衆議院

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第一八〇回

参第三号

   沖縄における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法案

目次

 第一章 総則(第一条−第八条)

 第二章 広域返還地及び拠点返還地の指定等(第九条−第十七条)

 第三章 駐留軍用地の返還に係る措置(第十八条−第二十一条)

 第四章 総合整備計画(第二十二条−第二十八条)

 第五章 国の取組方針(第二十九条・第三十条)

 第六章 給付金の支給(第三十一条・第三十二条)

 第七章 駐留軍用地跡地利用推進協議会及び駐留軍用地跡地利用推進連絡調整会議(第三十三条・第三十四条)

 第八章 雑則(第三十五条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、駐留軍用地及び駐留軍用地跡地が広範かつ大規模に存在する沖縄の特殊事情に鑑み、駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別の措置を講じ、もって沖縄の自立的な発展及び潤いのある豊かな生活環境の創造に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 一 沖縄 沖縄県の区域をいう。

 二 駐留軍用地 沖縄において、駐留軍(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(以下この号及び次号並びに次条第二項において「日米安保条約」という。)に基づき日本国にあるアメリカ合衆国の軍隊をいう。以下同じ。)が日米安保条約第六条の規定に基づき使用することを許されている施設及び区域に係る土地をいう。

 三 駐留軍用地跡地 日本国との平和条約の効力発生の日から琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定(以下「復帰協定」という。)の効力発生の日の前日までの間においてアメリカ合衆国が沖縄において使用していた土地又は復帰協定の効力発生の日以後沖縄において駐留軍が日米安保条約第六条の規定に基づき使用することを許されていた施設及び区域に係る土地であって、当該土地の所有者又は賃借権その他政令で定める権利を有する者(以下「所有者等」という。)に返還されているものをいう。

 四 関係市町村 駐留軍用地又は駐留軍用地跡地が所在する市町村をいう。

 (基本理念)

第三条 駐留軍用地跡地は、戦後長期間にわたって駐留軍によって使用された後にようやく返還される沖縄の貴重な土地資源であることに鑑み、二十一世紀における沖縄の自然、経済、社会等に係る新たな展望の下に、沖縄の自立的な発展及び潤いのある豊かな生活環境の創造のための基盤として、その有効かつ適切な利用が推進されなければならない。

2 国は、駐留軍用地が日米安保条約により我が国が駐留軍に提供してきたものであること及びその返還を機とする沖縄の発展が我が国の発展に寄与するものであることに鑑み、沖縄県及び関係市町村との密接な連携を確保しつつ、国の責任を踏まえ、駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用を主体的に推進しなければならない。

3 駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に当たっては、当該土地の返還を受けた所有者等の生活の安定が図られるよう必要な配慮がなされるものとする。

 (国の責務)

第四条 国は、前条の基本理念(次条において「基本理念」という。)にのっとり、駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

 (沖縄県及び関係市町村の責務)

第五条 沖縄県及び関係市町村は、基本理念にのっとり、国との適切な役割分担を踏まえ、当該地域の状況に応じた駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用を推進するため、駐留軍用地跡地の利用に関する計画の策定及び実施その他の措置を講ずる責務を有する。

 (所有者等の協力)

第六条 駐留軍用地又は駐留軍用地跡地の所有者等は、国、沖縄県又は関係市町村が実施する施策に協力するとともに、これらの土地が駐留軍用地跡地の利用に関する計画に即して有効かつ適切に利用されるよう努めるものとする。

 (法制上の措置等)

第七条 政府は、駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用を推進するため必要な法制上、財政上、税制上又は金融上の措置その他の措置を講じなければならない。

 (この法律の円滑な実施)

第八条 国は、駐留軍用地の整理縮小を求める沖縄県民の意向に留意しつつ、この法律の円滑な実施に努めるものとする。

   第二章 広域返還地及び拠点返還地の指定等

 (広域返還地の指定)

