第一六三回
衆第一五号
海底資源開発推進法案
目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 海底資源開発基本方針等(第三条―第八条)
第三章 海底資源開発推進本部(第九条―第十八条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、近年における海底資源の開発を取り巻く国際環境の変化に伴い、海底資源の開発を推進する必要性が増大している状況にかんがみ、海底資源の開発に関する基本方針及び海底資源開発区域における海底資源の開発に関する計画の策定等について定めるとともに、海底資源開発推進本部を設置することにより、海底資源の開発に関する施策を総合的かつ効果的に推進することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「海底資源の開発」とは、排他的経済水域等(我が国の排他的経済水域(その海域の海底及びその下に限る。)及び大陸棚(排他的経済水域及び大陸棚に関する法律(平成八年法律第七十四号)第二条に規定する大陸棚をいう。)をいう。次項において同じ。)における鉱物(石炭、石油及び天然ガスを含む。)の探査(探鉱をすること及び探鉱を目的として地質構造の調査をすることをいう。)又は採掘をいう。
2 この法律において「海底資源開発区域」とは、排他的経済水域等のうち、重点的に海底資源の開発を推進すべき区域として政令で定める区域をいう。
第二章 海底資源開発基本方針等
(海底資源開発基本方針)
第三条 内閣総理大臣は、海底資源の開発に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための基本的な方針(以下「海底資源開発基本方針」という。)の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
2 海底資源開発基本方針には、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 海底資源の開発の意義及び目標に関する事項
二 海底資源の開発に関する施策を推進するための体制の整備に関する基本的な事項
三 海底資源の開発に資する調査研究に関する基本的な事項
四 海底資源開発区域における海底資源の開発の事業を行う者(以下「海底資源開発事業者」という。)に対する支援、海底資源開発事業者の安全の確保その他の海底資源の開発のために政府が重点的に実施すべき施策に関する基本的な事項
五 海洋環境の保全その他海底資源の開発に際し配慮すべき重要事項
六 海底資源開発区域を指定する政令の立案に関する基準
七 前各号に掲げるもののほか、海底資源の開発の推進に関する重要事項
3 海底資源開発基本方針は、主要な鉱物資源の大部分を輸入に依存している我が国にとって海底資源の開発が重要な意義を有するものであることにかんがみ、関係行政機関の相互の密接な連携を図りつつ、近年における海底資源の開発を取り巻く国際環境の変化に的確かつ迅速に対応して、海底資源の開発に関する施策を適切に推進することを基本理念として定めるものとする。
4 内閣総理大臣は、第一項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、海底資源開発基本方針を公表しなければならない。
5 第一項及び前項の規定は、海底資源開発基本方針の変更について準用する。
(海底資源開発計画)
第四条 海底資源開発推進本部は、海底資源開発区域ごとに、海底資源開発基本方針に即して、当該海底資源開発区域における海底資源の開発に関する計画(以下「海底資源開発計画」という。)を定めなければならない。
2 海底資源開発計画には、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 海底資源開発区域の開発の目標
二 海底資源開発区域における海底資源の開発に関し、総合的かつ計画的に講ずべき施策
三 海洋環境の保全その他海底資源の開発に際し配慮すべき事項
四 前三号に掲げるもののほか、海底資源開発区域における海底資源の開発に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 海底資源開発推進本部は、海底資源開発計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
4 前項の規定は、海底資源開発計画の変更について準用する。
(財政上の措置等)
第五条 国は、海底資源開発計画の実施を推進するため、海底資源開発事業者を支援するための財政上の措置その他必要な措置を講ずるように努めなければならない。
(海底資源開発事業者の安全の確保)
第六条 国は、海底資源開発区域における海底資源の開発に関する施策を推進するに当たっては、海底資源の開発に関し、海底資源開発事業者の安全の確保が図られるように努めなければならない。
(海底資源の開発についての配慮)
第七条 国の行政機関及び関係地方公共団体の長は、海底資源開発区域における海底資源の開発に関し、法令の規定による許可その他の処分を求められたときは、当該海底資源の開発が円滑かつ迅速に施行されるよう、適切な配慮をするものとする。
(海底資源開発区域における鉱業法の特例)
第八条 鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)の規定により経済産業局長の権限に属する事務のうち、海底資源開発区域に存する鉱物(同法第三条第一項に規定する鉱物をいう。以下この条において同じ。)を目的とする鉱業権又は租鉱権に係るものは、経済産業大臣が行うものとする。
2 鉱業法第二十一条第一項(同法第三十六条第二項又は第四十五条第三項において準用する場合を含む。)の規定による出願であって海底資源開発区域に存する鉱物を目的とする鉱業権に係るものについては、同法第二十四条(同法第三十六条第二項及び第四十五条第三項において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。
3 前二項に定めるもののほか、海底資源開発区域に存する鉱物を目的とする鉱業権又は租鉱権に関する鉱業法の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
第三章 海底資源開発推進本部
(設置)
第九条 海底資源の開発を総合的かつ計画的に推進するため、内閣に、海底資源開発推進本部(以下「本部」という。)を置く。
(所掌事務)
第十条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 海底資源開発基本方針の案の作成に関すること。
二 海底資源開発基本方針の実施を推進すること。
三 海底資源開発区域を指定する政令を立案すること。
四 海底資源開発計画を作成し、及びその実施を推進すること。
五 前各号に掲げるもののほか、海底資源の開発に関する施策で重要なものの企画及び立案並びに総合調整に関すること。
(組織)
第十一条 本部は、海底資源開発推進本部長、海底資源開発推進副本部長及び海底資源開発推進本部員をもって組織する。
(海底資源開発推進本部長)
第十二条 本部の長は、海底資源開発推進本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。
2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。
(海底資源開発推進副本部長)
第十三条 本部に、海底資源開発推進副本部長(次項及び次条第二項において「副本部長」という。)を置き、国務大臣をもって充てる。
2 副本部長は、本部長の職務を助ける。
(海底資源開発推進本部員)
第十四条 本部に、海底資源開発推進本部員(次項において「本部員」という。)を置く。
2 本部員は、本部長及び副本部長以外のすべての国務大臣をもって充てる。
(資料の提出その他の協力)
第十五条 本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、国の行政機関、地方公共団体、独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。)及び地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。)の長並びに特殊法人(法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であって、総務省設置法(平成十一年法律第九十一号)第四条第十五号の規定の適用を受けるものをいう。)の代表者に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。
2 本部は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。
(事務)
第十六条 本部に関する事務は、内閣官房において処理し、命を受けて内閣官房副長官補が掌理する。
(主任の大臣)
第十七条 本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。
(政令への委任)
第十八条 この法律に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
理 由
近年における海底資源の開発を取り巻く国際環境の変化に伴い、海底資源の開発を推進する必要性が増大している状況にかんがみ、海底資源の開発に関する施策を総合的かつ効果的に推進するため、海底資源の開発に関する基本方針及び海底資源開発区域における海底資源の開発に関する計画の策定等について定めるとともに、海底資源開発推進本部を設置する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。