衆議院

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第一四五回

参第二〇号

   ダイオキシン類に係る発生の未然防止、排出の規制及び汚染の除去等に関する緊急措置法案

目次

 第一章 総則(第一条―第五条)

 第二章 ダイオキシン類対策の基本とすべき基準(第六条・第七条)

 第三章 基本方針及びダイオキシン類の発生の未然防止等に関する計画(第八条―第十条)

 第四章 ダイオキシン類の排出の規制等

  第一節 ダイオキシン類に係る排出ガス及び排出水に関する規制(第十一条―第二十六条)

  第二節 廃棄物焼却炉に係るばいじん等の処理等(第二十七条・第二十八条)

 第五章 ダイオキシン類による汚染状況の調査等(第二十九条―第三十一条)

 第六章 ダイオキシン類による汚染の除去等

  第一節 ダイオキシン類による汚染の除去等の措置(第三十二条―第三十六条)

  第二節 ダイオキシン類汚染適正除去センター(第三十七条―第四十二条)

 第七章 損害賠償(第四十三条―第四十八条)

 第八章 ダイオキシン類対策協議会(第四十九条)

 第九章 雑則(第五十条―第六十一条)

 第十章 罰則(第六十二条―第六十七条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、我が国のダイオキシン類による汚染の状況にかんがみ、ダイオキシン類の発生を未然に防止するための施策等を推進するための措置を定め、ダイオキシン類の排出に関する必要な規制を講じ、及びダイオキシン類による汚染の除去等その他の必要な措置を講ずることにより、ダイオキシン類による汚染に係る人の健康に係る被害の発生を防止し、もって国民の健康を保護し、並びにダイオキシン類の排出による汚染に関して人の健康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図ることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「ダイオキシン類」とは、ポリ塩化ジベンゾフラン、ポリ塩化ジベンゾ―パラ―ジオキシン及びコプラナーポリ塩化ビフェニルをいう。

2 この法律において「特定施設」とは、工場又は事業場に設置される施設のうち、製鋼の用に供する電気炉、廃棄物焼却炉その他の施設であって、ダイオキシン類を発生し及び大気中に排出し、又はこれを含む汚水若しくは廃液を排出する施設で政令で定めるものをいう。

3 この法律において「排出ガス」とは、特定施設から大気中に排出される排出物をいう。

4 この法律において「排出水」とは、特定施設を設置する工場又は事業場(以下「特定事業場」という。)から公共用水域(水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する公共用水域をいう。以下同じ。)に排出される水をいう。

 (国及び地方公共団体の責務)

第三条 国は、ダイオキシン類の発生を未然に防止するための施策その他のダイオキシン類による環境の汚染を防止し、及びその汚染の除去等をするための施策(以下「ダイオキシン類対策」という。)を、総合的かつ計画的に策定し、及び実施するものとする。

2 地方公共団体は、当該地域の自然的社会的条件に応じたダイオキシン類対策を実施するものとする。

 (事業者の責務)

第四条 事業者は、その事業活動を行うに当たっては、ダイオキシン類の発生を未然に防止するための措置を講ずるほか、ダイオキシン類による環境の汚染の防止又はその除去等をするために必要な措置を講ずるとともに、国又は地方公共団体が実施するダイオキシン類対策に協力しなければならない。

 (国民の責務)

第五条 国民は、ダイオキシン類の排出が抑制されるように努めるとともに、国又は地方公共団体が実施するダイオキシン類による環境の汚染の防止又はその除去等に関する施策に協力するように努めるものとする。

   第二章 ダイオキシン類対策の基本とすべき基準

 (人の健康に係る摂取量に関する基準)

第六条 ダイオキシン類対策の実施により達成されるべき一日に人が摂取するダイオキシン類の量(二・三・七・八―四塩化ジベンゾ―パラ―ジオキシンの量として表したものをいう。第三章において同じ。)の最大量についての基準は、体重一キログラム当たり一ピコグラムとする。

 (環境基準)

第七条 政府は、人の健康に係る被害の発生を未然に防止する観点から、前条の基準を踏まえて、ダイオキシン類による大気の汚染、水質の汚濁(水底の底質の汚染を含む。以下同じ。)及び土壌の汚染に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準を定めなければならない。

   第三章 基本方針及びダイオキシン類の発生の未然防止等に関する計画

 (基本方針)

第八条 政府は、ダイオキシン類対策に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めるものとする。

2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 ダイオキシン類発生回避措置(ダイオキシン類発生原因物質(ポリ塩化ビニルその他これに類する物質であって、これに係る廃棄物の焼却過程においてダイオキシン類が発生するおそれが多いものとして政令で定めるものをいう。以下同じ。)を用いた製品に係る廃棄物が焼却されることとなる量が減少するように、事業者がその製造、加工、販売、利用その他の事業活動に関して講ずる措置をいう。以下同じ。)の促進その他のダイオキシン類の発生を未然に防止するため必要な施策に関する基本的事項

 二 環境に排出されるダイオキシン類の量を削減するため必要な施策に関する基本的事項(前号に掲げる事項を除く。)

 三 前二号に掲げる事項に係る施策の実施により達成されるべき我が国において排出されるダイオキシン類の量の総量についての削減目標量及びその達成の期間

 四 ダイオキシン類による汚染の状況に係る調査に関する基本的事項

 五 ダイオキシン類による汚染の除去等に関する基本的事項

 六 その他ダイオキシン類対策として必要な基本的事項

3 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

4 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長と協議するものとする。

5 内閣総理大臣は、第三項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

6 前三項の規定は、基本方針の変更について準用する。

 (ダイオキシン類の発生の未然防止に関する業種別計画)

第九条 主務大臣は、基本方針に基づき、主務省令で定めるところにより、当該主務大臣の所管する事業に係るダイオキシン類の発生を未然に防止するため必要な施策に関する計画(以下この条において「業種別計画」という。)を定めるものとする。

2 業種別計画においては、当該主務大臣が所管する事業の分野別のダイオキシン類発生回避措置の促進その他のダイオキシン類の発生を未然に防止するため必要な施策について定めるものとする。

3 主務大臣は、業種別計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

 (ダイオキシン類の発生の未然防止等に関する都道府県計画)

第十条 都道府県知事は、基本方針に基づき、当該都道府県の区域内におけるダイオキシン類の発生を未然に防止するため必要な施策等に関する計画(以下この条において「都道府県計画」という。)を作成するものとする。