第九条 沖縄県知事は、駐留軍用地について日本国政府及びアメリカ合衆国政府との間においてその返還を検討することについて合意されたときは、合同委員会(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十五条に規定する合同委員会をいう。以下同じ。)において返還が合意される前に、当該返還を検討することについて合意された土地の区域のうち返還後において各市町村の区域を超えた広域的な見地からその有効かつ適切な利用を推進する必要があると認められる土地の区域を広域返還地として指定するものとする。

2 沖縄県知事は、広域返還地を指定しようとするときは、関係市町村の長の意見を聴かなければならない。

3 沖縄県知事は、広域返還地を指定したときは、遅滞なく、その旨を公表するとともに、内閣総理大臣に通知しなければならない。

4 沖縄県知事は、情勢の推移により必要が生じたときは、遅滞なく、その指定した広域返還地の区域を変更するものとする。

5 第二項及び第三項の規定は、前項の規定による広域返還地の区域の変更について準用する。

 (沖縄県及び関係市町村による調査及び研究の実施)

第十条 沖縄県知事は、広域返還地の区域内の土地の有効かつ適切な利用の推進に関する調査及び研究を行うものとする。この場合において、沖縄県知事は、広域返還地の相互の関係を特に考慮してこれらの土地の有効かつ適切な利用を推進する必要があると認めるときは、二以上の広域返還地を一括して対象とし、調査及び研究を行うことができる。

2 前項の調査及び研究は、必要に応じ、関係市町村の長と共同して行うものとする。

3 関係市町村の長は、前条第一項の返還を検討することについて合意された土地の区域のうち広域返還地の区域以外のものについて、その区域内の土地の有効かつ適切な利用の推進に関する調査及び研究を行うことができる。

 (駐留軍用地への立入り等のあっせん)

第十一条 沖縄県知事又は関係市町村の長は、前条の調査及び研究を実施するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、国に対し、駐留軍用地への測量のための立入りその他の措置に関してあっせんを申請することができる。

2 国は、前項の規定によるあっせんの申請があったときは、当該申請に係るあっせんを行わなければならない。

3 国は、第一項の規定によるあっせんの申請をした沖縄県知事又は関係市町村の長に対し、あっせんの状況について報告しなければならない。

 (拠点返還地の指定)

第十二条 内閣総理大臣は、駐留軍用地について日本国政府及びアメリカ合衆国政府との間においてその返還を検討することについて合意されたときは、合同委員会において返還が合意される前に、広域返還地の区域のうち次に掲げる土地の区域を拠点返還地として指定するものとする。

 一 返還後において各市町村の区域を超えた広域的な見地から大規模な公共施設その他の公益的施設(次号及び第十七条において「公共公益施設」という。)の整備を含む市街地の計画的な開発整備を行うことにより沖縄の自立的な発展及び潤いのある豊かな生活環境の創造の拠点となると認められる土地の区域

 二 返還後において前号に掲げる土地との相互の関係を特に考慮して公共公益施設の整備を行うことにより当該土地の区域における拠点としての機能がより高度に発揮されると認められる土地(その面積が五ヘクタール以上である一団の土地に限る。)の区域

2 内閣総理大臣は、拠点返還地を指定しようとするときは、関係行政機関の長に協議するとともに、沖縄県知事の意見を聴かなければならない。

3 沖縄県知事は、前項の意見を述べようとするときは、関係市町村の長の意見を聴かなければならない。

4 内閣総理大臣は、拠点返還地を指定したときは、遅滞なく、その旨を公表しなければならない。

5 内閣総理大臣は、情勢の推移により必要が生じたときは、遅滞なく、その指定した拠点返還地の区域を変更するものとする。

6 第二項から第四項までの規定は、前項の規定による拠点返還地の区域の変更について準用する。

 (国による調査及び研究の実施)

第十三条 国は、拠点返還地の区域内の土地の有効かつ適切な利用の推進に関する調査及び研究を行うものとする。

2 前項の調査及び研究は、必要に応じ、沖縄県知事又は関係市町村の長と共同して行うものとする。

 (地方債の特例)

第十四条 拠点返還地の区域内の土地の取得につき沖縄県又は関係市町村が必要とする経費については、地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)第五条各号に規定する経費に該当しないものについても、地方債をもってその財源とすることができる。

 (資金の確保等)

