衆議院

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第一五四回

衆第二八号

   自衛隊員の政治的中立に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、自衛隊員の政治的中立に関し、基本原則を定め、及び防衛庁長官等の責務を明らかにするとともに、自衛隊員の政治的行為及び公の発言等の制限について定めることにより、自衛隊員の政治的中立を確立し、もって自衛隊の任務の公正な遂行を確保することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「自衛隊員」とは、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第二条第五項に規定する隊員をいう。

2 この法律において「防衛庁長官等」とは、防衛庁長官、防衛庁副長官及び防衛庁長官政務官をいう。

 (基本原則)

第三条 自衛隊員は、党派的勢力の影響を排し、政府のために忠実に職務を遂行することにより、国民全体に奉仕することを本分とする。

2 自衛隊員は、防衛庁長官を補佐する立場にあることを自覚し、防衛庁長官の意思決定に従い誠実に職務を遂行しなければならない。

3 自衛隊員は、防衛庁長官等に対して、専門的知識及び経験に基づき誠実かつ公平な助言を行うとともに、その職務の遂行に必要なすべての情報を提供しなければならない。

4 自衛隊員は、自衛隊の任務の遂行に対する政党、国会議員等の不当な介入を招くような行為をしてはならない。

 (防衛庁長官等の責務)

第四条 防衛庁長官等は、その影響力を行使して、自衛隊員に前条に定める基本原則に反する行為をさせてはならない。

 (政治的行為の制限)

第五条 自衛隊員は、選挙権の行使を除くほか、次に掲げる行為をしてはならない。

 一 政治的目的(公選による公職の選挙における特定の候補者若しくは候補者となろうとする者を支持し、又はこれらに反対すること、特定の政党その他の政治的団体を支持し、又はこれに反対することその他の政令で定める目的をいう。以下同じ。)のために職名、職権その他の公私の影響力を利用すること。

 二 政治的目的のために寄附金その他の利益を提供し、又は提供せず、その他政治的目的をもつ何らかの行為をし、又はしないことに対する代償又は報復として、任用、職務、給与その他自衛隊員の地位に関して何らかの利益を得、若しくは得ようと企て、若しくは得させようとし、又は不利益を与え、与えようと企て、若しくは与えようと脅かすこと。

 三 政治的目的のために、賦課金、寄附金、会費その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法をもってするを問わず、これらの行為に関与すること。

 四 政治的目的をもって、前号の利益を国家公務員に与えること。

 五 政党その他の政治的団体の結成を企画し、結成に参与し、又はこれらの行為を援助すること。

 六 特定の政党その他の政治的団体の構成員となるように又はならないように勧誘運動をすること。

 七 政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し、編集し、配布し、又はこれらの行為を援助すること。

 八 政治的目的をもって、公選による公職の選挙、最高裁判所の裁判官の任命に関する国民審査の投票又は地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)に基づく地方公共団体の議会の解散若しくは法律に基づく公務員の解職の投票において、投票するように又はしないように勧誘運動をすること。

 九 政治的目的のために署名運動を企画し、主宰し、又は指導し、その他これに積極的に参与すること。

 十 政治的目的をもって、多数の人の行進その他の示威運動を企画し、組織し、若しくは指導し、又はこれらの行為を援助すること。

 十一 集会その他多数の人に接し得る場所で又は拡声器、放送設備その他の手段を利用して、公に政治的目的を有する意見を述べること。

 十二 政治的目的を有する文書又は図画を国の庁舎、施設等に掲示し、又は掲示させ、その他政治的目的のために国の庁舎、施設、資材又は資金を利用し、又は利用させること。

 十三 政治的目的を有する署名又は無署名の文書、図画、音盤又は形象を発行し、回覧に供し、掲示し、若しくは配布し、若しくは多数の人に対して朗読し、若しくは聴取させ、又はこれらの用に供するために著作し、又は編集すること。

 十四 前各号に掲げるもののほか、政令で定める政治的行為

2 自衛隊員は、公選による公職の候補者となることができない。

3 自衛隊員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない。

 (公の発言等の制限)

第六条 自衛隊員は、その政治的中立及びこれに対する国民の信頼を損なうことがないようにするため、政治的な意見が対立している問題については、職務を遂行するため当然行う必要がある場合及び当該問題に関する事実関係、法令等を説明する場合を除き、公に発言等をすることを慎まなければならない。

2 自衛隊員は、衆議院議員又は参議院議員の選挙の期日が近接している時期において職務に関連する事項について公に発言等をする場合においては、当該発言等の内容が特定の政党に有利又は不利となることがないようにしなければならない。

 (適用除外)

第七条 第三条、第五条及び前条の規定は、予備自衛官、即応予備自衛官及び予備自衛官補については、適用しない。ただし、第五条第一項の規定は、自衛隊法第七十一条第一項の規定による訓練招集命令により招集されている予備自衛官、同法第七十五条の五第一項の規定による訓練招集命令により招集されている即応予備自衛官及び同法第七十五条の十一第一項の規定による教育訓練招集命令により招集されている予備自衛官補については、適用があるものとする。

2 第五条第二項及び第三項の規定は、自衛隊法第七十条第三項又は第七十五条の四第三項の規定により自衛官となっている者については、適用しない。

 (罰則)

第八条 第五条第一項に規定する政治的行為の制限に違反した者は、三年以下の懲役又は禁 錮に処する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (自衛隊法の一部改正)

第二条 自衛隊法の一部を次のように改正する。

  第四十六条第一項第三号中「若しくは自衛隊員倫理法(平成十一年法律第百三十号)」を「、自衛隊員倫理法(平成十一年法律第百三十号)若しくは自衛隊員の政治的中立に関する法律(平成十四年法律第▼▼▼号)」に改める。

  第六十一条を次のように改める。

 第六十一条 削除

  第六十五条中「自衛隊員倫理法」の下に「若しくは自衛隊員の政治的中立に関する法律」を加える。

  第七十五条第一項中「並びに第六十一条から第六十三条まで」を「、第六十二条並びに第六十三条」に改め、同項ただし書を削り、同条第二項中「、第六十一条第二項及び第三項」を削る。

  第七十五条の八中「第七十五条第一項ただし書中「第七十一条第一項」とあるのは「第七十五条の五第一項」と、同条第二項」を「第七十五条第二項」に改める。

  第七十五条の十三中「、第七十五条第一項ただし書中「第七十一条第一項」とあるのは「第七十五条の十一第一項」と、「訓練招集命令」とあるのは「教育訓練招集命令」と」を削る。

  第百十九条第一項第一号を次のように改める。

  一 削除

 (国と民間企業との間の人事交流に関する法律の一部改正)

第三条 国と民間企業との間の人事交流に関する法律(平成十一年法律第二百二十四号)の一部を次のように改正する。

  第二十三条第一項中「自衛隊員倫理法(平成十一年法律第百三十号)」を「自衛隊員の政治的中立に関する法律(平成十四年法律第▼▼▼号)」に改める。

 (経過措置)

第四条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

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