2 都道府県計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 当該都道府県の区域内におけるダイオキシン類の発生を未然に防止するため必要な施策に関する事項

 二 当該都道府県の区域内において排出されるダイオキシン類の量を削減するため必要な施策に関する事項(前号に掲げる事項を除く。)

 三 前二号に掲げる事項に係る施策の実施により達成されるべき当該都道府県の区域内において排出されるダイオキシン類の量の総量についての削減目標量及びその達成の期間

3 都道府県知事は、都道府県計画を作成するときは、ダイオキシン類対策協議会の意見を聴かなければならない。

4 都道府県知事は、都道府県計画を作成したときは、これを公表するものとする。

5 前二項の規定は、都道府県計画の変更について準用する。

   第四章 ダイオキシン類の排出の規制等

    第一節 ダイオキシン類に係る排出ガス及び排出水に関する規制

 (排出基準)

第十一条 ダイオキシン類の排出基準は、特定施設の種類及び構造に応じて、排出ガス又は排出水のいずれか一方又はその双方について、総理府令で定める。

2 前項の排出基準は、排出ガスに係るもの(以下「大気排出基準」という。)にあっては第一号、排出水に係るもの(以下「水質排出基準」という。)にあっては第二号に掲げる許容限度とする。

 一 排出ガスに含まれるダイオキシン類の量(総理府令で定める方法により測定されるダイオキシン類の量を、総理府令で定めるところにより、二・三・七・八―四塩化ジベンゾ―パラ―ジオキシンの毒性に換算した量をいう。以下同じ。)について定める許容限度

 二 排出水に含まれるダイオキシン類の量について定める許容限度

3 都道府県は、当該都道府県の区域のうちに、その自然的社会的条件から判断して、第一項の排出基準によっては、人の健康を保護することが十分でないと認められる区域があるときは、その区域における特定施設から排出される排出ガス又はその区域に排出される排出水に含まれるダイオキシン類の量について、政令で定めるところにより、条例で、同項の排出基準に代えて適用すべき同項の排出基準で定める許容限度より厳しい許容限度を定める排出基準を定めることができる。

4 前項の条例においては、併せて当該区域の範囲を明らかにしなければならない。

5 都道府県が、第三項の規定により排出基準を定める場合には、ダイオキシン類対策協議会の意見を聴かなければならない。

6 都道府県が、第三項の規定により排出基準を定める場合には、当該都道府県知事は、あらかじめ、環境庁長官及び関係都道府県知事(同項の排出基準のうち、排出水に係るものを定める場合に限る。)に通知しなければならない。

 (排出基準に関する勧告)

第十二条 環境庁長官は、ダイオキシン類による大気の汚染又は公共用水域の水質の汚濁の防止のため特に必要があると認めるときは、都道府県に対し、前条第三項の規定により排出基準を定め、又は同項の規定により定められた排出基準を変更すべきことを勧告することができる。

 (総量規制基準)

第十三条 都道府県知事は、大気排出基準(第十一条第三項の規定により定められる排出基準のうち、排出ガスに係るものを含む。以下この項において同じ。)が適用される特定施設(以下「大気基準適用施設」という。)が集合している地域で、大気排出基準のみによっては第七条の基準のうち大気の汚染に関する基準の確保が困難であると認められる地域として政令で定める地域(以下「指定地域」という。)にあっては、当該指定地域に設置されている特定事業場で大気基準適用施設を設置しているもの(以下「総量規制基準適用事業場」という。)から大気中に排出されるダイオキシン類について、総量削減計画を作成し、これに基づき、総理府令で定めるところにより、総量規制基準を定めなければならない。

2 都道府県知事は、必要があると認めるときは、当該指定地域を二以上の区域に区分し、それらの区域ごとに前項の総量規制基準を定めることができる。

3 都道府県知事は、新たに大気基準適用施設が設置された総量規制基準適用事業場(工場又は事業場で、大気基準適用施設の設置により新たに総量規制基準適用事業場となったものを含む。)及び新たに設置された総量規制基準適用事業場について、第一項の総量削減計画に基づき、総理府令で定めるところにより、同項の総量規制基準に代えて適用すべき特別の総量規制基準を定めることができる。

4 第一項又は前項の総量規制基準は、総量規制基準適用事業場につき当該総量規制基準適用事業場に設置されているすべての大気基準適用施設の排出口(大気基準適用施設から排出ガスを大気中に排出するために設けられた煙突その他の施設の開口部をいう。以下同じ。)から排出されるダイオキシン類の量の合計量について定める許容限度とする。

5 都道府県知事は、第一項の政令で定める地域の要件に該当すると認められる一定の地域があるときは、同項の政令の立案について、内閣総理大臣に対し、その旨の申出をすることができる。

6 内閣総理大臣は、第一項の政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、関係都道府県知事の意見を聴かなければならない。

7 都道府県知事は、第三項の規定により総量規制基準を定めようとするときは、ダイオキシン類対策協議会の意見を聴かなければならない。

8 都道府県知事は、第一項又は第三項の総量規制基準を定めるときは、公示しなければならない。これを変更し、又は廃止するときも、同様とする。

 (総量削減計画)

第十四条 前条第一項の総量削減計画は、当該指定地域について、第一号に掲げる総量を第三号に掲げる総量までに削減させることを目途として、第一号に掲げる総量に占める第二号に掲げる総量の割合、工場又は事業場の規模、総量規制基準適用事業場以外のダイオキシン類の発生源におけるダイオキシン類の大気中への排出状況の推移等を勘案し、政令で定めるところにより、第四号及び第五号に掲げる事項を定めるものとする。この場合において、当該指定地域における大気基準適用施設の分布の状況により計画の達成上当該指定地域を二以上の区域に区分する必要があるときは、第一号及び第二号に掲げる総量は、区分される区域ごとのそれぞれのダイオキシン類の量の総量とする。

 一 当該指定地域における事業活動その他の人の活動に伴って大気中に排出されるダイオキシン類の量の総量

 二 当該指定地域におけるすべての総量規制基準適用事業場に設置されている大気基準適用施設において発生し、排出口から大気中に排出されるダイオキシン類の量の総量

 三 当該指定地域における事業活動その他の人の活動に伴って発生し、大気中に排出されるダイオキシン類について、第七条の基準のうち大気の汚染に関する基準に照らし総理府令で定めるところにより算定されるダイオキシン類の量の総量

 四 第二号の総量についての削減目標量(中間目標としての削減目標量を定める場合にあっては、その削減目標量を含む。)

