第一五九回
参第二四号
干潟海域の保全等に関する法律案
目次
第一章 総則(第一条―第五条)
第二章 干潟海域の保全
第一節 干潟海域保全区域の指定(第六条)
第二節 保全のための措置(第七条―第十五条)
第三節 国立公園及び国定公園並びに自然環境保全地域の区域内の干潟海域保全区域の特例(第十六条―第十九条)
第四節 雑則(第二十条―第二十六条)
第三章 干潟海域の復元(第二十七条―第三十条)
第四章 雑則(第三十一条―第三十五条)
第五章 罰則(第三十六条―第四十一条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、特別な自然条件を有する干潟海域が他の自然環境では代替することが困難な多面にわたる機能を有し、自然環境の保全等に重要な役割を担っているものであるとともに、豊かな国民生活を実現する上で欠くことができないものであることにかんがみ、干潟海域の保全等を図り、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「干潟」とは、潮汐により海底が露出と水没を繰り返す海域であって泥、砂又はれきからなるほぼ平坦な海底を有するものをいう。
2 この法律において「干潟海域」とは、干潟及び当該干潟に接する海域であって最低潮時における水深が政令で定める深さを超えない海域をいう。
3 この法律において「干潟海域の多面的機能」とは、多様な生物の生息又は生育による生物の多様性の確保、有機物の分解等による水質の浄化、有機物の生産による海洋生物資源その他の生物資源の確保等の干潟海域の有する他の自然環境では代替することが困難な多面にわたる機能をいう。
4 この法律において「干潟海域の復元」とは、過去に干潟海域であった区域であって政令で定める要件に該当する区域を干潟海域の多面的機能を有する干潟海域とし、又は干潟海域について干潟海域の多面的機能を回復させることをいう。
(基本理念)
第三条 干潟海域が極めて軽微な形質の変更によっても干潟海域の多面的機能が損なわれるおそれがあること及び埋立て等により干潟海域が著しく減少している状況にかんがみ、現存する干潟海域については、できる限り保全されなければならない。
2 干潟海域の保全は、干潟海域の自然条件及び生態系が特に微妙な均衡を保つことによって成り立っていることにかんがみ、干潟海域を構成する諸要素及び干潟海域に生息又は生育する生物を全体として保全することにより、干潟海域の多面的機能が十分に発揮されることを旨として行われなければならない。
3 干潟海域の保全等は、地域住民、特定非営利活動法人(特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人をいう。第三十一条第一項において同じ。)、干潟海域の特性及び現状について学識経験を有する者その他国民の意見が広く反映されることを旨として行われなければならない。
(国及び地方公共団体の責務)
第四条 国及び地方公共団体は、前条に定める基本理念にのっとり、干潟海域の保全等に関する国際的な動向を踏まえ、干潟海域の保全等が適切に図られるように努めなければならない。
(基本方針)
第五条 環境大臣は、干潟海域の保全等を図るための基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 干潟海域の保全に関する基本構想
二 干潟海域保全区域の指定に関する基本的な事項
三 第十三条第一項に規定する保全計画の策定及びその実施に関する基本的な事項
四 干潟海域の活用に関する基本的な事項
五 干潟海域の復元に関する基本的な事項
六 前各号に掲げるもののほか、干潟海域の保全等に関する重要事項
3 環境大臣は、基本方針を定めようとするときは、あらかじめ、中央環境審議会の意見を聴くとともに、公聴会を開き、広く一般の意見を聴かなければならない。
4 環境大臣は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
5 前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。
第二章 干潟海域の保全
第一節 干潟海域保全区域の指定
第六条 環境大臣は、次に掲げる要件のいずれかに該当する干潟海域であって干潟海域の多面的機能が確保されるようその保全を図る必要があるもの(これと一体として保全する必要がある区域として政令で定める要件に該当する区域を含む。)を干潟海域保全区域として指定するものとする。
一 水質の浄化機能に優れ、又は生物の生息若しくは生育に適した場所として相当規模の面積を有すること。
二 多様な種で構成される生物相を有していること。
