し述べます。

さきの国会において、各党各会派による真摯な御議論の積み重ねにより、改正被災者生活再建支援法や改正政治資金規正法などが成立しました。政治資金の問題については、政治に対する信頼を取り戻すため、一層の透明化に向けて更に努めてまいります。補給支援特措法については、国際社会の一員としての責任を果たすとともに国益にもかなう給油活動の再開が必要との考えのもと、国会で十分な御審議をいただき、残念ながら野党の皆様には御賛同を得られませんでしたが、成立させていただきました。

今国会においても、国民生活に直結する予算や重要法案など政策課題が山積しております。与野党が信頼関係の上に立ってよく話し合い、結論を出し、国政を動かしていくことこそ、国民に対する政治の責任であると私は信じます。自由民主党と公明党の連立政権の基盤の上に立って、政策をわかりやすく丁寧に説明し、野党の御意見も積極的に取り入れながら、責任ある政治を遂行することに引き続き全力を尽くしてまいります。国民の皆様並びに議員各位の御理解と御協力を改めてお願いいたします。

(基本方針)

現在、我が国は、多くの課題に直面しています。

中国やインドなどの急成長に象徴される世界経済の変化の中で、我が国の経済力をいかに保つのか、厳しい財政事情のもとで社会保障制度をいかに維持するか、少子化問題にいかに対処するのか、非正規雇用の拡大、地方経済の低迷などの問題にどう対処するのか、そしてまた、科学技術の熾烈な国際競争にどう対応していくのか、地球環境や資源・エネルギー問題などにどのような処方せんで対応するのか。

これらの構造的な課題に加え、ガソリンや生活用品などの物価上昇、米国のサブプライムローン問題の影響を受けた経済への対応など、足元にも目配りの必要な課題があります。

今後、成熟した先進国として、今まで他国が経験したことのないこれらの問題をいかに克服し、どのように将来を切り開いていくのかということが、今まさに問われております。模範となる先例がない中、文化や伝統を守りながら、私たちはみずからの力で新しい日本をつくり上げていかねばなりません。

戦後我が国は、廃墟の中から世界第2位の経済大国をつくり上げました。恵まれた時代背景はありましたが、突き詰めれば、一人ひとりの国民の力によって復興をなし遂げたわけです。その当時に比べれば、現在の日本は利用できる様々な強みを持っています。1,500兆円を超える個人金融資産を持ち、製品のみならず、文化や芸術の面でも日本の生み出すものは高い評価を得ております。世界トップ水準の企業も多く、その技術力は世界に誇るべきものであります。周辺諸国との関係もおおむね良好であり、世界から大きな役割が期待されています。

あとは、いかに前向きに、夢を抱くことができる国になるかということではないでしょうか。

私の内閣の使命は、国民の活力を引き出し、活力ある国民が活躍する舞台を用意することです。行政は常に国民の立場に立って、国民が何を求めているかということを念頭に置かねばなりません。まずは、将来の不安をなくす仕組みをつくり、その基礎の上に、だれもが成長を実感できるような経済社会を構築する必要があります。

また、活発な貿易など、海外との良好な関係なくしては存立し得ない日本にとって、世界が平和で安定していることは極めて重要なことです。更に目を広げれば、我々の生活の将来を地球規模で確保するためにも、地球環境問題への真摯な取組が必要です。

これらの実現に向け、第1に、生活者、消費者が主役となる社会を実現する「国民本位の行財政への転換」、第2に、国民が安心して生活できる「社会保障制度の確立と安全の確保」、第3に、国民が豊かさを実感できる「活力ある経済社会の構築」、第4に、地球規模の課題の解決に積極的に取り組む「平和協力国家日本の実現」、第5に、地球温暖化対策と経済成長を同時に実現する「低炭素社会への転換」、以上5つの基本方針に基づき、私は、国政に取り組んでまいります。

みずからの手で困難を克服し、困っているときは助け合い、励まし合う、すなわち自立と共生の考えを基本理念とし、私は、国民本位の信頼される政治や行政の実現に向け、全力で邁進してまいります。

(第1 国民本位の行財政への転換)

国民に新たな活力を与え、生活の質を高めるために、これまでの生産者、供給者の立場からつくられた法律、制度、さらには行政や政治を国民本位のものに改めなければなりません。国民の安全と福利のために置かれた役所や公の機関が、時としてむしろ国民の害となっている例が続発しております。私は、このような姿を本来の形に戻すことに全力を傾注したいと思います。

ことしを生活者や消費者が主役となる社会へ向けたスタートの年と位置付け、あらゆる制度を見直していきます。現在進めている法律や制度の国民目線の総点検に加えて、食品表示の偽装問題への対応など、各省庁縦割りになっている消費者行政を統一的、一元的に推進するための、強い権限を持つ新組織を発足させます。あわせて消費者行政担当大臣を常設します。新組織は、国民の意見や苦情の窓口となり、政策に直結させ、消費者を主役とする政府のかじ取り役になるものです。既に検討を開始しており、なるべく早期に具体像を固める予定です。

公務員の意識の改革もあわせて必要です。常に国民の立場に立つをモットーに、例えば利用者の利便を考え、手続の簡素化を進めるなど、現場の公務員も含め、仕事への取組方を大きく変えていきます。

(国民の信頼を取り戻す行財政改革)

高齢化の進展に伴い、年金や医療など社会保障に要する費用は増加せざるを得ません。地球温暖化問題など新たな時代の課題への対応も必要となってきます。行政に対する信頼を回復するとともに、国民生活に真に必要な分野の財源を確保するため、徹底した行財政改革を断行します。

来年度予算は、成長力強化、地域活性化、国民の安全、安心といった重要な政策課題にきめ細かく配慮し、めり張りのあるものとしました。新規国債発行額を本年度以下に抑えるとともに、特別会計改革を進め、9兆8,000億円を国債の償還に充てました。来年度4,000人以上の公務員の純減を行います。

予算の執行面においては、特に随意契約について、第三者による入札等監視委員会を全府省に設置しました。一般競争入札等への切りかえを徹底するとともに、すべての契約状況を厳しく監視し、その結果を公表します。また、会計検査院の中立性の確保や機能の強化も必要であると考えます。

独立行政法人については、真に不可欠かどうかという観点から、廃止、民営化を行い、本来の目的にかなう事業のみに限定します。内閣が、業務の評価や人事について一元的にかかわってまいります。関連法人との随意契約を廃し、競争性のある契約に変えます。

安定した成長を図るとともに、こうした財政健全化への努力を継続して、歳出歳入一体改革を徹底して進め、まずは、2011年度に国、地方の基礎的財政収支の黒字化を確実に達成します。

道路特定財源については、厳しい財政事情のもと、地域の自立、活性化に役立つ道路の整備事業は、真に必要なものを、効率化を徹底しつつ行います。道路の維持、補修や、救急病院への交通の利便性の確保、都市部の渋滞対策、あかずの踏切の解消など、国民生活に欠かすことのできない対策は実施しなければなりません。さらに、地球温暖化問題への対応を行うためにも、現行の税率を維持する必要があります。これまでの特定財源の仕組みを見直し、納税者の理解を得ながら一般財源を確保してまいります。

公務員制度の在り方を原点に立ち返って見直すことが必要です。行政に対する信頼を取り戻すため、公務員が能力を高め、国民の立場に立ち、誇りと責任を持って職務を遂行できるよう、総合的な公務員制度改革を進めてまいります。

国民への奉仕者である国家公務員の一層の綱紀粛正と倫理の向上を徹底します。

前事務次官が逮捕されるなど一連の不祥事により、防衛省に対する信頼が大きく揺らいだことは、極めて遺憾です。防衛省改革会議において、これまでのやり方や慣行をすべて点検し、文民統制の徹底、厳格な情報保全体制の確立、防衛調達の透明性の確保について抜本的な対策を講ずるとともに、自衛隊の士気の喚起や体制の整備に努め、誇りを持って我が国の防衛や国際貢献のための活動が行えるよう、防衛省の再生に向けて改革します。

年金記録などのずさんな文書管理は言語道断です。行政文書の管理の在り方を基本から見直し、法制化を検討するとともに、国立公文書館制度の拡充を含め、公文書の保存に向けた体制を整備します。

(第2 社会保障制度の確立と安全の確保)

(給付を受ける側に立った社会保障制度の再構築)

国民生活の基盤を支える医療、年金、介護、福祉などの社会保障制度については、少子高齢化の進展などにより、制度の持続可能性が問われています。これまで、給付やサービスを受ける方々の立場に立った行政を本当に行ってきたのか、反省すべき点が多いと思います。今こそ、国民の皆様の立場に立って発想を切りかえ、自立と共生の理念に基づき、将来にわたり持続可能で、皆が安心できるよう、社会保障制度を立て直さなければなりません。

年金記録問題については、国民の皆様に御迷惑をおかけしていることを改めて深くお詫び申し上げます。

昨年7月に政府・与党として決定した方針に基づき、現在、5,000万件の未統合記録と1億人のすべての年金受給者や現役加入者の方々の記録をコンピューター上で突き合わせ、その結果、記録が結びつく可能性がある方々へ、ねんきん特別便を本年3月までにお送りすることを予定どおり実施しています。さらに、その他の方々にも、ねんきん特別便を、本年4月から5月までにすべての受給者に、6月から10月までにすべての加入者に、順次お送りしたいと思います。その間、国民お一人お一人に御自身の記録を御確認いただきながら、年金記録の統合作業を着実に進めてまいります。記録の解明を早急に進めるため、自治体、経済界とも連携して、国を挙げた体制で取り組んでいきます。加えて、来年4月以降は、ねんきん定期便を毎年、現役加入者全員の方にお送りすることにより、再びこういった問題が生じないようにしてまいります。

この問題は、40年以上にわたる様々な問題が積み重なって生じたものですが、私の内閣で解決するよう、全力を尽くしてまいります。国民の皆様の御理解、御協力をお願い申し上げます。

同時に、社会保険庁を解体して新たに設ける日本年金機構について、年金の支給などを確実に行う、国民が納得できる組織にしていくとともに、様々な問題を抱える年金制度を確実で信頼できる制度にしたいと考えております。

年金制度はもとより、社会保障制度や少子化対策は、国民全体にかかわる極めて重要な問題であり、給付やサービスの水準に応じ、保険料や税金など国民負担の大きさも変わってきます。幅広く国民各層から成る社会保障国民会議を開催し、社会保障のあるべき姿や、その中での政府の役割、負担の仕方などについて、高齢化時代の国民の不安にこたえることができるような議論を行ってまいります。

これからの社会保障を持続可能な制度とするために、安定した財源を確保しなければなりません。このため、社会保障給付や少子化対策に要する費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的改革について早期に実現を図る必要があります。将来にわたり安心して生活できるよう、各党各会派が胸襟を開いて、すべての国民の生活にかかわるこの問題について話し合いが行われることを強く望みます。

少子化は、我が国の活力にもかかわる問題であり、社会全体で取り組み、着実な効果を上げる必要があります。その一環として、保護者それぞれの事情に応じた多様な保育サービスを充実し、保育所での受入児童数を拡大するなど、質と量の両面から取り組む新待機児童ゼロ作戦を展開します。あわせて、車の両輪として、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章の行動指針で示された残業削減等の数値目標の達成や育児休業制度の拡充など、働き方の改革に向けて取り組みます。

今、医療現場は様々な問題に直面していますが、国民の皆様が安心できるように、患者本位の医療体制を構築します。勤務医の過重な労働環境や、産婦人科、小児科の医師不足の問題に対応し、診療報酬の改定や大学の医学部の定員増を実施するとともに、医療事故の原因究明制度の検討を進め、事故の再発防止とあわせ、医師が安心して医療に取り組めるようにします。ITを活用して救急情報を関係機関と共有するなど、救急医療の体制を整備します。

薬害肝炎の問題については、与野党合意の上、感染被害者の全員一律の救済を実現しました。さらに、再発防止に向けた医薬品行政の見直しと、医療費助成や無料検診の拡大などの総合的な肝炎対策を実施してまいります。

高齢者医療や障害者自立支援については、お年寄りや障害者の立場に立ったきめ細かな対応を行ってまいります。

(安全・安心の確保)

安全で安心な暮らしには、治安に対する信頼が欠かせません。インターネットの有害情報の排除や、組織犯罪の資金の監視、取り締まりを強化するとともに、銃器の規制の厳格化に向けた取組を進めます。昨年、交通事故の犠牲者は半世紀ぶりに6,000人を下回りました。今後も効果的な対策を実施します。

自然災害時の犠牲者ゼロを目指し、お年寄りや障害をお持ちの方への対策、小中学校や住宅の耐震化を進めます。被災者の生活再建支援にも万全を期します。都市の防災について、密集市街地対策を進めるとともに、大規模地震発生に備え、高層建築物の防災対策や避難地、防災拠点の整備を進めるなど、総合的な対策を講じてまいります。

(第3 活力ある経済社会の構築)

(1 経済成長戦略の実行)