 五 計画の達成の期間及び方途

2 都道府県知事は、前条第一項の総量削減計画を定めようとするときは、ダイオキシン類対策協議会の意見を聴かなければならない。

3 都道府県知事は、前条第一項の総量削減計画を定めようとするときは、総理府令で定めるところにより、第一項各号に掲げる事項を環境庁長官に報告しなければならない。

4 環境庁長官は、前項の報告を受けたときは、当該計画の作成に関し必要な助言又は勧告をすることができる。

5 都道府県知事は、前条第一項の総量削減計画を定めたときは、第一項各号に掲げる事項を公告しなければならない。

6 都道府県知事は、当該指定地域における大気の汚染の状況の変動等により必要が生じたときは、前条第一項の総量削減計画を変更することができる。

7 第二項から第五項までの規定は、前項の規定による計画の変更について準用する。

 (特定施設の設置の届出)

第十五条 特定施設を設置しようとする者は、総理府令で定めるところにより、次の事項を都道府県知事に届け出なければならない。

 一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

 二 特定事業場の名称及び所在地

 三 特定施設の種類

 四 特定施設の構造

 五 特定施設の使用の方法

 六 大気基準適用施設にあっては発生ガス(大気基準適用施設において発生するガスをいう。以下同じ。)、水質排出基準(第十一条第三項の規定により定められる排出基準のうち、排出水に係るものを含む。)に係る特定施設(以下「水質基準対象施設」という。)にあっては当該水質基準対象施設から排出される汚水又は廃液の処理の方法

2 前項の規定による届出には、特定施設の種類若しくは構造又は発生ガス若しくは汚水若しくは廃液の処理の方法等から見込まれるダイオキシン類の排出量(大気基準適用施設にあっては排出ガスに含まれるダイオキシン類の量とし、水質基準対象施設にあってはその水質基準対象施設が設置される特定事業場(以下「水質基準適用事業場」という。)の排出水に含まれるダイオキシン類の量とする。)その他総理府令で定める事項を記載した書類を添付しなければならない。

 (経過措置)

第十六条 一の施設が特定施設となった際現にその施設を設置している者(設置の工事をしている者を含む。次項において同じ。)であって、排出ガスを排出し、又は排出水を排出するものは、当該施設が特定施設となった日から三十日以内に、総理府令で定めるところにより、前条第一項各号に掲げる事項を都道府県知事に届け出なければならない。

2 次の表の上欄に掲げる者は、総理府令で定めるところにより、同表の中欄に掲げる事項を、同表の下欄に定める日から三十日以内に、都道府県知事に届け出なければならない。

一の水質基準対象施設が大気基準適用施設となった際現にその施設を設置している者

その発生ガスに係る前条第一項第六号に掲げる事項

その水質基準対象施設が大気基準適用施設となった日

一の大気基準適用施設が水質基準対象施設となった際現にその施設を設置している者

その汚水又は廃液に係る前条第一項第六号に掲げる事項

その大気基準適用施設が水質基準対象施設となった日

3 前条第二項の規定は、前二項の規定による届出について準用する。

 (特定施設の構造等の変更の届出)

第十七条 第十五条第一項又は前条第一項若しくは第二項の規定による届出をした者は、その届出に係る第十五条第一項第四号から第六号までに掲げる事項又は前条第二項の表の中欄に掲げる事項の変更をしようとするときは、総理府令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

2 第十五条第二項の規定は、前項の規定による届出について準用する。

 (計画変更命令等)

第十八条 都道府県知事は、第十五条第一項又は前条第一項の規定による届出があった場合において、その届出に係る特定施設に係る排出ガスにあっては当該特定施設の排出口、排出水にあっては当該特定施設が設置されている水質基準適用事業場の排水口(排出水を排出する場所をいう。以下同じ。)において、その排出ガス又は排出水に含まれるダイオキシン類の量が第十一条第一項の排出基準(同条第三項の規定により排出基準が定められた場合にあっては、その排出基準を含む。以下単に「排出基準」という。)に適合しないと認めるときは、その届出を受理した日から六十日以内に限り、その届出をした者に対し、当該特定施設の構造若しくは使用の方法若しくは当該特定施設に係る発生ガス若しくは汚水若しくは廃液の処理の方法に関する計画の変更(前条第一項の規定による届出に係る計画の廃止を含む。)又は第十五条第一項の規定による届出に係る特定施設の設置に関する計画の廃止を命ずることができる。

第十九条 都道府県知事は、第十五条第一項又は第十七条第一項の規定による届出があった場合において、その届出に係る大気基準適用施設が設置される総量規制基準適用事業場(工場又は事業場で、特定施設の設置又は構造等の変更により新たに総量規制基準適用事業場となるものを含む。以下この条において同じ。)について、当該総量規制基準適用事業場に設置されるすべての大気基準適用施設の排出口から排出されるダイオキシン類の量の合計量が総量規制基準に適合しないと認めるときは、その届出を受理した日から六十日以内に限り、当該総量規制基準適用事業場の設置者に対し、当該総量規制基準適用事業場における発生ガスの処理の方法の改善その他必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

 (実施の制限)

第二十条 第十五条第一項の規定による届出をした者又は第十七条第一項の規定による届出をした者は、その届出が受理された日から六十日を経過した後でなければ、それぞれ、その届出に係る特定施設を設置し、又はその届出に係る特定施設の構造若しくは使用の方法若しくは発生ガス若しくは汚水若しくは廃液の処理の方法の変更をしてはならない。

2 都道府県知事は、第十五条第一項又は第十七条第一項の規定による届出に係る事項の内容が相当であると認めるときは、前項に規定する期間を短縮することができる。

 (氏名の変更等の届出)

第二十一条 第十五条第一項又は第十六条第一項の規定による届出をした者は、その届出に係る第十五条第一項第一号若しくは第二号に掲げる事項に変更があったとき、又はその届出に係る特定施設の使用を廃止したときは、その日から三十日以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

 (承継)

第二十二条 第十五条第一項又は第十六条第一項の規定による届出をした者からその届出に係る特定施設を譲り受け、又は借り受けた者は、当該特定施設に係る当該届出をした者の地位を承継する。

2 第十五条第一項又は第十六条第一項の規定による届出をした者について相続又は合併があったときは、相続人又は合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人は、当該届出をした者の地位を承継する。

3 前二項の規定により第十五条第一項又は第十六条第一項の規定による届出をした者の地位を承継した者は、その承継があった日から三十日以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

