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第一五九回

参第一二号

   青少年健全育成基本法案

目次

 前文

 第一章 総則(第一条―第九条)

 第二章 青少年の健全な育成に関する基本的施策(第十条―第二十一条)

 第三章 青少年の健全な育成に関する施策の大綱(第二十二条)

 第四章 青少年健全育成推進本部等

  第一節 青少年健全育成推進本部(第二十三条―第二十六条)

  第二節 地方青少年健全育成会議(第二十七条・第二十八条)

 附則

 次代を担う青少年を健全に育成していくことは、我が国社会の将来の発展にとって不可欠の礎である。我が国においては、これまでも青少年の健全な育成のための様々な取組が様々な分野において進められてきたが、なお一層の努力が必要とされている。

 もとより、青少年をめぐる問題は、大人の社会の反映であり、この社会に生きるすべての大人がその責任を共有すべきものである。そして、青少年をめぐる問題は、家庭、学校、職場、地域その他の社会のあらゆる分野にわたる広範な問題であり、青少年の健全な育成に関する施策をより効果的に推進していくためには、国、地方公共団体その他の関係機関及び国民各層の協力と密接な連携の下での国民的な広がりをもった一体的な取組が不可欠である。

 ここに、青少年の健全な育成に関する基本理念を明らかにしてその方向を示し、青少年の健全な育成に関する施策を総合的に推進するため、この法律を制定する。

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、次代を担う青少年を健全に育成していくことが我が国社会の将来の発展にとって不可欠の礎であることにかんがみ、青少年の健全な育成に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、保護者、国民及び事業者の責務を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定めることにより、青少年の健全な育成に関する他の法律と相まって、青少年の健全な育成に関する施策を総合的に推進することを目的とする。

 (基本理念)

第二条 青少年の健全な育成については、家庭、学校、職場、地域その他の社会のあらゆる分野におけるすべての構成員がそれぞれの役割及び責任を担いつつ、相互に協力しながら一体的に取り組まなければならない。

2 青少年の健全な育成については、次代を担う青少年が、心身ともに健やかに成長し、社会とのかかわりを自覚しつつ、次代の社会の担い手としてふさわしい自立した個人としての自己を確立できることを旨としてなされなければならない。

3 青少年の健全な育成については、青少年の発達段階に応じて必要な配慮がなされなければならず、特に、十八歳未満の青少年に対しては、良好な社会環境の整備が図られるように配慮されなければならない。

4 青少年の健全な育成に関する施策を講ずるに当たっては、家庭及び学校が青少年の健全な育成において果たすべき役割の重要性にかんがみ、家庭及び学校が青少年を健全に育成する機能を十分に発揮することができるように配慮しなければならない。

 (国の責務)

第三条 国は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、青少年の健全な育成に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

 (地方公共団体の責務)

第四条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、青少年の健全な育成に関し、国との連携を図りつつ、その地方公共団体の区域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (保護者の責務)

第五条 親権を行う者、未成年後見人その他の青少年の保護者は、青少年の人間形成にとって基本的な役割を担うことにかんがみ、基本理念にのっとり、その保護する青少年を健全に育成すべき第一義的責任を有することを自覚し、その育成に努めなければならない。

 (国民の責務)

第六条 国民は、家庭、学校、職場、地域その他の社会のあらゆる分野において、基本理念にのっとり、青少年の健全な育成に努めなければならない。

 (事業者の責務)

第七条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、国又は地方公共団体が実施する施策に協力し、その供給する商品又は役務が青少年を取り巻く社会環境に悪影響を及ぼすことがないようにする等青少年の健全な育成に努めなければならない。

 (法制上の措置等)

第八条 政府は、青少年の健全な育成に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

 (年次報告)

第九条 政府は、毎年、国会に、青少年の現状及び政府が講じた青少年の健全な育成に関する施策についての報告を提出しなければならない。

   第二章 青少年の健全な育成に関する基本的施策

 (国民的な広がりをもった取組の推進)

第十条 青少年の健全な育成に関する施策は、基本理念にのっとり、国、地方公共団体その他の関係機関及び国民各層の協力と密接な連携の下に、国民的な広がりをもった一体的な取組として推進されなければならない。

 (国民の理解と協力を得るための措置)

第十一条 国、地方公共団体その他の関係機関は、青少年の健全な育成に関し、広く国民各層の関心を高め、その理解と協力が得られるよう、必要な広報その他の啓発活動を積極的に行うものとする。

