衆議院

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第一七一回

参第二六号

   子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律案

 (趣旨)

第一条 この法律は、子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討並びに当該検討に係る臨時子ども脳死・臓器移植調査会の設置について定めるとともに、適正な移植医療の確保のための検討及び検証等について定めるものとする。

 (子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討)

第二条 脳死した子どもの身体からの移植術に使用されるための臓器の摘出その他子どもに係る臓器の移植に関する制度については、子どもに係る脳死の判定基準、臓器の提供に関し子どもの自己決定及びその親の関与が認められる場合並びに虐待を受けた子どもの身体からの臓器の摘出を防止するために有効な仕組みの在り方を含めて検討が加えられ、必要があると認められるときは、所要の措置が講ぜられるものとする。

2 前項の検討を行うに当たっては、学識経験を有する者による専門的な調査審議が行われるとともに、広く国民の意見が反映されるよう配慮されなければならない。

3 第一項の検討は、児童の権利に関する条約の趣旨を踏まえ、子どもの人権の保障に配慮して行わなければならない。

 (臨時子ども脳死・臓器移植調査会の設置)

第三条 内閣府に、この法律の施行の日から起算して一年を経過する日までの間、臨時子ども脳死・臓器移植調査会(以下「調査会」という。)を置く。

 (所掌事務等)

第四条 調査会は、第二条第二項に規定する調査審議を行い、その結果に基づいて、内閣総理大臣に意見を述べる。

2 内閣総理大臣は、前項の意見を受けたときは、これを国会に報告するものとする。

 (組織)

第五条 調査会は、委員十五人以内で組織する。

 (委員)

第六条 委員は、子どもに係る脳死及び臓器の移植について優れた識見を有する者等の学識経験を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。

2 前項の場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、同項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、委員を任命することができる。

3 前項の場合においては、任命後最初の国会で両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認を得られないときは、内閣総理大臣は、直ちにその委員を罷免しなければならない。

4 内閣総理大臣は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、両議院の同意を得て、これを罷免することができる。

5 委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。

6 委員は、非常勤とする。

 (会長)

第七条 調査会に、会長を置き、委員の互選によりこれを定める。

2 会長は、会務を総理し、調査会を代表する。

3 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。

 (資料提出その他の協力)

第八条 調査会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、国の関係行政機関の長に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。

2 調査会は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。

 (政令への委任)

第九条 第三条から前条までに規定するもののほか、調査会に関し必要な事項は、政令で定める。

 (組織の移植に関する制度等に関する検討)

第十条 死亡した者の身体からの組織の摘出及び当該組織の移植に関する制度、生体からの臓器及び組織の摘出並びに当該臓器及び組織の移植に関する制度並びに移植術に使用されるために摘出された臓器及び組織の研究目的への転用に関する制度については、この法律の施行後一年を目途として検討が加えられ、必要があると認められるときは、所要の措置が講ぜられるものとする。

 (臓器の移植に関する法律の一部改正)

第十一条 臓器の移植に関する法律(平成九年法律第百四号)の一部を次のように改正する。

  第一条中「法律は」の下に「、臓器の移植及びこれに使用されるための臓器の摘出が人間の尊厳の保持及び人権の保障に重大な影響を与える可能性があることにかんがみ」を加える。

  第二条第二項中「提供は」の下に「、本人の十分な理解に基づき」を加える。

  第四条中「対し必要な」を「対し当該移植術がこれを受ける者の生命及び身体の機能に与える影響等について適切な」に改める。

  第六条の次に次の一条を加える。

  (臓器の摘出及び移植術が行われる病院等)

 第六条の二 前条の規定による臓器の摘出及び当該臓器を使用した移植術は、厚生労働省令で定める基準に適合する病院又は診療所において行わなければならない。

  第七条中「前条」を「第六条」に改め、「関する手続」の下に「(以下「検視等」という。)」を加え、「当該手続」を「当該検視等」に改める。

  第十条第二項中「五年間」を「二十年間」に改める。

  第十七条の次に次の二条を加える。

  (移植術を受けた者の健康状態の把握)