第十五条 国は、沖縄県又は関係市町村が拠点返還地の区域内の土地を取得するために必要な資金の確保又はその融通のあっせんに努めるものとする。

 (課税の特例)

第十六条 拠点返還地の区域内の土地が公有地の拡大の推進に関する法律(昭和四十七年法律第六十六号)第六条第一項の協議に基づき地方公共団体等に買い取られたときは、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、所得税又は法人税の課税について五千万円を限度とする譲渡所得の特別控除の適用があるものとする。

 (国による駐留軍用地の取得)

第十七条 国は、返還後の拠点返還地における公共公益施設の整備に資するため、拠点返還地の区域内の駐留軍用地を取得することができるものとする。

   第三章 駐留軍用地の返還に係る措置

 (駐留軍用地の返還についての見通しの通知)

第十八条 国は、駐留軍用地について、返還の見通しがたった場合には、速やかに、その旨を当該土地の所有者等並びに沖縄県及び関係市町村に通知するよう努めるものとする。

 (支障除去措置の実施)

第十九条 国は、駐留軍用地の所有者等に当該土地を引き渡す場合においては、その引渡し前に、当該土地の区域の全部について、次に掲げる措置(以下「支障除去措置」という。)を講じなければならない。

 一 駐留軍が使用している建物その他土地に定着する物件の除却

 二 人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質として政令で定める物質による土壌の汚染の除去

 三 人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質として政令で定める物質による水質の汚濁の除去

 四 不発弾その他の火薬類の除去

 五 廃棄物の除去

 六 その他当該土地の有効かつ適切な利用を図る上での支障が生じないようにするため必要な措置

 (返還実施計画)

第二十条 国は、合同委員会において返還が合意された駐留軍用地について、速やかに、当該駐留軍用地の返還に関する実施計画(以下この条において「返還実施計画」という。)を定めなければならない。

2 返還実施計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 一 返還に係る区域

 二 返還の予定時期

 三 支障除去措置の実施に関する事項

 四 その他政令で定める事項

3 国は、返還実施計画を定めようとするときは、沖縄県知事及び関係市町村の長の意見を聴かなければならない。

4 関係市町村の長は、前項の意見を述べようとするときは、駐留軍用地の所有者等の意見を聴かなければならない。

5 前二項の規定により意見を聴かれた者が意見を述べようとするときは、沖縄県知事及び駐留軍用地の所有者等にあっては意見を聴かれた日から三十日以内に、関係市町村の長にあっては意見を聴かれた日から六十日以内に、それぞれ意見書を提出しなければならない。

6 国は、返還実施計画を定めたときは、遅滞なく、これを沖縄県知事及び関係市町村の長に通知するものとする。

7 第三項から前項までの規定は、返還実施計画の変更について準用する。

 (支障除去措置の実施期間中の補償金)

第二十一条 国は、アメリカ合衆国から駐留軍用地(国有地を除く。)の返還を受けた場合において、その返還を受けた日(次項及び第三十一条第二項において「返還日」という。)後に支障除去措置が実施されることにより当該土地の所有者等が当該土地を使用することができないときは、当該所有者等に対し、補償金を支給するものとする。

2 前項の補償金の額は、返還日の属する年度に国が当該土地について支払った賃借料(当該土地が日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法(昭和二十七年法律第百四十号)により使用されたものであるときは、同法第十四条の規定により適用する土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第七十二条に規定する補償金。第三十一条第二項において同じ。)の一日当たりの額に当該土地を使用することができない期間の日数を乗じて得た額とする。

   第四章 総合整備計画

 (県総合整備計画)

第二十二条 沖縄県知事は、合同委員会において返還が合意された広域返還地の区域及び当該広域返還地の区域と一体的に整備すべき土地の区域について、県総合整備計画を定めるものとする。

2 県総合整備計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 一 地域の総合整備に関する基本的方針に関する事項

