第一七〇回
参第一三号
中小規模の事業者等に対する金融機関の信用の供与等について今次の金融危機に対応して緊急に講ぜられるべき措置に関する法律案
(目的)
第一条 この法律は、今次の世界的規模の深刻な金融危機(以下単に「今次の金融危機」という。)の発生に伴い我が国の経済情勢が急速に悪化している状況において、金融業務の公共性を踏まえ、金融機関の金融仲介機能が十全に発揮されるようにすることが喫緊の課題であることにかんがみ、中小規模の事業者等に対する金融機関の信用の供与等について今次の金融危機に対応して緊急に講ぜられるべき措置を定めることにより、中小規模の事業者の事業活動の円滑な遂行等を図り、もって国民生活と国民経済の安定に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「金融機関」とは、金融機能の強化のための特別措置に関する法律(平成十六年法律第百二十八号)第二条第一項に規定する金融機関等(同項第十三号に掲げるものを除く。)並びに農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第十条第一項第二号及び第三号の事業を行う農業協同組合、水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)第十一条第一項第三号及び第四号の事業を行う漁業協同組合並びに同法第九十三条第一項第一号及び第二号の事業を行う水産加工業協同組合をいう。
2 この法律において「金融検査」とは、銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)その他の金融機関に関する法令の規定に基づき行政庁が行う金融機関に対する検査をいう。
(中小規模の事業者に対する信用の供与についての柔軟な対応)
第三条 金融機関は、中小規模の事業者に対する信用の供与について、中小規模の事業者の経営に対する今次の金融危機の影響の程度、中小規模の事業者の経営の状況、中小規模の事業者の特性等を踏まえ、できる限り柔軟に対応するものとする。
(中小規模の事業者に対する貸付けの条件の変更等)
第四条 金融機関は、当該金融機関から事業資金の貸付けを受けている中小規模の事業者であって今次の金融危機に伴う取引先の倒産による資金繰りの悪化等の事由により当該貸付けに係る債務の返済に支障を生じていると認められるものから、次に掲げる内容の求めがあった場合には、できる限りその求めに応じるものとする。
一 当該貸付けに係る債務の返済期限の延長その他の貸付けの条件の変更を行うこと。
二 当該金融機関が当該事業者の株式又は持分を取得することにより、当該貸付けに係る債務を消滅させること。
(住宅資金の貸付けを受けている者に対する貸付けの条件の変更)
第五条 金融機関は、当該金融機関から住宅の建設、購入又は改良に必要な資金の貸付けを受けている者であって今次の金融危機に伴う勤務先の倒産、事業規模の縮小等による失業等の事由により当該貸付けに係る債務の返済に支障を生じていると認められるものから、当該貸付けに係る債務の返済期限の延長その他の貸付けの条件の変更を行うことの求めがあった場合には、できる限りその求めに応じるものとする。
(金融検査の方針)
第六条 金融検査は、金融機関の前三条の規定による信用の供与等の実施状況に重点を置いて行われなければならない。
(国会報告)
第七条 政府は、おおむね三月に一回、国会に、金融検査(第三条から第五条までの規定による信用の供与等の実施状況に係る部分に限る。)の結果に関する報告を提出しなければならない。
(金融機関の経営安定のための措置)
第八条 政府は、第三条から第五条までの規定による信用の供与等の実施により金融機関の経営が不安定にならないようにするため、必要な財政上又は金融上の措置その他の措置を講じなければならない。
(信用補完事業の充実のための措置等)
第九条 政府は、中小規模の事業者に対する金融機関の信用の供与の円滑化を図るため、信用保証協会が行う事業の規模の拡大その他の中小規模の事業者に関する信用補完事業の充実に係る財政上の措置を講ずるものとする。
2 政府は、信用保証協会における人的体制の整備その他中小規模の事業者に関する信用補完事業の円滑な実施のために必要な体制の整備に努めるものとする。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(検討)
2 政府は、この法律の施行後一年以内に、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
理 由
今次の世界的規模の深刻な金融危機の発生に伴い我が国の経済情勢が急速に悪化している状況において、金融業務の公共性を踏まえ、金融機関の金融仲介機能が十全に発揮されるようにすることが喫緊の課題であることにかんがみ、中小規模の事業者の事業活動の円滑な遂行等を図り、もって国民生活と国民経済の安定に資するため、中小規模の事業者等に対する金融機関の信用の供与等について今次の金融危機に対応して緊急に講ぜられるべき措置を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。