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第一七一回

参第二号

   租税特別措置の整理及び合理化を推進するための適用実態調査及び正当性の検証等に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条−第六条)

 第二章 適用実態調査及び国会への報告等(第七条−第十一条)

 第三章 会計検査における租税特別措置の実施状況に関する検査(第十二条)

 第四章 事後評価等における正当性の検証の実施等(第十三条・第十四条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、租税特別措置に関し、基本理念を定め、国の責務等を明らかにするとともに、適用実態調査及び正当性の検証等について定めることにより、租税特別措置の整理及び合理化を推進し、もって納税者が納得できる公平で、かつ、透明性の高い税制の確立に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「租税特別措置」とは、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)に規定することにより設けられる国税に関する特例をいう。

2 この法律において「適用実態調査」とは、租税特別措置の適用の実態を明らかにするために、租税特別措置の適用数、その増減収額(租税特別措置の適用により生ずる租税収入の増加額又は減少額をいう。以下同じ。)その他の租税特別措置の適用の実績に関する調査を行い、租税収入の会計年度所属区分に対応して毎会計年度これを集計し、法人税についての納税者の規模及び業種その他の税目に応じて財務省令で定める事項の別による適用数及び増減収額に係る分布の状況に関する統計その他正当性の検証に有用な統計の作成を行うことをいう。

3 この法律において「正当性の検証」とは、租税特別措置の適用の実態を基礎として、租税特別措置について、次に掲げる事項(第八条第一項及び第十条において「正当性に関する事項」という。)を確認することをいう。

 一 行政目的を実現する手段として相当なものであるかどうか。

 二 行政目的を実現するために有効なものであるかどうか。

 三 適用を受ける納税者の過度の偏りその他の適用の実態における合理性を欠く不公平が生じていないかどうか。

4 この法律において「行政機関」、「政策」、「政策評価」、「事前評価」、「事後評価」、「行政機関 の長」及び「政策評価等」の意義は、それぞれ行政機関が行う政策の評価に関する法律(平成十三年法律第八十六号。第十四条第一項及び第二項において「政策評価法」という。)第二条第一項及び第二項、第三条第二項、第五条第二項第四号及び第五号、第六条第一項並びに第十九条に規定する当該用語の意義による。

 (租税特別措置の見直しの必要性及びその在り方)

第三条 租税特別措置については、これが特定の行政目的を実現するための手段であり、税負担の公平の原則(次条において「公平原則」という。)に対する当分の間の例外として設けられているものであることにかんがみ、絶えずその廃止を含めた見直しが行われるものとし、かつ、その見直しは、租税特別措置の適用の実態が明らかにされ、正当性の検証が実施されることにより、行われるものとする。

 (租税特別措置の新設又は変更の在り方)

第四条 租税特別措置の新設又は変更は、これらによる新たな租税特別措置の適用数の見込数、その増減収額の見込額等についてできる限り合理的な推計が行われ、これを基礎として、当該新たな租税特別措置が行政目的を実現する手段として相当なものであるかどうか、行政目的を実現するために有効なものであるかどうか及び公平原則に対する例外として合理的なものであるかどうかが十分に検討された上で、行われるものとする。

 (国の責務)

第五条 国は、前二条に定める基本理念にのっとり、租税特別措置の適用の実態を把握し、及びその正当性の検証を行うとともに、租税特別措置を新設し、又は変更しようとする場合における事前評価の効果的な実施等を図り、租税特別措置の整理及び合理化を推進する責務を有する。

2 国は、租税特別措置の整理及び合理化の推進並びに適用実態調査その他のこの法律に基づく施策について、納税者の理解を得るよう努めなければならない。

 (納税者の責務)

第六条 納税者は、租税特別措置の整理及び合理化の推進の必要性並びに租税特別措置の適用の実態が明らかにされ、正当性の検証が行われることの重要性について理解を深めるよう努めるとともに、適用実態調査その他のこの法律に基づく施策に協力しなければならない。

   第二章 適用実態調査及び国会への報告等

 (適用実態調査の実施)

