衆議院

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第一六六回

衆第二五号

   公的年金制度に対する国民の信頼の回復を図るための年金個人情報関係調査の実施等に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、社会保険庁による年金個人情報の管理の実態、すべての年金個人情報が過去又は現在の事実と合致しているかどうか等に関する調査の適切な実施等のために必要な事項を定め、もって公的年金制度に対する国民の信頼の回復を図ることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「年金個人情報」とは、保険料の納付に係る情報等の厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第二十八条に規定する原簿又は国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)第十四条に規定する国民年金原簿に記録する個人情報その他政府が管掌する厚生年金保険事業又は国民年金事業の運営に当たって社会保険庁が保有する個人情報をいう。

2 この法律において「年金給付」とは、厚生年金保険法又は国民年金法による給付その他これらの給付に類するものとして政令で定めるものをいう。

3 この法律において「基礎年金番号」とは、政府が管掌する厚生年金保険事業及び国民年金事業の運営に関する事務その他当該事業に関連する事務であって厚生労働省令で定めるものを遂行するために用いる記号及び番号であって厚生労働省令で定めるものをいう。

 (年金個人情報関係調査の実施)

第三条 厚生労働大臣は、年金給付が適正に行われることを確保するため、次に掲げる事項に関する調査(以下「年金個人情報関係調査」という。)を行うものとする。

 一 社会保険庁による年金個人情報の管理の実態

 二 すべての年金個人情報が過去又は現在の事実と合致しているかどうか及び合致していない場合にはその内容(社会保険庁が年金個人情報として保有すべきであるにもかかわらず保有していない年金給付に関する過去又は現在の事実に係る情報があるかどうか及びこれがある場合には当該情報の内容を含む。)

 三 年金個人情報のうち基礎年金番号を用いての把握がされていないものの有無

 四 社会保険庁が年金個人情報を不適切に管理していたこと又は年金個人情報のうち基礎年金番号を用いての把握がされていないものがあることに起因した年金給付に関する不適正な取扱いのすべての事例

 (社会保険庁長官に対する報告の徴収等)

第四条 厚生労働大臣は、年金個人情報関係調査の実施に当たっては、社会保険庁長官に対し、報告若しくは資料その他の物件の提出を命じ、又はその指名する職員をして、社会保険庁の職員に対し質問をさせ、若しくは物件の提出を求めさせ、これらの者が提出した物件を留め置かせ、若しくは検証を行わせるものとする。

 (関係行政機関の長等の協力)

第五条 厚生労働大臣は、年金個人情報関係調査の実施に当たって必要があると認めるときは、関係行政機関及び関係地方公共団体の長並びに年金個人情報に係る本人その他の者に対し、資料又は情報の提供その他必要な協力を求めることができる。

2 年金個人情報に係る本人その他の者は、前項の規定により協力を求められたときは、その求めに応ずるよう努めるものとする。

 (報告書の作成等)

第六条 厚生労働大臣は、年金個人情報関係調査を終了したときは、その結果について報告書を作成し、これを国会に提出するとともに、公表しなければならない。

 (省令への委任)

第七条 第三条から前条までに定めるもののほか、年金個人情報関係調査の実施に関して必要な事項は、厚生労働省令で定める。

 (年金個人情報を事実と合致させるための措置等)

第八条 厚生労働大臣又は社会保険庁長官は、年金個人情報関係調査の結果及び第十条第二項第四号の規定により年金個人情報関係調査監視委員会が申し出た意見の内容を踏まえ、次に掲げる措置を講ずるものとする。

 一 年金個人情報のうち過去又は現在の事実と合致しないことが明らかになったものを当該事実と合致させるための措置その他当該事実に基づき年金給付が適正に行われることを確保するために必要な措置(社会保険庁が年金個人情報として保有すべきであるにもかかわらず保有していない年金給付に関する過去又は現在の事実に係る情報があることが明らかになった場合における当該情報を社会保険庁が年金個人情報として保有するために必要な措置を含む。)

 二 年金個人情報関係調査を実施してもなお当該本人に係る年金給付に関する過去又は現在の事実が明らかにならない者に係る適当な措置

 三 平成九年一月一日前に政府が管掌する厚生年金保険事業及び国民年金事業の運営に関する事務その他当該事業に関連する事務であって厚生労働省令で定めるものを遂行するために用いた記号及び番号であって厚生労働省令で定めるものに係る年金個人情報に関する記録を基礎年金番号に係る年金個人情報に関する記録に統合することその他基礎年金番号を用いて年金個人情報が把握されるようにするために必要な措置

2 前項各号に掲げる措置の実施に関し特別の措置を必要とするときは、別に法律で定めるものとする。

 (年金個人情報関係調査監視委員会の設置)

第九条 厚生労働省に、年金個人情報関係調査監視委員会(以下「委員会」という。)を置く。

 (権限)

