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第一七四回

閣第四五号

   公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、森林の有する国土の保全、水源のかん養その他の多面にわたる機能が持続的に発揮されることが国民生活及び国民経済の安定に果たす役割の重要性にかんがみ、公共建築物等における木材の利用を促進するため、農林水産大臣及び国土交通大臣が策定する基本方針等について定めるとともに、公共建築物等の整備の用に供する木材の適切な供給の確保に関する措置を講ずることにより、木材の適切な供給及び利用の確保を通じた林業の持続的かつ健全な発展を図り、もって森林の適正な整備に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「公共建築物等」とは、次に掲げる建築物(建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第一号に規定する建築物をいう。以下同じ。)をいう。

 一 国又は地方公共団体が整備する公共の用又は公用に供する建築物(以下「公共建築物」という。)

 二 国又は地方公共団体以外の者が整備する学校、老人ホームその他の公共建築物に準ずる建築物として政令で定めるもの

2 この法律において「木材の利用」とは、建築基準法第二条第五号に規定する主要構造部その他の建築物の部分の建築材料として国内で生産された木材その他の木材を使用することをいう。

3 この法律において「木材製造の高度化」とは、木材の製造を業として行う者が、公共建築物等の整備の用に供する木材の製造のために必要な施設の整備、高度な知識又は技術を有する人材の確保その他の措置を行うことにより、公共建築物等の整備の用に供する木材の供給能力の向上を図ることをいう。

 (国の責務)

第三条 国は、公共建築物等における木材の利用の促進に関する人材の育成、技術の開発及び普及その他の必要な施策を総合的に策定し、及び実施するとともに、地方公共団体が実施する公共建築物等における木材の利用の促進に関する施策を推進するために必要な助言その他の措置を講ずるよう努めなければならない。

2 国は、一般の利用に供されるものであることその他の公共建築物の性質にかんがみ、木材に対する需要の増進に資するため、自ら率先してその整備する公共建築物における木材の利用に努めなければならない。

3 国は、公共建築物等における木材の利用の促進に当たっては、公共建築物等の整備の用に供する木材が適切に供給されることが重要であることにかんがみ、木材製造の高度化の促進その他の公共建築物等の整備の用に供する木材の適切な供給の確保のために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

4 国は、教育活動、広報活動等を通じて、公共建築物等における木材の利用の促進に関する国民の理解を深めるとともに、その実施に関する国民の協力を求めるよう努めなければならない。

 (地方公共団体の責務)

第四条 地方公共団体は、その区域の経済的社会的諸条件に応じ、国の施策に準じて公共建築物等における木材の利用の促進に関する施策を策定し、及び実施するよう努めるとともに、その整備する公共建築物における木材の利用に努めなければならない。

 (関係者の責務)

第五条 第二条第一項第二号に掲げる建築物を整備する者は、当該建築物における木材の利用の促進に努めなければならない。

2 林業従事者、木材の製造を業として行う者その他の関係者は、公共建築物等の整備の用に供する木材の適切な供給に努めなければならない。

 (基本方針)

第六条 農林水産大臣及び国土交通大臣は、公共建築物等における木材の利用の促進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。

2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 公共建築物等における木材の利用の促進の意義及び基本的方向

 二 公共建築物等における木材の利用の促進のための施策に関する基本的事項

 三 国が整備する公共建築物における木材の利用の目標

 四 公共建築物等の整備の用に供する木材の適切な供給の確保に関する基本的事項

 五 その他公共建築物等における木材の利用の促進に関する重要事項

3 基本方針は、公共建築物等における木材の利用の状況、建築物における木材の利用に関する技術水準その他の事情を勘案して定めるものとする。

4 農林水産大臣及び国土交通大臣は、経済事情の変動その他情勢の推移により必要が生じたときは、基本方針を変更するものとする。

5 農林水産大臣及び国土交通大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、各省各庁の長(財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第二十条第二項に規定する各省各庁の長をいう。次項において同じ。)に協議しなければならない。

6 農林水産大臣及び国土交通大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、各省各庁の長及び都道府県知事に通知しなければならない。

 (都道府県方針)

第七条 都道府県知事は、基本方針に即して、当該都道府県の区域内の公共建築物等における木材の利用の促進に関する方針(以下「都道府県方針」という。)を定めることができる。

2 都道府県方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 当該都道府県の区域内の公共建築物等における木材の利用の促進のための施策に関する基本的事項

 二 当該都道府県が整備する公共建築物における木材の利用の目標

 三 当該都道府県の区域内における公共建築物等の整備の用に供する木材の適切な供給の確保に関する基本的事項

 四 その他当該都道府県の区域内の公共建築物等における木材の利用の促進に関し必要な事項

3 都道府県知事は、都道府県方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するよう努めるとともに、関係市町村長に通知しなければならない。

 (市町村方針)

第八条 市町村は、都道府県方針に即して、当該市町村の区域内の公共建築物等における木材の利用の促進に関する方針(以下この条において「市町村方針」という。)を定めることができる。

2 市町村方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 当該市町村の区域内の公共建築物等における木材の利用の促進のための施策に関する基本的事項