4 特定事業場に設置されるすべての大気基準適用施設について、第一項又は第二項の規定により届出をした者の地位を承継した者は、第十九条又は第二十五条第三項の規定の適用については、特定事業場の設置者の地位を承継するものとする。

 (排出の制限)

第二十三条 排出ガスを排出し、又は排出水を排出する者(以下「排出者」という。)は、当該排出ガス又は排出水に含まれるダイオキシン類の量が、大気基準適用施設にあっては排出ガスの排出口、水質基準対象施設にあっては当該水質基準対象施設を設置している水質基準適用事業場の排水口において、排出基準に適合しない排出ガス又は排出水を排出してはならない。

2 前項の規定は、一の施設が特定施設となった際現にその施設を設置している者(設置の工事をしている者を含む。次項において同じ。)の当該施設から排出される排出ガス又は当該施設に係る排出水については、当該施設が特定施設となった日から六月間(当該施設が政令で定める施設である場合にあっては、一年間)は、適用しない。ただし、当該施設が水質基準対象施設となった際既に当該工場又は事業場が水質基準適用事業場であるとき、及びその者に適用されている地方公共団体の条例の規定で同項の規定に相当するものがあるとき(当該規定の違反行為に対する処罰規定がないときを除く。)は、この限りでない。

3 第一項の規定は、一の水質基準対象施設が大気基準適用施設となった際現にその施設を設置している者の当該施設から排出される排出ガス又は一の大気基準適用施設が水質基準対象施設となった際現にその施設を設置している者の当該施設に係る排出水については、それぞれ、当該施設が大気基準適用施設又は水質基準対象施設となった日から六月間(当該施設が政令で定める施設である場合にあっては、一年間)は、適用しない。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

 (総量規制基準に係る排出の制限)

第二十四条 総量規制基準適用事業場において大気中に排出ガスを排出する者は、当該総量規制基準適用事業場に設置されているすべての大気基準適用施設の排出口から排出されるダイオキシン類の量の合計量が総量規制基準に適合しない排出ガスを排出してはならない。

2 前項の規定は、第二条第二項の政令の改正、第十一条第一項の総理府令の改正又は第十三条第一項の政令の改正により新たに総量規制基準適用事業場となった工場又は事業場に設置されている大気基準適用施設から大気中に排出ガスを排出する者については、当該工場又は事業場が総量規制基準適用事業場となった日から六月間は、適用しない。

 (改善命令等)

第二十五条 都道府県知事は、排出者が、その設置している大気基準適用施設の排出口又は水質基準適用事業場の非水口において排出基準に適合しない排出ガス又は排出水を継続して排出するおそれがあると認めるときは、その者に対し、期限を定めて特定施設の構造若しくは使用の方法若しくは当該特定施設に係る発生ガス若しくは汚水若しくは廃液の処理の方法の改善を命じ、又は当該特定施設の使用の一時停止を命ずることができる。

2 第二十三条第二項及び第三項の規定は、前項の規定による命令について準用する。

3 都道府県知事は、総量規制基準に適合しない排出ガスが継続して排出されるおそれがあると認めるときは、当該排出ガスに係る総量規制基準適用事業場の設置者に対し、期限を定めて、当該総量規制基準適用事業場における発生ガスの処理の方法の改善その他必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

4 前項の規定は、第二条第二項の政令の改正、第十一条第一項の総理府令又は第十三条第一項の政令の改正により新たに総量規制基準適用事業場となった工場又は事業場については、当該工場又は事業場が総量規制基準適用事業場となった日から六月間は、適用しない。

 (事故時の措置)

第二十六条 特定施設を設置している者は、特定施設の故障、破損その他の事故が発生し、ダイオキシン類が大気中又は公共用水域に多量に排出されたときは、直ちに、その事故について応急の措置を講じ、かつ、その事故を速やかに復旧するように努めなければならない。

2 前項の場合には、同項に規定する者は、直ちに、その事故の状況を都道府県知事に通報しなければならない。ただし、石油コンビナート災害防止法(昭和五十年法律第八十四号)第二十三条第一項の規定による通報をした場合は、この限りでない。

3 都道府県知事は、第一項に規定する事故が発生した場合において、当該事故に係る特定事業場の周辺の区域における人の健康が損なわれ、又は損なわれるおそれがあると認めるときは、その事故に係る同項に規定する者に対し、その事故の拡大又は再発の防止のため必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

    第二節 廃棄物焼却炉に係るばいじん等の処理等

 (廃棄物焼却炉に係るばいじん等の処理)

第二十七条 廃棄物焼却炉である特定施設から排出される当該特定施設の集じん機によって集められたばいじん及び焼却灰その他の燃え殻の処分(再生することを含む。)を行う場合には、当該ばいじん及び焼却灰その他の燃え殻に含まれるダイオキシン類の量が厚生省令で定める基準以内となるように処理しなければならない。

2 廃棄物焼却炉である特定施設から排出される当該特定施設の集じん機によって集められたばいじん及び焼却灰その他の燃え殻については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第二条第三項中「爆発性」とあるのは「廃棄物の焼却施設に係る燃え殻その他の爆発性」と、同条第五項中「爆発性」とあるのは「廃棄物の焼却施設に係る集じん機によつて集められたばいじん及び燃え殻その他の爆発性」と、同法第六条の二第三項中「基準は」とあるのは「基準は、ダイオキシン類に係る発生の未然防止、排出の規制及び汚染の除去等に関する緊急措置法(平成十一年法律第▼▼▼号)第二十七条第一項に定めるもののほか」と、同法第十二条の二第一項中「政令」とあるのは「ダイオキシン類に係る発生の未然防止、排出の規制及び汚染の除去等に関する緊急措置法第二十七条第一項に定めるもののほか、政令」と読み替えて、同法の規定を適用する。

 (廃棄物焼却炉に係る設置の許可の特例)

第二十八条 都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあっては、市長又は区長とする。)は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第八条第一項に規定する一般廃棄物処理施設又は同法第十五条第一項に規定する産業廃棄物処理施設に該当する廃棄物焼却炉については、ダイオキシン類による大気の汚染が特に著しく、かつ、前節の規定による規制によっては第七条の基準のうち大気の汚染に関する基準の確保が困難であるものとして政令で定める地域においては、その設置に関する同法第八条第一項又は第十五条第一項の許可をすることができない。

   第五章 ダイオキシン類による汚染の状況に関する調査等

 (常時監視)

