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第一六六回

参第七号

   教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、質の高い学校教育を実現するためには、高い資質及び能力を有する教育職員(教育職員免許法(昭和二十四年法律第百四十七号)第二条第一項に規定する教育職員をいう。以下同じ。)が学校教育に携わることが不可欠であることにかんがみ、教育職員の免許状(以下単に「免許状」という。)の制度の改革について基本的な理念及び方針を定めることにより、当該改革を推進し、もって日本国教育基本法(平成十九年法律第▼▼▼号)に定める教育の目的の実現に資することを目的とする。

 (改革の基本理念)

第二条 免許状の制度の改革は、教育職員が高度の専門性と豊かな人間性が求められる職業であることを踏まえ、その養成の段階において、教育職員としての使命感を(かん) (改革の実施時期)

第三条 国は、前条の基本理念及び次条から第十条までに定める方針に従って免許状の種類及び授与権者等に係る改革を行い、平成二十二年度末までに、当該改革後の免許状の制度による免許状の授与を開始するものとする。

2 国は、前条の基本理念及び第十一条に定める方針に従って十年ごとの講習の実施及びこれを修了しなかった者の免許状の失効等に係る改革を行い、平成二十一年度からこれを実施するものとする。

 (教諭等の免許状と学校の種類)

第四条 免許状の制度を子どもの発達段階に適切に対応したものとするため、教諭の普通免許状及び特別免許状、養護教諭の普通免許状、助教諭の臨時免許状並びに養護助教諭の臨時免許状は、初等教育諸学校(幼稚園及び小学校をいう。)、中等教育諸学校(中学校、高等学校及び中等教育学校をいう。以下同じ。)及び特別支援学校に区分して設けるものとする。

 (教諭の普通免許状)

第五条 教諭の資質及び能力の向上を図るため、次に掲げる方針に基づき、教諭の普通免許状の制度を改めるものとする。

 一 教諭の普通免許状は、専門免許状及び一般免許状に区分すること。

 二 教諭の専門免許状は、教諭として一般的に必要とされる資質及び能力の基礎の上に、教科指導、生活・進路指導等又は学校経営の各専門分野において、更に研究と修養を積み、資質及び能力を向上させた者に対して授与する免許状とすること。

 三 教諭の専門免許状は、次のイからハまでの要件を満たした者又はその者と同等の資質及び能力を有するかどうかを判定するための教育職員検定に合格した者に授与すること。

  イ 教諭の一般免許状を有すること。

  ロ イの要件を満たした後、教諭の実務その他これに類する教育に関する実務(学校経営についての専門免許状を取得しようとする者については、企業、団体等における組織運営の実務を含む。)に八年以上携わったこと。

  ハ ロの要件を満たした後、取得しようとする専門免許状の分野における高度な資質及び能力を修得するために必要と認められる科目の単位を教職大学院(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第六十五条第二項に規定する専門職大学院であって、教育職員に必要な学識及び能力を培うことを目的とするものをいう。以下同じ。)において取得したこと。

 四 教諭の一般免許状は、教諭として一般的に必要とされる資質及び能力を有する者に対して授与する免許状とすること。

 五 教諭の一般免許状は、修士の学位を有し、かつ、教諭としての職務をつかさどるために必要な資質及び能力を修得するために必要と認められる一年間の教育実習その他の教科及び教職に関する科目の単位を教職大学院その他の大学院若しくは大学において取得した者又はその者と同等の資質及び能力を有するかどうかを判定するための教育職員検定に合格した者に授与すること。

 六 中等教育諸学校の教諭の教科指導についての専門免許状及び一般免許状は、各教科ごとに授与すること。

2 その有する相当の免許状が一般免許状である教諭であって前項第三号ロの要件を満たすものは、専門免許状の授与を受けるように努めなければならないものとする。

3 前項の教諭を任命し、又は雇用する者は、当該教諭に対し専門免許状の授与を受けることができる機会を与えるように努めなければならないものとする。

4 教諭の一般免許状の授与を受けようとする者に対しては、修士の学位及び第一項第五号に規定する科目の単位の取得に係る経済的負担を軽減するための特別の奨学制度を設けるものとする。

 (養護教諭の普通免許状)

第六条 いじめ、不登校等子どもをめぐる多様な問題に対応するため養護教諭が大きな役割を果たすことが期待されている状況にかんがみ、養護教諭の資質及び能力の向上を図るため、次に掲げる方針に基づき、養護教諭の普通免許状の制度を改めるものとする。