 二 交通通信体系の整備に関する事項

 三 生活環境の整備に関する事項

 四 農林水産業、商工業その他の産業の振興並びに観光及び保養地の開発に関する事項

 五 自然環境の保全及び回復に関する事項

 六 良好な景観の形成に関する事項

 七 前各号に掲げるもののほか、地域の総合整備に関し必要と認める事項

3 沖縄県知事は、県総合整備計画を定めようとするときは、関係市町村の長の意見を聴くとともに、内閣総理大臣に協議しなければならない。この場合において、関係市町村の長は、意見を述べようとするときは、県総合整備計画に係る土地の所有者等の意見を聴かなければならない。

4 沖縄県知事は、県総合整備計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

5 前二項の規定は、県総合整備計画の変更について準用する。

 (市町村総合整備計画)

第二十三条 関係市町村の長は、合同委員会において返還が合意された駐留軍用地の区域及び駐留軍用地跡地の区域並びにこれらの土地の区域と一体的に整備すべき土地の区域について、市町村総合整備計画を定めることができる。

2 前条第二項の規定は、市町村総合整備計画について準用する。

3 関係市町村の長は、市町村総合整備計画を定めようとするときは、市町村総合整備計画に係る土地の所有者等の意見を聴くとともに、内閣総理大臣に協議しなければならない。

4 関係市町村の長は、前項の協議をしようとするときは、沖縄県知事を経由して、市町村総合整備計画を内閣総理大臣に提出しなければならない。この場合において、沖縄県知事は、当該市町村総合整備計画についてその意見を内閣総理大臣に申し出ることができる。

5 関係市町村の長は、市町村総合整備計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

6 前三項の規定は、市町村総合整備計画の変更について準用する。

 (総合整備計画と他の計画との関係)

第二十四条 県総合整備計画及び市町村総合整備計画(以下「総合整備計画」と総称する。)は、他の法律の規定による沖縄の振興に係る計画との調和が保たれるとともに、沖縄における国土の利用に関する計画及び土地利用に関する計画に適合するように定められなければならない。

 (国の負担又は補助の割合の特例等)

第二十五条 国は、総合整備計画に基づく事業のうち、次の各号に掲げるもので政令で定めるものに要する経費については、当該事業に関する法令の規定にかかわらず、予算の範囲内で、当該各号に定める割合の範囲内で政令で定める割合を負担し、又は補助することができる。

 一 都市公園法(昭和三十一年法律第七十九号)第二条第一項第一号に規定する都市公園の用地の取得及び同条第二項に規定する公園施設(同条第一項第一号に規定する都市公園に設けるものに限る。)の新設又は改築 十分の九以内

 二 公立の義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律(昭和三十三年法律第八十一号)第二条第一項に規定する義務教育諸学校に係る同条第二項に規定する建物及び水泳プール、公立の中学校(中等教育学校の前期課程及び特別支援学校の中学部を含む。以下この号において同じ。)に係る産業教育振興法(昭和二十六年法律第二百二十八号)第二条に規定する産業教育のための設備、公立の小学校(特別支援学校の小学部を含む。以下この号において同じ。)及び中学校に係る理科教育振興法(昭和二十八年法律第百八十六号)第二条に規定する理科教育のための設備、へき地教育振興法(昭和二十九年法律第百四十三号)第三条第二号及び第三号に規定する住宅及び施設(同法第四条第一項第四号の規定によるものを含む。)並びに公立の小学校及び中学校に係る学校給食法(昭和二十九年法律第百六十号)第三条第一項に規定する学校給食の開設に必要な施設の整備(当該整備に係る施設の用地の取得及び造成を含む。) 十分の九・五以内

2 国は、総合整備計画に基づく事業のうち、前項に掲げるもので政令で定めるものに要する経費に充てるため政令で定める交付金を交付する場合においては、政令で定めるところにより、当該経費について同項の規定を適用したとするならば国が負担し、又は補助することとなる割合を参酌して、当該交付金の額を算定するものとする。

3 国は、前二項に規定する事業のほか、総合整備計画に基づく事業で政令で定めるものに要する経費については、地方公共団体その他の者に対して、予算の範囲内で、その全部又は一部を補助することができる。

 (国有財産の譲与等)