高齢化が本格化する中にあって、経済活力を維持するとともに、社会保障制度や少子化対策を充実するためには、持続的な経済成長が不可欠です。国際化が立ちおくれている分野に正面から取り組む一方、質の高い労働力や協調を重んじる精神、環境分野の進んだ技術など、日本の強みを更に伸ばすことによって、環境と共生しつつ成長を続けていくことは十分に可能です。

私は、次の3つの柱から成る経済成長戦略を経済財政諮問会議において具体化し、直ちに実行します。最近の原油高や株価の低迷に伴う景気への影響を注意深く見守りながら、適切に対応してまいります。

(技術革新の加速)

まず第1に、他国の追随を許さない技術を持ち続けることを目指す、革新的技術創造戦略を展開します。

昨年、京都大学において、人間の皮膚から万能細胞をつくることに成功し、世界を驚かせました。環境関連の技術のみならず、バイオ技術や医療関連技術を含め、これからの日本の成長を支える研究開発に重点的に予算を配分するとともに、民間の研究開発投資を促進するため、研究開発税制の拡充を行います。世界最高水準の研究拠点の整備を進めるとともに、研究成果を適切に保護し、成長につなげていくため、知的財産戦略を着実に実行します。

また、ITを活かしたユビキタス技術やロボット技術を一層活用して、高齢者や障害者が暮らしやすい社会づくりを進めてまいります。

(開かれた日本)

第2は、日本を世界により開かれた国とし、アジア、世界との間の人、物、金、情報の流れを拡大するグローバル戦略の展開であります。

世界の活力を我が国の成長のエネルギーとしていくため、WTO交渉やアジア太平洋地域との経済連携協定の交渉の早期妥結に取り組むとともに、日本への投資に関する制度をより透明性の高いものに変え、対日投資の倍増計画を確実に達成します。日本の空の自由化や貿易手続の効率化に加え、日本の金融資本市場の国際競争力を一層高め、世界の中で中核的な金融センターとなることを目指します。

新たに日本への留学生30万人計画を策定し、実施に移すとともに、産学官連携による海外の優秀な人材の大学院、企業への受入れの拡大を進めます。

(中小企業や農業の活力を引き出し、すべての人が成長を実感できる全員参加の経済)

第3は、雇用拡大と生産性向上を同時に実現し、すべての人が成長を実感できるようにする全員参加の経済戦略の展開です。

意欲ある人が皆働けるように、女性と60代の方の労働参加率の引上げやフリーターの減少について、少なくとも政労使の合意に基づく数値目標を達成しなければなりません。このため、定年制の在り方や60歳以降の継続雇用・再雇用のルールについて検討を進めるとともに、ジョブ・カード制度を4月から導入します。また、労働分配率の向上に向けて、正規・非正規雇用の格差の是正や、日雇い派遣の適正化等、労働者派遣制度の見直しなどを行います。各分野で高い能力、知識を持つ専門家の育成に力を入れるとともに、特に女性の参画が進んでいない分野に重点を置いて、女性の働く意欲を引き出すことができるよう、男女共同参画社会の実現に向け戦略的に取り組んでまいります。

我が国経済の活力を支えるのは中小企業の底力です。日本の強みであるつながり力を更に強化し、地域経済の活力の復活と中小企業の生産性の向上を実現するため、地域連携拠点を全国に200から300か所整備します。この拠点が中心となって、ITを徹底して活用し、経験豊富な大企業の退職者や中小企業、農業、大学が相互に連携して、新たな商品やサービスを生み出す取組を支援します。また、中小企業の事業承継を円滑にするための税制措置の抜本見直しを行うこととしています。

製造業の技術や流通業のノウハウを農業に活用する農商工連携を強化するなど、地方の主要な産業である農林水産業の活力を高めます。意欲ある担い手を支援するとともに、農地の集積や有効利用を進める農地政策の改革の具体化を進めます。また、小規模、高齢の農家の方々が安心できるよう、集落営農を立ち上げやすくするなど、きめ細かな対応に努めてまいります。

(2 活力ある地方の創出)

地方の元気は日本の活力の源です。昨年11月に取りまとめた地方再生戦略に基づき、地方の創意工夫を生かした自主的な取組を、政府一体となって強力に後押ししてまいります。また、地方都市と周辺地域を含む圏域ごとに生活に必要な機能を確保し、人口の流出を食い止める方策を進めていきます。

それぞれの地方が取り組む事業について、その立ち上がりを地方の元気再生事業として国が全面的に応援します。地方の情報通信基盤の整備を行い、市街地の中心部に公共施設や居住施設を集中したり、路面電車を導入する取組などを支援します。地域の防犯や子育てなど様々な課題に積極的に取り組むNPOの活動を応援します。

観光の振興は、地方活性化の目玉です。新たに観光庁を設置し、地方の自然や文化などを積極的に発信し、国内はもとより海外からの観光客を呼び込む取組を強化します。

地域の中堅企業や第三セクターの事業再生を地域金融機関や地方公共団体と連携しつつ支援する、地域力再生機構を創設します。

地方と都市の共生の考え方のもと、法人事業税を見直し、地域間の税源の偏在をより小さくする暫定措置を講じ、特に財政の厳しい市町村に重点的に配分します。今後、税体系の抜本的改革に結びつけていきたいと思います。地方自治体に一層の権限移譲を行う地方分権改革の議論を加速し、分権後の姿と在り方を国民の皆様にお示ししていくとともに、道州制の導入について、国民的な議論を更に深めてまいります。

(第4 世界の平和と発展に協力する外交の推進)

(「平和協力国家日本」)

世界の活力ある経済を取り込むためにも、また、環境面で世界をリードしていくためにも、我が国の外交力の強化が不可欠です。世界は今、テロとの闘いを含む安全保障面の課題に加え、地球温暖化や貧困など、一つの国家では解決できない様々な難題を抱えています。平和で安定した国際社会は、日本にとってかけがえのない財産であり、日本ができるだけの協力を行う必要があります。日米同盟と国際協調を基本に、これらの地球規模の課題の解決に積極的に取り組み、世界の平和と発展に貢献する平和協力国家として、国際社会において責任ある役割を果たします。地域や世界の共通利益のために汗をかく、魅力に満ち、志のある国を目指したいと思います。

テロとの闘いや大量破壊兵器の不拡散問題に積極的に取り組みます。インド洋における給油活動を再開するとともに、アフガニスタン、イラク国民の国家再建に対する支援を継続していきます。紛争地域の再建は、治安の確保と復興を同時に進めることが重要です。こうした平和構築分野での協力を更に進めるため、我が国が人材育成や研究、知的貢献の拠点となることを目指します。また、迅速かつ効果的に国際平和協力活動を実施していくため、いわゆる一般法の検討を進めます。

平和協力は狭義の安全保障の分野には限りません。貧困の解消、保健衛生状況の改善などは、人道上の要請であるとともに、すべての人々に希望と機会を与え、平和と安定への道を用意するものです。本年、我が国で開催されるアフリカ開発会議やサミットなどにおいて、こうした人間の安全保障面での課題解決に向け、G8各国やEUとも協力してまいります。また、自然災害の多発する我が国が蓄積したノウハウを海外の防災に役立たせるよう国際協力を進めます。

平和協力国家としての役割を果たしていくためには、我が国外交の活動の場を広げることが必要です。そのため、安保理常任理事国入りを目指し、国連の改革に取り組みます。中東和平の実現に向けた取組を始めとした国際貢献に努めるとともに、資源・エネルギー外交を進めます。

(友好的な二国間関係の発展)

日米同盟は我が国外交の基軸であり、信頼関係を一層強めていくとともに、その基礎となる人的・知的交流を更に進めます。在日米軍再編については、抑止力維持と負担軽減という考え方を踏まえ、沖縄など地元の切実な声によく耳を傾けつつ、地域の振興に全力をあげて取り組みながら、着実に進めてまいります。

昨年の米国、シンガポール、中国への訪問で、共鳴外交に踏み出しました。中国とは、省エネ・環境協力などを通じ、戦略的互恵関係を深め、アジアと世界の安定と発展に貢献する関係を築きます。韓国とは、2月に就任される次期大統領と、未来志向の安定した関係を構築していきます。ロシアとは、関係を高い次元に引き上げるべく領土交渉を促進するとともに、幅広い分野での交流を進めます。

北朝鮮に対しては、六者会合などの場を通じ、関係各国と連携して核の放棄を求めていきます。また、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現し、不幸な過去を清算し日朝国交正常化を図るべく、引き続き最大限の努力を行っていきます。

四方を海に囲まれた我が国として、新たな海洋立国を目指し、政府一体となって、大陸棚調査を始めとする海洋施策を総合的に推進します。

(第5 「低炭素社会」への転換)

地球環境問題は、21世紀の人類にとって最も深刻な課題であります。一刻も早く、国際社会の協力のもとに、全地球的規模で温室効果ガスの削減に取り組んでいかなければなりません。我が国は、これまで、徹底的に省エネ技術の開発や導入を進め、世界最高のエネルギー効率を実現しました。こうした環境力を最大限に活用して、世界の先例となる低炭素社会への転換を進め、国際社会を先導してまいりたいと思います。

そのためにも、まずみずからが率先して、温室効果ガス6%削減の約束を確実に達成しなければなりません。今年度中に京都議定書の目標達成計画を改定し、産業界の更なる努力に加えて、エネルギー消費が増加している民生部門の省エネ対策に、国民の協力も得ながら力を入れてまいります。

北海道洞爺湖サミットは、我が国の環境問題への取組を世界に発信する大きなチャンスです。2050年までに温室効果ガスの排出量を半減させる長期目標を、経済成長と両立しながら実現することを目指し、議長国として、すべての主要排出国が参加する実効性のある新たな枠組みづくりを主導してまいります。

地球環境問題に国際社会全体で取り組んでいく動きを後押しするため、途上国支援や環境被害対策、先端技術の開発といった各国共通の課題に対し、資金面はもちろんのこと、人的、技術的な面でも貢献していきます。志を同じくする途上国の温室効果ガス削減努力に対する支援や、干ばつ、洪水など、気候変動に伴う環境被害への対策を実施するための資金メカニズムを構築します。

我が国が有する世界最高水準の環境関連技術を世界が必要としております。当面は、更なる省エネ技術の開発や、食料生産に影響を与えないバイオマス技術、燃料電池の実用化などの新エネルギーの本格利用に向けた取組を加速することが重要でありますが、中長期的には、地球温暖化問題の根本的な解決に向けて、温室効果ガスの排出を究極的にゼロとするような革新的な技術開発を行わなければなりません。このため、環境エネルギー技術革新計画を策定し、これらの技術課題の克服に取り組んでまいります。

我が国を低炭素社会に転換していくためには、ライフスタイル、都市や交通の在り方など社会の仕組みを根本から変えていく必要があります。200年住宅の取組もその一環ですが、自治体と連携し、温室効果ガスの大幅な削減など、高い目標を掲げ、先駆的な取組にチャレンジする都市を10か所選び、環境モデル都市をつくります。低炭素社会とはどのようなものか、どうすれば実現できるのかなどをわかりやすくお示しできるよう、有識者による環境問題に関する懇談会を開催することとしています。国民の皆様に低炭素社会を目指す運動に賛同をいただき、御参加をお願いします。

(明日を担う人材の育成)

以上の施策を実行するに際し、最も重要なのは人であります。ふるさとや国を愛し、国際的にも十分通用する、あすの日本を担う若者を育てる環境を整えることは、大人の責任です。志を高く持ち、自立してたくましく社会を生き抜く力と、仲間や地域社会と共に生きる心をはぐくむため、学校のみならず、家庭、地域、行政が一体となって教育の再生に取り組んでまいります。

国民の皆様から信頼される公教育を確立するため、学習指導要領を改訂して必要な授業時間を確保し、基礎的な学力の向上と応用力を養う取組を強化するとともに、体験活動やスポーツ、徳育にも力を入れます。教職員の定数の改善などにより子どもたちと向き合える時間をふやすとともに、教員の質の向上に取り組みます。

さらに、国際競争が激化する中、我が国の将来を担い、世界で活躍できる力を身につける高等教育の充実が急務です。日本の大学や大学院が国際的に高い評価を受け、世界の人材育成、研究の拠点となることを目指します。

我が国のすぐれた文化や芸術を一層発展させることは、現代に生きる我々の使命です。アニメや音楽など新しい文化の担い手を育てるとともに、日本の誇りである伝統文化、芸術の継承や発展、文化財の保存、活用などに着実に取り組んでまいります。

(憲法に関する議論の深化)

国の基本を定める憲法に関する議論につきましては、昨年の通常国会で関係各位の御努力により国民投票法が成立しました。もとより国会が決めるべきことではありますが、今後は、国会のしかるべき場において、国民投票法の審議過程で積み残された諸課題や、改正するとすればどのような内容かなど、すべての政党の参加のもとで、幅広い合意を求めて、真摯な議論が行われることを強く期待しております。

(むすび)

