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第一七七回

閣第七〇号

   東日本大震災復興の基本方針及び組織に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、東日本大震災が、その被害が甚大であり、かつ、その被災地域が広範にわたる等極めて大規模なものであるとともに、地震及び津波並びにこれらに伴う原子力発電施設の事故による複合的なものであるという点において未曽有の災害であることに鑑み、被災地域の復興についての基本理念を明らかにするとともに、東日本大震災復興対策本部の設置等を定めることにより、被災地域の復興を迅速に推進して被災地域の社会経済の再生及び生活の再建を図り、もって現在及び将来の世代にわたって国民経済を健全に発展させ、及び国民生活を向上させることに寄与することを目的とする。

 (基本理念)

第二条 被災地域の復興は、次に掲げる事項を基本理念として行うものとする。

 一 未曽有の災害により、多数の人命が失われるとともに、多数の被災者がその生活基盤を奪われ、被災地域内外での避難生活を余儀なくされる等甚大な被害が生じており、かつ、被災地域における経済活動の停滞が連鎖的に全国各地における企業活動や国民生活に支障を及ぼしている等その影響が広く全国に及んでいることを踏まえ、国民一般の理解と協力の下に、単なる災害復旧にとどまらない抜本的な対策が推進されるべきこと。この場合において、行政の内外の知見が集約され、その活用がされるべきこと。

 二 国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の連携協力並びに全国各地の地方公共団体の相互の連携協力が確保されるとともに、被災地域の住民の意向が尊重されるべきこと。この場合において、被災により本来果たすべき機能を十全に発揮することができない地方公共団体があることへの配慮がされるべきこと。

 三 国民の相互の連帯を基本とし、国民、事業者その他民間における多様な主体が、自発的に協働するとともに、適切に役割を分担すべきこと。

 四 少子高齢化及び人口の減少への対応等の我が国が直面する課題や、エネルギーの利用の制約、環境への負荷等の人類共通の課題の解決に資するための先導的な施策への取組が行われるべきこと。

 五 次に掲げる施策が推進されるべきこと。

  イ 何人も将来にわたって安心して暮らすことのできる安全な地域づくりを進めるための施策

  ロ 被災地域における雇用機会の創出と持続可能で活力ある社会経済の再生を図るための施策

  ハ 地域の特色ある文化の振興並びに地域社会の(きずな) 六 原子力発電施設の事故による災害を受けた地域の復興については、当該災害の復旧の状況等を勘案しつつ、前各号に掲げる事項が行われるべきこと。

 (国の講ずる措置)

第三条 国は、前条の基本理念にのっとり、被災地域の復興に必要な別に法律で定める措置その他の措置を講ずるものとする。

 (地方公共団体の講ずる措置)

第四条 地方公共団体は、第二条の基本理念にのっとり、被災地域の復興に必要な措置を講ずるものとする。

 (東日本大震災復興対策本部の設置)

第五条 内閣に、東日本大震災復興対策本部(以下「本部」という。)を置く。

 (東日本大震災復興対策本部の所掌事務)

第六条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 被災地域の復興のための施策に関する基本的な方針に関する企画及び立案並びに総合調整に関する事務

 二 関係地方公共団体が行う復興事業への国の支援その他関係行政機関が講ずる被災地域の復興のための施策の実施の推進及びこれに関する総合調整に関する事務

 三 前二号に掲げるもののほか、法令の規定により本部に属させられた事務

 (東日本大震災復興対策本部長)

第七条 本部の長は、東日本大震災復興対策本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。

2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。

 (東日本大震災復興対策副本部長)

第八条 本部に、東日本大震災復興対策副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、内閣官房長官及び東日本大震災復興対策担当大臣(内閣総理大臣の命を受けて、被災地域の復興のための施策の推進に関し内閣総理大臣を助けることをその職務とする国務大臣をいう。)をもって充てる。

2 副本部長は、本部長の職務を助ける。

 (東日本大震災復興対策本部員)

第九条 本部に、東日本大震災復興対策本部員(以下「本部員」という。)を置く。

2 本部員は、次に掲げる者をもって充てる。

 一 本部長及び副本部長以外の全ての国務大臣

 二 内閣官房副長官、関係府省の副大臣若しくは大臣政務官又は国務大臣以外の関係行政機関の長のうちから、内閣総理大臣が任命する者

 (幹事)

