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第一七一回

参第九号

   介護労働者の人材確保に関する特別措置法案

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 優れた人材による質の高い介護サービスを確保するための給付(第三条−第八条)

 第三章 介護労働者の労働条件の改善(第九条・第十条)

 第四章 雑則(第十一条−第十九条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、加齢により心身の機能が低下した場合等に高齢者等が安心して暮らすことのできる社会を実現するために介護労働者が重要な役割を担っていることにかんがみ、現在他の業種に従事する労働者と比較して低い水準にある介護労働者の賃金の向上等に資するよう特別の措置を定めることにより、介護を担う優れた人材を確保し、もって介護サービスの水準の向上を図ることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「介護労働者」とは、身体上又は精神上の障がいがあることにより日常生活を営むのに支障がある者に対して心身の状況に応じた介護、機能訓練、看護及び療養上の管理その他のその者の能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにするために介護事業者が行う次条第二項に規定する福祉サービス又は保健医療サービスの業務に従事する労働者をいう。

2 この法律において「介護事業者」とは、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第四十一条第一項本文の指定居宅サービス事業者、同法第四十二条の二第一項本文の指定地域密着型サービス事業者、同法第四十六条第一項の指定居宅介護支援事業者、同法第八条第二十二項の介護保険施設(以下「介護保険施設」という。)、同法第五十三条第一項本文の指定介護予防サービス事業者、同法第五十四条の二第一項本文の指定地域密着型介護予防サービス事業者及び同法第五十八条第一項の指定介護予防支援事業者をいう。

   第二章 優れた人材による質の高い介護サービスを確保するための給付

 (給付)

第三条 市町村及び特別区は、第一条の目的を達成するため、介護保険事業として、この法律の定めるところにより、優れた人材による質の高い介護サービスを確保するための給付を行うものとする。

2 前項に規定する優れた人材による質の高い介護サービスを確保するための給付は、介護保険法第四十条の介護給付(同条第一号から第四号まで及び第七号から第十号までの保険給付に限る。)又は同法第五十二条の予防給付(同条第一号から第四号まで、第七号及び第八号の保険給付に限る。)に係る福祉サービス又は保健医療サービス(以下単に「福祉サービス又は保健医療サービス」という。)を行った介護事業者に対し当該福祉サービス又は保健医療サービスに基づいて行う加算介護報酬の支給とする。

3 加算介護報酬は、第一条の目的を達成するために支給されるものである趣旨にかんがみ、介護を担う優れた人材を確保することにより質の高い介護サービスを提供するために用いなければならない。

 (加算介護報酬に関する基準等)

第四条 厚生労働大臣は、介護を担う優れた人材が確保されるようにするため、高齢者等が安心して暮らすことのできる社会の実現に介護労働者が重要な役割を担っていること並びに介護労働者が従事する業務が身体的及び精神的負担の大きいものであることを踏まえるとともに、他の業種に従事する労働者の平均的な賃金水準を勘案し、加算介護報酬に関する基準を定めるものとする。

2 厚生労働大臣は、前項の基準を踏まえ、介護事業者が加算介護報酬の支給を受けることに伴い講ずべき介護労働者の賃金の引上げその他の労働条件の改善のための措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るための指針を定め、公表するものとする。

 (届出)

第五条 加算介護報酬の支給を受けようとする介護事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、事業所ごとに、その支給に係る市町村長(特別区にあっては、区長。以下同じ。)に対し、次に掲げる事項を届け出なければならない。

 一 当該事業所における介護労働者の雇用管理の現状

 二 加算介護報酬の支給を受けることに伴い当該事業所において講じようとする介護労働者の賃金の引上げその他の労働条件の改善のための措置の内容

2 前項の介護事業者が介護保険施設である場合においては、同項中「事業所ごとに、その支給」とあるのは「その支給」と、「当該事業所」とあるのは「当該施設」とする。

 (加算介護報酬の支給)

第六条 市町村又は特別区(以下単に「市町村」という。)は、前条の規定による届出をした介護事業者(以下「届出事業者」という。)が、福祉サービス又は保健医療サービスを行ったときは、当該届出事業者に対し、当該福祉サービス又は保健医療サービスに基づき加算介護報酬を支給する。