 一 養護教諭の普通免許状は、専門免許状及び一般免許状に区分すること。

 二 養護教諭の専門免許状は、養護教諭として一般的に必要とされる資質及び能力の基礎の上に、養護又は学校経営の各専門分野において、更に研究と修養を積み、資質及び能力を向上させた者に対して授与する免許状とすること。

 三 養護教諭の専門免許状の授与は、前条第一項第三号に定める教諭の専門免許状の授与に準じて行うこと。

 四 養護教諭の一般免許状は、養護教諭として一般的に必要とされる資質及び能力を有する者に対して授与する免許状とすること。

 五 養護教諭の一般免許状は、修士の学位を有し、かつ、養護教諭としての職務をつかさどるために必要な資質及び能力を修得するために必要と認められる養護及び教職に関する科目の単位を教職大学院その他の大学院若しくは大学において取得した者又はその者と同等の資質及び能力を有するかどうかを判定するための教育職員検定に合格した者に授与すること。

2 前条第二項の規定は養護教諭について、同条第三項の規定は養護教諭を任命し、又は雇用する者について、同条第四項の規定は養護教諭の一般免許状の授与を受けようとする者について、準用する。この場合において、同条第二項中「前項第三号ロの要件を満たすもの」とあるのは「一般免許状の授与を受けた後養護教諭の実務等に八年以上携わったもの」と、同条第四項中「第一項第五号」とあるのは「次条第一項第五号」と読み替えるものとする。

 (校長及び教頭の資格)

第七条 校長及び教頭は、原則として、相当の教諭又は養護教諭の学校経営についての専門免許状を有する者から任用するものとする。

 (免許状の授与権者)

第八条 普通教育に関し国が最終的な責任を有することにかんがみ、普通免許状は、文部科学大臣が授与するものとする。ただし、特別免許状及び臨時免許状は、都道府県知事が授与するものとする。

 (免許状の取上げ等)

第九条 教育職員が、法令の規定に故意に違反し、又は教育職員たるにふさわしくない非行があって、その情状が重いと認められるときに、免許状を授与した者がその免許状を取り上げることができる制度を設けるものとする。

2 公立学校の教育職員が地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第二十八条第一項第一号又は第三号に該当するとして分限免職の処分を受けたときに、その免許状が失効する制度を設けるものとする。

3 国立学校又は私立学校の教育職員が前項に規定する者の場合における地方公務員法第二十八条第一項第一号又は第三号に掲げる分限免職の事由に相当する事由により解雇されたと認められるときに、免許状を授与した者がその免許状を取り上げる制度を設けるものとする。

 (移行に関する措置)

第十条 第四条から前条までに定める方針に従って行われる免許状の制度の改革前の免許状の制度(以下「旧制度」という。)から当該改革後の免許状の制度(以下「新制度」という。)への移行に関し、次に掲げる方針に基づき、経過措置を設けるものとする。

 一 旧制度の免許状の授与は、平成二十三年度末までとすること。

 二 旧制度の免許状を有する者は、当分の間、当該免許状をもって教育職員となることができるものとすること。

 三 旧制度の免許状を有する者が、教育職員検定に合格した場合に新制度の免許状の授与を受けることができる制度を設けること。

 四 教育職員でその有する相当の免許状が旧制度の免許状であるものは、新制度の免許状の授与を受けるように努めなければならないものとするとともに、その者を任命し、又は雇用する者は、その者が新制度の免許状の授与を受けることができる機会を与えるように努めなければならないものとすること。

 (十年ごとの講習の実施及びこれを修了しなかった者の免許状の失効等)

第十一条 普通免許状(専門免許状を除く。)及び特別免許状については、次に掲げる方針に基づき、定期的に教育職員として必要な資質及び能力の向上を図るための制度を設けるものとする。

 一 免許状は、原則として、十年ごとに、当該免許状を有する教育職員として特に必要とされる知識及び技能に関する講習、模擬授業を中心とする演習等からなるおおむね百時間の講習を受講した上その修了の認定を受けない場合には、失効するものとすること。

 二 前号の講習の修了の認定を受けないことによりその有する免許状が失効した者は、当該失効の後当該講習を受講した上その修了の認定を受けた場合には、新たな免許状の授与を受けることができるものとすること。

   附 則

 この法律は、日本国教育基本法の施行の日から施行する。


     理 由

 質の高い学校教育を実現するためには、高い資質及び能力を有する教育職員が学校教育に携わることが不可欠であることにかんがみ、日本国教育基本法に定める教育の目的の実現に資するため、教育職員の免許状の制度の改革について基本的な理念及び方針を定めることにより、当該改革を推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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