第十条 本部に、幹事を置く。

2 幹事は、関係行政機関の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。

3 幹事は、本部の所掌事務について、本部長、副本部長及び本部員を助ける。

 (現地対策本部)

第十一条 本部に、第六条(第一号を除く。)に規定する事務の一部を分掌させるため、地方機関として、所要の地に現地対策本部を置く。

2 現地対策本部の名称、位置及び管轄区域は、政令で定める。

3 現地対策本部に現地対策本部長を置き、関係府省の副大臣、大臣政務官その他の職を占める者のうちから内閣総理大臣が任命する者をもって充てる。

4 現地対策本部長は、本部長の命を受け、現地対策本部の事務を掌理する。

5 現地対策本部に現地対策本部員を置き、国の関係地方行政機関の長その他の職員のうちから内閣総理大臣が任命する者をもって充てる。

 (東日本大震災復興構想会議の設置等)

第十二条 本部に、東日本大震災復興構想会議を置く。

2 東日本大震災復興構想会議は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 本部長の諮問に応じて、被災地域の復興に関する重要事項を調査審議し、及びこれに関し必要と認める事項を本部長に建議すること。

 二 被災地域の復興のための施策の実施状況を調査審議し、必要があると認める場合に本部長に意見を述べること。

3 東日本大震災復興構想会議は、議長及び委員二十五人以内をもって組織する。

4 議長及び委員は、関係地方公共団体の長及び優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する。

 (原子力発電施設の事故による災害を受けた地域の復興に関する合議制の機関)

第十三条 前条第一項に定めるもののほか、原子力発電施設の事故による災害を受けた地域の復興に関する重要事項について、当該災害の復旧の状況等を踏まえ、特別に調査審議を行わせるため必要があると認められるときは、政令で定めるところにより、本部に、関係地方公共団体の長及び原子力関連技術、当該災害を受けた地域の経済事情等に関し優れた識見を有する者で構成される合議制の機関を置くことができる。この場合において、当該機関による調査審議は、東日本大震災復興構想会議による調査審議の結果を踏まえて行われなければならない。

 (資料の提出その他の協力の要請)

第十四条 東日本大震災復興構想会議及び前条に規定する合議制の機関(以下「東日本大震災復興構想会議等」という。)は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関又は関係のある公私の団体に対し、資料の提出、意見の表明、説明その他の必要な協力を求めることができる。

2 東日本大震災復興構想会議等は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者であって調査審議の対象となる事項に関し識見を有する者に対しても、必要な協力を依頼することができる。

 (事務局)

第十五条 本部に、その事務を処理させるため、事務局を置く。

2 事務局に、事務局長その他の職員を置く。

3 事務局長は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。

4 事務局長は、本部長の命を受け、局務を掌理する。

5 事務局に、現地対策本部に対応して、事務局の所掌事務のうち当該現地対策本部に係るものを処理させるため、現地対策本部事務局を置く。

 (主任の大臣)

第十六条 本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。

 (政令への委任)

第十七条 第五条から前条までに定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。

 (検討)

第二条 政府は、この法律の施行の状況等を勘案しつつ、被災地域の復興のための施策を推進するための行政組織の在り方を見直し、復興庁(東日本大震災により被害を受けた特定の地域の復興のための行政各部の施策の統一を図るため必要となる事項の企画及び立案並びに総合調整を行う行政組織をいう。以下同じ。)を設置すること、復興庁の設置についてはその期間を限るものとすることその他復興庁に関し必要な事項について総合的に検討を加え、その結果に基づいて、この法律の施行後一年以内を目途として必要な法制上の措置を講ずるものとする。


     理 由

 東日本大震災が、その被害が甚大であり、かつ、その被災地域が広範にわたる等極めて大規模なものであるとともに、地震及び津波並びにこれらに伴う原子力発電施設の事故による複合的なものであるという点において未曽有の災害であることに鑑み、被災地域の復興についての基本理念を明らかにするとともに、東日本大震災復興対策本部を設置する等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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