衆議院

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第一七四回

参第一一号

   口蹄疫対策特別措置法案

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 口蹄疫のまん延の防止のための特別の措置(第三条−第十二条)

 第三章 家畜の生産者等の経営と生活の安定のための措置(第十三条)

 第四章 雑則(第十四条−第二十一条)

 第五章 罰則(第二十二条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、最近における口蹄疫に係る被害が深刻な状況にあり、これに対処することが緊急の課題となっていることにかんがみ、口蹄疫のまん延の防止のための特別の措置、家畜の生産者等の経営と生活の安定のための措置等について定め、もって家畜の生産、食肉、牛乳及び乳製品に係る製造、加工、流通及び販売の事業、飲食店営業等の健全な発展を図ることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「患畜」及び「疑似患畜」の意義は、それぞれ家畜伝染病予防法(昭和二十六年法律第百六十六号)第二条第二項に規定する当該用語の意義による。

   第二章 口蹄疫のまん延の防止のための特別の措置

 (指定区域内の車両その他の物品等の消毒)

第三条 都道府県知事が指定する区域(次項において「指定区域」という。)内に所在する車両その他の物品の所有者は、都道府県の職員で都道府県知事が指定するもの又は都道府県知事から委託を受けた者が農林水産省令で定める基準に基づいて口蹄疫のまん延を防止するために行う要請に従い、当該物品を消毒しなければならない。

2 指定区域内にある者は、都道府県の職員で都道府県知事が指定するもの又は都道府県知事から委託を受けた者が農林水産省令で定める基準に基づいて口蹄疫のまん延を防止するために行う要請に従い、自らその身体を消毒しなければならない。

 (特定地域内に所在する対象家畜の殺処分)

第四条 農林水産大臣は、口蹄疫が著しくまん延し、家畜伝染病予防法の規定に基づく措置のみによってはこれに十分に対処することができないと認めるときは、特定地域(口蹄疫のまん延を防止するためその地域内に所在する対象家畜(農林水産大臣が指定する種類の家畜をいい、口蹄疫の患畜及び疑似患畜となっているものを除く。以下同じ。)の全頭を殺すことが必要な地域として農林水産大臣が指定する地域をいう。)内における対象家畜の所有者に期限を定めて当該対象家畜を殺すべき旨を命ずることができる。

2 対象家畜の所有者若しくはその所在が知れないため前項の命令をすることができない場合において緊急の必要があるとき又は同項の期限までに対象家畜の所有者が対象家畜を殺さなかった場合は、農林水産大臣は、その指定する国の職員に当該対象家畜を殺させることができる。

3 農林水産大臣が指定する国の職員は、第一項の命令に係る対象家畜につき、殺す場所又は殺す方法を指示することができる。

 (補償)

第五条 国は、前条第一項又は第二項の処分によって損失を受けた対象家畜の所有者(同条第一項の規定により殺すべき旨を命ぜられた対象家畜については、その命令のあったときにおける当該対象家畜の所有者をいう。次項において同じ。)に対し、対象家畜の生産に要する費用その他の通常生ずべき損失として政令で定める損失を補償しなければならない。

2 国は、前項の規定による補償金については、対象家畜の所有者が迅速にその交付を受けることができるよう、対象家畜の所有者からの請求を待たずに仮払をする方法その他の政令で定める方法により交付するものとする。

 (対象家畜の死体の焼却等)

第六条 対象家畜の死体の所有者は、農林水産大臣が指定する国の職員又は家畜防疫員が農林水産省令で定める基準に基づいてする指示に従い、遅滞なく、当該死体を焼却し、又は埋却しなければならない。ただし、病性鑑定又は学術研究の用に供するため農林水産大臣又は都道府県知事の許可を受けた場合その他政令で定める場合は、この限りでない。

2 前項の死体は、同項ただし書の場合を除き、同項の指示があるまでは、当該死体を焼却し、又は埋却してはならない。

3 第一項の規定により焼却し、又は埋却しなければならない死体は、農林水産大臣が指定する国の職員又は家畜防疫員の許可を受けなければ、他の場所に移し、損傷し、又は解体してはならない。

