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第一七九回

参第六号

   実用発電用原子炉等の運転の再開についての関係都道府県知事の同意及びこれに係る住民投票に関する法律案

 (趣旨)

第一条 この法律は、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により実用発電用原子炉等の運転(実用再処理施設の使用を含む。以下この条及び第五条において同じ。)についてその周辺地域の住民に著しい不安が生じていることに鑑み、定期検査の後の実用発電用原子炉等の運転の再開について関係都道府県知事の同意を得ることとするとともに、当該同意に係る住民投票に関する事項について定めるものとする。

 (定義等)

第二条 この法律において「実用発電用原子炉等」とは、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「規制法」という。)第二十三条第一項第一号、第三号及び第四号に掲げる原子炉並びに実用再処理施設をいう。

2 この法律において「実用再処理施設」とは、規制法第四十四条第二項第二号に規定する再処理施設のうち実用発電用原子炉(規制法第二十三条第一項第一号に規定する実用発電用原子炉をいう。)において燃料として使用した核燃料物質(原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)第三条第二号に規定する核燃料物質をいう。)に係る再処理(規制法第二条第八項に規定する再処理をいう。)を行うものとして政令で定めるものをいう。

3 この法律において「定期検査」とは、実用発電用原子炉等についての電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第五十四条又は規制法第二十九条若しくは第四十六条の二の二の規定による検査であって当該実用発電用原子炉等の運転(実用再処理施設にあっては、当該実用再処理施設の使用)を停止した状態で行われるものをいう。

4 この法律において「関係都道府県知事」とは、実用発電用原子炉等からの距離、地形その他の条件を考慮して、当該実用発電用原子炉等において平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故と同等の原子力緊急事態(原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)第二条第二号に規定する原子力緊急事態をいう。)が生じたならば深刻な被害が生じるおそれが高いものとして政令で定める市町村(特別区を含む。以下同じ。)を包括する都道府県の知事をいう。

5 前項の政令は、同項の深刻な被害が生じるおそれについての市町村の意見の申出があったときは、当該意見に配慮して定めるものとする。

 (関係都道府県知事の同意)

第三条 主務大臣(規制法第二十三条第一項第三号に掲げる原子炉以外の実用発電用原子炉等については経済産業大臣をいい、同号に掲げる原子炉については文部科学大臣をいう。以下同じ。)は、実用発電用原子炉等が定期検査(主務大臣がこの項の規定により関係都道府県知事の同意を求めた場合においてその同意が得られなかったことがある実用発電用原子炉等について行われるものを除く。第六条において同じ。)に合格したと認めるときは、遅滞なく、関係都道府県知事に対し、当該定期検査の結果を通知するとともに、期限を指定して、当該実用発電用原子炉等の運転(実用再処理施設にあっては、当該実用再処理施設の使用)を再開することについての同意を求めなければならない。

2 前項の期限は、その同意を求められた関係都道府県知事の請求に基づき選挙管理委員会が次条第二項の規定による投票を実施するために必要な期間が確保されるよう定めるものとする。

3 関係都道府県知事は、第一項の同意(以下単に「同意」という。)を求められた場合には、その旨及び同項の通知の内容を公表しなければならない。

4 関係都道府県知事は、同意をするか否かを決定するに当たっては、前条第四項の市町村の住民の意見を十分に尊重するものとする。

 (同意に係る住民投票)

第四条 関係都道府県知事は、同意をするか否かについて、第二条第四項の市町村の住民の意見を聴くために必要があると認めるときは、選挙管理委員会に対し、同項の市町村の選挙人の投票に付するよう請求することができる。この場合においては、当該投票の結果は、関係都道府県知事を拘束する。

2 前項の請求があったときは、選挙管理委員会は、政令で定めるところにより、関係都道府県知事が同意をするか否かについて第二条第四項の市町村の選挙人の投票に付さなければならない。

3 選挙管理委員会は、前項の規定による投票の結果が判明したときは、これを関係都道府県知事に通知するとともに、公表しなければならない。その投票の結果が確定したときも、また、同様とする。

4 第二項の規定による投票においては、同意をするか否かについて、有効投票の総数の過半数をもって決する。

5 政令で特別の定めをするものを除き、公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)中普通地方公共団体の選挙に関する規定(罰則を含む。)は、第二項の規定による投票について準用する。

6 第二項の規定による投票は、政令で定めるところにより、普通地方公共団体の選挙又は地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第七十六条第三項、第八十条第三項、第八十一条第二項若しくは第二百六十一条第三項の規定による投票と同時にこれを行うことができる。

7 国は、第二項の規定による投票に要する費用について、必要な財政上の措置を講ずるように努めなければならない。

 (原子炉設置者又は再処理事業者に対する通知)

第五条 主務大臣は、実用発電用原子炉等の運転の再開について全ての関係都道府県知事の同意が得られたときは、当該実用発電用原子炉等に係る原子炉設置者(規制法第二十三条の二第一項に規定する原子炉設置者をいう。次条において同じ。)又は再処理事業者(規制法第四十四条の四第一項に規定する再処理事業者をいう。次条において同じ。)に対し、その旨を通知するものとする。

 (通知を受けないで運転等を再開することの禁止)

第六条 定期検査を受けた実用発電用原子炉等に係る原子炉設置者及び再処理事業者は、当該定期検査に係る前条の通知を受けなければ、当該実用発電用原子炉等の運転(実用再処理施設にあっては、当該実用再処理施設の使用)を再開してはならない。

 (事務の区分)

第七条 市町村が第四条第五項において準用する公職選挙法中普通地方公共団体の選挙に関する規定により処理することとされている事務は、地方自治法第二条第九項第二号に規定する第二号法定受託事務とする。

 (罰則)

第八条 第六条の規定に違反した者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項(規制法第二十三条第一項第三号に掲げる原子炉を設置した者に係る部分を除く。)の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して三億円以下の罰金刑を、その人に対して前項の罰金刑を科する。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第八条の規定は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。

 (経過措置)

2 この法律は、この法律の施行の際現に定期検査が行われている実用発電用原子炉等の運転(実用再処理施設にあっては、当該実用再処理施設の使用)の再開についても適用する。

 (地方自治法の一部改正)

3 地方自治法の一部を次のように改正する。

  別表第二に次のように加える。

実用発電用原子炉等の運転の再開についての関係都道府県知事の同意及びこれに係る住民投票に関する法律(平成二十三年法律第▼▼▼号)

第四条第五項において準用する公職選挙法中普通地方公共団体の選挙に関する規定により市町村が処理することとされている事務

 (検討)

4 この法律の規定により運転又は使用を再開しないこととなる実用発電用原子炉等の在り方については、この法律の施行状況及び原子力発電の継続についての国民世論を踏まえ、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。


     理 由

 平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により実用発電用原子炉等の運転についてその周辺地域の住民に著しい不安が生じていることに鑑み、定期検査の後の実用発電用原子炉等の運転の再開について関係都道府県知事の同意を得ることとするとともに、当該同意に係る住民投票に関する事項について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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