衆議院

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第一四七回

衆第二五号

   社会資本整備基本法案

 (目的)

第一条 この法律は、社会資本の整備が国民の社会経済生活に多大な影響を与えること及びその費用が国民から徴収された税金その他の貴重な財源で賄われるものであることにかんがみ、社会資本の整備に関する基本理念を明らかにし、社会資本整備中期総合計画及び社会資本整備事業計画の作成及び国会における承認、社会資本整備事業の再評価及び事後評価等に関する事項について定めることにより、社会資本の整備に関する施策の計画性、総合性及び一体性を確保するとともに、社会資本の整備に関し、国会の関与の強化、情報公開の促進、民意の反映及び時代に即応した是正を図り、もって国民的視点に立ち、かつ、社会経済情勢の変化を踏まえた社会資本の整備を推進することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「社会資本整備事業」とは、交通物流基盤整備事業、生活関連施設整備事業及び国土開発保全事業をいう。

2 この法律において「交通物流基盤整備事業」とは、次に掲げる事業で、国が実施するもの、特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人(国が出資しているものに限る。以下「特殊法人」という。)が実施するもの及び地方公共団体等が国の補助金等(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和三十年法律第百七十九号)第二条第一項の補助金等及び同条第四項の間接補助金等をいう。)又は国の無利子の貸付金の交付又は貸付け(以下「国の補助等」という。)を受けて実施するものをいう。

 一 交通安全施設等整備事業に関する緊急措置法(昭和四十一年法律第四十五号)第二条第三項に規定する交通安全施設等整備事業

 二 道路法(昭和二十七年法律第百八十号)による道路の整備に関する事業

 三 全国新幹線鉄道整備法(昭和四十五年法律第七十一号)第二条に規定する新幹線鉄道の路線の建設に関する事業

 四 港湾施設の整備に関する事業、港湾の環境の整備に関する事業並びに港湾法(昭和二五年法律第二百十八号)第二条第八項に規定する開発保全航路の開発及び保全に関する事業

 五 空港整備法(昭和三十一年法律第八十号)第二条第一項に規定する空港その他の飛行場で公共の用に供されるもの(これらと併せて設置すべき航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第二条第四項に規定する航空保安施設その他の施設を含む。以下「空港」という。)の整備に関する事業及び空港の周辺における航空機の騒音により生ずる障害の防止等に関する事業

3 この法律において「生活関連施設整備事業」とは、次に掲げる事業で、国が実施するもの、特殊法人が実施するもの及び地方公共団体等が国の補助等を受けて実施するものをいう。

 一 都市公園法(昭和三十一年法律第七十九号)第二条第一項に規定する都市公園(当該都市公園に都市基盤整備公団が設ける公園施設を含む。)及び都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第四条第二項に規定する都市計画区域以外の区域においてスポーツ、文化活動等の振興を図るために町村が設置する公園又は緑地の整備に関する事業

 二 下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)第二条第三号に規定する公共下水道(以下「公共下水道」という。)、同条第四号に規定する流域下水道(以下「流域下水道」という。)及び同条第五号に規定する都市下水路の整備に関する事業

 三 住宅の建設に関する事業

 四 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第二条第一項に規定する廃棄物を処理するための施設(公共下水道及び流域下水道を除く。)の整備に関する事業

4 この法律において「国土開発保全事業」とは、次に掲げる事業で、国が実施するもの、特殊法人が実施するもの及び地方公共団体等が国の補助等を受けて実施するものをいう。

 一 土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)第二条第二項に規定する土地改良事業

 二 森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第二条第一項に規定する森林における造林、間伐及び保育並びに林道の整備に関する事業

 三 森林法第四十一条に規定する保安施設事業及び地すべり等防止法(昭和三十三年法律第三十号)第五十一条第一項第二号に規定する地すべり地域又はぼた山に関して同法第三条又は第四条の規定によって指定された地すべり防止区域又はぼた山崩壊防止区域における地すべり防止工事又はぼた山崩壊防止工事に関する事業

 四 沿岸漁場整備開発法(昭和四十九年法律第四十九号)第二条に規定する沿岸漁場整備開発事業

 五 漁港法(昭和二十五年法律第百三十七号)第二条に規定する漁港の整備に関する事業及び漁港の環境の整備に関する事業

 六 河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第三条第一項に規定する河川(同法第百条の規定により同法の二級河川に関する規定が準用される河川を含む。)に関する事業、砂防法(明治三十年法律第二十九号)第一条に規定する砂防設備に関する事業、地すべり等防止法第五十一条第一項第一号又は第三号ロに規定する地すべり地域又はぼた山に関して同法第三条又は第四条の規定によって指定された地すべり防止区域又はぼた山崩壊防止区域における地すべり防止工事又はぼた山崩壊防止工事に関する事業、特定多目的ダム法(昭和三十二年法律第三十五号)第二条第一項(沖縄振興開発特別措置法(昭和四十六年法律第百三十一号)第七条第六項の規定により適用する場合を含む。)に規定する多目的ダムの建設工事に関する事業並びに水資源開発公団法(昭和三十六年法律第二百十八号)第十八条第一項第一号及び第二号の事業(これに要する費用を国が交付するものに限る。)

