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第一六六回

衆第一五号

   若年者の職業の安定を図るための特別措置等に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、社会経済情勢の変化に伴う雇用に関する状況の変化により、若年者を中心として、安定した職業に就くことが困難な者が多数存在し、かつ、職業能力の開発等の機会の格差が生じていることにかんがみ、個別就業支援計画に基づく職業指導、実習職業訓練の促進等若年者の就業の支援等に関し特別の措置を講じ、もって若年者等の職業の安定を図り、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「対象若年者等」とは、十五歳以上四十歳未満の者(十五歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にある者を除く。)であって、次のいずれにも該当しないものをいう。

 一 契約の期間を定めないで雇用される者

 二 自営業者(独立して自ら事業を営む者をいう。)であって厚生労働省令で定めるもの

 三 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第四十一条に規定する高等学校の生徒、同法第五十二条に規定する大学の学生その他の生徒又は学生であって厚生労働省令で定めるもの

 四 前三号に掲げるもののほか、これらの者に準ずる者として厚生労働省令で定めるもの

 (個別就業支援計画の作成等)

第三条 若年者等職業カウンセラーは、対象若年者等の相談を受けた場合において、当該対象若年者等が安定した職業に就くことが困難な者として厚生労働省令で定める基準に該当するものであると認めるときは、当該対象若年者等の希望、適性、職業経験その他の事情を踏まえた対象若年者等の就業支援に係る計画(以下「個別就業支援計画」という。)を作成するものとする。

2 若年者等職業カウンセラーは、個別就業支援計画の作成に当たっては、適切な方法により、対象若年者等について、その希望を把握するとともに、その有する能力及びその置かれている状況の評価を通じて当該対象若年者等の就業に関する課題の把握を行い、当該対象若年者等が安定した職業に就くことができるよう、適切な支援内容の検討をしなければならない。

3 若年者等職業カウンセラーは、個別就業支援計画の作成後、個別就業支援計画の実施状況の把握を行い、必要に応じて個別就業支援計画の変更を行うものとする。

 (職業指導)

第四条 若年者等職業カウンセラーは、個別就業支援計画に基づき、当該個別就業支援計画に係る対象若年者等に対して、適切かつ効果的に職業指導を行うものとする。

2 若年者等職業カウンセラーは、前項の職業指導(以下「職業指導」という。)を行うに当たっては、職業訓練施設、第六条第一項の実習職業訓練を行う事業主その他の関係者との密接な連携に努めなければならない。

3 国は、対象若年者等が安定した職業に就くことを容易にし、及び促進するため、職業指導を受ける対象若年者等に対して、雇用対策法(昭和四十一年法律第百三十二号)の規定に基づき、手当を支給するものとする。

 (職業紹介)

第五条 若年者等職業カウンセラーは、職業指導を受ける対象若年者等について、厚生労働省令で定める基準に照らして次条第一項の実習職業訓練を行う必要があると認めるときは、個別就業支援計画に基づき、当該対象若年者等を第七条第三項の実施計画の認定を受けた事業主に紹介するものとする。

 (実習職業訓練の実施)

第六条 事業主は、次条から第十条までに定めるところにより、当該事業主の行う実習職業訓練の実施計画が対象若年者等の実践的な職業能力の開発及び向上を図るために効果的であることの認定を受けて、当該実習職業訓練を実施することができる。

2 前項の実習職業訓練(以下「実習職業訓練」という。)とは、事業主が、その雇用する対象若年者等(前条に規定する若年者等職業カウンセラーの紹介により雇い入れた者に限る。)の業務の遂行の過程内において行う職業訓練であって、これにより習得された技能及びこれに関する知識についての評価を行うものをいう。

3 事業主は、前項の評価を行うに当たっては、対象若年者等の有する能力が正当に評価され、その評価が就職活動において適切に利用されることにより対象若年者等の就業が促進されるものとして厚生労働省令で定める基準に従って行わなければならない。

 (実施計画の認定)

第七条 実習職業訓練を実施しようとする事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、実習職業訓練の実施計画(以下「実施計画」という。)を作成し、厚生労働大臣の認定を申請することができる。