第二十九条 都道府県知事は、当該都道府県の区域に係る大気、水質(水底の底質を含む。以下同じ。)及び土壌のダイオキシン類による汚染の状況を常時監視しなければならない。

 (都道府県知事等による調査測定)

第三十条 都道府県知事は、国の地方行政機関の長及び地方公共団体の長と協議して、当該都道府県の区域に係る大気、水質及び土壌のダイオキシン類による汚染の状況並びに住民の身体の汚染の状況及び健康の状況についての調査測定をするものとする。

2 国及び地方公共団体は、前項の協議の結果に基づき調査測定を行い、その結果を都道府県知事に送付するものとする。

3 都道府県知事は、第一項の調査測定の結果及び前項の規定により送付を受けた調査測定の結果を公表するものとする。

4 都道府県知事は、土壌のダイオキシン類による汚染の状況を調査測定するため、必要があるときは、その必要の限度において、その職員に、土地に立ち入り、土壌その他の物につき調査測定させ、又は調査測定のため必要な最少量に限り土壌その他の物を無償で集取させることができる。

5 前項の規定により立ち入ろうとする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

 (設置者による測定)

第三十一条 大気基準適用施設又は水質基準適用事業場の設置者は、政令で定めるところにより、大気基準適用施設にあっては当該大気基準適用施設から排出される排出ガス、水質基準適用事業場にあっては当該水質基準適用事業場から排出される排出水につき、そのダイオキシン類による汚染の状況について測定を行わなければならない。

2 廃棄物焼却炉である特定施設に係る前項の測定を行う場合においては、併せて、その排出する集じん機によって集められたばいじん及び焼却灰その他の燃え殻につき、政令で定めるところにより、そのダイオキシン類による汚染の状況について、測定を行わなければならない。

3 大気基準適用施設又は水質基準適用事業場の設置者は、前二項の規定により測定を行ったときは、その結果を都道府県知事に報告しなければならない。

4 都道府県知事は、前項の規定による報告を受けたときは、その報告を受けた第一項及び第二項の測定の結果を公表するものとする。

   第六章 ダイオキシン類による汚染の除去等

    第一節 ダイオキシン類による汚染の除去等の措置

 (対策地域の指定)

第三十二条 都道府県知事は、土壌又は公共用水域の水底の底質のダイオキシン類による汚染の状況が第七条の基準のうち土壌の汚染又は水質の汚濁に係るものを満たさない一定の地域であって、その汚染による人の健康に係る被害の発生を防止するため必要な措置が講ぜられる必要があるものとして政令で定める要件に該当するものを、ダイオキシン類汚染対策地域(以下「対策地域」という。)として指定することができる。

2 内閣総理大臣は、前項の政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、中央環境審議会の意見を聴かなければならない。

3 都道府県知事は、対策地域を指定しようとするときは、関係市町村長の意見を聴くとともに、ダイオキシン類対策協議会の意見を聴かなければならない。

4 都道府県知事は、対策地域を指定したときは、遅滞なく、総理府令で定めるところにより、その旨を公告するとともに、環境庁長官に報告し、かつ、関係市町村長に通知しなければならない。

5 市町村長は、当該市町村の区域内の一定の地域で第一項の政令で定める要件に該当するものを、対策地域として指定すべきことを都道府県知事に対し要請することができる。

 (対策地域の区域の変更等)

第三十三条 都道府県知事は、対策地域の指定の要件となった事実の変更により必要が生じたときは、その指定に係る対策地域の区域を変更し、又はその指定を解除することができる。

2 前条第三項及び第四項の規定は、前項の規定による対策地域の区域の変更又は対策地域の指定の解除について準用する。

 (ダイオキシン類汚染対策計画)

第三十四条 都道府県知事は、対策地域を指定したときは、遅滞なく、ダイオキシン類汚染対策計画(以下「対策計画」という。)を定めなければならない。

2 対策計画においては、政令で定めるところにより、次に掲げる事項のうち必要なものを定めるものとする。

 一 対策地域の区域内にある土地の利用の状況に応じたダイオキシン類による土壌の汚染の除去又はこれによる被害の発生を防止するための事業の実施に関する事項

 二 対策地域の区域内にあるダイオキシン類がたい積している河川その他の水域においてダイオキシン類による汚染を除去し、又はこれによる被害の発生を防止するための事業の実施に関する事項

3 都道府県知事は、対策計画を定めようとするときは、関係市町村長の意見を聴くとともに、ダイオキシン類対策協議会の意見を聴かなければならない。

4 都道府県知事は、対策計画を定めようとするときは、内閣総理大臣の同意を得なければならない。

5 内閣総理大臣は、前項の同意をしようとするときは、関係行政機関の長と協議しなければならない。

6 都道府県知事は、対策計画を定めたときは、遅滞なく、その概要を公告するとともに、関係市町村長に通知しなければならない。

 (対策計画における汚染事業者の責任の反映)

第三十五条 対策計画は、ダイオキシン類による汚染の除去等の緊急性に配慮しつつ、当該汚染に係る事業者の責任を適切に反映して、定められ、及び実施されるものとする。

 (対策計画の変更)

第三十六条 都道府県知事は、対策地域の区域の変更により、又は対策地域の区域内にある土壌又は公共用水域の水底の底質のダイオキシン類による汚染の状況の変動等により必要が生じたときは、対策計画を変更することができる。

2 第三十四条第三項から第六項まで及び前条の規定は、前項の規定による対策計画の変更(総理府令で定める軽微な変更を除く。)について準用する。

    第二節 ダイオキシン類汚染適正除去センター

 (指定)

第三十七条 環境庁長官は、土壌又は公共用水域の水底の底質のダイオキシン類による汚染の適正な除去等の確保を図ることを目的として設立された民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、全国を通じて一に限り、ダイオキシン類汚染適正除去センター(以下「適正除去センター」という。)として指定することができる。

2 環境庁長官は、前項の規定による指定をしたときは、当該適正除去センターの名称、住所及び事務所の所在地を公示しなければならない。

3 適正除去センターは、その名称、住所又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を環境庁長官に届け出なければならない。

4 環境庁長官は、前項の規定による届出があったときは(当該届出に係る事項を公示しなければならない。

 (業務)