第二十六条 国は、沖縄県及び関係市町村その他政令で定める公共の利益となる事業を行う者(以下この条において「関係地方公共団体等」という。)が総合整備計画に基づく事業で公共の用に供する施設に関するものを実施するため必要があるときは、政令で定めるところにより、国有財産(国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第二条に規定する国有財産をいう。)を関係地方公共団体等に対して、無償又は時価より低い価額で譲渡し、又は貸し付けることができる。

 (都市計画法等による処分についての配慮)

第二十七条 国の行政機関の長又は沖縄県知事は、総合整備計画に基づく事業の実施のため都市計画法(昭和四十三年法律第百号)その他の法律の規定による許可その他の処分を求められたときは、当該事業が円滑に実施されるよう適切な配慮をするものとする。

 (事業の円滑な実施のための措置)

第二十八条 国は、総合整備計画に基づく土地区画整理事業、土地改良事業その他の政令で定める事業が円滑に実施されるよう必要な措置を講ずるものとする。

   第五章 国の取組方針

 (国の取組方針の策定)

第二十九条 内閣総理大臣は、拠点返還地について合同委員会において返還が合意されたときは、当該拠点返還地において国が取り組むべき方針(以下この条及び次条において「国の取組方針」という。)を定めなければならない。

2 国の取組方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 拠点返還地の整備の方針に関する事項

 二 拠点返還地において実施すべき事業及び実施主体に関する事項

 三 重点的に推進すべき公共施設の整備に関する事項

 四 産業の振興に関する事項

 五 その他拠点返還地の整備に関し必要な事項

3 内閣総理大臣は、国の取組方針を定めようとするときは、関係行政機関の長に協議するとともに、沖縄県知事の意見を聴かなければならない。

4 沖縄県知事は、前項の意見を述べようとするときは、関係市町村の長の意見を聴かなければならない。

5 内閣総理大臣は、国の取組方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

6 内閣総理大臣は、拠点返還地の区域の変更その他情勢の推移により必要が生じたときは、遅滞なく、国の取組方針を変更するものとする。

7 第三項から第五項までの規定は、前項の規定による国の取組方針の変更について準用する。

 (国の取組方針と県総合整備計画との関係)

第三十条 拠点返還地に係る県総合整備計画は、国の取組方針との調和が保たれたものでなければならない。

   第六章 給付金の支給

 (返還給付金の支給)

第三十一条 国は、アメリカ合衆国から駐留軍用地(復帰協定の効力発生の日の前日においてアメリカ合衆国が使用していたもので、引き続き駐留軍の使用に供されているものに限り、国有地を除く。)の返還を受けた場合において、当該土地の所有者等が引き続き当該土地を使用せず、かつ、収益していないときは、当該所有者等に対し、当該土地の引渡しの日として防衛大臣が定める日(以下「引渡日」という。)の翌日から三年を超えない期間内で、当該所有者等の申請に基づき、政令で定めるところにより、給付金を支給するものとする。

2 前項の給付金(以下「返還給付金」という。)の額は、返還日の属する年度に国が当該土地について支払った賃借料の一日当たりの額に、引渡日の翌日から当該所有者等が当該土地を使用し、収益し、又は処分した日の前日までの期間(当該期間が三年を超える場合にあっては、三年)の日数を乗じて得た額とする。

3 前項の規定にかかわらず、一の所有者等について支給する返還給付金の額は、三千万円を下回らない範囲内で政令で定める額を限度とし、かつ、一の所有者等について一年間に支給する返還給付金の額は、千万円を下回らない範囲内で政令で定める額を限度とする。

4 共有の土地について前項の規定を適用する場合には、共有者全員を一の所有者等とみなす。

 (特定給付金の支給)

第三十二条 国は、駐留軍用地跡地(復帰協定の効力発生の日の前日においてアメリカ合衆国が使用していたもので、引き続き駐留軍の使用に供されていたものに限り、国有地を除く。次項において同じ。)について土地区画整理事業その他政令で定める事業が実施されることが確実に見込まれる場合として政令で定める場合に当該土地の引渡日の翌日から三年を経過した日(以下この項及び次項において「基準日」という。)前に該当することとなった場合において、返還給付金の支給を受けた当該土地の所有者等が当該土地の引渡日の翌日から引き続き三年を超えて当該土地を使用せず、かつ、収益していないときは、当該所有者等に対し、基準日から同日以後当該事業において新たに土地の使用又は収益を開始することができることとなった日の前日までの期間(次項及び第三項において「基準期間」という。)内で、当該所有者等の申請に基づき、政令で定めるところにより、給付金を支給するものとする。

