第一四五回
衆第一六号特定化学物質の排出量等の公開等に関する法律案
特定化学物質の排出量等の公開等に関する法律案
目次
第一章 総則(第一条―第四条)
第二章 特定化学物質の排出量等の公開
第一節 特定化学物質の排出量等の把握等(第五条―第七条)
第二節 届出事項の公表等(第八条―第十五条)
第三節 不服申立て
第一款 審査請求及び再審査請求(第十六条)
第二款 審査会の設置及び組織等(第十七条―第二十二条)
第三款 審査請求の手続等(第二十三条―第三十条)
第三章 雑則(第三十一条―第三十九条)
第四章 罰則(第四十条―第四十二条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、特定化学物質の環境への排出量等の把握及び公表に関する措置を講ずること等により、化学物質による環境の汚染の状況等に関する事業者及び国民の的確な理解の下に、事業者の自主的な努力等を通じて、化学物質の環境への排出の削減を図り、もって化学物質による環境の汚染により生ずる人の健康に係る被害及び生態系への影響を未然に防止することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「化学物質」とは、元素及び化合物(それぞれ放射性物質を除く。)をいう。
2 この法律において「特定化学物質」とは、次の各号のいずれかに該当し、かつ、環境に排出されていると認められるか、又は環境に排出されることとなることが見込まれる化学物質で政令で定めるものをいう。
一 当該化学物質が人の健康を損なうおそれ又は生態系に影響を及ぼすおそれがあるものであること。
二 当該化学物質が前号に該当しない場合には、当該化学物質の自然的作用による化学的変化により容易に生成する化学物質が同号に該当するものであること。
三 当該化学物質がオゾン層を破壊し、太陽紫外放射の地表に到達する量を増加させること等により間接に人の健康を損なうおそれ又は生態系に影響を及ぼすおそれがあるものであること。
3 この法律において「特定化学物質等取扱事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する事業者(政令で定める業種に属する事業を営む者を除く。)のうち、当該事業者により取り扱われる特定化学物質の量等を勘案して政令で定める要件に該当するものをいう。
一 特定化学物質の製造の事業を営む者、業として特定化学物質又は特定化学物質を含有する製品であって政令で定める要件に該当するもの(以下「特定化学物質等」という。)を使用する者その他業として特定化学物質等を取り扱う者
二 前号に掲げる者以外の者であって、事業活動に伴って付随的に特定化学物質を生成させ、又は排出することが見込まれる者
4 この法律において「電子情報処理組織」とは、市町村、都道府県又は環境庁長官の指定する電子計算機(入出力装置を含む。以下同じ。)と、第五条第二項の規定による届出をしようとする者、第七条第一項若しくは第七項の請求をしようとする者又は第九条、第十一条若しくは第十二条第二項若しくは第三項の規定による公表に係る情報を入手しようとする者の使用に係る入出力装置とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。
(基本的理念)
第三条 化学物質による環境の汚染により生ずる人の健康に係る被害及び生態系への影響について国民が正しく認識することが現在及び将来の国民の健康かつ安全で文化的な生活の確保を図る上で不可欠であることにかんがみ、国民は、化学物質の環境への排出量その他化学物質による環境の汚染の状況等に係る十分な情報の提供を保障されるものとする。
2 国民は、化学物質による環境の汚染により生ずる人の健康に係る被害及び生態系への影響について理解を深めるよう努めるものとする。
(特定化学物質等取扱事業者の責務)
第四条 特定化学物質等取扱事業者は、特定化学物質が人の健康を損なうおそれがあるものであること等第二条第二項各号のいずれかに該当し、環境への排出を削減する必要があるものであることを認識して、特定化学物質等の製造、使用その他の取扱い等に係る管理を行うとともに、その管理の状況に関する国民の理解を深めるよう努めなければならない。
第二章 特定化学物質の排出量等の公開
第一節 特定化学物質の排出量等の把握等
(排出量等の把握及び届出)
第五条 特定化学物質等取扱事業者は、その事業活動に伴う特定化学物質の排出量(特定化学物質等の製造、使用その他の取扱いの過程において変動する当該特定化学物質の量に基づき算出する方法その他の総理府令で定める方法により当該事業所において環境に排出される特定化学物質の量として算出する量をいう。第十二条第一項において同じ。)、移動量(その事業活動に係る廃棄物の処理を当該事業所の外において行うことに伴い当該事業所の外に移動する特定化学物質の量として総理府令で定める方法により算出する量をいう。同項において同じ。)、貯蔵量(総理府令で定める日において当該事業所において貯蔵する特定化学物質の量として総理府令で定める量をいう。)、取扱量(当該事業所において取り扱う特定化学物質の量として総理府令で定める方法により算出する量をいう。)及び最大貯蔵量(当該事業所において貯蔵する特定化学物質の最大量として総理府令で定める量をいう。)(次項及び次条第一項において「特定化学物質排出量等」という。)を総理府令で定めるところにより把握しなければならない。