第三十八条 適正除去センターは、次に掲げる業務を行うものとする。

 一 事業者に対し、ダイオキシン類による汚染の除去等をするために必要な助言、指導又は情報の提供を行うこと。

 二 対策計画に基づいてダイオキシン類による土壌の汚染の除去等の措置を行う都道府県等に対し、当該ダイオキシン類の汚染の除去等の実施に必要な資金の出えんその他の協力を行うこと。

 三 前二号に掲げる業務に附帯する業務を行うこと。

 (基金)

第三十九条 適正除去センターは、前条各号に掲げる業務に関する基金を設け、これらの業務に要する費用に充てることを条件として事業者等から出えんされた金額の合計額をもってこれに充てるものとする。

 (事業計画等)

第四十条 適正除去センターは、毎事業年度、総理府令で定めるところにより、第三十八条各号に掲げる業務に関し事業計画書及び収支予算書を作成し、環境庁長官の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

2 適正除去センターは、総理府令で定めるところにより、毎事業年度終了後、第三十八条各号に掲げる業務に関し事業報告書及び収支決算書を作成し、環境庁長官に提出しなければならない。

 (監督命令)

第四十一条 環境庁長官は、この節の規定を施行するために必要な限度において、適正除去センターに対し、第三十八条各号に掲げる業務に関し監督上必要な命令をすることができる。

 (指定の取消し等)

第四十二条 環境庁長官は、適正除去センターが次の各号のいずれかに該当するときは、第三十七条第一項の規定による指定(以下この条において単に「指定」という。)を取り消すことができる。

 一 第三十八条各号に掲げる業務を適正かつ確実に実施することができないと認められるとき。

 二 指定に関し不正の行為があつたとき。

 三 この節の規定又は当該規定に基づく命令若しくは処分に違反したとき。

2 環境庁長官は、前項の規定により指定を取り消したときは、その旨を公示しなければならない。

   第七章 損害賠償

 (無過失責任)

第四十三条 工場又は事業場における事業活動に伴うダイオキシン類の大気中への排出又はこれを含む汚水若しくは廃液の排出により、人の生命又は身体を害したときは、当該排出に係る事業者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。

第四十四条 前条に規定する損害が二以上の事業者のダイオキシン類の大気中への排出又はこれを含む汚水若しくは廃液の排出により生じ、当該損害賠償の責任について民法第七百十九条第一項の規定の適用がある場合において、当該損害の発生に関しその原因となった程度が著しく小さいと認められる事業者があるときは、裁判所は、その者の損害賠償の額を定めるについて、その事情を参酌することができる。

 (賠償についての参酌)

第四十五条 第四十三条に規定する損害の発生に関して、天災その他の不可抗力が競合したときは、裁判所は、損害賠償の責任及び額を定めるについて、これを参酌することができる。

 (消滅時効)

第四十六条 第四十三条に規定する損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び賠償義務者を知った時から三年間行わないときは、時効によって消滅する。損害の発生の時から二十年を経過したときも、同様とする。

 (鉱業法等の適用)

第四十七条 第四十三条に規定する損害賠償の責任について鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)又は水洗炭業に関する法律(昭和三十三年法律第百三十四号)の適用があるときは、当該各法律の定めるところによる。

 (適用除外)

第四十八条 この章の規定は、事業者が行う事業に従事する者の業務上の負傷、疾病及び死亡に関しては、適用しない。

   第八章 ダイオキシン類対策協議会

第四十九条 都道府県に、この法律の規定によりその権限に属させられた事項について調査審議するため、ダイオキシン類対策協議会(以下「協議会」という。)を置く。

2 協議会は、都道府県知事に対し、第十三条第五項の規定による申出を行うよう意見を述べることができる。

3 協議会の委員は、次に掲げる者のうちから、それぞれ都道府県知事が任命する。

 一 学識経験のある者

 二 当該都道府県の住民

 三 ダイオキシン類に関する活動を行う民間の団体の推薦する者

4 前項に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、都道府県の条例で定める。

   第九章 雑則

 (報告及び検査)

第五十条 都道府県知事は、この法律の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、特定施設を設置している者に対し、特定施設の状況その他必要な事項の報告を求め、又はその職員に、特定事業場に立ち入り、特定施設その他の物件を検査させることができる。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

 (適用除外)

第五十一条 次の表の上欄に掲げる者に関しては、同表の中欄に掲げる施設又は事業場について、同表の下欄に定める規定は適用せず、鉱山保安法(昭和二十四年法律第七十号)、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)、ガス事業法(昭和二十九年法律第五十一号)又は海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(昭和四十五年法律第百三十六号)の相当規定の定めるところによる。

一 鉱山保安法第二条第二項本文に規定する鉱山に設置される同法第八条第一項に規定する建設物、工作物その他の施設(以下「鉱山施設」という。)である特定施設から排出ガスを排出し、又は鉱山施設である特定施設を設置する同法第二条第二項本文に規定する鉱山から排出水を排出する者

大気基準適用施設にあっては当該特定施設、水質基準対象施設にあっては当該鉱山

第十五条から第二十二条まで、第二十五条第一項及び第三項並びに第二十六条

二 電気事業法第二条第一項第十二号に規定する電気工作物(以下「電気工作物」という。)である特定施設から排出ガスを排出し、又は電気工作物である工場若しくは事業場から排出水を排出する者

当該特定施設

第十五条から第二十二条まで、第二十五条第一項及び第三項並びに第二十六条第二項及び第三項

三 ガス事業法第二条第十項に規定するガス工作物である特定施設から排出ガスを排出する者

当該特定施設

第十五条から第二十二条まで、第二十五条第一項及び第三項並びに第二十六条第二項及び第三項

四 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律第三条第十四号に規定する廃油処理施設(以下「廃油処理施設」という。)である特定施設を設置する工場又は事業場から排出水を排出する者

当該特定施設

第十五条から第二十二条まで、第二十五条第一項及び第三項並びに第二十六条

五 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律第三十八条第三項に規定する海洋施設等(廃油処理施設を除く。)である特定施設を設置する工場又は事業場から排出水を排出する者

当該特定施設

第二十六条

2 前項に規定する法律に基づく権限を有する国の行政機関の長(以下この条において単に「行政機関の長」という。)は、第十五条、第十七条、第二十一条又は第二十二条第三項の規定に相当する鉱山保安法、電気事業法又はガス事業法の規定による前項に規定する特定施設に係る許可若しくは認可の申請又は届出があったときは、その許可若しくは認可の申請又は届出に係る事項のうちこれらの規定による届出事項に該当する事項を当該特定施設を設置する工場又は事業場の所在地を管轄する都道府県知事に通知するものとする。

