第一六九回
参第一八号
学校安全対策基本法案
目次
第一章 総則(第一条−第六条)
第二章 学校安全対策推進基本計画等(第七条・第八条)
第三章 学校安全対策の推進に関する基本的施策(第九条−第二十二条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、学校安全対策を推進することが緊要な課題となっていることにかんがみ、学校安全対策に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及び学校の設置者の責務を明らかにするとともに、学校安全対策の推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、学校安全対策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「学校」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校並びに同法第百二十四条に規定する専修学校及び同法第百三十四条第一項に規定する各種学校のうち同法第一条に規定する学校の課程に類する課程を置くものをいう。
2 この法律において「児童生徒等」とは、学校に在学する幼児、児童、生徒及び学生をいう。
3 この法律において「学校安全に係る被害」とは、児童生徒等が授業を受けているとき、課外指導を受けているとき、通学するときその他の学校の管理下にあるときに次に掲げる事由が生じたことにより、当該児童生徒等がその心身に受ける被害をいう。
一 地震、暴風、洪水、噴火、大規模な火災その他の災害
二 実験又は実習における事故、交通事故、水泳事故、転落事故、火事、爆発その他の事故
三 故意の犯罪行為
四 学校の施設又は設備からの人の健康に有害な物質の発生
4 この法律において「学校安全対策」とは、次に掲げる措置をいう。
一 学校安全に係る被害の発生を未然に防止するための措置
二 学校安全に係る被害が発生した場合において、その拡大を防止するための措置
三 学校安全に係る被害又は前項各号に掲げる事由に係る学校の施設若しくは設備の損壊その他使用上の支障(以下「学校安全に係る被害等」という。)が発生した後において、児童生徒等の通常の学校生活を回復するための措置
四 学校安全に係る被害を救済するための措置
(基本理念)
第三条 学校安全対策は、児童生徒等が学校安全に係る被害に脅かされることなく学校教育を受けられることが学校教育の目的を達成する上での前提であるとの基本的認識の下に、万全を期して行われなければならない。
2 学校安全対策は、学校安全に係る被害の発生を未然に防止することを基本とし、かつ、学校安全に係る被害が発生した場合におけるその拡大の防止、学校安全に係る被害等が発生した後における児童生徒等の通常の学校生活の回復及び学校安全に係る被害の救済が適切に図られるよう、総合的に行われなければならない。
3 学校安全対策の実施に当たっては、学校、関係行政機関、児童生徒等の保護者、地域住民その他の多様な主体の連携が確保されるようにするほか、地域の特性、学校の規模、教職員の体制その他の学校の実情並びに児童生徒等の年齢及び心身の状況について適切な配慮が加えられるとともに、障がいを有する児童生徒等について合理的な配慮が加えられなければならない。
(国及び地方公共団体の責務)
第四条 国及び地方公共団体は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、学校安全対策の推進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
(学校の設置者の責務)
第五条 学校の設置者は、基本理念にのっとり、その設置する学校における学校安全対策を実施する責務を有する。
(財政上の措置等)
第六条 政府は、学校安全対策の推進に関する施策を実施するため必要な財政上又は法制上の措置その他の措置を講じなければならない。
第二章 学校安全対策推進基本計画等
(学校安全対策推進基本計画)
第七条 政府は、学校安全対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、学校安全対策の推進に関する基本的な計画(以下「学校安全対策推進基本計画」という。)を策定しなければならない。
2 政府は、学校安全対策推進基本計画を策定したときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。
3 前項の規定は、学校安全対策推進基本計画の変更について準用する。
(都道府県学校安全対策推進計画等)
第八条 都道府県は、学校安全対策推進基本計画を勘案して、当該都道府県の区域における学校安全対策の推進に関する施策についての計画(以下「都道府県学校安全対策推進計画」という。)を策定するよう努めなければならない。
2 市町村は、学校安全対策推進基本計画(都道府県学校安全対策推進計画が策定されているときは、学校安全対策推進基本計画及び都道府県学校安全対策推進計画)を勘案して、当該市町村の区域における学校安全対策の推進に関する施策についての計画(以下「市町村学校安全対策推進計画」という。)を策定するよう努めなければならない。