 七 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和四十四年法律第五十七号)第二条第三項に規定する急傾斜地崩壊防止工事に関する事業

 八 海岸法(昭和三十一年法律第百一号)第二条第一項に規定する海岸保全施設の整備に関する事業及び海岸の環境の整備に関する事業

 (基本理念)

第三条 社会資本の整備は、安全で質の高い国民生活を実現し、及び産業の生産性を向上させることを目指すものでなければならない。

2 社会資本の整備は、地域の実情に応じて、地域住民の理解の下に行われるものでなければならない。

3 社会資本の整備を行うに当たっては、国が実施する事業を地方公共団体が実施することができない広域的な事業に限定する等地方分権の徹底を図らなければならない。

4 社会資本の整備を行うに当たっては、財政の健全性の確保に最大限の考慮を払うとともに、民間の能力を十分に活用する等最も効率的な手法により、最少の費用で最大の効果が得られるようにしなければならない。

5 社会資本の整備を行うに当たっては、環境の保全に最大限の配慮を払わなければならない。

6 社会資本の整備を行うに当たっては、社会経済情勢の変化に柔軟に対応するため、不断に事業の在り方を見直さなければならない。

7 社会資本の整備を行うに当たっては、積極的な情報の公開により国民に説明する責務を全うするとともに、計画の作成、実施及び評価の各段階において、国民の参加を積極的に求めなければならない。

 (社会資本整備中期総合計画の作成及び国会承認等)

第四条 政府は、平成十三年度以降の毎五箇年を各一期として、当該期間中の社会資本整備事業に関する総合的な計画(以下「社会資本整備中期総合計画」という。)を作成しなければならない。

2 社会資本整備中期総合計画には、次に掲げる事項を定めなければならない。

 一 五箇年間に行うべき社会資本整備事業の実施に関する基本方針

 二 五箇年間に行うべき交通物流基盤整備事業、生活関連施設整備事業及び国土開発保全事業の実施の目標(社会資本の整備率等の指標を含む。)

 三 五箇年間に行うべき交通物流基盤整備事業、生活関連施設整備事業及び国土開発保全事業の量

3 政府は、都道府県の意見を聴いて、社会資本整備中期総合計画の案を作成しなければならない。

4 都道府県は、前項の意見を述べようとするときは、市町村の意見を聴かなければならない。

5 政府は、社会資本整備中期総合計画の案を作成したときは、これを公開し、広く国民の意見を聴かなければならない。

6 政府は、社会資本整備中期総合計画を作成しようとするときは、社会資本整備調査会の意見を聴かなければならない。この場合において、政府は、前項の規定により聴取した国民の意見の概要を記載した書類を社会資本整備調査会に提出しなければならない。

7 政府は、社会資本整備中期総合計画を作成したときは、当該社会資本整備中期総合計画の初年度の開始前に、これを国会に提出し、その承認を受けなければならない。

8 政府は、前項の規定による国会の承認があったときは、遅滞なく、社会資本整備中期総合計画を公表しなければならない。

9 第三項から前項までの規定は、社会資本整備中期総合計画の変更について準用する。この場合において、第七項中「当該社会資本整備中期総合計画の初年度の開始前に」とあるのは、「速やかに」と読み替えるものとする。

 (社会資本整備事業計画の作成及び国会承認等)

第五条 政府は、次に掲げる社会資本整備事業を実施しようとするときは、別に法律で定めるところにより、当該社会資本整備事業の事業計画を作成し、国会の承認を受けなければならないものとする。この場合において、政府は、当該社会資本整備事業の費用効果分析の結果に関する資料その他の資料を国会に提出しなければならないものとする。

 一 第二条第二項第二号、第四号若しくは第五号又は同条第四項第一号、第六号若しくは第八号に掲げる事業のいずれかに該当する一の事業であって、その事業費の総額が百億円以上となることが見込まれるもの

 二 第二条第二項第一号若しくは第三号、同条第三項各号又は同条第四項第二号から第五号まで若しくは第七号に掲げる事業のいずれかに該当する一の事業であって、その事業費の総額が五十億円以上となることが見込まれるもの

2 特殊法人は、前項各号に掲げる社会資本整備事業を実施しようとするときは、別に法律で定めるところにより、当該社会資本整備事業の事業計画を作成し、政府の認可を受けなければならないものとする。