2 特定化学物質等取扱事業者は、総理府令で定めるところにより、特定化学物質及び事業所ごとに、毎年度、前項の規定により把握される前年度の特定化学物質排出量等に関し総理府令で定める事項を当該事業所の所在地の属する市町村に届け出なければならない。
(帳簿の備付け及び保存)
第六条 特定化学物質等取扱事業者は、帳簿を備え、特定化学物質排出量等その他総理府令で定める事項を記載しなければならない。
2 前項の帳簿は、総理府令で定めるところにより、その関係書類とともに保存しなければならない。
(対応化学物質分類名への変更)
第七条 特定化学物質等取扱事業者は、第五条第二項の規定による届出に係る特定化学物質の使用その他の取扱いに関する情報が企業秘密に係る情報(法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下この項において「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公表することにより、当該法人等又は当該個人の基本的な権利、その競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益を害することが明らかであるものをいい、公表しないことにより保護される当該法人等又は当該個人の正当な利益よりも当該法人等又は当該個人の事業活動によって生ずる危害又は侵害から人の生命、身体又は健康を保護するため、公表することが必要であると認められるものを除く。)に該当するものであるとして、当該特定化学物質の名称に代えて、当該特定化学物質の属する分類のうち総理府令で定める分類の名称(以下「対応化学物質分類名」という。)をもって第九条第一項の規定による公表を行うよう市町村に請求を行うことができる。
2 特定化学物質等取扱事業者は、前項の請求を行うときは、第五条第二項の規定による届出と併せて、総理府令で定めるところにより、その理由を付して行わなければならない。
3 市町村は、第一項の請求があったときは、政令で定める基準に従い審査を行い、当該請求を認める場合には、その旨の決定をし、当該請求を行った特定化学物質等取扱事業者に対し、その旨を通知するものとする。
4 市町村は、前項の審査の結果、第一項の請求を認めない場合には、その旨の決定をし、当該決定後直ちに、当該請求を行った特定化学物質等取扱事業者に対し、その旨及びその理由を通知するものとする。
5 前二項の決定は、第一項の請求があった日から三十日以内にするものとする。
6 前項の規定にかかわらず、市町村は、事務処理上の困難その他正当な理由があるときは、同項の期間を三十日以内に限り延長することができる。
7 特定化学物質等取扱事業者は、毎年度、当該年度の前年度以前の各年度において行われた対応化学物質分類名による公表を維持する必要があるときは、総理府令で定めるところにより、市町村にその旨の請求を行わなければならない。
8 第三項から第六項までの規定は、前項の請求があった場合について準用する。
第二節 届出事項の公表等
(届出事項の集計等)
第八条 市町村は、第五条第二項の規定により届出を受けた事項について、総理府令で定めるところにより、電子計算機に備えられたファイルに記録するものとする。
2 市町村は、前項の規定による記録をしたときは、総理府令で定めるところにより、遅滞なく、同項のファイルに記録された事項(以下「市町村ファイル記録事項」という。)を集計するものとする。
3 市町村は、遅滞なく、前項の規定により集計した結果及び第十二条第二項の規定による通知を受けた同条第一項の規定により算出された結果(当該市町村の区域に係る部分に限る。)を総理府令で定めるところにより表示した図面を作成するものとする。
(市町村による公表)
第九条 市町村は、遅滞なく、市町村ファイル記録事項及び前条第三項の規定により作成した図面を公表するものとする。ただし、第五条第二項の規定による届出に係る事項のうち特定化学物質の名称について第七条第一項の請求があったときは、当該特定化学物質の名称については、対応化学物質分類名をもって公表するものとする。
2 市町村は、第七条第四項(同条第八項において準用する場合を含む。以下この項、次条第四項、第十一条第二項並びに第三十八条第二項及び第四項において同じ。)の決定をしたときは、当該決定に係る特定化学物質の名称を公表するものとする。この場合において、当該公表は、第七条第四項の規定による特定化学物質等取扱事業者への通知の日から六十日を経過した日以後速やかに行うものとする。
3 市町村は、毎年度、当該年度の前年度以前の各年度において第七条第三項(同条第八項において準用する場合を含む。次条第三項並びに第三十八条第二項及び第四項において同じ。)の決定をした場合であって、当該年度において第七条第七項の請求がないときは、当該決定に係る特定化学物質の名称を公表するものとする。
(市町村ファイル記録事項等の報告)