3 都道府県又は市町村は、都道府県学校安全対策推進計画又は市町村学校安全対策推進計画を策定したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
4 前項の規定は、都道府県学校安全対策推進計画又は市町村学校安全対策推進計画の変更について準用する。
第三章 学校安全対策の推進に関する基本的施策
(学校における計画の策定等)
第九条 国及び地方公共団体は、学校において学校安全対策が総合的かつ計画的に行われるよう、学校における学校安全対策の実施に関する計画の策定及び当該計画に基づく措置の実施のために必要な施策を講ずるものとする。
(応急措置に関する実施要領の策定及び訓練の実施等)
第十条 国及び地方公共団体は、学校安全に係る被害が発生し、又は発生するおそれがある場合にその発生及び拡大を防止するための情報の収集及び伝達、児童生徒等の避難等の学校における応急措置が的確かつ円滑に行われるよう、応急措置に関する実施要領の策定及び当該実施要領に基づく訓練の実施その他の取組の実施のために必要な施策を講ずるものとする。
(校務の実施体制の整備)
第十一条 国及び地方公共団体は、学校安全対策に関する校務が的確かつ円滑に行われるよう、学校において専ら学校安全対策に従事する者の配置その他の学校安全対策に関する校務の実施体制の整備のために必要な施策を講ずるものとする。
(学校の施設及び設備の整備)
第十二条 国及び地方公共団体は、学校の施設及び設備について学校安全に係る被害の発生及び拡大を防止するため、点検及び修繕、地震に対する安全性の向上を目的とする改築又は補強、防犯に係る施設及び設備の設置、有害物質の除去等その整備のために必要な施策を講ずるものとする。
(児童生徒等の安全教育及び安全管理)
第十三条 国及び地方公共団体は、学校安全に係る被害の発生及び拡大の防止に関し児童生徒等が的確に行動することができるよう、学校における交通安全教室、防犯教室等児童生徒等に対する安全教育及び学校生活で守るべき事項の設定、通学路の選定、必要な物品の配布等児童生徒等の安全管理の実施のために必要な施策を講ずるものとする。
(通学に係る諸条件の整備)
第十四条 国及び地方公共団体は、児童生徒等が通学するときにおける学校安全に係る被害の発生及び拡大を防止するため、通学路における交通安全施設、防犯に係る施設及び設備等の整備、通学する児童生徒等を運送するための自動車の運行その他の諸条件の整備のために必要な施策を講ずるものとする。
(危険箇所に関する情報の把握及び活用)
第十五条 国及び地方公共団体は、学校安全に係る被害の発生及び拡大の的確な防止に資するよう、学校安全に係る被害が発生するおそれがある箇所に関する情報が、学校において把握され、及び児童生徒等に周知される等児童生徒等の安全管理に利用されるために必要な施策を講ずるとともに、当該情報を踏まえて学校の施設及び設備の整備、通学に係る諸条件の整備等が行われるために必要な施策を講ずるものとする。
(地域における取組等の推進)
第十六条 国及び地方公共団体は、児童生徒等の保護者、地域住民等と学校及び関係行政機関との連携及び協力の下に行われる学校安全に係る被害の発生及び拡大の防止に資する取組を推進するために必要な施策を講ずるものとする。
(教育方法の改善)
第十七条 国及び地方公共団体は、学校における教育の実施に伴う学校安全に係る被害の発生及び拡大を防止するため、教育方法の改善のために必要な施策を講ずるものとする。
(通常の学校生活の回復)
第十八条 国及び地方公共団体は、学校安全に係る被害等が発生した後において児童生徒等が通常の学校生活を回復することができるよう、学校の施設及び設備の復旧、児童生徒等に対する心理学的な指導その他の措置の実施のために必要な施策を講ずるものとする。
(学校安全に係る被害の救済)
第十九条 国及び地方公共団体は、学校安全に係る被害に関する共済給付の制度の充実その他の学校安全に係る被害の救済のために必要な施策を講ずるものとする。
(国民の理解の増進)
第二十条 国及び地方公共団体は、広報活動等を通じて、学校安全対策の重要性について国民の理解を深めるよう必要な施策を講ずるものとする。
(研修等)
第二十一条 国及び地方公共団体は、教職員その他の学校安全対策の実施に関係のある者の資質の向上を図るため、研修の実施その他の必要な施策を講ずるものとする。
(調査研究の実施等)
第二十二条 国及び地方公共団体は、学校安全対策に関する調査研究の実施及びその成果の普及のために必要な施策を講ずるものとする。
附 則
この法律は、公布の日から施行する。
理 由
学校安全対策を推進することが緊要な課題となっていることにかんがみ、学校安全対策を総合的かつ計画的に推進するため、学校安全対策に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及び学校の設置者の責務を明らかにするとともに、学校安全対策の推進に関する施策の基本となる事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。