昨年12月、私は、大分で開催された水サミットに出席しました。そこでツバルのイエレミア首相は、地球温暖化によって島国であるツバルが海に沈むと衝撃的な危機を訴えられました。

こうした事態は以前から危惧されていたことですが、本年の元日に環境大臣にツバルまで行ってもらい、最新の報告を受けました。

私は、直ちにツバルの支援を検討し、同時に地球温暖化に立ち向かう決意を新たにいたしました。

人類はこれまで、幾多の困難を乗り越え、21世紀を迎えました。今我々が直面しているのは、20世紀に経験した戦争や核兵器開発などといった各国の利害が絡み合う問題ではなく、ほうっておけば地球全体が滅びるという危機であります。

この地球の危機に際して、日本が果たすべき役割は極めて大きいと思います。

日本は、地球環境の危機と闘う最も強力な武器を持っています。省エネルギーや環境保全に役立つ技術力です。日本はこうした技術力を活用して、世界でも有数の、エネルギー効率の高い社会を築いたのです。なぜ、そのようなことが可能であったのか。日本には、すぐれた技術を開発する力、すなわち人材という得がたい資源の宝庫があったからです。数回にわたるエネルギー危機を経験した日本は、人の力、人の能力によってその危機を回避し、ついには地球の危機をも救えるかもしれない高い技術力を保有するに至りました。

無駄な排出を極力減らす、低炭素社会を実現するために、日本の力、日本人の力を今、世界が必要としているのです。また、地球環境を守ることは、私たちの大切な家族、子や孫の命を守ることでもあるのです。

私は日本人の力を信じています。日本人は、目前に困難があろうとも必ずや未来を切り開く、その力があると確信しております。

「井戸を掘るなら、水が湧くまで掘れ」、明治時代の農村指導者である石川理紀之助の言葉であります。疲弊にあえぐ東北の農村復興にその生涯をささげた人物です。彼はどんなときも決してあきらめることなく、結果を出すまで努力することの大切さを教えました。そして、彼は、様々な事業において、何よりも得がたいのは信頼である、進歩とは厚い信頼でできた巣の中ですくすく育つのだとも述べています。

私は、本日申し上げました政策を推進するに当たり、どんな困難があろうとも、あきらめずに全力で結果を出す努力をしてまいります。そして、活力ある日本、世界に貢献する日本へと進歩するためにも、進歩をはぐくむ信頼という巣を国民と行政、国民と政治の間につくってまいりたいと思います。

国民の皆様の御理解と御協力を切に望むものであります。

(2) 高村外務大臣の外交演説

(平和な世界を創る)

第169回国会の開会に当たり、我が国外交の基本方針について所信を申し述べます。

私は、平成11年の通常国会における外交演説の冒頭で、国際社会は冷戦の終えんを経て、新しい世紀を迎えようとしているが、平和で安定した世界への道のりは平たんでないと述べました。それから9年を経た今、アジア諸国の安定と繁栄、米州やアジア太平洋、欧州での地域協力や経済統合への動き等、好ましい発展が見られる一方で、北朝鮮をめぐる問題や国際テロ、大量破壊兵器及びミサイルの拡散、気候変動を始めとする環境問題、アフリカの開発等、世界は依然として多くの課題に直面しております。

我が国の国益である我が国国民の幸福及び我が国の平和と繁栄の確保は、世界の平和と繁栄の実現なくしてはあり得ません。そして、世界の平和と繁栄は、所与のものではなく、各国の不断の努力があって初めて実現できるものであります。我が国としても、その実現のために、受け身であってはなりません。

総理が施政方針演説で述べられたとおり、我が国は、日米同盟の堅持と国際協調を外交の基本方針とし、中国、韓国等の近隣諸国や国連等とも緊密に協力しつつ、平和協力国家として国際社会の平和と発展に向けて、積極的に取り組んでまいります。

我が国はこれまで、世界の平和と繁栄の実現を目指して、ODAを通じた協力を実施するとともに、PKOを始めとする国際的な平和活動にも積極的に参加してまいりました。さらに、今年度からは平和構築の分野における人材育成のためのパイロット事業を開始いたしました。国連では現在、平和構築委員会議長も務めております。また、平和維持活動能力の向上を目的として、アフリカのPKOセンターに対する支援も決定しました。

我が国は、平和な世界をつくるため、こうした活動に一層積極的に取り組んでまいります。

さきの国会では、補給支援活動特別措置法が成立しました。これは、我が国が、国際社会によるテロとの闘いに引き続き責任を果たしていく決意を改めて示したものであります。また、国際社会にとって重要な課題となっているアフガニスタンとイラクの安定と復興のため、引き続き支援をしてまいります。

一方で、私は、我が国が行う国際平和協力の具体的な活動内容等について、一般的な法律を整備することが的確かつ機動的な協力の推進という観点から必要と考えております。

平和な世界をつくるため、今後我が国が担うべき国際平和協力とはいかなるものか、議論を一層深めつつ、検討してまいります。

(北海道洞爺湖サミットとTICAD IVでのリーダーシップ)

本年、我が国は、G8サミット議長国として北海道洞爺湖サミットを主催いたします。私自身は、京都外相会合及び開発大臣会合の議長を務めます。

グローバル化の進展とともに一国では対処できない地球規模の課題の重要性が増しており、また、世界経済においても主要国間の一層の協調が求められています。

我が国は、これら会合において、環境・気候変動、開発・アフリカ、世界経済、不拡散を始めとする政治問題といった重要課題について力強いリーダーシップを発揮し、前向きなメッセージを発信していくべく、その成功に向けて政府一丸となって取り組んでまいります。

また、我が国は本年5月、横浜において、第4回アフリカ開発会議、TICAD IVを主催いたします。「元気なアフリカを目指して」との基本メッセージのもと、アフリカにおける成長の加速化、人間の安全保障の確立、環境・気候変動といった諸課題に主導的に取り組んでまいります。私が年初にタンザニアを訪問したのも、これを念頭に置いたものであります。

我が国が本年これらの重要な国際会議を開催することは、我が国自身にとっての大きなチャンスであります。これは、単に、8年置きのG8と5年置きのTICADが同じ年に我が国で行われるというだけではありません。

我が国はこれまで、世界の平和と安定のために積極的な役割を果たしてまいりました。今回、我が国は、それに加えて、G8議長国、TICAD主催国として、世界の平和と安定に向けた各国の外交努力を結集するという大きな国際的責任を果たすことが期待されております。

我が国は、この平成20年において与えられたチャンスを十分に生かし、我が国自身が国際社会から信頼される平和協力国家として更に発展するよう、平和な世界をつくるためのリーダーシップを発揮してまいります。

(日米関係)

我が国の外交において、日米同盟はかなめとなるものであります。日米同盟を一層強化し、政治、安全保障、経済を含む幅広い分野で米国と緊密に連携してまいります。

また、日米安保・防衛協力を強化し、在日米軍の兵力態勢の再編についても、抑止力の維持と地元の負担軽減という考え方を踏まえ、沖縄等地元の切実な声に耳を傾けて、着実に進めてまいります。

さらに、日米関係の基盤となる知的交流、草の根交流及び日本語教育といった日米交流を強化し、将来の日米同盟の深化につなげてまいります。

(近隣諸国との関係強化)

近隣諸国との関係に触れれば、豊かで安定し、開かれたアジア地域の実現は、我が国の安全と繁栄に不可欠であります。

中国とは、戦略的互恵関係を構築し、ともに世界の平和、安定、繁栄に貢献してまいります。先月、福田総理と私はそれぞれ中国を訪問し、本年の桜の咲くころには胡錦濤国家主席も訪日する予定であります。日中平和友好条約締結30周年、日中青少年交流年である本年、引き続き幅広い層で対話と交流を積み重ねていくとともに、懸案の決着に向けて努力し、日中関係を一層強化してまいります。

韓国は我が国にとって重要な隣国であります。我が国とは、自由、民主主義、基本的人権、市場経済といった基本的価値を共有し、また、北朝鮮問題等共通の課題を持っております。李明博新大統領との間でも、未来志向の日韓関係を一層発展させていきます。

北朝鮮をめぐる問題の解決は、我が国の安全保障にとり極めて重要であり、また、アジアの平和と安定に不可欠であります。六者会合や日朝協議を通じ、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を早期に実現できるよう、全力で取り組んでまいります。

重要な隣国であるロシアとの間では、北方領土問題の解決に向けて進展を図るべく、強い意思を持って交渉を進めていきます。同時に、極東・東シベリアを含むアジア太平洋地域における積極的な協力を通じた戦略的パートナーシップの構築を目指して、日ロ行動計画に基づき、引き続き幅広い分野での関係の発展に努めます。

ASEANの結束と繁栄は、東アジア地域全体の安定と繁栄にとって重要な推進力であります。先般、日本・ASEAN包括的経済連携協定の交渉が妥結しました。今後は、協定の早期発効に向けて努力してまいります。また、我が国は、ASEANの一層の発展と繁栄のため、メコン地域開発を通じた域内格差是正や人材育成支援等を通じて、ASEANの統合努力を力強く支援してまいります。

インドや豪州との間でも、安全保障面や経済連携協定交渉を含め、引き続き幅広い分野で関係を強化いたします。

日米豪戦略対話等の協力も引き続き推進してまいります。

また、将来の東アジア共同体の形成を視野に入れ、東アジア首脳会議等の枠組みを活用して、アジア諸国とともに地域共通の課題に積極的に取り組んでまいります。

昨年11月の東アジア首脳会議では、福田総理より、東アジアにおける持続可能社会の実現に向け、我が国の環境協力イニシアティブを打ち出しました。今後はこれを着実に実現してまいります。

また、中国と韓国を交えた日中韓協力についても、環境を始めとする様々な分野で一層発展させてまいります。

(その他の地域との関係強化)

その他の地域に目を転じれば、本年、外交関係開設150周年を迎える英国、フランス、オランダを始めとする欧州諸国と連携してまいります。また、これまで培ってきたEU及びNATOとの協力関係を強化してまいります。

さらに、民主化や市場経済化等の支援や対話を通じて、バルト諸国や中東欧、中央アジア、南アジアといった地域の諸国との関係を強化してまいります。

我が国が原油の約9割を輸入する中東地域の平和と安定は、世界全体の安定と我が国のエネルギー安全保障にとって不可欠の条件であります。中東諸国との間で、資源を超えた重層的な関係を構築してまいります。

中東和平については、さきのアナポリス中東和平国際会議での成果を歓迎するとともに、引き続き和平の実現に貢献してまいります。中でも、我が国が推進する平和と繁栄の回廊構想は、イスラエル、パレスチナ双方から高い評価を受けており、実現に向けて着実に取り組んでまいります。

また、GCC、湾岸協力理事会諸国との関係を一層強め、FTAの早期合意やエネルギー分野での相互の投資の増大に向けて努力いたします。

一方、イランの核問題の平和的・外交的解決のために、国際社会と緊密に協力してまいります。

本年、日本人移住100周年を迎えるブラジルを始め、経済面での存在感と国際場裏での発言力を増している中南米諸国との関係も強化してまいります。

(国際社会の共通課題)

続いて、国際社会の共通課題に移ります。

気候変動問題は、人類が一致して緊急に対応することが求められている課題であります。

先般の気候変動枠組条約第13回締約国会議、COP13では、我が国が提案したすべての主要排出国が参加する交渉の場の立ち上げについて合意が成立し、バリ行動計画策定に貢献することができました。

我が国は、世界全体の排出削減につながるよう、我が国自身の真摯な取組が求められております。北海道洞爺湖サミット等の場を通じて、すべての主要排出国が意味のある枠組みを構築することを目指し、途上国支援のための資金メカニズムの構築を含め、イニシアティブを発揮してまいります。

気候変動問題と密接不可分の関係にあるのがエネルギー安全保障であります。中長期的視野に立った安定的なエネルギー・資源確保に努めるため、輸入先とエネルギー源双方の多様化を図ります。また、二国間及び多国間の協力を通じて輸送路の安全対策を強化してまいります。

さらに、新興経済国におけるエネルギー効率の向上、再生可能エネルギーや省エネ技術の活用に向けて国際社会と協力して取り組むとともに、核不拡散、原子力安全及び核セキュリティーを前提として原子力協力を推進してまいります。

途上国における感染症や母子保健の深刻な状況を踏まえれば、国際保健分野の課題も避けて通れません。TICAD Wや北海道洞爺湖サミット等の場を通じて、我が国の経験も踏まえつつ、国際社会が共有する行動指針の策定を目指してまいります。

また、国際社会の平和と安定の維持増進のため、そして唯一の被爆国として、核兵器不拡散条約を基礎とした国際的な軍縮・不拡散体制の維持強化に努めます。

(政府開発援助)

政府開発援助について述べれば、途上国の安定と発展のために協力していくことは、我が国自身にとっても利益であり、我が国の外交政策において重要な課題であります。人間の安全保障の視点も踏まえ、積極的に援助を実施してまいります。