4 農林水産大臣が指定する国の職員又は家畜防疫員は、第一項ただし書の場合を除き、口蹄疫のまん延を防止するため緊急の必要があるときは、同項の対象家畜の死体について、同項の指示に代えて、自らこれを焼却し、又は埋却することができる。

5 第一項又は前項の規定により対象家畜の死体を焼却し、又は埋却する場合及び第三項の許可を受けて家畜の死体を解体する場合には、化製場等に関する法律(昭和二十三年法律第百四十号)第二条第二項の規定は、適用しない。

 (発掘の禁止)

第七条 前条第一項又は第四項の規定により対象家畜の死体を埋却した土地は、農林水産省令で定める期間内は、掘ってはならない。ただし、農林水産大臣又は都道府県知事の許可を受けたときは、この限りでない。

 (畜舎等の消毒)

第八条 対象家畜又はその死体の所在した畜舎その他これに準ずる施設は、農林水産大臣が指定する国の職員又は家畜防疫員が農林水産省令で定める基準に基づいてする指示に従い、その所有者が消毒しなければならない。

2 前項の畜舎その他これに準ずる施設の所有者は、農林水産大臣が指定する国の職員又は家畜防疫員の指示があるまでは、当該施設を消毒してはならない。

3 農林水産大臣が指定する国の職員又は家畜防疫員は、口蹄疫のまん延を防止するため必要があるときは、第一項の施設について、同項の指示に代えて、自らこれを消毒することができる。

 (口蹄疫の患畜又は疑似患畜の死体の焼却等に係る特例)

第九条 口蹄疫の患畜又は疑似患畜の死体の焼却又は埋却に関する家畜伝染病予防法第二十一条第一項、第三項及び第四項並びに第二十四条の規定の適用については、同法第二十一条第一項中「家畜防疫員」とあるのは「農林水産大臣が指定する国の職員又は家畜防疫員」と、同項ただし書中「都道府県知事」とあるのは「農林水産大臣又は都道府県知事」と、同条第三項及び第四項中「家畜防疫員」とあるのは「農林水産大臣が指定する国の職員又は家畜防疫員」と、同法第二十四条ただし書中「都道府県知事」とあるのは「農林水産大臣又は都道府県知事」とする。

 (埋却場所の確保)

第十条 国及び都道府県は、国有地及び公有地の活用その他の方法により、口蹄疫の患畜若しくは疑似患畜又は対象家畜の死体を埋却するための適切な場所を確保するものとする。

 (手当金に係る特例)

第十一条 口蹄疫の患畜若しくは疑似患畜の死体又は口蹄疫の病原体により汚染し、若しくは汚染したおそれがある物品の所有者(次項において単に「所有者」という。)に対する家畜伝染病予防法第五十八条第一項第一号、第三号及び第五号の規定の適用については、同項第一号中「三分の一」とあり、並びに同項第三号及び第五号中「五分の四」とあるのは、「全額」とする。

2 国は、前項の規定により読み替えられた家畜伝染病予防法第五十八条第一項第一号、第三号及び第五号の規定による手当金については、所有者が迅速にその交付を受けることができるよう、所有者からの請求を待たずに仮払をする方法その他の政令で定める方法により交付するものとする。

 (費用の負担)

第十二条 口蹄疫の患畜若しくは疑似患畜の死体又は口蹄疫の病原体により汚染し、若しくは汚染したおそれがある物品の所有者に対する家畜伝染病予防法第五十九条の規定の適用については、同条中「二分の一」とあるのは、「全額」とする。

2 国は、第六条第一項の規定により焼却し、又は埋却した対象家畜の死体の所有者に対し、焼却又は埋却に要した費用の全額を交付する。

3 都道府県知事又は家畜防疫員が家畜伝染病予防法を執行するために必要な費用のうち口蹄疫のまん延の防止に係るものに対する同法第六十条第一項第三号、第五号、第七号及び第八号並びに第二項の規定の適用については、これらの規定中「二分の一」とあるのは、「全額」とする。

