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第一六四回

参第一二号

   就学前の子どもに関する保育及び子育て支援の総合的な提供の推進に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 こども園(第三条―第十六条)

 第三章 子育て支援事業(第十七条―第二十六条)

 第四章 罰則(第二十七条・第二十八条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、我が国における急速な少子化の進展並びに家庭及び地域を取り巻く環境の変化に伴い、小学校就学前の子どもの保育に対する需要が多様なものとなっていることにかんがみ、小学校就学前の子どもの保育の場としてのこども園及び子育て支援事業について定めることにより、地域における創意工夫を生かしつつ、小学校就学前の子どもに関する保育及び子育て支援の総合的な提供を推進し、もって地域において子どもが健やかに育成される環境の整備に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「子ども」とは、小学校就学の始期に達するまでの者をいう。

2 この法律において「保護者」とは、親権を行う者、未成年後見人その他の者であって、子どもを現に監護する者をいう。

3 この法律において「子育て支援事業」とは、次に掲げる事業であって、政令で定めるものをいう。

 一 保護者の疾病その他の理由により家庭において養育を受けることが一時的に困難となった子どもに対する保育を行う事業

 二 疾病にかかっている子ども(回復の過程にあるものを含む。)であって保護者の労働その他の理由により家庭において養育を受けることに支障があるものに対する保育を行う事業

 三 夜間又は休日に保護者の労働その他の理由により家庭において養育を受けることに支障がある子どもに対する保育を行う事業

 四 子どもの養育に関する援助を受けることを希望する保護者と当該援助を行うことを希望する民間の団体又は個人との連絡及び調整を行う事業

 五 前各号に掲げるもののほか、子ども及びその保護者若しくはその他の者の居宅又は適当な施設において保護者の子どもの養育を支援する事業

 六 子どもの養育に関する各般の問題につき保護者からの相談に応じ必要な情報の提供及び助言を行う事業

 七 子どもの養育に関する援助を行う民間の団体又は個人に対する必要な情報の提供及び助言を行う事業

4 この法律において「こども園子育て支援事業」とは、前項第一号、第四号、第六号及び第七号に掲げる事業であって、政令で定めるものをいう。

   第二章 こども園

 (こども園の目的)

第三条 こども園は、子どもを適切に保育し、もってその心身の健やかな成長に寄与するとともに、こども園子育て支援事業を行うことを目的とする施設とする。

 (保育の目標等)

第四条 こども園においては、それぞれの子どもの保育の必要性に対応して、子どもの発達段階に応じ次に掲げる目標が達成されるように保育を行うものとする。

 一 健康、安全で幸福な生活のために必要な日常の習慣を養い、身体諸機能の調和的発達を図ること。

 二 園内において、集団生活を経験させ、喜んでこれに参加する態度と協同、自主及び自律の精神の芽生えを養うこと。

 三 身辺の社会生活及び事象に対する正しい理解と態度の芽生えを養うこと。

 四 言語の使い方を正しく導き、童話、絵本等に対する興味を養うこと。

 五 音楽、遊戯、絵画その他の方法により、創作的表現に対する興味を養うこと。

2 こども園においては、多様な子どもに対し、その特性に応じて適切な保育を行うように努めるものとする。

 (設置)

第五条 営利を目的としない法人は、内閣府令で定めるところにより、都道府県知事の認可を得て、こども園を設置することができる。

2 市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ、内閣府令で定める事項を都道府県知事に届け出て、こども園を設置することができる。

3 都道府県は、こども園を設置することができる。

 (施設及び設備並びに運営に関する基準等)

第六条 内閣総理大臣は、文部科学大臣及び厚生労働大臣の意見を聴いて、こども園の施設及び設備並びに運営に関する基準を作成しなければならない。

2 都道府県知事は、前項の基準を参酌して都道府県の条例で定めるこども園の認可に関する基準に適合する場合でなければ、前条第一項の認可をしてはならない。

 (こども園に係る情報の提供)

第七条 都道府県知事は、第五条第一項の認可をしたときは、インターネットの利用、印刷物の配布その他適切な方法により、当該認可を受けたこども園において提供されるサービスを利用しようとする者に対し、当該こども園に係る情報の周知を図るものとする。同条第二項の届出がされた場合及び同条第三項の規定によりこども園を設置した場合も、同様とする。

 (廃止又は休止及び変更)

第八条 第五条第一項の認可を受けた者は、こども園を廃止し、又は休止しようとするときは、内閣府令で定めるところにより、都道府県知事の認可を受けなければならない。

2 第五条第二項の届出をした市町村は、こども園を廃止し、又は休止しようとするときは、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

3 第五条第一項の認可を受けた者及び同条第二項の届出をした市町村は、内閣府令で定める事項を変更しようとするときは、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

 (報告及び検査)

第九条 こども園の設置者は、毎年、内閣府令で定めるところにより、その運営の状況を都道府県知事に報告しなければならない。

2 都道府県知事は、第六条第二項の基準を維持するため、こども園の設置者に対し、必要と認める事項の報告を求め、又は当該職員に、関係者に対し質問させ、若しくはその施設に立ち入り、設備、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

