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第一七一回

参第三号

   戦後強制抑留者に係る問題に関する特別措置法案

目次

 第一章 総則(第一条−第三条)

 第二章 特別給付金の支給(第四条−第十一条)

 第三章 調査等及び平和を祈念するための事業(第十二条・第十三条)

 第四章 体制の整備等(第十四条・第十五条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、戦後強制抑留者が、戦後、酷寒の地において、長期間にわたって劣悪な環境の下で強制抑留され、多大の苦難を強いられたこと、その間において過酷な強制労働に従事させられ、また、それにもかかわらず当該強制労働に対する対価の支払を受けていないこと等の特別の事情にかんがみ、及び戦後強制抑留者に係る強制抑留の実態がいまだ十分に判明していない状況等を踏まえ、戦後強制抑留者の労苦を慰(しや) (定義)

第二条 この法律において「戦後強制抑留者」とは、昭和二十年八月九日以来の戦争の結果、同年九月二日以後ソヴィエト社会主義共和国連邦又はモンゴル人民共和国の地域において強制抑留された者をいう。

 (基本方針)

第三条 政府は、戦後強制抑留者に係る問題について迅速かつ総合的に対応するために必要な措置に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。

2 基本方針は、戦後強制抑留者に係る問題について政府が講ずべき措置に関する基本的な事項その他必要な事項について定めるものとする。

3 政府は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

   第二章 特別給付金の支給

 (特別給付金の支給)

第四条 本邦に帰還した戦後強制抑留者でこの法律の施行の日において日本の国籍を有するものには、特別給付金を支給する。

2 特別給付金の支給を受ける権利の認定は、これを受けようとする者の請求に基づいて、総務大臣が行う。

3 前項の請求は、総務省令で定めるところにより、平成三十年三月三十一日までに行わなければならない。

4 前項の期間内に特別給付金の支給を請求しなかった者には、特別給付金は、支給しない。

 (特別給付金の額等)

第五条 特別給付金の額は、次の表の上欄に掲げる戦後強制抑留者の帰還の時期の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に定める額とし、これを一時金として支給する。

帰   還   の   時   期

特 別 給 付 金 の 額

昭和二十三年十二月三十一日まで

二五〇、〇〇〇円

昭和二十四年一月一日から昭和二十五年十二月三十一日まで

四〇〇、〇〇〇円

昭和二十六年一月一日から昭和二十七年十二月三十一日まで

八〇〇、〇〇〇円

昭和二十八年一月一日から昭和二十九年十二月三十一日まで

一、二〇〇、〇〇〇円

昭和三十年一月一日以降

一、五〇〇、〇〇〇円

 (特別給付金の支給を受ける権利の承継)

第六条 特別給付金の支給を受ける権利を有する者が死亡した場合において、その者がその死亡前に特別給付金の支給の請求をしていなかったときは、その者の相続人は、自己の名で、当該特別給付金の支給を請求することができる。

2 前項の場合において、同順位の相続人が数人あるときは、その一人のした特別給付金の支給の請求は、全員のためにその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした特別給付金の支給を受ける権利の認定は、全員に対してしたものとみなす。

 (異議申立期間)

第七条 特別給付金に関する処分についての異議申立てに関する行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)第四十五条の期間は、その処分の通知を受けた日の翌日から起算して一年以内とする。

2 前項の異議申立てについては、行政不服審査法第四十八条の規定にかかわらず、同法第十四条第三項の規定は、準用しない。

 (譲渡又は担保の禁止)

第八条 特別給付金の支給を受ける権利は、譲渡し、又は担保に供することができない。

 (差押えの禁止)

第九条 特別給付金の支給を受ける権利は、差し押さえることができない。ただし、国税滞納処分(その例による処分を含む。)による場合は、この限りでない。

 (非課税)

第十条 租税その他の公課は、特別給付金を標準として、課することができない。

 (特別給付金の返還)

第十一条 不実の申請その他不正の手段により特別給付金の支給を受けた者があるときは、総務大臣は、その者に対して特別給付金の全部又は一部に相当する金額の返還を命ずることができる。

2 前項の規定により返還を命ぜられた金額を納付しない者があるときは、総務大臣は、期限を指定してこれを督促しなければならない。

3 前項の規定による督促を受けた者がその指定期限までに第一項の規定により返還を命ぜられた金額を納付しないときは、総務大臣は、国税滞納処分の例によりこれを処分することができる。

4 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

   第三章 調査等及び平和を祈念するための事業

 (調査等)