2 実施計画には、実習職業訓練に関する次に掲げる事項を記載しなければならない。

 一 期間及び内容

 二 職業能力の評価の方法

 三 訓練を担当する者

 四 その他厚生労働省令で定める事項

3 厚生労働大臣は、第一項の認定の申請があった場合において、その実施計画が対象若年者等の実践的な職業能力の開発及び向上を図るために効果的な実習職業訓練に関する基準として厚生労働省令で定める基準に適合すると認めるときは、その認定をすることができる。

 (実施計画の変更等)

第八条 前条第三項の認定を受けた事業主(以下「認定事業主」という。)は、当該認定に係る実施計画を変更しようとするときは、厚生労働大臣の認定を受けなければならない。

2 厚生労働大臣は、前条第三項の認定に係る実施計画(前項の規定による変更の認定があったときは、その変更後のもの。以下「認定実施計画」という。)が、同条第三項の厚生労働省令で定める基準に適合しなくなったと認めるとき、又は認定事業主が認定実施計画に従って実習職業訓練を実施していないと認めるときは、その認定を取り消すことができる。

3 前条第三項の規定は、第一項の認定について準用する。

 (表示等)

第九条 認定事業主は、認定実施計画に係る実習職業訓練(以下「認定実習職業訓練」という。)を実施するときは、労働者の募集の広告その他の厚生労働省令で定めるもの(次項において「広告等」という。)に、厚生労働省令で定めるところにより、当該認定実習職業訓練が実施計画の認定を受けている旨の表示を付することができる。

2 何人も、前項の規定による場合を除くほか、広告等に同項の表示又はこれと紛らわしい表示を付してはならない。

 (委託募集の特例等)

第十条 承認中小事業主団体の構成員である中小事業主(認定事業主に限る。以下同じ。)が、当該承認中小事業主団体をして認定実習職業訓練を担当する者(以下「訓練担当者」という。)の募集を行わせようとする場合において、当該承認中小事業主団体が、当該募集に従事しようとするときは、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)第三十六条第一項及び第三項の規定は、当該構成員である中小事業主については、適用しない。

2 この条及び次条において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 一 中小事業主 中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善の促進に関する法律(平成三年法律第五十七号)第二条第一項第一号から第三号までに掲げる者をいう。

 二 承認中小事業主団体 事業協同組合、協同組合連合会その他の特別の法律により設立された組合若しくはその連合会であって厚生労働省令で定めるもの又は民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の規定により設立された社団法人で中小事業主を直接又は間接の構成員とするもの(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。以下この号において「事業協同組合等」という。)であって、その構成員である中小事業主に対し、認定実習職業訓練の適切かつ有効な実施を図るための人材確保に関する相談及び援助を行うものとして、当該事業協同組合等の申請に基づき厚生労働大臣がその定める基準により適当であると承認したものをいう。

3 厚生労働大臣は、承認中小事業主団体が前項第二号の相談及び援助を行うものとして適当でなくなったと認めるときは、同号の承認を取り消すことができる。

4 第一項の承認中小事業主団体は、当該募集に従事しようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、募集時期、募集人員、募集地域その他の訓練担当者の募集に関する事項で厚生労働省令で定めるものを厚生労働大臣に届け出なければならない。

5 職業安定法第三十七条第二項の規定は前項の規定による届出があった場合について、同法第五条の三第一項及び第三項、第五条の四、第三十九条、第四十一条第二項、第四十八条の三、第四十八条の四、第五十条第一項及び第二項並びに第五十一条の二の規定は前項の規定による届出をして訓練担当者の募集に従事する者について、同法第四十条の規定は同項の規定による届出をして訓練担当者の募集に従事する者に対する報酬の供与について、同法第五十条第三項及び第四項の規定はこの項において準用する同条第二項に規定する職権を行う場合について準用する。この場合において、同法第三十七条第二項中「労働者の募集を行おうとする者」とあるのは「若年者の職業の安定を図るための特別措置等に関する法律第十条第四項の規定による届出をして同条第一項に規定する訓練担当者の募集に従事しようとする者」と、同法第四十一条第二項中「当該労働者の募集の業務の廃止を命じ、又は期間」とあるのは「期間」と読み替えるものとする。