3 前項の規定による質問又は立入検査を行う場合においては、当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。

4 第二項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

 (改善命令等)

第十条 都道府県知事は、こども園の設置者がこの法律若しくはこれに基づく命令若しくはこれらに基づいてする処分に違反したとき、又は当該こども園が第六条第二項の基準に適合しなくなったときは、その設置者に対して、そのこども園の施設若しくは設備若しくは運営の改善若しくはその事業の停止若しくは廃止を命じ、又は第五条第一項の認可を取り消すことができる。

 (名称の使用制限)

第十一条 何人も、こども園以外の子どもを保育する施設について、こども園という名称又はこれと紛らわしい名称を用いてはならない。

 (特に保育を必要とする子どもの入園)

第十二条 市町村は、地域の保育の実施状況等に照らし必要があると認めるときは、こども園の設置者に対し、特に保育を必要とする子どもの入園について要請することができる。

2 こども園の設置者は、前項の要請に対し、できる限り協力しなければならない。

 (評価及び保護者への説明等)

第十三条 こども園の設置者は、当該こども園において行う保育及びこども園子育て支援事業の内容について、公正かつ適切な評価を行うとともに、保護者に対する十分な説明及び保護者からの意見を踏まえた運営を行うよう努めなければならない。

 (保護者に対する援助)

第十四条 市町村は、こども園に入園している子どもの保護者に対し、その経済的負担を軽減するため、負担能力の程度に応じ必要な援助を行うことができる。

 (設置者に対する補助及び監督)

第十五条 都道府県は、第五条第一項の認可を受けてこども園を設置する法人であって政令で定めるものに対し、こども園の施設又は設備の整備及びその運営に要する費用の一部を補助することができる。

2 都道府県知事は、前項の規定による補助の目的が有効に達せられることを確保するため、当該補助を受ける法人に対して、次に掲げる権限を有する。

 一 当該こども園の事業又は会計の状況に関し報告を求めること。

 二 当該こども園の予算が補助の目的に照らして不適当であると認める場合において、その予算について必要な変更をすべき旨を勧告すること。

 三 当該法人の役員がこの法律若しくはこれに基づく命令又はこれらに基づいてする処分に違反した場合において、当該役員を解職すべき旨を勧告すること。

 (財政上の措置)

第十六条 国は、市町村が第十四条の援助を行うために必要な財政上の措置及び都道府県が前条第一項の補助を行うために必要な財政上の措置を講ずるものとする。

   第三章 子育て支援事業

 (子育て支援事業に係る体制の整備)

第十七条 市町村は、地域の実情に応じたきめ細かな子育て支援事業に係るサービスが積極的に提供され、保護者が、その子ども及び保護者の心身の状況、これらの者の置かれている環境その他の状況に応じて、当該子どもを養育するために最も適切な支援が総合的に受けられるように、子育て支援事業に係るサービスを提供する者又はこれに参画する者の活動の連携及び調整を図るようにすることその他の地域の実情に応じた体制の整備に努めなければならない。

 (子育て支援事業の着実な実施)

第十八条 市町村は、子どもの健やかな育成に資するため、その区域内において、子育て支援事業が着実に実施されるよう、必要な措置の実施に努めなければならない。

 (財政上の措置)

第十九条 国は、市町村が前条の措置を実施するために必要な財政上の措置を講ずるものとする。

 (情報提供、利用の調整等)

第二十条 市町村は、子育て支援事業に関し必要な情報の提供を行うとともに、保護者から求めがあったときは、当該保護者の希望、その子どもの養育の状況、当該子どもに必要な支援の内容その他の事情を勘案し、当該保護者が最も適切な子育て支援事業の利用ができるよう、相談に応じ、必要な助言を行うものとする。

2 市町村は、前項の助言を受けた保護者から求めがあった場合には、必要に応じて、子育て支援事業の利用についてあっせん又は調整を行うとともに、子育て支援事業を行う者に対し、当該保護者の利用の要請を行うものとする。

3 市町村は、第一項の情報の提供、相談及び助言並びに前項のあっせん、調整及び要請の事務を当該市町村以外の者に委託することができる。

4 子育て支援事業を行う者は、前二項の規定により行われるあっせん、調整及び要請に対し、できる限り協力しなければならない。

 (秘密を守る義務)

第二十一条 前条第三項の規定により行われる情報の提供、相談及び助言並びにあっせん、調整及び要請の事務(次条及び第二十三条第一項において「調整等の事務」という。)に従事する者又は従事していた者は、その事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

 (監督命令)

第二十二条 市町村長(特別区の区長を含む。次条第一項及び第二十四条において同じ。)は、第二十条第三項の規定により行われる調整等の事務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、その事務を受託した者に対し、当該事務に関し監督上必要な命令をすることができる。

 (報告及び検査)

第二十三条 市町村長は、第二十条第三項の規定により行われる調整等の事務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、その必要な限度で、その事務を受託した者に対し、報告を求め、又は当該職員に、関係者に対し質問させ、若しくは当該事務を受託した者の事務所に立ち入り、その帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