2 加算介護報酬の額は、第四条第一項の基準により算定した額とする。

3 市町村は、届出事業者から加算介護報酬の請求があったときは、第四条第一項の基準に照らして審査した上、支払うものとする。

4 市町村は、前項の規定による審査及び支払に関する事務を国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第四十五条第五項に規定する国民健康保険団体連合会(以下「連合会」という。)に委託することができる。

5 前項の規定による委託を受けた連合会は、当該委託をした市町村の同意を得て、厚生労働省令で定めるところにより、当該委託を受けた事務の一部を、営利を目的としない法人であって厚生労働省令で定める要件に該当するものに委託することができる。

6 前各項に規定するもののほか、加算介護報酬の支給及び請求に関して必要な事項は、厚生労働省令で定める。

 (費用の負担)

第七条 国は、政令で定めるところにより、市町村に対し、加算介護報酬の支給に要する費用を負担する。

 (介護保険法の準用)

第八条 介護保険法第百七十六条第一項第一号、第百七十七条から第百七十九条まで、第百八十一条及び第百九十八条の規定は、第六条第四項の規定による加算介護報酬の審査及び支払に関する事務の連合会への委託について準用する。この場合において、同法第百七十六条第一項第一号中「第四十一条第十項(第四十二条の二第九項、第四十六条第七項、第四十八条第七項、第五十一条の三第八項、第五十三条第七項、第五十四条の二第九項、第五十八条第七項及び第六十一条の三第八項において準用する場合を含む。)」とあるのは「介護労働者の人材確保に関する特別措置法(平成二十一年法律第▼▼▼号)第六条第四項」と、同法第百七十九条中「第四十一条第十項(第四十二条の二第九項、第四十六条第七項、第四十八条第七項、第五十一条の三第八項、第五十三条第七項、第五十四条の二第九項、第五十八条第七項及び第六十一条の三第八項において準用する場合を含む。)」とあるのは「介護労働者の人材確保に関する特別措置法第六条第四項」と読み替えるものとする。

   第三章 介護労働者の労働条件の改善

第九条 介護事業者(介護事業者が介護保険施設である場合にあっては、その開設者を含む。)は、介護を担う優れた人材を確保することにより質の高い介護サービスを提供することができるよう、介護労働者の賃金の引上げその他の労働条件の改善に努めなければならない。

第十条 加算介護報酬の支給を受けた届出事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、その届出に係る介護労働者の賃金の引上げその他の労働条件の改善のための措置の実施状況を市町村長に報告しなければならない。

2 市町村長は、介護を担う優れた人材を確保するために必要があると認めるときは、加算介護報酬の支給を受けた届出事業者(届出事業者が介護保険施設である場合にあっては、その開設者を含む。次項において同じ。)に対し、第四条第二項の指針を勘案して、介護労働者の賃金の引上げその他の労働条件の改善のための措置について助言又は指導を行うことができる。

3 市町村長は、加算介護報酬の支給を受けた届出事業者が、介護労働者の賃金の引上げその他の労働条件の改善のための措置を講じていないと認める場合には、当該届出事業者に対してその理由を説明するよう求め、正当な理由がないと認めるときは、介護労働者の賃金の引上げその他の労働条件の改善のための措置を講ずべきことを勧告することができる。

   第四章 雑則

 (報告等)

第十一条 市町村長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、その必要な限度で、届出事業者(届出事業者が介護保険施設である場合を除く。以下この項及び次条第一項において同じ。)若しくは届出事業者であった者若しくは当該届出事業者の従業者であった者(以下この項において「届出事業者であった者等」という。)に対し、報告若しくは帳簿書類の提出若しくは提示を命じ、届出事業者若しくは当該届出事業者の従業者若しくは届出事業者であった者等に対し出頭を求め、又は当該職員に関係者に対して質問させ、若しくは届出事業者若しくは届出事業者であった者の事業所、事務所その他加算介護報酬に係る福祉サービス又は保健医療サービスの事業に関係のある場所に立ち入り、その帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

2 前項の規定による質問又は検査を行う場合においては、当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、かつ、関係人の請求があるときは、これを提示しなければならない。

3 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

4 前三項の規定は、第五条の規定による届出をした介護保険施設について準用する。この場合において、必要な技術的読替えは、政令で定める。

 (支給の制限)