 二 当該市町村が整備する公共建築物における木材の利用の目標

 三 その他当該市町村の区域内の公共建築物等における木材の利用の促進に関し必要な事項

3 市町村方針においては、前項各号に掲げる事項のほか、当該市町村の区域内における公共建築物等の整備の用に供する木材の適切な供給の確保に関する基本的事項を定めることができる。

4 市町村は、市町村方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するよう努めなければならない。

 (木材製造高度化計画の認定)

第九条 木材の製造を業として行う者は、木材製造の高度化に関する計画(以下「木材製造高度化計画」という。)を作成し、農林水産省令で定めるところにより、これを農林水産大臣に提出して、その木材製造高度化計画が適当である旨の認定を受けることができる。

2 木材製造高度化計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

 一 木材製造の高度化の目標

 二 木材製造の高度化の内容及び実施期間

 三 公共建築物等の整備の用に供する木材の製造の用に供する施設を整備しようとする場合にあっては、当該施設の種類及び規模

 四 森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第五条第一項の規定によりたてられた地域森林計画の対象となっている同項に規定する民有林(同法第二十五条又は第二十五条の二の規定により指定された保安林並びに同法第四十一条の規定により指定された保安施設地区の区域内及び海岸法(昭和三十一年法律第百一号)第三条の規定により指定された海岸保全区域内の森林(森林法第二条第一項に規定する森林をいう。第四項において同じ。)を除く。)において前号の施設を整備するために開発行為(森林法第十条の二第一項に規定する開発行為をいう。以下同じ。)をしようとする場合にあっては、当該施設の位置、配置及び構造

 五 木材製造の高度化を実施するために必要な資金の額及びその調達方法

3 農林水産大臣は、第一項の認定の申請があった場合において、その木材製造高度化計画が基本方針に照らし適切なものであり、かつ、木材製造の高度化を確実に遂行するため適切なものであると認めるときは、その認定をするものとする。

4 農林水産大臣は、第二項第四号に掲げる事項が記載された木材製造高度化計画について第一項の認定をしようとするときは、第二項第三号及び第四号に掲げる事項について、同項第三号の施設の整備の用に供する森林の所在地を管轄する都道府県知事に協議し、その同意を得なければならない。この場合において、当該都道府県知事は、当該施設を整備するための開発行為が森林法第十条の二第二項各号のいずれにも該当しないと認めるときは、同意をするものとする。

5 都道府県知事は、前項の同意をしようとするときは、都道府県森林審議会及び関係市町村長の意見を聴かなければならない。

 (木材製造高度化計画の変更等)

第十条 前条第一項の認定を受けた者(以下「認定木材製造業者」という。)は、当該認定に係る木材製造高度化計画を変更しようとするときは、農林水産省令で定めるところにより、農林水産大臣の認定を受けなければならない。ただし、農林水産省令で定める軽微な変更については、この限りでない。

2 認定木材製造業者は、前項ただし書の農林水産省令で定める軽微な変更をしたときは、遅滞なく、その旨を農林水産大臣に届け出なければならない。

3 農林水産大臣は、認定木材製造業者が前条第一項の認定に係る木材製造高度化計画(第一項の規定による変更の認定又は前項の規定による変更の届出があったときは、その変更後のもの。以下「認定木材製造高度化計画」という。)に従って木材製造の高度化を行っていないと認めるときは、その認定を取り消すことができる。

4 前条第三項から第五項までの規定は、第一項の認定について準用する。

 (林業・木材産業改善資金助成法の特例)

第十一条 林業・木材産業改善資金助成法(昭和五十一年法律第四十二号)第二条第一項の林業・木材産業改善資金であって、認定木材製造業者が認定木材製造高度化計画に従って木材製造の高度化を行うのに必要なものの償還期間(据置期間を含む。)は、同法第五条第一項の規定にかかわらず、十二年を超えない範囲内で政令で定める期間とする。

 (森林法の特例)

第十二条 認定木材製造業者が認定木材製造高度化計画(第九条第二項第四号に掲げる事項が記載されたものに限る。)に従って同項第三号の施設を整備するため開発行為を行う場合には、森林法第十条の二第一項の許可があったものとみなす。

 (国有施設の使用)

第十三条 国は、政令で定めるところにより、公共建築物等の整備の用に供する木材の生産に関する試験研究を行う者に国有の試験研究施設を使用させる場合において、公共建築物等における木材の利用の促進を図るため特に必要があると認めるときは、その使用の対価を時価よりも低く定めることができる。

 (報告の徴収)

第十四条 農林水産大臣は、認定木材製造業者に対し、認定木材製造高度化計画の実施状況について報告を求めることができる。

 (罰則)

第十五条 前条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、三十万円以下の罰金に処する。

2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の刑を科する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (検討)

第二条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。


     理 由

 木材の適切な供給及び利用の確保を通じた林業の持続的かつ健全な発展を図り、もって森林の適正な整備に寄与するため、農林水産大臣及び国土交通大臣が策定する公共建築物等における木材の利用の促進に関する基本方針等並びに木材製造高度化計画の認定について定め、当該計画の認定を受けた者に対する林業・木材産業改善資金助成法及び森林法の特例措置等を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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