衆議院

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第一七七回

参第五号

   東日本大震災復興の基本理念及び特別の行政体制に係る基本方針等に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条−第四条)

 第二章 国の特別の行政体制に係る基本方針(第五条)

 第三章 東日本復興対策本部(第六条−第十三条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、東日本大震災の被災地域の復興についての基本理念及び当該復興のための国の特別の行政体制に係る基本方針を明らかにするとともに、東日本復興対策本部の設置等を定めることにより、被災地域の復興を迅速に推進して被災地域の社会経済の再生及び被災者の生活の再建を図ることを目的とする。

 (基本理念)

第二条 被災地域の復興は、次に掲げる事項を基本理念として行うものとする。

 一 東日本大震災が、その被害が甚大であり、かつ、その被災地域が広範にわたる等極めて大規模なものであるとともに、地震及び津波並びにこれらに伴う原子力発電施設の事故による複合的なものであるという点において未曽有の災害であることに鑑み、単なる災害復旧にとどまらず、自然災害の脅威を十分認識しつつ、必要な施設等の整備を行うことにより将来にわたって安心して暮らすことのできる安全な地域づくりが進められるとともに、太陽光、風力、地熱その他の自然エネルギーの利用の推進等の先導的な施策への取組が実施され、世界においても比類のない復興が行われるべきこと。

 二 被災地域における産業の復興及びこれに伴う雇用機会の創出に当たっては、応急の対策が講ぜられるほか、被災地域への企業の誘致を促進する等持続可能で活力ある社会経済の再生を図りつつその実現が目指されるべきこと。

 三 農業及び水産業の再生に当たっては、革新的な制度の導入等を行うことにより、我が国の今後のそれらの産業の模範の提示につながるよう、必要な施策が推進されるべきこと。

 四 観光産業の復興に当たっては、地域の特色ある文化を一層振興し、被災地域を国の内外から多くの人々が訪れる魅力にあふれる地域として再生させるための施策を含む必要な施策が推進されるべきこと。

 五 国民の相互の連帯を基本とし、ボランティア、特定非営利活動法人その他民間における多様な主体が、自発的に協働し、適切に役割を分担すべきであるとともに、そのために必要な支援が行われるべきこと。

 六 原子力発電施設の事故による災害を受けた地域の復興に当たっては、当該災害の復旧の状況等を勘案しつつ、前各号に掲げる事項が行われるほか、当該地域への重要な施設の移転、当該地域における国の会議及び国際的な会議の開催等が推進されるべきこと。

 七 被災地域の復興に関する施策については、多様な者の意見を反映させるために必要な体制の整備等が行われ、これにより結集された知見が発揮された効果的な措置が行われるとともに、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の積極的な促進が図られるべきこと。

 八 国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の連携協力並びに全国各地の地方公共団体の相互の連携協力が確保されるとともに、被災地域の住民の意向が尊重されるべきこと。この場合において、被災により本来果たすべき機能を十全に発揮することができない地方公共団体の事務及び事業を国が適切に支援する体制が整備されるべきこと。

 九 被災地域の復興に関する国の施策が統合的、効率的かつ迅速に行われるようにするため、被災地域の復興に関する国の事務及び権限について、複数の府省に分散している状態を改め、単独の組織への集約化を図る等、国の特別の行政体制が構築されること。

 十 被災地域の復興に関する国の施策については、その重要性が十分配慮され、公債の発行及び財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第五条ただし書の規定による公債の日本銀行による引受けを含め、これに必要な財源の確保が図られるべきこと。この場合において、当該財源の確保に当たっては、国債整理基金特別会計、労働保険特別会計等の特別会計の資産その他の国及び独立行政法人の資産等で不要なものの活用等がまず検討され、国民に課す新たな負担をできるだけ少なくするよう配慮されるべきこと。

 (国の講ずる措置)

第三条 国は、前条の基本理念にのっとり、被災地域の復興に必要な別に法律で定める措置その他の措置を講ずるものとする。

 (地方公共団体の講ずる措置)

第四条 地方公共団体は、第二条の基本理念にのっとり、被災地域の復興に必要な措置を講ずるものとする。

   第二章 国の特別の行政体制に係る基本方針

第五条 被災地域の復興のための国の特別の行政体制については、次に掲げる事項を旨として構築されるものとする。

 一 被災地域の復興に関する施策については、東日本復興対策本部で決定した基本的な方針に基づき、東日本復興院(被災地域の復興に関する事務及び事業を行う専門の機関として新たに設置される組織をいう。以下同じ。)を中心として実施すること。