第十二条 市町村は、次に掲げる場合においては、届出事業者に係る加算介護報酬の額の全部又は一部を支給しないことができる。

 一 加算介護報酬の請求に関し不正があったとき。

 二 加算介護報酬の支給を受けた届出事業者が、第十条第三項の規定により理由を説明するよう求められてこれに応ぜず、若しくは虚偽の説明をし、又は正当な理由がなく同項の規定による勧告に従わなかったとき。

 三 届出事業者が、前条第一項の規定により報告又は帳簿書類の提出若しくは提示を命ぜられてこれに従わず、又は虚偽の報告をしたとき。

 四 届出事業者又は当該届出事業者の従業者が、前条第一項の規定により出頭を求められてこれに応ぜず、同項の規定による質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。ただし、当該届出事業者の従業者がその行為をした場合において、その行為を防止するため、当該届出事業者が相当の注意及び監督を尽くしたときを除く。

2 前項の規定は、第五条の規定による届出をした介護保険施設について準用する。この場合において、必要な技術的読替えは、政令で定める。

 (不正利得の徴収)

第十三条 市町村は、偽りその他不正の行為により加算介護報酬の支給を受けた者があるときは、その者から、その支払った額につき返還させるべき額を徴収するほか、その返還させるべき額に百分の四十を乗じて得た額を徴収することができる。

 (地方税法の準用)

第十四条 前条の規定による徴収金については、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第九条、第十三条の二、第二十条、第二十条の二及び第二十条の四の規定を準用する。

 (滞納処分)

第十五条 第十三条の規定による徴収金は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百三十一条の三第三項に規定する法律で定める歳入とする。

 (先取特権の順位)

第十六条 第十三条の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

 (時効)

第十七条 加算介護報酬の支給を受ける権利又は第十三条の規定による徴収金を徴収する権利は、二年を経過したときは、時効によって消滅する。

2 第十三条の規定による徴収金の督促は、民法(明治二十九年法律第八十九号)第百五十三条の規定にかかわらず、時効中断の効力を生ずる。

 (審査請求)

第十八条 加算介護報酬の支給に関する処分(第六条第一項及び第十二条第一項第一号(同条第二項において準用する場合を含む。)に係るものに限る。)及び第十三条の規定による徴収金に関する処分に不服がある者は、介護保険法第百八十四条の介護保険審査会に審査請求をすることができる。

2 前項の審査請求については、介護保険法第百八十三条第二項及び第百九十一条から第百九十六条までの規定を準用する。この場合において、同条中「第百八十三条第一項」とあるのは、「介護労働者の人材確保に関する特別措置法第十八条第一項」と読み替えるものとする。

 (実施規定)

第十九条 この法律に特別の規定があるものを除くほか、この法律の実施のための手続その他その執行について必要な細則は、厚生労働省令で定める。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (この法律の廃止)

第二条 この法律は、介護保険制度について見直しが行われ、介護を担う優れた人材の確保に支障がなくなったときは、廃止するものとする。

 (適用)

第三条 第六条第一項の規定は、この法律の施行の日から起算して一月以内に第五条の規定による届出をした介護事業者については、平成二十一年四月一日から当該届出をするまでの間に当該介護事業者が行った福祉サービス又は保健医療サービスについても適用する。この場合において、当該福祉サービス又は保健医療サービスに基づく加算介護報酬の支給に要する費用についても、第七条の規定の適用があるものとする。

 (地方財政法の一部改正)

第四条 地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)の一部を次のように改正する。

  第十条第十三号中「経費」の下に「並びに優れた人材による質の高い介護サービスを確保するための給付に要する経費」を加える。


     理 由

 加齢により心身の機能が低下した場合等に高齢者等が安心して暮らすことのできる社会を実現するために介護労働者が重要な役割を担っていることにかんがみ、介護を担う優れた人材を確保し、もって介護サービスの水準の向上を図るため、現在他の業種に従事する労働者と比較して低い水準にある介護労働者の賃金の向上等に資するよう特別の措置を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   この法律の施行に伴い必要となる経費

 この法律の施行に伴い、加算介護報酬の支給に要する費用として必要となる経費は、平成二十一年度において約四千百億円の見込みである。

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