第十条 市町村は、第八条第一項の規定による記録をしたときは、遅滞なく、当該市町村ファイル記録事項を当該市町村をその区域に含む都道府県を経由して環境庁長官に報告するものとする。
2 市町村は、第七条第一項又は第七項の請求があったときは、遅滞なく、その旨を当該市町村をその区域に含む都道府県を経由して環境庁長官に報告するものとする。
3 市町村は、第七条第三項の決定をしたときは、遅滞なく、その旨を当該市町村をその区域に含む都道府県を経由して環境庁長官に報告するものとする。
4 市町村は、第七条第四項の決定をしたときは、遅滞なく、その旨を当該市町村をその区域に含む都道府県を経由して環境庁長官に報告するものとする。
5 市町村は、前条第三項の規定による公表をしたときは、遅滞なく、その旨を当該市町村をその区域に含む都道府県を経由して環境庁長官に報告するものとする。
(環境庁長官及び都道府県による公表)
第十一条 環境庁長官及び都道府県は、前条第一項の場合においては、同項の規定による報告に係る事項について、総理府令で定めるところにより、電子計算機に備えられたファイルに記録するとともに、遅滞なく、当該ファイルに記録された事項について集計し、その結果を公表するものとする。ただし、同条第二項の場合においては、第七条第一項又は第七項の請求に係る特定化学物質の名称については、対応化学物質分類名をもって公表するものとする。
2 環境庁長官及び都道府県は、前条第四項の場合においては、第七条第四項の決定に係る特定化学物質の名称を公表するものとする。この場合において、当該公表は、前条第四項の規定による報告があった日から六十日を経過した日以後速やかに行うものとする。
3 環境庁長官及び都道府県は、前条第五項の場合においては、遅滞なく、第九条第三項の規定による公表に係る特定化学物質の名称を公表するものとする。
(届け出られた排出量以外の排出量等の算出等)
第十二条 都道府県は、総理府令で定めるところにより、第五条第二項の規定により届け出られた特定化学物質の排出量及び移動量以外の当該都道府県の区域において環境に排出され、又は廃棄物の処理に伴い移動していると見込まれる特定化学物質の量を総理府令で定める事項ごとに算出するものとする。
2 都道府県は、前項の規定により算出された結果を総理府令で定めるところにより集計し、その結果を当該都道府県の区域内の市町村及び環境庁長官に通知するとともに、前条第一項の規定による公表の際に併せて公表するものとする。
3 環境庁長官は、前項の規定による通知があったときは、当該通知に係る事項について集計し、その結果を前条第一項の規定による公表の際に併せて公表するものとする。
(資料の提供その他の協力)
第十三条 都道府県は、前条第一項の規定による算出を行うため必要があると認めるときは、国若しくは地方公共団体又は事業者に対し、資料の提供その他の必要な協力を求めることができる。
(調査の実施等)
第十四条 環境庁長官は、第十一条第一項及び第十二条第三項に規定する結果並びに特定化学物質の安全性の評価に関する内外の動向を勘案して、環境の状況の把握に関する調査のうち特定化学物質に係るもの及び特定化学物質による人の健康又は生態系への影響に関する科学的知見を得るための調査を総合的かつ効果的に行うとともに、その成果を公表するものとする。
(資料の提供の要求等)
第十五条 都道府県は、当該都道府県の区域において環境庁長官が行う前条に規定する調査に関し、環境庁長官に対し、必要な資料の提供を求め、又は意見を述べることができる。
第三節 不服申立て
第一款 審査請求及び再審査請求
第十六条 対応化学物質分類名への変更に関する処分に不服がある者は、都道府県化学物質情報公表審査会に対して審査請求をし、その裁決に不服がある者は、さらに中央化学物質情報公表審査会に対して再審査請求をすることができる。
第二款 審査会の設置及び組織等
(設置)
第十七条 中央化学物質情報公表審査会(以下この款において「中央審査会」という。)は、環境庁に置き、都道府県化学物質情報公表審査会(以下この款及び次款において「都道府県審査会」という。)は、各都道府県に置く。
(組織)
第十八条 中央審査会は、委員九人をもって組織し、都道府県審査会は、委員六人をもって組織する。
2 委員は、人格が高潔で識見の高い者のうちから、中央審査会にあっては内閣総理大臣が、都道府県審査会にあっては都道府県知事が任命する。
3 委員は、非常勤とする。
(委員の任期)
第十九条 委員の任期は、三年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 委員は、再任されることができる。
(会長)
第二十条 中央審査会及び都道府県審査会(次条及び第二十九条において「審査会」という。)にそれぞれ会長を置き、委員の互選により選任する。
2 会長に事故があるときは、委員のうちからあらかじめ互選された者がその職務を代行する。
(定足数及び議決の方法)
第二十一条 審査会は、委員の半数以上の出席がなければ、会議を開き、議決することができない。
2 審査会の議事は、出席委員の過半数をもって決し、可否同数のときは、会長の決するところによる。