4 国は、都道府県知事又は家畜防疫員がこの法律を執行するために必要な費用の全額を負担する。

   第三章 家畜の生産者等の経営と生活の安定のための措置

第十三条 国は、口蹄疫の発生により経営が不安定になっている家畜の生産者、食肉、牛乳又は乳製品に係る製造、加工、流通又は販売の事業を行う者、飲食店営業者等に対し、その経営と生活の安定を図るために必要な措置を講ずるものとする。

2 前項の措置は、家畜の生産者等の経営と生活の安定を図るための事業を行う目的で設置される基金を活用して講ぜられるものとし、政府は、予算の範囲内において、当該基金に充てる資金を補助することができる。

   第四章 雑則

 (不服申立ての制限)

第十四条 第四条第一項の規定による農林水産大臣の命令並びに同条第三項の規定による農林水産大臣が指定する国の職員の指示及び第六条第一項又は第八条第一項の規定による農林水産大臣が指定する国の職員又は家畜防疫員の指示については、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)による不服申立てをすることができない。

2 口蹄疫の患畜又は疑似患畜の死体の焼却又は埋却に関する家畜伝染病予防法第五十二条の二の規定の適用については、同条中「第二十一条第一項」とあるのは「口蹄疫対策特別措置法(平成二十二年法律第▼▼▼号)第九条の規定により読み替えられた第二十一条第一項」と、「家畜防疫員」とあるのは「農林水産大臣が指定する国の職員又は家畜防疫員」とする。

 (証明書の携帯等)

第十五条 農林水産大臣が指定する国の職員又は家畜防疫員は、この法律により職務を執行するときは、農林水産省令で定めるところにより、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。

 (処分の承継人に対する効力)

第十六条 この法律又はこの法律に基づく命令の規定による指示その他の処分は、当該処分の目的である家畜その他の物の所有者又は管理者から権利を承継した者又は権利の設定を受けて、新たに当該家畜その他の物の管理者となった者に対しても、またその効力を有する。

2 前項の家畜その他の物の所有者又は管理者は、当該家畜その他の物を他人に譲渡し、又は管理させる場合には、その処分のあったこと及びその処分の内容をその者に知らせなければならない。

 (権限の委任)

第十七条 この法律に規定する農林水産大臣の権限は、農林水産省令で定めるところにより、その一部を地方農政局長に委任することができる。

 (家畜保健衛生所長への事務の委任)

第十八条 都道府県知事は、第六条第一項ただし書及び第七条ただし書の規定によりその権限に属する事務の一部を家畜保健衛生所長に委任することができる。

 (管理者に対する適用)

第十九条 この法律中家畜、物品又は施設の所有者に関する規定(第五条、第十一条、第十二条及び第十六条の規定を除く。)は、当該家畜、物品又は施設を管理する所有者以外の者(鉄道、軌道、自動車、船舶又は航空機による運送業者で当該家畜、物品又は施設の運送の委託を受けた者を除く。)があるときは、その者に対して適用する。

 (事務の区分)

第二十条 この法律の規定により都道府県が処理することとされている事務は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。

 (経過措置)

第二十一条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

   第五章 罰則

第二十二条 第四条第一項の規定による命令に違反した者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

2 第六条第一項若しくは第三項又は第十六条第二項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

3 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

 一 第六条第二項、第七条又は第八条第一項の規定に違反した者

 二 第四条第三項の規定による指示に違反した者

4 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前三項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して当該各項の罰金刑を科する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第四条から第九条まで、第十二条第二項、第十四条、第十六条、第十八条及び第二十二条の規定は、公布の日から起算して十日を経過した日から施行する。

 (この法律の失効)

第二条 この法律は、平成二十五年三月三十一日限り、その効力を失う。

 (経過措置)

第三条 第十一条の規定は、平成二十二年三月二十日以後この法律の施行前に口蹄疫の患畜若しくは疑似患畜の死体又は口蹄疫の病原体により汚染し、若しくは汚染したおそれがある物品の所有者であった者についても適用する。ただし、これらの者がこの法律の施行前に同一の事由により、国、地方公共団体その他の者から家畜伝染病予防法第五十八条の規定による手当金の交付その他助成金等の支給を受けている場合には、農林水産省令で定めるところにより、当該交付又は支給を受けた額を第十一条第一項の規定により読み替えられた同法第五十八条の規定による手当金の額から差し引いて得た額を交付するものとする。