三 種の存続に支障を来している生物又はその海域に固有の生物が生息し、又は生育していること。
四 特定の生物の相当規模の個体群が存すること。
五 産卵地、採餌地その他生物の生息又は生育にとって重要な場所であること。
2 原生自然環境保全地域(自然環境保全法(昭和四十七年法律第八十五号)第十四条第一項の規定により指定された原生自然環境保全地域をいう。)の区域は、干潟海域保全区域の区域に含まれないものとする。
3 都道府県知事は、当該都道府県の区域内に第一項の規定による指定をすべき干潟海域があると認めるときは、環境大臣に対し、当該指定をすべき旨を申し出ることができる。
4 住民は、その住所地を管轄する都道府県知事に対し、前項の申出をするよう申し出ることができる。
5 環境大臣は、干潟海域保全区域の指定をしようとするときは、あらかじめ、中央環境審議会並びに関係行政機関の長及び関係都道府県知事の意見を聴くとともに、公聴会を開き、広く一般の意見を聴かなければならない。
6 環境大臣は、干潟海域保全区域の指定をする場合には、その旨及びその区域を官報で公示しなければならない。
7 干潟海域保全区域の指定は、前項の規定による公示によってその効力を生ずる。
8 第三項から前項までの規定は、干潟海域保全区域の指定の解除及びその区域の変更について準用する。
第二節 保全のための措置
(行為の制限)
第七条 干潟海域保全区域内においては、次の各号に掲げる行為をしてはならない。ただし、都道府県知事が人の生命若しくは身体の安全の確保のためその他公益性が特に高い事由として政令で定める事由により特に必要と認めて許可した場合又は非常災害のために必要な応急措置として行う場合は、この限りでない。
一 海面を埋め立て、又は干拓すること。
二 海底を掘削し、又はしゅんせつすること。
三 干潟海域の保全に支障を及ぼすおそれのあるものとして政令で定める工作物を新築し、改築し、又は増築すること。
2 前項ただし書の許可には、当該干潟海域保全区域における干潟海域の保全のために必要な限度において、条件を付することができる。
3 都道府県知事は、第一項ただし書の許可をしようとするときは、環境大臣に協議し、その同意を得なければならない。
4 干潟海域保全区域内において非常災害のために必要な応急措置として第一項各号に掲げる行為をした者は、その行為をした日から起算して十四日以内に、都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
5 干潟海域保全区域が指定され、又はその区域が拡張された際当該指定され、又は拡張された干潟海域保全区域内において第一項各号に掲げる行為に着手している者は、その指定又は区域の拡張の日から起算して三月間(その期間内に同項ただし書の許可を申請したときは、許可又は不許可の処分があるまでの間)は、同項の規定にかかわらず、引き続き当該行為をすることができる。
6 次の各号に掲げる行為については、第一項及び第四項の規定は、適用しない。
一 第十四条第一項に規定する保全事業の執行として行う行為
二 通常の管理行為又は軽易な行為のうち、干潟海域保全区域における干潟海域の保全に支障を及ぼすおそれがないものとして環境省令で定めるもの
(中止命令等)
第八条 都道府県知事は、干潟海域保全区域における干潟海域の保全のために必要があると認めるときは、前条第一項の規定に違反し、又は同条第二項の規定により許可に付せられた条件に違反した者に対して、その行為の中止を命じ、又は相当の期限を定めて、原状回復を命じ、若しくは原状回復が著しく困難である場合に、これに代わるべき必要な措置をとるべき旨を命ずることができる。
(報告及び検査等)
第九条 都道府県知事は、干潟海域保全区域における干潟海域の保全のために必要な限度において、第七条第一項ただし書の許可を受けた者に対し、当該許可を受けた行為の実施状況その他必要な事項について報告を求め、又はその職員に、干潟海域保全区域の区域内の土地若しくは建物内に立ち入り、同項各号に掲げる行為の実施状況を検査させ、若しくはこれらの行為の干潟海域に及ぼす影響を調査させることができる。
2 前項の職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
3 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(自動車又は船舶の乗入れ等の禁止)
第十条 何人も、干潟海域保全区域(都道府県知事が干潟海域の保全に支障がないと認めて指定した区域を除く。)内において、みだりに自動車又は船舶の乗入れその他干潟海域の多面的機能を損なうおそれのある行為として政令で定める行為をしてはならない。