(都道府県審査会の委員の一般職に属する地方公務員たる性質)
第二十二条 都道府県審査会の委員は、地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第三十四条、第六十条第二号及び第六十二条の規定の適用については、同法第三条第二項に規定する一般職に属する地方公務員とみなす。
第三款 審査請求の手続等
(管轄都道府県審査会)
第二十三条 審査請求は、当該処分をした市町村をその区域に含む都道府県の都道府県審査会に対してしなければならない。
2 審査請求が管轄違いであるときは、都道府県審査会は、速やかに、事件を所轄の都道府県審査会に移送し、かつ、その旨を審査請求人に通知しなければならない。
3 事件が移送されたときは、はじめから、移送を受けた都道府県審査会に審査請求があったものとみなす。
(審査請求の期間等)
第二十四条 審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して六十日以内に、文書又は口頭でしなければならない。ただし、正当な理由により、この期間内に審査請求をすることができなかったことを疎明したときは、この限りでない。
(市町村に対する通知)
第二十五条 都道府県審査会は、審査請求を受理したときは、原処分をした市町村及びその他の利害関係人に通知しなければならない。
(執行停止)
第二十六条 都道府県審査会は、必要があると認めるときは、審査請求人の申立てにより又は職権で、当該処分の執行を停止することができる。
(審理のための処分)
第二十七条 都道府県審査会は、審理を行うため必要があると認めるときは、審査請求人若しくは関係人に対して報告若しくは意見を求め、その出頭を命じて審問し、参考人に陳述を求め、又は鑑定をさせ、その他必要な調査をすることができる。
(再審査請求の期間等)
第二十八条 再審査請求は、審査請求についての裁決があったことを知った日の翌日から起算して三十日以内に、文書又は口頭でしなければならない。
2 第二十四条ただし書及び前三条の規定は、再審査請求について準用する。この場合において、第二十五条中「市町村」とあるのは、「市町村、当該原処分についての審査請求に対する裁決をした都道府県審査会」と読み替えるものとする。
(政令への委任)
第二十九条 この節及び行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)に規定するもののほか、審査会並びに審査請求及び再審査請求の手続に関して必要な事項は、政令で定める。
(審査請求と訴訟との関係)
第三十条 第十六条に規定する処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ、提起することができない。
第三章 雑則
(国及び地方公共団体の措置)
第三十一条 国は、化学物質の安全性の評価に関する国際的動向に十分配慮しつつ、化学物質の性状に関する科学的知見の充実に努めるとともに、化学物質の安全性の評価に関する試験方法の開発その他の技術的手法の開発に努めるものとする。
2 国は、化学物質の性状及び取扱いに関する情報に係るデータベース(論文、数値、図形その他の情報の集合物であって、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。)の整備及びその利用の促進に努めるものとする。
3 国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じて特定化学物質等の性状及び管理並びに特定化学物質の排出の状況に関し国民に分かりやすく説明するよう努めるものとする。
4 国及び地方公共団体は、前項の責務を果たすために必要な人材を育成するよう努めるものとする。
(事業者の措置)
第三十二条 事業者は、その事業活動に係る化学物質の有害性その他の性状に関する基礎的な情報の整理、収集及び提供を行うよう努めるものとする。
2 事業者は、その事業活動に係る化学物質による環境の汚染により生ずる人の健康に係る被害及び生態系への影響について、地域住民に分かりやすく説明するよう努めるものとする。
(意見の交換の促進)
第三十三条 国及び地方公共団体は、化学物質を取り扱う事業者と地域住民との間の化学物質による環境の保全上の支障に関する円滑な意見の交換を促進するよう努めるものとする。
(化学物質による環境の保全上の支障の防止に関する計画)
第三十四条 市町村は、市町村ファイル記録事項、第八条第三項の規定により作成した図面等の検討を行い、その結果、必要があると認めるときは、当該市町村における化学物質による環境の保全上の支障の防止に関する計画を策定することができる。
2 市町村は、前項の計画を実施するため必要があると認めるときは、化学物質を取り扱う事業者が自主的に行う化学物質による環境の保全上の支障の防止に関する措置に関し必要な助言及び指導を行うことができる。
(立入検査等)
第三十五条 市町村は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、第五条第二項の規定による届出をした者の事務所その他の事業所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させ、又は関係者に質問させることができる。