6 職業安定法第三十六条第二項及び第四十二条の二の規定の適用については、同項中「前項の」とあるのは「被用者以外の者をして若年者の職業の安定を図るための特別措置等に関する法律第十条第一項に規定する訓練担当者の募集に従事させようとする者がその被用者以外の者に与えようとする」と、同条中「第三十九条に規定する募集受託者」とあるのは「若年者の職業の安定を図るための特別措置等に関する法律第十条第四項の規定による届出をして同条第一項に規定する訓練担当者の募集に従事する者」と、「同項に」とあるのは「次項に」とする。

7 厚生労働大臣は、承認中小事業主団体に対し、第二項第二号の相談及び援助の実施状況について報告を求めることができる。

8 第四項及び第五項に定める厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができる。

第十一条 公共職業安定所は、前条第四項の規定による届出をして訓練担当者の募集に従事する承認中小事業主団体に対して、雇用情報及び職業に関する調査研究の成果を提供し、かつ、これらに基づき当該募集の内容又は方法について指導することにより、当該募集の効果的かつ適切な実施の促進に努めなければならない。

 (事業主に対する助成金の支給等)

第十二条 国は、事業主の行う実習職業訓練の振興を図るため、実習職業訓練を行う事業主に対する訓練担当者の人件費その他の実習職業訓練に要する費用に充てるための助成金の支給その他必要な措置を講ずるものとする。

 (若年者等職業カウンセラー)

第十三条 公共職業安定所に、若年者等職業カウンセラーを置く。

2 若年者等職業カウンセラーは、この法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理するほか、対象若年者等の相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行う。

3 若年者等職業カウンセラーは、前項に規定する職務を行うのに必要な熱意及び能力を有する者でなければならない。また、若年者等職業カウンセラーについては、定年退職者その他の高年齢退職者を含む多様な人材が確保されなければならない。

4 若年者等職業カウンセラーは、厚生労働省令で定めるところにより、その資質の向上を図るための研修を受けなければならない。

5 前各項に定めるもののほか、若年者等職業カウンセラーに関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。

 (対象若年者等に関する特例)

第十四条 個別就業支援計画に基づき職業指導を受け、又は実習職業訓練を受けている対象若年者等については、その者が四十歳に達した後においても、その者を対象若年者等とみなしてこの法律の規定を適用する。

 (罰則)

第十五条 第十条第五項において準用する職業安定法第四十一条第二項の規定による業務の停止の命令に違反して、訓練担当者の募集に従事した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

第十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

 一 第十条第四項の規定による届出をしないで、訓練担当者の募集に従事した者

 二 第十条第五項において準用する職業安定法第三十七条第二項の規定による指示に従わなかった者

 三 第十条第五項において準用する職業安定法第三十九条又は第四十条の規定に違反した者

第十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

 一 第九条第二項の規定に違反した者

 二 第十条第五項において準用する職業安定法第五十条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

 三 第十条第五項において準用する職業安定法第五十条第二項の規定による立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の陳述をした者

第十八条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、平成二十年四月一日から施行する。

 (この法律の廃止)

第二条 この法律は、この法律の施行の日から五年以内に廃止するものとする。

 (一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の一部改正)

第三条 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十八年法律第五十号)の一部を次のように改正する。

  第三百十一条の見出し中「及び次世代育成支援対策推進法」を「等」に改め、同条に次の一号を加える。

  三 若年者の職業の安定を図るための特別措置等に関する法律(平成十九年法律第▼▼▼号)第十条第二項第二号


    理 由

 社会経済情勢の変化に伴う雇用に関する状況の変化により、若年者を中心として、安定した職業に就くことが困難な者が多数存在し、かつ、職業能力の開発等の機会の格差が生じていることにかんがみ、若年者等の職業の安定を図るため、個別就業支援計画に基づく職業指導、実習職業訓練の促進等若年者の就業の支援等に関し特別の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   本案施行に要する経費

 本案施行に要する経費としては、平成二十年度において約二百六十億円の見込みである。

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