第七条 財務大臣は、租税特別措置ごとに、適用実態調査を行うものとする。

2 財務大臣は、国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第十六条第一項各号に掲げる方式による税額の確定の手続における申告、調査又は処分の機会を利用して租税特別措置の適用の実績に関する調査を行うことができる。この場合において、財務大臣は、納税申告書(同法第二条第六号に規定する納税申告書をいう。以下この項において同じ。)の提出を行う者に対して、納付すべき税額の算定において適用される租税特別措置に関する増減額明細書(当該適用される租税特別措置について、その内容及びその適用により増加する税額又は軽減若しくは免除される税額を一覧することができるように記載した書類をいう。第四項において同じ。)を作成し、これを納税申告書に添付するよう求めることができる。

3 前項の規定によるほか、財務大臣は、租税特別措置の適用の実績に関する調査のため必要があると認めるときは、その必要な限度において、法令の定めるところにより税務署長に提出される所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第二百二十五条第一項に規定する調書その他の資料を利用し、並びに納税者その他の関係者又は行政機関その他の関係機関に対し資料の提出及び説明を求めることができる。

4 増減額明細書の記載事項及び様式その他適用実態調査の実施細目は、財務省令で定める。

 (適用実態調査の結果の国会への報告)

第八条 財務大臣は、毎会計年度終了後七月以内に、当該会計年度に係る適用実態調査の結果に関し、財務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した報告書を作成し、正当性に関する事項についての意見を付けて、これを国会に提出しなければならない。

 一 租税特別措置ごとの適用数及びその見込数との差

 二 租税特別措置ごとの増減収額及びその見込額との差

 三 租税特別措置ごとに作成した統計

 四 法人税を軽減し、又は免除する租税特別措置(以下この号並びに附則第三条第一項及び第二項において「法人税減免措置」という。)については、法人税減免措置ごとに、その適用を受ける法人税の納税者(法人税減免措置の正当性の検証の実施のために必要なものとして法人税減免措置の内容に応じて財務省令で定める要件に該当するものに限る。)の名称、その適用により軽減又は免除される税額(次項において「減免額」という。)その他財務省令で定める事項

 五 前各号に掲げるもののほか、租税特別措置の適用の実態を明らかにするために必要があるものとして財務省令で定める事項

2 前項第四号の財務省令で定める要件は、少なくとも法人税の納税者の種類、法人税の納税者に係る減免額及びその多い順による順位について定められなければならない。

 (適用実態調査の結果等の提供)

第九条 財務大臣は、会計検査院又は行政機関の長若しくは総務大臣から求めがあったときは、会計検査院が行う租税特別措置の実施状況に関する検査又は租税特別措置を行政目的の実現の手段として用いている政策(以下「租税特別措置を手段とする政策」という。)についての政策評価等に必要な限度において、毎会計年度に係る適用実態調査の結果その他適用実態調査により得られた租税特別措置の適用の実態に関する情報を提供することができる。

 (適用実態調査の結果を踏まえた財務大臣による検討)

第十条 財務大臣は、毎会計年度に係る適用実態調査の結果を踏まえ、租税特別措置ごとに、租税特別措置を手段とする政策に係る事務を所掌する行政機関の長から正当性に関する事項についての意見を聴き、租税特別措置の整理及び合理化について検討を行い、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする。

 (適用実態調査に関する財務大臣の権限の委任等)

第十一条 財務大臣は、第七条第一項から第三項までの規定による権限(輸出入貨物に対する内国税に係るものを除く。)を国税庁長官に委任する。

2 財務大臣は、政令で定めるところにより、第七条第一項から第三項までの規定による権限のうち、輸出入貨物に対する内国税に係るものを税関長に行わせることができる。

   第三章 会計検査における租税特別措置の実施状況に関する検査

第十二条 会計検査院法(昭和二十二年法律第七十三号)第二十条の規定による会計検査においては、租税特別措置の整理及び合理化の推進に資するため、毎年、租税特別措置の実施状況に関する検査が行われるものとする。

2 前項の租税特別措置の実施状況に関する検査については、会計検査院は、会計検査院法第二十九条の検査報告に、その年の検査の方針並びに租税特別措置ごとの検査の対象及び方法、検査の状況及び結果並びに会計検査院の所見を掲記するものとする。