国際社会は、地球規模の課題の解決とミレニアム開発目標の達成に向けて一致して取り組んでおります。我が国は、貧困撲滅、感染症等の保健問題、教育、水・衛生、防災等の課題に対し、ODA事業量の100億ドルの積み増しといった対外公約の達成を始め、我が国にふさわしい国際的責任を果たしてまいります。

本年10月には、技術協力、有償資金協力、無償資金協力を一元的に実施する新JICAが発足します。外務省としても、これを契機に、我が国の外交政策を反映させた国際協力の推進に一層努めるとともに、NGOや民間経済界とも連携しつつ、援助効果の更なる向上を図ってまいります。

また、政府開発援助の一層の選択と集中と質の改善を進めます。資源・エネルギーの確保、民主化・市場経済化、法制度整備支援、貿易・投資環境整備に対しても積極的に活用してまいります。

(国連安保理改革)

国際の平和と安全の維持につき重要な役割を担う国連安全保障理事会の改革の早期実現は、喫緊の課題であります。我が国が国際社会において一層の貢献を行えるよう、早期の安保理改革の実現と我が国の常任理事国入りを目指してまいります。

(国際経済体制の強化と国際社会における「法の支配」)

加えて、多角的貿易体制の強化は我が国にとって死活的な利益であります。WTOドーハ・ラウンド交渉は、農産物、非農産物に関する関税等の引き下げ方式に合意できるかどうかという決定的に重要な局面を迎えております。早期妥結に向けて、引き続き積極的に交渉に参画し、バランスのとれた交渉結果が得られるように政府一丸となって全力で取り組んでまいります。

知的財産権の保護強化に向けた国際的な取組にも引き続き注力いたします。

また、国際社会の平和と繁栄の実現のためには、国際社会における法の支配の確立が求められており、国際裁判制度の活用などを通じ積極的に貢献してまいります。

(対外発信及び交流の強化)

これまで、平和な世界を創るための取組を始めとする我が国の外交方針について述べてまいりました。諸外国での我が国に対する信頼と理解の増進は、外交政策の円滑な推進にも資するものであります。このため、我が国の魅力や外交方針の戦略的かつ積極的な対外発信、日本語学習者の増加、知的交流及び国民レベルでの交流促進に取り組んでまいります。

(海外における国民の安全確保)

一方で、イランでの邦人拘束事件等、海外で国民が巻き込まれる様々な事件が発生しております。海外における国民の安全確保に向けて引き続き全力を挙げて取り組むとともに、世界各地で活躍する多くの日本人が安心して円滑に力を発揮できるよう適切な支援に力を尽くしてまいります。

(外交実施体制)

最後に、山積する外交課題に適切に対処し、平和な世界をつくるための取組を推進していくためには、情報の収集・分析能力の強化、情報防護体制の強化が不可欠であり、引き続き取り組んでまいります。

また、機構、定員等の外交実施体制の抜本的な強化が不可欠であります。国民の皆様の御理解を得ながら、積極的に取り組んでまいります。

(むすび)

以上のような力強い外交を展開していく上では、国民の皆様と議員各位の御理解と御支持をいただくことが不可欠であります。

私は本日改めてその点を強調し、演説を終えます。

ありがとうございました。

(3) 額賀財務大臣の財政演説

平成20年度予算及び平成19年度補正予算の御審議に当たり、その大要を御説明申し上げ、あわせて今後の財政政策等の基本的な考え方について所信を申し述べます。

(我が国経済の状況と課題)

我が国経済は、バブル経済崩壊後の長い低迷から脱し、このところ一部に弱さが見られるものの、景気回復を続けております。一方、原油価格の高騰や海外経済の動向等の影響には留意する必要があります。政府としては、引き続き、日本銀行と一体となった取組を行い、物価安定のもとでの民間需要中心の持続的成長を図ってまいりたいと思います。

地方経済に目を向けますと、人口動態や産業構造等の違いを背景として、回復に差が見られております。高齢化が先行している地方経済は、今後高齢化が進む都市部の将来の姿を示しているとも言え、地域活性化は国全体の課題として取り組んでいかなければなりません。

また、経済がグローバル化する中で、成長の持続を図っていくためには、成長著しいアジアの中にある強みを生かしながら、海外との相互連携を進めていくことが必要不可欠であります。本年のサミット議長国として、G7、アジア諸国、国際機関等と協力を進めていくとともに、WTOを中核とする多角的自由貿易体制の強化及び経済連携協定の積極的な推進、国際競争力強化のための通関制度の改革、租税条約ネットワークの拡充等を行い、我が国の経済社会を開かれたものとしていかなければなりません。

少子高齢化に伴う人口減少、経済のグローバルな競争、公債残高の増大等、我が国経済を取り巻く内外の状況は厳しさを増しておるところでございます。こうした中で、経済成長を持続し、国民の生活をより豊かにしていくためには、成長力強化と財政健全化の双方を着実に進めていかなければならないのであります。

(平成20年度予算及び税制改正の大要)

平成20年度予算編成に当たりましては、これまでの財政健全化の努力を緩めることなく、社会保障や公共事業など各分野において、経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006、いわゆる基本方針2006で定められた歳出改革をこの2年目においても着実に実現をし、歳出改革路線を堅持してまいりました。

また、今回の予算編成におきましては、無駄の排除のため、徹底した取組を行っております。随意契約の見直しや、会計検査院の指摘事項の反映を徹底強化するとともに、予算執行調査の結果を前年度以上に反映させているのであります。

一方、成長力の強化、地域の活性化、国民の安全、安心といった課題に十分に配慮し、予算の重点化を行い、いわば改革と成長、同時に安心をつくる予算と位置付けております。

この結果におきまして、一般歳出につきましては47兆2,845億円と、前年度当初予算に比べ3,061億円の増となり、前年度当初予算に比べ、伸びを抑制しているのであります。

地方財政につきましては、地方再生に必要な財源を確保するため、地方税の偏在是正効果を活用し、地方再生対策費4,000億円を創設するとともに、地方自治体に交付される地方交付税交付金の総額を3年ぶりに増額させていただきました。同時に、特別枠を除いた地方歳出総額を7年連続のマイナスとするなど、歳出改革路線も堅持しているのであります。この結果、地方交付税交付金等について、前年度当初予算と比べ、6,820億円増加の15兆6,136億円としております。

これらに国債費20兆1,632億円を合わせた一般会計総額は、前年度当初予算と比べ、1,525億円増加の83兆613億円としております。

一方、歳入面につきましては、租税等の収入は前年度当初予算と比べ、870億円増加の53兆5,540億円を見込み、その他収入は4兆1,593億円を見込んでおります。

このように税収の伸びが小幅にとどまる中で、歳出歳入両面において最大限の努力を行い、新規国債発行額については、25兆3,480億円にとどめて4年連続の減額を実行いたしました。また、資産・債務改革、特別会計改革等を踏まえ、財政投融資特別会計の準備金のうち9.8兆円を国債の償還に充てることにより、国債残高を圧縮しております。こうした取組によりまして、内外に我が国が財政健全化を進めていく姿勢を示しているのであります。

次に、主要な経費について申し述べます。

社会保障関係費につきましては、医師確保対策など国民生活の安全、安心に配慮した重点化を図る一方で、社会保障制度の改革努力を継続し歳出の抑制を図る観点から、めり張りのきいた診療報酬、薬価等の改定、後発医薬品の使用促進、被用者保険による政管健保への支援措置等の取組を行ったのであります。

文教及び科学振興費につきましては、文教分野において、信頼できる公教育の確立に資する施策等に重点的に対応するとともに、イノベーションを通じた経済成長の源となる科学技術分野において、選択と集中の徹底を図りながら増額をいたしました。

防衛関係予算につきましては、防衛力の近代化を図る一方、装備品調達の一層のコスト縮減、透明化を行うとともに、在日米軍駐留経費負担や人件費等、経費を聖域なく見直しておるのであります。

公共事業関係費につきましては、全体として抑制する中で、コスト構造改革や入札・契約制度改革を徹底しながら、地域の自立、活性化のための自主的、戦略的取組を支援する事業や、国民の安全、安心の確保に直結する事業への重点化を図っております。

経済協力費につきましては、予算の厳選・重点化等を行い、改革を継続する中で、全体のODA事業費を適切に確保したのであります。

中小企業対策費につきましては、中小企業の活力を高め、地域経済の活性化を図る観点から、中小企業金融の基盤強化、下請適正取引の推進、事業承継支援、中小企業者と農林水産業者との連携に関する施策等に重点化を図ったのであります。

エネルギー対策費につきましては、特別会計改革の一環として特別会計の歳出総額を抑制するとともに、安定供給確保や地球温暖化対策への対応等に重点化を図っております。

農林水産関係予算につきましては、意欲ある担い手への支援という農政改革の基本を維持するとともに、食の安全、安心等、現下の諸課題への対応も行っております。

治安関係予算につきましては、治安関連職員の増員を始め、安全で安心して暮らせる社会の実現に向けた重点化を図りました。

国家公務員の人件費につきましては、行政機関で平成19年度のおおむね2倍となる4,122人の定員純減を行うこととするほか、給与構造改革等を的確に予算へ反映させております。

特別会計につきましては、行政改革推進法及び特別会計に関する法律に基づき、特別会計の統廃合等を着実に実施することとし、特別会計の数を21と、前年度に比べ7会計減少させるとともに、特別会計歳出を効率化、合理化の観点から徹底的に見直しております。

道路特定財源につきましては、厳しい財政事情、道路整備の必要性、環境面への影響に配慮して、現行の税率を維持した上で、地方への支援を充実しながら、真に必要な道路の計画的な整備を進めるとともに、高速道路料金の効果的な引き下げなどにより既存高速道路ネットワークの有効活用を推進することとしております。同時に、これまでの特定財源の仕組みを見直し、平成20年度予算においても、納税者の理解の得られる範囲において、前年度予算を上回る額の一般財源を確保したのであります。

財政投融資につきましては、政策的に必要な資金需要には的確に対応しつつ、対象事業の重点化、効率化を図った結果、平成20年度財政投融資計画の規模は、対前年度2.1%減の13兆8,689億円となっております。

国有財産につきまして、有識者会議の報告書に基づき、庁舎、宿舎の移転、再配置に取り組むとともに、民間提案を生かす入札の仕組みの導入等を図るなど、簡素で効率的な政府を実現する観点から、資産・債務改革を更に推進してまいります。

国債発行額は、126兆2,900億円と、平成19年度と比べ17兆5,480億円減少し、2年連続の大幅減額といたしました。国債発行額が130兆円を下回るのは平成12年度以来8年ぶりでありますけれども、国債残高は平成20年度末には553兆円になると見込まれ、依然として増加が続いております。引き続き、国債管理政策を財政運営と一体として適切に運営していく必要があり、国債発行に当たっては、安定消化とともに、中長期的な調達コストの抑制に努めることを基本とし、市場のニーズ、動向等を踏まえた発行に取り組んでまいりたいと考えます。

平成20年度税制改正につきましては、持続的な経済社会の活性化を実現する観点から、研究開発税制の拡充、中小企業関係税制の充実等といった経済活性化策を図ると同時に、金融・証券税制、土地・住宅税制等について所要の措置を講じたところであります。

また、民間が担う公益活動を推進する観点から、公益法人制度改革に対応する税制措置を講ずるとともに、寄附税制の見直しを行っております。あわせて、地域間の財政力格差の縮小の観点から所要の措置を講じたところであります。

(平成19年度補正予算の大要)

次に、平成19年度補正予算について申し述べます。

歳出面におきましては、財政規律を緩めないとの方針のもとに、国民生活の安全、安心、原油価格高騰への対応等に配慮しながら、災害対策費を始めとして、必要性、緊急性の高い経費を計上するとともに、義務的経費の追加を行ったのであります。また、地方交付税交付金の税収減見合いの減額及びその補てんを行うとともに、既定経費の節減等を行っております。

歳入面におきましては、租税等の収入について、当初予算に比べ、9,160億円の減収を見込むとともに、税外収入の増加を見込んでおります。

これらの結果、補正予算についても、財政健全化の例外とすることなく、公債の増発は行わないこととし、平成19年度補正後予算の総額は、当初予算に対して8,954億円増加し、83兆8,042億円となります。

また、特別会計予算及び政府関係機関予算についても所要の補正を行っております。

(我が国財政の現状と財政運営の基本的な考え方)

我が国財政の現状と財政運営の基本的な考え方について述べます。

財政健全化は、安定した経済成長とともに、経済財政運営の車の両輪となるものであります。

平成20年度予算においては、基本方針2006等で定められた歳出改革路線を堅持し、各分野において歳出の抑制を図っておりますが、一般会計予算の歳入のうち約3割に当たる25兆円余りを公債発行で賄わざるを得ず、依然として財政は厳しい状況にあります。また、国、地方を合わせた長期債務残高は、平成20年度末には778兆円、対GDP比で148%になると見込まれ、主要先進国の中で最悪の水準となっております。

