衆議院

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第一六八回

参第六号

   農業者戸別所得補償法案

 (目的)

第一条 この法律は、将来において世界的に食料の供給が不足する事態が予想され、また、食料の安全性に対する国民の関心が高まる中で、食料の相当部分を輸入に依存する我が国においては、食料の安定的な供給及び安全性の確保の観点から食料の国内生産の確保が緊要な課題であることにかんがみ、農業者戸別所得補償金(第四条第一項の交付金及び第八条の交付金をいう。)を交付することにより、食料の国内生産の確保及び農業者の経営の安定を図り、もって食料自給率の向上並びに地域社会の維持及び活性化その他の農業の有する多面的機能の確保に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「主要農産物」とは、米、麦、大豆その他前条の目的の達成に資するものとして政令で定める農産物をいう。

 (生産数量の目標)

第三条 国、都道府県及び市町村は、政令で定めるところにより、毎年、農業者の意向を踏まえ、相互に連携して、それぞれ、主要農産物の種類ごとに生産数量の目標を設定するものとする。

2 国、都道府県及び市町村は、前項の生産数量の目標(以下「生産数量の目標」という。)を設定したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

3 国、都道府県及び市町村は、生産数量の目標を設定したときは、その達成に努めなければならない。

 (販売農業者の所得を補償するための交付金の交付)

第四条 国は、毎年度、予算の範囲内において、生産数量の目標に従って主要農産物を生産する販売農業者(販売に供する目的で農産物を生産する農業者として政令で定めるもの並びに農業生産活動を共同して行う農業者の組織及び委託を受けて農作業を行う組織のうち政令で定めるものをいう。以下同じ。)に対し、その所得を補償するための交付金を交付するものとする。

2 前項の交付金の額は、主要農産物の種類別の面積単価(農林水産大臣が主要農産物の種類別の標準的な販売価格と標準的な生産費との差額を基本としてその需要及び供給の動向を考慮して定める面積当たりの単価をいう。以下同じ。)に販売農業者のその年度における当該主要農産物の生産面積(生産数量の目標に従って定められた生産量のうち販売に供されるものとして農林水産省令で定めるところにより算定した部分を農林水産省令で定めるところにより面積に換算したものをいう。)を乗じて得た金額とする。この場合において、交付金の額の算定については、政令で定めるところにより、当該主要農産物の品質、その生産に係る経営規模の拡大及び環境の保全に資する度合並びに米に代わる農産物の生産の要素を加味するものとする。

3 農林水産大臣は、面積単価を定めたときは、遅滞なく、これを告示しなければならない。

 (交付金の交付の申請等)

第五条 前条第一項の交付金の交付を受けようとする者は、農林水産省令で定めるところにより、農林水産大臣に交付の申請をしなければならない。

2 前項に定めるもののほか、前条第一項の交付金の交付に関し必要な事項は、農林水産省令で定める。

 (交付金の返還)

第六条 偽りその他不正の手段により第四条第一項の交付金の交付を受けた者があるときは、農林水産大臣は、その者に対してその交付を受けた交付金の全部又は一部の返還を命ずることができる。

2 前項の規定により返還を命ぜられた金額を納付しない者があるときは、農林水産大臣は、期限を指定してこれを督促しなければならない。

3 前項の規定による督促を受けた者がその指定期限までに第一項の規定により返還を命ぜられた金額を納付しないときは、農林水産大臣は、国税滞納処分の例によりこれを処分することができる。

4 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

 (報告及び検査)

第七条 農林水産大臣は、この法律の施行に必要な限度において、第四条第一項の交付金の交付を受け、若しくは受けようとする者若しくはこれらの者からその生産した農産物の加工若しくは販売の委託を受け若しくは当該農産物の売渡しを受けた者に対し、必要な事項の報告を求め、又はその職員に、これらの者の事務所その他の事業場に立ち入り、帳簿その他の物件を検査させることができる。

2 前項の規定により職員が立入検査をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 (農業の生産条件の格差を是正するための交付金の交付)

第八条 国は、毎年度、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、山間地及びその周辺の地域その他の地勢等の地理的条件が悪く、農業の生産条件の不利な地域における生産条件とそれ以外の地域における生産条件の格差を是正するための交付金の財源に充てるため、地方公共団体に対し、交付金を交付するものとする。

 (罰則)

第九条 偽りその他不正の手段により第四条第一項の交付金の交付を受けた者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。ただし、刑法(明治四十年法律第四十五号)に正条があるときは、刑法による。

第十条 第七条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、三十万円以下の罰金に処する。

第十一条 法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

2 法人でない団体について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人が、その訴訟行為につき法人でない団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、平成二十一年四月一日から施行する。ただし、附則第三条及び第四条の規定は、公布の日から施行する。

 (農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の廃止)

第二条 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律(平成十八年法律第八十八号)は、廃止する。

 (生産数量の目標に関する経過措置)

第三条 国、都道府県及び市町村は、この法律の施行前においても、第三条第一項及び第二項の規定の例により、生産数量の目標を設定し、これを公表することができる。

2 前項の規定により設定された生産数量の目標は、この法律の施行の日において第三条第一項の規定により設定されたものとみなす。

 (面積単価に関する経過措置)

第四条 農林水産大臣は、この法律の施行前においても、第四条第二項及び第三項の規定の例により、面積単価を定め、これを告示することができる。

2 前項の規定により定められた面積単価は、この法律の施行の日において第四条第二項の規定により定められたものとみなす。

 (関係法律の整備等)

第五条 前三条に規定するもののほか、この法律の施行に伴い必要な関係法律の整備その他必要な事項については、別に法律で定める。


     理 由

 将来において世界的に食料の供給が不足する事態が予想され、また、食料の安全性に対する国民の関心が高まる中で、食料の相当部分を輸入に依存する我が国においては、食料の安定的な供給及び安全性の確保の観点から食料の国内生産の確保が緊要な課題であることにかんがみ、食料の国内生産の確保及び農業者の経営の安定を図り、もって食料自給率の向上並びに地域社会の維持及び活性化その他の農業の有する多面的機能の確保に資するため、農業者戸別所得補償金を交付する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   この法律の施行に伴い必要となる経費

 この法律の施行に伴い必要となる経費は、平年度約一兆円の見込みである。

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