衆議院

メインへスキップ



第一六六回

参第二号

   救急業務と救急医療との連携協力を強化するための救急制度改革の推進に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条−第四条)

 第二章 基本方針(第五条−第十三条)

 第三章 救急制度改革推進計画(第十四条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、救急隊の出動件数が急増し、救急業務の高度化が求められているとともに、医療制度及び消防組織の改革等により医療機関の集約化と救急業務の広域化が進み傷病者の医療機関への搬送が長距離にわたるおそれが生じているにもかかわらず、救急業務と救急医療が異なる主体によって行われ両者の間の連携協力が十分でないことにかんがみ、救急業務に係る制度等の改革(以下「救急制度改革」という。)について、その基本的な理念及び方針、国の責務その他の基本となる事項を定めることにより、救急制度改革を集中的かつ計画的に推進することを目的とする。

 (基本理念)

第二条 救急制度改革は、救急業務を医学的管理の下に実施する等救急業務と救急医療との連携協力を強化するため、次に掲げる事項の実現を図り、もって傷病者の救命と後遺症の軽減を最大限に達成することを目指すことを基本として行われるものとする。

 一 傷病者の症状その他の状況を医学的見地から判断し、救急用自動車による緊急搬送その他の必要な救急の措置を選択することができる体制を構築すること。

 二 傷病者に対し、必要に応じ、医師による救急医療又は医師の指示に基づく適切な救急救命処置その他の救急処置が行われる体制を構築すること。

 三 傷病者をその症状その他の状況に応じて適切な医療機関に迅速に搬送するために必要な医療機関との連携協力体制を強化すること。

 (国の責務)

第三条 国は、前条に定める基本理念にのっとり、救急制度改革に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

 (地方公共団体の責務)

第四条 地方公共団体は、第二条に定める基本理念にのっとり、救急制度改革の実現のために必要な取組を行う責務を有する。

   第二章 基本方針

 (基本方針)

第五条 救急制度改革は、次条から第十二条までに定める基本方針に基づき、推進されるものとする。

 (救急業務に関する事務の都道府県への移管及び救急本部の設置等)

第六条 救急業務に関する市町村の事務を都道府県に移管するとともに、都道府県に救急本部を置き、医療機関との連携協力に関する機能及び救急隊に対する指揮監督を集中的に行う機能を担わせるものとする。

2 救急本部に、救急医療に関する専門的知識及び経験を有する医師を配置し、医学的見地からの必要な救急の措置の選択及び救急救命処置その他の救急処置に関する指示が常時可能となる体制を整備するものとする。

3 救急本部に救急協議会を置き、都道府県及び市町村の職員、救急医療を提供する病院の医師、診療に関する学識経験者その他の関係者を構成員とし、その合議により、救急業務に関し検証を行い、救急隊員等に対する指導及び教育その他救急業務に関し意見を述べる体制を整備するものとする。

4 前三項に規定するところにより行われる救急業務に関する事務は、市町村の要請に基づいて行われる都道府県との協議により、当該市町村が処理することができるものとする。この場合には、当該都道府県と当該市町村との連携協力体制を整備するものとする。

 (救急医療の提供態勢に関する情報システムの整備)

第七条 医療機関における救急医療を提供する態勢に関する情報を適切かつ迅速に救急本部等に提供するための情報システムを整備するものとする。

 (救急医療用自動車及びヘリコプターを用いた救急医療の提供)

第八条 救急医療に係る高度の医療を提供している病院に、救急医療に必要な機器を装備し、傷病者を搬送し、かつ、その搬送中に医療を行うことができる自動車を配備するとともに、救急本部の要請に応じて当該自動車を用いた救急医療を提供することができる体制を整備するものとする。

2 ヘリコプターを用いた救急医療を提供することができる体制を整備するものとする。この場合における体制は、次のいずれかによることができるものとする。

 一 ヘリコプターを救急本部に配備し救急医療に必要な機器を装備した上で、当該ヘリコプターを用いて傷病者を搬送し、かつ、その搬送中に医療を行うこと。

 二 救急医療に必要な機器を装備したヘリコプターを救急医療に係る高度の医療を提供している病院に配備し、救急本部の要請に応じて当該ヘリコプターを用いて傷病者を搬送し、かつ、その搬送中に医療を行うこと。

 (隣接する都道府県との連携協力)

第九条 隣接する都道府県が救急業務に関し相互に応援するために必要となる連携協力体制を整備するものとする。

 (緊急搬送を必要としない傷病者に対する措置等)

第十条 救急用自動車等による緊急搬送を必要としない傷病者に対し、医療機関を紹介し、又はその医療に関する相談に応ずる体制を整備するとともに、民間が実施する傷病者の搬送業務の利用を促進するものとする。

 (救急本部に配置される医師の養成等)

第十一条 救急医療に係る高度の医療を提供している病院との連携協力により、救急本部に配置される第六条第二項の医師その他の救急業務に携わる同項の医師、救急救命士等の養成及び資質の向上のために必要な体制を整備するものとする。

 (心肺そ生の方法の普及等)

第十二条 心肺そ生の方法を普及し、医療従事者以外の者が安全かつ容易に使用することのできる除細動器の公共施設等への設置を促進し、その他一般国民により救急処置が行われることを促進するものとする。

 (法制上の措置等)

第十三条 政府は、第六条から前条までに定める基本方針に基づく救急制度改革に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

2 前項に定める措置は、救急制度改革の緊要性にかんがみ、この法律の施行後三年以内に講じられなければならない。

3 政府は、第一項に定める措置を講じた後においても、救急業務と救急医療との連携協力の強化に関する地方公共団体の取組が円滑に行われるよう、地方公共団体に対し必要な財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

   第三章 救急制度改革推進計画

第十四条 政府は、救急制度改革に関する施策の集中的かつ計画的な推進を図るため、前条第一項に定める措置についての計画(以下「救急制度改革推進計画」という。)を定めなければならない。

2 政府は、救急制度改革推進計画を作成したときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。

3 前項の規定は、救急制度改革推進計画の変更について準用する。

   附 則

 この法律は、公布の日から施行する。


     理 由

 救急隊の出動件数が急増し、救急業務の高度化が求められているとともに、医療制度及び消防組織の改革等により医療機関の集約化と救急業務の広域化が進み傷病者の医療機関への搬送が長距離にわたるおそれが生じているにもかかわらず、救急業務と救急医療が異なる主体によって行われ両者の間の連携協力が十分でないことにかんがみ、救急制度改革を集中的かつ計画的に推進するため、その基本的な理念及び方針、国の責務その他の基本となる事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.