(干潟海域の保全に支障が生じていると認められる事業に対する措置)
第十一条 都道府県知事は、事業活動により当該都道府県の区域内の干潟海域保全区域における干潟海域の保全に支障が生じていると認めるときは、当該事業活動を行う者に対し、干潟海域の保全のために必要な措置を講ずるよう勧告することができる。
2 都道府県知事は、前項の勧告をしようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない。
(条例による規制)
第十二条 都道府県は、第七条から前条までに定めるもののほか、条例で、当該都道府県の区域内の干潟海域保全区域内における行為について必要な規制をすることができる。
(保全計画)
第十三条 都道府県知事は、当該都道府県の区域内の干潟海域保全区域について、必要があると認めるときは、干潟海域保全区域の保全に関する計画(以下「保全計画」という。)を定めることができる。
2 保全計画においては、次に掲げる事項のうち必要なものを定めるものとする。
一 干潟海域保全区域の現状の調査に関する事項
二 干潟海域の保全及び干潟海域の多面的機能の維持のための研究に関する事項
三 干潟海域の保全及び干潟海域の多面的機能の維持のための措置に関する事項
四 干潟海域の保全に資する干潟海域の活用に関する事項
3 都道府県知事は、保全計画を定めようとするときは、あらかじめ、その案について第三十一条第一項に規定する協議会において十分に協議するとともに、その協議の結果に基づいて作成しなければならない。
4 前項の規定は、保全計画の変更について準用する。
(保全事業の執行)
第十四条 干潟海域保全区域に関する保全事業(保全計画に基づいて執行する事業をいう。以下同じ。)は、都道府県が執行する。ただし、他の法律の定めるところにより、国が保全事業を執行することを妨げない。
2 都道府県以外の地方公共団体は、都道府県知事に協議し、その同意を得て、保全事業の一部を執行することができる。
3 国及び地方公共団体以外の者は、都道府県知事の認可を受けて、保全事業の一部を執行することができる。
4 第一項ただし書の規定により保全事業を執行しようとする国の機関は、都道府県知事に協議しなければならない。
(協議の手続等)
第十五条 前条第二項の規定による協議及び同条第三項の規定による認可の手続並びに同条第二項の同意を得て又は当該認可を受けて行う保全事業の執行に関して必要な事項は、政令で定める。
第三節 国立公園及び国定公園並びに自然環境保全地域の区域内の干潟海域保全区域の特例
(国立公園及び自然環境保全地域の区域内の干潟海域保全区域の特例)
第十六条 国立公園(自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号)第二条第二号に規定する国立公園をいう。以下同じ。)及び自然環境保全地域(自然環境保全法第二十二条第一項の規定により指定された自然環境保全地域をいう。以下同じ。)の区域内の干潟海域保全区域における前節の規定の適用については、次の表の上欄に掲げる同節の規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句とする。
第七条第一項ただし書及び第四項、第八条、第九条第一項、第十条、第十一条、第十三条第一項及び第三項並びに第十四条第二項から第四項まで |
都道府県知事 |
環境大臣 |
第十条 |
干潟海域保全区域 |
国立公園又は自然環境保全地域の区域内の干潟海域保全区域 |
第十一条第一項 |
当該都道府県 |
国立公園又は自然環境保全地域 |
第十三条第一項 |
当該都道府県の区域内の干潟海域保全区域について |
国立公園又は自然環境保全地域の区域内の干潟海域保全区域について、関係都道府県知事の意見を聴き |
第十四条第一項 |
都道府県が執行する。ただし、他の法律の定めるところにより、国が保全事業を執行することを妨げない |
国が執行する |
第十四条第二項 |
都道府県以外の地方公共団体 |
地方公共団体 |
第十四条第四項 |
第一項ただし書の規定により保全事業を執行しようとする国の機関 |
環境大臣以外の国の機関は、第一項の規定により保全事業を執行しようとするとき |
2 国立公園又は自然環境保全地域の区域内の干潟海域保全区域については、第七条第三項及び第十二条の規定は、適用しない。
第十七条 国立公園又は自然環境保全地域の区域内の干潟海域保全区域内において、第七条第一項各号に掲げる行為以外の行為であって干潟海域の保全に支障を及ぼすおそれのあるものとして政令で定める行為をしようとする者は、環境大臣に対し、環境省令で定めるところにより、行為の種類及び場所その他環境省令で定める事項を届け出なければならない。