3 第一項の租税特別措置の実施状況に関する検査は、その検査に係る租税特別措置を行政目的の実現の手段として用いている政策に関し補助金の交付その他の財政上の措置又は国の無利子貸付けその他の金融上の措置(以下この項及び第十四条第三項において「補助金の交付等の措置」という。)が併せて講じられている場合には、特に効率性及び有効性の観点から、当該補助金の交付等の措置との関係に留意して行われるものとする。

   第四章 事後評価等における正当性の検証の実施等

 (租税特別措置を手段とする政策についての政策評価の在り方)

第十三条 行政機関は、租税特別措置の整理及び合理化の推進に資するため、その所掌に係る租税特別措置を手段とする政策についての事後評価を継続的に行わなければならない。

2 行政機関は、その所掌に係る租税特別措置を手段とする政策の決定(租税特別措置を手段とする政策における租税特別措置の変更を含む。)をしようとする場合には、第四条に定める基本理念を踏まえ、当該租税特別措置を手段とする政策についての事前評価を効果的に実施するようにしなければならない。

 (事後評価等における正当性の検証の実施)

第十四条 租税特別措置を手段とする政策について行われる事後評価等(事後評価及び政策評価法第十二条第一項又は第二項の規定による評価をいう。)においては、当該租税特別措置の正当性の検証が行われなければならない。

2 前項の正当性の検証については、行政機関の長又は総務大臣は政策評価法第十条第一項の評価書又は政策評価法第十六条第一項の評価書にその結果を、政府は政策評価法第十九条の報告書にその実施状況及びその結果の租税特別措置を手段とする政策への反映状況を、それぞれ記載しなければならない。

3 第一項の正当性の検証は、その対象である租税特別措置を行政目的の実現の手段として用いている政策に関し補助金の交付等の措置が併せて講じられている場合には、当該補助金の交付等の措置との関係に留意して行われなければならない。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。

 (適用区分)

第二条 第二章の規定は、平成二十一年四月一日以後に始まる各会計年度分に係る適用実態調査及び国会への報告等について適用する。

 (平成二十一年度の特例)

第三条 財務大臣は、平成二十一年四月一日に始まる会計年度については、第七条第一項の規定によるほか、同日から同年九月三十日までの間に終了する法人(法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第二条第八号に規定する人格のない社団等を含む。)又は連結法人(同条第十二号の七の四に規定する連結法人をいう。)の事業年度(同法第十三条及び第十四条に規定する事業年度をいう。)又は連結事業年度(同法第十五条の二に規定する連結事業年度をいう。)の法人税に係る法人税減免措置につき、同項の規定の例により、その適用の実績を集計し、統計を作成するものとする。

2 財務大臣は、財務省令で定めるところにより、前項の規定により法人税減免措置ごとに集計した適用数及び減収額(当該法人税減免措置の適用により生ずる租税収入の減少額をいう。)並びに作成した統計を記載した報告書を作成し、平成二十二年一月三十一日までに、これを国会に提出しなければならない。

3 財務大臣は、第一項の規定による権限を国税庁長官に委任する。

 (政令への委任)

第四条 この法律の施行の日が平成二十一年四月一日後となる場合における同日に始まる会計年度分に係る適用実態調査及び国会への報告等についての第二章及び前条の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

 (会計検査院法の一部改正)

第五条 会計検査院法の一部を次のように改正する。

  第二十九条に次の一号を加える。

  九 他の法律により掲記するものと定められた事項

 (財務省設置法の一部改正)

第六条 財務省設置法(平成十一年法律第九十五号)の一部を次のように改正する。

  第四条第十七号の次に次の一号を加える。

  十七の二 内国税の賦課及び徴収の実態の調査及び分析に関すること。

  第十六条第一項に次の一号を加える。

  五 輸出入貨物に対する内国税の賦課及び徴収の実態の調査及び分析に関すること。

  第十九条中「実現」の下に「(その実態の把握を含む。)」を加える。

  第二十条及び第二十三条第三項中「第四条第十七号」の下に「、第十七号の二」を加える。


     理 由

 租税特別措置の整理及び合理化を推進し、もって納税者が納得できる公平で、かつ、透明性の高い税制の確立に寄与するため、租税特別措置に関し、基本理念を定め、国の責務等を明らかにするとともに、適用実態調査及び正当性の検証等について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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