2 前項の給付金(次項及び附則第二条第二項第二号において「特定給付金」という。)の額は、当該駐留軍用地跡地の周辺の土地についての賃借料との均衡を考慮して政令で定める一日当たりの額に、基準日から当該所有者等が当該土地を使用し、収益し、又は処分した日の前日までの期間(当該期間が基準期間を超える場合にあっては、基準期間)の日数を乗じて得た額とする。

3 前項の規定にかかわらず、一の所有者等について支給する特定給付金の額は、当該所有者等に係る基準期間の年数(当該期間の総月数を十二で除して得た数とし、その数に小数点以下一位未満の端数があるときは、これを四捨五入する。)に千万円を乗じて得た額を下回らない範囲内で政令で定める額を限度とし、かつ、一の所有者等について一年間に支給する特定給付金の額は、千万円を下回らない範囲内で政令で定める額を限度とする。

4 前条第四項の規定は、前項の規定を適用する場合について準用する。

   第七章 駐留軍用地跡地利用推進協議会及び駐留軍用地跡地利用推進連絡調整会議

 (駐留軍用地跡地利用推進協議会)

第三十三条 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第十条の特命担当大臣、当該特命担当大臣以外の国務大臣のうちから内閣総理大臣の指定する者、沖縄県知事及び関係市町村の長は、駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する施策に関し必要な協議を行うため、駐留軍用地跡地利用推進協議会(以下この条において「協議会」という。)を組織することができる。

2 協議会は、必要があると認めるときは、国の行政機関の長及び地方公共団体の長その他の執行機関に対して、資料の提供、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることができる。

3 協議会は、協議を行うため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。

4 協議会において協議が調った事項については、第一項に規定する者は、その協議の結果を尊重しなければならない。

5 協議会の庶務は、内閣府において処理する。

6 第二項から前項までに定めるもののほか、協議会の運営に関し必要な事項は、協議会が定める。

 (駐留軍用地跡地利用推進連絡調整会議)

第三十四条 関係市町村の長及び沖縄県の職員のうちから沖縄県知事が指名する者は、駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する施策の実施に係る連絡調整その他必要な協議を行うため、駐留軍用地跡地利用推進連絡調整会議(次項において「連絡調整会議」という。)を組織することができる。

2 連絡調整会議の運営に関し必要な事項は、連絡調整会議が定める。

   第八章 雑則

 (政令への委任)

第三十五条 この法律に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、平成二十四年四月一日から施行する。ただし、附則第六条及び第七条の規定は、公布の日から施行する。

 (この法律の失効)

第二条 この法律は、平成三十四年三月三十一日限り、その効力を失う。

2 次の各号に掲げる事項については、当該各号に定める規定は、前項の規定にかかわらず、同項に規定する日後も、なおその効力を有する。

 一 総合整備計画に基づく事業で、平成三十四年度以後に繰り越される国の負担金、補助金又は交付金に係るもの 第二十五条

 二 この法律の失効前に支給が開始された返還給付金及び特定給付金 第三十一条及び第三十二条

 (施行前に引き渡された駐留軍用地跡地についての支障除去措置の実施)

第三条 国は、この法律の施行前にその所有者等に引き渡された駐留軍用地跡地であって支障除去措置を実施する必要があると認められるものがあるときは、速やかに、当該土地について支障除去措置を実施するものとする。

 (施行前に合同委員会において返還が合意された駐留軍用地等に係る県総合整備計画の策定)