3 政府は、前項の認可をしようとするときは、国会の承認を受けなければならないものとする。この場合において、政府は、当該社会資本整備事業の費用効果分析の結果に関する資料その他の資料を国会に提出しなければならないものとする。

 (再評価)

第六条 政府は、次のいずれかに該当する社会資本整備事業(国及び特殊法人が実施するものに限る。以下同じ。)について、事業の継続の適否を判断するための評価(以下「再評価」という。)を行うものとする。

 一 事業の実施の決定の後五年を経過した時点で着手されていない事業

 二 事業の実施の決定の後十年を経過した時点で完了していない事業

 三 関係地方公共団体の多数の住民が事業の継続に反対の意思を表明した事業

 四 再評価の対象となった事業で、再評価の後二年を経過したもの

 五 社会経済情勢の変化により事業計画の見直しが必要とされる事業

2 再評価は、次に掲げる観点から行うものとする。

 一 事業の必要性の度合

 二 事業の効果(費用効果分析を含む。以下同じ。)

 三 事業の円滑な実施の可能性

 四 事業の実施に係る環境への影響

 五 事業の目的とする効果と同程度の効果を実現する別の方策の有無

 六 事業を中止した場合の影響

3 政府は、再評価を行うに当たっては、関係地方公共団体の意見を聴かなければならない。

4 政府は、再評価を行うに当たっては、再評価の対象となる社会資本整備事業に関する資料を公開し、広く国民の意見を聴かなければならない。

5 政府は、再評価を行うに当たっては、社会資本整備調査会の意見を聴かなければならない。この場合において、政府は、前項の規定により聴取した国民の意見の概要を記載した書類を社会資本整備調査会に提出しなければならない。

6 政府は、再評価を行ったときは、その結果に関する報告書を作成し、これを国会に提出しなければならない。

第七条 政府は、第五条第一項の国会の承認を受けた社会資本整備事業について、再評価の結果に基づき、事業を継続しようとするときは、別に法律で定めるところにより、当該社会資本整備事業の事業計画を作成し、国会の承認を受けなければならないものとする。

2 特殊法人は、第五条第二項の認可を受けた社会資本整備事業について、再評価の結果に基づき、事業を継続しようとするときは、別に法律で定めるところにより、当該社会資本整備事業の事業計画を作成し、政府の認可を受けなければならないものとする。

3 政府は、前項の認可をしようとするときは、国会の承認を受けなければならないものとする。

 (事後評価)

第八条 政府は、社会資本整備事業について、事業の終了後二年以内に、事業の効果に関する評価を行うものとする。

2 政府は、社会資本整備事業について、事業の終了後十年を目途として、事業の効果並びに事業の実施が及ぼした環境への影響その他社会的、経済的及び文化的な影響に関する評価を行うものとする。

3 第六条第三項から第六項までの規定は、前二項の規定による評価を行う場合に準用する。

 (調査会の設置及び権限)

第九条 総理府に、社会資本整備調査会(以下「調査会」という。)を置く。

2 調査会は、この法律及び他の法令の規定によりその権限に属させられた事項を処理するほか、内閣総理大臣又は関係各大臣の諮問に応じ、社会資本の整備に関する重要事項を調査審議する。

3 調査会は、前項に規定する事項に関し、内閣総理大臣又は関係各大臣に意見を述べることができる。

 (調査会の組織)

第十条 調査会は、委員十人をもって組織する。

2 委員は、優れた識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。

3 前項の場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、同項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、委員を任命することができる。

4 前項の場合においては、任命後最初の国会で両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認が得られないときは、内閣総理大臣は、直ちにその委員を罷免しなければならない。

5 委員の任期は、三年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

6 委員は、再任されることができる。

7 内閣総理大臣は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、両議院の同意を得て、これを罷免することができる。

8 調査会の事務を処理させるため、調査会に事務局を置く。

 (調査会の審議の公開等)

第十一条 調査会の審議は、公開とする。

2 調査会は、審議に用いた資料を公表しなければならない。

 (協力依頼等)

第十二条 調査会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体の長その他の関系者に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。

2 調査会は、必要があると認めるときは、公聴会を開くことができる。

 (政令への委任)

第十三条 この法律に定めるもののほか、調査会に関し必要な事項は、政令で定める。

 (地方公共団体の講ずる施策)

第十四条 都道府県及び地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下「指定都市」という。)は、条例で定めるところにより、この法律の規定に基づく国の施策に準じた施策を講ずるものとする。

2 市町村(指定都市を除く。)は、この法律の規定に基づく国の施策に準じた施策を講ずるよう努めなければならない。

   附 則

1 この法律は、平成十二年十月一日から施行する。

2 この法律の施行に伴い必要な関係法律の整理その他必要な事項は、別に法律で定める。

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