2 前項ただし書の場合において、地方公共団体が支出した助成金等の支給に要する費用についての国の負担については、政令で定める。

第四条 第十二条第一項の規定は、平成二十二年三月二十日以後この法律の施行前に口蹄疫の患畜若しくは疑似患畜の死体又は口蹄疫の病原体により汚染し、若しくは汚染したおそれがある物品の所有者であった者についても適用する。ただし、これらの者がこの法律の施行前に同一の事由により、国、地方公共団体その他の者から家畜伝染病予防法第五十九条の規定による費用の交付その他助成金等の支給を受けている場合には、農林水産省令で定めるところにより、当該交付又は支給を受けた額を第十二条第一項の規定により読み替えられた同法第五十九条の規定による費用の額から差し引いて得た額を交付するものとする。

2 前項ただし書の場合において、地方公共団体が支出した助成金等の支給に要する費用についての国の負担については、政令で定める。

第五条 第十二条第三項の規定は、平成二十二年三月二十日以後この法律の施行前にその発生が確認された口蹄疫に関し都道府県知事又は家畜防疫員が家畜伝染病予防法を執行するために必要な費用のうち口蹄疫のまん延の防止に係るものについても適用する。

第六条 この法律の失効前に第四条第一項又は第二項の処分によって損失を受けた対象家畜の所有者に対する第五条の規定による補償金の交付、この法律の失効前に家畜伝染病予防法第十六条の規定により殺された口蹄疫の患畜若しくは疑似患畜の死体の所有者又はこの法律の失効前に家畜伝染病予防法第二十三条の規定により焼却し、若しくは埋却した口蹄疫の病原体により汚染し、若しくは汚染したおそれがある物品の所有者に対する第十一条第一項の規定により読み替えられた同法第五十八条の規定による手当金の交付、この法律の失効前に家畜伝染病予防法第二十一条第一項又は第二十三条第一項の規定により焼却し、又は埋却した家畜の死体又は物品の所有者に対する第十二条第一項の規定により読み替えられた同法第五十九条の規定による費用の交付、この法律の失効前に第六条第一項の規定により焼却し、又は埋却した対象家畜の死体の所有者に対する第十二条第二項の規定による費用の交付、この法律の失効前に都道府県知事又は家畜防疫員が家畜伝染病予防法を執行するために要した費用のうち口蹄疫のまん延の防止に係るものに対する同条第三項の規定により読み替えられた同法第六十条の規定による費用の負担並びにこの法律の失効前に都道府県知事又は家畜防疫員がこの法律を執行するために要した費用に対する第十二条第四項の規定による費用の負担については、この法律の失効後も、なお従前の例による。

第七条 この法律の失効前にした行為に対する罰則の適用については、この法律は、附則第二条の規定にかかわらず、同条に規定する日後も、なおその効力を有する。

 (検討)

第八条 政府は、この法律の施行の状況を勘案し、口蹄疫のまん延の防止、口蹄疫が発生した場合における家畜の所有者等に対する補償、家畜の生産者等の経営と生活の安定のための方策等について、家畜伝染病予防法の見直しを含む総合的な検討を加え、その結果に基づき平成二十五年三月三十一日までに必要な措置を講ずるものとする。

 (地方自治法の一部改正)

第九条 地方自治法の一部を次のように改正する。

  別表第一に次のように加える。

口蹄疫対策特別措置法(平成二十二年法律第▼▼▼号)

この法律の規定により都道府県が処理することとされている事務


     理 由

 最近における口蹄疫に係る被害が深刻な状況にあり、これに対処することが緊急の課題となっていることにかんがみ、家畜の生産、食肉、牛乳及び乳製品に係る製造、加工、流通及び販売の事業、飲食店営業等の健全な発展を図るため、口蹄疫のまん延の防止のための特別の措置、家畜の生産者等の経営と生活の安定のための措置等について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   この法律の施行に伴い必要となる経費

 この法律の施行に伴い必要となる経費は、約千四百億円の見込みである。

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