 二 被災地域の復興に関する事務及び権限のうち、現行の府省に残すものは必要最小限のものにとどめ、それ以外は東日本復興院に移管すること。

 三 東日本復興院は、前号の移管の対象となる事務を分担管理する主任の大臣を長とする機関とし、当該国務大臣は、東日本復興対策本部の副本部長となること。

 四 東日本復興院は、被災地域の地方公共団体の要請に応じその事業の一部を代行すること、当該地方公共団体が行う都市計画その他の地域づくりに係る計画の策定に関しその参考となる案を作成すること等により、当該地方公共団体の事務及び事業を適切に支援すること。

 五 東日本復興院は、被災地域において特別の区域を設け規制の特例等の措置を講ずる制度である復興特区制度の立案及び実施に関する事務を行うこと。

 六 東日本復興院の主たる組織は、被災地域に置くこと。

 七 東日本復興院に、国会議員のうちから任命される者が含まれる会議を置くこと。この場合において、国会議員のうちから当該会議の構成員が任命されるときは、政党を代表する者が含まれるものとすること。

 八 被災地域の復興に関する事務及び事業の経理は、特別会計を設置して行うこと。

 九 東日本復興院は、その設置後三年を目途に廃止すること。

2 政府は、できるだけ速やかに、前項の基本方針に即した体制の整備に必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。

3 東日本復興院の事務及び権限については、日本国憲法の理念の下に、広域の地方公共団体である道州と基礎的な地方公共団体が住民に身近な行政を自主的かつ総合的に広く担い、地域住民が自らの判断と責任において地域の諸課題に取り組むことができる制度としての地域主権型道州制に関する議論、被災地域の県が加入する広域連合の設置により国及び県の事務及び権限を当該広域連合に移譲することとなる可能性等を踏まえ、東日本復興院が廃止されるまでの間に、被災地域の地方公共団体への移譲に関する検討が行われるものとする。

   第三章 東日本復興対策本部

 (東日本復興対策本部の設置)

第六条 内閣に、東日本復興対策本部(以下「本部」という。)を置く。

 (東日本復興対策本部の所掌事務)

第七条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 被災地域の復興に関する施策に係る基本的な方針に関する企画及び立案並びに総合調整に関する事務

 二 東日本復興院の設置その他第五条第一項の基本方針に即した体制の整備に必要な法律案及び政令案の立案に関する事務

 三 地方公共団体が行う復興事業への国の支援その他被災地域の復興に関する施策の実施の推進及びこれに関する総合調整に関する事務

 四 前三号に掲げるもののほか、法令の規定により本部に属させられた事務

 (東日本復興対策本部長)

第八条 本部の長は、東日本復興対策本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。

2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。

 (東日本復興対策副本部長)

第九条 本部に、東日本復興対策副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、国務大臣をもって充てる。

2 副本部長は、本部長の職務を助ける。

 (東日本復興対策本部員)

第十条 本部に、東日本復興対策本部員(以下「本部員」という。)を置く。

2 本部員は、次に掲げる者をもって充てる。

 一 本部長及び副本部長以外の全ての国務大臣

 二 国会議員、関係地方公共団体の長及び優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する者

3 国会議員のうちから本部員が任命される場合には、政党を代表する者が含まれるものとする。

4 国会議員又は地方公共団体の長である本部員は、特別職の国家公務員とする。

5 国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第九十六条第一項、第九十八条第一項、第九十九条並びに第百条第一項及び第二項の規定は、前項に規定する本部員について準用する。

6 第四項の本部員又は当該本部員であった者が証人となる場合における議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律(昭和二十二年法律第二百二十五号)第五条第一項の規定の適用については、同項中「及び大臣政務官」とあるのは、「、大臣政務官及び国会議員又は地方公共団体の長である東日本復興対策本部員」とする。

 (事務局)

第十一条 本部に、その事務を処理させるため、事務局を置く。

2 事務局に、事務局長その他の職員を置く。

3 事務局長は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。

4 事務局長は、本部長の命を受け、局務を掌理する。

 (主任の大臣)

第十二条 本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。

 (政令への委任)

第十三条 この章に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。

   附 則

 この法律は、公布の日から施行する。


     理 由

 東日本大震災の被災地域の復興を迅速に推進して被災地域の社会経済の再生及び被災者の生活の再建を図るため、被災地域の復興についての基本理念及び当該復興のための国の特別の行政体制に係る基本方針を明らかにするとともに、東日本復興対策本部の設置等を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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