今後、財政健全化に向けて、まずは、これまで累次にわたり国民の皆様にお示しをしてきました目標である、2011年度における国、地方の基礎的財政収支の黒字化を確実に実現するために、歳出歳入一体改革を引き続き着実に進めてまいりたいと考えます。その上で、2010年代半ばに向け、債務残高の対GDP比率を安定的に引き下げることを目指します。そのため、引き続き、基本方針2006等に沿って各分野の歳出改革を徹底してまいりたいと考えます。

一方で、必要な歳出までも削られ、国民生活に影響が生ずる事態は避ける必要があり、歳出改革だけでは対応し切れない社会保障や少子化などに伴う負担増につきましては、安定的な財源を確保していかなければなりません。このため、累次の政府の方針や先般の与党税制改正大綱の「基本的考え方」を踏まえまして、消費税を含む税体系の抜本的な改革について、早期に実現を図ってまいりたいと考えます。

(むすび)

我が国の経済財政の姿が少子高齢化と経済のグローバル化のもとでどのように推移していくのか、少なくとも今後10年程度の中長期の展望をしっかりと見据えた上で、なすべき改革等を先送りすることなく果断に実行していかなければなりません。

もとより、国の財政は、国民経済の中長期的な発展を支え、国民一人ひとりの生活に安定と安心をもたらすべきものであります。財政の持続可能性が危ぶまれるようでは、世界に対して日本経済の魅力を訴えていくこともできません。また、子どもや孫の世代が将来への不安を高めることにもなってまいります。市場における我が国財政への信認を確保し、さらに、将来世代に対して責任ある財政運営を行うという決意を持って、財政の再建に全力を尽くしてまいりたいと思います。

以上、平成20年度予算及び平成19年度補正予算の大要等と、今後の財政運営の基本的な考え方について御説明をいたしました。

平成20年度予算及び税制改正等の関連法案につきましては、国民の安全、安心を確保し、地域を活性化させ、成長力を強化する施策が年度当初から円滑に実施されますように、今年度内にぜひとも成立させることが必要であり、速やかに御賛同いただくとともに、今後の財政運営について、国民の皆さんや与野党の各先生方の御理解と御協力を得るように心からお願いして、演説にかえます。

(4) 大田経済財政政策担当大臣の経済演説

(1 はじめに:日本経済の3つの課題)

経済財政政策を担当する内閣府特命担当大臣として、所信を申し述べます。

昨年末に公表された2006年の国民経済計算によりますと、世界の総所得に占める日本の割合は24年ぶりに10%を割り、一人当たりGDPはOECD加盟国中18位に低下しました。残念ながら、もはや日本は、経済は一流と呼ばれるような状況ではなくなってしまいました。

今の日本に求められることは、人口減少社会の入り口にあって、内向きの守りの姿勢に入ることではなく、もう一度、世界に向けて挑戦していく気概を取り戻すことです。成長力を強化し、その果実によって高齢化を乗り越え、安定感のある質の高い社会を目指していかなくてはなりません。

そのために、日本経済が乗り越えねばならない3つの大きな課題があります。第1は、現在の景気回復をできるだけ長く持続させ、家計にも回復の実感を広げることです。第2は、人口減少と急速なグローバル化の中で経済成長を持続できる新たな成長のモデルをつくり出すことです。第3は、成長力強化と車の両輪として、財政の健全化を進め、高齢化を乗り切る財政の姿を実現することです。

(2 日本経済の現状と当面の経済財政運営)

まず、第1の課題について申し上げます。

日本経済は、2002年初めを底とする息の長い景気回復を続けています。この間に、企業の体質は格段に強化され、失業率も4%以下に低下しました。しかし、なかなか賃金上昇に結びつかず、家計への波及がおくれています。また、地域間で回復のばらつきがあります。景気回復の実感を確かなものにするには、何より、この回復を息長く持続させることが必要です。

足元の日本経済には、3つのリスク要因があります。1つ目は、アメリカのサブプライム住宅ローン問題に端を発する金融資本市場の動揺、そして、それが米国経済を減速させる懸念です。2つ目は、原油価格の上昇が続き、企業収益や国民生活への悪影響が続く懸念です。3つ目は、建築基準法が厳格化され、これ自体は必要なことですが、準備不足などの対応のおくれによって住宅投資が大きく落ち込んでおり、この回復がおくれる懸念です。

これら3つのリスク要因を中心に、細心の注意で経済動向を見てまいります。また、昨年12月末に取りまとめた原油価格高騰への対策を着実に実施し、原油高の深刻な影響を受けている企業や住民の方に対してきめ細かな対応を図ります。そして、地域経済の立て直しのため、地方再生戦略に基づき包括的な取組を行います。地方再生戦略と連携して、地域金融機関や地方公共団体等の理解、協力を得つつ、地域の中規模企業や第三セクターの事業再生を担う地域力再生機構を平成20年度に創設させるべく、今国会に所要の法案を提出いたします。

物価安定のもとで民間需要主導の景気回復が長く続くように、政府と日本銀行は、マクロ経済運営についての基本的視点を共有し、政策運営を行ってまいります。

(3 新たな成長のモデルを目指して)

次に、第2の課題である新たな成長への道筋について申し上げます。

我が国が、バブル崩壊後、不良債権など負の遺産を解消するための長い戦いに力を注いでいる間に、世界経済の構造は余りに大きく変化しました。ベルリンの壁崩壊とともに自由経済圏が拡大し、EUが誕生し、中国、インドなど新興国が成長し、IT革命は目覚ましいスピードで進んでいます。我が国は、長い経済低迷を抜け出したものの、世界経済のダイナミックな変化に取り残され、今後も成長を続けていく枠組みはいまだでき上がっていません。これでは、未曾有の高齢化を乗り切ることはできません。成長力をつけるための改革は、始まったばかりです。

成長力を強化するために、特に重要なことが3つあります。

1つ目は、世界に開かれ、世界とつながるオープンな経済システムをつくり、アジアを始めとする世界の成長エネルギーを取り込むことです。海外との経済連携の加速、対日直接投資の増加、金融資本市場や航空など世界への窓口となる分野の改革、そして観光立国の推進などに、政府一丸となって取り組んでまいります。

2つ目は、地域に根を張るサービス産業を活性化し、生産性を高めることです。サービス産業分野に雇用者の約7割が勤めていますので、この分野で高い付加価値が生み出され、賃金水準が高くなるようにすることは不可欠です。そのためには、ITを活用して事業の標準化を進めること、異業種間のつながりで新たな発想を生み出すこと、そして真に消費者の立場に立って制度改革を行うことが必要です。

消費者の立場に立って改革を行い、生活の安心や快適さをもたらす様々なサービスが充実することにより、生活の現場から成長の力が生まれ、少子高齢化は成長につながるかぎに変わります。

3つ目は、人材の力を高めることです。働く意欲を持つすべての人に職業能力を高める機会が開かれていなくてはなりません。フリーターや子育て終了後の女性などに企業の現場で実践的な職業訓練の機会を提供し、その履修を証明するジョブ・カード制度を平成20年度からスタートさせます。また、働きながら子育てしやすい環境づくり、60歳以降も働きやすい環境づくりに政府全体で取り組みます。

これら3つの点を重視し、福田総理の新たな理念のもとで成長戦略を強化、再構築してまいります。新たな成長戦略では、これからの社会が目指すべき姿として地球環境との共生を掲げ、国を挙げて取り組むことをすべての基本とします。新たな成長戦略は、経済財政諮問会議を中心として、この春を目途に具体化を進めてまいります。

(4 高齢化を乗り切るための財政の効率化・健全化)

第3の課題である財政の効率化、健全化について申し上げます。

財政改革の第1ステップは、2011年度までに、国、地方合わせた基礎的財政収支を確実に黒字化させることです。そのために、歳出歳入一体改革をこれからも堅持してまいります。基本方針2006及び基本方針2007に沿って、これまで行ってきた歳出削減の努力を決して緩めることなく、引き続き改革を行ってまいります。

経済成長と財政健全化を両立させるために、多くの先進国が5年程度の中期で財政を管理し、実績を上げています。我が国も、安易な歳出増加や負担の先送りによって後の世代にしわ寄せすることがないよう、ここで踏ん張って、財政健全化の道を歩み続けなくてはなりません。

これからの財政を考える上で、最も難しい選択は社会保障の給付と負担のバランスです。社会保障は生活の重要な基盤です。私たちの世代だけではなく、子どもたちにとっても、信頼されるべき重要な基盤です。未曾有の高齢化を支える子どもたちの世代に重過ぎる負担を押しつけることがないよう、財政の健全性と両立させながら、質の高い社会保障制度を構築していかねばなりません。それが私たちの世代の責任です。私たちの世代が子どもたちの世代の選択肢を狭めることがないよう、現世代が未来世代に過度に頼らない、世代自立の経済社会構造を形づくっていくことが大切だと考えます。

新たに設置される社会保障国民会議とも連携をとりながら、経済財政諮問会議において、社会保障と税を一体的に組み合わせたあるべき姿について議論をしてまいります。

(5 むすび)

我が国経済は、これまでも様々な試練に直面しました。しかし、その都度、驚くべき柔軟性を発揮して、試練を乗り越えてきました。第二次世界大戦後の復興期には、欧米の革新的技術や生産方式を積極的に導入し、驚異的なキャッチアップを果たしました。石油危機の際には、世界一の省エネ技術を開発し、制約条件を逆に日本の優位性に変えました。また、バブル崩壊後のリストラの過程を経て、一部の日本企業は、戦後の日本型経営と欧米型経営とを融合させた独自のスタイルをつくりつつあり、イギリスの歴史ある雑誌「エコノミスト」は、これをハイブリッドモデルと表現しています。

このように、日本経済は絶えず柔軟に学び、自己変革することで、困難な状況を克服し成長してきました。柔軟さこそが日本経済の最大の強みです。人口減少社会の到来というかつてない高いハードルを前にして立ちすくむのではなく、新たな挑戦の中で柔軟に自己変革を続ける日本経済でありたいと思います。

この数年間の改革努力が将来のかぎを握っています。福田総理のリーダーシップのもと、全力を尽くして経済財政政策の運営と経済財政諮問会議の運営を行い、改革を続行してまいります。

国民の皆様と議員各位の御理解と御協力をよろしくお願い申し上げます。

(5) 国務大臣の演説に対する質疑要旨

国務大臣の演説(1月18日)に対する質疑は、21日に鳩山由紀夫君(民主)、伊吹文明君(自民)及び古川元久君(民主)が行い、22日には太田昭宏君(公明)、志位和夫君(共産)及び重野安正君(社民)が行った。

質疑の主なものは、次のとおりである。

(構造改革)

[1]「地方分権」に関する質疑に対して、「政府としては、地方分権改革を進めるに当たっては、地方再生戦略に従って、地方の活性化を図ると同時に、国と地方の役割分担の見直しにより、地方みずからが考え、実行できる体制を整備することが必要であると考えている」旨の答弁があった。

[2]「税金の無駄遣い(公共調達の適正化)」に関する質疑に対して、「行政の信頼を回復するためには徹底した無駄の排除が重要であり、内閣における重要課題の一つとして取り組んでいる。公共調達の適正化については、随意契約見直し計画に基づいて、各府省が契約の性質に応じて競争性、透明性を高める取組を行っている」旨の答弁があった。

[3]「独立行政法人改革」に関する質疑に対して、「今回の整理合理化においては、真に不可欠かどうかという観点から見直しを行い、16法人を削減するとともに、存続する法人についても、本来の目的にかなう事業のみに限定した。また、独立行政法人の業務運営が真に効率的なものとなるよう、内閣が業務の評価や人事に一元的にかかわることとし、さらに、随意契約を徹底的に見直し、競争性のない契約を削除するなど、国民にとって必要なサービスを確保しつつ、無駄を徹底的に排除することとしていく」旨の答弁があった。

[4]「随意契約の見直し」に関する質疑に対して、「国及び独立行政法人等の締結する随意契約については、競争性、透明性を高め、適正化を図るべく、見直しを鋭意進めてきたところであり、さらに、昨年11月には、随意契約の適正化に向けたこれまでの取組をより徹底するため、より競争性の高い契約方式への移行など、各府省が定めた見直し計画の厳正な実施、第三者機関や独立行政法人評価委員会等による監視体制の強化などの措置を行うこととしていく」旨の答弁があった。

[5]「いわゆる天下り問題」に関する質疑に対して、「昨年の国家公務員法等の改正により、各府省等による再就職あっせんを全面的に禁止し、官民人材交流センターに一元化するほか、民間に就職した職員の出身省庁への働きかけも規制し、これを罰則で担保するとともに、新たに外部監視機関による厳格な監視を行うこととした。無駄を排除する観点からも、引き続きこうした取組を通じて、地方公共団体も含めて、随意契約について競争性、透明性を高め適正化を図るとともに、いわゆる天下りの問題についても適切な対応に努めていく」旨の答弁があった。