2 前項の規定により職員が立ち入るときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査及び質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(政令の制定)
第三十六条 第二条第二項及び第三項の政令は、環境の保全に係る化学物質の管理についての国際的動向、化学物質に関する科学的知見、化学物質の製造、使用その他の取扱いに関する状況等を踏まえ、化学物質による環境の汚染により生ずる人の健康に係る被害及び生態系への影響が未然に防止されることとなるよう十分配慮して定めるものとする。
第三十七条 環境庁長官は、第二条第二項及び第三項の政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、あらかじめ、総理府令で定めるところにより、その旨を公告し、当該政令の案を、当該公告の日から三十日間公衆の縦覧に供しなければならない。
2 前項の規定による公告があったときは、当該縦覧に供された政令の案に意見がある者は、同項の縦覧期間満了の日までに、環境庁長官に対し、理由を付した文書をもって、意見を申し立てることができる。
3 環境庁長官は、第一項の縦覧期間満了後、当該政令の案について、前項の規定により申立てがあった意見の要旨を付して、中央環境審議会の意見を聴かなければならない。
(電子情報処理組織の使用等に関する事項)
第三十八条 市町村は、第五条第二項の規定による届出又は第七条第一項若しくは第七項の請求については、総理府令で定めるところにより、電子情報処理組織を使用して又は磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物を含む。以下同じ。)により行わせることができる。
2 市町村は、第七条第三項又は第四項の規定による通知については、総理府令で定めるところにより、電子情報処理組織を使用して又は磁気ディスクにより行うことができる。
3 第一項の規定により電子情報処理組織を使用して行われた第五条第二項の規定による届出又は第七条第一項若しくは第七項の請求は、市町村の指定する電子計算機に備えられたファイルヘの記録がされた時に当該市町村に到達したものとみなす。
4 第二項の規定により電子情報処理組織を使用して行われた第七条第三項又は第四項の規定による通知は、同条第一項又は第七項の請求をした者の使用に係る入出力装置に備えられたファイルへの記録がされた後通常その出力に要する時間が経過した時に当該請求をした者に到達したものと推定する。
5 環境庁長官及び地方公共団体は、第九条、第十一条又は第十二条第二項若しくは第三項の規定により市町村ファイル記録事項等を公表するに当たっては、総理府令で定めるところにより、電子情報処理組織の使用による方法及び磁気ディスクによる方法を併用しなければならない。
(経過措置)
第三十九条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
第四章 罰則
第四十条 第五条第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、五十万円以下の罰金に処する。
第四十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。
一 第六条第一項の規定に違反して帳簿を備えず、帳簿に記載せず、若しくは虚偽の記載をし、又は同条第二項の規定に違反して帳簿を保存しなかった者
二 第三十五条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者
第四十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業員が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の刑を科する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 第三十六条及び第三十七条の規定 公布の日
二 第二章、第三十八条、第四章及び次条の規定 公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日
(経過措置)
第二条 第七条第五項に規定する日が、前条第二号に規定する規定の施行の日の属する年度の翌年度にある場合には、同項中「三十日以内」とあるのは、「五月以内」とする。
(検討)
第三条 政府は、この法律の施行後七年を目途として、化学物質による環境の汚染の状況等を勘案し、この法律による制度全般について検討を加え、その結果を公表するものとする。
(環境庁設置法の一部改正)
第四条 環境庁設置法(昭和四十六年法律第八十八号)の一部を次のように改正する。
第四条第六号の三の次に次の一号を加える。
六の四 特定化学物質の排出量等の公開等に関する法律(平成十一年法律第▼▼▼号)の施行に関する事務を処理すること。