第十条 委員会は、年金個人情報関係調査の実施状況を監視する。

2 委員会は、前項に規定するもののほか、次に掲げる事項に関し、厚生労働大臣の諮問に応じて調査審議し、及び必要と認める意見を厚生労働大臣に申し出ることができる。

 一 年金個人情報関係調査の方法に関する事項

 二 第六条の報告書の作成等に関する事項

 三 年金個人情報の管理に関する事項

 四 第八条第一項各号に掲げる措置に関する事項

3 委員会は、前二項に規定するもののほか、社会保険庁長官に対し、年金個人情報を不適切に管理していた社会保険庁の職員に対する懲戒処分を行うべきことを勧告することができる。

 (組織)

第十一条 委員会は、委員五人をもって組織する。

2 委員は、非常勤とすることができる。

 (委員の任命)

第十二条 委員は、人格が高潔であり、過去に厚生労働省の職員(中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律の整備等に関する法律(平成十一年法律第百二号)第四条第六号の規定による廃止前の厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)に基づき設置された厚生省の職員であった者を含む。)となったことがない者であって、公的年金制度その他の社会保険制度又は情報技術に関して優れた識見を有するもののうちから、両議院の同意を得て、厚生労働大臣が任命する。

2 委員に欠員が生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、厚生労働大臣は、前項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、委員を任命することができる。

3 前項の場合においては、任命後最初の国会において両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認を得られないときは、厚生労働大臣は、直ちにその委員を罷免しなければならない。

 (委員の罷免)

第十三条 厚生労働大臣は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、両議院の同意を得て、これを罷免することができる。

 (委員の服務)

第十四条 委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職務を退いた後も、同様とする。

2 委員は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。

3 常勤の委員は、在任中、厚生労働大臣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行ってはならない。

 (委員の給与)

第十五条 委員の給与は、別に法律で定める。

 (委員長)

第十六条 委員会に委員長を置き、委員の互選によって委員のうちからこれを定める。

2 委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。

3 委員長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。

 (会議)

第十七条 委員会は、委員長が招集する。

2 委員会は、委員長及び二人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。

3 委員会の議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。

4 委員長に事故がある場合の第二項の規定の適用については、前条第三項の規定により委員長の職務を代理する委員は、委員長とみなす。

5 委員会の会議は、公開する。

 (事務局)

第十八条 委員会の事務を処理させるため、委員会に事務局を置く。

2 事務局に、事務局長その他の職員を置く。

3 事務局長は、委員長の命を受けて、局務を掌理する。

 (政令への委任)

第十九条 この法律に定めるもののほか、委員会に関し必要な事項は、政令で定める。

 (罰則)

第二十条 第十四条第一項の規定に違反して秘密を漏らした者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、平成十九年七月一日から施行する。ただし、第十二条第一項中両議院の同意を得ることに関する部分は、公布の日から施行する。

 (この法律の失効)

第二条 この法律は、歳入庁設置法(平成十九年法律第▼▼▼号)の施行の日に、その効力を失う。

2 年金個人情報を事実と合致させるための措置等については、第八条の規定は、前項の規定にかかわらず、同項に規定する日以後も、なおその効力を有する。この場合において、同条第一項中「社会保険庁長官」とあるのは「歳入庁長官」と、同項第一号中「を社会保険庁」とあるのは「を歳入庁」とする。

3 委員であった者がその業務に関して知り得た秘密については、第十四条第一項の規定(同項に係る罰則を含む。)は、第一項の規定にかかわらず、同項に規定する日以後も、なおその効力を有する。

4 この法律の失効前にした行為に対する罰則の適用については、この法律は、第一項の規定にかかわらず、同項に規定する日以後も、なおその効力を有する。

 (厚生労働省設置法の一部改正)

第三条 厚生労働省設置法(平成十一年法律第九十七号)の一部を次のように改正する。

  附則に次の一項を加える。

 4 歳入庁設置法(平成十九年法律第▼▼▼号)が施行されるまでの間、公的年金制度に対する国民の信頼の回復を図るための年金個人情報関係調査の実施等に関する法律(平成十九年法律第▼▼▼号)の定めるところにより厚生労働省に置かれる年金個人情報関係調査監視委員会は、本省に置く。

 (健康保険法等の一部を改正する法律の一部改正)

第四条 健康保険法等の一部を改正する法律(平成十八年法律第八十三号)の一部を次のように改正する。

  附則第百二十八条中厚生労働省設置法附則に一項を加える改正規定を次のように改める。

   附則に次の一項を加える。

  5 第二十九条第三項の規定の適用については、当分の間、同項中「高齢者医療制度関係業務」とあるのは、「高齢者医療制度関係業務、退職者医療関係業務」とする。

 (歳入庁設置法の一部改正)

第五条 歳入庁設置法の一部を次のように改正する。

  附則第十二条のうち厚生労働省設置法附則第三項及び第四項を削る改正規定中「及び第四項」を「から第五項まで」に改める。


     理 由

 公的年金制度に対する国民の信頼の回復を図るため、社会保険庁による年金個人情報の管理の実態、すべての年金個人情報が過去又は現在の事実と合致しているかどうか等に関する調査等を適切に実施する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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