2 環境大臣は、前項の規定による届出があった場合において、当該干潟海域保全区域における干潟海域の保全のために必要があると認めるときは、その届出をした者に対して、その届出があった日から起算して三十日以内に限り、当該干潟海域の保全のために必要な限度において、その届出に係る行為を禁止し、若しくは制限し、又は必要な措置をとるべき旨を命ずることができる。
3 第一項の規定による届出をした者は、その届出をした日から起算して三十日を経過した後でなければ、当該届出に係る行為に着手してはならない。
4 次の各号に掲げる行為については、第一項及び第二項の規定は、適用しない。
一 非常災害のために必要な応急措置として行う行為
二 保全事業の執行として行う行為
三 通常の管理行為又は軽易な行為であって環境省令で定めるもの
四 干潟海域保全区域が指定され、又はその区域が拡張された際着手している行為
第十八条 第八条の規定は前条第二項の規定による処分に違反した者について、第九条の規定は前条第二項の規定により行為を制限され、又は必要な措置をとるべき旨を命ぜられた者について、それぞれ準用する。この場合において、第八条中「都道府県知事」とあるのは「環境大臣」と、第九条第一項中「都道府県知事」とあるのは「環境大臣」と、「許可を受けた行為」とあるのは「行為」と読み替えるものとする。
(国定公園の区域内の干潟海域保全区域の特例)
第十九条 国定公園(自然公園法第二条第三号に規定する国定公園をいう。以下同じ。)の区域内の干潟海域保全区域における第十三条の規定の適用については、同条第一項中「都道府県知事は、当該都道府県の区域内の干潟海域保全区域について」とあるのは「環境大臣は、国定公園の区域内の干潟海域保全区域について、関係都道府県知事の意見を聴き」と、同条第三項中「都道府県知事」とあるのは「環境大臣」とする。
第四節 雑則
(保全事業の執行に要する費用)
第二十条 保全事業の執行に要する費用は、その保全事業を執行する者の負担とする。ただし、他の法律にその執行に要する費用に関して別段の規定がある事業については、この限りでない。
(調査)
第二十一条 国及び都道府県は、干潟海域の現状、干潟海域の活用の状況等に関する事項その他干潟海域の保全のために必要な事項について定期的に調査をし、その結果を干潟海域の保全に関する施策の策定及び適正な実施に活用するものとする。
(公害等調整委員会の裁定)
第二十二条 第七条第一項ただし書若しくは第十七条第二項の規定による処分、又は第十二条の規定に基づく条例の規定による処分に不服がある者は、その不服の理由が鉱業、採石業又は砂利採取業との調整に関するものであるときは、公害等調整委員会に裁定を申請することができる。この場合には、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)による不服申立てをすることができない。
2 行政不服審査法第十八条の規定は、前項の処分につき、処分庁が誤って審査請求又は異議申立てをすることができる旨を教示した場合に準用する。
(損失の補償)
第二十三条 国又は都道府県は、第七条第一項ただし書の許可を得ることができないため、同条第二項の規定により許可に条件を付せられたため、第十二条の規定に基づく条例の規定による処分を受けたため、又は第十七条第二項の規定による処分を受けたため損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償する。
2 前項の補償を受けようとする者は、国に係る当該補償については環境大臣に、都道府県に係る当該補償については都道府県知事にこれを請求しなければならない。
3 環境大臣又は都道府県知事は、前項の規定による請求を受けたときは、補償すべき金額を決定し、当該請求者にこれを通知しなければならない。
(訴えの提起)
第二十四条 前条第三項の規定による決定に不服がある者は、その通知を受けた日から六月以内に訴えをもって補償すべき金額の増額を請求することができる。
2 前項の訴えにおいては、国又は都道府県を被告とする。
(買取り請求)
第二十五条 干潟海域保全区域内の土地の所有者は、干潟海域保全区域に指定されたことによりその土地の利用に著しい支障を来すこととなるときは、政令で定めるところにより、国又は都道府県に対し当該土地の買取りを請求することができる。
2 国又は都道府県は、前項の請求があった場合においては、当該土地を買い入れるものとする。
3 前項の規定による買入れをする場合における土地の価格は、時価によるものとする。