[6]「構造改革路線の総括と転換」に関する質疑に対して、「国民に新たな活力を与え、生活の質を高めるために、これまでの生産者、供給者の立場からつくられた法律、制度さらには行政や政治を、国民本位のものに改めなければならない。これは、まさに時代に適合しなくなった制度や組織を改めるという改革にほかならないものであり、引き続き必要な改革を進めていく。その際、財政健全化への努力も継続していくことが必要であり、真に必要なニーズにこたえるための財源の重点配分を行いつつ、基本方針2006に示された5年間の歳出改革を着実かつ計画的に実施していく」旨の答弁があった。

[7]「公務員制度改革」に関する質疑に対して、「公務員制度については、有識者から成る懇談会を設け、採用から退職までの公務員の人事制度全般の課題について検討しているところであり、懇談会の検討結果を踏まえ、公務員が能力を高め、国民の立場に立ち、誇りと責任を持って職務を遂行できるよう、総合的な公務員制度改革を進めていく」旨の答弁があった。

(道路整備計画、道路特定財源)

[1]「道路特定財源を維持する理由」に関する質疑に対して、「地域の自立、活性化に役立つ道路の整備や、災害に耐えられる橋梁の維持、補修、救急病院への交通の利便性の確保、環境対策にも役立つような都市部の渋滞対策、あかずの踏切の解消等々、国民生活に欠かせない対策は今後も進めていかなければならないと考えている。重点化、効率化を図りながら必要な対策を着実に実施するためには、財源の確保が必要であり、受益者負担の考え方に基づき、道路特定財源として暫定税率を維持することとした」旨の答弁があった。

[2]「自動車関係諸税」に関する質疑に対して、「自動車関係諸税は、それぞれ創設の経緯や課税根拠があり、国、地方の貴重な財源となっている。このうち、揮発油税などの道路特定財源諸税の税率水準については、自動車が必需品かどうかということではなくて、地域の自立、活性化や国民生活のために本当に必要な道路整備などを実施していくために、受益と負担の関係を前提として、現行水準を維持していきたいと考えている」旨の答弁があった。

[3]「道路特定財源の暫定税率の廃止の影響」に関する質疑に対して、「暫定税率が廃止された場合、国、地方を合わせて約2兆6,000億円の税収が失われるため、国民生活に欠かせない道路整備の実施が困難となるほか、地方団体によっては、福祉や教育などの住民サービスの見直しにつながるおそれもある」旨の答弁があった。

[4]「道路特定財源の事業量」に関する質疑に対して、「現行の道路整備計画が今年度末に期限を迎えるに当たり、改めて道路整備の必要性を検討した結果として、地域の自立、活性化に役立つ道路の整備など、国民生活に欠かせない対策は、今後も進めていかなければならないと考えている。中期計画の事業量59兆円は上限との位置付けであり、暫定税率の維持は、59兆円というお金を道路整備に使い切ること自体を目的としているものではない」旨の答弁があった。

[5]「道路の整備方針」に関する質疑に対して、「国民生活のために必要な道路整備を進めるに当たっては、施策の重点化と厳密な事業評価を行って、事業の必要性や緊急性をよく吟味し、計画的に進めることが重要である」旨の答弁があった。

(租税特別措置、暫定税率)

[1]「歳入関連法案」に関する質疑に対して、「政府としても、歳入関連法案については、税法を始め国民生活に直結する重要な法律案であるということから、法案の年度内成立に向けて、立法府の理解と御協力が得られるよう最大限の努力を行っていきたいと考えている」旨の答弁があった。

[2]「租税特別措置」に関する質疑に対して、「租税特別措置については、その政策目的や効果、政策手段としての適正性を十分に吟味しつつ、常に見直しを行っていく必要があると考えている。これまでもこうした観点から、真に有効な措置への集中、重点化に取り組んでいるところであり、今後もこうした取組を進めていく必要がある」旨の答弁があった。

[3]「租税特別措置法案の提出」に関する質疑に対して、「租税特別措置法は、所得税法、法人税法など各税法に規定された措置について、税率の特例を始め、各種の特別措置をまとめて規定しているものである。今回の税制改正においても、必要性の薄れた特別措置を廃止、縮減する一方で、新たな政策ニーズに対応した特別措置を創設するといったスクラップ・アンド・ビルドの考え方等により、各種特別措置の全体を通じた見直しを行い、現在、法律案の提出に向けた準備を進めているところである」旨の答弁があった。

(財政、税制改革(道路、租税特別措置を除く))

[1]「消費税を含む税体系の抜本的改革」に関する質疑に対して、「これからの社会保障を持続可能な制度とするため、安定した財源を確保する必要があり、消費税を含む税体系の抜本的改革の早期実現を図る必要がある。政府としては、社会保障国民会議における議論も踏まえながら、税体系の抜本的改革の検討を進めていく。社会保障の財源として消費税をどのように考えるかについても、この議論の中で幅広く検討する」旨の答弁があった。

[2]「環境税導入」に関する質疑に対して、「環境税は、国民に広く負担を求めることとなるため、地球温暖化対策全体の中での具体的な位置付け、その効果及び影響、諸外国の取組の現状等を踏まえて、国民、事業者などの理解と協力を得るよう努めながら、真摯に総合的な検討を進めていくべき課題である」旨の答弁があった。

[3]「研究開発税制」に関する質疑に対して、「我が国の持続的な経済成長の実現に向け、技術革新を加速するため、平成20年度税制改正において研究開発税制の拡充を行う。この拡充は、大企業だけでなく中小企業にも適用されるもので、巨大企業のための減税ではない」旨の答弁があった。

(経済、金融政策)

[1]「サミットにおける世界経済の扱い」に関する質疑に対して、「7月の北海道洞爺湖サミットにおいても、金融市場の安定性や原油高の問題も含め、世界経済の諸問題につき、首脳レベルでもしっかりと議論をしたい」旨の答弁があった。

[2]「原油高騰対策」に関する質疑に対して、「原油価格の急激な高騰は、国民生活を直撃するとともに、中小企業を中心に深刻な影響をもたらしている。そのため、昨年12月25日に、原油高騰・下請中小企業に関する緊急対策関係閣僚会議を開催して、中小企業など業種横断的対策、業種別対策、生活関連対策、構造転換対策、国際原油市場安定化への働きかけ、石油製品等の価格監視等の強化の6項目を柱とした具体的なパッケージを取りまとめた」旨の答弁があった。

[3]「経済政策」に関する質疑に対して、「すべての人が成長を実感できる経済成長戦略を実行したいと思っており、具体的には、意欲のある人が皆働けるように、定年制の在り方等について検討を進めるとともに、ジョブ・カード制度を4月から導入する。さらに、地域経済の活力の復活と中小企業の生産性の向上を実現するため、新たな商品やサービスを生み出す取組を支援する」旨の答弁があった。

[4]「米価の下落」に関する質疑に対して、「近年、米の価格は低下傾向にあるが、こうした中でも米の過剰生産傾向が続いており、19年産米は価格が大幅下落する事態となった。このため、政府が適正備蓄水準まで米を買い入れる緊急対策を実施するとともに、20年産米の生産調整が確実に実行されるよう、全力を挙げる」旨の答弁があった。

[5]「基礎的財政収支黒字化の道筋」に関する質疑に対して、「成長力強化に取り組むことを通じて、安定した成長を図るとともに、歳出改革を徹底して実施する。社会保障や少子化などに伴う負担増に対しては、安定的な財源を確保し、将来世代への負担の先送りを行わないようにする。まずは、2011年度に国、地方の基礎的財政収支の黒字化を確実に達成する」旨の答弁があった。

(雇用対策)

[1]「雇用政策」に関する質疑に対して、「フリーター常用雇用化プランなどによる若年者の正規雇用化、65歳までの雇用確保や労働者の募集・採用時における年齢制限禁止の義務化の徹底、70歳まで働ける企業の普及促進、女性の就業率向上を目指した保育・子育て支援サービスの充実、育児や介護のために離職した女性に対する再就職・企業支援等に着実に取り組むことにより、働く意欲と能力を持つすべての人々の労働参加を実現していく」旨の答弁があった。

[2]「労働分配率」に関する質疑に対して、「労働分配率の向上と雇用の安定化の実現を図るため、フリーター常用雇用化プランなど若者の正規雇用化の支援、改正パートタイム労働法による均衡待遇の確保、改正最低賃金法等による労働条件の改善、日雇い派遣の適正化等労働者派遣制度の見直しなどに取り組み、すべての人が成長を実感できる経済を実現していく」旨の答弁があった。

[3]「労働者派遣制度」に関する質疑に対して、「偽装請負など違法派遣の一掃に向け指導監督を一層強化するとともに、日雇い派遣の適正化のためのガイドラインを早急に創設するほか、制度の根幹にかかわる問題については、厚生労働省に研究会を設け、検討を進めていく」旨の答弁があった。

[4]「介護労働者、医師の確保」に関する質疑に対して、「介護労働者が働きやすい環境の整備を進めることにより、将来にわたって安定的に人材を確保するとともに介護サービスの仕事が魅力あるものとなるよう努める。また、昨年5月末に政府・与党で取りまとめた緊急医師確保対策等に基づき、医学部の定員増、医師不足地域に対する国による緊急臨時的な医師派遣、交代勤務制等の導入の支援、診療報酬改定等を通じた病院勤務医の負担軽減など、実効性のある対策を行っていく」旨の答弁があった。

(年金記録問題、年金制度改革)

[1]「年金制度改革」に関する質疑に対して、「年金制度を将来にわたり確実で信頼できる制度とするために、幅広く国民各層から成る社会保障国民会議を開催し、年金制度を含め社会保障のあるべき姿や負担の仕方などについて議論を行っていく。野党が国民会議に参加しないというのであれば、国会の場で議論を活発にやって欲しいと考えている」旨の答弁があった。

[2]「社会保障国民会議」に関する質疑に対して、「社会保障制度は、持続可能で、皆で安心できるようなものへと再構築していかなければならない。給付やサービスの水準に応じて、保険料や税金など国民負担の大きさも変わり、安定した財源の確保も必要である。このため、幅広く国民各層から成る社会保障国民会議を開催し、社会保障のあるべき姿や、その中での政府の役割、負担の仕方などについて議論して欲しいと考えている」旨の答弁があった。

[3]「年金の将来像」に関する質疑に対して、「少子高齢化が進む中にあっても、年金制度も含めて社会保障制度を持続的で国民が信頼できる制度とするためには、安定した財源を確保しなければならない。このため、消費税を含む抜本的な税制改革について早期に実現を図る必要がある。欧州各国においては、経済動向に左右されにくい消費税が国の主要な財源とされていることも十分参考になると考えている。いずれにしても、社会保障国民会議において、年金制度を含め社会保障の在るべき姿や負担の仕方などについて議論を行っていく」旨の答弁があった。

[4]「年金制度の在り方」に関する質疑に対して、「年金制度は、国民の老後生活を支える柱であり、持続可能で皆が安心できるものとしていくことが重要である。このため、平成16年の年金改革などを踏まえて、未納、未加入の者が生じないようきめ細かな対応を行うとともに、基礎年金の国庫負担割合について、所要の安定した財源を確保した上で、平成21年度までに2分の1に引き上げていくことが必要と考えている。さらに、中長期的な視点に立って、年金制度を確実で信頼できる制度とするために、社会保障国民会議において、議論を行っていく。年金制度はすべての国民の生活にかかわる問題なので、各党各会派が、党利党略でなく、話し合いが行われることを強く望む」旨の答弁があった。

[5]「平成12年以降の年金記録が消えている事例」に関する質疑に対して、「今日では、かつてのような、年金記録のシステム全体にかかわるような問題は生じないような体制が整備されたものと考えている。指摘の5件の事例は、事務処理の誤りが原因ではないかと考えているが、現在、その原因などについて調査を実施している。なお、こうした間違いが生じないよう、コンピューターにチェック機能を付与するとともに、社会保険事務所において入力データの確認を励行するなど、事務処理誤りの防止対策を強化してきている。加えて、来年4月以降は、ねんきん定期便により、国民のチェックを可能とするという仕組みにしている」旨の答弁があった。

[6]「年金記録問題の取組の現状、体制」に関する質疑に対して、「ねんきん特別便については、昨年の12月から今月の7日までに約48万件を送ったのに対し、約3分の1に当たる16万件の回答を得ている。今後、推移を見た上で、回答のない者に対して、再度はがきを出して確認を願うなどの対応を図っていく。年金記録確認第三者委員会については、申し立て件数の増加に対応するために、事務局職員を約880人に大幅に増員するなど審議体制を強化している。社会保険庁においては、昨年4月には約5,200人体制であったのに対し、昨年12月時点では約9,100人体制に拡充して取り組んでいる。政府全体として年金記録問題に関する関係閣僚会議を設置し、必要に応じ人員の強化を図るとともに、地方自治体や企業などとも連携して、問題の解決を図っていく」旨の答弁があった。