2 第九条第三項及び第四項の規定は、前項の場合について準用する。

 (事業に関する事項の届出)

第二十四条 国、都道府県及び市町村以外の子育て支援事業を行う者は、内閣府令で定めるところにより、その事業に関する事項を市町村長に届け出ることができる。

 (国及び地方公共団体の援助)

第二十五条 国及び地方公共団体は、子育て支援事業を行う者に対して、情報の提供、相談その他の適当な援助をするように努めなければならない。

 (調査研究の推進)

第二十六条 国及び都道府県は、子育て支援事業に係るサービスの質の向上のための措置を援助するための研究その他保護者の子どもの養育を支援し、子どもの健やかな育成を図るために必要な調査研究の推進に努めなければならない。

   第四章 罰則

第二十七条 第二十一条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

第二十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

 一 第十一条の規定に違反した者

 二 正当な理由がないのに、第二十三条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、又は同項の規定による立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、平成十八年十月一日から施行する。

 (名称の使用制限に関する経過措置)

第二条 この法律の施行の際現にこども園という名称又はこれと紛らわしい名称を使用している者については、第十一条の規定は、この法律の施行後六月間は、適用しない。

 (私立学校法及び社会福祉法の特例)

第三条 当分の間、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する幼稚園(以下この項並びに附則第八条及び第九条において「幼稚園」という。)以外の同法第一条に規定する学校を設置していない私立学校法(昭和二十四年法律第二百七十号)第三条に規定する学校法人(以下この項において「学校法人」という。)が、こども園の設置に伴い、その設置するすべての幼稚園の廃止をした場合においては、当該学校法人は、同法の規定にかかわらず、当該廃止によっては、解散しないものとする。

2 当分の間、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第三十九条第一項に規定する保育所(以下この項並びに附則第八条及び第九条において「保育所」という。)を経営する事業以外の社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二条に規定する社会福祉事業を行っていない同法第二十二条に規定する社会福祉法人(以下この項において「社会福祉法人」という。)が、こども園の設置に伴い、その保育所を経営する事業のすべての廃止をした場合においては、当該社会福祉法人は、同法の規定にかかわらず、当該廃止によっては、解散しないものとする。

 (児童福祉法の一部改正)

第四条 児童福祉法の一部を次のように改正する。

  第二十一条の八中「その児童」の下に「(小学校就学の始期に達するまでの者を除く。以下この款において同じ。)」を加える。

  第二十一条の九各号列記以外の部分中「及び」を「並びに」に、「並びに」を「及び」に改め、同条第二号中「保育所その他の」を「適当な」に改める。

  第五十六条の八第一項中「子育て支援事業」の下に「(就学前の子どもに関する保育及び子育て支援の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第▼▼▼号)第二条第三項に規定する子育て支援事業を含む。以下この条、次条及び第五十九条の七において同じ。)」を加える。

  第五十九条の七第二項中「第二十一条の九各号に掲げる事業」を「子育て支援事業」に改める。

 (次世代育成支援対策推進法の一部改正)

第五条 次世代育成支援対策推進法(平成十五年法律第百二十号)の一部を次のように改正する。

  第十一条第一項中「厚生労働省令」を「政令」に改める。

  第二十二条第一項中「)については」の下に「内閣総理大臣、」を加え、同条第二項中「主務大臣は」の下に「、内閣総理大臣」を加える。

 (内閣府設置法の一部改正)

第六条 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。

  第四条第三項第五十四号の次に次の一号を加える。

  五十四の二 こども園(就学前の子どもに関する保育及び子育て支援の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第▼▼▼号)第三条に規定するものをいう。)に関すること、子育て支援事業(同法第二条第三項に規定するものをいう。)に関すること(他省の所掌に属するものを除く。)並びに就学前の子どもに関する保育及び子育て支援の総合的な提供に関する関係行政機関の事務の連絡調整並びにこれに伴い必要となる当該事務の実施の推進に関すること。

 (関係法律の整備等)

第七条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に伴い必要な関係法律の整備その他必要な事項については、別に法律で定める。

(幼稚園及び保育所に係る事務の内閣府への移管)

第八条 政府は、子ども及び家庭に関する事務を総合的に処理する新たな省が設置されるまでの間の当面の措置として、幼稚園及び保育所に係る事務を内閣府に移管するための措置を講ずるものとする。

 (検討)

第九条 政府は、幼稚園及び保育所の制度を、その教育及び保育の質を維持しつつこども園の制度に統合することについて、この法律の施行後三年以内に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。


     理 由

 我が国における急速な少子化の進展並びに家庭及び地域を取り巻く環境の変化に伴い、小学校就学前の子どもの保育に対する需要が多様なものとなっていることにかんがみ、地域において子どもが健やかに育成される環境が整備されるよう、小学校就学前の子どもの保育の場としてのこども園及び子育て支援事業について定めることにより、小学校就学前の子どもに関する保育及び子育て支援の総合的な提供を推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   この法律の施行に伴い必要となる経費

 この法律の施行に伴い必要となる経費は、初年度約三百八十一億円の見込みである。

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