2 国は、前項に規定する広報その他の啓発活動をより推進するものとして、青少年の健全な育成に関する強調月間(以下この項において単に「強調月間」という。)を設けるものとする。この場合において、国及び地方公共団体は、強調月間の趣旨にふさわしい事業を実施するように努めなければならない。

 (社会環境の整備等)

第十二条 国は、青少年にとっての良好な社会環境の整備及び青少年の健全な育成を阻害する行為の防止について必要な措置を講ずるように努めるものとする。

 (意見の反映)

第十三条 国は、青少年の健全な育成に関する施策の策定及び実施に資するため、青少年、保護者その他の国民の意見を国の施策に反映させるために必要な措置を講ずるように努めるものとする。

 (調査研究の推進)

第十四条 国は、社会環境が青少年に及ぼす影響に関する調査研究その他の青少年の健全な育成に関する施策の策定に必要な調査研究を推進するように努めるものとする。

 (国際的な協力のための措置)

第十五条 国は、外国政府又は国際機関との情報の交換その他青少年の健全な育成に関する国際的な相互協力の円滑な推進を図るために必要な措置を講ずるように努めるものとする。

 (地方公共団体及び民間の団体に対する支援)

第十六条 国は、地方公共団体が実施する青少年の健全な育成に関する施策及び民間の団体が青少年の健全な育成に関して行う活動を支援するため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるように努めるものとする。

 (地方公共団体における施策の総合的推進)

第十七条 地方公共団体は、当該地方公共団体の区域の特性に応じ、青少年の健全な育成に関する施策を、当該地方公共団体における関係行政機関相互の密接な連携の下に、総合的に推進するものとする。

 (地方公共団体における社会環境の整備等)

第十八条 都道府県は、条例で定めるところにより、その区域において、青少年にとっての良好な社会環境の整備及び青少年の健全な育成を阻害する行為の防止について必要な措置を講ずるように努めるものとする。

2 市町村は、条例で定めるところにより、その区域において、青少年にとっての良好な社会環境の整備及び青少年の健全な育成を阻害する行為の防止について必要な措置を講ずることができる。

 (青少年健全育成支援センター)

第十九条 都道府県及び市町村は、青少年健全育成支援センターを置くことができる。

2 青少年健全育成支援センターは、青少年にとっての良好な社会環境の整備のための事業、青少年の非行防止のための事業、青少年の育成に関する相談に応ずる事業その他の青少年の健全な育成に資する事業を行うことを目的とする機関とする。

 (地方公共団体相互の協力)

第二十条 地方公共団体は、青少年の健全な育成に関する施策を円滑に実施するため、相互に協力するように努めなければならない。

 (配慮)

第二十一条 国及び地方公共団体は、青少年にとっての良好な社会環境の整備及び青少年の健全な育成を阻害する行為の防止について必要な措置を講ずる場合には、言論、出版その他の表現の自由を妨げることがないように配慮しなければならない。

   第三章 青少年の健全な育成に関する施策の大綱

第二十二条 青少年健全育成推進本部は、基本理念にのっとり、青少年の健全な育成に関する施策を総合的かつ有機的に推進するため、青少年の健全な育成に関する施策の大綱(以下本則において「大綱」という。)を作成しなければならない。

2 青少年健全育成推進本部は、前項の規定により大綱を作成したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

3 前項の規定は、大綱の変更について準用する。

   第四章 青少年健全育成推進本部等

    第一節 青少年健全育成推進本部

 (青少年健全育成推進本部の設置及び所掌事務)

第二十三条 内閣府に、青少年健全育成推進本部(以下「本部」という。)を置く。

2 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 大綱を作成し、及びその実施を推進すること。

 二 前号に掲げるもののほか、青少年の健全な育成に関する施策で重要なものの企画及び立案並びに総合調整に関すること。

 (本部の組織)

第二十四条 本部は、青少年健全育成推進本部長、青少年健全育成推進副本部長及び青少年健全育成推進本部員をもって組織する。

2 本部の長は、青少年健全育成推進本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。

3 本部長は、本部の事務を総括する。

4 本部に、青少年健全育成推進副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、次に掲げる者をもって充てる。

 一 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第九条第一項に規定する特命担当大臣で同法第四条第一項第十四号に掲げる事項に関する事務並びに同条第三項第二十六号の二及び第二十七号に掲げる事務を掌理するもの(以下「青少年健全育成担当大臣」という。)