(租税の減免措置)
第二十六条 干潟海域保全区域の土地に係る国税及び地方税については、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)及び地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)で定めるところにより、減免の措置を講ずるものとする。
第三章 干潟海域の復元
(復元計画)
第二十七条 環境大臣は、基本方針に基づき、国際的又は全国的な見地から、干潟海域の復元に関する計画(以下「復元計画」という。)を定めるものとする。
2 復元計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 干潟海域の復元に関する目標
二 干潟海域の復元を実施すべき区域
三 干潟海域の復元を目的として実施される事業(以下「復元事業」という。)の実施に関する事項
四 復元事業を実施する者の遵守すべき事項
五 その他干潟海域の復元が適切かつ効果的に実施されるために必要な事項
3 都道府県知事は、当該都道府県の区域内に干潟海域の復元を実施すべき区域があると認めるときは、環境大臣に対し、当該区域を復元計画において干潟海域の復元を実施すべき区域として定めるべき旨の申出をすることができる。
4 住民は、その住所地を管轄する都道府県知事に対し、前項の申出をするよう申し出ることができる。
5 環境大臣は、復元計画を定めようとするときは、あらかじめ、中央環境審議会並びに関係行政機関の長及び関係都道府県知事の意見を聴くとともに、公聴会を開き、広く一般の意見を聴かなければならない。
6 環境大臣は、復元計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
7 第三項から前項までの規定は、復元計画の変更について準用する。
(復元事業)
第二十八条 復元計画において干潟海域の復元を実施すべき区域として定められた区域(以下「復元対象区域」という。)に係る復元事業は、自然再生推進法(平成十四年法律第百四十八号)第二条第二項に規定する自然再生事業として同法に基づいて実施しなければならない。
第二十九条 国は、復元計画に基づき、復元対象区域に係る復元事業を実施するものとする。
2 環境大臣以外の国の機関が復元対象区域に係る復元事業を実施しようとするときは、環境大臣に協議しなければならない。
第三十条 国以外の者は、復元対象区域に係る復元事業を実施しようとするときは、当該復元事業につき自然再生推進法第九条第一項の規定に基づいて作成する自然再生事業実施計画(以下単に「自然再生事業実施計画」という。)について、環境省令で定めるところにより、あらかじめ、復元計画に適合している旨の環境大臣の確認を受けなければならない。
2 国以外の者は、前項の環境大臣の確認を受けるまでは、復元事業を実施してはならない。
3 前二項の規定は、自然再生事業実施計画の変更について準用する。この場合において、前項中「復元事業」とあるのは、「復元事業(自然再生事業実施計画の変更に係る部分に限る。)」と読み替えるものとする。
第四章 雑則
(協議会)
第三十一条 地域住民、特定非営利活動法人、干潟海域の特性及び現状について学識経験を有する者その他の干潟海域の保全のための活動に参加しようとする者並びに関係地方公共団体及び関係行政機関は、干潟海域の保全について必要な協議を行うため、必要に応じ、干潟海域保全区域ごとに協議会を組織するものとする。
2 前項の協議を行うための会議において協議が調った事項については、協議会の構成員は、その協議の結果を尊重しなければならない。
3 前二項に定めるもののほか、協議会の運営に関して必要な事項は、協議会が定める。
(干潟海域における行為の届出)
第三十二条 政令で定める面積以上の干潟海域として環境大臣が指定し、公示した区域(干潟海域保全区域を除く。次項において「指定区域」という。)内において、第七条第一項各号に掲げる行為をしようとする者は、環境省令で定めるところにより、あらかじめ、行為の種類及び場所その他環境省令で定める事項を都道府県知事に届け出なければならない。ただし、自然環境保全法その他の法令の規定で政令で定めるものによる届出をしなければならない場合その他政令で定める場合は、この限りでない。
2 前項の規定は、指定区域が指定された際、当該指定区域内において第七条第一項各号に掲げる行為に着手している者について準用する。この場合において、「あらかじめ」とあるのは、「当該指定の日から起算して三十日以内に」と読み替えるものとする。
(経過措置)