[7]「年金記録問題の解決及び信頼回復に向けた取組」に関する質疑に対して、「1億人のすべての年金受給者や現役加入者にねんきん特別便を本年10月までに送り、国民一人ひとりに記録を確認してもらいながら、年金記録の統合作業を着実に進めていく。加えて、来年4月以降は、ねんきん定期便を毎年、現役加入者全員に送ることにより、国民が自分の年金記録を確認できる仕組みを構築していく。同時に、平成22年1月に社会保険庁を解体して新たに設ける日本年金機構について、国民の信頼にこたえられる組織にしていく」旨の答弁があった。

(社会保障制度改革(年金記録問題を除く))

[1]「障害者自立支援法の抜本的な見直し」に関する質疑に対して、「与党における検討結果も踏まえ、来年度において、利用者負担の更なる軽減や事業者の経営基盤の強化などのための緊急措置を講ずるとともに、残る課題についても、法施行3年後の見直しに向けて検討を進めていく」旨の答弁があった。

[2]「被爆者施策」に関する質疑に対して、「保健、医療及び福祉にわたる総合的な援護対策を講じている。特に原爆症については、来年度より、その認定基準を可能な限り広く認定する観点から見直すこととしている」旨の答弁があった。

[3]「肝炎対策」に関する質疑に対して、「肝炎患者のインターフェロン治療に対する医療費助成については、早期治療の観点から早急に実現すべき課題であり、政府としては平成20年度予算に約129億円を計上し、来年度から実施することとしている」旨の答弁があった。

[4]「後期高齢者医療制度」に関する質疑に対して、「急速に高齢化が進む我が国においては、国民皆保険を堅持し、医療制度を将来にわたり持続可能な制度とすることが重要であり、後期高齢者医療制度の理念や方向性は適切なものと考えているが、一方で、高齢者の立場に立ったきめ細かな対応に努める必要があり、与党プロジェクトチームにおける検討結果を踏まえ、保険料についての激変緩和措置を講じ、制度を円滑に実施していく」旨の答弁があった。

[5]「社会保障費の抑制」に関する質疑に対して、「本格的な人口減少社会が到来する中、次世代に負担を先送りすることのないよう、引き続き歳出全般にわたる抑制努力を行っていく必要がある。特に、社会保障については、経済の伸びを上回って増大していくことが見込まれており、セーフティーネットとしての役割の重要性は十分認識しつつも、給付の合理化、効率化にも引き続き取り組んでいく必要がある」旨の答弁があった。

(地球温暖化対策、環境問題)

[1]「京都議定書の温室効果ガス排出量6%削減目標の達成への見通しと方策」に関する質疑に対して、「今年度中に目標達成計画を改定し、約束したとおり2012年までの間に目標を達成する。法制度の拡充等、必要な追加対策を国民の協力も得ながら強力に推し進めていく」旨の答弁があった。

[2]「地球温暖化問題に関する中期的数値目標の設定及び実現方法」に関する質疑に対して、「昨年末の気候変動枠組条約締約国会議、COPでの合意に基づき、今後目標の定め方等について幅広い観点から国際交渉を進めていくことになっており、我が国としてもG8議長国として国際的議論を主導していく。すべての主要排出国が参加する実効性のある新たな枠組み構築に向け、なるべく早く美しい星50を更に具体化し、目標の定め方に関する考え方も含め、我が国自身の行動や世界に向けての提案を表明する方向で検討をしている」旨の答弁があった。

[3]「地球温暖化対策と自動車関係諸税との関係」に関する質疑に対して、「欧州の主要国がガソリンの税金を段階的に引き上げている状況において、地球温暖化対策に逆行しかねない暫定税率の廃止を行うことは、国際的な理解を得がたいと考えている」旨の答弁があった。

[4]「生物多様性保全の取組強化」に関する質疑に対して、「昨年、第3次生物多様性国家戦略を閣議決定し、トキ、イリオモテヤマネコなど希少種の保護や、湿原、サンゴ礁など生態系の保全等、自然と共生する社会の形成に向けた施策を総合的に推進している」旨の答弁があった。

[5]「日中環境協力」に関する質疑に対して、「気候変動を始めとする環境・省エネ分野での日中協力は子孫と国際社会に対する責務であり、戦略的互恵関係の重要な分野として両国の協力を更に推進していく。具体的には、環境関連情報の共有や人材育成、技術移転、共同研究などを進めていく」旨の答弁があった。

[6]「産業部門の温室効果ガスの削減」に関する質疑に対して、「産業界の自主行動計画による効果が着実に上がっている中で、計画を公的協定とすることは現時点では考えていないが、今後も産業界の更なる努力を促すなど、6%削減目標の確実な達成のために、あらゆる部門における対策の一層の強化を進めていく」旨の答弁があった。

[7]「原子力と自然エネルギーの関係」に関する質疑に対して、「原子力発電は、発電過程で二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーであり、供給安定性にすぐれた電源である。また、太陽光や風力発電などの自然エネルギーの開発普及の促進は、地球温暖化対策に加えて、エネルギー源の多様化の観点からも重要である。二者択一ではなく、それぞれの特性を生かす形で、総合力でこの問題に対処していく必要がある」旨の答弁があった。

(外交政策)

[1]「アジア外交」に関する質疑に対して、「日米同盟を確固たるものとしつつ、積極的なアジア外交を推進する。具体的には、中国及び韓国との関係の強化、朝鮮半島をめぐる問題の解決、開かれた地域協力の推進等に取り組む」旨の答弁があった。

[2]「今後の対中関係の進め方」に関する質疑に対して、「中国との間で、省エネ、環境などの協力を進めるとともに、東シナ海資源開発問題を早期に解決する。引き続き幅広い対話を強化し、アジアと世界の安定と発展に貢献する戦略的互恵関係を築く」旨の答弁があった。

[3]「北朝鮮問題」に関する質疑に対して、「日朝平壌宣言にのっとり、諸懸案を包括的に解決し、日朝国交正常化を図るとの方針に何ら変わりはない。六者会合共同声明を完全に実施するために、朝鮮半島の非核化と拉致問題を含む日朝関係の双方がともに前進するように、米国や韓国とも連携しつつ最大限努力を行っていく予定である」旨の答弁があった。

[4]「日米関係」に関する質疑に対して、「日米安全保障体制の信頼性の向上を図るとともに、国際社会が直面する課題に緊密に連携して取り組むことも重要である。在日米軍再編については、抑止力維持と地元の負担軽減という考え方を踏まえ、地域の振興についても着実に進めてまいりたい」旨の答弁があった。

[5]「アフリカ諸国支援策」に関する質疑に対して、「本年5月に我が国で開催されるTICAD IVは、近年アフリカで見られる政治・経済両面の前向きな動きを更に後押しし、持続可能な開発を確かなものとするために、国際社会の知恵と資金を結集することを目的にしている。我が国としても、アフリカ諸国のオーナーシップを後押しするような行動計画を発表できるよう、具体化に向けて準備を進めているところである」旨の答弁があった。

[6]「洞爺湖サミットに取り組む見解と決意」に関する質疑に対して、「アジア外交やテロとの闘いといった種々の外交課題に関する我が国の立場を念頭に置きつつ、G8議長国として、大局的な観点から議論を主導し、地球規模課題の解決に向け、他の参加国の協力も得て大きな成果を上げたい考えである」旨の答弁があった。

(防衛政策、防衛省問題)

[1]「国際平和協力活動の原理原則と一般法」に関する質疑に対して、「自衛隊による国際平和協力活動については、国際社会の取組の多様化を踏まえ、国民的議論を経た上で、我が国として主体的に判断することが重要である。また、一般法については、憲法の範囲内で活動を行うことを前提として、与党における議論や国民的な議論の深まりを十分に踏まえて検討を進めていく。機会があれば、野党とも十分協議をさせていただきたい」旨の答弁があった。

[2]「防衛省改革」に関する質疑に対して、「前防衛事務次官が収賄で逮捕、起訴されたことを始め、国民の信頼を損ねる様々な問題が生じていることは極めて遺憾である。政府としては、防衛省改革会議における議論も踏まえ、防衛省・自衛隊が我が国の平和と独立を守る役割を担う組織として再生できるよう、できる限り早期に具体的施策を策定し、抜本的な改革を進める決意である」旨の答弁があった。

[3]「防衛省の調達改革への取組」に関する質疑に対して、「防衛装備品の調達に関する具体的な合理化、効率化への取組として、去る12月に、平成23年度までの5年間で装備品のコストを15%縮減する目標を初めて設定した。この数値目標の達成のため、今後具体的な施策を着実に実施していくことが必要と考えている」旨の答弁があった。

[4]「中期防衛力整備計画と防衛計画の大綱」に関する質疑に対して、「中期防や防衛大綱の取扱いに関しては、今後、防衛省改革会議における議論の内容や安全保障環境の変化などを踏まえて、政府部内で必要な検討を早急に行っていく」旨の答弁があった。

[5]「防衛省の情報公開と行政文書の管理」に関する質疑に対して、「防衛省においては、行政文書の管理状況調査の結果を踏まえて、文書管理の在り方の根本的な見直しに取り組んでいる。これらの取組を通じて、行政文書を適切に保存するとともに、可能な限りの情報公開に努め、国民に対する説明責任をしっかり果たすことが必要である」旨の答弁があった。

(政治姿勢)

[1]「日本のあるべき国家像、総理の目指す政治」に関する質疑に対して、「戦後一貫して築いてきた平和主義は今後も堅持すべきである。さらに、地球環境問題は避けて通れない課題であり、世界をリードしていくことが必要で、新しい国家像として考えていくべき課題である。同時に、一人ひとりの国民が前向きに夢を抱くことができる国を目指さなければいけない。政治の役割は、一人ひとりの国民の活力を引き出し、活力ある国民が活躍する舞台を用意することであり、国民の立場に立ったきめ細かな政治、行政を進めることが求められている。日本の将来のために、この大改革を最後までやり遂げる覚悟で国政に当たる」旨の答弁があった。

[2]「ねじれ国会における政治の責任、各党との政策協議」に関する質疑に対して、「ねじれ状況にあっても、予算や税制、法律の制定などを着実に実施して、国民生活に深刻な影響が生じないようにすることは政治の責任である。国民のためになる結論が得られるよう、各党各会派に政策協議を呼びかけていきたい」旨の答弁があった。

[3]「前国会において参議院で可決した法案を衆議院で議論しなかった理由」に関する質疑に対して、「国民にとって最善の結論を出すという考え方のもと、与野党で真摯な議論を行い、互いに譲るべきは譲り、多数の議員立法が成立した。一方、意見の相違を埋められず、合意に至らなかった法案もあるが、国民のための政策を実現するとの考えで合意に向けた話し合いを続けることにより、互いの信頼関係が生まれてくるものと信じる」旨の答弁があった。

[4]「テロ新法について、再議決でなく解散・総選挙で民意を問わなかった理由」に関する質疑に対して、「再議決は丁寧な話し合いを真剣に行った後に一つの結論を出す方法として、憲法で認められた決定手続である。必要に応じて選挙を行い、国民に信を問うことは民主主義において大切なことであるが、その時期は、国民生活に悪影響を与えないよう留意する必要がある。今は、解散を云々するよりも、一つ一つの政策について、各党各会派と忌憚なく議論し、国民のために最善の結論を得るよう努力していくことが肝要である」旨の答弁があった。

2 主な議案等の審議

年月日議案等
平成20年
1月18日
○国務大臣の演説
  • 福田内閣総理大臣の施政方針演説
  • 高村外務大臣の外交演説
  • 額賀財務大臣の財政演説
  • 大田経済財政政策担当大臣の経済演説
1月21日 ○国務大臣の演説に対する質疑

質疑

鳩山由紀夫君(民主)、伊吹文明君(自民)、古川元久君(民主)

答弁

福田内閣総理大臣、額賀財務大臣、増田総務大臣
1月22日 ○国務大臣の演説に対する質疑

質疑

太田昭宏君(公明)、志位和夫君(共産)、重野安正君(社民)

答弁

福田内閣総理大臣、舛添厚生労働大臣、増田総務大臣、鴨下環境大臣
1月29日 ○平成19年度一般会計補正予算(第1号)〈可決〉

○平成19年度特別会計補正予算(特第1号)〈可決〉

○平成19年度政府関係機関補正予算(機第1号)〈可決〉

討論(以上3件)

馬淵澄夫君(民主)、田野瀬良太郎君(自民)、笠井亮君(共産)、阿部知子君(社民)
2月6日 ○参議院から平成19年度一般会計補正予算(第1号)外2件を否決した旨の通知受領及び返付を受けた旨の議長報告

  • 平成19年度一般会計補正予算(第1号)外2件両院協議会協議委員の選挙(休憩)
  • 平成19年度一般会計補正予算(第1号)外2件両院協議会協議委員議長報告(成案を得ず)
  • 両院の意見が一致しないので、憲法第60条第2項により、本院の議決が国会の議決となった旨の議長宣告
    2月19日 ○趣旨説明

    • 平成20年度における公債の発行の特例に関する法律案(内閣提出)
    • 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
    説明

    額賀財務大臣

    質疑

    古本伸一郎君(民主)、石井啓一君(公明)、佐々木憲昭君(共産)