第十二条 政府は、戦後強制抑留者(樺太、千島、北緯三十八度以北の朝鮮又は元の関東州、元の満洲等の中国の地域において、戦後、強制抑留された者であって、戦後強制抑留者と同様の実情にあったものを含む。以下この項、次項及び附則第三条において同じ。)に係る強制抑留の実態を解明するとともに、戦後強制抑留者に関する情報の収集、その特定等を行うために必要な調査を行うものとする。

2 政府は、前項の調査に当たっては、強制抑留下において死亡した戦後強制抑留者が埋葬された場所についても調査を行うとともに、その遺骨(遺留品を含む。)について、収集、本邦への送還、その身元の特定その他の必要な措置を講ずるものとする。

3 政府は、第一項の調査及び前項の措置の実施に当たっては、関係国の理解と協力を得るよう努めるものとする。

 (平和を祈念するための事業)

第十三条 国は、今次の大戦における尊い戦争犠牲を銘記し、かつ、恒久の平和を祈念するため、戦後強制抑留者の労苦について国民の理解を深め、及びその労苦に関する資料の適切な保存等によりその戦争犠牲としての体験の後代の国民への継承を図るほか、本邦に帰還することなく死亡した戦後強制抑留者等に対する追悼の意を表す事業を、他の戦争犠牲による労苦等に係る事業と共に、行うものとする。

   第四章 体制の整備等

 (体制の整備)

第十四条 政府は、基本方針に基づき戦後強制抑留者に係る問題について迅速かつ総合的に対応するため、関係府省相互間の連携協力体制を強化するとともに、地方公共団体、戦後強制抑留者に関する支援等の活動を行う国の内外の民間の団体その他の関係者との連携、当該民間の団体の支援その他必要な体制の整備に努めなければならない。

 (政令及び省令への委任)

第十五条 この法律に定めるもののほか、第十二条の調査等に関し必要な事項は政令で、第二章の規定の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は総務省令で定める。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して二月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (独立行政法人平和祈念事業特別基金による国庫への納付等)

第二条 独立行政法人平和祈念事業特別基金は、百五十億円を超えない範囲内で政令で定める金額を、政令で定めるところにより、この法律の施行後速やかに国庫に納付しなければならない。この場合において、独立行政法人平和祈念事業特別基金は、その納付した金額(独立行政法人平和祈念事業特別基金等に関する法律(昭和六十三年法律第六十六号)附則第七条の規定により既に取り崩した資本金の当該取り崩した額に相当する金額の残額の一部を当該納付に充てたときは、当該充てた金額を差し引いた金額)により、資本金を減少するものとする。

 (検討)

第三条 政府は、戦後強制抑留者で第四条第一項の規定による特別給付金の支給の対象となっていないもの及び戦後強制抑留者の遺族、旧軍人軍属であって年金たる恩給又は旧軍人軍属としての在職に関連する年金たる給付を受ける権利を有しない者、今次の大戦の終戦に伴い本邦以外の地域から引き揚げた者等について労苦に報いる等のための方策に関し検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

 (総務省設置法の一部改正)

第四条 総務省設置法(平成十一年法律第九十一号)の一部を次のように改正する。

  第四条中第八十八号を第八十八号の二とし、第八十七号の次に次の一号を加える。

  八十八 戦後強制抑留者に係る問題に関する特別措置法(平成二十一年法律第▼▼▼号)第四条第一項の規定による特別給付金の支給その他同法に規定する措置に関すること(他の行政機関の所掌に属するものを除く。)。

 (独立行政法人平和祈念事業特別基金等に関する法律の廃止等に関する法律の一部改正)

第五条 独立行政法人平和祈念事業特別基金等に関する法律の廃止等に関する法律(平成十八年法律第百十九号)の一部を次のように改正する。

  附則第五条中総務省設置法第四条の改正規定を次のように改める。

   第四条第八十八号の二を削る。


     理 由

 戦後強制抑留者が、戦後、酷寒の地において、長期間にわたって劣悪な環境の下で強制抑留され、多大の苦難を強いられたこと、その間において過酷な強制労働に従事させられ、また、それにもかかわらず当該強制労働に対する対価の支払を受けていないこと等の特別の事情にかんがみ、及び戦後強制抑留者に係る強制抑留の実態がいまだ十分に判明していない状況等を踏まえ、戦後強制抑留者に係る問題に関し、特別給付金の支給、調査その他の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   この法律の施行に伴い必要となる経費

 この法律の施行に伴い必要となる経費は、約二百五十億円の見込みである。

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