衆議院

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第一七七回

衆第一九号

   東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法案

 (趣旨)

第一条 この法律は、東日本大震災により生じた災害廃棄物(東日本大震災により特にその処理が必要となった廃棄物(廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第二条第一項に規定する廃棄物をいう。)をいう。以下単に「災害廃棄物」という。)の処理が著しく停滞し、被災地域の復旧復興が著しく遅延している現状に鑑み、災害廃棄物を迅速かつ適切に処理するため、災害廃棄物の処理に関し、国の責務を明らかにするとともに、国による代行に関する規定を設け、当該処理に要する費用の全部を国が補助することとし、あわせて、国が講ずべきその他の措置について定めるものとする。

 (国の責務等)

第二条 国は、災害廃棄物の処理が迅速かつ適切に行われるよう、主体的に、市町村及び都道府県に対し必要な支援を行うとともに、災害廃棄物の処理に関する基本的な方針、災害廃棄物の処理の内容及び実施時期等を明らかにした工程表を定め、これに基づき必要な措置を計画的かつ広域的に講ずる責務を有する。

2 国は、災害廃棄物の処理に関する措置を講ずるに当たっては、東日本大震災による被害を受けた地方公共団体の意向を最大限に尊重するものとする。

 (国による災害廃棄物の処理の代行)

第三条 国は、被災市町村(東日本大震災による被害を受けた市町村で政令で定めるものをいう。以下同じ。)の長から要請があり、かつ、当該被災市町村における災害廃棄物の処理の実施体制その他の地域の実情を勘案して必要があると認められるときは、当該被災市町村に代わって自ら災害廃棄物の処理を行うものとする。

2 前項の規定により国が災害廃棄物の処理を行う場合においては、当該処理に関する事務を所掌する大臣は、政令で定めるところにより、同項の被災市町村に代わってその権限を行うものとする。

3 第一項の規定により国が行う災害廃棄物の処理に要する費用は、国の負担とする。

 (災害廃棄物の処理等に係る費用の補助)

第四条 国は、被災市町村に対し、災害廃棄物の処理を行うために要する費用について、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第二十二条の規定にかかわらず、その全部を補助する。

2 国は、前項に規定するもののほか、被災市町村に対し、災害廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理を行うための施設の整備、運営等に要する費用についても、他の法令の規定にかかわらず、その全部を補助する。

3 前二項の規定による補助の対象となる事業及び施設の基準その他の事項については、政令で定める。

 (災害廃棄物の処理に関して国が講ずべき措置)

第五条 国は、災害廃棄物に係る一時的な保管場所及び最終処分場の早急な確保及び適切な利用等を図るため、被災市町村以外の地方公共団体に対する広域的な協力の要請及びこれに係る費用の負担、私人が所有する土地の借入れ等の促進、災害廃棄物の搬入及び搬出のための道路その他の輸送手段の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。

2 国は、災害廃棄物の再生利用等を図るため、東日本大震災からの復興のための施設の整備等への災害廃棄物の活用その他の必要な措置を講ずるものとする。

3 国は、被災者の財産、遺留品等の適切な取扱いに要する費用、災害廃棄物の処理に係る業務に従事する労働者の賃金、受注者の資金繰りに配慮した支払の方法、受注後の事情変更への対応等を勘案して、災害廃棄物の処理に要する費用の算定に係る適正な単価その他の災害廃棄物の処理に係る契約の内容に関する統一的な指針の策定その他の必要な措置を講ずるものとする。

4 国は、災害廃棄物の処理に係る業務に従事する労働者等に関し、石綿による健康被害の防止その他の労働環境の整備のために必要な措置を講ずるものとする。

5 国は、海に流出した災害廃棄物に関し、その処理について責任を負うべき主体が必ずしも明らかでないことに鑑み、国の責任において、その処理を行うべき主体の明確化を含めた指針を策定するとともに、早期に処理するよう必要な措置を講ずるものとする。

6 国は、津波による堆積物その他の災害廃棄物に関し、感染症の発生の予防及び悪臭の発生の防止のために緊急に必要な措置を講ずるとともに、国の責任において、早期に、無害化処理を行った上での復旧復興のための資材等としての活用を含めた処理等を行うよう必要な措置を講ずるものとする。

7 東日本大震災により特にその処理が必要となった廃棄物のうち放射性物質によって汚染された廃棄物の処理に関しては、特段の配慮を要することに鑑み、別に法律で定めるところによる。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。

 (国による災害廃棄物の処理の代行に関する経過措置)

第二条 この法律の施行の際現に被災市町村が地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十四第一項の規定により災害廃棄物の処理を他の地方公共団体に委託している場合における第三条の規定の適用については、同条第一項中「被災市町村(東日本大震災による被害を受けた市町村で政令で定めるものをいう。以下同じ。)の長」とあるのは、「被災市町村(東日本大震災による被害を受けた市町村で政令で定めるものをいう。以下同じ。)の長及び当該被災市町村から委託を受けて災害廃棄物の処理を行っている地方公共団体の長」とするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

 (災害廃棄物の処理等に係る費用の補助に関する経過措置)

第三条 第四条の規定は、この法律の施行前に実施された災害廃棄物の処理等についても、適用する。

 (復興庁が設置されるまでの間における体制整備等)

第四条 政府は、東日本大震災復興基本法(平成二十三年法律第七十六号)第二十四条第一項に規定する復興庁が設置されるまでの間においても、その体制を整備し、この法律の規定に基づく災害廃棄物の処理を迅速かつ適切に実施するものとする。

 (東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律の一部改正)

第五条 東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律(平成二十三年法律第四十号)の一部を次のように改正する。

  第三条第一項第六号を次のように改める。

  六 削除

  第百三十九条を次のように改める。

 第百三十九条 削除

 (政令への委任)

第六条 この附則に定めるもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置その他の事項は、政令で定める。


     理 由

 東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理が著しく停滞し、被災地域の復旧復興が著しく遅延している現状に鑑み、災害廃棄物を迅速かつ適切に処理するため、災害廃棄物の処理に関し、国の責務を明らかにするとともに、国による代行に関する規定を設け、当該処理に要する費用の全部を国が補助することとし、あわせて、国が講ずべきその他の措置について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   本案施行に要する経費

 本案施行に要する経費としては、約一兆円の見込みである。

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