    答弁 福田内閣総理大臣、額賀財務大臣、冬柴国土交通大臣

    ○発言・趣旨説明

    • 平成20年度地方財政計画
    • 地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
    • 地方法人特別税等に関する暫定措置法案(内閣提出)
    • 地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
    発言・説明

    増田総務大臣

    質疑

    今井宏君(自民)、田嶋要君(民主)、塩川鉄也君(共産)、日森文尋君(社民)

    答弁

    福田内閣総理大臣、増田総務大臣、額賀財務大臣
    2月21日 ○趣旨説明

    • 道路整備費の財源等の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
    説明

    冬柴国土交通大臣

    質疑

    鈴木淳司君(自民)、後藤斎君(民主)、高木陽介君(公明)、穀田恵二君(共産)、保坂展人君(社民)

    答弁

    福田内閣総理大臣、冬柴国土交通大臣
    2月29日 ○平成20年度一般会計予算〈可決〉

    ○平成20年度特別会計予算〈可決〉

    ○平成20年度政府関係機関予算〈可決〉

    討論(以上3件)

    笠井亮君(共産)、遠藤利明君(自民)
    3月13日 ○日本銀行総裁及び同副総裁任命につき同意を求めるの件〈同意〉

    討論

    中川正春君(民主)、根本匠君(自民)、佐々木憲昭君(共産)、阿部知子君(社民)

    ○道路整備費の財源等の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)〈可決〉

    討論

    長安豊君(民主)、穀田恵二君(共産)、保坂展人君(社民)
    3月18日 ○趣旨説明

    • 放送法第37条第2項の規定に基づき、承認を求めるの件
    説明

    増田総務大臣

    質疑

    森本哲生君(民主)

    増田総務大臣

    ○趣旨説明

    • 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第24条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件
    説明

    高村外務大臣

    質疑

    近藤昭一君(民主)、赤嶺政賢君(共産)、照屋寛徳君(社民)

    答弁

    高村外務大臣、石破防衛大臣、町村内閣官房長官
    3月28日 ○参議院から平成20年度一般会計予算外2件を否決した旨の通知受領及び返付を受けた旨の議長報告

    • 平成20年度一般会計予算外2件両院協議会協議委員の選挙(休憩)
    • 平成20年度一般会計予算外2件両院協議会協議委員議長報告(成案を得ず)
    • 両院の意見が一致しないので、憲法第60条第2項により、本院の議決が国会の議決となった旨の議長宣告
    4月3日 ○日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第24条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件〈承認〉

    討論

    笠井亮君(共産)、照屋寛徳君(社民)

    ○趣旨説明

    • 電波法の一部を改正する法律案(内閣提出)
    説明

    増田総務大臣

    質疑

    小川淳也君(民主)

    答弁

    増田総務大臣
    4月4日 ○趣旨説明

    国土交通省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

    説明

    冬柴国土交通大臣

    質疑

    三日月大造君(民主)

    答弁

    町村内閣官房長官、冬柴国土交通大臣、石破防衛大臣
    4月8日 ○趣旨説明

    • 介護保険法及び老人福祉法の一部を改正する法律案(内閣提出)
    説明

    舛添厚生労働大臣

    質疑

    松野博一君(自民)、菊田真紀子君(民主)

    答弁

    舛添厚生労働大臣
    4月10日 ○趣旨説明

    • 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
    説明

    鴨下環境大臣

    質疑

    北川知克君(自民)、末松義規君(民主)、田端正広君(公明)、笠井亮君(共産)

    答弁

    鴨下環境大臣、町村内閣官房長官、甘利経済産業大臣、渡辺金融担当大臣、高村外務大臣
    4月25日 ○参議院から日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第24条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件を承認しないと議決した旨の通知受領及び返付を受けた旨の議長報告

    • 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第24条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件両院協議会協議委員の選挙
    (休憩)

    • 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第24条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件両院協議会協議委員議長報告(成案を得ず)
    • 両院の意見が一致しないので、憲法第61条により、本院の議決が国会の議決となった旨の議長宣告
    4月30日 ○内閣提出、地方税法等の一部を改正する法律案、地方法人特別税等に関する暫定措置法案、地方交付税法等の一部を改正する法律案は、いずれも、2月29日に参議院に送付の後、60日を経過したが同院はいまだ議決に至らず、よって、本院においては、憲法第59条第4項により、参議院がこれを否決したものとみなすべしとの動議(大島理森君外102名提出)〈可決〉

    ○内閣提出、平成20年度における公債の発行の特例に関する法律案、所得税法等の一部を改正する法律案は、いずれも、2月29日に参議院に送付の後、60日を経過したが同院はいまだ議決に至らず、よって、本院においては、憲法第59条第4項により、参議院がこれを否決したものとみなすべしとの動議(大島理森君外102名提出)〈可決〉

    討論(以上2件)

    穀田恵二君(共産)、岩屋毅君(自民)

    • 地方税法等の一部を改正する法律案、地方法人特別税等に関する暫定措置法案、地方交付税法等の一部を改正する法律案はいずれも参議院において否決したものとみなすこととなった。
    • 平成20年度における公債の発行の特例に関する法律案、所得税法等の一部を改正する法律案はいずれも参議院において否決したものとみなすこととなった。
    (休憩)

    ○参議院から、地方税法等の一部を改正する法律案、地方法人特別税等に関する暫定措置法案、地方交付税法等の一部を改正する法律案、平成20年度における公債の発行の特例に関する法律案、所得税法等の一部を改正する法律案の返付を受けた旨の議長報告

    • 憲法第59条第2項に基づき、地方税法等の一部を改正する法律案の本院議決案、地方法人特別税等に関する暫定措置法案の本院議決案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の本院議決案の3案を一括して議題とし、直ちに再議決すべしとの動議(大島理森君外102名提出)〈可決〉
    討論

    塩川鉄也君(共産)、谷口和史君(公明)

    • 地方税法等の一部を改正する法律案、本院議決案〈出席議員の3分の2以上の多数をもって可決〉
    • 地方法人特別税等に関する暫定措置法案、本院議決案〈出席議員の3分の2以上の多数をもって可決〉
    • 地方交付税法等の一部を改正する法律案、本院議決案〈出席議員の3分の2以上の多数をもって可決〉
    • 憲法第59条第2項に基づき、平成20年度における公債の発行の特例に関する法律案の本院議決案及び所得税法等の一部を改正する法律案の本院議決案の両案を一括して議題とし、直ちに再議決すべしとの動議(大島理森君外103名提出)〈可決〉
    討論

    佐々木憲昭君(共産)、後藤茂之君(自民)

    • 平成20年度における公債の発行の特例に関する法律案、本院議決案〈出席議員の3分の2以上の多数をもって可決〉
    • 所得税法等の一部を改正する法律案、本院議決案〈出席議員の3分の2以上の多数をもって可決〉
    5月9日 ○趣旨説明

    • 国家公務員制度改革基本法案(内閣提出)
    説明

    渡辺国務大臣

    質疑

    岡下信子君(自民)、馬淵澄夫君(民主)、上田勇君(公明)、塩川鉄也君(共産)、菅野哲雄君(社民)

    答弁

    福田内閣総理大臣、渡辺国務大臣、増田総務大臣
    5月13日 ○参議院から道路整備費の財源等の特例に関する法律の一部を改正する法律案を否決した旨の通知受領及び返付を受けた旨の議長報告

    • 憲法第59条第3項及び国会法第84条第1項の規定により道路整備費の財源等の特例に関する法律の一部を改正する法律案につき、両院協議会を求めるの動議(山岡賢次君外19名提出)〈否決〉
    趣旨弁明

    川内博史君(民主)

    討論

    梶山弘志君(自民)、後藤斎君(民主)、佐々木憲昭君(共産)、日森文尋君(社民)

    • 憲法第59条第2項に基づき、道路整備費の財源等の特例に関する法律の一部を改正する法律案の本院議決案を議題とし、直ちに再議決すべしとの動議(大島理森君外103名提出)〈可決〉
    討論

    菅直人君(民主)、山本公一君(自民)、穀田恵二君(共産)、保坂展人君(社民)

    • 道路整備費の財源等の特例に関する法律の一部を改正する法律案、本院議決案〈出席議員の3分の2以上の多数をもって可決〉
    5月15日 ○趣旨説明

    • 特定商取引に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律案(内閣提出)
    説明

    甘利経済産業大臣

    質疑

    三谷光男君(民主)、大口善徳君(公明)

    答弁

    甘利経済産業大臣、岸田国務大臣、増田総務大臣
    5月22日 ○趣旨説明

    • 少年法の一部を改正する法律案(内閣提出)
    説明

    鳩山法務大臣

    質疑

    小野次郎君(自民)、加藤公一君(民主)

    答弁

    鳩山法務大臣
    5月29日 ○国家公務員制度改革基本法案(内閣提出)〈修正〉

    討論

    塩川鉄也君(共産)、江崎洋一郎君(自民)、泉健太君(民主)、桝屋敬悟君(公明)、菅野哲雄君(社民)

    ○趣旨説明

    • 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
    説明

    舛添厚生労働大臣

    質疑

    園田康博君(民主)、高木美智代君(公明)

    答弁

    町村内閣官房長官、舛添厚生労働大臣、岸田国務大臣、渡海文部科学大臣
    6月6日 ○アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議案(笹川堯君外12名提出)〈可決〉

    ○国民読書年に関する決議案(笹川堯君外12名提出)〈可決〉

    趣旨弁明(以上2件)

    笹川堯君(自民)
    6月12日 ○福田内閣信任決議案(伊吹文明君外7名提出)〈可決〉

    趣旨弁明

    谷垣禎一君(自民)

    穀田恵二君(共産)、井上義久君(公明)
    6月13日 ○本国会の会期を6月16日から21日まで6日間延長するの件(議長発議)〈可決〉
    6月20日 ○請願509件〈採択〉

    3 決議

    可決したもの

    アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議案(笹川堯君外12名提出、決議第1号)[自民・民主・公明・共産・社民・国民提出](20.6.6)

    昨年9月、国連において「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が、我が国も賛成する中で採択された。これはアイヌ民族の長年の悲願を映したものであり、同時に、その趣旨を体して具体的な行動をとることが、国連人権条約監視機関から我が国に求められている。

    我が国が近代化する過程において、多数のアイヌの人々が、法的には等しく国民でありながらも差別され、貧窮を余儀なくされたという歴史的事実を、私たちは厳粛に受け止めなければならない。

    全ての先住民族が、名誉と尊厳を保持し、その文化と誇りを次世代に継承していくことは、国際社会の潮流であり、また、こうした国際的な価値観を共有することは、我が国が21世紀の国際社会をリードしていくためにも不可欠である。

    特に、本年7月に、環境サミットとも言われるG8サミットが、自然との共生を根幹とするアイヌ民族先住の地、北海道で開催されることは、誠に意義深い。

    政府は、これを機に次の施策を早急に講じるべきである。

    1. 政府は、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」を踏まえ、アイヌの人々を日本列島北部周辺、とりわけ北海道に先住し、独自の言語、宗教や文化の独自性を有する先住民族として認めること。
    2. 政府は、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が採択されたことを機に、同宣言における関連条項を参照しつつ、高いレベルで有識者の意見を聞きながら、これまでのアイヌ政策をさらに推進し、総合的な施策の確立に取り組むこと。

    右決議する。

    国民読書年に関する決議案(笹川堯君外12名提出、決議第2号)[自民・民主・公明・共産・社民・国民提出](20.6.6)

    文字・活字は、人類が生み出した文明の根源をなす崇高な資産であり、これを受け継ぎ、発展させて心豊かな国民生活と活力あふれる社会の実現に資することは、われわれの重要な責務である。

    しかしながら、我が国においては近年、年齢や性別、職業等を越えて活字離れ、読書離れが進み、読解力や言語力の衰退が我が国の精神文明の変質と社会の劣化を誘引する大きな要因の一つとなりつつあることは否定できない。

    我が国の国会はこうした危機意識から、平成11年(西暦1999年)に「子ども読書年に関する決議」を衆参両院で採択、平成13年(西暦2001年)には「子どもの読書活動の推進に関する法律」を制定、さらに平成17年(西暦2005年)には「文字・活字文化振興法」を制定し、具体的な施策の展開を政府とともに進めてきた。

    学校における「朝の読書運動」の急速な浸透、読書の街づくりの広がり、様々な読書グループの活性化など、国民の間の「読み・書き」運動の復活、振興などはその効果の顕著な例である。

    こうした気運の一層の発展をめざし、われわれは「文字・活字文化振興法」の制定から5年目の平成22年(西暦2010年)を新たに「国民読書年」と定め、政官民協力のもと、国をあげてあらゆる努力を重ねることをここに宣言する。

    右決議する。

    福田内閣信任決議案(伊吹文明君外7名提出、決議第3号)[自民・公明提出](20.6.12)

    本院は、福田内閣を信任する。

    右決議する。

    衆議院
    〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
    電話(代表)03-3581-5111
    案内図

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