 第十七条の二 国は、第六条の規定により死体から摘出された臓器を使用した移植術を受けた者の適切な健康管理に資するため、その者の健康に関する情報に係るデータベースが整備されること等により、その者その他関係者がその者の当該移植術後の健康状態を的確に把握することができるよう必要な措置を講ずるものとする。

  (検証の実施)

 第十七条の三 国は、この法律の規定による臓器の移植に関し、臓器を提供する意思表示の有効性、第六条第二項の脳死した者の身体から臓器の摘出が行われた場合における同項の判定の適正性及び同条第三項の意思表示の有効性、同条の規定により死体から臓器が摘出される前に検視等が行われた場合における当該検視等の適正性、移植術を受けた者に係る当該移植術の必要性及び当該移植術後の健康状態その他必要な事項の調査及び分析を通じて、移植医療の適正な実施を図るための検証を遅滞なく行い、その結果を個人情報の保護に留意しつつ公表するものとする。

  附則第二条第三項中「刑事訴訟法第二百二十九条第一項の検視その他の犯罪捜査に関する手続」を「検視等」に改める。

  附則第四条第二項中「第七条」を「第六条の二」に、「第八条及び第九条」を「第七条から第九条までの規定」に改め、「附則第四条第一項の規定による」と」の下に「、第十七条の二中「第六条」とあるのは「附則第四条第一項」と、第十七条の三中「第六条第二項の脳死した者の身体から臓器の摘出が行われた場合における同項の判定の適正性及び同条第三項の意思表示の有効性、同条」とあるのは「附則第四条第一項」と」を加える。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第一条、第二条、第六条第一項(両議院の同意を得ることに関する部分に限る。)及び第十条の規定並びに第十一条中臓器の移植に関する法律第一条、第二条第二項及び第四条の改正規定は、公布の日から施行する。

 (経過措置)

第二条 第十一条の規定による改正後の臓器の移植に関する法律(以下「新法」という。)第六条の二の規定は、第十一条の規定の施行後に着手した新法第六条若しくは新法附則第四条第一項の規定による臓器の摘出又は当該臓器を使用した移植術について適用する。

第三条 新法第十条第二項の規定(これに係る罰則を含む。)は、第十一条の規定の施行後に着手した臓器の移植に関する法律第六条第二項の判定、同条若しくは同法附則第四条第一項の規定による臓器の摘出又は当該臓器を使用した移植術に関する記録の保存について適用し、第十一条の規定の施行前に着手した当該判定、当該臓器の摘出又は当該臓器を使用した移植術に関する記録の保存については、なお従前の例による。

第四条 第十一条の規定の施行前にした行為及び前条の規定によりなお従前の例によることとされる場合における第十一条の規定の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

第五条 前三条に規定するもののほか、第十一条の規定の施行に伴い必要な経過措置は、厚生労働省令で定める。

 (特別職の職員の給与に関する法律の一部改正)

第六条 特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)の一部を次のように改正する。

  第一条中第五十七号の四の次に次の一号を加える。

  五十七の五 臨時子ども脳死・臓器移植調査会委員

 (内閣府設置法の一部改正)

第七条 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。

  附則第二条に次の一項を加える。

 5 内閣府は、第三条第二項の任務を達成するため、第四条第三項及び前各項に規定する事務のほか、子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律(平成二十一年法律第▼▼▼号)の施行の日から起算して一年を経過する日までの間、脳死した子どもの身体からの移植術に使用されるための臓器の摘出その他子どもに係る臓器の移植に関する制度に関する検討に係る事務の連絡調整に関する事務をつかさどる。

  附則第四条に次の一項を加える。

 3 子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律の施行の日から起算して一年を経過する日までの間、同法の定めるところにより内閣府に置かれる臨時子ども脳死・臓器移植調査会は、本府に置く。


     理 由

 臓器の移植及びこれに使用されるための臓器の摘出が人間の尊厳の保持及び人権の保障に重大な影響を与える可能性があること等にかんがみ、子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討並びに当該検討に係る臨時子ども脳死・臓器移植調査会の設置について定めるとともに、適正な移植医療の確保のための検討及び検証等について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   この法律の施行に伴い必要となる経費

 この法律の施行に伴い必要となる経費は、約一億三千八百万円の見込みである。

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