3 都道府県知事は、第一項に規定する特定施設に係る排出ガス又は排出水に含まれるダイオキシン類に起因して、人の健康に係る被害を生ずるおそれがあると認めるときは、行政機関の長に対し、第十八条、第十九条又は第二十五条第一項若しくは第三項の規定に相当する鉱山保安法、電気事業法又はガス事業法の規定(海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律にあっては、第十八条又は第十九条の規定に相当する同法の規定)による措置をとるべきことを要請することができる。

4 行政機関の長は、前項の規定による要請があった場合において講じた措置を当該都道府県知事に通知するものとする。

 (食品に係る措置)

第五十二条 国は、食品のダイオキシン類による汚染につき、そのダイオキシン類による汚染の状況及びその摂取の状況に照らし必要があると認められるときは、第六条の基準を踏まえて、国民の健康を確保する上で維持されることが望ましい安全性に関する基準の策定その他の必要な措置を講ずるものとする。

 (労働者の健康確保のための措置)

第五十三条 国は、ダイオキシン類が発生する事業場等における労働者の健康を確保するため、事業者によりダイオキシン類に係る労働者の作業環境の測定及びその評価並びにその評価の結果に基づく必要な措置が適切に行われるよう、必要な法制上の措置を講ずるものとする。

 (農林漁業者等に対する措置)

第五十四条 国は、ダイオキシン類による汚染に起因してその事業に影響を受ける農林漁業者等に対し、その事業の経営及び生活の安定を図るため、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

 (資料の提出の要求等)

第五十五条 環境庁長官は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係地方公共団体の長に対し、必要な資料の提出及び説明を求めることができる。

2 都道府県知事は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長に対し、特定施設の状況等に関する資料の送付その他の協力を求め、又はダイオキシン類による環境の汚染の防止又はその除去等に関し意見を述べることができる。

 (国の援助)

第五十六条 国は、工場又は事業場における事業活動等によるダイオキシン類による環境の汚染の防止又はその除去等のための施設の設置又は改善につき必要な資金のあっせん、技術的な助言その他の援助に努めるものとする。

 (研究の推進等)

第五十七条 国は、ダイオキシン類の処理に関する技術の研究、ダイオキシン類の人の健康に及ぼす影響の研究その他ダイオキシン類による環境の汚染の防止及びその除去等に関する研究を推進し、その成果の普及に努めるものとする。

2 国は、ダイオキシン類発生原因物質を用いた製品の代替製品の開発その他のダイオキシン類発生回避措置を事業者が講ずるため必要となる技術の開発を推進し、その成果の普及に努めるものとする。

 (経過措置)

第五十八条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

 (事務の委任等)

第五十九条 この法律の規定により都道府県知事の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、政令で定める市の長に委任することができる。

2 前項の政令で定める市の長は、この法律の施行に必要な事項で総理府令で定めるものを都道府県知事に通知しなければならない。

 (条例との関係)

第六十条 この法律の規定は、地方公共団体が、大気基準適用施設以外の施設から大気中に排出される排出物又は水質基準適用事業場以外の工場若しくは事業場から排出される水に含まれるダイオキシン類の排出に係る事項に関し、条例で必要な規制を定めることを妨げるものではない。

 (政令への委任)

第六十一条 この法律に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。

   第十章 罰則

第六十二条 第十八条、第十九条又は第二十五条第一項若しくは第三項の規定による命令に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

第六十三条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 一 第二十三条第一項又は第二十四条第一項の規定に違反した者

 二 第二十六条第三項の規定による命令に違反した者

2 過失により、前項第一号の罪を犯した者は、三月以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。

第六十四条 第十五条第一項又は第十七条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、三月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

第六十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。

 一 第十六条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者

 二 第二十条第一項の規定に違反した者

 三 第五十条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

第六十六条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業員が、その法人又は人の業務に関し、前四条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

第六十七条 第十六条第二項、第二十一条又は第二十二条第三項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の過料に処する。

   附 則

 (施行期日等)

第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

 一 第二十九条及び第三十条の規定 公布の日

 二 附則第七条中特定工場における公害防止組織の整備に関する法律(昭和四十六年法律第百七号)第三条第一項に一号を加える改正規定及び同法第四条第一項に一号を加える改正規定 公布の日から起算して二年を経過した日

2 第七章の規定は、この法律の施行後のダイオキシン類の排出による損害について適用する。

 (検討)

第二条 ダイオキシン類に関する規制の在り方については、この法律の目的を踏まえつつ、その時点において到達されている水準の科学的知見に基づき、検討が加えられ、その結果に基づき、必要な見直し等の措置が講ぜられるものとする。

 (中小企業近代化資金等助成法の一部改正)

第三条 中小企業近代化資金等助成法(昭和三十一年法律第百十五号)の一部を次のように改正する。

  第五条中「排出を防止するための施設」の下に「、ダイオキシン類に係る発生の未然防止、排出の規制及び汚染の除去等に関する緊急措置法(平成十一年法律第▼▼▼号)第二条第二項に規定する特定施設から排出されるダイオキシン類(同条第一項に規定するダイオキシン類をいう。)の排出を防止するための施設」を加える。

 (下水道法の一部改正)

第四条 下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)の一部を次のように改正する。

  第十一条の二第二項中「規定する特定施設」の下に「又はダイオキシン類に係る発生の未然防止、排出の規制及び汚染の除去等に関する緊急措置法(平成十一年法律第▼▼▼号)第十五条第一項第六号に規定する水質基準対象施設」を加える。

 (公害防止事業費事業者負担法の一部改正)

第五条 公害防止事業費事業者負担法(昭和四十五年法律第百三十三号)の一部を次のように改正する。

  第二条第二項第三号中「又は農業用施設」を「若しくは農業用施設又はダイオキシン類(ダイオキシン類に係る発生の未然防止、排出の規制及び汚染の除去等に関する緊急措置法(平成十一年法律第▼▼▼号)第二条第一項に規定するダイオキシン類をいう。)により土壌が汚染されている土地」に改める。

 (公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部改正)

第六条 公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(昭和四十六年法律第七十号)の一部を次のように改正する。

  第二条第三項中第八号を第九号とし、第七号を第八号とし、第六号の次に次の一号を加える。

  七 ダイオキシン類(ダイオキシン類に係る発生の未然防止、排出の規制及び汚染の除去等に関する緊急措置法(平成十一年法律第▼▼▼号)第二条第一項に規定するダイオキシン類をいう。以下同じ。)により土壌が汚染されている土地について実施される客土事業その他政令で定めるダイオキシン類による汚染の防止又はその除去等の事業