第三十三条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
(環境省令への委任)
第三十四条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、環境省令で定める。
(都道府県の行う干潟海域の保全)
第三十五条 この法律の規定は、都道府県が、干潟海域保全区域以外の干潟海域の保全に関し、条例で必要な規制を定めることを妨げるものではない。
第五章 罰則
第三十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
一 第七条第一項(第十六条第一項において読み替えて適用する場合を含む。)の規定に違反した者
二 第八条(第十六条第一項において読み替えて適用する場合及び第十八条において準用する場合を含む。)の規定による命令に違反した者
第三十七条 第七条第二項の規定により許可に付せられた条件に違反した者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第三十八条 第十七条第二項の規定による処分に違反した者は、五十万円以下の罰金に処する。
第三十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第九条第一項(第十六条第一項において読み替えて適用する場合及び第十八条において準用する場合を含む。)の規定による立入検査又は立入調査を拒み、妨げ、又は忌避した者
二 第十条(第十六条第一項において読み替えて適用する場合を含む。)の規定に違反した者
三 第十七条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
四 第十七条第三項の規定に違反した者
五 第三十条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
第四十条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第三十六条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
第四十一条 第十二条の規定に基づく条例には、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金を科する規定を設けることができる。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第一章、第三十二条、次条及び附則第五条の規定は、公布の日から施行する。
(経過措置の政令への委任)
第二条 この法律の施行に関し必要となる経過措置は、政令で定める。
(鉱業等に係る土地利用の調整手続等に関する法律の一部改正)
第三条 鉱業等に係る土地利用の調整手続等に関する法律(昭和二十五年法律第二百九十二号)の一部を次のように改正する。
第一条第二号に次のように加える。
ヨ 干潟海域の保全等に関する法律(平成十六年法律第▼▼▼号)第二十二条第一項
第四十五条第一項中「自然環境保全法」を
「 |
自然環境保全法 |
|
|
干潟海域の保全等に関する法律 |
」 |
に改める。
(土地収用法の一部改正)
第四条 土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)の一部を次のように改正する。
第三条第二十九号の二の次に次の一号を加える。
二十九の三 干潟海域の保全等に関する法律(平成十六年法律第▼▼▼号)による保全事業に基づく施設
(環境基本法の一部改正)
第五条 環境基本法(平成五年法律第九十一号)の一部を次のように改正する。
第四十一条第二項第三号中「及び特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(平成十六年法律第七十八号)」を「、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(平成十六年法律第七十八号)及び干潟海域の保全等に関する法律(平成十六年法律第▼▼▼号)」に改める。
理 由
特別な自然条件を有する干潟海域が他の自然環境では代替することが困難な多面にわたる機能を有し、自然環境の保全等に重要な役割を担っているものであるとともに、豊かな国民生活を実現する上で欠くことができないものであることにかんがみ、現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するため、干潟海域の保全等を図る必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。