衆議院

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第一七六回

衆第一七号

   地下水の利用の規制に関する緊急措置法案

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 地下水の利用の規制(第三条−第七条)

 第三章 雑則(第八条−第十四条)

 第四章 罰則(第十五条−第十七条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、地下水が、国民共通の貴重な財産であり、公共の利益に最大限に沿うように利用されるべき資源であるとの観点から、地下水の利用に対する規制が総合的に講ぜられるまでの間の緊急の措置として特定の地域内における地下水の利用について必要な規制を行うこと等について定め、もって国民生活の安定及び公共の利益の増進に寄与することを目的とする。

 (基本理念)

第二条 地下水は、広い地域を基盤とし、長い期間をかけてかん涵養されるものであり、かつ、その水流が広域にわたり、流域全体において多面にわたる機能を発揮する国民共通の貴重な財産であることにかんがみ、公共の利益に最大限に沿うように利用されなければならない。

   第二章 地下水の利用の規制

 (地下水利用規制地域の指定等)

第三条 国土交通大臣は、地下水(温泉法(昭和二十三年法律第百二十五号)第二条第一項の温泉を除く。以下同じ。)の水源の保全又は渇水若しくはこれに準ずる事態における地下水の公共的利用のために井戸を利用して地下水を採取している者(以下「採取者」という。)による地下水の利用を規制する必要が生じており、又は生ずるがい蓋然性があると認められる地域を地下水利用規制地域として指定することができる。

2 国土交通大臣は、地下水利用規制地域を指定しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長及び関係地方公共団体に協議するとともに、国土審議会の意見を聴かなければならない。

3 国土交通大臣は、地下水利用規制地域を指定したときは、国土交通省令で定めるところにより、当該地下水利用規制地域の名称及び区域を告示しなければならない。

4 前二項の規定は、地下水利用規制地域の指定の変更又は解除について準用する。

第四条 国土交通大臣は、地下水利用規制地域を指定したときは、当該地下水利用規制地域について、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 次条第一項の届出書の提出を要する井戸の要件

 二 第七条第四項の規定により国土交通大臣が裁定する場合に用いる補償の額の算定の基準

2 前項第二号の基準は、地下水が、国民共通の貴重な財産であり、公共の利益に最大限に沿うように利用されるべき資源であることを踏まえ、揚水設備(動力を用いて地下水を採取するための設備をいう。以下同じ。)の使用に係る費用その他地下水の採取及び保存に係る実費を補償することを旨として定めるものとする。ただし、採取者が地下水の利用に関し地方公共団体に負担金を拠出している場合その他公共性の観点から特に配慮すべき事情がある場合には、別段の定めをすることを妨げない。

3 国土交通大臣は、地下水利用規制地域を指定したときは、当該地下水利用規制地域について、第六条又は第七条第一項の規定による処分(以下この項及び次項において単に「処分」という。)をするかどうか、採取者のうちどの範囲の者を処分の対象とするか及びどのような処分とするかについて判断するために必要な基準を定めるものとする。

4 前項の基準(採取者のうちどの範囲の者を処分の対象とするかに係る部分に限る。)を定めるに当たっては、上水道の水源としての利用その他の地域住民の日常生活の用に供するための地下水の利用を優先的に保障するとともに、採取者が地下水の利用に関し地方公共団体に負担金を拠出している場合にはそれに配慮する等、その利用の公共性を考慮するものとする。

5 国土交通大臣は、第一項各号に掲げる事項又は第三項の基準を定めようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長及び関係地方公共団体に協議するとともに、地下水利用規制地域内の採取者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。

6 国土交通大臣は、第一項各号に掲げる事項又は第三項の基準を定めたときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、これを告示しなければならない。

7 前二項の規定は、第一項各号に掲げる事項又は第三項の基準の変更について準用する。

 (届出)

第五条 地下水利用規制地域内において前条第一項第一号の規定により定められた要件に該当する井戸(以下「対象井戸」という。)を利用して地下水の採取を開始した者又はその利用する井戸が対象井戸となった者は、地下水の採取を開始した日又はその利用する井戸が対象井戸となった日から起算して一月以内に、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣に、次に掲げる事項を記載した届出書を提出しなければならない。この場合において、当該届出書には、国土交通省令で定める書類を添付しなければならない。

 一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあってはその代表者の氏名及び住所

 二 対象井戸の設置の場所

 三 揚水設備を用いて地下水を採取する対象井戸にあっては、ストレーナーの位置及び揚水機の吐出口の断面積

 四 その他国土交通省令で定める事項

2 地下水利用規制地域の指定の際現にその地域内において対象井戸を利用して地下水を採取している者は、国土交通省令で定めるところにより、当該指定の日から起算して一月以内に、当該対象井戸について、前項各号に掲げる事項を記載した届出書を国土交通大臣に提出しなければならない。この場合において、当該届出書には、国土交通省令で定める書類を添付しなければならない。

3 地下水利用規制地域内において対象井戸を利用して地下水を採取している者(以下「対象採取者」という。)は、第一項各号に掲げる事項に変更があったとき、又は対象井戸が廃止され、若しくは対象井戸以外の井戸となったときは、国土交通省令で定めるところにより、当該変更があった日又は対象井戸が廃止され、若しくは対象井戸以外の井戸となった日から起算して一月以内に、その旨を記載した届出書を国土交通大臣に提出しなければならない。この場合において、当該届出書には、国土交通省令で定める書類を添付しなければならない。