 二 内閣官房長官

 三 国家公安委員会委員長

 四 法務大臣

 五 文部科学大臣

 六 厚生労働大臣

5 副本部長は、本部長の職務を助ける。

6 本部に、青少年健全育成推進本部員(以下「本部員」という。)を置く。

7 本部員は、本部長及び副本部長以外のすべての国務大臣をもって充てる。

 (青少年健全育成会議)

第二十五条 本部に、青少年健全育成会議(以下この条において「会議」という。)を置く。

2 会議は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 大綱の案を作成すること。

 二 前号に掲げるもののほか、青少年の健全な育成に関する施策についての重要事項を調査審議し、及びその施策の実施を推進すること。

 三 前号に規定する事項に関し、必要があると認めるときは、本部長に対し、意見を述べること。

3 会議は、会長及び委員十人以内をもって組織する。

4 会議の会長は、青少年健全育成担当大臣(青少年健全育成担当大臣が置かれていないときは内閣官房長官)をもって充てる。

5 会議の委員は、次に掲げる者をもって充てる。

 一 会長以外の副本部長

 二 青少年の健全な育成に関し優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する者

6 会長は、必要があると認めるときは、第三項及び前項の規定にかかわらず、本部員を、議案を限って、委員として、臨時に会議に参加させることができる。

7 第五項第二号の委員の数は、同項に規定する委員の総数の十分の五未満であってはならない。

8 第五項第二号の委員は、非常勤とする。

 (政令への委任)

第二十六条 この法律に定めるもののほか、本部の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

    第二節 地方青少年健全育成会議

第二十七条 都道府県及び市町村は、条例で、次項に掲げる事務を行うための合議制の機関(以下「地方青少年健全育成会議」という。)を置くことができる。

2 地方青少年健全育成会議は、当該地方公共団体における次に掲げる事務をつかさどる。

 一 青少年の健全な育成に関する施策の総合的な推進を図るために必要な重要事項を調査審議すること。

 二 青少年の健全な育成に関する施策の実施のために必要な関係行政機関相互の連絡調整を図ること。

 三 前二号に規定する事項に関し、当該地方公共団体の長及びその区域内にある関係行政機関に対し、意見を述べること。

 四 前三号に掲げるもののほか、青少年の健全な育成に関し条例で定める事項を調査審議すること。

3 前二項に定めるもののほか、地方青少年健全育成会議の組織及び運営に関し必要な事項は、条例で定める。

第二十八条 地方青少年健全育成会議は、相互に緊密な連絡をとるように努めなければならない。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第四章第二節及び附則第三条の規定は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (経過措置)

第二条 この法律の施行の際現に定められている青少年の健全な育成に関する国の施策の大綱は、この法律の規定により定められた大綱とみなす。

 (地方青少年問題協議会法の廃止)

第三条 地方青少年問題協議会法(昭和二十八年法律第八十三号)は、廃止する。

 (内閣府設置法の一部改正)

第四条 内閣府設置法の一部を次のように改正する。

  第四条第三項第二十六号の次に次の一号を加える。

  二十六の二 青少年の健全な育成に関する施策の大綱(青少年健全育成基本法(平成十六年法律第▼▼▼号)第二十二条第一項に規定するものをいう。)の作成及び推進に関すること。

  第四条第三項第二十七号中「青少年」を「前号に掲げるもののほか、青少年」に改める。

  第四十条第三項中「第一項」の下に「及び第二項」を加え、同項を同条第四項とし、同条第二項中「前項」を「前二項」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。

 2 前項に定めるもののほか、青少年健全育成基本法の定めるところにより内閣府に置かれる青少年健全育成推進本部は、本府に置く。

 (災害対策基本法等の一部改正)

第五条 次に掲げる法律の規定中「第四十条第二項」を「第四十条第三項」に改める。

 一 災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第二十四条第一項及び第二十八条の二第一項

 二 大規模地震対策特別措置法(昭和五十三年法律第七十三号)第十条第一項

 三 原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)第十六条第一項

 (日本学術会議法の一部を改正する法律の一部改正)

第六条 日本学術会議法の一部を改正する法律(平成十六年法律第▼▼▼号)の一部を次のように改正する。

  附則第十条のうち内閣府設置法第四十条第三項の改正規定中「第四十条第三項」を「第四十条第四項」に改める。


     理 由

 次代を担う青少年を健全に育成していくことが我が国社会の将来の発展にとって不可欠の礎であることにかんがみ、青少年の健全な育成に関する施策を総合的に推進するため、青少年の健全な育成に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、保護者、国民及び事業者の責務を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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