第四条 沖縄県知事は、第二十二条第一項に定めるところによるほか、この法律の施行前に合同委員会において返還が合意された駐留軍用地の区域(この法律の施行後に当該土地が返還された場合にあっては、当該返還された駐留軍用地跡地の区域)及びこの法律の施行前に返還された駐留軍用地跡地の区域並びにこれらの土地と一体的に整備すべき土地の区域について、各市町村の区域を超えた広域的な見地から総合的に整備する必要があると認めるときは、県総合整備計画を定めることができる。

 (返還給付金に関する規定の適用)

第五条 第三十一条の規定は、引渡日がこの法律の施行の日以後の日である駐留軍用地跡地の所有者等について適用する。

2 前項の規定にかかわらず、この法律の施行の日の前日において失効前の沖縄県における駐留軍用地の返還に伴う特別措置に関する法律(平成七年法律第百二号)第八条第一項に規定する給付金の支給を受けている駐留軍用地跡地の所有者等については、第三十一条の規定を適用する。この場合において、同条第一項中「当該土地の引渡しの日として防衛大臣が定める日(以下「引渡日」という。)の翌日から三年を超えない期間」とあるのは「この法律の施行の日(以下この項及び次項において「施行日」という。)から特定期間(施行日から当該土地の引渡しの日として防衛大臣が定める日(次条第一項及び附則第五条第一項において「引渡日」という。)の翌日以後三年を経過する日までの期間をいう。次項及び第三項において同じ。)」と、同条第二項中「引渡日の翌日」とあるのは「施行日」と、「三年」とあるのは「特定期間」と、同条第三項中「三千万円」とあるのは「当該所有者等に係る特定期間の年数(当該期間の総月数を十二で除して得た数とし、その数に小数点以下一位未満の端数があるときは、これを四捨五入する。)に千万円を乗じて得た額」とする。

 (沖縄県における駐留軍用地の返還に伴う特別措置に関する法律の一部改正)

第六条 沖縄県における駐留軍用地の返還に伴う特別措置に関する法律の一部を次のように改正する。

  附則第二項ただし書を削る。

 (沖縄振興特別措置法の一部改正)

第七条 沖縄振興特別措置法(平成十四年法律第十四号)の一部を次のように改正する。

  附則第二条第二項の表中五の項を削り、六の項を五の項とする。

 (防衛省設置法の一部改正)

第八条 防衛省設置法(昭和二十九年法律第百六十四号)の一部を次のように改正する。

  附則第二項の表平成二十四年三月三十一日までの間の項、沖縄県における駐留軍用地の返還に伴う特別措置に関する法律第八条の規定が効力を有する間の項及び沖縄振興特別措置法(平成十四年法律第十四号)第百三条及び同法第百四条の規定が効力を有する間の項を削り、同表に次のように加える。

平成三十四年三月三十一日までの間

沖縄における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法(平成二十四年法律第▼▼▼号)第十一条の規定によるあっせん、同法第十八条の規定による駐留軍用地の返還についての見通しの通知、同法第十九条の規定による措置及び同法第二十条の規定による返還実施計画の策定に関すること。

沖縄における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法第三十一条及び同法第三十二条の規定が効力を有する間

同法第三十一条の規定による給付金及び同法第三十二条の規定による給付金の支給に関すること。

 (内閣府設置法の一部改正)

第九条 内閣府設置法の一部を次のように改正する。

  附則第二条第二項の表平成二十四年三月三十一日の項を削り、同表に次のように加える。

平成三十四年三月三十一日

沖縄における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法(平成二十四年法律第▼▼▼号)の規定による駐留軍用地の返還に関すること(他省の所掌に属するものを除く。)。

  附則第三条の表平成二十四年三月三十一日までの間の項中「平成二十四年三月三十一日」を「平成三十四年三月三十一日」に改める。

  附則第五条第二号中「平成二十四年三月三十一日」を「平成三十四年三月三十一日」に改める。


     理 由

 駐留軍用地及び駐留軍用地跡地が広範かつ大規模に存在する沖縄の特殊事情に鑑み、沖縄の自立的な発展及び潤いのある豊かな生活環境の創造に資するため、駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   この法律の施行に伴い必要となる経費

 この法律の施行に伴い必要となる経費は、平成二十四年度において約二億円の見込みである。

衆議院
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