 (地下水の採取の禁止等)

第六条 国土交通大臣は、地下水利用規制地域における地下水の水源の保全を図るため特に必要があると認めるときは、対象採取者に対し、対象井戸による地下水の採取を禁止し、又は制限することができる。

 (緊急時における地下水の供給)

第七条 国土交通大臣は、渇水又はこれに準ずる事態に対処するため緊急の必要があると認めるときは、対象採取者に対し、相当の期限を定め、かつ、期間、水量及び方法を定めて、対象井戸により採取した地下水を保管し、又は次に掲げる者に供給すべきことを命ずることができる。

 一 水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)第三条第五項の水道事業者又は水道用水供給事業者

 二 水道法第三条第六項の専用水道の設置者

 三 前二号に掲げるもののほか、水の公共的利用を行っている者として政令で定める者

2 国土交通大臣は、前項の措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき、又は履行しても前項の規定により定められた期限内に完了する見込みがないときは、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。

3 前二項の場合において、地下水の供給を受けた者は、対象採取者に対し、必要な補償をしなければならない。この場合において、補償の額は、当事者間の協議によって定める。

4 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、補償の額は、国土交通大臣が第四条第一項第二号の規定により定めた基準に従って裁定する。

5 前項の規定による裁定に不服がある者は、その裁定を受けた日から六月以内に、訴えをもって補償の額の増減を請求することができる。

6 前項の訴えにおいては、供給の他の当事者をもって被告とする。

   第三章 雑則

 (地域における水の供給の確保)

第八条 国及び関係地方公共団体は、地下水利用規制地域が指定された場合において、その地域における水の供給の確保のため必要があると認めるときは、地下水以外の水源の開発、地下水の合理的な利用及び涵養のための措置その他の措置を講ずるものとする。

 (土地の立入り)

第九条 国土交通大臣は、この法律を施行するため地下水の状況に関する測量又は実地調査のためやむを得ない必要があるときは、その必要な限度において、その職員に他人の土地に立ち入らせることができる。

2 国土交通大臣は、前項の規定によりその職員に他人の土地に立ち入らせようとする場合においては、立入りの日の五日前までに、その旨を土地の占有者に通知しなければならない。

3 第一項の規定により他人の土地に立ち入る職員は、立入りの際、あらかじめ、その旨を土地の占有者に告げなければならない。

4 日出前又は日没後においては、土地の占有者の承諾があった場合を除き、第一項の規定による立入りをしてはならない。

5 第一項の規定により他人の土地に立ち入る職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

6 国は、第一項の規定による立入りにより他人に損失を与えた場合においては、その損失を受けた者に対し、通常生ずべき損失を補償しなければならない。

第十条 土地の占有者は、正当な理由がなければ、前条第一項の規定による立入りを拒み、又は妨げてはならない。

 (報告の徴収)

第十一条 国土交通大臣は、この法律を施行するため必要がある場合においては、対象採取者に対し、対象井戸の構造、地下水の採取の状況並びに採取した地下水の保管及び使用の状況について報告を求めることができる。

 (立入検査)

第十二条 国土交通大臣は、この法律による権限を行うため必要な限度において、その職員に、対象井戸の設置の場所又は対象採取者の事業所若しくは事務所に立ち入り、揚水設備、採取した地下水その他必要な設備及び物件を検査させることができる。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

 (権限の委任)

第十三条 この法律に規定する国土交通大臣の権限は、国土交通省令で定めるところにより、その一部を地方整備局長又は北海道開発局長に委任することができる。

 (条例との関係)

第十四条 この法律の規定は、地方公共団体が、地下水の利用に関し、条例で必要な規制を定めることを妨げるものではない。

   第四章 罰則

第十五条 第六条又は第七条第一項の規定による処分に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

第十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

 一 第五条第一項から第三項までの規定に違反して届出書若しくは添付書類を提出せず、又はこれらの規定の届出書若しくは添付書類に虚偽の記載をして提出した者

 二 第十条の規定に違反して第九条第一項の規定による土地の立入りを拒み、又は妨げた者

 三 第十一条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

 四 第十二条第一項の規定による立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

第十七条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (検討)

第二条 国は、地下水が、その存する土地の所有権に基づき自由に利用されるべきものではなく、国民共通の貴重な財産であって、公共の利益に最大限に沿うように利用されるべき資源であるとの観点から、地下水の利用に対する規制の在り方について、速やかに、総合的な検討を加え、その結果に基づいて法制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。

 (国土交通省設置法の一部改正)

第三条 国土交通省設置法(平成十一年法律第百号)の一部を次のように改正する。

  第七条第二号中「(昭和三十六年法律第二百十七号)」の下に「、地下水の利用の規制に関する緊急措置法(平成二十二年法律第▼▼▼号)」を加える。


     理 由

 地下水が、国民共通の貴重な財産であり、公共の利益に最大限に沿うように利用されるべき資源であるとの観点から、地下水の利用に対する規制が総合的に講ぜられるまでの間の緊急の措置として特定の地域内における地下水の利用について必要な規制を行う必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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