  第三条第三項中「第七号」を「第八号」に改める。

  別表中

第二条第三項第六号の客土事業、施設改築事業その他政令で定める土地改良事業

二分の一以上十分の五・五以内の範囲で政令で定める割合

 を

第二条第三項第六号の客土事業、施設改築事業その他政令で定める土地改良事業

二分の一以上十分の五・五以内の範囲で政令で定める割合

 
 

第二条第三項第七号の客土事業その他政令で定めるダイオキシン類による汚染の防止又はその除去等の事業

二分の一以上十分の五・五以内の範囲で政令で定める割合

 に、「第二条第三項第七号」を「第二条第三項第八号」に、「第二条第三項第八号」を「第二条第三項第九号」に改める。

 (特定工場における公害防止組織の整備に関する法律の一部改正)

第七条 特定工場における公害防止組織の整備に関する法律の一部を次のように改正する。

  第二条第二号中「以下同じ」を「第三条第一項第二号イ及びロにおいて同じ」に改め、同条に次の一号を加える。

  七 ダイオキシン類(ダイオキシン類に係る発生の未然防止、排出の規制及び汚染の除去等に関する緊急措置法(平成十一年法律第▼▼▼号)第二条第一項に規定するダイオキシン類をいう。以下同じ。)を発生し及び大気中に排出し、又はこれを含む汚水若しくは廃液を排出する施設で政令で定めるもの(以下「ダイオキシン類発生施設」という。)が設置されている工場のうち、政令で定めるもの

  第三条第一項に次の一号を加える。

  七 前条第七号の特定工場にあつては、次に掲げる業務

   イ ダイオキシン類発生施設の使用の方法の監視並びにダイオキシン類発生施設において発生するダイオキシン類に係る発生の未然防止、排出の規制及び汚染の除去等に関する緊急措置法第十五条第一項第六号に規定する発生ガス又はダイオキシン類発生施設から排出される汚水若しくは廃液を処理するための施設及びこれに附属する施設の維持及び使用に関すること。

   ロ ダイオキシン類に係る発生の未然防止、排出の規制及び汚染の除去等に関する緊急措置法第二条第三項に規定する排出ガス(以下「排出ガス」という。)又は排出水に含まれるダイオキシン類の量の測定及び記録に関すること。

   ハ その他ダイオキシン類による汚染の防止に必要な業務で主務省令で定めるもの

  第四条第一項に次の一号を加える。

  七 第二条第七号の特定工場にあつては、前条第一項第七号に掲げる業務のうち排出ガス又は排出水に含まれるダイオキシン類の量の測定の実施その他の主務省令で定める技術的事項

  第十条中「振動規制法」の下に「、ダイオキシン類に係る発生の未然防止、排出の規制及び汚染の除去等に関する緊急措置法」を加える。

 (瀬戸内海環境保全特別措置法の一部改正)

第八条 瀬戸内海環境保全特別措置法(昭和四十八年法律第百十号)の一部を次のように改正する。

  第五条第一項中「特定施設をいい」を「特定施設又はダイオキシン類に係る発生の未然防止、排出の規制及び汚染の除去等に関する緊急措置法(平成十一年法律第▼▼▼号)第十五条第一項第六号に規定する水質基準対象施設をいい」に、「同項」を「水質汚濁防止法第二条第二項」に、「を設置する」を「又はダイオキシン類に係る発生の未然防止、排出の規制及び汚染の除去等に関する緊急措置法第十五条第一項第六号に規定する水質基準対象施設を設置する」に改める。

  第十二条に次の二項を加える。

 5 ダイオキシン類に係る発生の未然防止、排出の規制及び汚染の除去等に関する緊急措置法第十五条から第二十二条まで及び第五十一条第二項から第四項まで(同法第十五条、第十七条から第十九条まで、第二十一条及び第一二十二条に係る部分に限る。)の規定の適用については、第五条第一項に規定する区域において特定施設を設置する工場又は事業場から排出水を排出する者に係る当該特定施設は、同法第十五条第一項第六号に規定する水質基準対象施設ではないものとみなす。

 6 第五条第一項に規定する区域におけるダイオキシン類に係る発生の未然防止、排出の規制及び汚染の除去等に関する緊急措置法第五十条第一項の規定の適用については、同項中「この法律」とあるのは、「この法律(瀬戸内海環境保全特別措置法(昭和四十八年法律第百十号)第五条から第十一条までの規定を含む。)」とする。

 (公害健康被害の補償等に関する法律の一部改正)

第九条 公害健康被害の補償等に関する法律(昭和四十八年法律第百十一号)の一部を次のように改正する。

  第五十二条第一項中「が設置される」を「又はダイオキシン類に係る発生の未然防止、排出の規制及び汚染の除去等に関する緊急措置法(平成十一年法律第▼▼▼号)第十三条第一項に規定する大気基準適用施設(以下この項において「ばい煙発生施設等」という。)が設置される」に、同項各号中「ばい煙発生施設」を「ばい煙発生施設等」に改める。

  第六十二条第一項中「行なう」を「行う」に、「特定施設又は」を「特定施設、」に、「特定施設の設置者」を「特定施設又はダイオキシン類に係る発生の未然防止、排出の規制及び汚染の除去等に関する緊急措置法第二条第二項に規定する特定施設の設置者」に改める。

 (地方自治法等の一部を改正する法律の一部改正)

第十条 地方自治法等の一部を改正する法律(平成十年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。

  本則に次の一条を加える。

  (ダイオキシン類に係る発生の未然防止、排出の規制及び汚染の除去等に関する緊急措置法の一部改正)

 第二十四条 ダイオキシン類に係る発生の未然防止、排出の規制及び汚染の除去等に関する緊急措置法(平成十一年法律第▼▼▼号)の一部を次のように改正する。

   第五十九条第一項中「定める市」の下に「(特別区を含む。次項において同じ。)」を加える。

 (環境庁設置法の一部改正)

第十一条 環境庁設置法(昭和四十六年法律第八十八号)の一部を次のように改正する。

  第四条第十五号の次に次の一号を加える。

  十五の二 ダイオキシン類に係る発生の未然防止、排出の規制及び汚染の除去等に関する緊急措置法(平成十一年法律第▼▼▼号)の施行に関する事務で所掌に属するものを処理すること。

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